本部

迫る能面

saki

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
5人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/06/03 18:53

掲示板

オープニング

●とある博物館にて
 能――それは日本が誇る伝統芸能の一つである。
 無表情のことを指して能面のような……と表現することもあるが、舞いに使うものが一般的だろう。
 その種類は様々で、こと演目によっても使用する面は違うのだから幅が広い。
 そんな面が展示されている博物館で、学芸員が新しい面を仕入れてきた。
 女面の小面である。
 教科書でも目にするような、女面の中では最も有名だとされる若い女性の面である。
「可愛らしいでしょう?」と、自慢するかのように学芸員の女が言うように、見る方向によってはどことなく愛嬌の感じられる面構えであった。
 能面はのっぺりとした面で、表情なんて一切変わることがないのにその角度次第では全く違った表情に見えるのだから、そう見せようとしてそう魅せることのできる能の舞手は本当に素晴らしいものなのだろう。
 学芸員の女は面を手にし、「なんちゃって」と言いながら装着してみせた。他の学芸員達は「おい、気持ちはわかるけどやめろよ」「展示物なんだぞ」「壊したらどうするんだよ」と言いながらもその声には揶揄が混じっている。学芸員としてはどうなのかというのが浮上するが、自分が気に入ったものを手にしてみたいという気持ちはよくわかるのである。
 そして、装着したまま俯き、動かない女に向かい学芸員の一人が「ほら、何時まで遊んでいるんだ」と声をかけるが女はぴくりとも動かない。反応しない。
 それを訝しがって肩を叩くと、女は手を振り上げ、そして下した。
 男は反射的にそれを避けたが、そこには居合刀小面が振り下ろされていた。
 何時の間に握られていたのだろうか。それは女面と一緒に同じ名だということで仕入れられてきた刀が握られていたのである。
 わっと悲鳴が上がる。
 男が震えるようにして指差す先、他の展示物の能面がカタカタと動いていた。
 それが迫り、学芸員達に装着しようとばかりに迫りくるのである。
 足を縺れされ、それでも我先にとばかりに学芸員達は逃げ出した。
 そんな中、女は幽鬼のようにゆらりと揺れ、手には握られた刀が光っている。
 その面――動かない筈の能面がにたりと笑ったような気がした。

解説

●目的
→女性を救出すること

●補足
→能面の従魔が女性に憑りつき、操っている状態になります。
 その能面を女性から剥がし、救出することが目的の為、女性に直接攻撃して怪我をさせてはいけません。
→他の能面は女性に憑りついた能面が操っているだけなので、女性に憑いた能面を剥がせば動きは止まります。
 こちらに関しては、この能面が従魔化しているということで、破壊することは許可されています。
 しかし、襲ってくる能面は文化財だったり、貴重な資料だったりするので、攻撃したり、戦いの最中に傷つけてはいけません。
 また、他にも貴重なものが置いてありますので、それらも傷つけないようにしましょう。
→女性は一般人なので、元々は強いというわけではありませんが、従魔が憑りついたことによって身体能力が格段に上がっています。
 手にした居合刀で攻撃してもきますので、注意が必要です。
 従魔が憑りついたことにより、居合が達人レベルに達していると考えてください。

リプレイ

●博物館の前にて
 従魔に憑りつかれたという学芸員の女性がいる博物館の前で、同僚だという男性から話の全容は聞いた。
「申し訳ありませんが、従魔が怖くて中には入れません」「すみません。刀で斬りかかられると思うと足が竦んで……」とは、別の女性の談だ。
 重たい物も運ぶ為に意外と力はある学芸員達だが、流石に対人戦闘手段なんて学んで身に付けてなんかいない。それも、武器を持った相手なら尚更のことだろう。
 下手に中に入られ、守りながらの戦闘の方が難しい。一同は女性といた部屋のことなど、館内のことを詳しく聞く。そして、学芸員達から必死な形相で、それこそ祈るような、切羽詰まるような様子で、女性に憑いた能面の従魔なら壊しても良いが、他の能面は従魔化していないのだったら傷つけないで欲しいということを必死な顔で頭を下げられ、その要望に頷いた。
 こういう文化財の素晴らしさを知っているだけあって、金銭云々以上に価値があることを知っているのは彼らなのである。

 話を聞き、赤城 龍哉(aa0090)は「昔ホラー物でよくあった呪いの仮面みたいなもんか」と呟いた。確かにそうだ。この手の物はB級ホラーでもC級ホラーでも鉄板のネタである。
 それに『吸血鬼で不死身になったりしなくて幸いですわ』と頷くヴァルトラウテ(aa0090hero001)に、フラグとも取れる発言に龍哉は「何度倒しても復活してきそうなネタやめろ」とぼやいた。

 学芸員達から話を聞き、御神 恭也(aa0127)は溜息を吐いた。
「文化財が大切なのは分かるが、縛りが多すぎだ」
 その声には頭が痛いとばかりに重たいものが籠っており、状況があまりよろしくないと言わんばかりである。
 それを伊邪那美(aa0127hero001)も『うわぁ……悪夢に出て来そうな状況だね』と称した。

「学術品と女性ですか、面倒な仕事ですね」と考え込む鋼野 明斗(aa0553)に、『セクハラ!?』と大きく書かれたスケッチブックをプラカードのようにドロシー ジャスティス(aa0553hero001)が掲げた。その様は面白がっているというよりも茶化している感じである。
 肩を竦め、「まあ、冗談で済めばいいのですが」と言う明斗に向かっているページに『まぢか!』と書いてあり、まるでコントか何かのようであった。

 エステル バルヴィノヴァ(aa1165)は眉根を寄せ、決意するかのように「貴重な文化財がまた彼らの手によって壊されようとしています。これを許す事は出来ません」と言った。そしてそれと同時に、「その面も刀も昔の人々の思いが形になったもの…何とかダメージを最小限に!」とも、「不覚ですね…その学芸員の方は少し職業意識が足りないのでは無いでしょうか?」とも思った。

 職業柄、能面には普段から接し慣れている天海 雨月(aa1738)は「小面か…演目は何が良いかなぁ」と想いを馳せた。
 雨月同様能楽に造詣の深い巳瑚姫(aa1738hero001)も『そうさな、わらわはやはり…』と巡らせるが、すぐさま首を振って『否、その様な話は後じゃ。先ずはあの無粋者を祓わねばのう』と依頼に集中することにした。

 普段山を暮らしの拠点にしているだけあって、あまり目にすることのないものに小狼(aa3793hero001)は目を瞬かせる。
『お面がいっぱいだね』と楽しそうに声を上げる小狼に、武 仁狼(aa3793)は「壊したら大変だから触るなよ」と声を掛ける。それに返事はするものの、物珍しさが勝って彼方此方興味津々な小狼に仁狼は苦笑した。

●館内へ
 博物館というだけあって、パンフレットには案内図が載っている。とはいえ、学芸員達が荷解きをしていたのは奥の関係者以外立ち入り禁止とされている、裏の方だということだから、これが役に立つのかどうかは定かではない。そもそも、従魔に憑りつかれた女性がそのままその場で立ち止まっているという保証すらないのである。もしかしたら動き回っているということもあるかもしれないし、そこは慎重に捜索するしかない。

 何処にターゲットが居るのか把握できていない以上、身を隠しながら館内を進んでいく。その様はスパイ映画や刑事ものの潜入シーンにも似ていた。
 息を顰め、音を殺して進んでいた所、能面が浮かんでいた。
 宙に浮かんでいたのである。
 無造作に浮かんでいるそれであるが、文化財だということで、学芸員達から再三傷つけないように懇願されている以上、迂闊に近づけない。下手に触っては壊しかねないからである。
 しかし、ここに能面の姿があるということは、女性も近くに居る可能性が高い。
 女性の姿を捜してみると、スーツ姿のまま刀を手にして歩く存在に気が付く。
 顔は笑みを描く能面、そして不気味なまでに散った、長い黒髪が流されてまるで幽鬼のようである。歩き方もどことなく摺足気味であり、到底普通に歩いているとは言うことのできない様であった。寧ろ、独特なその歩き方に何か得体が知れないようにも思えてくる程だった。
 女性の周囲に多数の能面が浮いている。
 何かをしているわけではないが、くるくるくるくると回り、動き、まるで踊っているかのようだ。
 他にも、展示物としてガラスの向こう側に収められているものの、カタカタと楽し気に能面が音を立てている。
 女性が歩いているのは丁度展示品の多いブースであり、ここで戦うのは難しいと其々が判断すると、場所を移動した方が良いとすぐさま方向性は決まった。

●戦闘開始
 各々が周囲の能面に触っても大丈夫なように工夫をしている中、仁狼は戦いの場として選んだ――自動販売機や椅子などが置かれた休憩スペースの付近にある展示物を気泡緩衝材で手早く覆っていく。今の所あの従魔に連動しているのは能面だけのようであるが、博物館には能面以外の貴重な品も沢山あるのである。それらを巻き込まないような措置だ。勿論、ケースの中に入ってカタカタと小さく動く能面も外に出てこられないよう、徹底して覆っていった。
 その様を見ながら、「(肉付き面を思い出すな)」と雨月に、巳瑚姫は『(…絶対に口に出すなよ雨月、剥がし辛くなるじゃろう)』と小声で突っ込んだ。

 緩衝材を巻き付けた後、今度は女性をこちらまで誘導しなくてはならない。
 龍哉が前に出た。
 ここで攻めあぐね、他の能面が集まってきても厄介だ。それを危惧し、龍哉はダメージを負うのも辞さない覚悟で距離を詰める。
「居合いは間が命……あの刀、飾られてた奴か?」
 刀の刃渡りを計算に入れると、ぎりぎりの間合いまで近づく。
 女性は龍哉の接近に気が付き、刀を抜こうと重心を落とす。
 それを、フェイントを掛けてわざと誘い攻撃を誘うと、抜刀された瞬間に立ち止まり上半身だけで刃を避ける。
 鋭い一撃である。まるで達人を相手にしているかのような気迫である。
 女性の攻撃は刀の形状からいって、その攻撃は居合が主流になる。刀が鞘に収まるのを見て一気に踏み込んで挑発する。
 その中に仁狼も加わり、コンビネーションとばかりに二人がかりで女性の動きを誘っては避け……というのを繰り返す。
 幾ら達人並の腕前があるとはいえ、避けることに徹した二人が相手なのである。倒そうという意思があって普通に対峙するよりも、避けることに集中している分相手からすると厄介だ。しかし、それは二人にとっても同様である。
 倒すつもりで攻撃をするよりも、相手の攻撃を只管避け続けるという行動の方がずっと神経を使うものである。相手が大振りであるのならまだしも、洗礼された動きをしているのなら尚更のことだ。
「おい、こんなものなのか!」と仁狼の挑発する言葉に乗っかるかのように、女性の剣技は更に激しさを増した。

 周囲の能面も龍哉と仁狼目がけて襲い掛かるが、そこはすかさず仲間内でフォローする。
 恭也は飛んでくる能面を武器で弾いて傷をつけることを危惧し、当たる寸前で避け手で掴み取る。
 その様を伊邪那美は『ウレタン噴射器で一網打尽にした方が良いんじゃ無いかな?』と評するが、恭也は「確かに傷を付けずに無力化出来るが、ウレタンからの摘出作業が骨だぞ」と首を振った。

 武器をタオル、そしてウレタンで覆い、万が一にも傷をつけないようにという配慮で明斗は立ち向かう。
 対面している龍哉の邪魔にならないよう、側面から能面の対処にあたる。
 操られている能面に傷が付かないように十分に手加減しながら振り払い、龍哉が女性との戦闘に集中出来る環境を作る。
 しかし、彼方此方から迫る能面を加減しながら振り払うのは容易なことではなく、無意識に力の入る自身を律せなくてはならない。角度や自身の攻撃に力が入りそうになるときは敢えて能面を避けず、受ける。しかし、元が能面で攻撃らしい攻撃手段も、凶器になるようなものも持っていないのだ。当たったとしても、衣服が少し切れる程度だ。
「やはり面倒ですね。早めに終わらせてください。一張羅がダメになる」

 飛び回る文化財と言うと、字面だけ見るとかなり不思議なものであるが、エステルは服を巻き付けた扇で受ける。服に上手く辺り、破損などを防ぐのが目的だ。
 今回の件で文化財の保護をと考えていたエステルらしい対処であり、次々と迫る能面を丁寧に捌いていった。

 雨月は回避を能面との接触は回避することで、万が一にもダメージを与えない。そして、余裕がある場合は布で受けて素早く包んだ。
 能面を避け、いなす様は舞っているかのようである。
 その優美な姿と装束から、まるで雨月が主役の能の舞台であるかのようだ。
 これぞ舞とばかりの動きで、雨月は優雅に対処するのであった。

 仲間達が奮闘している間、龍哉は女性と距離を詰めるものの、ここで戦闘をするつもりはないので、あっさりとその身を引き、そして踵を返して走り出す。
 すると、女性は柄に手を掛けて何時でも抜刀できる状態のまま追いかけてきた。
 迫る女性を適度な距離を保ちつつ、こちらの興味を引いたまま龍哉は走る。
 そして女性を目標の場所まで誘導すると、立ち止まった二人に襲い掛かろうとする白刃を、エステルは鎧で受け止めた。
 幾ら相手が女性であるとはいえ、決して体格が良いとはいえないエステルが受けるのは至難の業である。しかし、意地でもかとばかりに刀身を抱え込んだ。
 そしてそれとほぼ同時に、女性の動きを「居合か…」と判断した仁狼も納刀するタイミングを見計らい、方向性が限定できた時点で腕を抑え込むことを考えていた。
 盾で受け流してと考えていたものの、エステルの根性が入った組みつきで刀は抑え込まれている為、手首を掴んで動きを阻害する。
「今だ! 能面を!」

 仁狼の声が響く。それに続き、エステルの「出来れば一撃でお願いします! 修復が出来る状態で取り戻したいです!」という声も響くが、一体この細い体の何処ににそんな力があるのかとばかりに女性は身体を動かす。既に三人がかりで抑えかかっているのだ。それなのにそれを振り切らんとばかりに暴れる。
 女性が形振り構わず暴れているからか、それとも従魔によって力が増幅されているのか、全身を使って動く。

 そんな中、恭也が動いた。
 刀を鞘に納めようと死力を振るう女性の鞘を奪ったのである。
 その行動を『鞘なんか取っても意味が無いでしょうが!』と伊邪那美は非難するが、「居合の初速が速いのは鞘を滑らせるからだ。鞘を失った居合術なって、麺とスープと具材の入って無いラーメンみたいな物だぞ」と恭也は至って真面目だ。
 そして『それって只の丼じゃん』という伊邪那美がする。
 しかし、女性の攻撃手段が居合メインであるのだから、これは非常に有効な手段である。
 帯刀状態から如何に効率良く、相手を倒すかに特化したこの技法は、恭也も言うように鞘に収まっているからこそだ。鞘に収まっていなければ抜刀した状態であるのと同じ。つまりは、居合に特化した居合刀の本分を奪ったのに等しい。
 これでは攻撃は半減である。否、それ以下だ。
 抜刀状態よりもタイミングが掴みづらいというのも強みの一つであるというのに、それがまるで機能しないのである。

 鞘を奪われ、女性は苛立ったかのように空いた手でも刀を握ろうとする。
 しかし、これまで両手で刀を握っていなかったのだ。それがいきなり戦法を変えようにもどうにもならない。その上、刀を両手で握ったことにより、もう片方の手も仁狼がすかさず抑えに回った。
 がちがちなまでに抑えられた状態である。

 全員の注意が女性に向かっている中、何時の間にか雨月が背後に回っていた。
 本来面をつけると視野がかなり狭くなるものだ。女性に憑りついているとはいえ従魔は面についており、女性と従魔どちらの視界で動いているのか気になり、敢えて雨月は死角から女性の背後に回ったのである。
 女性の視野で動いているのなら約180°~200°程であり、その目測は当たったようである。
 押さえつけられているとはいえ、雨月はするりと背後に回り込むと「…なってない。面をかけるなら、もっと上手く舞ってみせろ」と、これまでの穏やかさとは一転した厳しい声で呟き、鬼祓の鉄扇を刀の柄に強く叩きつけた。

 刀が完全に女性の手から離れた所で、龍哉女性が後ろに下がれないように内股から足をかけて動きを阻害する。
「ちょいと荒っぽいが、救出優先ってことでひとつ!」と言う龍哉に合わせ、ヴァルトラウテは『後でセクハラで訴えられないといいですわね』と冷静に言った。
 そして完全に動けなくする。確かにここまで厳重に押さえつけなくても従魔を倒すことはできるかもしれないが、女性の安全を考えるのなら完全に無力化して怪我をさせずにことをこなすのが一番だ。
 そして、能面を剥がそうと龍哉が動く前に明斗のパニッシュメイトが炸裂した。
「従魔とかにしか効かない攻撃ですよ。自分がサポート役だから攻撃しないと思ってましたか? 奥の手は隠すものですよ?」
 冷静な声が指摘するよう、放たれた攻撃が能面を弾いた。
 能面が床に転がる。
 それでも尚カタカタと動き、次の憑りつく先を見定めるかのように動き、恭也へと近づくが、それを手で握っていた鞘で打ち、上に上がったもの瓦割の要領で力を込めて叩き割った。

 ぱきんと硬質な音が響き渡る。
 一刀両断とばかりに真っ二つになった能面が床を転がった。
 それに同調するかのように、宙を浮いていた能面も次々に床に転がった。
「どうだ? 役に立っただろう?」と、鞘を片手に恭也は言うと、『……そうね』と伊邪那美は脱力しながら頷いた。その声には『使い方が違う』というようなものがありありと滲んでいる。

 正気に戻ったのか、目を瞬かせた女性が「……えっと……」と、事態が呑み込めないかのように首を傾げた。
 それに気が付き、仁狼は赤面してぱっと手を放した。
「す、すすす、すまん! ご、誤解だ…決して邪な気持ちではなく…」と、どもる。
 仁狼は女性に対して免疫がないのである。それで普段とはまるで違い、こうも焦っているのだ。こんなてんぱった具合は戦いでも見せないのに大した慌てようだ。
 他の面々も生温かい目を向けながら、手を放した。
「とりあえず問題なさそうだな」と龍哉が話しかけ、それに「怪我とか大丈夫か? 何かおかしな所があったら今の内に言っといてくれ」と続ける。しかし、女性は首を振った。

 女性は従魔に憑りつかれていた間のことをすっかりと忘れているようで、恐縮し、しきりに頭を下げていた。
 土下座でもするかのような勢いで頭を下げ、「申し訳ありません」とばかり繰り返した。

 ことが収集したことを告げ、念の為に他に従魔化したものが無いか探し、そしてそれと同時に落ちている能面も回収していく。彼方此方に落ちているものだから、傷や欠けがないことを祈るばかりである。

 回収の最中、ヴァルトラウテから『覚えていないようで良かったですわ。セクハラで訴えられるかと思いましたもの』と言われ、龍哉は「洒落にならないことは止めてくれよ」と溜め息を吐いた。

『無事に終わって良かったね』と言う伊邪那美に対し、恭也は少し浮かない顔で「白刃取りも考えていたのだがな……」と呟いた。今回は人手が多かった為に披露できず、伊邪那美は『またの機会に……だね。今度は格好よく決めよう』と恭也を元気づけた。

 明斗は怪我を負った人がいないか確認し、その後に能面を集めて回った。
 そして、「こちらのものは特に破損などはないようですよ。良かったですね」と学芸員達に手渡した。

 真っ二つに割れた能面をエステルは「こんなに傷付いてしまうなんて」と嘆くように呟き、抱きしめた。悲壮の漂う背中であったが、すぐに切り替えたようで「修復しなくては」と立ち直ったようである。

 能面には慣れたもので、雨月は手際良く修復の必要そうなものがないか見極めていく。
 そしてそれをこなしながら、巳瑚姫と能面や能について語り合う。本当はあの女性と……とも思ったのだが、彼女は彼女で責任者からきついお小言をいただいている最中だったのだ。
 多量の能面に触れ、「あー…どっかに能楽堂ねぇのかな。久々に観たくなってきた」と呟く雨月に、巳瑚姫は『普段は天海のしか観ぬからのう…後で探してみるかの』と請け負った。

 仁狼は能面や刀は文化財だったり、貴重な資料だったりするかもしれないが危険である為、支部へ連絡し対処を仰ぐ。その傍で小狼も能面を拾い、『拾った』と誇らしげに能面を見せる姿に苦笑し、頭を撫でてやった。


 女性に怪我を負わせることも、周囲の能面も壊すことなく、これにて依頼完了である。
 無事に事が済んだことにより、学芸員達からこれでもかとばかりに感激の言葉を投げかけられたのは言うまでもない。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
  • 狩る者
    武 仁狼aa3793

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 沈着の判断者
    鋼野 明斗aa0553
    人間|19才|男性|防御
  • 見えた希望を守りし者
    ドロシー ジャスティスaa0553hero001
    英雄|7才|女性|バト
  • 悠久を探究する会相談役
    エステル バルヴィノヴァaa1165
    機械|17才|女性|防御



  • 綿菓子系男子
    天海 雨月aa1738
    人間|23才|男性|生命
  • 能面と舞う
    巳瑚姫aa1738hero001
    英雄|23才|女性|ソフィ
  • 狩る者
    武 仁狼aa3793
    機械|17才|男性|攻撃
  • 狩る者
    小狼aa3793hero001
    英雄|6才|?|ドレ
前に戻る
ページトップへ戻る