本部

【急募】ログハウスの清掃【リンカー優遇】

弐号

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
3人 / 0~6人
報酬
寸志
相談期間
5日
完成日
2016/06/01 21:16

掲示板

オープニング

●戦うだけがH.O.P.E.じゃない
「おはよう諸君、今日は君たちに集まってもらったのは他でもない……」
 奥山 俊夫(az0048)が沈痛な面持ちで集まったエージェントたちに告げる。
「今日、君たちにお願いする任務は……掃除だ!」
 力強く握り拳を作り俊夫が力説する。
 ここは一帯でも割と人気なログハウスの群生地である。パウダースノーと有名なスキー場が気軽に行ける距離にあり、いかにもなレジャー気分も味わえるということで海外からの人気も高い。
「細かい説明は避けるが、先日この施設で従魔の襲撃事件があった。事件自体は別のエージェント達が解決したのだが……」
「事件についてはお手元の資料をご覧くださーい」
 多少投げやりな態度で俊夫の横で彼の契約英雄であるリリイ レイドール(az0048hero001)が資料を捲る。数枚の用紙をホッチキスで止めただけの非常に簡素な資料である。
「戦いには勝利し、作戦は上手くいった。だが、戦うだけがH.O.P.E.の仕事ではない。今日はその作戦の後始末というわけだ」
 話しながら俊夫は自分の言葉に聞き入るようにうんうんと頷く。
「掃除など一般企業に任せておけと君たちは思うかもしれない。だが、そうもいかん。今、このログハウスの中には従魔の置き土産が残っておる」
「以前ここに現れた蜘蛛型従魔の蜘蛛の巣が大量に残ってます。非常に粘着力が強く、強度も強い代物ね。また、従魔が残したライヴスが残留しているため一般人が破壊するのはなかなか困難。だから、今日は皆さんに蜘蛛の巣の排除。およびログハウス内の清掃を行ってもらいます」
 面倒くさそうな話を聞いて気だるげな雰囲気が漂い始めたのを察して俊夫が口を挟む。
「無論、ただ働きではない。それなりに報酬は用意しているし、成果によっては上乗せもあるぞ」
 厳つい面に似合わぬ笑顔を浮かべる。
「状況については……リリイ」
「はいはい……。部屋の構造については資料をどうぞ。中の状況で最も酷いのはもちろん蜘蛛の巣。至る所に張ってあるし、粘着力が強くて面倒よ。あとはいくつかの部屋は小麦粉や消火器など粉が巻かれてます。頑張って掃いてね。あとは……窓ガラスが割れてている部屋もあるからその破片、といったところね」
「エージェントしての能力や武器を使うことは禁止せんが、ほどほどにな。戦闘中の破壊行為はある程度許容されるが、今は後始末だ。施設の設備に被害が出た場合、報酬に反映させてもらうから気を付けるように。それでは諸君の健闘を祈る」

解説

ログハウスの清掃のお仕事です。
過去の事件については解決済みシナリオ「張り巡らされる死の罠」を参照ください。

●報酬について
報酬はかなり少なく設定してありますが、これは最低保証の報酬となります。
プレイング内容によってこれに上乗せする形で報酬を付けさせていただきますので、効率のいい掃除方法を考えてみてください。
基本的には通常の「易しい」任務と同程度の報酬を受け取れると思ってもらって構いません。

●道具
一通りの掃除用具は準備してあります。
ほうき、雑巾、洗剤、業務用掃除機、床用ポリッシャー等々
今回は緊急的な任務でないため、物の徴収はできません。
所持アイテムになく準備が困難な物を用意した場合「買った」と判定して報酬に反映する可能性があります。

●場所
ログハウス×6
二階建ての大きめのログハウス。キャンプ場に点在しており、全6棟。
1F大部屋1・小部屋2
2F大部屋1
(大部屋3×3、小部屋2×2スクエア)

●英雄について
今回、英雄無しの能力者のみで参加されたい方、逆に英雄のみで参加されたい方はプレイングにその旨を書いていただければ対応します。
※英雄のみの参加の場合でも、通常の能力者+英雄の形で参加してください。
※英雄の追加受付がない場合でも、プレイングに「能力者のみ」という指定がない限り通常のシナリオと同様「英雄はいるが描写されない」扱いとなります。
※どちらか片方の参加の場合、スキルの使用はできません。

リプレイ

●いつだって明るく楽しく!
「いやー、綺麗なところだねー。身を隠すには――もとい、羽根を伸ばすにはぴったりだ」
 田中 太郎(aa3310)が大きく伸びをし、雪山特有の澄んだ空気を肺いっぱいに吸い込む。
「ふふっ、確かに。空気が気持ちいいですね」
 太郎の元気にあふれたの言葉に釣られて微笑みながら染井 義乃(aa0053)が頷く。
「こんな天気に掃除ってのもな……。いや、確かに一般人には難しいのは判るんだけど」
「一般人に出来ない事をするのがリンカーで英雄だろうが」
 多少不満げな表情を見せる中城 凱(aa0406)に彼の契約英雄である礼野 智美(aa0406hero001)がしかめ面で注意する。
「念の為ガーゼマスクと新聞と…俺は髪の毛お下げにして服の下に入れてから、だな。ほれ、三角巾も用意してある。付けろ」
「……俺の分もか」
 彼の年齢ではなじみの薄いものなのだろう。不思議なものを見るような目で渡された布を眺める凱。
「ちゃんとつけた方がいいよー。キミも髪長いしね」
 ぬっと影が差すと同時に頭上から声がかかる。
 足を機械で補助し2m超の身長を誇るシエロ レミプリク(aa0575)である。
 彼女はすでにまとめた髪をさらにタオルで覆い、加えて口元にはマスクまで装着している。彼女が元々着けている片目を隠す仮面もあり、その顔は左目以外の全てが覆われた完全防備となっていた。それでも威圧感を感じさせないのは彼女の人徳であろうか。
「いよっし、準備完了! やりますか!」
 タオルの端を結びなおし気合を込めるシエロ。
「は、はい、一生懸命頑張りましょう……!」
「……少し肩の力を抜け、マオ」
 別の意味で気合が籠っている――というよりは若干気合が上滑りした様子でガッツポーズを取るマオ キムリック(aa3951)にレイルース(aa3951hero001)が後ろから優しく声をかける。
「キャンプ場! キャンプファイアー! ばーべきゅー!」
「君はもう少し肩に力入れた方がいいな。掃除が目的って分かってる?」
 最後尾で両手で袋を抱えて須河 真里亞(aa3167)が叫ぶ。その隣では愛宕 敏成(aa3167hero001)が頭を抱えていた。ちなみに袋の中身はキャンプファイアー用の薪やら木材やらである。
「……遊びに来たわけではないのだぞ」
 仏頂面で現場の監督役である奥山 俊夫 (az0048)が口を出す。
「あ、いえ、大丈夫だと思います……多分」
「……まあいい。では作業を始めてもらうが何か質問のある者はいるか?」
 自信なさげに頭を掻く敏成にため息を付きながら俊夫が話を進める。それにまず反応したのは智美だった。
「壊れた窓ガラスについては数と部位を確認して置いて、板か何かで覆っておく、で良いのですか?」
「窓については君達の作業の後に業者が入る予定だ。具体的には今日の夜だな。気にしなくても大丈夫だ」
「なるほど……。後、ベットのシーツや毛布は如何すれば良いですか?」
「布類はまとめてクリーニングに出す。そのままでも構わんが邪魔なら持ってきてくれ。こちらで預かろう」
「わかりました」
「あ、私も一ついいですか?」
 続いて手を挙げたのは義乃だ。
「蜘蛛の巣はライヴスが残ってるという話ですが、どのように処理すれば良いでしょうか?」
「どうもよく燃える素材のようだから燃やす予定だ。専用の箱を――」
「燃える――!?」
 俊夫の返答を遮って真里亞が目を光らせる。
「じゃあ、あたしが燃やす用の火を用意しておきますね!」
 はいはーいと勢いよく手を挙げて主張する真里亞。その両手には既に薪が握られており、やる気は十分なようだった。掃除に対してのやる気なのかは非常に疑問だったが。
「……」
「いいんじゃない? それじゃ、お願いね、真里亞ちゃん」
「任せてください!」
 眉間にしわを寄せて黙ってしまった俊夫の代わりにリリイ レイドール(az0048hero001)が答える。
「はっはっは、面白いな、君! 事のついでだ。段取りも決めておこうか」
 心底愉快そうに笑いながらも太郎が場をまとめる。
「そ、そうですね……。あの、まずは蜘蛛の巣をどうにかした方がいいんじゃないかと……」
「賛成です。じゃないと動きづらそうですし……」
 恐る恐る発言したマオの言葉に義乃が同意する。
「ふむ、それについては僕に考えがある。後で試してみよう」
「俺達はあそこのログハウスを一つ任せてもらってもいいか?」
「えっ!?」
 唐突に出された智美の提案に彼女の相棒の凱が驚きの声を上げる。
「今日はこいつに徹底的に掃除の仕方を叩き込むつもりなんだ。そのためには一から十までやらせたい」
「おお、わかった。いいぞ!」
「えぇ……?」
 困惑の顔を浮かべて肩を落とす凱と意に介さずテキパキと準備を始める智美。二人の外見上の年は同じ程度だがどこか姉弟のような雰囲気がにじみ出ていた。
「ウチは全力やるよ! ナトくんにお土産いっぱい買って帰りたいからね! あ、でも高いところとか足場の悪いところで困ったら遠慮なくいってね。ウチの足なら余裕だから!」
 言ってシエロが機械化した足をガシャンガシャンとわざと大げさに動かして見せる。
「ふふっ、それじゃあお願いしますね」
「うん、任せといてー」
 シエロの明るさに当てられてマオの肩から力が抜け笑顔が浮かぶ。
(最初は心配もしたが……大丈夫そうだな)
 それを見ながら保護者代わりのレイルースはほっと胸を撫で下ろすのだった。

●発明! タナカ棒!
「見たまえ、これを!」
 デデーンと効果音がなりそうな勢いで太郎が手に持った棒を掲げて見せる。
「棒ですね」
「……棒だね」
 義乃とレイルースが見たまんまの素直な感想を告げる。
「はっはっはっ! ただの棒ではない、これはそう――名付けてタナカ棒!」
「タナカ棒?」
「さっきちょっと触ってみたのだが、この蜘蛛の糸は粘着力が非常に強い」
 言いながら棒の先に絡みついた糸に触って見せる。それはネトーっと若干引くほどの粘着力を見せ指に貼り付いてきた。
「そこでこのように棒の先で蜘蛛の巣を絡めとり、そしてそれをガラスの破片などの掃除に使う!」
 試しにタナカ棒を床に落ちたガラスの破片にくっつけると、それはあっさりと棒にくっつき拾うことができた。
「おおー、一石二鳥です。田中さん、すごい発想力ですね」
 耳を逆立て拍手で称賛するマオの言葉に胸を張る太郎。
「これは凄い。売れるよ、太郎さん」
「コロコロより優秀……」
「はっはっはっ! 従魔がいれば飼育して生産ラインを確保したのだがな」
 次々と試す仲間たちの感想を聞いて太郎は冗談なのか本気なのか判別のつかない得意げな口調で言うのであった。

●お掃除講義
「というわけで、以上が掃除の手順だ。質問は?」
「……取り敢えずわかった。……けどやる時にもう一度言ってくれ」
 おおよそ二分ほどに渡って行われた智美の掃除講座に凱は腕を組んだままゆっくり頷いた。
 正直半分も理解できていなかった。とはいえ別に凱もやる気がないわけではない。単純に理解できなかっただけである。
「仕方ねぇ。まあ、まずは二階からだ。上から下が掃除の鉄則だからな」
「了解。……なぁ、共鳴した方が作業効率上がらないか?」
「そう思えば共鳴するが、取り敢えず蜘蛛の巣取りまでは互いの目があった方が絡まる危険が少ないからな」
「そんなもんか」
 改めてログハウスの中を見渡す。至る所に張られた蜘蛛の巣とそれが千切れぶら下がる様子が、戦闘の跡を物語る。
「仮にも従魔が作った対人用の糸だからな。絡まったら割と洒落にならないと思うぜ」
 智美のその言葉はおおよそ数分後に与り知らぬ所で証明される事になった。

●燃えろよ燃えろ
「よーし、キャンプファイアー完成!」
「できるもんだね、見よう見まねで」
 作業開始から十数分後、ログハウスキャンプ場の一角に少し小さめのキャンプファイアーが出来上がっていた。
「あ、ちょうどよかった。今、使い終わったタナカ棒を持ってきたところだったんです」
 背後から聞こえてきた声に振り替えると、義乃と彼女の英雄が、慎重に糸部分に触れないようにしながら数本のタナカ棒を抱えてきたところだった。その先には糸と共に大量のガラス破片がくっついていた。
「入れちゃっていいですか?」
「もちろん、どんどん入れちゃって下さい」
「ま、仮にもその為に作ったものだしな」
「それじゃ失礼して……えい!」
 真里亞と敏成の言葉に義乃が手に持ったタナカ棒を炎の中に放り込む。
「わぁ!」
 するとまるで油を注いだかのようにキャンプファイアーの炎が一瞬大きく膨れ上がった。
「燃えやすいとは聞いていたが予想以上だな……」
 敏成が押し寄せた熱気から顔を反らしつつ呟く。
「凄いですね。取る時も相当苦労しましたし、やっぱり普通の蜘蛛の糸とは違うな……」
「そんなに大変なの?」
「ええ、粘着力が凄くって」
「ふーむ、厄介そうだね。真里亞、俺達もそろそろ――真里亞?」
 燃え盛る炎をじーっと眺めながら黙る相棒の姿に不穏な空気を感じ取って、知らず冷汗が頬を伝う。
「フフフ、トシナリ。良い事思いついた!」
「……嫌な予感しかしねぇ」
 しかし、敏成に拒否権というものは基本存在していなかったのだった。

●かちかち山
「ルルル~おそうじおそうじ楽しいな~♪ ……ん?」
 鼻歌交じりに楽し気に天井にモップをかけていたシエロがログハウスのドアが開く音に気付いて顔を上げた。
 入口に一人の人狼が所在なさげに立っている。
「狼さん? 誰かなー?」
「あー、俺だ。敏成だ」
「共鳴したんだ。なんかあった?」
「なんつーか……蜘蛛の巣の処理がまだ済んでない部屋はあるか?」
 妙に歯切れの悪い口調でぽつりぽつりと億劫そうに言葉を紡ぐ敏成。
「あっちの部屋がまだだけど」
「そうか……それじゃ、邪魔するぞ」
 どこか悲壮感すら感じさせる寂しい背中を見せ、シエロが指した小部屋へ向かう敏成。
 彼は扉を開けてその先が蜘蛛の巣で覆われているのを確認して、一つため息を付いた後そのままばったりと床に倒れ伏した。
「へ?」
 思わずシエロも作業の手を止めて敏成の方へ意識を向ける。
 彼は蜘蛛の巣の残りまくった床をごろごろと転がり回り、その豊富な毛をまるでモップのように扱い糸を絡めとっていく。
「天然モップってこと?」
 しばらくその様子を眺めていたが、次第に敏成の動きが鈍っていく。
 動ける範囲も徐々に狭まっていき、やがて動けなくなり床の上で制止する。
「それ、大丈夫?」
「あ、あまり大丈夫じゃないかもしれないな……」
 シエロに声を掛けられて敏成がゆっくりと立ち上がる。シルエットが若干白みがかって見えるほど大量の糸が絡まっていた。
「これは……思った以上に……」
 ギッタンギッタンと電池の切れかけたおもちゃのようにぎこちない歩き方で一歩一歩と敏成がドアへ向かう。
 従魔の糸は粘着する上にやたらと伸びる。それはまるで巨大なガムに包まれているかのようで動きにくいうえに不愉快だった。
「ぐるるるるるる……マヌケすぎるぜ……。しかし、効率は良いのか?」
 何とか真里亞が焚いた炎の前までたどり着き、その炎の中に飛び込む。
「うわぁ、大胆なことするねぇ」
 体に巻き付いた糸が一気に燃え上がり、敏成が炎に包まれる。
「ぐるる……熱いが、何とか――?」
 ライヴスを介しない炎ではリンカーはダメージを受けない。だからキャンプファイアーに飛び込んでも共鳴した状態では熱いだけで火傷はしない――はずだった。
「ん? いやに熱いな。いや、待て……これは……」
 じりじりと肌が焼ける感覚が広がってくる。脳裏に浮かぶ
「熱い! これはやばい!」
 慌てて炎から飛び出し――幸い糸自体はもうほとんど燃え尽きていた――再び地面を転がり鎮火を図る。
 そこへ上から大量の水が浴びせかけられた。
「……だ、大丈夫ですか?」
 拭き掃除用のバケツを持って義乃が問いかける。どうやら事態に気付いて慌てて持ってきたらしい。
「すまない……助かったよ……」
 息も絶え絶えで礼を言う敏成。
「君達は何をやってるのだ!」
 と、そこへ水いっぱいのバケツを――こちらはどこかから汲んできたのだろう――地面に置いて、俊夫が怒鳴り声をあげる。
「なるほどねー。糸の残留ライヴスと炎が混ざり合って共鳴状態でもダメージが通るようになったわけだ、珍しい」
 敏成の毛の焼けた部分をさわさわと撫でながらリリイが興味深げに呟く。
「そういう問題ではない! 愛宕さん、一旦共鳴を解きなさい」
「ええと……あ、はい」
 タジタジになりながらも共鳴を解き、再び二人に分かれる。
「わう?」
 夢見心地から急に共鳴を解かれて戸惑う真里亞を俊夫が見下ろす。
「俊夫の説教は長いよー、がんばってね」
 新しい棒キャンディ取り出し咥えながら、リリイは慣れた様子で言うのであった。

●午後のティータイム
「み、皆さーん、休憩にしましょう!」
 屋外のテーブルにナプキンを引きながらマオが大声で仲間たちに呼び掛けた。レジャー用の施設なだけはありこういったレクリエーションに必要なものは一通りそろっている。
「おー凄い、豪華だねぇ」
 いち早く駆け付けたシエロがマオの用意したティーセットに喜びの声を上げる。
「お茶とクッキーか」
「おお、いいね。ちょうど小腹が空いてきたところだぜ」
 離れて作業をしていた智美と凱も作業をいったん止めて顔を出す。
「えっと、あの……先日香港に行った時に買ってきた本場のポーレイ茶です。お、おいしいですよ」
「ふふっ、有り難くいただきます」
 照れた様子で顔を伏せるマオに義乃が微笑みかける。
「あれ……あの、真里亞さんと敏成さんは……」
「はっはっはっ、彼らはもう少しかかりそうだね。いやぁ、面白い事を考えるものだよね。僕はああいう発想は大好きだよ」
「技術の発展は発想と実験から。失敗も大事なんだけど、まあ、俊夫は頭が硬いから。うん、おいしー」
 監督役のリリイもやってきてマオのクッキーを摘まむ。
「後で持っていってあげよう、かな?」
「そうしてやれ……」
 正座で説教をされている二人を眺めて、マオとレイルースは苦笑いと共にそう呟いた。

●暖かな炎を囲んで
 蜘蛛の糸の処理さえ終わってしまえば後はただの掃除である。それから後の作業はそれほど問題もなく――せいぜい機械に弱いマオが掃除機を電源を入れぬまましばらく引きずったくらいで――終了した。
 今は作業の終了からさらに時間の経った夜7時。窓修理の業者が各々作業を始める中、敏成と真里亞の二人は自分で組んだキャンプファイアーの前で佇んでいた。
 帰りの送迎バスへの乗車を拒んで二人でここに残ったのだった。
「火の状態は大丈夫か? ……うーん、夏の大三角はまだ見え難いか? こういう時は定番なんだが」
「うるさーい! ちょっとここ入ってる? トシナリ。んん?」
 炎のついた薪を振り回し、真里亞が叫ぶ。
「分かった! しかし、これ……かなり寂しく無いか?」
「いーの! あーあ……」
 寂しそうにため息を付きながら手に持った薪で炎をつつく。作った当初に比べ、だいぶ火も小さくなってきていた。
 思ったよりは楽しくないな。そんな本音が頭に浮かぶ。
「よかったぁ。やっぱりまだいた!」
 と、その丸まった背中に義乃のホッとしたような声がかかる。続いてマオの声。
「あ、あの、お邪魔します」
 振り向くとそこには今日のメンバーが勢ぞろいで並んでいた。その手には様々な大きさの買い物袋を抱えている。
「はっはっはっ、こういうシチュエーションで芋は欠かせないだろう! 山ほど買ってきたぞ!」
 太郎が両手の袋いっぱいに詰まった袋をどしゃっと地面に置く。
「オレ、直接芋を焼いて食うのなんて初めてだぜ」
「……やっぱり買いすぎだろ。結構腹に溜まるぞ、芋は」
 楽し気な凱と対照的に不安げに呟く智美。
「いやぁ、やっぱりナトくん連れてくれば良かったなぁ。お芋、持って帰ってあげよっかな」
「みんな……」
「薪も買ってきた……火もしばらく持つ」
 呆然とする真里亞の横に屈み、レイルースが薪を炎の中に入れる。パチパチと火のはじける音がした。
「大人の嗜みもありますぞ」
「ビール大丈夫なら、ドーゾ」
「え? あ、いや、参りましたな、これは」
 俊夫が敏成に缶ビールを差し出す。後ろのリリイはすでに一缶開けているようだった。
 それを受け取って口をつける。
 ふと、未だに呆然としたままの相棒が目に入った。
「……良かったな、真里亞」
「……うん!」
 答えた真里亞の顔には満面の笑みが浮かんでいた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • タナカ棒発案者
    田中 太郎aa3310

重体一覧

参加者

  • エージェント
    染井 義乃aa0053
    人間|15才|女性|防御



  • エージェント
    中城 凱aa0406
    人間|14才|男性|命中
  • エージェント
    礼野 智美aa0406hero001
    英雄|14才|男性|ドレ
  • LinkBrave
    シエロ レミプリクaa0575
    機械|17才|女性|生命



  • 憧れの先輩
    須河 真里亞aa3167
    獣人|16才|女性|攻撃
  • 月の軌跡を探求せし者
    愛宕 敏成aa3167hero001
    英雄|47才|男性|ブレ
  • タナカ棒発案者
    田中 太郎aa3310
    人間|22才|男性|回避



  • 希望の守り人
    マオ・キムリックaa3951
    獣人|17才|女性|回避
  • 絶望を越えた絆
    レイルースaa3951hero001
    英雄|21才|男性|シャド
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