本部

オトメだって恋したい

渡橋 邸

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
4人 / 4~6人
英雄
0人 / 0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/05/19 20:48

掲示板

オープニング

●漆黒のオトメ
 布屋 秀仁(az0043)は背中にいやな汗が流れるのを感じた。目の前には1人の男がいた。
 身長180cm超の体は分厚い筋肉の鎧で覆われているようで非常にがっしりしている。今は困り切ってやや情けない表情をしているが、巌のような顔は睨みを利かせればそこらの一般人は裸足で逃げ出すだろう。
 だがその程度であれば普段から従魔を相手取っているだけあって恐れを抱くことはない。真に恐ろしいのはそれだけの恵まれた体つきの男がフリフリのゴシックドレスを身に纏い、うっすらと化粧を施していることだった。その気合いの入りようは現代において憧れの彼を射止めんとする合コン女子の如く。これにはさすがのエージェントも裸足で逃げ出したくなる。
「えーっと、今日はいったいどんな用事で?」
 秀仁は声が上擦るのを抑えつつ、なんとかその言葉を捻り出した。悲鳴を上げなかったのは奇跡だった。
 目の前の彼はしばらく戸惑っていたが、覚悟を決めたのかいよいよ口を開いた。
「ボクの恋愛の手助けをして欲しいんですにゃ!」
 想定外の発言とそれ以上に強烈な語尾に、秀仁は考えるのをやめた。

●こんな時こそ……
「僕は応援するべきだと思うな。彼……いや、彼女を!」
「いや、待て。落ち着け。悪いと思わないが、アレは俺にはキツすぎる!」
 相棒の英雄、米屋 葵(az0043hero001)の言葉に秀仁は大声で反論した。
 あまりに大きな声だったからか、その場にいた何人かが振り向いた。
「なんだあれ、乙女か! いや、むしろ漢女か!? 一応保留にしたけど、よりによってなんで俺なんだ!」
「さあ?」
「いったいどうしろっていうんだ……こんなときどうしたら――あっ」
 苦悩していた彼はふと妙案を思いついた。
「そうだ、こんな時こそH.O.P.E.に助力を頼めばいいじゃないか」
「えっ」
「普段から色々頑張ってるし、こういう時くらい助けてもらわないと」
 悟りにも似た清々しい表情を浮かべ、秀仁は携帯で連絡を取った。

解説

ゴスロリをまとった漢女(おとめ)のデートを完遂させよ!
デート中に起こる障害を取り除きましょう

▽PL情報
●舞台
街:普通の街。そこそこ発展しておりお店もそれなりにある。
  デートにはもってこいの場所。

店:ちょっとお高めのアクセサリー店。
  宝石なども取り扱っている。

●登場人物
ゴスロリの漢女
 ゴスロリ姿の漢女。仕草や中身はいい具合に乙女。僕っ子。
 憧れの彼をデートに誘うことに(何故か)成功し、いざデートに。
 戦わせたらたぶん強い。

男性
 漢女のデート相手。黒髪を短く切りそろえた普通のイケメン。
 銀行員。何故か漢女のお誘いを快諾したが……?

ヴィラン
 デートプランにある店にたまたま強盗に入ってくる。
 3人組。うち2人が武装している。
 武器はナイフと拳銃。

リプレイ

●作戦会議
 H.O.P.E.内にある小会議室。そこに数人のエージェントが集まっていた。その中心にはゴスロリの漢女と布屋 秀仁(az0043)がいる。秀仁は全員が揃ったことを確認すると、まず頭を下げた。
「今回は急な頼みにもかかわらず、こうして集まってくれてありがとう。正直俺はこういうのがよくわからないから、今日はよろしく頼む」
「春は恋の季節だものね!もうキューピットだろうがキューカンバーだろうがわたし……やるわ!」
 秀仁の言葉に芦川 可愛子(aa0850)がノリノリで答える。
「漢女さんて乙女!…なんかかわいいと思うから絶対に成功させるよ!」
 須河 真里亞(aa3167)はガッツポーズを取りながら力強く告げる。
「俺は頼まれただけですが……やるからには成功させましょう」
「僕も可能な限りお手伝いします」
 石井 菊次郎(aa0866)と都呂々 俊介(aa1364)はそれぞれの意志を口にした。
 その言葉を聞いてゴスロリの漢女は目を潤ませる。
「あ……ありがとうございますにゃ! よろしくお願いしますにゃ!」
 感動のあまり力み過ぎて漢女のゴスロリドレスが小さく悲鳴を上げる。
「さて、それでは早速作戦会議といきましょうか」
 菊次郎がサングラスの位置を直しながら口を開いた。
「えー……それでは、俺はデートプランの添削を行いましょう」
「あ、わたしも手伝うよ!」
 菊次郎の言葉に可愛子が手を上げて自らも同じように行動すると告げる。
 それに対して真里亞はそれじゃあ、と言う。
「わたしは成功させるためのポイントを考えるよ」
「僕はデート当日に仕事するので……」
「それじゃ、あたしと一緒に抑えるべきポイントを考えましょう」
「えっ」
 そうこうしている間に漢女と接触しないように隅に逃げようとしていた俊介を捕獲する。
 そうして彼らは2組に分かれてデートの計画を練り始めた。


 デートプラン班は順調に進めていた。
「このルートは移動時間の余裕が無さ過ぎですね。このジュエリーショップはカット、これで展望台に回る余裕が出来ます……は? 外せない? ……うーん」
「彼は綺麗な物が好きだから、できれば外したくないんだにゃ」
 漢女の要求に菊次郎は頭を悩ませながらデートプランを修正していく。
「へえ、その彼って綺麗な物とか好きなんだね。そっかー、だから宝石店なのね!」
「そうなんだにゃ! 夜景だとか、風景だとか……宝石や絵画だとか。そういった綺麗な物を前にすると子供みたいにはしゃいでて可愛いんだにゃ!」
「はあ。……この丸ハートイベントとは何ですか? もう少し、行動の明確化と所要時間の確定を。いずれにしてもこの一時間以上とは長過ぎます……え? もういい?」
 訂正。やや難航しているように見受けられた。


 ポイント班の行動は全力で迷走していた。
「男の子にはやっぱり手作りが一番思いが伝わるよねって、すんちゃん言ってたし……手作りシリーズで決めちゃおう! この季節だとカーディガンかな?」
 真里亞は満面の笑みで(個人的)成功ポイントをホワイトボードに書き並べていく。
「桟橋の先で突然波しぶきが! 銀行員さんは思わず漢女さんをかばってびしょ濡れになるの! 服を乾かさなきゃなるから代わりの服が……ここでカーディガン登場! 濡れた上着の代わりにぴったり」
「いや、そもそも濡れる前提って……いや、あまり余計なのはどうかな。それで予想外の事が起こっても怖いし………」
「それもそうね……それじゃあいっつも漢女さんの事を忘れない様にイラスト入りのスマホケース! わたし、イラスト得意だし手伝えるわ! あ! お弁当は忘れちゃだめだよね?」
 真里亞の暴走はデートプラン完成まで止まることはなかった。


 そして作戦会議の開始から2時間後。苦労の末に生まれ変わったプランを前に、全員が疲労を浮かべていた。
 そんな中、漢女はキラキラと瞳を輝かせている。
「ありがとうですにゃ! これできっと……! 皆さんには感謝してもしきれないですにゃ!」
 こうしてプランは完成した。
 本番まで――あと2日。

●デート本番―漢女の本気―
 デート当日。予めプランによって集合場所を把握していたエージェントたちは再び集まっていた。
「うーむ、僕は何でこんな依頼を受けてしまったのでしょう」
 俊介はこの場に来てようやく、自身の行動に首をかしげる。ここまで来ておいて今更ではあるが。
「……この公園は珍しくゴミ箱が整備されて居ますね……護衛の立場からすると厄介ですが。一つ一つ確かめねば」
「いや、あの。そこまで調べる必要はないんじゃ」
「しかし、この物騒な世の中いつ愚神やヴィランの襲来が有るか。……む、店は襲撃を受けたら逃げ場が無いな……」
 菊次郎は視線を行き来させ、歩き回って先に危険を確認している。秀仁やその他のエージェントもその姿には苦笑するしかない。
 その間に、遠くには目立つゴスロリ漢女が近づいてくるのが見えた。前に見たときよりも幾分か気合が入っているのが見て取れる。その歩みは見た目の割に軽やかで、この日のことを楽しみにしていたのがよくわかる。
 そして彼(?)に遅れること数分、濃紺のジャケットと青のストライプのパンツを身につけた男がやって来た。傍目から見てもしっかりした格好は、彼自身もこのデートのために備えていたことを示していた。
 エージェントらは急いで見つからないように移動する。離れてしまったので話はあまり聞こえないが、どちらも楽しそうにしている。
「今のところは良さそうだね。相手の方も時間より早めについているし」
「そうだね。……っと、移動するみたいだよ」
 少し話している間に2人は移動を開始していた。見ると、しっかりと手をつないでいる。
「おお! 見てください! 手をつないでますよ、手を!」
「騒いだら見つかっちゃって、向こうも変な雰囲気になっちゃうよ!」
「……とにかく移動しましょうか。護衛をするのに、対象から離れすぎてはいけませんし」
 菊次郎の言葉にはっとして全員が移動を開始した。


「順調ですね……おお! ここでジュエリーショップ! しかも、しっかりと手をつないで仲睦まじそうに! どうでしょう? 依頼者さん、これは脈ありって事ですかねえ?」
「いいですね! すごく順調です! これは、もしかしたらもしかするかも……!」
 真里亞と可愛子が宝石店の中で仲良く宝石を選んでいる2人の姿を見て盛り上がる。その姿はまるで1人立ちした我が子を見守る親の様だなあ……などと他のメンバーは思った。
「むむ? これは予想外の展開だ! 漢女さんが涙を? 何話してるか分かりませんがこれは告白かあ?」
「おおおお!?」
「なんだか向こうもこっちも盛り上がってますね……俺も同じように盛り上がるべきなんでしょうか?」
 実況風に様子を見ながら盛り上がり続け留まることを知らない真里亞と可愛子の様子に、思わず菊次郎は自分が間違っているのかと思った。
「よくよく考えたらデバガメではなく護衛でしたね。必要ありませんか」
「……デバガメみたいなものだけどね!」
 菊次郎の言葉に思わず俊介は突っ込んだ。いい年の男女が4人も集まって離れたところからデート風景を見ているのは傍から見たら不審極まりないだろう。
 そうして見守っていると、今にも宝石店に乗り込もうとしている男たちの姿が目に入った。彼らの姿はもうあからさまに怪しんでくれと言わんばかりであり、ふざけているのか? と思わずにはいられなかった。
「さあ、どうなる……って、なんと! ここでお邪魔虫が!! ……実況はここで失礼して、ボケに突っ込み入れて参ります!!」
 真里亞が文字通り突撃する。遅れるようにして残りのメンバーも近づいていく。
 そして彼らの目の前に立ちふさがる。怪しい3人組は訝しげな表情を浮かべた。
 その彼らに向かって菊次郎が声をかけた。
「まずは俺に任せてもらいましょうか。『あの大変申し訳ありませんが、裏の路地に回って頂けますか?』」
「は? ……あ、ああ。わかったぜ」
 突然の頼みごとに一回聞き返すものの、すぐに裏路地に歩いていく。
「支配者の言葉か……とんでもないね」
「それほどでもありませんよ。……さあ、さっさと片付けてしまいましょうか」
 彼らはそろって3人組の向かった裏路地に行く。そこには戸惑った顔で立ちすくむ男たちがいた。
 その彼らに対してライヴスの火炎と弾丸、メスが一斉に襲い掛かる。爆炎と衝撃の中、意外にも身体能力は高かったのか彼らは全てをかすり傷でやり過ごして見せた。が、そこまでであった。避けた直後にもう一度ライヴスの火炎球が襲い掛かる。そして見事に焼けた3人組が地に伏せた。
「恋の邪魔をする人は馬に蹴られてなんとやら、ですよ!」
「馬に蹴られるよりも悲惨ですがね……さて、H.O.P.E.に連絡するとしますか」
「っとと、急がないとお店から出ちゃうよ」
 彼らはヴィランたちを爆殺したことを歯牙にもかけず、再びデートの護衛(と言う名のデバガメ)へと戻る。
 ちょうど裏路地から出たところで彼らも店から出たようでほんの少し先に2人の姿が見える。……そろそろいい時間である。最後は展望台だったか。1時間ほどあるが、いったい何をするつもりなのか……。
 ついて行くと、そこには腕を組み、ただ佇んでいる2人の姿があった。
 その姿にエージェントたちは、はっと息を飲む。
 イケメンとゴスロリマッチョの2人組なのに、夕焼けと相まって何故だか絵になっていたのだ。
「……どうやら、これ以上は野暮になりそうだね」
「……みたいだね」
 真里亞の言葉に、俊介が神妙に頷く。
「見てきたところ、誠実な人の様だし……末永くお幸せに、って感じだね!」
「そうですね……さて、気づかれない内に俺たちも帰りましょうか」
 可愛子は本当にうれしそうな顔で笑った。
 そして菊次郎の言葉に賛成、と返す。
 身を翻し街へと戻っていく彼らの背後で影が重なった。
 ――彼らの恋路に、幸あらんことを。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
  • 憧れの先輩
    須河 真里亞aa3167

重体一覧

参加者

  • 恋のキューピッド(?)
    芦川 可愛子aa0850
    人間|10才|女性|命中
  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
    人間|25才|男性|命中
  • 真仮のリンカー
    都呂々 俊介aa1364
    人間|16才|男性|攻撃
  • 憧れの先輩
    須河 真里亞aa3167
    獣人|16才|女性|攻撃
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