本部

爆乳にはなりたくないの!

落花生

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2016/05/07 22:42

掲示板

オープニング

●男子寮立てこもり事件
「えー……大人しくでてくるんや」
 拡声器をつかって良田正義(az0013)は、今はもう使われていない男子寮に声をかけていた。正確には、男性寮のなかに引きこもってしまったリンカーたちにである。今は昼間だからよいが、夜だった近隣住民から苦情なきそうな光景だった。
「君たちは、従魔の攻撃をうけとる可能性がるんや。早く治療せんと命を取られることもあるのは知ってるやろ。大人しくでてこーい」
 男子寮にたて籠るリンカーたちは、全て新人であった。そのため、たして強くはない従魔退治が割り振られたのである。ところが、彼らは男子寮から出てこようとはしなかった。流石におかしいと正義を含めた新たなリンカーたちを派遣したのであった。
「お願いだー! 後生だから、あっちにいってくれ!! もう俺たちのことは、死んだと思ってくれ!!」
 男子寮から、リンカーたちと思われる野太い叫び声が聞こえてきた。わりと元気そうである。
「あかん。一体、なかに何が起こったのかまったくわからへん。ちょっと、ボクが行ってみてくるわ」
 正義は一人で、男子寮のなかに向かった。

「あかん……。これ、あかんやつやったわ」
 そう言って男子寮から出てきた正義の姿に、全員が笑いをこらえた。正義も自覚があるらしく、顔を背けている。正義の胸は、頭蓋より大きく膨らんでいた。
 俗に言う、爆乳である。
「なかにはいって、蛾みたいな従魔の攻撃を受けた途端にこれや。もう、いややぁ……」
 正義は、泣き崩れた。
 たぶん、今日一日使いものにならないであろう。

●もう見ないであげてください
「うわぁぁぁ、あいつらこっちにくるぞ」
 男子寮には、新人リンカーたちが無駄に大きな乳を揺らしながらパニックにおちいっていた。歩けば邪魔、走れば邪魔、飛び上がるのにも邪魔、乳とはやっかいな代物だった。このままでは戦うことすらままならない、それでも男たちは乳をつけたまま武器を持つ。
「こんな姿、誰にも見られたくない!!」
 男たちの気持ちは、今初めて一つになった。

解説

・このシナリオでは、誰でも問答無用で胸部が異様に膨らみます。なお、服などは破けません。

男子寮……もうすぐとり壊される予定の男子寮。荷物は全て持ち出されており、全ての部屋が空いている。ボロいわけではないが、所有している高校側からは倒壊させる以外はなにをやってもよいと言われている。四階建ての建物であり、一階に風呂や食堂といった共同のスペースがある。二階以降から、住居スペース。部屋は手狭だが、廊下や天井は広めである。

新人爆乳リンカー……全て男性、九人登場。一階以外のフロアに、三人ずつ登場する。室内戦を学ぶために集められたこともあり、全員が室内戦を苦手としている。武器も剣や槍といったものばかりで、壁や天井などに突き刺さったりする。

従魔……蛾の恰好をした従魔であり、玄関にのみ多数出現。りんぷんをまき散らし、そのりんぷんを浴びた人間の胸部を膨らませる。攻撃力は全くないが、数が多い。放っておくと、外に飛び立って近くにある男子校の生徒を巨乳化させる。(PL情報……従魔を全て討伐しても、りんぷんの効果は一時間は持続する。)

乳……巨大化すると、あまりの動きにくさに運動能力が低下する。

正義……色々なことにショックを受けており、今回は役に立たない。

リプレイ

●巨大化しました。
 取り壊される予定の男子寮の前で、リンカーたち特に男性リンカーは嫌な予感に打ち震えていた。それぞれが、自分の胸部が膨らんだ姿を想像する。
 物凄い、破壊力だった。
「とりえず、お前一週間スイーツ抜きな」
 赤城 龍哉(aa0090)は、ヴァルトラウテ(aa0090hero001)にきっぱりと告げた。今回の依頼を進んで引き受けた彼女は口に手をあてて「まぁ」と驚いたふうな顔をする。龍哉にしてみれば、その表情は随分と白々しいものであった。
『何て事を、鬼畜の所業ですわ!』
「この依頼を受けたこと事態が鬼畜の所業だよ、コノヤロウ!」
 自棄になって叫びつつ、龍哉は思わず遠い目をした。爆乳姿のヤローを見て、誰が喜ぶのだろうか。先に侵入して、見事に爆乳なってしまった正義(az0013)を見ても分かる。可哀想だが、笑いを誘う姿にしかなってない。
「この辺は、御神も同じ心境なんだろうな……」
 ちらりと御神 恭也(aa0127)のほうを見ると、彼は気真面目に従魔の攻撃を防ぐ手立てを考えているところであった。
「最悪、布か何かを被っておけば防げるかもしれんが、数が多すぎるな」
『……このままだと面白い被害がでないよ』
 ぼそり、と伊邪那美(aa0127hero001)が呟く。
 彼女の手には、海外旅行にでもいくのかと言いたくなるほどの荷物があった。なんとなくではあるが、嫌な予感がしているので誰もその中身については突っ込んでいない。
「うーん。たしか依頼って立て籠りを排除する依頼だったよね? リリア?」
 天城 稜(aa0314)は周囲への挨拶をすませたところで、自分が認識していた依頼内容と現実の依頼内容に若干のズレがあったことに気がついた。リリア フォーゲル(aa0314hero001)はあえて黙っていた部分を、今さらになってにっこりとほほ笑んで伝える。その頬笑みは、策士の微笑みであった。
『ええ……只、従魔の姿も確認されていて攻撃を受けると巨乳になるようです』
 ほら見本がそこに、とリリアは胸部が膨らんだ正義を指さす。誰かの視界に入らないように小さくなっている正義に、寮内の様子を聞きだしているのは白雪 煉華(aa2206)である。
「蛾は、玄関だけにいたんですよね?」
「……そうや。たぶん、それより奥には行ってないとは思うんや」
『胸が膨らむっていうのが、厄介なのよね』
 メリュジーヌ(aa2206hero001)は実年齢にそぐわない落ちついた表情で、腕を組んで頷いていた。だが、ここで悩んでいても仕方がない。
 胸部が巨大化するという面白い――否、大変な被害を出すかもしれない従魔を放っておくことなどできないのだ。ついでに、引きこもってしまっている新人リンカーたちもどうにかしなければならない。
 彼らは、慎重に寮のドアを開けた。
 人の胸部を豊満にさせる蛾は、玄関付近にしかいないようである。ならば、蛾を何らかの方法で捕まえてまとめて焼きつく作戦が効率的であろう。
『おほほぉぉぉ――っうぃ!! バインバインじゃ! おねーちゃんとお揃いが出来るのじゃ!』
 アイリス・サキモリ(aa2336hero001)が満面の笑みで、蛾の群のなかに突っこんでいく。あまりに迷いのない走りに、誰もが言葉を失った。あそこまで嬉しそうに敵軍に突っこむ人間は、初めて見たかもしれない。
「馬鹿か! なんで、わざわざ飛びこんだ!!」
 防人 正護(aa2336)が止める間もなく、アイリスは蛾の群のなかに突入して……嬉しそうに帰って来た。最初から豊満だった胸はさらに膨れ上がって、頭蓋よりも一回りも大きくなっていた。
「おねーちゃん、お揃いじゃろう!」
 嬉しそうにアイリスは、廉華に抱きつくが他の面子(特に男性陣)は戦々恐々としていた。目の前で胸が膨らんだ姿を見せられると、これが現実であると実感しなければならなくなる。別に女子に起こってくれる分はよいのだが、自分達の身に降りかかったら末代までの恥である。
「な、何かすごい大変なことになってるよ。ジャックちゃん」
『あぁ、スゲー変態なことになってるな、キヒヒヒヒ!』
 男性陣の恐れを余所に桃井 咲良(aa3355)とジャック・ブギーマン(aa3355hero001)は、笑いあう。知り合いの三人と一緒の依頼は初めてで、高揚していた気分がさらに高まるのを感じた。
「ちゃんと払い落せ!!」
 正護はアイリスと共鳴し、拒絶の風を使用する。
 正護には、悪気などなかった。りんぷんを払い落せば、アイリスの胸は元に戻ると考えていたのだから。だが、風はさらに蛾にりんぷんを巻き散らせたのであった。
「あ……あたしの方にもくるの!?」
「従魔を外に出さないように気をつけて!」
 天間美果(aa0906)や鞠丘 麻陽(aa0307)の方にもりんぷんを纏った風はとどき、その場にいる全員を爆乳にした。
「わぁ!? でっかくなっちゃった」
『キヒヒ! マジシャンかよ。スッゲー珍しいもん取れたぜ。サクラの爆乳画像』
「ジャックちゃんもだからね!」
 女性の咲良とジャックは、互いの胸を見て驚いたり笑ったりをしていた。ぶるん、ぶるん、と震える迫力ある乳を前向きに受け止められた二人組である。
 だが、一方では膨らみ過ぎた人々もいた。
 被害がひどかったのは、麻陽であった。
 りんぷんが風に舞っている際に大声を出して、人よりも多くを吸いとってしまったのが原因であろう。
『あらぁ、すごいですぅ』
 すでに麻陽と共鳴していた鏡宮 愛姫(aa0307hero001)は、膨らんだ麻陽の胸部に言葉を失った。元より過剰の発達した胸部の持ち主だったせいなのか、麻陽の胸はこの場も誰よりも大きく膨らんでいたのであった。
 全員の胸のサイズが大玉スイカだとすると、麻陽のサイズはもはや世界最大のフルーツ――パラミツ級である。大きくなると四十キロにも達するフルーツを連想させる胸部となった麻陽は、もうそれだけで体力を消耗させていた。
 ダメージを受けたというよりは、普通に重くて辛いのであった。たとえリンカーの肉体であっても、胸部の筋肉だけで四十キロをささえるのは辛い。
「動けそうにないよ~」
 困った麻陽と同じように、膨らみ過ぎて困っている人間がいた。
「は、はわぁ~。大惨事ですよ~」
 イハドゥルカ イルパメラ(aa0250)はおろおろしながら、膨らんだ自分の胸部を見て涙目になった。バンっと膨らんでしまった胸部は、いっそ凶悪な武器にさえ見えるほどだ。
『イハちゃんも私もすごいことになったわね。この状態で共鳴したらどうなっちゃうのかしら』
 元々スタイルの良いマモン(aa0250hero001)の胸も、かなり大きく膨れ上がっていた。その膨らみを見たイハドゥルカは、これから起こるだろうことに恐怖でわずかにふるえる。
「待って。わ、わたしの場合ただでさえ胸が大きすぎるのに、共鳴してこれ以上膨らんだりしたら……」
 マモンは笑いながらイハドゥルカを引きよせ、その唇にキスをした。二人が共鳴すると、イハドゥルカが危惧したとおりに胸がぼんとさらに膨らむ。パラミツ級再びである。
「はわぁ!? き、きゃあああああ!? 胸がもっと膨らんで~! うぅ……重すぎて動けませんよ~!」
 困っているイハドゥルカとは違って、アイリスはハイテンションであった。
「おねーちゃんとお揃いじゃ。ジーチャンもお揃いじゃな」
「アイリスちゃん……」
 煉華は、正護のほうをちらりと見た。
 彼は、思いっきり落ち込んでいた。自分の胸が、スイカのように膨らんだのである。男性として、落ち込むのは当然であった。しかも、今彼は胸が垂れる痛みとも戦っているのである。
「う……動きずらいよね」
 美香は、恐る恐る隣のベルゼール(aa0906hero001)を見た。もともとぽっちゃりな美香と違って、スレンダーなベルゼールは胸だけが異様に膨らんでいる。一方でぽっちゃりな美香は、色々と膨らんでいるために大変に動きにくそうだった。少し動いただけで、いろいろなところのボタンが「パツン、パツン」といって飛んでいきそうだ。
「あたしは、身軽よ」
「ううう……洋服がきつくなる原因は、お腹まわりだけだと思ったのに」
「……こんなに、おおきくなると……下着売ってるかな?」
 佐藤 咲雪(aa0040)はやる気なさそうにも、現実的なことを悩む。ここまで大きくなってしまうと普通の店頭では対応してくれないかもしれない。だとすれば、通販しかないのか。それはそれで、色々と面倒くさそうである。
「……こんなに大きくなるのは……勘弁して。それにしても……変な従魔」
『そうね。能力傾向としては妨害型といったところかしら。攻撃型と同時運用すると、身体能力の低下による支援役として使えるとは出来ると思うけど……』
 アリス(aa0040hero001)は冷静に分析するも、他の人間は冷静ではいられなかった。
「これ……胸ですよね。胸」
 稜は自分の膨らみ過ぎた胸を目の前にして、途方に暮れていた。正直な話し、これをどのように扱えば良いのかまったくわからない。恥ずかしいし、重いし、恥ずかしいし、恥ずかしいし……。
「……違和感全然ないね!」
『キヒヒ! 生まれた性別を間違えたんじゃねぇの?』
 ジャックの言葉に、稜は静かにショックを受けていた。リリアはそのとなりで、にこにことご機嫌である。
 咲良とジャックは、スマホで周囲の人間の姿を撮影する。無論、彼女達の胸も大きく膨らんでいたのだが、それよりも彼女たちは周りの記録が楽しいようである。
『こっちー。恭子ちゃんの写真もとって!』
 伊邪那美はアイリスに手伝いを要請し、恭也を拘束していた。なお、当然のごとく伊邪那美の胸も大きく膨らんでいいたのだが、それよりも彼女には大切な使命があったのだ。そのためには自分の胸が、ぶるんぶるんと震えても構わない。
『ふっふっふ……年貢の納め時なんだよ。この時の為に協力をお願いしたし、似合いそうな服も用意したんだからね。チャイナとフリフリ、どっちがいい?』
 伊邪那美の手には、パーティーグッツらしい包装に包まれた衣服が入っていた。サイズはLLであり、今の恭也のバストサイズでもなんとか着る事はできるだろう。色々なところが、ぱっつんぱっつんにはなるだろうが。
「くっ。珍しく準備に時間をかけると思ったら、こんなくだらない事にか。皆も目を覚ませ、俺の女装姿なんて見ても楽しいものじゃないだろ!?」
 恭也の叫びに、伊邪那美を手伝っていたアイリスはしばし無言だった。
『恭子化計画に、一歩前進だね』
 悪魔のような頬笑みで、伊邪那美は恭也の服を剥ごうとしていた。その顔に浮かんでいた笑みは、悪魔のものである。
「現実逃避している場合でもねぇぞ」
 龍哉の言葉に、ヴォルも頷く。
『被害が周辺に広がらないよう迅速な対処が必要ですわ……。もう、これ以上の被害を出さないためにも』
 ヴォルは、胸が膨らんだ龍哉をできるかぎり視界に収めないようにしていた。口の端がわずかに上がっているのは、笑いをこらえているからなのかもしれない。
「ああもう、乳がオモテー!! つか、普通に邪魔だな」
 膨らんだ乳を、龍哉は無造作にぶるんと震わせた。
 この近くには、男子校もあるのである。もしも、発生している従魔が学校に飛んでいったということになれば、高校生たちにいらないトラウマを植えつけることになりかねない。
「そうね。たしかに、邪魔だわ」
 稜は、女性らしい言葉遣いになっていた。
 自身の巨乳姿という事実に耐えきれなかった稜は、リリアに「自分は女性である」という暗示をかけてもらったのであった。リリアは、とても嬉しそうだった。
「動ける人は、先に行ってよね。動けない人は、ここで蛾退治だよ」
 麻陽はゴーストウィンドを使用する。「数匹捕まえられないかな?」と呟いており、その呟きを聞いた美香はブルームフレアで蛾を焼きながらも一匹捕まえる。こんなものなににつかうのだろう、と美香は不思議に思った。
 イハドゥルカもマビオギノンで魔法の剣を掃射して、蛾を攻撃する。煉華も天尾星林沖を振りまわし、風圧で蛾を仲間に近づけないようにした。皆、爆乳過ぎて動けなくなっているのである。これ以上大きくなったら――なにか大変なことがおこるかもしれない。
「……ん、めんどくさい」
 咲雪の呟きに、アリスはそっとアドバイスをする。
『わざわざ一体ずつ相手にする必要はないわよ』
「……ん、わかった」
 咲雪は、女郎蜘蛛を使用する。蛾たちは蜘蛛の糸に引っ掛かり、動きが止まる。
『面白しろいもんは見れたが、やっぱりウザいから死んどけ。高くも遠くも飛べない醜い蛾共……あー!! 邪魔臭せぇな、このデカ乳。やっぱ削ぐかぁ!?』
 ジャックはジェイミストライクを使用しながら、目に付いた蛾を仕留めていく。
『おい、そっち行ったぞ。きっちり仕留めやがれ』
「……ん、武器あてるの……やっぱり、難しい」
 咲雪はジャックが取り逃がした蛾を狙っていたが、ひらひらと舞う蛾は動きを止めないと狙うのが難しい。
『虫取り網、持ってきて正解でしょう?』
「……ん」
 咲雪は、どんどんと蛾を捕まえていく。
『こちらはお任せあれ、ですわ』
 ヴァルは、さっとFantome V1を取り出す。
『拙いながらも、お聞かせ致しましょう』
 もしも寮の奥にも蛾が入り込んでいればと思い、ヴァルは演奏を始める。幸いにして寮の奥には蛾はいなかったが、ヴォルの演奏は素晴らしい腕前であった。できたら、胸が膨らんでいないときに聞きたかった男性陣は思った。
「うわー! こっちきやがった」
 寮の奥に進むと、立てこもっていたと思われる新人リンカーたちがいた。
 全員がその姿を見た瞬間に、視線があっちこっちに行った。胸部が異様に膨らんだ男が武器を構える姿は、予想以上に滑稽だったからである。
 相手から見たら、自分たちも同じ姿なのだろうが。
 分かる、互いに被害者だ。
 だが、こみあげてくる笑いを押し殺すのはとても難しいことであった。
「いまっ! 笑っただろ、お前ら!!」
『キヒヒ! おーい、感謝しろよ。助けに来てやったぜー?』
「ジャックちゃん、せめて言葉と行動一致させようよ」
 ジャックのからかいは、新人リンカーの少なかった理性を完全に崩壊させた。
「うわー!! 本当に、マジで帰ってくれぇぇ!!」
 男たちは武器を構えて、リンカーたちに向かって行く。
 稜は、耳栓を使った。そして、すっとFantome V1を構える。女性にして見えない上品な仕草でバイオリンを構えた稜は、ヴィルに目配せをした。
『あら……』
 同じ武器を構えていたヴァルは微笑みながら、稜の演奏に合わせる。二人の音が絡みあい、演奏としてのレベルを上げる。たとえその音が凶器になりうる武器だとしても、二人が奏でる音は二人だけの芸術であった。
「つか、お前。ヴァイオリン弾けるのか」
 龍哉の疑問に、ヴォルは答えた。
『嗜みですわ』
 音によってダメージを受けた新人リンカーを、稜はロープで持ってしばりあげる。相手の巨乳が邪魔だったので、しばれたのは手足のみだった。
「これで、動けませんわね」
 稜は、完全に女性の仕草で笑う。
 そのしとやかな仕草を、ジャックはパシャリと写真に収めた。あとで本人に画像を送ってみたら、面白いことになるかもしれない。
 拘束された新人リンカーたちは、うなだれていた。彼らからしてみれば、死にたいほど恥ずかしい姿で拘束されているのである。ぐうの音もでないほどに、精神的なダメージを受けていた。そんな新人リンカーに、正護は大きくなった胸をさらに剃り返して男らしく彼らを鼓舞する。
「例え胸が大きくなろうと、平和を脅かす存在がいるなら……戦え! そのための俺達だろ!!」
 ぶるん、と正護の胸が震えた。
「お前たち……まがりなりにもエージェントだろ、戦士なんだろ! お前たちが戦わないで一体誰が人々の平和を守るというんだ!」
 ぶるるん、と正護の胸が震える。
 それを見ていた周囲の人々は、必死に笑いをこらえた。胸さえ揺れていなければ、実にいい場面なのである。胸さえ、ゆれていなければ。
 だが、正護の言葉に新人リンカーたちは感銘を受けた。
 正護のチチ揺れる姿――ではなく、HOPEのリンカーとしての信念が、折れていた新人リンカーの心を再び飛翔させたのである。
「う……胸が大きくなるなんて、大した問題じゃなかったんだな」
 新人リンカーは泣きながら己の行動を恥じるが、それについては詳しく突っ込む人間はいなかった。
 「胸が大きくなる」というのは大した問題であった、と今回のことで実感したからであった。体の一部が肥大化するだけなのに、こうも精神的にも肉体的にも戦いずらくなるものなのか。今回の依頼は、まさにそれを学ぶためのものだった。
 と、男性リンカーたちは思うことにしていた。
 そうでもなければ、やっていられなかったのである。
 一部男性は女装させられそうになるし、一部男性は自我を保つために女言葉を使用中だし、一部男性は胸を揺らしながら戦闘しなければならなかった。
「残りの蛾退治を手伝ってくれ。変えの武器がないならば、威力や範囲を殺してでも小回りを優先するしか手はないな」
 恭也は、新人リンカーたちに武器の持ち方から指南し始める。ちなみに、彼の胸はさらしを巻きつけることで、なんとか女性の平均サイズぐらいには落ちついていた。
『……せっかく、チャイナとか色々と用意したのに』
 さらしを巻きつけ、若干サイズダウンした恭也の胸を伊邪那美は残念そうに見つめていた。

●まだ、膨らんでます。
 新人リンカーとの協力もあって、蛾は討伐された。
「……ん、胸が大きいと……大変なのが、男に分かるのは……良いと思う」
 蛾を討伐した咲雪は、ようやく終わって清々したとばかりであった。彼女の胸もまだ大きなままであったが、彼女にとっては面倒な従魔討伐が終わったことのほうが喜ばしかったのである。だが、頭の片隅にはまだ下着の購入の件が残っていて、「……そっちは面倒」とは思っていた。
「あ、あの~男子の皆さん~酷い目にあいましたがおっぱいの大きい子のこと嫌いになったりしないでくださいね~?」
 イハドゥルカは涙目で懇願するが、正直な話し男子達はそれどころではなかった。蛾を退治しても、彼らの胸は元に戻らなかったからである。
「これ、研究したら美容用品とか、色々利用できないかな?」
 麻陽は、「う~ん」と考え込む。サンプルは捕まえてはいるものの、今回の急激なサイズアップは体に悪そうでもある。商品化するにも、かなりの研究が必要そうだ。
「商品化されれば、稜の可愛い姿がまた見れるんですね」
 麻陽のアイデアに、リリアは微笑んでいた。女言葉で戦闘を乗り切った稜が「ぎくり」と身を振るわせる。
「お腹だけじゃなくて、胸まできつくなっちゃうのよね……」
 美香も「う~ん」と悩んでいた。色々な部分がきつくなって洋服を買い直すのは、けっこうな出費なのである。ましてや年頃の女性ともなれば、様々な雑費で財布が軽くなりがちだ。閉められるところは、閉めておきたい。
「また爆乳が見られるんじゃな」
 アイリスは、床にこぼれていたりんぷんをそっと集めようとしていた。コレを持ちかえれば、自分のバストサイズも正護のバストサイズも思いのままになる。悪い笑みを浮かべていたアイリスの背後には、怖い顔をした正護が腕を組んで立っていた。
「……なにをやっているんだ」
 地獄の底から響いて来たような声に、アイリスは油の切れた機械のように恐る恐る振り向いた。
 正護の顔は、あきらかに怒っている。
 物凄い、怒っている。
「コレ……持ち帰ってたら、いつでもおねーちゃんとお揃いじゃ。楽しいと思うじゃろ」
「誰が、楽しいんだ!!」
「やめっ、やめるのじゃ。尻叩きはかんべ……」
 アイリスが言いきる前に、バシンという音が響き渡った。一拍置いて、アイリスの悲鳴は響き渡る。どうやら、渾身の力でお仕置きをされたらしい。
「なんでメリュちゃんには、効果が及んでないの!」
 煉華が涙目になりながら、メリュジールに訴える。
 彼女は、困ったように苦笑いするしかなかった。メリュジールもりんぷんを浴びたのだが、共鳴して戻ったら効果は煉華にしか現れていなかったのだ。むしろ、煉華の胸の大きさが悪化したともいえる。ちなみに、メリュジールは普段のサイズである。
『共鳴の時は煉華がメインだから、移ったんですかね?』
 真相は誰にもわからなかったが、煉華は泣き崩れた。
『キヒヒヒ。そんなに邪魔臭えなら、削ぐか?』
「やめてよ!? ジャックちゃん、目がマジだよ!?」
 ジャックの猟奇的な提案を、咲良もさすがに止めた。このままでは巨乳から絶壁にクラスチェンジする人間が増えてしまう。
「さて……覚悟はできているな? 伊邪那美……」
 仁王立ちになりながら、恭也は自分よりも遥かに背の低い英雄を見下ろしていた。伊邪那美も負けじと、背の高い自分のパートナーを睨むようにみている。まるで一騎打ちでも始めるような光景であったが、二人の胸部は「ぼよよ~ん」と膨らんでいた。
『衝動にかられてやった。ボクは無実だ』
 そのとき、近くにいた龍哉は恭也の堪忍袋の緒が切れる音を確かに聞いた。
 ブチっといったのだ。
「有罪に決まっているだろうが!」
 恭也の怒声が、響き渡った。
 それを聞いていた男性陣は「そりゃあ怒るよな」と恭也に酷く同情したのであった。

 一時間後――リンカーたちの胸は元に戻り、全員が胸をなでおろした。正義も元に戻った胸部を見て涙する。それを小鳥(az0013hero001)が後で、笑っていた。
「本当に……良かった。一生、あのままかと思ったわ」
『キャハハハ、正義は考え過ぎなのです』

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 魅惑のパイスラ
    佐藤 咲雪aa0040
    機械|15才|女性|回避
  • 貴腐人
    アリスaa0040hero001
    英雄|18才|女性|シャド
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • チョコまみレディ
    イハドゥルカ イルパメラaa0250
    機械|20才|女性|防御
  • チョコまみレディ
    マモンaa0250hero001
    英雄|22才|女性|バト
  • さようなら故郷
    鞠丘 麻陽aa0307
    人間|12才|女性|生命
  • セクシーな蝶
    鏡宮 愛姫aa0307hero001
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • 惑いの蒼
    天城 稜aa0314
    人間|20才|男性|防御
  • 癒やしの翠
    リリア フォーゲルaa0314hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 肉への熱き執念
    天間美果aa0906
    人間|30才|女性|攻撃
  • エージェント
    ベルゼールaa0906hero001
    英雄|24才|女性|ソフィ
  • 妬ましい豊満
    白雪 煉華aa2206
    人間|14才|女性|攻撃
  • ポーカーフェイス
    メリュジーヌaa2206hero001
    英雄|24才|女性|ドレ
  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336
    人間|20才|男性|回避
  • 家を護る狐
    古賀 菖蒲(旧姓:サキモリaa2336hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • Allayer
    桃井 咲良aa3355
    獣人|16才|?|回避
  • TRICKorTRICK
    ジャック・ブギーマンaa3355hero001
    英雄|15才|?|シャド
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