本部

救世主の救世主?

ふーもん

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
5人 / 4~6人
英雄
5人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/03/30 19:40

掲示板

オープニング

「この世の救世主になるべくして生まれた存在。それが私だ」
 今日もテレビのディスプレイ画面に映し出されたイケメンヒーロー。その名もジャックマン。
 お茶の間を騒がす人気者。彼は世間一般に最も名の知れた日曜日の主役であり、その日の朝は幼い子供達だけでなく主婦層にも人気があるとかないとか。
 無論、その視聴率は高い。芸能事務所に所属する俳優業と言う傍ら、ヴィランや愚神等と言ったいわゆる悪の権化に立ち向かうスーパーヒーローなのだから。
 肝心要のそのジャックマンの前に今日も世界の平和を揺るがす不誠実な輩が出現した。

「ククク。ジャックマン。今日こそお前の最期の時が来たようだ」
 今回の敵さん。その名も暗黒魔人アサッシン。暗黒組織『デルタミステリア』に所属する最凶最悪と謳われるヴィランの親玉だ。
 実力はさることながら世界征服を目論む手前、今目の前にいる目の上のたんこぶ的存在。ジャックマンにまさかの宣戦布告。
 しかしこの事態に黙っていないのが正義の味方ジャックマン――だけではなかった。
 各種スポンサーやメディア媒体。広告業からマスコミまでが大いにこの一大スクープに目を向け、資本主義の名の傍らその視聴率をキープし金を巻き上げようと躍起になっていた。
 もちろんそれにはジャックマンの活躍が何よりも重要だ。彼の華々しい華麗なストリートファイトによって華麗に相手の手下どもを難無く看破し、そして華麗に暗黒魔人アサッシンに正義の鉄槌を下すのだ。

 だが、この死闘に決着を付ける為に、黙っていない組織がもう1つだけあった。

 他でもない。H.O.P.E.東京海上支部だ。実は暗黒魔人アサッシンは以前から指名手配犯としてかなり長期的視野をもってして追っていた凶悪なヴィランだったのだ。――そう。数あるエージェント達が追っていた目の上のたんこぶ。幾多のエージェント達のライヴスを喰らい、その悪の道を淘汰してきた実力者。
 だからこそ今回ばかりはH.O.P.E.東京海上支部から6人のエージェント達が派遣された。もちろんその手の広告業。スポンサーやマスコミによる条件付きで。

 その名も『シックスメンズ』――窮地に立たされたヒーロー。ジャックマンの過去の旧友。つまり仲間として登場し、相手のヴィラン。アサッシンをそれこそ派手にやっつけるのだ。そしてヒーロージャックマンとの失われていた過去の記憶が明らかに!?
 ――と言う演出だ。

 無論、6人の派遣されてきたエージェント達にとってそんな事は関係ない。とにかく因縁の対決に終止符を打つ為に彼等はやって来るのだ。

 来たれ! 『シックスメンズ』! 正義の鉄槌を下すのだ!

解説

 えー。今回は何かと良い意味で忙しいヒーローの救済と言う立場で6人のエージェントを戦いの現場に送り込むのが目的です。ヒーロージャックマンは主役とは言え今回は完全に外野サイドで見物です。もしかしたらですがほんのチョッとだけ顔を出す――その程度だと予め断っておきます。
 そこでいくつか条件があります。

 ・ジャックマンの救済も目的の1つ。
 ・『シックスメンズ』と言う与えられた役職を無視するか、受け入れるかは個人の判断に任せます。
 ・演出によっては視聴率が上がったり下がったり。
 ・ヴィランはそこそこ強いです。過去にエージェントのライヴスを補食していただけの事はあります。
 ・派手な戦闘が理想的。物語の進行によっては広告費――いわゆるギャラが貰えるかも!?
 ・今回の主役はジャックマンではなく、『シックスメンズ』だと言う事を忘れずに。

 目立ちたいのなら、演出重視。戦いに専念したいのなら、ヴィランとの派手な戦闘を楽しんでもらえればなと思います。
 それでは皆さんの活躍をお待ちしております。

リプレイ


 ジャックマンを救出しにやって来たのは他でもない『シックスメンズ』――じゃなかった。

 ――5人の美少女達。その名も『ファイブガールズ』!
 彼女等はジャックマン及び『シックスメンズ』の古き良き旧友であり、悪の組織『デルタミステリア』に対抗する為、急遽派遣されてきたうら若き乙女の精鋭部隊だ。

 『ファイブガールズ』には1つの特徴があった。それは他でもない各々のイメージカラーをもじるトランプ柄の腕章を身に付けている事だ。

 蔵李・澄香(aa0010)はピンクのクラブ。榊原・沙耶(aa1188)は赤のダイヤ。小詩 いのり(aa1420)はシルバーのハート。アル(aa1730)は黄金色のスペード。東雲 マコト(aa2412)は赤のクローバー。
 それぞれの英雄――クラリス・ミカ(aa0010hero001)、小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)、セバス=チャン(aa1420hero001)、雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)、バーティン アルリオ(aa2412hero001)は基本腕章は装着していないが、クラリスだけは商業効果を高める為かバッチリとエメラルドのダイヤを決め込んでいた。

 さすがは芸能事務所のプロデューサー。クラリスは早速、自分達の名前を売り込む為に切磋琢磨していた。
 まずはメディアの方々に御挨拶程度の名刺交換。因みに澄香、いのり、アルは同じ事務所の仲間でありそれぞれがテレビ出演も経験している。
『ここはわたくし達、ファイブガールズの御活躍に何卒ご期待下さいませ』
 最早、ここまでくると何が目的だか分からない。しかしジャックマンがいない今、世界の平和を守るには彼女達なくしてその均衡は保てない。
 全くもって謎組織『デルタミステリア』の頭領。アサッシンもやってくれるもんだぜ。
 ガンバレ『ファイブガールズ』!

 既にスマホとインカムを人数分申請。複数同時通話アプリで通信は確保した。周囲にはメディアの方々がこぞってカメラを構えている。
 週末のお茶の間もこの急展開にテレビのディスプレイ越しに子供達はキャイキャイはしゃいでいるだろう。主婦層にはブーイングの嵐だろうが。
 しかし何で生放送なのか? 謎は深まるばかりだ。
 さて、お待ちかねの戦闘だ。今こそ『ファイブガールズ』の真価が問われる時。
 頑張って視聴率を稼いで高額のギャラをH.O.P.E.東京海上支部共々、請求しふんだくってやろう。
 何せ相手は指名手配犯のヴィラン。数多のライヴスを捕食した形跡もあるので油断は出来ない。

「今回は1人じゃあないぜ! 『デルタミステリア』! 『ファイブガールズ』! アッセンブル!」
 共鳴、リンクしたマコトは意気揚々と声高に叫ぶ。それに倣って他の仲間達も一気に集う。
「ボクらは『シックスメンズ』……じゃなかった、『ファイブガールズ』! ボクは小詩いのり! 皆の祈りを叶えるアイドル戦士だよ!」
 まずはアイドル戦士。小詩いのりがそう宣言すると、残りの味方も負けじと便乗する。
「『ファイブガールズ』が1人、魔法少女MajicAL出動! お手伝いなら任せて!」
 そしてアルが共鳴しながらそう勝ち名乗りを上げる。
「魔法少女クラリスミカ! 貴方のハートをくらくらりん。ジャックマン先輩からの要請で只今参上!」
 リンク時、光や星のエフェクトが勝手気儘に発動。視覚的に派手な演出効果をばら撒き聴衆メディアのカメラアングルをかっさらったのは他でもない澄香だ。
 さすがはヒーロー&アイドル勢。勢いに乗るとここぞとばかりに挑発的にエンターテイメントを楽しんでいた。
 因みにバックに控えていた沙耶は元々あまり乗り気ではなかったらしく、共鳴しないどころか無言を貫徹。拒否権を見事に敢行した。本人はバカバカしいと言った面持ちだ。
 その英雄の沙羅も今の所は傍観。もちろん戦闘には参加する。

 こうしてメンバーが勢ぞろいした所で戦いは始まる。この間に敵のアサッシンとその配下達が超アグレッシブな牽制を仕掛けて来なかったのは果たして奇跡なのだろうか?
 ある意味で場の空気を読んだ『デルタミステリア』とか言う悪者組織。大丈夫か?
「白日の下だろうと暗黒の夜だろうと如何なる悪も『ファイブガールズ』は逃がさん! 正義の鉄槌を受けてもらうぜ、アサッシン!」
 ――オオオ! と、これまた野次馬連中の外野サイドが唸る。どうやら視聴率の心配は無さそうだ。心配なのは唯一彼等の脳髄だろう。
 しかしバカなのは彼等だけではもちろんない。こんな白昼堂々ライブ中継の中、遂にアサッシンはその姿を現した。敵の頭領なのに。なんてザマだ。

「フフフ。『シックスメンズ』――じゃないのか? 『ファイブガールズ』。勇猛果敢な乙女の戦士達よ。その実力はいかほどか? まずはこの私アサッシンが創設した『デルタミステリア』の配下共にその実力を試させて貰おう」
 パシャパシャパシャ! と、カメラのシャッター音とフラッシュが時々ウザい。一体何の記事に使うつもりなのか? 地方新聞の片隅に載っても相乗効果は期待出来ないとは思うのだが。
 敵の頭領。アサッシンが指をパチン! と鳴らすと背後に控えていたアサッシンの部下達が複数出現。ヴィランの配下とは言え、その戦闘能力はまちまちで無論低い。
「お手並み拝見といこうか」

 ――『ファイブガールズ』VS暗黒組織『デルタミステリア』戦闘員戦開始!――
 しかし難攻不落の壁は意外と近くにあった。
 まずこの戦闘が始まる以前に沙耶がH.O.P.E.東京海上支部にて色々と情報の調査を行った所、分かった事がいくつかあったのだ。
 この『デルタミステリア』とか言う組織について――組織図を詮索した結果、彼等が過去のエージェント達のライヴスを補食出来たのは何も能力者がアサッシン1人だけだったからではない。
 今、目の前にいる戦闘員達も微弱ながらライヴスを扱える能力者だと言う事だ。もちろん弱い事には変わりないが、彼等の最も畏怖すべきところは基礎を主軸とした連携能力だ。
 彼等は微弱なライヴスを連携により1つに纏める術を心得ており、そこから絶大なライヴスを創造――そして1人、また1人とかつてのエージェント達は殺されていった。まるで複数のハイエナやピラニアにじわじわと食される様に。
 彼等『デルタミステリア』は自分達が弱い事を自覚していた。それ故に巧みに隠れながらも、追ってくるH.O.P.E.のエージェント達を1人1人慎重に抹殺してきたのだ。
 いわゆる暗殺の手口。プロの犯行。H.O.P.E.東京海上支部も彼等の様な集団に首を傾げ頭を痛めていたが、膨大な数の死者が出た訳でもなく、実際に彼等は――弱い――組織に属しているので指名手配書をある程度の額で適当にエージェント達を送り込む事によって事態は片付くだろうと踏んでいた。

 ――そう。彼等は弱い。だが、そのライヴスの中心部。全てのエナジーの根幹を支えるのが『デルタミステリア』の長――アサッシンだ。
 つまりアサッシンを倒さない限り、この最悪なライヴスの循環に歯止めが効く事は愚か、増大の一途を辿るのは最早説明不要だろう。

 ――そしてその真実を知っているのが今ここいる『ファイブガールズ』だったのだ。

 だからこそ油断は出来ない。いのりはライヴスゴーグルを取り出すと敵である複数のアサッシンの配下達のライヴスの流れを読み取った。
 ――やはりと言えば良いのか? そこには微弱ながらも不可視に流れ込むライヴスのオーラがアサッシンを主軸としてまるで巨大な大樹の根っこの様に枝分かれしていた。つまり、配下達に絶え間なくライヴスは行き届いていたのだ。
 ――皆、沙耶の情報通りだよ! 答えは残念ながらクロ!――
 頭部に付けていたインカムの先っぽを口に押し付ける様にして小声で仲間達に合図を送り込むいのり。
 ――な!?――
「やっぱりね」
「何が――やっぱり――何だ?」
 不覚なのかそれともわざとなのか挑発的に吐息を漏らす沙耶に対して少し苛立ちを覚えるアサッシン。
「いや、カレーライスとライスカレーの違いについて今、答えが出たのよね」
「ほう――それで? その答えとやらは何だ?」
「答えは――どちらも同じ!」
「ぶっ殺す! 問答無用! 皆の者! 奴等を殺っちまえ! ついでにライヴスも奪い取れ!」

 お見事挑発に乗った――いや、乗ってしまった――アサッシン一同だったが、最初に動いたのは『ファイブガールズ』の1人。ピンクのクラブとエメラルドのダイヤ。共鳴中の澄香とクラリスだった。
『こちらエメラルド。バックアップはお任せください』
 クラリスは澄香と視覚を共有し発声も可能。本来ここにいるべきはずの6人目として声で参戦。
「貴方のハートをくらくらりん。皆の背中は私が守るよ」
 澄香は素早く弓による牽制で相手を怯ませた。動きが一瞬止まったと同時に支援射撃。
 クラリスは沙耶同様、事前に得ていた情報――主に戦闘関連。アサッシン達のクラス、武器、スキル情報――を把握し皆に伝える。
「分かった!」
「了解!」
 仲間達との確認が取れた後、クラリスはオペレーターとしての責務を全うする為に全力を尽くす。そして――
『この戦い、犠牲無く勝たねば意味がありません。味方も敵もです』
 ――そっと、そう呟いたのだった。しかし胸ポケットに忍ばせておいた自前のスマフォでの戦闘撮影も忘れない。
 最前線の映像として後々、メディアに提出しギャラと知名度を稼ぐのだ。

「それにしても沙耶、カレーライスとライスカレーの違いって……」
「そうですね……料理にうるさいわたくしとしましては何とも甲乙つけがたき問題」
「――まさか、同じだったなんて! 驚愕!」
「お嬢様。ほどほどになさいませ」
 共鳴時のいのりとセバス=チャンは意識が混在してるとは言え会話はどうやら成立している様だ。しかし内容に緊張感が無いのはどうしたものか。

「油断してたら痺れちゃうよ?」
 アサッシンとその取り巻きの足元狙ってズドンと雷撃を放つ。ダメージ目的と言うか行動阻害が目的だ。放ったのは他でもない共鳴中のアル。
 共鳴中のアルは主武器『蛇腹剣』を隠し持ち、副武器の『雷神ノ書』で攻撃していた。
 本来の目的は奴等の頭領アサッシン。少しづつ接近して見計らって『蛇腹剣』に持ち替えると言う寸法だ。
 この行動に抜かりはない。どちらかと言うと連携重視。アサッシン以外は捕縛と言う作戦だった。

『デルタミステリア……別の事件で数回戦った相手だな。決着を着けてやろうぜ、マコト』
「心強い仲間とチームアップしたからね、まず負けないよ。明日からは『ファイブガールズ』の話題で世間は持ちきりさ」
 何やら意味深な心情を意識の裏で感じながら、第三の人格。自称ヒーロー。
 レッドスター『ヴァンクール』は真紅のマフラーをなびかせ、対戦闘員での敵陣営の中に切り込んでいく。

 ――そしてアサッシン達の迎撃が始まる。

「フン! なかなか出来そうではないか。お前達! 今回は相手が複数だ! 最初から全力で行くよ! フォーメーション『デルタMAX』!」
 アサッシンがそう叫ぶと、配下A、B、C、Dは準備万端と言わんばかりに両手を虚空に掲げ――
「フォーメーション『デルタMAX』!」
 ――と、叫んだ。
 配下A、B、Cが保持していた微量のライヴスが空中に拡散し霧の様に霧散したかと思うとそこにありえない現象が起こった。
 空間が歪んだ。
 そしてそこに異世界の穴が発生し、謎の奇怪な3つのエムブレムと共にそのエナジーが首領アサッシンへと吸い込まれていく。
「『竜』!」
「『鬼』!」
「『虎』!」
 どうやら3つのエムブレムはそれぞれ『竜』『鬼』『虎』を表しているらしい。つまりこれは召喚術の類かも知れない。
 しかし問題はそこでは無い。その奇妙に歪んだエナジーがアサッシンの身体の内部へと侵入したのだ。
 その時だった。
「グハッ!!」
 ――と、アサッシンは呻き声を上げた。吐血し、身体中が何かに支配されたみたいにゴキゴキと蠢く。
 チョッと子供達には見せられないシーンだったので沙耶はすかさずテレビクルー達にカットのジェスチャーを送る。これは事前に打ち合わせて置いた事なのだ。
 もちろんテレビクルー達は引き下がった。こんなもんちびっ子達に見せてトラウマになったりしたら視聴率どころかクレームの電話が殺到しかねない。

 そしてアサッシンは自らのライヴスのオーラを極限にまで高め、その状態を保持する事に専念。
 それと同時に周囲にいた4人の配下達がライヴスの結界を創り『ファイブガールズ』をアサッシンに近付けない様に仕向けた。
 もう言うまでもない事だが、どうやらアサッシンは自分の中に召喚された『竜』『鬼』『虎』と、融合する為に四苦八苦している様だ。
 ライヴスによる融合――だが、それは時として自分自身の破壊にも及びかねない。それには高い精神力と強靭な肉体、何より強力なライヴスのオーラの持ち主でなければ意味が無い。

 それを阻止せんばかりに動いたのは共鳴中のマコト――いや、ヴァンクールだった。
「そうはさせるか!」
 怒涛乱舞による勢いで敵陣に切り込んだヴァンクールは結界を形成していた4人を見事に――いや、あっさりと倒した。
 しかし創造された結界は消えない。そのままの勢いでアサッシンに立ち向かおうと突っ込んだのは良いが、見事に弾き返された。
「クッ! なかなかやるね! だが、ヒーローは7回倒れたって、また起き上がるんだよ!」
「大丈夫?」
「痛くない?」
 そう言ったいのりと沙羅は片手を結んでもう片方の手を天にかざしてケアレイ。
「傷はボクらが癒やすよ! 皆、頑張って!」
 しかしそれも束の間の休息だった。
 突然、結界が途切れ――強大なライヴスを得たアサッシンがそこにいた。

 おまけにライヴスを残していた配下Dも立ち上がり――
「我等が『デルタミステリア』アサッシン様に栄光あれ!」
 そう言い残してAGWを起動。巨大な斧がライヴスメモリーを通じて出現。それを機にライヴスを使い果たした。パタリと倒れる。

「さて――準備は良いか? 『ファイブガールズ』。ここからが本番だ」
 『竜』『鬼』『虎』――のライヴスを獲得した凶悪なヴィラン。その姿は竜の身体に鬼の頭。そして虎の四肢を持った完全な怪物だった。
 アサッシンの本領発揮だ。しかも巨大な斧を担いでいる。
 もちろんそれは配下Dが残した置き土産。ライヴスメモリーを通じて送り込まれたAGW。鬼に金棒とはこの事か。
 因みにこれに関してメディア連中は、逃げ腰になりながらも何かの演出の類だろうと割り切っていて――
「凄いぞ! これは!」
「一大スクープ!」
「ホラ皆、どいたどいた! カメラズームアップね!」
 ある意味、ヴィランよりも厄介な存在になりつつあった。

 ――『ファイブガールズ』VS暗黒組織『デルタミステリア』アサッシン戦開始!――
「ここからが本当の戦い――か」
 ヴァンクールがそう言うと、最早ヴィランと言うよりは愚神や従魔に近い姿でアサッシンは巨大な斧を片手にこちら側に突っ込んできた。
 その起動力は正に虎の様な俊敏さで、誰の目にもとまらぬ速さ。テレビクルーのカメラなんか追い付けるはずもない。
 しかし、さすがはH.O.P.E.東京海上支部直属のエージェント達。
 『ファイブガールズ』の1人、アルは少しづつ距離を詰めて間合いを取っていたのが功を奏したのか踊る様にその攻撃を紙一重でかわし台詞を交えながら攻撃。
「ボク達だけ見て? うわきは嫌!」
 ジェミニストライクによる分身攻撃で敵の視界をシャットアウト。分身はすぐに消えたがその一瞬が命取りだ。幻覚に惑わされて逆上した隙を衝いてもう一発。
 縫止によるライヴスの針をすぐさま発動。相手の動きを一瞬止める。
 そのタイミングを見計らいオーガドライブを発動したのはヴァンクール。
 捨て身の一撃をアサッシンの懐目掛けて喰らわせる。
「――グッ! フフ。やるな!」
 極限のライヴスを高めた一撃。だが、さすがは変身後のアサッシン。竜の鱗に包まれた身体は予想以上に硬い。
「そっちこそ!」
 ヴァンクールはどこか嬉しそうだ。心底バトルを楽しんでいる。
『アサッシン様。この決闘はジャックマン様に倒されるためですね?』
「うん。親切に宣戦布告して、組織の頭が前線参加じゃね。私でも気付くよ」
 思い込みかそれとも真実か? そのカバーストーリーを模索し、追求するクラリスミカ。
「何の話だ? 私はジャックマンを倒す為に……世界を侵略する為に――」
 しかし無視を決め込み、クラリスミカはその流れでメディアが報じる物語を強行。このままではお茶の間の子供達と主婦層に申し訳ないと言う思いもあったのだろう。
「なおさら死なせる訳にはいかないね」
『澄香、いのり、沙羅。三重奏殺の使用を許可します』

「今よ! ここ大事な所!」
 インカムを装備していた沙耶はカメラアングルを集中させるように指示。いかにも演出的にド派手な物語のクライマックスだ。

 合体技――三重奏殺。
 いのりに幻想蝶より聖剣サザンクロスを投げ渡し、いのりは沙羅にグリムリーパーを投げ渡す。
 沙羅といのりがそのままの状態でAGWを起動。2人がアサッシン目掛けて突進していく中、クラリスミカが背後から敵目掛けてブルームフレアを発動。
 強大なライヴスの爆炎の中、AGWを2つ喰らった容赦ない攻撃に遂にアサッシンは力尽きた。
 その爆発は演出の為なのか最後はハート形に縁取られていた。

 ――戦闘終了後――
 メディアのカメラの前で『ファイブガールズ』が言った事は――

「映画の様な戦闘だったって? あたしたちが映画のようじゃあない。映画があたしたちのようなのさ」
 最高の決め顔でマコトは言った。パシャパシャとカメラのフラッシュが光る。
 このままだと『ファイブガールズ』の名は次の日から本当に世間に広まる予感がする。
 そんな思いをマコトとアルリオは抱いた。自称ヒーロー『ヴァンクール』に果たして平穏な時は来るのか?

「何で『スペード』を背負っているか? ボクが得意としている獲物は本当はスペード『剣』なんだもの」
『文字通り、魔法少女ね。アルちゃん』
「おねぇさん黙っててって言ったでしょ!!」
 華麗な戦いに見事な活躍で貢献したアルは性別不明の美女、雅の横槍にご立腹。
 今にも蛇腹剣で脇腹を刺さん勢いだ。

「アサッシンさん。もう悪い事しちゃダメだからね? それと……ジャックマンさん!」
 何か意を決した様にしてカメラの前でその場にいないジャックマンに伝えるべき言葉を必死で紡ぐ――いのり。
 因みにテレビは生放送の全国中継。誰もが涙ぐむ感動のラストシーン。
「お嬢様……」
 思わず感慨深げになるのも無理はないセバス=チャン。
「……その。サイン下さい!」
「お嬢様。ほどほどになさいませ」

「全く。戦いに参加するよりも疲れるわ。カメラアングルの指示なんて」
「最高に退屈だよね」
「あ、ここん所、カットで宜しく」
「カットでね」
 完全な生放送だと言う事を2人とも完全に忘れていた。
 しかしその台詞を行った時が最高の決め顔になった沙耶と沙羅だった。

「そうそう。ジャックマン先輩から伝言を預かってました」
『罪を償え。それに終わりはないが、お前が本当に死すべき時に勝負してやる。との事です』
 合体技――三重奏殺でブルームフレアまで思いっきり全力で放っておいてそれはないだろうとは思うが、澄香とクラリスのサブストーリーはそこでエンディングを迎えた。
 果たして視聴者側にはどう映っただろうか? 彼女等の芸能プロダクションに明日はあるのか?

 因みに全員が裏でギャラをもらった事は最早、言うまでもない事だろう。(了)

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • トップアイドル!
    小詩 いのりaa1420
    機械|20才|女性|攻撃
  • モノプロ代表取締役
    セバス=チャンaa1420hero001
    英雄|55才|男性|バト
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • プロカメラマン
    雅・マルシア・丹菊aa1730hero001
    英雄|28才|?|シャド
  • 血まみれにゃんこ突撃隊☆
    東雲 マコトaa2412
    人間|19才|女性|回避
  • ヒーロー魂
    バーティン アルリオaa2412hero001
    英雄|26才|男性|ドレ
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