本部

蜂蜜を採取せよ

saki

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 5~10人
英雄
6人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/03/24 19:53

掲示板

オープニング

●某パンケーキ店
 この店は平日休日問わず行列ができる人気店で、勿論雑誌にだって度々掲載されている。
 その雑誌によると、このパンケーキ店の一番人気は「蜂蜜のパンケーキ」である。パンケーキにたっぷりと蜂蜜がかかっており、正に絶品である……と、そんな風に書かれてある。
 そんな人気店の店長を務める男は、切羽詰まったように「皆様には蜂蜜の採取をお願いしたいのです」と言った。そして、「このままでは、お店を開くこともままなりません」と続けた。
「私の店ですが、実はパンケーキはそれなりに種類があるものの、注文されるものの半数以上はこの「蜂蜜のパンケーキ」が使用されています。私はこの蜂蜜のお蔭で、人気と呼ばれるお店になったようなものなのです。しかし、店に置いてあるものが尽きてしまいそうで、私はもう、どうしたら良いのか……」
 頭を抱え、この世の終わりであるかのような表情で男は言う。多少大げさに見えなくもないが、この男にとってはそれだけ重要なことなのである。それはもう、絶望感しか抱けない程に。
 蜂蜜はその種類も多いい。嗜好品の類であるからか、その種類は優に何百と存在している。近い物はないのかと尋ねるが、男は首を振り、「実はこの蜂蜜は従魔が関わっているんです」と言った。
「この蜂蜜、ミリタリ・ホーネットの巣から採っているものなんです。従魔を飼うことなんてできる訳がなく、その為飼蜂場でどうこうすることもできず、市場に出回っているのも非常に少ない。つまり、希少で高価なものなんです。
 だってそうでしょう? 従魔が何処に巣を作るのかなんて解るわけがないじゃないですか。なので、それを専門にしている能力者の方がいらっしゃるのですが、今年は外れ年のようで例年よりも採取量が少なく、それどころかそれがテレビや雑誌で紹介されることによって買い占められ、業者が抱えている在庫もなくなってしまっているような状態です。
 店の蜂蜜も残り僅かで、このままでは「蜂蜜のパンケーキ」をお出しすることができず、お客さんもいなくなってしまいます」
 店長は「お願いします」と深く頭を下げた。
「どうか、蜂の巣を取ってきてください」

解説

●目的
→蜂の巣(蜂蜜)の採取

●補足
→ミリタリ・ホーネットの巣を持ち帰るのが依頼の内容です。
 蜂蜜を取り出す工程は難しいので、蜂の巣を持ち帰るまででOKです。
 その後は店長が業者にお願いして蜂蜜を取り出し、蜂の巣は蜂の巣でスイーツに利用する方向になります。
→持ち帰る巣の中に一匹でも蜂がいたら大変です。きちんと蜂がいないことを確認して持ち帰りましょう。
→ミリタリ・ホーネットの討伐が直接的な依頼ではないので、全てを殲滅する必要はありません。
 ただ、巣の中にはほかのミリタリ・ホーネットよりも大きくて強力な、気が荒い女王蜂がいるので気を付けましょう。
 女王蜂はミリタリ・ホーネットよりも二回り大きく、デクリオ級。針に毒を持っているので要注意です。
 この女王蜂が全体の指揮を執っているので、この女王蜂の排除は必須です。この蜂が居る限り、他の蜂も巣に居続けます。
→山のどこかに巣を作っているので、店長は正確な位置まで知りません。探すところから始めてください。
 ミリタリ・ホーネット自体が1~2mのサイズなので、巣もかなり大きいです。運ぶのは大変なので、運ぶ手段も用意しましょう。

リプレイ

●軽トラの上にて
 依頼を受ける際、鹿島 和馬(aa3414)が事前に、件の蜂蜜のパンケーキを食べさせてほしいという一同の願いを伝えると、店長は「構いませんよ。皆様の分の蜂蜜をとっておきますね」と了承してくれた。
 流石に本日の依頼で入手したものは取り出すのに少し時間が必要な為、今日明日分の蜂蜜のパンケーキ分だったら間に合いそうだということで、そちらから報酬の一部として用意してもらえる形となった。

 その依頼の内容を確認した後、石井 菊次郎(aa0866)の「ミリタリ・ホーネットの目撃情報の有る山地をHOPEに問い合わせて絞り込みましょう」という言葉や、テミス(aa0866hero001)の『蜂蜜か樹液か分からぬが、集める対象の物質を用意して誘き寄せるか? まあ、勝手に分泌するのかも知れぬが』という言葉で、一度準備を整えてから依頼に臨もうという形になった。勿論、この軽トラもその一つである。
 トラックは二台。一台を六鬼 硲(aa1148)が運転し、もう一台を土御門 晴明(aa3499)が運転している。店長と話し合った結果、こちらに蜂の巣を乗せてそれを引き渡せば遂行という形になった。

 エミル・ハイドレンジア(aa0425)はきょろきょろと辺りを見回した。英雄のギール・ガングリフ(aa0425hero001)は幻想蝶の中に入っており、自身はどこかに腰を落ち着けようと場所を探しているのである。
 そして、「ん、くるしゅうない、くるしゅうない」と言うと柔和な雰囲気をした九字原 昂(aa0919)の膝上に陣取った。昴は「おっと」と驚いたが、満足げなエミルに微笑んだ。
 解体用に昴が持ち込んだ工具に囲まれた空間に居ると、秘密基地のようであり、それがまたエミルに満足感を呼んだ。それを見て、昴は「蜂蜜のパンケーキ、楽しみだね」と話しかけると、「ん、たのしみ」と目を輝かせた。

 依頼の蜂蜜について、「ホーネットなのに蜂蜜…俺は、これは樹液由来では無いかと考えます。山の中に1,2メートルの蜂の需要を満たすだけの花の蜜が有るとは思えません」と菊次郎は推測した。それにテミスは冷静に『まあ、従魔だからな…蜜に需要が有るとも思えぬ。単に素体の習性をなぞっただけでは無いか?』と返し、「…そうかも知れませんが」と菊次郎は思案した。

 硲は共鳴した状態で軽トラックの運転をしている。依頼を受けた際に、「蜂の巣ですが
蜂がいない事が確認できる程分解して採取するというのは如何でしょうか?」という旨を伝え、それについてメンバーの同意を得ることができた。
 それを踏まえ、自身は地図やスマートホンを準備し、万全の状態で依頼に臨んでいた。

 エステル バルヴィノヴァ(aa1165)は今回の依頼について、「それほど希少品だと、この任務でクリアしたとしても続かない気もするけど…」と評した。その言葉に、『ふふ、まあ、良いじゃ無い? お裾分けに預かれそうだし』と泥眼(aa1165hero001)は穏やかに言うが、エステルは「でも、専門のリンカーが匙を投げる状態で巣なんて見付ける事が出来るのかな?」と溜め息を吐いた。

 依頼内容を聞いた時、「蜂蜜パンケーキの為に頑張るぞー! おー!」と張り切っていた桃井 咲良(aa3355)にジャック・ブギーマン(aa3355hero001)は『別にオレ等が食えるわけじゃねぇだろ』言われ、「…報酬でちょっと分けて貰えないかなぁ?」『知らねぇよ』というやり取りをしていたが、他の面々の言葉もあり、報酬として約束を取り付けられたことに咲良はご機嫌だった。気分は正に、「蜂蜜のパンケーキの為に頑張るぞ!」である。

 店長に蜂蜜のパンケーキを食べさせて欲しいとお願いした和馬であったが、矢張り、「蜂蜜のパンケーキが大人気なんだとよ」『それはそれは……上手くいったら、食べさせてもらえる?』というやり取りを俺氏(aa3414hero001)としていたが、それが叶った今、「期待を胸に、まずはやることやってこようじゃねぇの」『りょ。トレジャーの次はハニーをハントだね』と気合を入れた。

 車を運転する晴明の横で、天狼(aa3499hero001)は楽しそうに揺れていた。
「従魔が作った蜂蜜ねェ」
『人気があるということは余程美味いのだろうか』
 期待に目を輝かせる天狼に晴明は苦笑し、「だと良いな」と返した。

●探索
 軽トラで行ける所まで行くと、そこからは巣を探して探索である。降車の際、昴の上から下りたエミルは、今度はギールの肩の上で船を漕ぎ、『こうしている時だけは、静かで助かるんだがな…』とギールは呟いた。

 鷹の目の発動によって、昴と和馬の放った鷹はあっと言う間に姿が見えなくなった。しかし、資格情報は共有している為にその位置は手に取るように解るし、自在に動かすことだってできる。
 散開し、通信機で連絡を取りながら手分けをして巣、もしくは手がかりを探すことにした。そして、従魔の巣が特定したら気が付かれない位置で待機。全員が揃ってから女王蜂の殲滅に乗り込む手筈である。


「ん、山狩りの、時間。ぶーん…♪」
 共鳴したエミルは楽しそうに、まるで某ロボット漫画の少女のように全速力で木々の間を駆け抜けていく。
 蜂の個体からして、巣はかなりの大きさだろうと想定し、それを探して駆け回っているのである。目的のモノを探す為、エミルは更に速度を上げた。


 硲は「そうですか。では、引き続きお願いします」と言い、通信機を切った。そして、その情報を地図に時間も込みで正確に記入していく。その様はまるで探偵のようであり、逐一最新情報が更新されていく。
 情報は武器である。しかし、それは正確に把握してこそだ。
 硲は確認した情報に加え、自分の情報も地図に書き込んだ。


「何か見つかりましたか?」
 菊次郎に問われ、昴は「いえ、まだ、何も」と答えた。
 昴は上空から蜂の姿や、樹上に巣が無いかを確認しつつ、地上からも樹木の陰に蜂や巣が見つからないか探していた。現在は、それに集中できるよう、菊次郎も一緒に探索しつつ護衛も兼ねたような形である。
「俺もアロマ芳香器で……と考えたのですが、どうやら少し違うようで、ホーネットつまりスズメバチは蜜を集めません。肉食ですから。それで、今回蜂蜜としているものですが、スズメバチは幼虫に餌を与え、幼虫からは栄養液を貰い糧とします。ミリタリ・ホーネットの幼虫はその栄養液を多大に分泌するようで、それが溜まったもののようです」
 言ってしまえば気持ち悪いが、ミツバチだって胃に溜めたものを出しているのだからある意味どっこいどっこいなのだろう。
「こういうのって、言葉にしない方が美味しくいただけますよね」と、昴は困った風に口にした。


「蜂の大きさからして、巣は結構大きいと思うんだけど……」
 エステルはそうぼやくが、巣も従魔の姿も依然として見つからない。
 今回の任務は女王蜂を優先的に攻撃していくつもりである。だが、その本拠地が見つからなければ何もならない。
『ここにあるのは確かなのだから、地道にやりましょう』と言う泥眼と更に目を凝らした。


 咲良とジャックはその俊敏さを活かし、周囲を探索していく。身軽なのもあって、それは曲芸の域にも達した動きであった。二人が別れる前、「ジャックちゃんはそっちお願いね、見つけたら連絡してよ」『別に倒してしまっても構わねぇんだろ?』「構うよ! 大問題だよ! やめてよ!?」『冗談だっつーの、キヒヒ』という会話を交わしているのが若干の不安要素ではあるが、大丈夫だろうと思いながら咲良は足を速めた。


 通信機を切り、「大分絞れた筈なんだがな」と和馬は頭を掻いた。
『探し物している時って、なかなか見つからないけど、捜していない時に出てきたりするよね』
 俺氏の言葉に「まぁな」と和馬はぼやくと、上空を探索していた鷹の高度を少し下げ、木々の合間を縫うようにして飛行させた。


 共鳴した状態で、晴明は耳を澄ます。ミリタリ・ホーネットの羽音がしないか確認する為だ。そこから巣の特定ができたら万々歳であるが、鷹の目の使用者が二人いるし、他の面々も探索しているのだから、そちらが見つける方が先かもしれない。
「ソラにパンケーキを食わせてやりたいし、見つけねぇとな」と、晴明は長い髪を乱しながら駆けた。

●遭遇
 和馬の鷹の目がミリタリ・ハーネットを捉えたと連絡があった。そしてそれと同時刻、別の場所でもエミルが従魔を発見した。
 その報告を受け、硲は二人にはそれぞれ従魔の跡を追うことと、他の面々をその場所へと誘導するように連絡を入れた。
 その誘導に従って集合すると、エミルと和馬が既にその場所に居たことから、二人が追いかけた従魔がここに入ったということで間違いないようだ。
 それは天然の洞穴のように見えた。人が一人通ることなら出来そうな亀裂が入っている。
 それを見て、菊次郎が「あの大きさから言って巣は十数メートルでしょう。地上にあればすぐに発見される筈です。恐らく一般のオオスズメバチの様に地下に設営されるのでは無いでしょうか?」と口にした。
 地下かどうかは不明であるが、ここに二体も入って行ったということは、この付近に巣があると考える方が妥当だろう。
 まだ共鳴していない者は敵に備えて共鳴する。
 音を立てず忍び込むように進むと、大きな巣が見えた。
 戸建の一軒家のような大きさである。
 周囲は土に囲まれ、上の方からは若干の光が漏れ、不自然に空いた空間から、土砂崩れか何かがあって出来た空間に巣が作られたようである。
 誰ともなく、「大きい」という声が漏れた。これだけ大きいとなると硲が口にしていたように、蜜の溜まった部分を中心とし、ある程度の大きさまで小さくしないと運ぶのは困難だろう。
 蜂というものは、女王蜂が居る所に集まる習性がある。女王蜂しか卵を産むことができないから、仕方がないのかもしれない。……ということで、女王蜂を撃破するという方向性で決まった。これには参加した面々の大半が女王蜂撃破を優先的に狙うということで、発見した人が発見次第攻撃という方向で落ち着いた。

 エミルは「ん、塞ぎ塞ぎ、塞ぎ塞ぎ」と、可能な限りウレタン噴射機を使って巣の穴を塞いでいく。高所の方は厳しそうな為、できる範囲ということになるが、それでも出入口の数を塞ぐことができるのは相手の出方を少なくする為かなり有効だ。
 それと並行し、硲はライヴスフィールドを展開させる。これにより、巣の中の蜂を弱らせる作戦である。
 ある程度準備が済んだ所で、蜂の巣に向かい、昴は大きな音を立て、咲良は銃剣付ライフルで巣の付近を撃ち、晴明のハウンドドックが火を吹く。
 大きな音が鳴り響く。
 それにより、ミリタリ・ホーネットが数体出てきた。穴を塞がれたことにより、一度に現れる数は少ない。そこを狙い、攻撃を仕掛けた。


 昴は手近にあった石を巣に投げつけて刺激すると、飛び出した従魔を接近して仕留めていく。
 通常集団で活動する蜂の類は、多い場合だとその巣に千匹近くもいるとされている。この巣の大きさからしてそこまで数はいないだろうが、数の多さは想定できるだろう。
 ジェミニストライクを発動する。放心を付与すると、次から次へと敵に攻撃を仕掛ける。
 孤月を振るうその様は、その謳い文句に相応しい、月のように煌めく刀身が次から次へとその優美さを見せつけた。
 そして更に次の敵をおびき出すと、次はすかさず女郎蜘蛛し、動けなくした所で更にその刀身の美しさを見せつけるように振るうのだった。


 仲間の死角へと、ミリタリ・ホーネットのその毒針が猛威を振るおうというところで、硲は巻物「雷神ノ書」を発動する。
 雷が閃光のように走る。それにより、ピンポイントで従魔を撃破する。
 硲は医学に秀でているし、スキルもその手のものに秀でている。しかし、怪我はしないに越したことはない。
 戦況を見定め、的確に支援するのはある種の才能であろう。
 雷撃を巧みに操ると、先陣切って従魔と交戦する仲間を支援する為、その能力を如何なく発揮した


 メンバーの奮闘により、出てくる従魔の数がある程度減った所で、エステルはライトアイを発動した。
 巣の中に侵入する為である。
 外にいるミリタリ・ホーネットの殲滅、硲にはライヴスゴーグルで外から支援をお願いすると、菊次郎、エステル、咲良、和馬、晴明は巣の中へと足を踏み入れた。


 内部は流石に人間サイズの従魔が通るだけあり、背の高い面々は頭が非常に心許無いが、頭が掠るか掠らないかの状態で進むことができた。
 ライトアイのお蔭で難なく進むことができる。
 退路確保の為にエステルは「オオスズメバチはたった一匹で2万羽の蜜蜂を殺戮する様ですが…彼等はどの程度の事が出来るのでしょうか?」と言い、壁を槍で突いたりしてみた。今は大半が外に出払っている状態だから大丈夫だろうが、これで中に従魔が居た場合は大変なことになっただろう。
 進んでいる間、硲が適宜内部構造を索敵することにより、その報告によって途中に何度か戦闘があったものの難なくやり過ごすことができた。
 そして、開けた空間へと辿り着いた。
 外や中で戦闘したミリタリ・ホーネットとは違い、それよりも優に二回りは大きく、そして獰猛さを滲ませる個体が居る。
 女王蜂だ。
 こちらを確認すると、涎を垂らさんばかりに突進してくる。それに続き、周囲に居た通常種よりも一回り程大きな個体が突っ込んでくる。
 針から毒を滴らせている。


 それを避けると、すぐさま菊次郎はサンダーランスを放った。
 一閃。
 縦に走る高速の雷によって、焼けるような臭気と共に、数体の従魔を屠る。
「これだけ狭隘だと、このタイプの魔術は使い出が有りますね」
 そう言いながら、女王に向かって銀の魔弾を撃ち込む。


 そこに迫る他の従魔をエステルが蜻蛉切で払いのける。
「やっぱり、女王蜂を狙って居るって分かるのかな?」 
 そう言いながら、ランスマスタリーによって強化された槍を振るう。
 かの本田忠勝と同名の槍であるだけあり、その切れ味は凄まじい。そして、その長さも6mと半端ではない長さである。
 そのリーチを上手く利用して牽制を務める。


『キヒヒヒヒ♪ 嬲り殺しにしてやんぜ』と、楽しげな声が響く。
 咲良はマビノギオンに装備を切り替えると、遠距離から攻撃を開始する。その際、毒刃も使って女王や周囲の従魔の体力をじわじわと削っていく戦法だ。
 普段毒を使っている方が毒にやられるのだから、これ程厭なものもないだろう。
『尽敵螫殺雀蜂~ってか? あ、コレ本来お前らの台詞だわな、やられてんのはそっちだけどよ、キヒヒヒ!』と、矢張り楽しそうな声が響いた。


 それぞれが戦っている中、晴明は女王蜂に急接近した。一息に距離を詰めると、太刀を振るう。
 毒針は確かに脅威である。しかし、それは和馬のサポートによって難なくクリアできた。
 縫止が動きを阻害する。
 ダメージを与えることはできないが、的確なタイミングでのサポートは何よりも有り難い。
 通常なら触れていたであろう毒針を晴明は避け、そのまま全力で太刀を振り抜いた。
 疾風怒濤が決まった。
 息も吐けないような連撃が繰り出され、黒漆太刀が残像で黒い影しか見えない早業だ。
 それでも生命力が強い分、まだ女王蜂に息がある。
 そこに、それまでの攻防の間にトップギアにて攻撃の威力を溜めていたエミルのオーガドライブが炸裂する。
 その小柄な体躯からは想像がつかないような強烈な一撃が入り、女王蜂が吹っ飛んだ。
「ん、さよなら」
 そう言ったエミルの言葉がやけに大きく響く。
 文字通り、さよならを告げる一撃であった。
 その様を見て、すぐに咲良は朱里双釵に切り替え、縫止からジェミニストライクという流れでスキルを発動させて殲滅した。


 女王蜂が倒すことに成功したが、まだ蜂蜜の採取が残っている。
 巣を切り分けるにしても、ここではやり辛い。一度外へと出ることにした。


 外に出る途中、一体の従魔とも遭遇することはなかった。
 硲が言うには、女王蜂の撃破とともに中に居た従魔達が一斉に逃げて行ったとのことだ。その傍で、既に巣を運び出す準備をしている昴は流石と言うしかない手際の良さである。
 共鳴を解いた晴明と天狼は巣を見上げながら、「にしても、巣でけェな」『これだけでかければ、蜂蜜たっぷりだな』「どうだかなァ」と会話をしていた。
 そう、これから巣を運び出さないといけないのである。

 これだけの大きさをそのまま運ぶことができるわけがなく、手分けしながら解体を初めながら、「蜂がいないか複数人でのダブルチェックは必須だな」と和馬は口にした。そう、最初に硲も言っていたが、従魔を街の中に入れるわけにはいかないし、確認は大切だ。
 ある程度の大きさまで切り分けた所で、エステルが「きゃっ」と悲鳴を上げてその場から離れる。周囲の面々も慌てて近づくと、無数の幼虫の姿があった。これにはやはり、距離をとってしまう。
 これは誰であろうとも悲鳴を上げずにはいられないだろう。しかし、白い煙によってそれが覆われる。
 エミルが「もくもくぶしゅー、まっしろしろ」と言いながら、容赦なく消火器を使用したのである。まだ弱い個体である幼虫には効果覿面であり、それによって一掃したのだ。ご愁傷様である。
 それから少しして、「あった」と声が上がった。
 巣の大きさに対するとかなり小さいが蜜溜まりがある。一般の蜂蜜のような黄金色ではなく、それよりも薄い色をした液体であった。
 それに従魔がいないことを全員で確認すると、それを周囲の巣と一緒にシートで覆って漏れないように密閉する。
 硲のトナカイのソリに乗せ、巣もスイーツに利用するという話の為、それは昴のリヤカーへと乗せた。
 菊次郎の黒の猟犬に障害物を食べさせ、荷物が通れるだけの穴を開けると、崩れてくるのかどうか全員で警戒しながら、力を合わせて軽トラまで引いていく。


 二台のトラックの片方に戦利品を載せてしっかりと固定すると、のう一台のトラックに残りのメンバーは乗って出発した。運転は勿論、来た時と同様である。

●報酬
 店に着くと、店長にトラックごと巣を預けて任務は完了となった。その際、店長がこれでもかとばかりに腰を低く頭を下げていた。
「約束です! 蜂蜜パンケーキ分けてください! 食べてみたい!」と咲良は目を輝かせ、その横で『図々しい奴だなオイ、キヒヒヒ』とジャックは声を漏らす。
 しかし、既にエミルは個室の席につくと、お冷を持ってきた店員にしれっとした態度で蜂蜜のパンケーキを注文していた。
 其々が席に着くと約束通り店長はメンバーに蜂蜜のパンケーキを振る舞い、ちゃっかりと菊次郎は店長に「良ければ蜂蜜を分けてください」とお願いし、お店にあったもので良ければと小瓶に分けてもらっていた。
 其々がパンケーキに舌鼓を打つ。
 一番人気というのが頷ける味である。従魔の……ということを危惧していたが、いらない心配だったようである。

 無心で口を動かしてパンケーキを食べるエミルの口元をギールがすかさずギールが拭う。その様は明らかに手慣れていて、日常的に行われていることなのだろう。そうされながらも、んと頷き、「あと、おうどんも」と言うのだから、『主はまだ食べるのか……』と呆れた。
 それを見ながら、昴は笑顔のまま「蜂蜜のパンケーキが食べられて良かったね」と話しかけている。

 パンケーキそっちのけで小瓶に入った蜂蜜を眺め、「これは異界のシナモンとのマリアージュが楽しみですね」と恍惚の表情で呟く菊次郎にテミスは呆れたような視線を向け、『食べないのなら、我が食べてしまうぞ』と言えば「いえ、食べます」と慌ててフォークを握った。

 硲は一人で黙々とパンケーキを口に運んでいたが、「これは美味ですね」と、呟いた言葉にその気持ちが凝縮されているようであった。
 それを聞き、「僕、六鬼さんって甘い物苦手なのかと思った」と咲良は漏らした。『何でそう思ったんだ、オイ』とジャックが尋ね、「だって真剣な顔して食べているんだもん」と返した。
 すると、六鬼は「別に嫌いではありません。しかし、そう見えていたのなら作り手にも失礼でしたね」と答えた。それを聞き「真面目だね」『だな』と咲良とジャックは頷き合う。

「ふう、美味しければ全て良しね」と、言いながらエステルは上品にパンケーキを口に運ぶ。その横で、『これには何グラムの蜂蜜を使用しているのでしょうか?』と泥眼は首を傾げ、あの分量のどれくらいに相当するのかと考えているようであった。

「蜂蜜のパンケーキ、美味いな」と言う和馬に、俺氏も『あぁ、いけるな』と頷いた。
 周囲を見渡すと、和気藹々とした感じで舌鼓を打っている姿が見える。
「いやぁ、打ち上げっていう感じでこういうのも良いな」と呟き、「にひひ♪」と特徴のある笑みを漏らした。

「あー、やれやれ、終わった終わった」と、一息を吐いていた晴明に、『ハルちゃん、蜂蜜のパンケーキ食べたい』と届いたパンケーキの催促をする。それに「はいはい」と頷き、渡すと食べながら『あと家でもパンケーキ作って』とさりげなく要求してくるが、「それとこれはまた別の話だな」と晴明はそれをあっさりとかわした。

 こんな感じでにぎやかなままお開きになり、何人かはエミルとともにうどん屋にも行くようである。本日の任務はこれにて完了である。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 死を否定する者
    エミル・ハイドレンジアaa0425
  • 天啓の医療者
    六鬼 硲aa1148
  • 初心者彼氏
    鹿島 和馬aa3414

重体一覧

参加者

  • 死を否定する者
    エミル・ハイドレンジアaa0425
    人間|10才|女性|攻撃
  • 殿軍の雄
    ギール・ガングリフaa0425hero001
    英雄|48才|男性|ドレ
  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
    人間|25才|男性|命中
  • パスファインダー
    テミスaa0866hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避



  • 天啓の医療者
    六鬼 硲aa1148
    人間|18才|男性|生命



  • 悠久を探究する会相談役
    エステル バルヴィノヴァaa1165
    機械|17才|女性|防御
  • 鉄壁のブロッカー
    泥眼aa1165hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • Allayer
    桃井 咲良aa3355
    獣人|16才|?|回避
  • TRICKorTRICK
    ジャック・ブギーマンaa3355hero001
    英雄|15才|?|シャド
  • 初心者彼氏
    鹿島 和馬aa3414
    獣人|22才|男性|回避
  • 巡らす純白の策士
    俺氏aa3414hero001
    英雄|22才|男性|シャド
  • エージェント
    土御門 晴明aa3499
    獣人|27才|男性|攻撃
  • エージェント
    天狼aa3499hero001
    英雄|8才|?|ドレ
前に戻る
ページトップへ戻る