本部

花見に参加しよう

saki

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
7人 / 5~10人
英雄
7人 / 0~10人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2016/03/17 22:42

掲示板

オープニング

●連絡通達
 集合場所:現地
 持ち物:自由
 食事:現地調達
 注意事項:場所取りはしてありますが、食べ物は各自が現地での収集になります。
        花見会場の裏の山で従魔が目撃されています。
        肉はそちらから入手しましょう。
        また、器具は貸し出しがあるので持ち込まなくて大丈夫です。
        塩結びと野菜は地域の方からのご厚意でいただいております。

●現地にて
「あーっ、マイクテスト、テスト、聞こえていますか?」
 拡声器によって声が響き渡る。最初はキーンとした音だったが、調整されて少し声が割れている程度である。
 今年は例年よりも早く桜が咲いた為、こうしてこの花見もいつもよりも早い。しかし咲いているといってもまだ早咲きのものだけだ。その為、我々以外に花見をしようという者の姿はまるでない。
 満開には程遠いものの、宴会とはそこに食べ物や酒があって騒げれば良いのである。風流も何もないが、花より団子いうわけだ。ここに集まっている者はそんな考えの者達である。
「暖かくなったことにより、従魔が山から下りてくることが多くなりました。そこで有志を募り、従魔を倒しついでに花見もして宴会をしようという、まぁ、お財布にも優しく、そして地域に貢献という形でこの会は発足されております。尚、肉は我々が従魔を倒して得るという現地調達という形ではありますが、おにぎりと野菜に関しては現地の方の厚意を受け、この会は成り立っていますので、従魔を倒した後は存分に宴会として楽しみましょう」

解説

●目的
→従魔を狩り、宴会で食べましょう

●補足
→一応ボランティアという形で有志を募り、この会は発足されている為に報酬はとくにありません。
 完全に厚意で成り立っている会ということになります。
→従魔を倒した後は花見とは名目ばかりの宴会なので、どんちゃん騒ぎをして楽しみましょう。
→肉は自分たちで狩ってくる以外の入手法がありません。しっかりと狩って、自分の食い扶持を確保しましょう。
→最近山を下りてくるようになった従魔は、ミーレス級の熊の従魔です。
 リンカーからすると物凄く強いというわけではないのですが、通常の熊よりも大きく凶暴です。
 しかし、地域の方からすると恐怖の対象です。
 他にもミーレス級の鹿や兎などといった動物が食べ物を探してちらほらとやって来るので、なるべく狩りましょう。

リプレイ

●移動中
 御神 恭也(aa0127)は「動物を狩るのは知識位で、実戦は少ないんだがな……」と、周囲を見回しながら呟いた。
 木の上から従魔を狙い撃つという作戦の為、目ぼしい木を探している最中なのである。
 その横で『春の山は山菜の宝庫だよ。楽しみだな~』と、伊邪那美(aa0127hero001)が楽しそうに山菜を探し、目を光らせた。


「風情はねぇが、偶にはこういうのも悪くなかろう」と、ライフルを担ぎながら麻生 遊夜(aa0452)は言う。その背中にしがみ付き、尻尾を振って『…ん、おにくー!』と言うユフォアリーヤ(aa0452hero001)は上機嫌である。
 ユフォアリーヤを背負い、ソリとロープを携えて「一石何鳥になるやらだなぁ」と思案していると、『…ん、いっぱい狩る』とやる気満々な声が上がった。


 傍から見てもそのテンションの高さが窺えるシエロ レミプリク(aa0575)は「ヒャッホーイ! 狩りの季節だぜー!!」と絶頂であり、それにナト アマタ(aa0575hero001)は『……(ヒャホー』と手を挙げて答えた。
 ……とは言いながらも、シエロは案外堅実である。自身の足の速度を考慮し、ギリースーツを身に纏った待ちの戦法だ。風下であり、獲物を見つけやすい場所を要検討中である。


「鬼丸! ここでがっつり食えるかどうかで、桃色DVD第3作が買えるかどうかが決まってくる…! 心して狩るぜ!!」『いよぉぉっしゃぁ!』
 心のままに叫ぶ五行 環(aa2420)と鬼丸(aa2420hero001)のノリは完全に男子高校生のそれである。年齢もそうだが、叫んでいる内容があれだ。
 そんなある意味メーターの吹っ切れたテンションのまま、二人は意気揚々と進むのであった。


 狐と狼の差こそあれど、耳は生えているし、年齢的に親子と間違えられても不思議ではない二人組である。
「こんなに早く花見で一杯出来るとはなァ」と、既に飲む気満々な土御門 晴明(aa3499)に対し、こちらは食欲旺盛に『お肉たくさん食べれるのか!? ふふふ、それはいいな』と天狼(aa3499hero001)は笑んだ。


「花見で従魔狩って食うぞ! あと酒だ酒!」
 既に酒でも入ってハイになっているかのような麻端 和頼(aa3646)であるが、これが彼の標準である。そんな姿を見て華留 希(aa3646hero001)は『え? コレ、ボランティアで従魔退治って…ま、いっか』と結論付けた。
 日本酒を樽で持参する程のお祭り気分ではあるが、従魔を倒して食べて、騒ぐがこの会の発足なのだから何ら間違ってなどいないのであった。

●会場にて
 宇津木 明珠(aa0086)と金獅(aa0086hero001)は会場に残り、宴会の為の準備を進めていた。一応、会を発足するに当たり、裏方に回るスタッフはいるものの、人手が多くて困ることはない。
 差し入れとして、塩結びと多量の野菜が届けられた。これだけの量があれば、バーベキューをするのにも申し分のない量である。
 それを金獅は『おー。旨そうなおにぎりじゃん。ありがとな』と笑顔で受け取る。大柄な派手な男に初めは驚いていたが、その笑顔で警戒が緩和されたようで「どういたしまして」と笑んだ。
『この野菜あんたが作ったのか? すげーつやつやしてんじゃん。超旨そう。あっ、そうだ。これってどうやって食うのが旨いんだ? 折角旨そうだから、あんたがおすすめの食い方でくいてーと思ってさ』
 そんな楽しそうな声をBGMにし、明珠は調理場所や網や鉄板などといったものをセッティングしていく。用意はされていても、組み立てる者がいなければすぐに使用することなんてできないからだ。
 明珠は良い人を演じている傾向が少なからずあることを自覚しているが、その目論見はやはりその外見と相まって有効であり、「大変だろう? 手伝うよ」と声をかけられ、「ありがとうございます」と務めてにこやかに応じた。

●山中にて
 銃声が響き渡る。
 それと同時にスコープの先に居た鹿の従魔が倒れた。
「ハンターと言うよりもスナイパーと言った感じだな……」
 木の上から下り、その首を落とす。山菜を採りに別行動をしていたが、戻ってきた伊邪那美は『ちょっと残酷な感じがするけど……』と眉を顰めた。
「血抜きは確りとしないと味が落ちる。下手に頭を残して置くと血が抜け切らずに不味くなるが、良いのか?」
『へ~、そんな理由があったんだ……。恭也の趣味じゃなかったんだね』
「お前は俺をなんだと思っているんだ」
 それで……、と恭也は伊邪那美に首尾を尋ねる。
『タラの芽にふきのとう、行者ニンニクにノビル……。沢山採れたよ』
「そうか。なら、血抜きを終えたら下山し、調理に取り掛かるか」
 その言葉に、伊邪那美はうんと頷いた。


「満開になった頃にでも、ガキ共つれて花見しねぇとな」『…ん、楽しみ、だねぇ』
 のんびりと会話していた遊夜とユフォアリーヤだったが、「普通の動物と違って向こうから来てくれるから楽で良いよな」『…ん、狩り放題』と共鳴した。
「新しい相棒の初御目見えだ、俺達の目から逃れられると思うなよー?」『…ん、この程度じゃ、外さない
 遠目に熊の従魔を発見するとロングショットを放つ。それに驚いたのか、熊の従魔が獲物としていた鹿の従魔が逃げようとした所にテレポートショットが炸裂する。
 脳天を撃ち抜く一撃――ヘッドショットである。
 味を落とさない為にも一撃で仕留めるのが鉄則だ。
 前言の通り、木陰に隠されたソリの中は血抜きを済ませた獲物が積み重なっている。
「鳥獣の旬は秋だが……大きさも、肉質も悪くないな」
『…ん、お肉いっぱい』
 頷き合うと、新な獲物の血抜きをすべく近くの川へと足を進めた。


 獲物が来そうな場所でスナイパーライフルを構えて待機していると、射手の矜持で索敵をしていたナトの報告により、シエロはそのスコープの先に獲物の姿を確認した。
 兎の従魔だ。
 ギリースーツを纏っていることと、風下なのが幸いしてこちらには気が付いていない。
 引き金を引く。ブルズアイによって極限まで高められた精度の狙撃により、一撃で兎の従魔は倒れた。
 それを回収すべく身を起こそうとするが、ナトが指差したその先に鹿の従魔の姿を認めた。銃声に警戒しているようではあるが、随分距離があっただけに、銃声には気づいても位置には気が付いてないようだ。
 唇を舐めると、再びスナイパーライフルを構えてブルズアイを発動する。
『……(キュイーン』「ヒャハー! 撃ちまくりぃー!」
 頭部と一撃で貫く、研ぎ澄まされた銃弾が当たった。
 二人は二体の従魔を回収し、その後の同じ戦法で更に獲物を狩り、「いやー狩った狩った! とりあえずこんなもんかな♪」『……(タイリョウ』と意気揚々と下山した。


「うぉぉぉぉっ! 狩りまくるぜー!」と、環の雄叫びのような声が響く。それに『おぉ!』と同意しつつも、『そーいや、坊主って殺生は駄目なんじゃねぇのか?』と鬼丸は疑問を口にした。
 すると環はあっさりと、「今日は坊主やめた!」と口にする。その言葉に思い当たる節があり、鬼丸はあぁと声を漏らした。
『そういや、おまえ簡易式坊主だったよな…』
 聞いている者が居たとしたら首を傾げたくなるような会話をしながらも、双眼鏡などを駆使し、環と鬼丸は従魔の足跡を捜していく。会話は気が抜けたようなものではあるが、真剣と書いてマジと読める程の気迫が籠っている。
 この時期の熊は熊穴に居ることが多いことも考慮し、熊穴付近を索敵を忘れることなく確認する。
 山に入ってすぐ、「野菜食べるメンバーも居たし、採れたての山菜食べてもらいてぇよな」と言う環の言葉で、見つけ次第山菜を採っている。根こそぎはいけないから、勿論適度にである。そして、他のメンバーと通話を取っていた環が戻ってきた。
「他の奴らは大量だとよ。これは、俺らも頑張んなきゃな」
 これは由々しき事態である。目的を達成する為にもやらなくては……と、ある種の決意の元共鳴し、穴熊猟を開始する。
 熊の従魔がこの穴の中に居るのは確認済みだ。
 穴の前でわざと大きな音を立てると、当然ながら熊が警戒しながら出てきた。そして、こちらを確認して身構えた瞬間を見極めの眼で文字通り見極め、疾風怒濤から流れるようにして一気呵成を決めた。
 作戦が成功し、あっさりと熊の従魔を倒すことに成功する。その瞬間的な戦いに、「やべ、ちょっとハマりそう」と環は笑んだ。


 怒涛乱舞を展開する。
 それによって一体の従魔は倒れたが、もう一体傍に居た鹿は晴明の登場に逃げ出す。しかし、足をやられたようで、晴明はすぐさま鹿の従魔に真正面からヘヴィアタックを決め込むと、容赦のない一撃によって倒れた。
「こんなものか?」
 今仕留めた従魔以外にも兎の従魔も数羽狩っているし、そろそろ十分だろうと判断をして会場まで戻ることにした。
 その過程で山菜も採取していく。葉ワサビやコゴミ、ワラビやゼンマイ、フキノトウなど、普段だったらあまり目にしないものだ。野菜の差し入れはあるとのことだが、矢張り、そこでしか食べられないものを食べるというのが醍醐味というものである。
 晴明は会場に狩ってきた従魔を下すと共鳴を解き、ソラには先程採った山菜を見本として持たせて採集を頼むことにした。
 それに『おう!』と元気に返事をし、意気揚々として山に入った姿を「大丈夫か?」と晴明は若干の不安を覚えながら見送った。


「ぶっ殺すぜ!! おらおらあ!!」と、共鳴した和頼の声が響き渡る。多大な物騒さを含んだ言葉を口にしながら、オフェンスブーストによって強化された一撃を兎の従魔に加える。
『…そんなに興奮しない! まだ弱いくせにさ』
 呆れるような、咎めるような希の声に、「…ちっ! 従魔ってのは何でAGWじゃねえと効かねえんだよっ!」と和頼は喚いた。
 それは尤もである。和頼は喧嘩であったら文句なしに強いだろう。しかし、リンカーとなれば話は別だ。駆け出し中の和頼からすれば、従魔との戦闘は苦戦を強いられるものである。
『まだ初めだから仕方がないよ。これから、これから』
 自分が狩ることができたのが兎の従魔のように比較的弱いものであることに不満が隠せず、和頼は呻いた。
 共鳴を解除すると、『木の枝と、あと茸や筍も見つけられたら採っていこうよ』と希に促され、和頼は不服そうにおうと頷いた。

●調理
 従魔の狩りを終えた面々は戻ってくると、明珠と金獅によって整えられた調理場にて早速調理を始めた。


 血抜きした獲物を熱湯に潜らせ、毛を剥ぎやすくしてから捌く。人間が食べやすいように改良された家畜と野生のものの肉はまた違い、獣の臭さを取る為に香辛料を多目にして味を付ける。
 簡易な燻製装置を組み立てると、恭也は燻製チップとして桜の枝や倒木した物がないか話を聞きに行った。それを伊邪那美は『ねえ、桜なら周辺に沢山あるんだし枝を少し切って貰えば良いんじゃないの?』と訝しがるが、「あのな……桜伐る馬鹿梅伐らぬ馬鹿と言ってな桜は切った場所から病気になって駄目になって、梅は無駄な枝が出来るから切った方が良いんだ」と恭也はその問いに答えた。
 その傍ら、山菜の調理もする。タラの芽やふきのとうは天ぷらに、行者ニンニクやノビルは軽く茹でておひたしや酢味噌にあえる。その出番を取られ、『これ位ならボク一人でも出来ると思うんだけど?』と伊邪那美はむくれるが、「用心に越した事は無い。油で火傷を負う事は無いかもしれんが、火事を起したくは無いだろ?」と意に介さない。
 肉を燻製用に小さく切っていると、『ねえ、熊の右手って蜂蜜が沁みて美味しいって本当なの?』という伊邪那美の問いに、「値段は左右で違うが、味は変わらないらしい上にさほど美味いとは聞かないがな」と答えた。『そうなんだ……美味しいなら狙って行こうと思ったのにな~』「なら、胆嚢を狙ったらどうだ? 漢方の一種で体に良いらしいからな」


 ナイフにチェーンソーと、完璧な装備で処理を終えた肉を前に、「さて、どうやって調理しようか」と遊夜は呟いた。
 戦果は上々だ。勿論ここでも調理はするが、肉を前に、「うむ、ガキ共への話のネタと土産にゃ十分かね」『…ん、皆喜ぶ』「しばらく肉には困らねぇしな、食費が浮くのは何よりだ」という会話が上がる程である。持って帰るにも十分の量であった。
「熊肉や鹿肉は網焼きで、兎は器具借りて燻製やロースト……丸焼きで頂くとするか。鹿や兎はから揚げも美味いと聞くが……」
 調理法を口にしているだけで、ユフォアリーヤは遊夜にくっついてぶんぶんと尻尾を振っている。それに苦笑し、調理に取り掛かる。
 他の者よりも早く食べ物を口にできるのは、味見という名の特権だ。勿論ユフォアリーヤは目を輝かせてお相伴に預かる。
 肉に「ふむ、塩胡椒だけでも十分だな」とコメントすれば、『…ん!』と喜色満面で口をもぐもぐとご満悦である。「本当は熟成させた方が良いんだが…ま、美味いから良かろう。他の人に勧めたり貰ったりしつつ楽しむとしよう」
 そして別の料理にも箸を伸ばし、「鍋や煮込みもやはり美味いな」と頷いていると、『…ん!』としか言わないユフォアリーヤの応えがあった。


 明らかに獣道である、普通なら通らないような道から「たっだいまー! 大漁大漁よーん♪」とシエロは登場した。その様は山の主のようだ。沢山の葉や小枝が付着し、某公共放送で登場するキャラクターのような様になっている。
「今度はお花見!」と、既に狩りを満喫したシエロは上機嫌である。
 狩ってきた獲物は血抜き済みで、今度はこれを下拵えする。ナトが試みてみるが、小柄なナトにこの作業はとてつもなく難しい。
「お? 苦戦中? ここはこうやってだねえ」
 言うなり、手慣れた手つきで刃物を入れていく。あまりにも鮮やかで、ナトは『……(スゴイ』と目を見開いた。
「狩りといい、何でこんなに手馴れてるかって? そこはほら、女子力だよ」
 にたりと笑むシエロは正に、女子力(物理)である。
 肉の下拵えを完璧にこなすが、それ以上する気のない姿を察したのか、会を手伝う女性陣が調理に名乗りを買って出た。
 それに「ありがとう♪」とシエロは任せ、「やっぱり、こういうのは地元の人に任せるのに限るよね♪」とご満悦だ。それにナトも『……(ワクワク』と目を輝かせた。


 採ってきた山菜は天ぷらを揚げている人に託し、環はナイフで手早く獣を捌いていく。
 その様を見て、『うげぇ…よくやれるな…』と鬼丸は眉を顰めて舌を出すが、環のDVDへの執念は凄まじく、「俺に任せろーっ!!」と本職宛らのナイフ捌きを披露している。
 毛皮は勿論のこと、熊の胆は高価な価格で取引される漢方の一種だ。これを上手く取り出し、売って皆で山分けしたいと思っているのだ。そう、全てはDVDの為。DVDの為に。
 無事に胆を取り出し、ブロック単位に切り分けると、鬼丸と共に食べやすいサイズ――スーパー等で売られている肉のサイズ程度へと切り分けていく。これは焼き肉用だ。
 こうして、二人はDVDの為に……と、大量に肉を切り続けるのであった。


 晴明に山菜を採ってくるように指示されていたソラが戻ってきたが、自慢げに持ってきたものを見て晴明は「おい、ソラ、ちゃんと見たのかよ」と溜め息を吐いた。
 その言葉に、『え、違うの?』と首を傾げる。
 山菜を見分けるのは難しい。似ているものもあるし、実物を見せられたからといってすぐさま見分けるのは非常に困難なことである。
 だから晴明は根気よくソラに教えていく。
「ちげぇ。これが正しいヤツな」と山菜を見せ、「ここが違うだろう」と違いを教えてやった。
 すると何となく解ったのか、『むぅ、難しいな。だが、今度は間違いなく持ってきて見せる』とソラは元気よく駆け出し、その背中に、「期待しねェから確実に持って来い」と声をかけた。数量よりも安全が第一なのである。
 ソラを見送り、「さて……」と晴明は呟く。
「山菜は、和え物や素揚げの天ぷらがいいよな。でもって、肉は焼き肉か? 調理も簡単だし」
 調理法を決めると、晴明は目の前の獲物に包丁を入れた。


 和頼が料理を担当し、希は追加の木の枝を拾うついでに茸や筍も採集に向かった。戻ってくる間に少しは拾えたが、まだ数が足りないのである。
 ワイルドな外見にそぐわず、和頼は料理が得意だ。特に得意なのはシビエ料理。燻製した鰹節と、醤油を瓶に入れ冷蔵庫で一日寝かした物を――これは付けて食べるとスモーク風味が楽しめる醤油――を保冷バッグで持参しているという点でも料理上手なのは窺える。
 他にも、周囲の面々を見回して他の料理状況を確認して、燻製を作ろうとしている人には木片集めの手伝いを買って出るなど、口調とは裏腹に気配りをしてみせる姿に周囲の面々は生暖かい目で見ていたことを和頼本人だけが知らない。その様はあたかも、思春期の息子を見る目であったと後に参加者は語る。
 捌いた兎を薄切りにして酒塩コショウをしていると、希が戻ってきた。
『お待たせ。何か、生暖かい目で見られている気がするけれど、何かしたの?』
 首を傾げた希に、「知らねぇ」とぶっきらぼうに返す。
 受け取った茸と筍を薄切りにすると、燻製醤油で炒める。途端、何とも言えない香ばしい良い匂いが立ち込め、食欲をそそる匂いに『美味しそう』と希は歓声を上げた。
 絶対にこれは美味しいだろうと思わせる一品である。既に、腹が空腹を訴え出す程だ。
「うっし、酒の肴の完成」

●宴会
 地域からの差し入れは別として、狩ってきた従魔を料理してそれがシートいっぱいに並べられている。作り手が別の為統一感はないが、料理を持ち寄って宴会といった感じなのでこれはこれで有りだろう。
 肉:7、菜:2、米:1……と、配分が大分肉に傾いているが、沢山動いた後は肉を腹いっぱいと考えるような面子が多いから問題は全くないだろう。寧ろ、肉を狙い、まだかまだかと涎を垂らさんばかりにしている面々がいる。その姿はお預け状態にされた犬のようだ。
 そんな雰囲気を察してか、スピーカーで拡張された声が響き渡る。
「まぁ、小難しいことをぐちぐち言っても詰まらないので、取り敢えずお疲れ様でしたということで、いっぱい騒ぎましょう」
 その乾杯の声に合わせ、そこかしこで「乾杯!」という声が響き渡る。
 和頼が振る舞った酒に大人組が「くぅ~」とばかりに喉を唸らせ、子供組やアルコールが苦手な人には明珠と金獅がすかさずフォローへと向かう。
 空いた皿を見てはつまみの補充へ向かい、酒瓶やごみもきちんと地域の法則に則って分別していく。その様は給仕の達人のようである。
 しかし、「そんなことしなくても良いから、こっちで一緒に飲もうよ」という酔っ払いが明珠に絡むが、笑顔でかわす。そこにすかさず金獅が『俺を混ぜてよ』とフォローに入り、明珠は周囲への対応へと向かった。

 伊邪那美は忙しく立ち回る明珠を見つけると、『あっ、いたいた。全然食べていないよね』と皿を差し出した。そこにはてんぷらやおひたしが載っている。
『お肉、駄目だったよね。これ、ボクが作ったんだよ。良かったら食べてよ』
 そんなきらきらとした、褒めて欲しそうな視線に負けて明珠はお相伴に預かることにした。見ると、そのシートには何時の間にか金獅が恭也に話しかけていた。流石に恭也は酒を飲んでいないが、流石男子とばかりに皿には肉が載っていた。
「では、お言葉に甘えて……」
 箸を口に運び、今か今かと言葉を待っている伊邪那美に「美味しいですよ」と伝えると、『良かった』と破顔した。
『本当はね、ボク一人でやるつもりだったのに、恭也ってば酷いんだ。一人でできるのに……』
 頬を膨らました伊邪那美に微笑し、明珠はもう一口箸を運んだ。

『お肉、お肉』と、次から次へと皿を開けていくユフォアリーヤに遊夜は「そんなに慌ててなくても大丈夫だから」と苦笑した。
 明らかに尋常じゃない量を口にしているユフォアリーヤを見て、希が『凄い』と言葉を漏らした。
 その手の反応に慣れているのか、「ごめんね。こいつ騒がしくて」と遊夜は言うが、希は『いや、凄いです』と感心した目を向けた。
 一緒に来た和頼のお手製肴を受け取り、「あぁ、これはどうも」と遊夜は口にする。それを見て、『んっ』と口を開けたユフォアリーヤの口に入れてやれば目を輝かせた。遊夜も「これ、本当に美味しいな」と言えば、「別に」と和頼は小さく答えて酒を煽る。
『ごめんなさい。照れているだけだから』と希が言い、そこから仕事やらこういう時にはどうすれば良いかという話へとなり、そんな会話をしながら希は不意に『…こういうのって、何か、イイな』と呟いて桜を見上げた。

「食うぞ! 騒ぐぞ! 歌とか歌うぞー!」と、シエロはハイテンションである。同じく宴会を満喫中で、お肉を幸せそうに食べるナトを見ながらのおにぎりがこんなに美味しいなんてとある種の感動をした。
 その視線を感じたのか、『……(シエロモタベヨー』とナトはおにぎりを差し出し、「ああん! もっちろんだよー!」と女子力とは何だったのかという食べっぷりを見せる。
 そしてある程度食べて満喫すると、今度は、「楽しんでいるかー!」と環と鬼丸に絡みに行った。
 こちらはこちらで凄い食べっぷりである。そしてそんな食べっぷりを披露しながら、感想は『熊肉ってなんか独特だな!』「DVDぃぃ~っ!」と言うのだから肉への感想がかなりおかしい環である。彼にとっては、肉を沢山食べて食費を浮かし、DVDをとう意味合いの方が高いから仕方がないだろう。
『あー…報告書さえなかったら酒飲むのになー……って、おまえ何こっそり飲んでんだよ!? オレにも飲ませろっ!』
 シエロから酒を注がれた環は未成年であるのにも関わらず良い飲みっぷりだ。色欲、殺生、肉食、酒…。何をして彼を僧と呼べるのだろうか。
 しかし、本人は「でもいいの♪ DVDが買えるから♪ ヒック♪」とご満悦だから問題ないのだろう。

 料理に手を伸ばし、ソラは『あ、これ、美味いな』と満面の笑みを浮かべた。
 その姿を見ながら酒を飲み、「ソラ、あんまりはしゃぎすぎるなよ」と言う声明は完璧に保護者スタイルである。
 それに『む、わかってるぞ。そんなに子供ではない』と反論するが、転びそうになったのを晴明の尻尾がすかさずキャッチする。
「そう言って転びそうになってるやつはどこのどいつだ」


 そんなこんなで宴会もお開きになり、明珠の指示の元片づけを始めていく。
 立つ鳥跡を濁さずだと、晴明も片付けへと加わる。「来たとき以上に綺麗になるくらい、ゴミが落ちてないかも確認するんだぞ」とソラに注意を促すそのフレーズは、小学校で習うようなそれである。
 出来上がった面々もいるものの、全員で片づけをすればあっと言う間に終わった。これは、そういう風にしやすいように予め用意をしていた明珠のお蔭であるといえるだろう。
 そして、これまた用意の良いことに明珠が残った料理を容器に入れ、参加者へと配っていく。あれだけの肉や山菜が全て消費されることはなく、これは其々でどうぞ……というお土産だ。
 他にも、狩った獲物を自宅へ持って帰る面々も居て、来た時以上の手荷物で帰って行く様は通年の恒例である。
 こうして、今回の花見は無事に幕を下ろすのであった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
  • エージェント
    五行 環aa2420

重体一覧

参加者

  • Analyst
    宇津木 明珠aa0086
    機械|20才|女性|防御
  • ワイルドファイター
    金獅aa0086hero001
    英雄|19才|男性|ドレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • LinkBrave
    シエロ レミプリクaa0575
    機械|17才|女性|生命
  • きみをえらぶ
    ナト アマタaa0575hero001
    英雄|8才|?|ジャ
  • エージェント
    五行 環aa2420
    機械|17才|男性|攻撃
  • エージェント
    鬼丸aa2420hero001
    英雄|17才|男性|ドレ
  • エージェント
    土御門 晴明aa3499
    獣人|27才|男性|攻撃
  • エージェント
    天狼aa3499hero001
    英雄|8才|?|ドレ
  • 絆を胸に
    麻端 和頼aa3646
    獣人|25才|男性|攻撃
  • 絆を胸に
    華留 希aa3646hero001
    英雄|18才|女性|バト
前に戻る
ページトップへ戻る