本部

梅姫

紅玉

形態
ショート
難易度
不明
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/03/04 18:47

掲示板

オープニング

●早目の開花
 未だに寒い2月の中旬はどの木を見ても枝だけだ。
「人の子は、花が好きと言うよのう。ならば、妾が咲かせて人の子を集め、ライヴスを奪ってやろう」
 少女は口元を釣り上げ目を細めた。

 香散見草 咲け 咲け 夢を見せ
 その香 支配の 香 撒きたまえ
 甘い 甘い 実を 付け 誘惑す
 一口 食べ申せば 暗闇へ誘う
 さぁ 咲け 咲け 香散見草

 と、少女は美しい歌声を誰も居ない公園に響かせた。
 歌が終われば、公園に生えてる木に花がパッと咲いた。
 風が吹けば、花弁は吹雪のように舞い香を運ぶ。
 道端で歩いてた人々は匂いがする方角を見上げた。
 何故、花の香がその方向からするかは分からない、それは梅姫が掛けた暗示の様なモノかもしれない。

 翌日
 地元のテレビ番組では梅の開花の話題で賑わっていた。
『皆さん、見てください! なんと、この梅! 昨日開花したそうです。まだ2月なのに驚きです! しかも、桜に劣らず花弁が凄く綺麗に舞い梅の香がとても……』
 レポーターが興奮気味に梅の花を紹介してると、小さな実がころりと足元に落ちてきた。
『これは、梅の実でしょうか? 本来なら梅干しやお酒に使われるのですが……何か違いますね。凄く甘い香がして、まるで桃の様です!』
 実を手に取ったレポーターの目から徐々に光が消えていく。
『美味しそう……一口……』
 魅了されたかの様にレポーターは、梅の実を口に頬張り咀嚼した。
『甘くて、美味しい……もっと、もっと!』
 実を飲み込んだレポーターは、マイクを投げ捨て梅の木に向かって駆け出した。

●梅の姫
 H.O.P.Eの会議室に集められたエージェント達は、ティリアを見た。
「皆さん、今回は緊急の依頼です。公園に咲いた梅の木に襲われる事件が先ほど本部に連絡がありました」
 話の内容によると、梅の花弁と香に誘われて来た一般人は何故か梅の実を食べ梅の木に向かったそうだ。
「……皆、もし愚神、居たら相手にしたらダメ」
 と、弩 静華(az0039hero001)はエージェント達に言った。
「そして、梅の木に向かった人達は……木に飲み込まれたそうです。以前の依頼に似た従魔と同じであれば生きている可能性もあります。皆さん、お願いします!」
 ティリアは真剣な眼差しでエージェント達を見つめた。

解説

●目的
一般人の安全確保

●人物
ティリア・マーティス(29)
ただの事務員

圓 冥人
指示がなければ、一般人を避難させています。

●敵
愚神 梅姫(うめひめ)
ケントゥリオ級。
黒髪、紅い目の紅色の着物を着た少女。
高圧的な子なので話は一切聞かない。
魔法、物理の攻撃力が高い、薙刀を持っている。
近付いたり、手を出さなければ何もしない。
もし、近付いたり、手を出すと従魔【黒忍】が援軍として来ます。

従魔 エント(10体)
ミーレス級。知性は蟲並
巨大な木の従魔(5m)
物理攻撃力が高く素早いが、炎には弱い。

●場所
昼間の公園

リプレイ

●不穏
 事件の資料としてエージェント達はとあるシーンを見終えた。
「もう2月の下旬ですし梅って咲いててもおかしくない、ですよね?」
 零月 蕾菜(aa0058)は白く長い髪を揺らしながら首を傾げた。
「というか昨日開花したと言って実が成ってることに疑問を持たなかったのかとあのレポーターは」
 十三月 風架(aa0058hero001)は呆れた表情でため息を吐いた。
「それは魅せられた一般人の方ですししょうがないんじゃ……」
 蕾菜は椅子に座ったまま背伸びをした。
「梅の木って細いはずなんだけどなぁ、人を取り込めるだけ太い梅なんてそうそうないはずなんだけどね……」
 來燈澄 真赭(aa0646)は紅玉の様な瞳を丸くした。
「テレビのネタになるのであれば何でもいいのだろう」
 真赭の言葉を聞いて緋褪(aa0646hero001)は肩を竦める。

「今回は接触は禁止という事か?」
 石井 菊次郎(aa0866)はサングラス越しにアメシストの様な瞳で英雄を見る。
「……ええ、愚神そのものについては刺激しない様にと言う事です。残念ですが、外見の確認程度しか出来ないですね」
 テミス(aa0866hero001)が琥珀の様な瞳で菊次郎を見つめ返す。
「……確かに対処するにはエージェントの数がな」
 菊次郎は集まったエージェント達に視線を向けた。
「……」
 テミスは口を噤む。
 本来ならば菊次郎の追う愚神であるかどうかを確認したい。
 テミスは静華にそう話したが「今回の愚神は危険」と言って静華は首を横に振った。
 危険は承知の上だが、今回の目的は一般人の安全確保が優先だ。

●香散見草
 紅梅色の花弁が吹雪の様に舞い、甘い香りが漂う公園は既にH.O.P.Eからの要請で警察が立ち入り禁止にしていた。
「要するにあのつんとしてる人に近づかないで一般ピープルの救助をすればいいのね」
 穂村 御園(aa1362)がサファイアの様な大きな瞳で佇む愚神を見る。
「御園その通りだ」
 ST-00342(aa1362hero001)はレンズのピントを愚神に合わせる。
「でも、愚神でも厄介な人って居るんだね……うわあ、ゴミでも見るみたいにこっち見てるよ! 本物だよ!」
 御園の視線に気づいた愚神はキッと睨んだ。
「……御園、あまり刺激するな」
 ST-00342はハーとため息の様な音を出しながら首を横に振る。
「人喰い木……相変わらずファンタジーしてんなこっちは。あー……だるい」
 ツラナミ(aa1426)は気だるそうに欠伸をした。
「……ツラナミ。あそこ……たぶん、親玉」
 38(aa1426hero001)が赤い瞳を動かした。
「ん? ああ……放っておけ。報酬以上の面倒は御免だ。他の奴が何とかするだろ……それよりさっさと片づけるぞ」
 ツラナミは一瞬だけ愚神に視線を向け、直ぐにボクシンググローブを付けるために手元へ視線を戻した。
「……ん、分かった」
 38は黒いセミロングの髪を翻し愚神に背を向けた。
「おいあんた……今、以前はって言ったな。つまり前もこいつみたいな敵さんとやりあってことだよねぇ……分かる範囲でいい。教えろ」
 ツラナミは圓 冥人(az0039)を見上げた。
「俺はその場には居なかったけど資料によると木の中央。人間の部位で言うと肋骨で守られている内蔵の部分に人が納まっている感じだよ」
 冥人は胃の辺りを指でトントンと叩いた。
「その情報だけで十分」
 ツラナミは黒耀の様に黒い瞳をエントに向けた。

(騒がしいのう、人の子とはそうゆうモノじゃったな……)
 ベンチの上で正座して座っている梅姫は湯呑に口を付けた。
 菊次郎は火艶呪符を取り出すと、炎で出来た蝶が揺らめきながら梅の実へと飛んでいく。
「愚神が目の前におるのにこうした駆除作業とは情け無いの」
 燃えて灰になっていく梅の実を見ながら菊次郎は呟く。
 彼の視線の先に居る梅姫は湯呑から口を離し、怯える一般人を見て不気味に微笑んだ。
「以前の報告書を見てきたがだいぶ違うようだな」
 緋褪はエントを見つめる。
「まぁ、素体の木も別物だしそういうものでしょう」
 真赭は辺りに生えてる木を見回す。
「っし!! 行くぜ、ルゥ!! 考えても解らねェならやってみるっきゃねーよなッ!!」
 東海林聖(aa0203)は光を当てた琥珀の様に瞳を輝かせ、大剣の柄を握り締めた。
(……転ばすのは有効だろうし……手際よくやらないとね)
 Le..(aa0203hero001)は緑のウェーブヘアを風に靡かせながら頷いた。
 聖は地面を力強く蹴って駈け出した。
 ターゲットは梅の花を枝に咲かせている木。
 むせかえる程の梅の甘い、甘い、匂い。
 視界には紅梅色の花弁が風で舞う。
 紅梅色の背景から茶色いモノが横一閃。
「おっと!!」
 紙一重で聖は回避した。
(……転ばすのは有効だろうし……手際よくやらないとね)
 Le..の言葉に聖は頷いた。
 視界の中で舞い散る紅梅色の花弁の中から全長5mの茶色いモノが動く。
 従魔エント。
 背中から触手が伸び、絡み合うとソレはエントの腕になった。
「転びやがれ!!」
 聖はフルンティングをエントの足に向けて横に振る。
 一気呵成で、エントの足に重心を掛けた攻撃が当たりズドンと鈍い音を立てながら地面に転がった。
「こじ開けるにしても、力加減が大事だな……ルゥ、ワリーが頼むぜッ!」
(……そうだね……ヒジリー力加減バカだもんね。ルゥに任せて……)
 Le..は聖と入れ替わる。
 エントの体を見つめた。
 木の繊維に沿ってフルンティングの剣先を垂直に向けた。
「……っ!?」
 フルンティングを突き刺そうとした瞬間、Le..の腕に触手が絡む。
 ギシギシ、と蛇が獲物に巻き付き息の根を奪おうとするかの様に触手が腕を締め上げる。
「切り裂いて!」
 蕾菜が不浄の風を起こす。
 風はエントの触手、枝を全て切り裂く。
 自由になったLe..は腕を下ろした。
 サクッと軽い手応え、大剣を左右に動かすとパキパキと音を立てながら亀裂が上下に伸びて行く。
 亀裂の隙間から白いモノが見えた。
(……何処かで、見たような?)
 Le..は大剣に力を入れて慎重に亀裂を広げる。
 そこには、会議室で見たテレビに写っていたニュースのレポーターが居た。

「桜伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿ってね」
 真赭は白銀の爪でエントの枝の折れる音が鳴る前に切り裂いた。
 そこに間髪入れずツナラミがエントの体を殴る。
 コンッと軽い打音がした。
 入ってないな、と確信したツラナミは更に力を込めた。
 ズサーッと地面に踵をめり込ませながらエントは後ずさった。
 エントがツラナミ達の方へ一歩進んだ瞬間。
 斜めに斬撃が走り、エントの体は切り口に沿って地面に落ちた。
「護衛は?」
 真赭が冥人を見上げた。
「優秀な護衛が2人もいるからね」
 と、冥人は御園と菊次郎に目を向けた。
「珍しいですね」
「あー、静華の武器だと手加減出来ないからな」
 冥人は肩を竦めた。
「確かめるのは良いが、こりゃ……倒すまで時間が掛かりそうだ」
 ツラナミは梅の花を咲かせている木を見回した。
「大丈夫だよ。片っぱしから叩いて、燃やしてしまえば簡単だよ」
「そうね。石井さんと零月さんが火が扱えますからね」
「こっちで調整しますから全力で燃やすつもりで撃ってください」
 3人の会話を聞いて風架は声を上げた。
 真赭が素早くエントの枝を切り裂き、ツラナミが胴を殴り音で人が入っているかを確認する。
 助け出したのを確認済みのエント、人が入ってないエントは蕾菜がブルームフレアで灰にする。
 スキルを使いきった蕾菜は死者の書を持ち援護へと回った。
 燃えるエント、その体に寄り付く炎の蝶はまるで樹液に群がっているかの様だった。
 泣いているかの様にエントが低い唸り声を上げた。
「ウォォォォォォン」
 パチパチッと木が燃やされ弾ける音が静かな公園に響き渡る。
 その様子を梅姫は冷やかな目で見つめていた。

●梅姫
 従魔エントは全て灰にした。
 救出した一般人は眠っている様子だ。
「終わった、終わった。任務完了だ」
 と、ツラナミは欠伸をしながら背伸びをする。
 しかし、そんな中で「好奇心」や「情報収集」等で相手の強さが不明であろうとも接触する人は居る。
(面倒な事になるのに分かっててやるのはな……)
 ため息吐くツラナミと興味ない様子の38。
「ダメ、聖君、ダメ。任務、目的、思い出して」
 弩 静華(az0039hero001)が慌てて聖の腕を掴む。
「ごめんね。静華ちゃん、少しでも話をしてみたいの」
 真赭は静華の肩に手を置いた。
「最悪の事態になったら簀巻きにしてでも連れて帰るからな」
 冥人は落ち着いた口調で真赭に言う。
「言っても、ああいうヤツは止められないな」
「やる事はやったのにね」
 ツナラミの言葉に同意するように38は頷いた。

 近付いてくる真赭を梅姫は見つめる。
「こっちから攻撃する気はないから……」
「ふんっ、それはどうじゃろうな。お主の後ろの小僧から辻斬りと似たモノを出しておるぞ」
 真赭の言葉を遮り、梅姫は聖を睨む。
「愚神さん、あなたの名前を教えてもらえるかな?」
「何故、答えねばならぬ?」
 梅姫はため息を吐いた。
「自分から名乗るべきね。うちは來燈澄真赭って言うんだけども」
「やれやれ、人の子とは不可解じゃ。そこに咲く花と同じ名、梅姫とでも言っておこう」
 呆れた表情で梅姫は花弁を摘んだ。
「梅姫ね……。もしかして紅葉、柊、月下美人この辺りと面識あったりするのかな?」
「なんじゃ、出来損ないの姉妹たちを知っておるのか。下らん、妾が真の統べる者となるのじゃからな」
 真赭の言葉に梅姫は眉をひそめる。
「Clematis、ミレーレ、雪、この名前に心当たりは? ……以前、月下美人を襲った連中なんだけど」
 真赭がヴィランの名前を口にした瞬間、梅姫からどす黒い殺気が辺りを包む。
 その場にいたエージェントや一般人は、心臓を鷲掴みにされた感覚が襲い息苦しくなり呼吸が荒くなる。
「も、もしこの連中とやりあうことになったら協力させてくれないかな?」
 真赭は喉から声を絞り出す。
「敵の敵は味方っていうでしょ? うちも以前一杯食わされててね。痛い目を見せてあげたいんだよ」
「断る」
 真赭の言葉に梅姫は即答した。
「何故?」
「妾がお主らに教えるワケなかろう……」
 気が付けば梅姫の後ろに黒忍が援軍として到着していた。
「ヴィランズの連中からなら死なない程度にライヴス吸い取るのは見逃すから」
「人からライヴスを取るなと、言えばお主らにとっての悪人から取るのは良いと差し出す。まるで贄じゃのう……話はここまでじゃ」
 梅姫の手に梅の花弁が集まり紅梅色の薙刀と成る。
「ゆけ、あの女とお主らは同じじゃ」
 黒忍達はその場に居る者達に向かって走り出した。

「敵が接近中だ」
 ST-00342の機械的な声が響く。
「え?」
 御園が振り向くと、黒い忍び装束を着た従魔達が向かってくるのが見えた。
「目を閉じていてね!」
 御園は己の魔力で作り出した閃光弾を従魔に向けて発射した。
 視界が眩しいを越して白くなる。
 光が消えても黒忍の視界は白く染まったままだ。
「近づけさせないからね!」
 御園はライヴスガンセイバーで黒忍を撃つ。
「あれって変態忍者といた?」
 蕾菜は黒忍を見て呟いた。
 そう、バレンタイン前にチョコを奪う事件で蕾菜は一度黒忍と戦った事があった。
「今は、守らないと……!」
 蕾菜は手に持っている書から白い羽根の様なものを生み出す。
 白い羽根の様なものは黒忍に向かって真っすぐに飛んで行った。
(手は出さないからな……最悪の事態になるまでは、な)
 冥人は聖に視線を向けた。
「へっ! ヤツと戦ってみてェ……なら! 雑魚に遅れは取れやしねーなァッ!!!」
 聖は雷光を纏う斧、アステリオスを振るい黒忍を薙ぎ払いながら梅姫へ向かって走る。
「そのような攻撃の仕方、未熟じゃのう」
 梅姫は聖の攻撃を薙刀を使い受け流す。
「ツエーヤツと、戦ってみてェから、お前はツエーか?」
「笑止」
 聖の言葉に梅姫は口元を吊り上げた。
 早くて見えない2人の攻撃を、他のエージェント達は気にしている場合ではなかった。
 援軍の黒忍が倒しても、倒しても、立ち上がるのだ。
 しかも、一般人を守りながらでの戦いは厳しい。
「はっ!」
 聖がアステリオスを何度も梅姫に向かって振るう。
「飽きてきたのう……」
 トップギアで能力が上がっている状態の聖を軽くあしらう梅姫は欠伸をした。
「オレは、まだ戦えるぜ!」
「妾は飽きたのじゃ、今なら引き返せるぞ?」
 聖の振った斧がピタッと止まる、いや梅姫が止めたのだ。
「引き返さないぜ」
 口元を吊り上げ聖は梅姫を見つめた。
「ならば死ぬがよい」
 梅姫の薙刀が聖の腹部に向けて突く。
「そんな攻撃距離をとれ……ガッ!」
 距離を取ろうと離れた聖の腹部には梅姫の薙刀が刺さっていた。
 腹部に赤いシミが広がる。
「どうした?」
 ほほ笑む梅姫。
(どういう、こと……だ?)
 そんなに長くない薙刀だったのに、と思う聖。
(……ヒジリー、あの薙刀伸びたよ)
 と、Le..は冷静に言う。
「舞え」
 梅姫は薙刀を花弁に戻し、その花弁は聖に向かって飛ばした。
 荒々しく吹く吹雪の様に花弁は真っ直ぐに飛ぶ。
 回避出来ないほどの量。
 聖はただ腕や脚を使い体の中心を護るしか出来なかった。
 梅の花弁が消えると、聖は立ったまま気絶していた。
(出血量は多いが、生きているようだね)
 冥人は聖の元へ駆け寄り米俵の様に肩に担いだ。
「にがっ」
 梅姫が攻撃を仕掛けようとするが、目の前に頭を必死に下げる菊次郎が居た。
「我等が仲間が大変な粗相をしてしまい……」
「ほんにのう……」
 菊次郎を睨む梅姫。
「この様に美しい紅色の瞳を見たのは初めてです。俺如き、何処とも知れぬ者に瞳を取り替えられた者からすれば……」
「ほう、お主は人の子にしては良い事を言うのう。それに、瞳を取り替える……その様な趣向のヤツがおるのか」
 菊次郎の褒め言葉を聞いて梅姫は関心持った。
「我々は直ぐに引くのでお見逃しを」
「良かろう、引け!」
 梅姫の声を聞いた黒忍達は疾風の如くその場から消え去った。
「ありがとうございます。もし、御身がよろしければ……この瞳の事を知らないでしょうか?」
「すまないが、妾の姉妹たちや女王にはその様な者はおらぬ」
 菊次郎の問いに梅姫は首を横に振った。
「そうですか、御身の寛大な対応ありがとうございます」
 菊次郎は梅姫に向かってお辞儀をした。
「妾は帰ろうかのう……お主の話はちと面白かったぞ」
 と、言って梅姫は花弁を纏いながら消えた。

●代償
「結局あの人なんだったんだろうね」
 梅姫が消える瞬間を見た御園は首を傾げる。
「ST-00342のデータ上には該当する項目は存在しない」
 と、言いながらST-00342は首を横に振る。
「コイツ無茶し過ぎだろ!」
 冥人が担いでいた聖を無造作にベンチに寝かせた。
「ごめんなさい、私が話したいと言ったばかりに……」
「謝って傷が治れば医者は要らない、静華が事前に”近付くな”と言ったよな?」
 真赭は小さく頷いた。
「あまり、説教とかする立場じゃガラじゃないが……戻ったらお説教だ、良いな?」
 冥人は低めの声で言う。
「はい……」
 真赭は手元に視線を向けた。

「本当に全く無駄足でした」
 菊次郎は肩を落とした。
「……少し情け無いぞ主よ」
 そんな相方に対しテミスは厳しい言葉を放つ。
「まぁ、そんな風に言うなよ。菊次郎のお陰で助かった部分があるからね」
 と、言って冥人は菊次郎の肩に手をぽんっと叩いた。
「次は何かあると良いね」
 冥人は手を振りながらテミスと菊次郎から離れた。

 報告の為にエージェント達はH.O.P.Eの会議室に集まった。
「聞いている部分だけ言いますわね。重傷者1名”東海林聖”様、一般人に負傷者が数名、エントは無事に討伐完了ですが愚神と接触し援軍も来た」
 ティリアは段々と声が小さくなっていく。
「はい、それで合っています」
 蕾菜は力のない声で答える。
「あー、重傷者でたんだ」
 報告書を読んでツラナミはやっぱりか、と思いながら言う。
「余計な部分まで突っ込んだみたいだね」
 38はため息を吐く。
「”エントから一般人を助ける”という部分は良い連携と判断だったよ。けど、依頼の目的は”一般人の安全”だ」
 冥人はエージェント達を一瞬だけ視線を向けた。
「救急車の要請は無い、どこまで避難させるか等の指示が無かったよ。公園内が愚神の領域じゃないからね」
 はー、と冥人はため息を吐いた。
「菊次郎の話術が無かったら今頃は全員ボロボロだったからね」
 珍しく喋る冥人。
 その隣で青ざめた表情で震えるティリア。
「また、また……」
 ティリアの目から大粒の涙が頬を伝い床に落ちた。
 依頼事態は失敗ではなかったが、仲間の重傷、一般人の負傷者。
 梅姫から情報をあまり得なかったが、その代償はエージェント達にとっては大きすぎた。
 分かった事は、梅姫、紅葉、柊、月下美人は姉妹であり、その上には女王と呼ばれている存在がある事が分かった。
 しかし、ヴィラン組織に関しては聞き出せなかった。
 分かるのは……梅姫も激昂する程の何かをした事。
 胸にもやもやとした気持ちだけをエージェント達に残して依頼は終わった。

結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
  • エージェント
    ツラナミaa1426

重体一覧

  • Run&斬・
    東海林聖aa0203

参加者

  • ひとひらの想い
    零月 蕾菜aa0058
    人間|18才|女性|防御
  • 堕落せし者
    十三月 風架aa0058hero001
    英雄|19才|?|ソフィ
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • もふもふの求道者
    來燈澄 真赭aa0646
    人間|16才|女性|攻撃
  • 罪深きモフモフ
    緋褪aa0646hero001
    英雄|24才|男性|シャド
  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
    人間|25才|男性|命中
  • パスファインダー
    テミスaa0866hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 真実を見抜く者
    穂村 御園aa1362
    機械|23才|女性|命中
  • スナイパー
    ST-00342aa1362hero001
    英雄|18才|?|ジャ
  • エージェント
    ツラナミaa1426
    機械|47才|男性|攻撃
  • そこに在るのは当たり前
    38aa1426hero001
    英雄|19才|女性|シャド
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