本部

祭りを邪魔するのは誰だ!?

東川 善通

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
4人 / 4~10人
英雄
4人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/02/24 10:52

掲示板

オープニング

●伊予路に春を呼ぶまつり
 伊豫豆比古命神社(いよずひこのみことじんじゃ)、通称椿神社と呼ばれ、愛媛県の名前の由来ともなる神を祀る神社。そこで毎年2月に催される四国一の大祭とまで称される祭りがある。県民は神社の愛称でもある椿さんとそれを呼び、3日間執り行う。
 そんな椿さんにはある噂があった。女子高生など思春期の女の子たちの間で広がったその噂は「椿さんにカップルで行くと別れる」というもの。なんでも、椿神社に祀られているのは女神のみのため、カップルで行くとそれに神様が嫉妬して別れさせるそうだ。ただ、その噂も男の神様を迎え入れたから収まったということで収まる。そもそも椿神社の正式名称にそこに祀られる男の神様の名前が使用されているのだが、恋愛事に興味津々の少女たちには事実無根であろうとも、面白いネタだったのだろう。

●本日の祭りは波乱気味??
「お、いよいよ始まるなぁ」
 国道から神社までの参道の中ほどより少し神社側に位置する喫茶店。開店の準備をしつつ、窓の外を眺めた店主猪野(いよの)。そこには道の脇にテントを組み立て、露店の準備や提灯をぶら下げていく人たちの姿。それを見て、今年もお零れがもらえればええなと零す。行き帰り共に休憩がてらに喫茶店に立ち寄る人も多く、祭りの時はそれなりに儲けさせてもらっていた。そのため、翌日の0時から始まる椿さんに毎年、店唯一のバイトの乙姫(つばき)に3日間フル出勤して頑張ってもらうことになっている。
 翌日、やはりというべきか、休憩がてらにと喫茶店に寄ってくれる人が多く、猪野は計算通りだとほくそ笑んだ。ただ、計算外だったのが思ったよりも注文が相次ぎ、材料が足りなくなったくらいか。勿論、材料はバイトである乙姫が買いに走らされた。
 カランカランと鐘を鳴らし、戻ってきた乙姫。それをみて思わず、猪野は苦笑いを浮かべ、彼に声をかけた。
「誰も男前になって帰って来いとは言ってへんけど?」
「好きで、男前になったんじゃねーッスよ。てか、マスター聞いて下さいよ!」
 乙姫の頬には綺麗に紅葉マークが付いており、それを揶揄して言えば、乙姫はぶすくれながらも、材料を猪野に手渡した。そして、猪野の返事を待つことなく、男前になった経緯を語り始める。
 仕事そっちのけで語った乙姫の話を要約するとこうだ。買い出しに行った帰りに偶然彼女に出くわし、話をしていたのだが、突然、彼女が乙姫を罵るような言葉を発した。それに乙姫は勿論戸惑うが、同様に乙姫の口からも彼女を罵るような言葉が飛び出し、彼女に最低と言われて、平手を喰らったらしい。最初に言いだしたのは向こうなのに理不尽だと言いつつも、周りも露店の店主に突っかかってる人や喧嘩してるカップルがいたとのこと。
「それは乙姫君の本心かい?」
「本心なわけないじゃないッスかぁ。俺も、何でそんな言葉が出たのかわかんないッスよ」
 もうおうちに帰りたいという乙姫を何とか宥め、仕事をさせる。そして、店を閉めるまでの間にも乙姫と同様の被害にあったカップルたちなどが喫茶店を訪れた。
「俺以外にも結構いるもんスね」
「いや、これはどうもおかしいぞ」
 俺だけじゃなかったーと一安心している乙姫に猪野はおかしいと首を傾げた。
「まぁ、言いたくない本音が止まらなかったり、心にもないことを言いだしたりするとか普通じゃねぇッスけど」
 たまたまじゃねぇッスか? と首を傾げる乙姫。それに猪野は、今までこういうことはなかったし、言わされたと感じる所もおかしいと零す。そして、うんうんと悩んだのち、一応調査してもらったほうがいいだろうと猪野はH.O.P.Eに調査依頼をした。

解説

 原因の追究及び原因の排除。尚、リプレイは到着時からとなります。現地集合か否かや2日目、3日目どちらに訪れるかは皆様にお任せいたします。

●調査現場
 国道から神社までの約1kmと神社からはなみづき通りの交差点までの約500mの参道。人の数が常時多いが早朝と深夜であれば、まばら。尚、境内で同様の事例は起こってない為、除外する。

●調査内容
 カップル、夫婦などが喧嘩する原因を追究+その排除。数か所において、その事例が発生しているため、ポイントは複数あると思われる。尚、そのポイントは移動するようで、同じ所を通っても必ず発生するわけではない模様。また、当事者たちは口論中に光の反射があった気がしたと証言している。

●調査期間
 椿祭りが行われている3日間と言いたいところだが、1日目はすでに終了している為、2日目からとなる2日間。

●その他
 露店の主人に聞き込みを行うと何かしら情報が得られるかも?
 露店は祭りでよく見かける一般的なもの。

●注意事項
 人混みな上、近くには露店も並んでいるので武器、スキルの取り扱いには注意。
 また、一般人に不審者と思われないように注意。

以下PL情報
●従魔
 ミーレス級。特殊能力にリソースを割いている為、移動力以外の能力全般低い。尚、行動中は能力が使用できない為、移動や攻撃回避などすると効果が切れる。能力範囲は1スクエア。その範囲外のすぐ傍にいる。従魔の数は、クマデ、ハマヤは二体ずつ、カガミは四体おり、カガミ一体にどちらか一体が付く二体で一セットになっている。

・クマデ
 熊手を背負った猫のぬいぐるみ。能力は範囲内の人間の本心を吐露させる。

・ハマヤ
 破魔矢を背負った猫のぬいぐるみ。能力は範囲内の相手を罵倒させる言葉を口にさせる。

・カガミ
 鏡を首にかけた猫のぬいぐるみ。能力は鏡に映った風景をどこかに転送している。

●???
 カガミの映像の転送先。離れた場所にいるため、調査対象外。

リプレイ

●猫のぬいぐるみ
 椿祭り二日目。リンカー達はまず各自で参道を歩いてみた。そして、猪野の喫茶店を訪れれば、猪野は彼らを奥の席へ案内した。
「ここは予想以上に人が多いな。驚いた」
「うむ、里の祭りとは大違いでござるな」
 そう感想を零す骸 麟(aa1166)と宍影(aa1166hero001)。そんな麟の隣でエステル バルヴィノヴァ(aa1165)が「なぜ、彼女と……」と溜息を零し、彼女の前に座る泥眼(aa1165hero001)は「相談したら、能力的にこれが良いだろうって……」と苦笑いを浮かべる。
「それで、皆、収穫はどうだった?」
 人数的にも座れないためカウンター席に座っていた穂村 御園(aa1362)が声をかける。それにエステルが「警備本部で聞いてきた話なんですけど」と、情報を提示した。
「つーことはだ、大体それが発生してるのは数か所と見るべきだな。一か所では到底ねぇし」
 大まかな話を聞き、御園の隣に座るST-00342(aa1362hero001)を挟んだ席に座っていた雁間 恭一(aa1168)が口を開いた。その隣では「中々いい茶葉を使っているようだな」と猪野に入れてもらった紅茶を味わうマリオン(aa1168hero001)。
「雁間さんのほうはどうでしたか?」
 そう泥眼が声をかければ、恭一は首を振った。
「出店の周りの物影を調べてみたが、それらしきものはなかった」
 「くく、そのせいで通行人に変に見られてたがな」とくつくつと笑うマリオンに恭一は「迷子になりかけたのはどこのどいつだ」とニヤッと笑えば、マリオンはそっと、そっぽを向いた。
「あ、一つ、御園からいい?」
「何かあったのか?」
「うん、屋台のオバさんに聞いたんだけど、忘れ物が数回あったらしいの」
 手を挙げた御園は麟に尋ねられ、露店の女性から聞いた話を伝えた。しかし、御園とST-00342以外は首を傾げる。
「だから、御園はその忘れ物が原因の可能性があるんじゃないかなって。確かに可能性でしかないけど、視野に入れてもいいんじゃないかな」
 少し明確な質問があれば、思い出す人もいると思うだけど、と提案した御園にエステルは確かにと頷く。そんな彼女たちの許に「ちょっといいッスか」と仕事に励んでいた乙姫が声をかけてきた。
「なんだ?」
「さっきの話を聞いてて思い出したんスけど、俺、買い物ついでに露店に寄ったんスよ」
 お盆を抱え、そう言う乙姫。「後で寄り道について怒られるんだろうな」と頭の隅で思いつつ、乙姫は話を続けた。
「で、その時、露店のおっちゃんがお客さんの忘れもんだって、露店にそのまま忘れ物を飾ってたんス。で、その後ぐらいに俺、彼女と喧嘩したんッスよ」
 その乙姫の言葉に、全員がそう言えばこの人も被害者だったなと気づく。被害者の数が多過ぎて、彼のことをすっかり失念していた。
「あの、やっぱ、忘れ物関係ねぇッスね。偶然ッスよね」
 沈黙してしまったエステル達に乙姫はバツが悪くなり、頭を掻く。
「乙姫さん、それってどういうのか覚えてますか?」
「あー、確か、猫のぬいぐるみッスよ。ただ、変わってたのがソイツ、破魔矢を背負ってたんス」
 多分、持ち主さんがつけたんスねとエステルの質問にそう笑みを浮かべる乙姫。その猫のぬいぐるみという単語を頭にインプットする。そして、彼女達は新たに得た情報を基に再度、人混みの中に身を投じた。

●忘れ物探し
「おっちゃん、これおくれ」
「あいよ」
 喫茶店を出てすぐ麟は露店でイカ焼きを買っていた。それにエステルは――この人は調査する気があるのでしょうか――と疑問の目を向けるも、泥眼に「わたし達はわたし達で調べましょう」と声をかけ、調査を開始した。
「ところでさ、ちょいと質問。昨日から今日にかけて忘れ物とかなかったか?」
「麟殿、言い忘れがござるよ。主人、猫のぬいぐるみの忘れ物なんだが……」
 イカを炙っている露店の主人に麟は質問する。それに宍影が付け加えれば、「あぁ」と納得したように主人は声を上げた。
「あったよ。いつの間にかなくなってたから持ち主が取りに来たんだと思うが」
「それがあった時、何か問題とかなかったか?」
 さらに詳しく聞こうとぐいと近寄った麟に主人はにやりと笑う。
「嬢ちゃん、焼き鳥もあるんだが……」
「買う。で」
「そうさなぁ、あったよ。ここらあたりで皆言い合いしてたさ。収まらなくて取っ組み合いになりかけた奴らもいたよ。俺もありもしない言いがかりをつけられて困ったもんさ」
 焼き鳥も買わせ、主人は昨日のことを思い返し、苦い顔をする。そして、「俺が知ってるのはこのくらいだ」と言って、イカ焼きと焼き鳥を差し出した。麟は礼を言い、お代を支払う。
「他に被害とかに遭った人とかは」
「さぁ、このあたりだったら皆遭っただろ」
 首を傾げた主人に再度礼を言うと麟と宍影はイカと焼きそばを手に次の露店に顔を覗かせ、同様に尋ねる。勿論、聞くからには何かしら購入して。
 一方、麟達を放って独自に調査を始めていたエステルだったが、それは中々困難を極めていた。露店に名乗りつつ質問すれば、「買わねぇんだったら、あっちに行ってくれ」と追い払われてしまう。それに付け加え、あまり人混みを好まないということと早く終わらせてしまいたいという気持ちばかりが先行し、彼女の纏う雰囲気を悪くしていた。
「……エステル、申し訳ないけど、麟さんの方が馴染んでるかも? ちょっと目付きが鋭すぎるかな」
 ちらりと露店で主人と楽しそうに話す麟と宍影を見た泥眼がそうエステルに伝えれば、「わかっています。わかっているんですけど」と言葉を濁す。それに泥眼は「ちょっと参道を離れて休みましょう」と彼女を落ち着かせるために、人混みから離れた。
 そんな折、祭りの賑わいとは違う騒がしさが突如として起こった。
「なんで、私のことをわかってくれないのよ!?」
「お前の方だって、俺のことわかってくれないじゃねぇか!」
 ヒステリックに叫ぶ女性に男も興奮しているのか声を上げる。エステルと泥眼はもしかしてと露店の後ろから参道を覗き見れば、事例の通りのことが繰り広げられていた。
「エステル」
「えぇ、これのことですね。ただ、ここが影響を受けないということを考慮すると参道を標的にしている感じですね」
「そうかもしれないわね」
 そう話ながら、エステルは原因がいないか目を配る。そこに騒ぎを聞きつけ、両手に沢山食べ物を抱えた麟と宍影が駆け付けた。
「猫のぬいぐるみはどこだ??」
「麟殿、まだ猫のぬいぐるみが原因とは決まってないでござるよ」
「だが、今まで聞いた主人の話だとそれが有力じゃないか」
 両手が埋まっていてはと麟はサッと幻想蝶の中にそれらをしまうと露店の裏にいるエステルと同様、目を凝らす。
 チカリとエステルに光が当たった。それと同時に宍影が猫のぬいぐるみを見つける。
「麟殿!」
「あの、熊手を背負っている奴か」
「エステル、あそこ」
「光の反射はあの鏡みたいですね」
 宍影と泥眼に言われ、麟とエステルも猫のぬいぐるみを確認した。そして、互いに共鳴をするとそれに気づかれないように近づく。その間に人々は正気に戻り、青くなる人、赤くなる人など、別の意味で場は騒然とした。
 熊手を担いだ猫のぬいぐるみ――クマデは仕事を終え、人々が混乱している間に台から飛び降りる。そして、人混みを擦り抜け、移動を開始した。
『麟殿』
「わかってる。あれで決まりだな」
 麟はライヴスで鷹を作りだすと宙に放った。そして、その鷹の目で確認できたクマデの行く先に麟は先回りをする。その間にエステルにクマデの情報を教え、エステルからも鏡を首にかけた猫のぬいぐるみ――カガミの情報を受けた。
 麟がクマデを追う中、エステルもカガミに接近していた。手に月欠ノ扇を握り近づくも、カガミは動かない。しかし、あの少しというところでカガミは動き始めた。てくてくと歩くカガミが向かうのはクマデと同様の方向。
『麟さんたちが追っているぬいぐるみと同じ方向ね』
「二つで一つということでしょうか」
『かもしれないわね。とりあえず、人が少ないところで攻撃しましょう』
「そうですね」
 人の目が多いところではぬいぐるみ八つ当たりしていると思われかねない。できることなら、それは回避したいもの。それ故、エステルはカガミが参道を離れるその瞬間を狙う。そして、その機会はすぐに巡ってきた。スッとカガミが露店の影へと入った。エステルはそれを追いかけ、カガミが彼女を視野に入れる前に素早く近づき、扇を下から上へと振り上げる。スパンと乾いた音がそこに響いた。カガミは避けれず、宙に打ち上げられ、ぽとりと地面に落下。その衝撃か、首からかけていた鏡にはヒビが走っていた。
「案外、あっけないですね」
『もしかしたら、能力特化型だったのかもしれないわね』
 そう話しながら、ぬいぐるみになったカガミを持ちあげ、動かないことを確認する。
 一方でクマデを追いかけていた麟は白虎の爪牙を装備し、クマデが来るのを待ち伏せしていた。そして、クマデが現れる。
「招き猫にしたら縁起が良さそうなんだがな」
『今は幸福を招くのではなく、厄を招くでござる』
「わかってるさ」
 厄は招きたくないからなと言って、白虎の爪牙を構えた麟。それを視界に入れ、攻撃体勢になるクマデ。
「いざ」
 クマデ目掛け、右手を振り下ろすが、クマデは横に逃げる。それを逃がすまいと左手を振った。まさに逃げる方向からの攻撃にクマデはその体から綿を飛び散らせる。そして、ぱたりと倒れた。
「よし、これで一つは潰せたな」
 うんと頷く麟だったが、ジーッと見つめるような視線に気づき、引き攣った笑みを浮かべた。彼女がクマデを迎え撃ったのは神社の入口。そこは参拝のため、人の往来が通常よりも多いところだった。
 どうしようかと悩んでいると麟の口を借りて、宍影が話す。
「む、ぬいぐるみ相手に修行していたらこのようなところに出ていたようでござる。皆様方、一種の余興だと思ってくだされ。それでは、これにて失礼!」
 そう言うと宍影は『ぬいぐるみを回収して撤退でござる』と麟に指示をする。麟は宍影の言う通り、クマデを拾うとサッとその場を後にした。ちなみに麟が去った後、人々はなんだったんだと首を傾げるもの、余興ということもあって拍手を送るものなどがいたらしい。
 麟とエステル達がクマデとカガミを発見した同時刻、恭一と御園は聞き込みを行っていた。ただ、御園は周りを見渡し、射撃できるような場所を探る。
「うーん、これは結構厳しいかも」
「そうだな。まず、高い建物がない。その上にこうも人と露店が密集していては標的を見つけたとしても狙撃が難しいだろう」
 上から狙ったとしてもまずは露店の屋根が邪魔になる。狙撃は諦めた方がいいなというST-00342。それに御園も「そうだよね」と頷く。
「あ、お面。うーん、やっぱり可愛く見えるのはお面かな?」
 目に飛び込んできた今時のアニメキャラのお面からちょっと昔風のお面まで取りそろえた露店。それに先程までの緊迫した空気はなんだったのかと思うほどそれに御園は食いついた。
「これかな、どう? ちょっと古いかな?」
 愛と正義の美少女戦士のお面を付けてみる御園。ただ、気に食わなかったのか彼女は次に可愛いとアイドルアニメのお面を手に取る。それにST-00342は「御園、まず任務だ」と苦言を呈した。
「もう、わかってるよ。ちょっと、気になっただけだよ」
 そう言いつつも、やっぱり一個は欲しいなと棚に戻すか戻さないか迷う。
「何だい、お嬢さんはお仕事中なのかい。大変だね」
 店番らしい老婆に声をかけれられ、御園はこれはチャンスだと「ちょっと、探し物をしてまして」と猫のぬいぐるみを見てないかと尋ねる。それに老婆は「さぁ、見てないねェ」と申し訳そうに答えた。
「あぁ、もし、見つけたら、お嬢さんが探してたって拾った人に伝えておくね」
 ふふふとそう言って笑う老婆に「別に御園のじゃないんだけど」とは言うことはできなかった。代わりに「よろしくお願いします」という言葉。それから、「あとで買いに来るので一応、これも取り置きで」とお面の取り置きをお願いする。それに老婆は快く受けてくれた。
「よし、お婆ちゃんの協力ももらったし、さっさと片付けちゃおう」
「それがいい」
 改めてやる気を出した御園は明るく露店の主人達に話しかける。勿論、最初から本題に入るのではなく、ちょっとした世間話から。
「猫のぬいぐるみなぁ。おい、見たか?」
「あぁ、それだったら、昨日そこにあったじゃない。まぁ、いきなり路上告白があちこちで始まったから、アンタは忘れちまったかもしれないけど」
「あー、そういえば、そういうのもあったなぁ」
 路上告白が始まるときにそこにあったと露店の台を指す奥さんに旦那は「どうだったかなぁ」と出来事に関しては思い出したものの、ぬいぐるみの有無は曖昧のようだ。それでも御園は貴重な情報を頂いたということもあり、お礼を伝える。
「やっぱり、猫のぬいぐるみね」
「そのようだ。しかし、露店の台となると狙撃が難しいな」
「うん、そこは問題よね」
 これは遠くからより近くからPride of foolsで狙う方がいいかもと新たに作戦を組み立てる。
 御園が狙撃について悩んでいる間、恭一とマリオンは金持ちの子供と案内役を演じていた。しかし、恭一の笑みは内心思っていることが出ているのか若干引き攣っている。
「ふむ、あの茶色いゴムの様な物体は何であるか? 従僕よ」
「……焼きそばと言う食べ物でございます、お坊ちゃん」
 ――後で覚えておきやがれ、と心の内で思いつつも、マリオンの質問に答える。その様子を見ていた露店の主人は「何だい、坊(ぼん)は焼きそば食ったことねぇのか」と声をかけてきた。それにマリオンは「うむ」と頷く。
「よし、そいじゃあ、おっちゃんがサービスしてやるよ」
 そう言うと主人は焼きそばを焼き始めた。「とびっきり美味いのを食わせてやっからな」と言い、調理する主人は途中から最近あったことを話し始める。
「そういや、今年の祭りは変わってるんだよな」
「というと?」
「いやなぁ、坊に言うほどじゃないが、あっちこっちで喧嘩や告白大会が開かれててねェ。喧嘩はうちも巻き込まれたもんさ」
 あれには参った参ったとからからと笑う。マリオンと恭一はこれはと主人に話を促した。それに主人は手を動かしながらも覚えている範囲のことを語る。
「そういや、隣の店に忘れ物があったとかいうけど、あの騒動のあとなくなってたらしい」
 暇な時話してたんだけどなと前置きを入れ、そう言った主人に恭一はそれだなと焼きそば屋の主人はマリオンに任せ、恭一は隣のたこ焼き屋に話を聞きに向かった。
 結果、二人の手には焼きそばとたこ焼きが乗っていた。その分、どういうぬいぐるみだったかも聞きだせた上に、その時何が起こったのかもある程度聞くことができた。
「つまり、二種類いるということだな」
「それにプラス光の反射をもつ奴がいて、合計三種類だな」
 とりあえず、連絡しておくかと自分達が知り得た情報を共有に回す。すると御園を始め、麟、エステルからも各々で得た情報が開示された。引き続き、情報を集めていると麟とエステルからこれが原因のようだと既に退治されたぬいぐるみの姿が送られてくる。
「これで標的は探しやすくなったな」
「あぁ、あとは乙姫が言っていた破魔矢を担いだ奴だな」
 パンと拳を掌に打ちつけ、意気込む恭一。そんな恭一にマリオンが静かに「雁間」と名を呼んだ。
「あ゛、なんだ?」
「あれを見ろ」
 マリオンが指差した先を見れば、てくてくと歩く破魔矢を背負った猫のぬいぐるみ――ハマヤの姿。恭一は素早く御園にハマヤを見つけたことを報告する。すると御園からもカガミを見つけたと報告が入った。場所を確認すれば、丁度対角線上。なんでもお面屋の老婆が見つけてくれたらしい。しかも、今ST-00342が手に持っている状態でもあると。
「どういう状況だよ」
 思わずそう呟く。それを感じたのか御園から「御園もわかんない」と返答があった。しかし、始末しないわけにも行かないため、御園とST-00342は人通りの少ないところに移動すると。それに恭一は頷き、こっちも人通りの少なくなったところで攻撃すると伝えた。
 連絡後に共鳴し、ハマヤを追う。大人の姿になったマリオンにちらちらと通行人から視線が飛ぶが無視して、恭一は足を進めた。
『できれば、女性には微笑んでおいてくれ』
 もしかしたら声をかけてくるかもしれないからなというマリオンの言葉を恭一は黙殺し、物陰にハマヤが入ったのを確認し、幻想蝶からガーディアン・エンジェルを取り出す。そろりと様子を伺いながら近づけば、ピシッと背を伸ばして固まっているハマヤ。その瞬間、恭一の後ろからは罵声怒声が飛び交った。
「てめぇはそっちか」
 恭一の姿を確認したハマヤが動くと参道から困惑した声が溢れる。
「成程な。動かねぇ時だけ発動するってか」
 ま、報告は後だなとハマヤと対峙する恭一。じりっと間合いを確認し、恭一は素早く剣を振るう。それを回避をしようとハマヤは動くが両者の速度が違い過ぎた。
 同時刻、御園も人気のないところでカガミと対峙していた。そして、場所に余裕があるということもあり、彼女はライヴスガンセイバーを構える。
「狙撃の方が得意なんだけどなぁ」
『ただ、この状況ではやむを得ない』
「そうなんだよね」
 ライヴスを放射し、刃を作りだすとカガミに一閃。カガミは避けることができずに真っ二つになり、その場に倒れた。
 その後、麟とエステル、恭一と御園は場所を交代する形で巡回を繰り返した。

●只今、警戒中?
 後ほど残りの二組も倒し、計四組の従魔を倒した八人。数が判明していないということもあり、彼らは三日目の椿祭りにも参加していた。
「麟さん、一緒にこの魚を釣る遊びしない?」
「あぁ、金魚掬いでござるな。ふ、骸忍術では金魚掬いは重要な修行の一つ。ここな麟殿は一枚で二十匹を掬い上げる香具師殺しの麟と呼ばれているでござる」
「ふふふ……オレの真の実力を見せ……え? おっちゃんプロは禁止ってどういう事? あ、冗談。驚かせるなよ」
 ただ、あれ以降、暴動などが起きないこともあり、お祭りを楽しむムードになっていた。泥眼は麟と並び、金魚掬いに挑戦。その後ろで宍影が「それ、そこだ」と声援を送っている。その一方で、お目当てのお面を手に入れた御園はそのポーズがいいかなとST-00342に相談していた。
「あんたは混ざらねぇのか?」
「わたしはいいです」
「じゃあ、僕と一緒にリンゴ飴でもどうかな?」
 いつの間に買ってきたのか、リンゴ飴をエステルに差し出すマリオン。折角買ってきたと思われたそれを無下に断ることができず、エステルはそれを受け取り、羽根の部分を齧る。
「こういう所はもう少し静かな時にまた来たいです」
 そうして、エステルは喧噪をBGMに参道の奥に佇む赤い鳥居を見つめ、そう呟いた。
「どうだ、二十匹だ」
「甘いッスね。俺なんて三十匹はいけるッスよ」
「乙姫く~ん?」
「はい、サーセン。仕事に戻るッス」
 麟がカップに山盛りに入った金魚を皆に見せつければ、仕事を抜け出してきた乙姫が「俺の方が」と腕まくりをし、スタンバイする。しかし、すぐに店の方から猪野の声が聞こえ、乙姫は慌てて店の中に入っていった。
「あぁ、皆さんは楽しんでくださいね」
 にこりと笑いそう言った猪野はすぐさま後ろを向くと乙姫に指示を出していく。それに乙姫は「はいぃいい」と泣きそうな声を上げた。それを見て、宍影は「頑張るでござる、若者よ」と笑うのだった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 悠久を探究する会相談役
    エステル バルヴィノヴァaa1165
    機械|17才|女性|防御
  • 鉄壁のブロッカー
    泥眼aa1165hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 捕獲せし者
    骸 麟aa1166
    人間|19才|女性|回避
  • 迷名マスター
    宍影aa1166hero001
    英雄|40才|男性|シャド
  • ヴィランズ・チェイサー
    雁間 恭一aa1168
    機械|32才|男性|生命
  • 桜の花弁に触れし者
    マリオンaa1168hero001
    英雄|12才|男性|ブレ
  • 真実を見抜く者
    穂村 御園aa1362
    機械|23才|女性|命中
  • スナイパー
    ST-00342aa1362hero001
    英雄|18才|?|ジャ
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