本部

創作の資料がほしいんです!

師走さるる

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/02/20 19:06

掲示板

オープニング

●依頼はこちらです

 H市の住宅街にある公園に凶暴な鴉の群れが現れた。
 一組の親子が襲われた為、周辺の住人及び幼稚園などには注意喚起された上、現在公園は立ち入り禁止となっている。
 しかし公園の前は幼稚園の通学路。別の道を辿れるとは言え不安な声も多く、町内会や幼稚園の関係者が調査をした。
 その結果、どうやらその鴉は普通の鴉ではなく、従魔だったと判明したらしい。
 鴉に似た従魔は全部で六羽。
 嘴が特に硬く、調査した者達は目を狙われそうになったという。
 彼らは無事に逃げ帰り、公園に近付く者もいなくなった。
 今のところは最初に襲われた親子以外の被害はないが、早急に倒してほしい。

「――という依頼なのですが、お願いしてよろしいでしょうか?」
 H.O.P.E.の職員から依頼内容を聞いたあなたはこくりと頷いた。元より依頼を受けるつもりでここに来たのだ。
 そして仲間と共に早速現場に向かおうとした、その時。
 黒髪の少女がカメラを携えこちらへと駆け寄って来る。
「すみません……あの、今お話されていた依頼に同行して、写真を撮らせて貰う事はできませんか? 決して邪魔はしませんから」
 不審に思い仲間と顔を見合わせると、少女……黒嶋唯はあなた達にその理由を話し始めた。

●小さな始まり

「ねえ、唯。ちょっとお願いがあるんだけど……」
 放課後の教室。
 ぱらぱらと出て行くクラスメイトと同じように帰ろうとしていた唯は、友人の言葉に振り返る。
「ん? どうしたの、恵」
 一緒に帰ろうなら当然OKだ。
 けれどそんな簡単な事、ぱんっ! と手を合わせてお願いしてくるはずもない。
「あのね、従魔退治を見学させてほしいのっ!」
「……。えええっ!? それは駄目だよ、絶対危険だもん」
 そう言う唯も以前、他のエージェント達に従魔退治を見せてもらった事がある。だがそれは、あくまで後輩として、手本を見せてもらっただけだ。まだまだ未熟であるものの、唯自身もまたエージェントであり、共鳴して従魔と戦う術を持っていた。
 一方、目の前で頼みこむ彼女は全くの一般人。それも大切な友達で、危険な場所に連れていくなんてとんでもない。
「急にそんな事言い出して、どうしたの?」
「……リンカーと従魔を題材にしたフリーゲーム、作ろうと思って」
「フリーゲーム?」
「そう! ネット上で無料でダウンロードできる自作ゲームの事! 今は制作ツールも豊富で、一時はなくなっていた勢いも動画サイトのお陰で盛り返してるのだけど……知らない?」
 いつもはわりと大人しいのに、ゲームやアニメの話となると力強く早口で捲し立てる。恵は少々そういった面のある少女であった。
「わたし初詣の時に、格好良い従魔退治を見ちゃったでしょ。あれで創作意欲がむくむくっと湧いちゃって」
「ああ……他の参拝客さんには厄払いショーって誤魔化したけど、恵達は私が従魔切るの見てたもんね」
「だけどわたし、実際に従魔を見たのってあれが初めてだったから。今度はもっとちゃんと見て参考にしたいなって」
「そう言われても、やっぱり危ないものは危ないしなぁ。それに、そんなに急いで作らなくてもいいんじゃない?」
「……でもわたし達、来年は卒業でしょ。最後の高校生活だもの。やりたい事、やっておかなくちゃ」
「うーん……」
「お願いします、唯ちゃん、唯さん、唯様っ!」
「うっ! 何か気持ち悪いから、その言い方はやめてー!」
「唯様唯様唯様ぁ!」
「うわあああ! じゃ、じゃあ写真! 写真とか、何か資料になりそうなもの、持ってくるから」
「本当!? 有難う! やっぱり、持つべきものはお友達だね」

「――と言う理由なんです」
 危険な話だと言うのに、何ともまあ軽い理由である。その後ろめたさがある所為か、説明の後半はどんどんトーンが落ちていった。
 しかし、ここで断って一般人であるその友人が危険に巻き込まれても困る。今回の依頼は幸い難しいものではないし、唯自身はエージェントだ。邪魔をしないと言うのだから連れて行っても問題はないだろう。
 ……それにゲームって、何だか楽しそうだし。
 誰がどう思ったかはさておき、あなたを含めたエージェント達はその話を承諾する事にした。

解説

依頼された通り、全ての従魔を倒しましょう!
また、格好良く倒して写真に残ったり、唯に参考になりそうな話をしてあげると喜ばれるかもしれません。

過去のシナリオ○○を参照、など具体的なお話が書かれていないプレイングだと、唯の参考にはなりません。
(プレイングとしては、基本的に他の方の過去シナリオを参照しない前提でお願いします)
PCさんの口からこうこうこう言う敵と戦って、こんな苦労や経験があったんだーと具体的に話していただけると幸いです。

敵はミーレス級の鳥型従魔が6体。
硬い嘴で目を狙って来る他、ちょっぴり素早いようです。
ただしそこまで強くもないようです。
公園に立ち入れば襲ってきますが、普段は木々に隠れているので先制・不意打ちされる恐れがあります。

場所は鉄棒、シーソー、滑り台、ジャングルジム、ベンチなどが設置された、住宅街にある普通の公園です。
遊び場を囲う様にぐるりと木々が植えられており、入口が南側と東側にあります。

黒嶋唯は過去シナリオに登場していますが、特に読まなくても参加出来ます。
また、今回は写真を撮っている為、戦闘には全く役には立ちません。
ただしぴよっ子であろうとも彼女自身もエージェント。よっぽとの事がなければ自分の身は守れるでしょう。

リプレイ

●▽START

「……ん、めんど……くさい」
 まだ幼い顔つきが更に幼く見える眠そうな目。佐藤 咲雪(aa0040)はそれを軽く擦ると、気怠げに呟いた。
 咲雪の一言目はいつだって、何をしても、面倒くさい。
 通常運行と知っているアリス(aa0040hero001)は、その細い肩を躊躇いもなくがっしりと掴む。
「いい、咲雪。こういうクリエイターの熱を持つ人間というのはね、将来的に著名な作品を手掛ける可能性があるのよ?」
「……ん」
 この世界に来てからと言うもの、すっかりとオタク文化に染まってしまったアリス。
「だから、若いうちから才能を伸ばさせるべきなのよ」
 こう熱くなってしまえば止められない。咲雪はこくこくと適当に頷いて聞き流していた。
「ゲーム作りかぁ……楽しそうだね! 何か役に立てるかな?」
 アリスほどの熱意ではないにしろ、皆月 若葉(aa0778)もゲームと聞いてわくわくとしていた。
「楽しむのはいいが仕事には専念しろよ」
 ラドシアス(aa0778hero001)が表情を変える事なく小さく釘を刺す。
「はーい」
「お久しぶりですね、皆月さん、ラドシアスさん。黒嶋さんも」
 そう声を掛けたのは、大人っぽい雰囲気にどこかあどけなさの残る雨流 明霞(aa1611)。
 彼女と若葉達は以前同じ依頼を受け、黒嶋唯にエージェントとしてのお手本を見せた事があった。
「雨流さんに火神さん! お久しぶりです、今回もよろしくお願いします」
 それもあってか仕事仲間として認識していた若葉は、明霞と火神 征士郎(aa1611hero001)に人懐こい笑みを向けて挨拶をする。
「さって、それじゃ、はりきってお仕事と参りましょう♪」
「久しぶりに刀を振るうから、僕も少し心が躍るよ」
 OLとエージェント、二足のわらじを履く明霞は忙しいのだ。征士郎も久々の戦いとあって、くすりと笑い共鳴した。
 それをちらりと捉える狐男の赤い瞳。
 楓(aa0273hero001)は二人が共鳴するのを見て、ふっと良からぬ事を思いついたらしい。
「灯影」
 会津 灯影(aa0273)にずいと顔を近づけると。
「あ? 何ちょっ顔近……!!?!?」
 後退りを許さず、その耳元でひそ、と囁く。
「今日の夕飯は何が良い?」
 ……何故に今、夕飯。
 意図が読めずポカンとしている灯影の周囲に狐火が浮かび、いつの間にか共鳴が始まる。
 瞬間、ぱしゃりと響くシャッター音。
『……いや何なの?』
「変身にはえふぇくとは付き物だろう? 普段は面倒故省いているだけだ。それに今時の女は男同士が密着していると喜ぶらしいぞ」
 ほら見ろ。と主導権を握る楓が視界に映したのは、しっかりとカメラに収めた唯と、口元を押さえながらぐっと親指を立てるアリスの姿。
『勘弁して……!』
 嘆く少年などお構いなしに、ギシャ(aa3141)は写真と聞いて可愛らしくはしゃぐ。
「写真? わー、カッコよく撮って撮って♪ どらごんはね、振り向きのポーズがかっこいいんだよ」
「おまえではなく、俺が撮られるのか?」
 肩を押さえ、ポーズを決めさせようとしているドラゴン娘に呆れた声を出すどらごん(aa3141hero001)。
 だがギシャには敵わず、されるがまま彼女の思う格好いいポーズで写真を撮られていく。
 その光景を眺めながら、麻生 遊夜(aa0452)はユフォアリーヤ(aa0452hero001)に問い掛けた。
「ゲームの参考に、か……ちっと意識して動いた方が良いかね?」
「……ん、かっこよく?」
 片腕に絡みついたまま、ユフォアリーヤはゆったりと尻尾を振る。
「何時もとやることは変わらんがね」
 勿論だ。ユフォアリーヤから見ればどんな時も遊夜は格好良いのだから。
「かっこよく撮ってくれよー?」
 そうにやりと笑う姿だって。

●▽BATTLE

 ピィー……。
 茶色の翼を広げた二羽の鷹が鳴き声をあげ、静かな公園の上を旋回している。

「どう? 従魔の姿、見えた?」
「……こっちが動かないと……あちらも動かないみたいです……」
 ふるふると首を振るう咲雪。空を舞う鷹は彼女がライヴスで作り出した鷹であり、共有した視界からは公園の様子が確認できるのだ。
 そっか、と呟いて若葉はスマホで南にいる二人に現状を伝える。
 現場の公園は入り口が二箇所ある。そこで、エージェント達は二手に分かれていた。
 この東側には咲雪、楓、若葉、ギシャ。
 南側には明霞、遊夜、そして戦力にはならないが唯がいる。
「ふむ……とにかく踏み込むしかないか」
『潜んでるんだろ? 奇襲されないようにな』
「分かっている」
 灯影の言葉に頷く楓。警戒されているとわかっていても、このままでは膠着状態。踏み込むしかないだろう。
 だがギシャはにっと楽しそうに口を歪めていた。
「突入するんですか?」
 空を飛ぶもう一羽の鷹。それはギシャが作り出したものだ。
 だから、彼女の意図通り。
「それなら――」
 バサッ!
 と鷹が適当な木に突っ込むと、木の葉が飛び散る。その周囲から鴉のような従魔が顔を出し、一斉にそちらへ向かい始めた。
 傍にいなかった従魔も仲間が攻撃を受けたと見たのか、西の木の葉が不自然に揺らぐ。
「意識逸らしは暗殺の基本だよ」
「……ギシャさんの鷹は、消えたけど……代わりに……従魔、見えた」

「北側に三体。西側にもたぶん三体、か」
「まずは中央で合流ね」
 東班から連絡を受けた遊夜と明霞はだっ、と走り出す。
 突入と同時に撹乱された従魔はこちらに奇襲を仕掛ける事ができなかった。
 更にギシャの鷹の目が消えたとて、咲雪の一羽が残っている。上空からの情報も常に入っており、遊夜は駆けている途中、左手の森に一体の従魔が潜んでいる事に気付いた。
「9時方向、敵発見、援護する」
 そう言うと素早くパァンと銃弾を放ち、従魔を牽制する。
 その間に咲雪が中央へと向かって来ると、遠くにいた従魔へ向けてシャープエッジを投擲した。
 咲雪に追従する形でギシャも潜伏しながらそこへとやってくる。
「俺も皆の援護をしなきゃ、ね……!」
 ぱっと放たれた閃光弾は、三体の従魔の目を眩ませる。仲間を追う楓に、写真を撮り続ける唯。
 従魔がただ見守り続けるはずもなく、遅れは取ったもののエージェント達へと向かって飛び始める。
 そして滑空する勢いのまま嘴を突き刺そうとしたのは、咲雪の目。人間の急所であるそこに硬い嘴が突き刺さればどうなるかはわかるだろう。
「……あたしには、当たらない……」
 だが、それは当たればの話だ。身軽な咲雪はさっと簡単に交わしてしまった。
 その横には潜伏したギシャもいるのだが、上手く隠れ切っているギシャに従魔達は気付かない。
「ふん、甘いな」
 咲雪同様に真っ直ぐと飛んできた従魔を避けると、遊夜はジャングルジムを駆け登る。
「傾国の妖狐の呪術、魅せてやろう!」
 楓は誘い出された従魔達にそう言って、月欠ノ扇をさっと広げた。
 ひらりと美しく舞う度に、ヒュォ……と不浄な風が生まれる。次第に大きくなったその流れは、三体の従魔目掛けて放たれた。
 一体は何とか避けるも、残りの二体には直撃し、ボロボロになった翼で何とか高度を保つ状態となる。
 続いて金属の光がスト、と黒の胴体に突き刺さり、軽く首を傾げた咲雪が呟いた。
「……弱い?」
 従魔との距離がそれほど遠くないと判断した若葉は、その死角に回り込むと、Pride of foolsに持ち替え背後を確実に狙う。
 動中の静。積極的に攻防しながらも、周囲の動きを冷静に見極める事を意識して。
 パァン……!
 それぞれが赤い飛沫を散らせながら、再びエージェント達を狙う従魔達だが、尚もひらりひらりと避けられる。
 そこにカウンターを狙っていたギシャがざ、と踊り出し――
「ゲームならこういうのもアリだよね。クリティカルヒット♪ クビキリウサギは首を刈れー♪」
 黒いキャンバスに鉤爪で、深い赤の線を描いていく。
「意識外からの不意打ちは結構きくんだよ」
 派手な立ち回りではないが、暗殺者として育てられたギシャが狙うは一撃必殺。弾んだ歌声通りのクリティカルヒット、とまではいかないがこの攻撃は大分効いたはずだ。
 明霞もただその瞬間を待ち構えていた。
 向かって来る黒い影をしっかりと見定め、自分の前までやって来た時。
 すっと身を反らし、その身が横を通り過ぎていく刹那
「ここねっ!」
 ザッ! と斬り払う。
 従魔はその力強い攻撃に耐える事は叶わず、砂埃をあげて倒れる。
 ひゅ、
 直後、静かに放たれた咲雪のナイフが真っ直ぐと別の従魔に突き刺さると、その黒い塊もどさりと地に落ちる。
「ゲームの題材っていうなら、装備変更してみるのもいいかしら」
 そう言ってすっと素早くグランガチシールドに持ち替え、次の攻撃に備える明霞。
「ガキ共泣かす輩は狩り尽くしてやらぁ! 俺達から逃げれると思うなよー?」
『……ん、オシオキ、だね』
 盾や剣よりも物々しい音が響き、遊夜の手元にある武器はライトマシンガンに変わった。
 子供達を悲しませる存在に高見の見物などさせはしない。ジャングルジムの天辺から、射線上にやって来た従魔を激しい弾幕で迎えてやる。
 くすくすと笑うユフォアリーヤの声はその音で掻き消されるが、遊夜の脳には直接届いている。それで良い。
「これならどうかな?」
 パシャリと片隅で聞こえる音に、ギシャも格好良い戦い方を試してみようと、ライヴスで分身を作りだす。
 従魔に襲いかかる切り裂き。残像に惑わされ、避ける事の出来ないその体には無数の軌跡が刻まれた。
「龍の爪は凶暴なんだよ。これで鴉なんかー……って、ありゃ」
 しかし従魔もそう簡単には狼狽えなかったようだ。体勢は立て直し、羽ばたきを続けている。
 その従魔ともう一体を、今度は楓のブルームフレアが呑みこんでいく。
「蹂躙は華々しく惨たらしい程良いのだぞ」
『完全に悪役の台詞なんですけど』
「ふん。性根が悪逆の化生なれば仕方あるまい」
 ぱちん、と扇を閉じて浮かべた笑みもまた、灯影の言う悪役のようであった。
 残りは二体。一方的な戦況だ。相手が悪かったのだろうか、それとも急所ばかり狙う習性か。従魔の攻撃は中々当たらない。
 この一撃で倒れると読み、遊夜は準備していたイグニスを構え、従魔に向けて発射した。火炎に包まれた従魔はこんがりと香ばしい匂いを漂わせて焼ける。
 残る一体も咲雪と若葉が素早く攻撃を当てると、楓がそこにゴーストウィンドを放ち、六体全ての従魔退治が完了した。

●▽LOG

「黒嶋、良かったら軽く手合わせしない?」
「手合わせですか? 構いませんけど……」
 戦闘が終わり、特にカメラを構える必要もなくなった唯は、若葉の提案に頷く。
「ゲームの主人公は黒嶋だと思うんだよね。だから黒嶋の写真もどうかなって」
「うーん……それはどうでしょう。まずは資料集めて構想を練るって言ってましたから、主人公も内容も、全部皆さんの資料次第だと思いますよ」
 そう言いながら若葉達が手合わせをしている間、遊夜とユフォアリーヤは従魔だったものを回収していた。
「……烏の丸焼き、美味しい?」
 かくり、と可愛らしく首を傾げるが手に掴んでいるのは鴉の死骸。何とも野性的である。
「鴉肉はジビエ料理にあるみたいだが……丸焼きは食ってみんとわからんな」
「……ん、なら食べよう」
 流石の狩人と肉食系女子。こんな時まで遊夜は元従魔というゲテモノ食材の事を考え、ユフォアリーヤは食べられる事に喜んで尻尾を振った。

 結果的に言うと、鴉肉は不味くは無かった。凝った調理は出来ない為、硬さと多少の臭みが気になるものの、皆で囲って食べながら談笑できる程の味であった。
「良い写真は撮れたか?」
「はい、ばっちりです! 見てください、皆さんの勇姿! ……と、仲の良さそうな光景」
 ぱっぱっとカメラを操作すると、楓と灯影のやたらと顔の近い写真から、咲雪がライヴスの鷹を放つ写真。若葉がPride of foolsを構え敵に狙いを定める写真。明霞が重たい一撃を入れて従魔を倒した写真。遊夜が従魔に向けてマシンガンを放つ写真。ギシャがジェミニストライクで攻撃を仕掛ける写真……他にもそれぞれの良い瞬間が収められた大量の写真が映し出される。
「自販機で飲み物買ってきたからどーぞ」
 そこに飲み物を抱えた灯影が戻って来る。遊夜はそれを数缶受け取り、配るのを手助けしながらお礼を言った。
「おっ、有難うな。会津さんもそこに座ってこれ食ってみたらどうだ?」
「……ちょっと硬い……でも、食べられる……何よりユーヤとボクが焼いた……」
「あ、有難う御座います……」
「我には茶を寄越せ」
「はいはい」
「あはは。楓さんは会津さんに容赦ないですね。共鳴の時も楓さんが主体みたいでしたし」
「ああ、貴様はどうか知らないが、我等は戦闘時の主導権は我が持っている。灯影はへたれな子犬だからな」
「へ、へたれな子犬って……!」
「そう言うキャラがいる作品も有りね」
「わんこよりどらごんの方が格好良いよー?」
 アリスとギシャの言葉に口をパクパクとさせる灯影をよそに、楓は唯に提案する。
「能力者と英雄が入れ替わり立ち代わる奴らもいるらしいし、しすてむに組み込むのも有りかもな」
「なるほど……それ、いいアイデアですね! メモして恵……この事頼んできた友人に伝えておきます」
「ゲームで参考になりそうな話っつーと……同盟組んだ3つのヴィランズ組織が立て籠もった廃墟砦に潜入、捕縛したヤツが良いかね」
「なんですかそれー? ギシャも聞きたい!」
 目を輝かせた子供に、元々話すつもりだった遊夜も少し面白そうに詳細を話す。
「仕掛けられた罠を掻い潜り、組織ごとの情報差異を見張りから聞き出し、逃走手段を潰しつつ会合部屋に突撃。灯りを潰した上で目潰し」
「おおー!」
「そして裏切りを匂わせて疑心暗鬼にさせ、連携を封じての個別撃破……と言う大捕物だったな」
 遊夜はその時の事を思い出し、でも、と実に良い笑顔で続ける。
「尋問を悪役風にやるのが辛かったなぁ」
「……ん、悪役頑張った」
 そう言ってユフォアリーヤもくすくすと笑う。
「敵に経験豊富な軍人がいたせいでフラッシュバン防がれたんだよな、あれは不覚だった」
「……ん、おじさん強かった」
 ふんふんと楽し気に聞くギシャ。しかしその口からは可愛らしい感想ではなく、殺伐とした言葉が飛び出した。
「そっかー、ヴィランズって結構強いんですね。でも、従魔も人と違って簡単に殺せないから大変だよー」
「こ、ころ……?」
 唯の目がきょとんとして、頻りに動かしていた手が止まる。
「獣型だと眼窩から刃を突き刺してその奥まで破壊したり、骨と肉の隙間から心臓を狙えばなんとかなるけど、物体型だと弱点がわからなくて殺す時に頑丈で困るよね」
「……」
「もっとこう、命を刈り取る感覚が――」
 得意げに話しているギシャだが、可愛らしい女の子が口にするにはとんでもなく不釣り合いな話。
 周囲の時が少しだけ止まっている事に気付き、溜め息を吐いたどらごんがきゅっと帽子を深く被り直す。
「あー、子供の戯言だ。あまり本気で聞くな。それよりも俺がタメになる話をしてやろう。男と女が出会い、従魔を倒して町を救う話だ。あれはそう……紅い月が昇る寒い夜に――」
 空気は少しだけ張りつめたものから煙草と酒の香りがするものに変わったが、これはこれで長い話になりそうだ。
 気を取り直して別の話題に移った方が良いだろう。次に口を開いた明霞なら安心だ。
「わ、私の依頼話といえば、テレビ中継されつつ戦ったことがあったような……。あの時は確か……あっ!」
 と思われた矢先、突然顔を真っ赤にした明霞。
 皆が首を傾げる中、征士郎だけがあぁ……と理解したように苦笑した。
「あの時の依頼だね、明霞。同僚が中継見てなかったから、自主退職に追い込まれなくてよかったよね……」
「わ、忘れもしないあの依頼……、ただスライムを倒すだけの依頼だと思ったらTV中継されてて、さらにあのスライム……わ、わ、私の服を溶かしてきたり、変なにおいばら撒いてきたり……」
 ぼんっと、更に赤くなって地面に悶え伏す明霞に、スライムの経験がない者達は「うわあ……」と思わず小さく洩らす。
「め、明霞の事はそっとしておいてあげてください。状態異常を多く付与してくるスライムと戦ったんですよ。ゲームの題材だとバッドステータスの参考とか、年齢対象なのはさすがにだし……ライトノベルだったかな? それくらいのドタバタ劇の題材にでもなれば」
「スライムだと急所ってどこになるのかなー。やっぱり従魔相手ってむずかしいや」
「……ギシャ、これでも食っていろ」
「むぐむぐ」
「そう言えば、咲雪もスライムに服を溶かされた事はあったわよね?」
「……ん、あった」
 アリスの言葉に咲雪は頷く。参考になる苦労話、というよりは恥ずかしいだけの話であるが。
「ふむ。それなら我らもオネェバーのバイトで現れたスライムに服溶かされた事があるぞ」
『……』
 なんとスライム従魔、六組中三組が経験者だったらしい。
「スライム、従魔の中で流行っているのか……?」
「流行りは一応メモらないと……」
 真面目に考え込むラドシアスに、何かを勘違いした唯は、スライムという文字と下線をメモに書き込む。
「めんど……くさかった、のは戦闘中にテレビとか乱入してきた、アレ」
「魔法少女物のやつね。エージェントの男性が共鳴した姿が魔法少女の変身後にそっくりだから、宣伝に利用しようってアレね」
「……ん、めんどくさ……かった」
「セリフが対して無い戦闘員役のはずが、何故か後で『無気力な女参謀(実はツンデレ)』として出演が決定してたのよね」
「……めんどくさくない、役かと思ったのに……」
「まあ、依頼中のアクシデントじゃ仕方がないわ」
「女子校の愚神倒すのに女装させられるよりはマシだろ……」
「我は何も困らなかったがな」
「興味深い事ばかり経験されているのですね。先程のオネェバーの件と併せて詳しく教えて頂けますか」
「うむ、よかろう。あれは……」
「わーっ、わーっ!」
「……耳が……痛い……」
「わかったわかった、言わぬから黙らんか。他にも、下水の鼠従魔処理は不愉快だったな。あんな場所に潜るのは御免だ」
「うわ……それは、めんどくさい……」
「皆さん色々と苦労してらっしゃるんですね……」
 何とか復活した明霞が自分だけではなかったのだと、ほろりと涙を拭う素振りを見せる。
「……ん、あとはお肉!」
「ああ、巨大従魔狩った時な」
 遊夜とユフォアリーヤの口からは、マンガ肉に鶏、牛に熊に鹿、それに猪……色々なものが飛び出してくる。
「……ん、美味しかった」
「狩った甲斐があったよな、あれ」
「この元従魔もおいしいですよー? むぐぐ」
「こうしていればギシャも普通の子供なんだがな……」
 鴉肉を頬張るギシャを始め、それぞれ随分と特殊な経験を持っていたようだ。少々ゲームの行方が怪しくなってきた時、今度は若葉が経験談を語り始めた。
「H.O.P.E.で依頼を受けて現場に向かうのが一般的だけど時にはその場に居合わせる事もあるよね」
「世の中、何があるかわからないからな」
「この前、満員電車の中で前触れなしにいきなり愚神の襲撃を受けたよ。運転席から順に襲撃されて……」
「うわ……満員電車かぁ……わたしもいつか出勤中に出会ったりするのかな」
「被害を抑える為にとにかく迅速に状況を把握して行動する必要があったんだ。屋根に上って移動とか映画みたいな事もしたよ」
「へえ、凄いですね。勿論、先輩達がばっちり解決したんですよね!」
「……」
「……皆月、さん?」
「何にせよ生活圏内での事案が一番面倒だ。パニックを防ぎ、日常を守る必要もある……ただ戦うだけの方がどれほど楽か」
 表情を曇らせた若葉の代わりに、ラドシアスが真剣な顔つきでそう言った。
 おかしな事、強敵と戦う事、楽しい事。沢山の依頼がある。
 だけど忘れてはいけない。それは何の為にあるのか。
「どんな状況でも冷静に判断して対応する事が大切だよね」
 事件の詳細については明言を避けた事に誰も気づかないまま、若葉の話はそう締められた。
「参考になったかな? ゲームの完成楽しみにしてるよ!」
「うんうん、完成したらやらせてほしいな!」
「我もげーむは暇潰しによくする故。なんなら実況とやらもするか?」
「あはは、有難う御座います! 皆さんのお話、そして写真。凄く参考になると思います。友人にしっかり伝えておきますね」

●▽TO BE CONTINUED……?

 公園の従魔は六体が全て無事に退治された事で、通学路も再び使われることになり、公園にも子供達の元気な声が戻っていった。ちょっと焦げくさい臭いがする、と少しの間、話題にならなかった訳ではないが、それはほんの些細な事。

 そして後日、エージェント達には唯からそれぞれの写真データが添付されたメールが届く。
 そこには『有難う御座いました! 皆さんにも撮った写真データお渡ししておきますね』というお礼の言葉と共に、製作サイトのURLが書かれていた。
 サイトを開いてみると――

『リンカーRPG(仮)

 ある日突然町に起こった怪異。
 主人公は英雄の男と出会った事でライヴスリンカーとなり、日常を取り戻す為、怪異に立ち向かっていく。
 能力者と英雄、共鳴の切り替えで真相を暴け!

 スライムによるポロリもある……かも?

 鋭意製作中!

 シナリオ:■□□□□
 グラフィック:□□□□□
 音楽:□□□□□
 プログラム:□□□□□

 ◇更新履歴
 2/22 サイト公開しました。』

 どうやらエージェント達の資料も無事に活用されているらしい。若干謎の要素はあるものの、ゲームの概要は決まったようだった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141

重体一覧

参加者

  • 魅惑のパイスラ
    佐藤 咲雪aa0040
    機械|15才|女性|回避
  • 貴腐人
    アリスaa0040hero001
    英雄|18才|女性|シャド
  • 美食を捧げし主夫
    会津 灯影aa0273
    人間|24才|男性|回避
  • 極上もふもふ
    aa0273hero001
    英雄|24才|?|ソフィ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
    人間|20才|男性|命中
  • 温もりはそばに
    ラドシアス・ル・アヴィシニアaa0778hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • 酒豪
    雨流 明霞aa1611
    人間|20才|女性|回避
  • エージェント
    火神 征士郎aa1611hero001
    英雄|18才|男性|ブレ
  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141
    獣人|10才|女性|命中
  • えんだーグリーン
    どらごんaa3141hero001
    英雄|40才|?|シャド
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