本部

保父さん保母さんになろう

saki

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 5~10人
英雄
8人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/02/07 16:51

掲示板

オープニング

●講堂前の廊下にて
「こちらの幼稚園では、幼い頃から適切な能力者及び英雄の知識を得る為に、こうして皆様のようなリンカーの方々にいらしていただき、交流を図らせていただいております」
 幼稚園の園長というよりは、シスターといった方が良いような穏やかでありながらも厳格さも備えた女性はそう言った。
「本日皆様には、能力者と英雄がどういうものなのかというものを説明していただきます。
勿論、子供たちが退屈しないように自らの体験談などのエピソードを交えてお話いただけると有り難いですね。
 そしてその後はパフォーマンスという形で共鳴やスキルを見せていただきます。そうですね、……手合せのようなものをしていただいても構いませんし、演舞のようにしていただいても構いません。子供たちに能力者の素晴らしい所を存分に見せてあげてください」
 さて、着きましたと園長は言う。そして茶目っ気のある笑顔で振りむいた。
「全部終わったら、是非子供たちと遊んであげてくださいね。きっと、子供たちが集まってきて凄いことになりますから」

解説

●目的
→子供たちに能力者と英雄について教えることと、終わった後は遊ぶこと

●補足
→対象が幼稚園児なので、あまり難しい言葉は使わないようにしましょう。解りやすく、簡潔な方が良いです。
 また、坦々した話し方は飽きさせる原因になるので、抑揚や道具を使って盛り上げましょう。
→演出用のアイテムとして道具や、能力を使用するのは有りです。
 どんどん使って、子供たちの注意を惹きましょう。
→パフォーマンスに関しては、グロ系とか、子供たちにトラウマになるようなことは絶対に不可です。
 あくまで、夢を与えるようなことにしましょう。
 例えば格好良い変身や台詞、技を使って素晴らしさを存分にアピールして、子供たちも将来能力者になりたいと思わせるようなことをしましょう。
→終わったら子供たちと遊ぶ予定ですが、こちらは強制参加ではありません。遊ぶ意思がある方だけで大丈夫です。

リプレイ

●幼稚園の前にて
 時間を遡ること少し前、一行は幼稚園の前に集合していた。
 住宅街にあるような普通の幼稚園であり、子供たちは元気に走り回り、きゃーきゃー声を上げながら遊んでいる。

「子供に話して聞かせるか……超めんどい」と、赤城 龍哉(aa0090)は頭を掻いた。それをヴァルトラウテ(aa0090hero001)は『無用な誤解や諍いを生まずに済むのですから、やらない手はありませんわ』と窘める。
「くそう、この子供好きが。やる気満々じゃねぇか」
 そう、ヴァルトラウテは子供好きなのである。何か策でもあるのか、『言葉で伝えるのが難しければ、他に手段を考えれば良いですわ』と口角を上げた。

『子供たちがたくさんいるね』と、フローラ メルクリィ(aa0118hero001)は目を瞬かせた。
 動物やもふもふしたものが好きなフローラは『子供達と遊ぶの楽しみ。今日は目一杯楽しむよ』と言っていて、黄昏ひりょ(aa0118)はそれに頷く。
「小さかった時のことを思い出すよね。今日は、童心に返ったつもりで遊ぼう」
『うん。子供たちも楽しんでくれると良いね』

『フフフッ…おるのぉ…美味そうなガキ共が…どいつから喰ってやろうか…』と、そんな不穏な事を口にしていた輝夜(aa0175hero001)は御門 鈴音(aa0175)にげんこつを落とされ、『ひぎぃぃぃ!!』と声を当てた。鈴音は溜息を吐きつつ、内心で「輝夜が子供達と接する事で、普段の不穏な発言とか控えるようになればいいのだけど…」と呟いた。
 輝夜に対しては呆れ気味な塩対応ではあるが、楽しそうに遊んでいる子供たちを見て、鈴音は眩しそうに眼を細めた。

 今回の依頼内容を確認し、「能力者と英雄がどういうものなのか、かぁ…俺達の場合、あんまり参考にならないかも」と中城 凱(aa0406)は呟いた。それに礼野 智美(aa0406hero001)は『出会いの多様性、の一端だよな。俺とあやかみたいに二人同時ってのはあんまり例がないし』と同意する。
 元気な子供の姿に、「子供のなぜ…なに…は怖いし、ぱわふるだもんなぁ…」とぼやくと、
智美は笑いながら『薫の妹達で慣れている分、お前はまだましじゃないか?』と言った。

 子供たちを見ながら、離戸 薫(aa0416)は美森 あやか(aa0416hero001)に「…妹達の相手は慣れているけれど、上手く説明出来るかな?」と尋ねた。
 三人の妹の世話をしているから小さい子の相手には慣れているが、身内とそれ以外では何分勝手が違う。それが少し疑問に思えたのだ。
 あやかは少し考えた後、『上の妹さん達にお話する感じで良いんじゃないかしら? 下の妹さん達相手だと、たまに薫さん赤ちゃん言葉出ちゃいますし』と答えた。

 ココナッツケーキとボーロ・トアリャ・フェウプーダが入った箱を抱え、ある意味何かを決意するかのようにヴァイオレット ケンドリック(aa0584)は子供たちを見ていた。
 用意したお菓子は手作りである。今回の依頼を楽しみにしていたことは確かなのだ。
『大丈夫じゃよ』と、ノエル メイフィールド(aa0584hero001)は肩を叩く。
『子供たちは聡い。おぬしの見た目だけで判断はせぬよ』
 そんな二人の会話を聞いていたエルザット(aa1488hero001)は、『なあ、コレ使えるんじゃね?』と幻想蝶の中から着ぐるみを取り出した。動物の姿をしたあれである。
 それを見て、柳 瑛一郎(aa1488)は「考えたね」と感心した声を出し、「よかったらどうぞ」とヴァイオレットに薦める。
 差し出されて少し迷ったが、「いざという時の為に購入したのですが、着ぐるみってすごく体力を使うのですよね。僕には長時間は辛いですし、エルザットは背丈的な問題で少し厳しいので、使っていただけると助かります」という瑛一郎の言葉にエルザットは『背丈のことは言うなよ。俺はこれから伸びるんだから』と突っかかり、『せっかくじゃから、厚意に甘えてみるのはどうじゃろう?』というノエルの一言に受け取ることを決め、ヴァイオレットは着ぐるみを身に纏った。

 子供たちを眺めながら、新星 魅流沙(aa2842)は「子供はいいですよね素直で」とのほほんと口にした。
 しかし、それを『破壊神?』シリウス(aa2842hero001)は『素直ねぇ…子供は怖いぜ、遠慮ないからな?』と否定する。
 どうにも含みのある物言いに、「……え、いい事ばかりじゃない?」と魅流沙は首を傾げ、『まぁ、今にわかるさ』とシリウスは肩を竦めた。

 こちらの姿に気が付いた女性は柔和な笑みを浮かべ、「皆さんが、今日いらしてくださる能力者の方々でよろしいのかしら?」と近づいてきた。
 それに頷くと、「こちらで園長を務めております。今日はどうぞ、よろしくお願いいたしますね」と彼女は微笑み、それぞれは会釈し、一同を代表して瑛一郎が「本日はどうぞ宜しくお願いします」と挨拶をした。

●講堂にて
 集められた園児達は、一同が中に入るとキラキラした目を向けてきた。
 園長の後ろを歩きながら、ステージの手前まで行く。ステージといっても就学前の子供が通っているような場所だから、怪我をしないようにほんの少しだけ他に比べて高くなっているという程度だ。
「はい、はい、皆さん、お静かにね」と、園長が手を叩きながら言う。
「今日は皆さんが楽しみにしていたように、能力者の方々からお話を聞いたり、一緒に遊んだりする日。そんなにざわざわしていたら、せっかくいらしていただいたのに、お帰りいただかなくてはならなくなってしまうわ。残念だわ」
 頬に手を当て、困ったわというポーズをざわついていた園児達はぴたりと静かになった。
 流石というか何と言うべきか、微笑みながら「子供たち、本当に楽しみにしていたのですよ」という言葉は嘘ではないだろう。ある意味圧力さえも感じる眼差しが向けられ続けている。

・魅流沙とシリウス
 共鳴した状態で魅流沙は子供たちの前に立った。
 イメージプロジェクターで華やかな雰囲気を作り出すと、ライブスラスターを発動する。勿論出力は抑えている。それによって光翼で舞い降りたようであり、子供たちは「わぁ」と歓声を上げた。
「初めまして、皆さん。能力者の魅流沙、そしてシリウスです」
 挨拶をすると共鳴を解いた。それによって前にいる人間が二人になり、子供たちは驚いた声を出す。
『英雄ってなんだか知ってるか?』というシリウスは問う。
『英雄というのは、オレ達みたいに能力者と共に生きる者を言う。それによって、さっき見ただろう? あれは共鳴というんだけれど、そうだな、簡単に言うと合体みたいなのをして凄い技を使ったりすることができるようになるんだ。何か、正義の味方っぽいだろう?』
 その言葉に「ヒーローみたい」「格好いい」「魔法みたい」と彼方此方から言葉が飛び交う。
『そうだろう』とシリウスは笑んだ。
『よし、なんか見たいスキルのリクエストあるか!?』
 しかし、「スキルって何?」と声が上がる。
『そうか。まぁ、あまりわからないよな。じゃあ、オレがどんなのか見せてやる』
 そして極力抑えたゴーストウィンドを発動させた。
 そよ風が走り抜けたかのような柔らかな風が流れ、子供たちは乱れた髪も気にせず目を瞬かせた。
「すげぇー」「もっとやって」と言う声に気を良くし、次のスキルを発動させた。

・龍哉とヴァルトラウテ
『では、能力者とか英雄をお話しするのに紙芝居でもしましょうか』
 何時の間に用意したのか、ヴァルトラウテは自作の紙芝居を取り出した。それを龍哉は覗き込み、「お前、案外絵上手いな」と驚くが、それを謙遜し『芸術家には及びませんが、嗜み程度には、ですわ』と言った。
 デフォルメされた可愛らしい絵が描かれている紙芝居を出しながら、自分なりの言葉で話していく。
「20年前に起きた世界蝕というやつだが、これはまぁ簡単に言うと、この世界と他の世界――そうだな、御伽噺のような世界と繋がったってことだ」
「で、この世界蝕をきっかけに現れたのが英雄だ。こいつらは他の世界からやって来て、様々な力を貸してくれる存在だな」『私はこちらの世界でいうところの北欧神話として語られる戦乙女の一人。ゆうきをもってたたかうもののみちびきて、ですわ』
「それから忘れちゃいけないのが、愚神と従魔だ。こいつらは、こちらの世界に忍び込んで悪さをする、悪者だ。お前たちもよく見る特撮の敵キャラみたいなものだな」
「でっ、最後に能力者についてだが、これはまぁ、見た通りか?」
 龍哉はヴァルトラウテに視線を向けると、彼女は裏声で『えいゆうといっしょに、みんなももっている“らいぶす”というちからをじざいにあやつってぐしんやじゅうまをたおすぞ!』と言った。「いや、何処から出しているんだよ、その声」
 そんな龍哉の言葉を聞き流し、ヴァルトラウテは『自分で出来る努力を怠らず、それでは足りない時に頼れる仲間を作り、大切なものを護るために勇気をもって最善を尽くせる人になって欲しいですわ』と笑んだ。

・ひりょとフローラ
 にこにことした笑みを浮かべる二人に、子供たちもつられてにこにこと笑っている。
「みんな、英雄とかエージェントって知っているかな?」とひりょが声をかける。それに対し、園児達は「しっているー」「しらない」と口々に声を上げる。
「さっきのお兄さんとお姉さんがお話してくれたから分かる子もいるかもしれないけれど、英雄とエージェントは固い絆で結ばれてるんだ。大事なパートナーなんだよ?」
『私達はね、誓約っていう大事な約束の元に契約をするんだ~。私とひりょは、皆の笑顔を守る事っていう誓約なんだ~』
 ひりょは子供たちを見回しながら、「そう、制約っていうのはお約束なんだよ。みんなもお友達やお母さん、お父さんとお約束をするよね」と声をかけると、あちこちで頷きがある。
「そのお約束が破られちゃったら、みんな悲しくなっちゃうよね。だから、悲しくならない為にもちゃんと制約っていうお約束を守らなくちゃいけないんだよ。それで、お互いに協力し合って頑張るんだ」
 そこで子供たちに「みんな、お兄ちゃんとお約束できるかな?」と呼びかけると、次々に「はい」と元気な声が上がった。

・鈴音と輝夜
 幾分緊張した面持ちで鈴音は子供たちの前に立った。そして、訥々とした口調で「……私は、リンカーとしての目的は何も持っていないの」と語り始めた。
「……私には家族がいない。ずっと一人だったから、家族というものに憧れている……のだと思う。私の夢はお母さんになること。そして、……あったかい家庭を築くこと」
 そこまで言って、鈴音は一度言葉を切った。
「私は、ある日従魔に殺されかけ、それで目の前に輝夜が現れ、そして……共鳴した。私は力を手に入れた。……けど、力を得たから何となく……誰かの役に立ちたくて、それで戦っているだけ。だから私は、ヒーローでも何でもないの。ただ、自分ができることは何なのかを見つける為に輝夜と一緒に戦っているの」
『それはわらわも同じぢゃ。わらわが元居た世界で、わらわは人を喰う鬼じゃった。じゃが、人と暮らすうちに人を食べなくなり、人を愛しているのじゃよ。だから、わらわは戦うのじゃ』
 心の内を話すかのような二人に、子供たちは真剣に話を聞いていた。
「なんで戦ってるのか…私にもほんとは分からないの。だけど…あなた達みんなが笑顔でいられるように戦ってるんだと思う…。…いつも悪ぶってる輝夜も悪い奴と戦う時はすごく強いのよ?頼りになる相棒と戦うから…不思議と怖くはないの」と、そう言って鈴音は笑んだ。

・ヴァイオレットとノエル
 着ぐるみであるということは、想像以上に子供の目を集めるものである。現にヴァイオレットはこの場の子供たちの視線を独り占めしていた。
 そのことにノエルは苦笑し、『ワシの相方は見ての通り、この状態じゃから、ワシから話をさせてもらうとするかのう』と話し始めた。
『他の者も言っていた通り、英雄も人間もあまり変わらないものじゃ。関係を作るのは皆と同じように喧嘩だってすれば、上手く行かないことだって有る。恐れ知らずのモノも食べ物の好き嫌いもあれば出来ないこともある。ワシが言っていることはわかるかのう?』
 ノエルの言葉に子供たちは首を傾げた。
『英雄はおぬし達が思っているよりも、普通なのじゃ。だからこれからおぬし達が英雄と出会うことがあったとしたら、その英雄が思っていたようなヒーローみたいでもなくてもいやということは口にせぬことじゃ。もしも嫌いと言われたとしたら、おぬし達じゃっていやじゃろう? 言われて傷つくことは同じなのじゃ。それに、やり方を見つけ出そうとしてみれば、上手くやっていける方法を見付けられるかもしれんぞ』
 そこまで言うと、『さて、堅苦しい話はこれでしまいじゃ』と篠笛のような楽器を取り出した。そして、『これを吹いている間は、わしの相方に自由に触れても良いぞ』と嗾けた。
 当然子供たちは着ぐるみに群がり、ヴァイオレットは着ぐるみの中でわたわたしているが、ノエルの素知らぬ顔で吹く笛の音が響き渡った。

・瑛一郎とエルザット
 パペットを装着した瑛一郎は「こんにちは、僕は柳瑛一郎っていいます」と挨拶をした。そして、某教育番組のお兄さんのノリで「能力者と英雄のお話、皆どうだったかな? 僕からも皆に聴いてほしいお話があります。僕のお話も聴いてくれるかな?」と続けた。
 その言葉に「はい」と次々に声が上がる。「良いお返事だね」と瑛一郎も返す。
「妹や弟が生まれ「お姉ちゃんだから、お兄ちゃんだから我慢して」など言われた事はないかな? それでその時はどう思った?」
 すると、次々に「いやだった」と声が上がる。「そうだよね」と相槌を打つ。
「お父さんやお母さんはみんなのことが嫌いだからそう言っているわけではないんだよ。けど、自分から何かしたくてやるのは良いけれど、誰かから「そうしなさい」という押し付けは凄くいやだよね。実は能力者もそれと同じなんだ。「能力者だから……」と言われるのは何か違うと思うんだ。言っていること、わかるかな?」
 瑛一郎は優しい声でこう続けた。
「もし能力者に出逢ったら……、まわりの誰かが能力者に目覚めたら、「能力者だから……」じゃないその人自身の気持ちを思ってあげて下さい。そして、もし自分が能力者に目覚めたら、能力者だからじゃない自分自身の気持ちを大事にして下さい」
 子供たちは頷いた。不思議そうな顔をしてはいたが、それでも瑛一郎の真剣な気持ちが伝わってきたのだ。
「少し難しいかな? けど、いつかきっとこういうことはあると思うんだ。だから、その時に僕の言葉を少しでも思い出してね」
『取り敢えず、能力者や英雄の気持ちを考えてみてくれ。人の気持ちを思える人間になれよ』
 両手に装着したパペットをお辞儀させ、話は終了した。

●校庭にて
 準備が整うまでの間、ヴァイオレットはリフティングを披露してみせた。
 子供たちも集まってきて、一緒にやってみようとするが少し難しいようだ。着ぐるみを来て尚それを感じさせない動きに視線が集中する。
 少し離れた所からそれを見ていた子供の方へリフティングしながら近づき、ボールをパスした。それを受け取り、子供は嬉しそうな顔をしたが、周囲の子供が「ずりー」と言って近づき、ヴァイオレットはもみくちゃにされた。のしかかる勢いで周囲の子供たちがくっついてきて、とうとう下敷きにされるほどであった。
 最早、子供たちが馬乗り状態になっている所で「準備ができましたよ。整列してね」と声がかかり漸く離れて行った。子供だからと侮るとこういうことになるのである。全くもって、子供たちはパワフルだ。

「やるぞ、ヴァル」
『参りますわ!』
 龍哉とヴァルトラウテは共鳴すると、周囲から「おぉ」と声が上がった。共鳴を解くのもそうだが、するのも子供にとっては珍しいことなのである。
「今から凄いのやるから、しっかりと見ていろよ」と言い、デコイと向き合った。
「○動拳っ!」
 そう叫びながら烈風波が炸裂する。そしてそこから繋げるように「竜○旋風脚!!」と叫び、怒涛乱舞を展開した。
 確かに子供にとっては今のスキルはそう見えるであろう。
 きらきらとした尊敬の眼差しで「○○○○キックはできる?」「あれやって」と声が上がり、「おう、良いぜ」と龍哉は更なる技を見せた。

・凱と智美&薫とあやか
 校庭で準備をしている間に、四人は話し合っていた。
 風船を膨らましながら、凱は「木刀で壊れるかな」とスキルを確認してみるが、試してみた結果、智美と『…本番では短剣のテレプシコラ使おう。先生方の了解が得られなければパフォーマンスはなしで』という方向に決めた。勿論了承は得られたので、短剣を使うことにした。
「あやかさんと智美さんって、二人一緒に僕達の前に現れたけど、あんまりない例みたいだしね」
 同様に準備をしていた薫もあやかと共に、『来た時の服と装飾品ちゃんと保管してますよ。あの服で子供達の前に出ましょうか』ということで方向性は決定した。

 そして、本番である。

 智美は忍び装束に、あやかはティアラにドレスといった格好に着替えていた。
 アニメの中でしか見ないような姿に、子供たちの目は釘づけである。「忍者だ、忍者」「お姫様なの?」といった声が飛び交っていた。
「俺達は、友達同士で一緒に現れた友達同士の英雄と出会ったんだ」
 凱の言葉と共に、凱と薫は共鳴をした。
 子供たちに危険がないように、予め少し距離をとってもらっている。
 凱は一歩前に出ると、「皆は、家族や友達や先生好きかい?」と語りかけるように言葉を口にした。
「俺達は、そういった大事な人達を守りたいから戦う事を決めたんだ。その為に使える色んな技があります」
 先程膨らました風船を5つ薫に投げてもらうと、怒涛乱舞が風船に炸裂する。
 ほぼ同時に全て破壊した為、破裂音は一つにしか聞こえない程だった。そして更に、縛った部分を互いに結び、一つの風船に三つ膨らんだ部分があるものを投げてもらうと、疾風怒濤を繰り出す。
 これも鮮やかに決まった。子供たちからすると目を見開くような凄さである。
「すげー」「かっこういい」という子供たちの前で、凱は「でも、力だけあっても一人で戦う事は出来ないから……だから(研修、じゃわからないよな)勉強したり、一緒に戦う人達と……(交流会は…)仲良くなる為にお話したりもします。凄く強い敵でも、皆で力を合わせれば負けないから」と、子供相手だから言葉を選ぶのは苦労しつつも締めくくった。
 そして、次は薫の番である。
「僕はバトルメディックと言うクラスで、凱のドレットノートの様に戦う技は少ないです。
けれどその代り、敵を弱らせたり、味方の怪我を治したり護ったりする技が多いです」
 そう言うと、凱に向かってリジェネーションを発動する。
 淡い、柔らかな光が凱を照らす。それはまるで、木漏れ日のように温かなものであった。
「今のこれは、傷を治すことのできる技です。凱は今怪我をしていないので、効果はあまりわからないかもしれませんね」
 薫が苦笑して言うと、凱が「こういう力を持っている奴が居ると、戦いの時は本当に安心できる。アニメとかゲームでも見たことがあるだろう? 仲間を治して助けてくれる奴。それが、こいつだ」と助け船を出した。すると、子供とは現金なもので、途端に尊敬に満ちた眼差しになった。
 きらきらした視線を受け、「ありがとう」と薫は照れたように微笑んだ。そして「もう少しお話を聞いてね」と続ける。
「ただ、たまにだけど悪い別世界の人が英雄の真似をして人の体を乗っ取ろうとする場合があるから、そういう誘いに乗らないよう、正しい事と悪い事の区別がつくようにしてね。
それに縋りたいと思うような子を作らない為に、他人をいじめたりしない人になって下さい」
 子供は善悪というものについて疎い。それ故に、思ってもいないような残虐なことをしてしまっていることもある。それを踏まえ、薫は注意を呼びかけたのだった。

●再び講堂
 講堂に戻り、今度は節分の行事にも携わることとなった。勿論、鬼役を引き受けたわけである。
 鬼の面を付けた龍哉、ひりょ、輝夜、共鳴して鬼の姿になったヴァイオレット、エルザットが室内に入ってくると、他の面々と子供たちは豆を構えた。
「皆~、鬼にお豆ぶつけてやっつけちゃおう! いくよ~★」とフローラが扇動し、シリウスが『中で撒くのは、福を撒くって意味でな。こう天井にあてるんだ!』とやり方を教える。
 シリウスの『そら、鬼が出てきたぞ。外に追い出せ! 鬼はーっ、外!』の言葉に合わせ、子供たちも「鬼は外! 福は内!」と復唱する。
 鬼役は自ら立候補しただけあり、のりのりの様子で子供たちを追いかける。そして、豆をぶつけられた。
 幾ら子供の力とはいえ、力いっぱい投げられた豆は痛いものである。
 鬼役に徹し、園児達に追いかけられて豆をぶつけられる面々は暫く逃げ回っていたが、「いたたたた」と退散することになった。
 ひりょは「うわ~っ、やられた~」と倒れた演技をし、輝夜は「おのれぇ…ガキ共…」と木の上に逃げるが鈴音の投擲した豆で木から落とされたて更に追いかけられた。
 他の面々も上手くやられた演技、逃げ出した演技をしたが、子供の中にはそれでも乱暴に豆を投げるのを止めない子供もいるわけで、その子供には凱が「悪い鬼が出ていくのが見えたからもう大丈夫」と窘めた。

 豆まきもお開きになり、今度は豆を食べる番である。通常は年齢の分食べるとされているから、子供たちは数個であるが、大人組は大変だ。特に瑛一郎は32歳の為、子供から「32歳?! パパよりオジサン!」と言われて凹み、それを慰めるようにエルザットが肩に手を置いた。

『このお豆も結構美味しいよね。いくらでも食べれちゃいそう』と笑顔で豆を食べていたフローラは子供たちにからかわれ、『食欲魔人じゃないもん!』と頬を膨らませた。
 それを横で見ていたノエルは、『おぬしは、愛嬌が有ってええのう』とフローラの頭を撫でた。
『演奏上手なんだね! びっくりだよ~』と先程のノエルの演奏を褒めると、ノエルは目を細めた。
 ひりょとフローラは二人の仲のことを指摘され、フローラは笑顔で『ひりょは結構優しい所あるんだよ~。この間もこのぬいぐるみ買ってくれたの!』と猫のぬいぐるみを子供たちにも見えるように見せ、『わしの相棒のケンドとは、けんかばっかりじゃ』とノエルは言う。
『いちいち、難しく考え居るし、楽しそうにできんしの』『喧嘩もあるよね。私もそういう時あるよ』
 談笑していると、ヴァイオレットの持ってきたお菓子を食べた子供が礼を言いに来て、慌てる様を眺めていると、今度はノエルが自身のことを指摘され、『おばあちゃん臭いじゃと……、そりゃ本当の年は、お前さんらの十倍以上じゃからな』と答えた。

 凱と智美、薫とあやかは上手いこと子供の相手をしている。流石は子供慣れしているだけあった。

 魅流沙とシリウスは子供たちに「遊ぼう」と袖を引かれ、子供たちの輪に加わった。

 鈴音と輝夜の焼いてきたカステラの良い匂いに釣られ、子供たちが集まり、二人は身動きが取れなくなった。

 既に豆を食べ終えた子供たちに群がられ、龍哉は高い高いをする。
『あのお兄さんは力持ちですわ。何人ぶら下がれるか挑戦ですわ』というヴァルトラウテの言葉に「ちょ、おま」という龍哉の制止も虚しく、両腕所か首にまで子供がぶら下がった。

 講堂はにぎやかな声で溢れている。子供たちは楽しそうで、にこにこと笑っている。
 そんなこんなで、幼稚園は今日も平和である。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • エージェント
    中城 凱aa0406
  • 癒やし系男子
    離戸 薫aa0416
  • 保父さん
    柳 瑛一郎aa1488

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • ほつれた愛と絆の結び手
    黄昏ひりょaa0118
    人間|18才|男性|回避
  • 闇に光の道標を
    フローラ メルクリィaa0118hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 遊興の一時
    御門 鈴音aa0175
    人間|15才|女性|生命
  • 守護の決意
    輝夜aa0175hero001
    英雄|9才|女性|ドレ
  • エージェント
    中城 凱aa0406
    人間|14才|男性|命中
  • エージェント
    礼野 智美aa0406hero001
    英雄|14才|男性|ドレ
  • 癒やし系男子
    離戸 薫aa0416
    人間|13才|男性|防御
  • 保母さん
    美森 あやかaa0416hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • LinkBrave
    ヴァイオレット メタボリックaa0584
    機械|65才|女性|命中
  • 鏡の司祭
    ノエル メタボリックaa0584hero001
    英雄|52才|女性|バト
  • 保父さん
    柳 瑛一郎aa1488
    人間|32才|男性|防御
  • エージェント
    エルザットaa1488hero001
    英雄|16才|男性|ソフィ
  • 魅惑の踊り子
    新星 魅流沙aa2842
    人間|20才|女性|生命
  • 疾風迅雷
    『破壊神?』シリウスaa2842hero001
    英雄|21才|女性|ソフィ
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