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魔の森
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相談場所
最終発言2015/09/25 03:40:44 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/09/25 03:21:13
オープニング
●魔の森
「ハッハッハッハッ……!」
息を切らしながら1人の男が走る。その顔は恐怖で彩られていた。
「いったいなんだってんだッ!」
彼は日課のウォーキングをしていただけだった。
ただいつもとは違う道を通ろうと思ってすぐ近くの森に入っただけだ。
だがその森は明らかに異常であった。見た目はただの森だが、内部は魔境と化している。
日が昇っているのに薄暗い道。風もないのに揺れている枝。
それだけでも不気味だというのにどこからか声が聞こえてくるのだ。
《その身を捧げよ……その身を捧げよ……森のために、我が身のために――》
「ッ……うわぁああああああああああああ!!」
森の中に男の叫び声が響く。
暫くすると、そこには男の着ていたトレーニングウェアだけが残されていた。
●脅威
「森を形成する木々は反応から見てミーレス級……あるいはデクリオ級」
機器の前に座った若い女性は、思わず眉をしかめた。
ただの従魔発生にしてはやや規模が大きい。
幸いにしてまだ完全に亜異世界化空間とはなっていないものの、このまま放っておけばまずまりがいなくドロップゾーンと化すであろう。
計測器に表示された数字はそうなるだけの可能性があることを彼女に知らせていた。
「これは大至急、能力者たちを集めなければいけませんね……」
彼女は立ち上がると、壁に据え付けられた電話で連絡を取り始めた。
●依頼
ホワイトボードの前で1人の男が腕組をして立っていた。彼の目の前には何人かのリンカーが座っている。
「今回の依頼について確認するぞ。今回の依頼は木を依代としたレベル1からレベル2ていどの従魔の群れ。これを仮に魔の森とするが、この魔の森の駆除が目標だ」
男はマーカーを取り出すとホワイトボードに線を書いていく。
何本もの線を書いていきできたのはドームのような絵だ。
「魔の森はドームのような形をしている。この形状から見た俺の予想だと、ドームの中心部に魔の森の中核――ようはレベル3になろうとしてる従魔がいるはずだ」
あくまで予想だけどな、と男は頬をかいた。
「とりあえず、第一目標は魔の森の駆除だ。できる限り周囲への被害は出さない方向性でいきたいが……やむを得ない場合は焼き払うような大規模破壊も許可する。――それじゃあ、頼んだぞ」
能力者たちは互いに顔を見合わせた後、小さく頷いた。
解説
郊外に出現したミーレス級およびデクリオ級従魔の群れ、別称"魔の森"を駆除してください。
魔の森は半径300メートルほどのドームのような形をしており、中央には一際大きな木があります。これがデクリオ級従魔です。
内部はミーレス級の従魔の依代である木が多くありますが、ミーレス級従魔である木と普通の木があります。普通の木なのか従魔なのかを見極め必要のない戦闘は避けたほうがいいかもしれません。
ミーレス級従魔
木を依代にしている。普通の木に比べて、葉が少し黒っぽい。
攻撃手段は枝を鞭のように振り回すのみ。
触ってしまったり近くで大きな音を立てない限りは攻撃してこない。
デクリオ級従魔
木を依代にしている。
攻撃手段は枝を鞭のように振り回すのと、葉を飛ばしてくるものの2つ。
比較的遠くにいる敵も見つけることができる。
リプレイ
●魔の森<入口>
森の入り口で1人の女性が戦っていた。相手は木であり、傍から見ると訓練をしているようにも見えなくはない。だが相手はただの木ではなかった。枝を伸ばし、鞭のようにしならせて攻撃する。時には槍のように鋭いその先を相手に向けて伸ばし、攻撃する。
その木は従魔である。ミーレス級がとりついた事によってその生命力と強度が上昇した木は一般人ならばたやすく殺すことができるだろうほどに凶悪だ。
《身を捧げよ……その身を捧げよ……森のために、我が身のために――捧げよ、その命。そのライヴス》
「ふっ!」
彼女は飛んでくる攻撃を手に持った剣で弾いていく。常人ではとらえきれない速度で飛んできているそれを的確に弾いている姿は、明らかに普通ではない。当然だ、彼女もまた普通の人間ではないのだから。
「命を捧げよ、ね。それは勘弁してほしいんだけど」
剣を振るい、果敢に攻め立てていく。
彼女は森の駆除のためによこされた能力者の1人である。彼女の英雄と共鳴した姿は変わったところなどないが、その力は他を圧倒するほどに強い。
《身を捧げよ……その身を捧げよ……森のために、我が身のために――捧げよ、その命。そのライヴス》
「残念ながら、ごめんだね――ッ!」
《ア、ア、アアアアァアアアアアアアアアア……――――》
裂帛の勢いを持って剣が振り下ろされた。その対象であった木は、木でありながら苦悶の声を漏らし蠢いている。暫くの間苦しげに蠢くと枝が力なく垂れる。どうやら倒すことに成功したらしい。悠騎・S・ブレイスフォード(aa0159)は短く息を吐いた。
「なるほどね。こんな感じなんだ」
石を投げたり、触ってみたりするなどして特徴はある程度捉えることができたようだ。他の皆も同じようにして従魔と木を見分けるべく行動しているのだろう。時計を見ると、そろそろ指定された時間のようだった。
「そろそろ、移動するかな」
その頃他の従魔を倒した仲間たちが合流する。
「色々試してみましたが、どうやら音と振動に反応するみたいです。視覚じゃなくて触覚と聴覚に頼ってるらしいですね」
「ふむ……それに、動く奴は若干黒ずんでる、とみていいな。いくつか見て回ってきたが、他の木に比べて少し黒い。葉を見ればすぐにわかるほどにな」
「それに、戦闘の時には常に例の言葉を口にしていました」
「身を捧げよ……その身を捧げよ……森のために、我が身のために。だったか? 聞いてみたら、捧げよ、その命。そのライヴスって続いてたみたいだが」
「どうやら断片的にしか聞き取れていなかったみたいですが……森、というよりは森にいる従魔たちがライヴスを狙っているのは間違いなさそうです」
合流してすぐに郷矢 鈴(aa0162)と麻生 遊夜(aa0452)が口を開いた。
続けるようにして布野 橘(aa0064)が告げた。
「普段は普通の木に擬態してるみたいだが、風がないのに揺れてるからじっと見てれば一目瞭然だぜ」
「ミーレス級はそんなに強くなかったな。確かに少し硬いし大きいが、それだけですね」
「触るのは回避できても移動の時に大きな音を立てるのは……走らず早足でできるだけ足音を立てず移動。下草などは殲滅班を中心にして露払班が先行すればどうだろうか?」
中城 凱(aa0406)とその英雄、礼野 智美(aa0406hero001)は森を見据えながら話す。
「ふむ、悪くないんじゃないか? 俺はそれでいいと思うぞ。お前さんはどう思う、リーヤ」
「……ん、私も賛成」
「このまま放置しておけば、どれほど被害が広がるかわからないからな。速やかに殲滅が必要だろう。避けられる戦いは避けておきたいところだな」
遊夜の問いに首肯するユフォアリーヤ(aa0452hero001)。
レオン・ウォレス(aa0304)も同意するように頷いた。
「今の僕にできる事を、やるだけだよ。いつも通り、だよね? AT」
「うん、いつも通りさ、セレン。油断せず、ただしっかり踏み出そう。この森に身を捧げよというならば捧げよう。ただし代価は従魔の命だけれど」
セレン・シュナイド(aa1012)とAT(aa1012hero001)は互いに確認しあうように話す。
だが1人、気に入らなさそうに息を漏らすものがいた。魔纏狼(aa0064hero001)だ。
「俺に、指図をするな」
「おいおい……」
相棒の姿に思わず頭を抱えてしまう橘。相変わらずの一匹狼気質に頭が痛くなってくる気がした。他の能力者たちも思わず苦笑いだ。魔纏狼は続けるようにして口を開いた。
「フン。だが的を得てはいるな。その通りでいいだろう」
特に口を出してはいないが悠騎とその英雄であるブリジット・ボールドウィン(aa0159hero001)や、ルキア・ルカータ(aa1013)とモダンタイムス(aa1013hero001)も同意見のようだ。
「速やかな殲滅はいいけど、焼くのだけはできる限りしたくないよね」
「ええ。森をダメにしてしまいますし、再生にも時間がかかりますし」
ちらりとブリジットの方を見ながらレヴィ・クロフォード(aa0442)とリオ・メイフィールド(aa0442hero001)が告げる。ブリジットはフン、と鼻で笑った。
「数が多そうだ。数が増えると不測の事態も起きやすいだろうから少し心配だな……」
「ダンダカン、それをできる限りなくするようにするのよ」
小さく不安を零すウーラ・ブンブン・ダンダカン(aa0162hero001)に鈴が口を出す。
「いや、心配なのは……まあ、いい。いざとなったら俺がサポートすればいい話だしな!」
「レオン」
「わかってるよ、無理するなってんだろ? 大丈夫だ、油断はしない」
便乗するようにルティス・クレール(aa0304hero004)がレオンに注意を促す。本人もわかっているようでルティスの言葉に肯定でもって返した。
「現状の確認はそこまでにしておきましょう。そろそろ行きませんか? こうしている間にも、敵は力をつけていくでしょう」
「あまり焦るのはどうかと思うわ、真一郎」
予想以上に長引いていることに気が付いた駒ヶ峰 真一郎(aa1389)が苦言を呈する。焦っているとみたリーゼロッテ アルトマイヤー(aa1389hero001)が注意すると、真一郎は反論した。
「早急に処理をしなくてはいけないのは変わらないだろう?」
「……それはそうだけれども」
「ま、これ以上話してても時間が過ぎてくだけだわな。んじゃ、いっちょ行きますかね?」
苦笑しながら遊夜が言った。それに続けて、橘が熱く先導する。
「ああ。皆、行くぜ!!」
能力者と英雄たちは、皆頷き意識を切り替えた。
――魔の森攻略、開始。
●魔の森<内部>
森の内部は彼らの想像以上に薄暗かった。予め凱が用意していた方位磁針のおかげで迷うことはないだろうが、従魔と普通の木の判別の難易度は少し上がってしまっているようだ。現に先ほども従魔と遭遇しており、その対処のために遊夜と真一郎を置いて来てしまっている。
初期の人数から少し減ってしまった状態で、能力者たちは疾駆する。一刻も早くコアのもとへと辿り着き、討伐しなくてはいけない。でなければ、置いてきた仲間に申し訳がないのだ。故に道中の敵は無視する。先行班である自分らは、自分らのやるべきことを果たさなければいけない。
「すまねぇ、皆……!」
橘は苦々しい顔をしていた。仲間を置いてきたことは彼にとって苦渋の選択であった。皆やるべきことのために覚悟していたとはいえ、それで割り切れるほど彼は冷たくもなかった。
「無駄口を叩いている暇があったら先を急ぐべきだ。進むぞ、橘」
「わかってる!」
橘よりも少しばかり先行しているレオンは大鎌を振るい、従魔たちに少しばかりの傷を与えていく。ルキアも飛んでくる枝を迎撃するようにオートマチックを抜き放っていた。だがそれでも一向に減る気配がない。まるで彼らの通る道が分かっていたかのように、木々がそびえたち邪魔をする。
「また敵ですか……それも、どうやらそれなりに数がいそうです」
凱はそう告げると武器をクロスボウに持ち替えて一撃を放った。
「仕方ないかな……橘さんたちは先に行って! ここは、僕たちが引き受ける!」
セレンもまた武器を抜き放ち、一瞬だけ先行班の前へと出た。迎撃の構えを取っている。
「くっ、すまねぇ。凱、セレン! 先に行く、絶対に追いつけよ!」
凱とセレンは頷き返すだけに留めた。先行班と残った露払班の面子は確認と同時に全力で駆け抜ける。凱の攻撃によって注意がそれている今、脇を抜けていくのは難しいことではなかった。
凱とセレンは見届ける。仲間たちが遠ざかっていくのを。
「……さて、ああ言われてしまったし、さっさと片付けて追いつくぞ。凱、セレン、AT」
智美の言葉に凱は頷く。数はやや多いかもしれないが、対処しきれないほどではなかった。
凱と智美、セレンとATは共鳴する。凱は若武者のような姿に。セレンは雰囲気をガラリと変えた。どちらも武器を構え、前を見据えている。
《身を捧げよ……その身を捧げよ……森のために、我が身のために――捧げよ、その命。そのライヴス》
「それじゃあ、行くぞ――ッ!」
ゆらりと動き出した影に向かって彼らは突撃した。
遊夜と真一郎は随分と遅れて森の中を駆け抜けていた。道案内をするのは、ユフォアリーヤだ。
速度で劣るからと先に残った遊夜とそれに付き合った真一郎もまた中央を目指し急ぐ。だいぶ離されてしまったが、全力で移動すればまだ間に合う範囲だからだ。
「何、すぐ追いつくさとは言ったが……思った以上に遠くないかねぇ? お前さんもそう思わないか?」
「……どうでしょうか。自分はよくわかりませんね」
「そうかい」
ちょっとした雑談を挟みながらも前を向き続ける。道中には傷のついた木々がいくつか存在していた。恐らくそれが従魔であると判断した彼らは迂回して通る。ある程度離れた位置ならば走り去ってもわからないのは実践済みだ。
「……ん、見えた。あそこで誰か戦ってる」
「何? ……ありゃあ、凱とセレン、か? まあいい、助太刀する! 凱、セレン! 少し右に避けろ!」
遊夜はその場で叫ぶと足を止め、ライフルを取り出して照準を合わせた。叫び声を聞いた凱とセレンは咄嗟に飛ぶ。それに合わせて遊夜のライフルから弾が放たれた。一撃を受けた木が大きくのけぞり動きを止める。その隙にセレンが剣を叩き付けて倒した。
「……また足止めですか。まあ仕方ないですよね」
真一郎もまた、剣を持って前へと出る。遊夜を捕捉し、攻撃しようとした従魔の枝を切り払う。
「相変わらず、なかなかやるじゃねぇの。お前さんも」
「さっさと終わらせましょう」
「……つれないねぇま、そうだよな。早く終わらせて追いつかなきゃいかんのは間違いない」
再びライフルを構え直す。照準を合わせて弾を放つ。
倍の人数になった彼らが従魔をすべて倒すのはそれからすぐだった。
●魔の森<中央――デクリオ・コア――>
凱とセレンと別れた先行班と、悠騎、鈴の5人は後ろを振り向くことはしなかった。
心配でないといえば嘘になる。だが今はそれよりも先にやるべきことがある。だからこそ前へと進んでいく。
暫くそうして走っていると、急に目の前が明るくなり始めた。
「なんだ? 急に明るくなってきたな」
「まさかコアにたどり着く前に外に出るなんてないよね?」
「レヴィ君、森の中を直進してきたんですからそんなはずないじゃないですか」
「冗談だよ」
軽口を叩きながらも警戒はやめない。
そして光の中へと飛び込む。そこにあったのは驚くほどに大きな木だった。
思わず一瞬だけ動きを止めてしまう。開けたそこにたった1本だけそびえたつ大木。淡い光を帯び、太陽の光を一身に受けているその姿は神秘的ですらあった。だがそれも一瞬の事だ。侵入者に気が付いた大木はすぐに攻撃を開始する。
《身を捧げよ……その身を捧げよ……森のために、我が身のために――捧げよ、その命。そのライヴス。森のために。我が身のために――――捧げよオォオオオオオオオオオオオオオオ!!》
真っ先に反応したのはレヴィとルキア、それに鈴だった。飛んできた葉に向かって攻撃し、叩き落とした。はっとして橘とレオン、それに悠騎も武器を構え突撃する。
橘は突撃のその最中、小さく呟いた。
「俺たちを先に行かせるために、あいつを倒すためにあいつらは……」
「ならば橘。さっさと望みを言え」
「魔纏狼……俺に、俺たちに、力を貸せ!!」
「いいだろう」
橘と魔纏狼が共鳴する。より力を高めていく。レヴィとルキアの援護を受けながら前へと突き進む。途中で枝の鞭が飛んできても気にすることはない。仲間たちが全て叩き落としてくれると信じているから。橘は、従魔へと突撃する。
不意に彼は通ってきた森を思い返した。そこには多くの敵がいた。仲間たちを置いて行かねばいけなかったほどに。
だがそのどれもが単独行動をしていた。時には複数体で襲ってきていたが、連携など取っていない。しまいにはこの場所だ。ぽつんとデクリオ級従魔だけが存在する聖域のような状態のこの場所には、他の従魔は一切存在していなかった。
「確かにお前には仲間が多いかもな。でもな、お前は仲間を信じることを……絆を知らねぇ」
彼の声に反応するかのように葉が群れを成して飛んでくる。その姿はまるで巣を突かれた蜂のような怒りを持っていた。
「教えてやる。誰かに希望を託すことを、誰かの希望を背負うことを、その重みを! ――やぁってやるぜェ!!」
レオンもまた、突撃の最中に共鳴する。大鎌を握りしめてコアへと一撃を放った。
異常に硬い従魔に、大したダメージを与えられなかったもののレオンは気にしていない。
「この身は誰かを護る為にある。ならば、恐れるものは何もない」
鞭のようにしなり、空を切る鋭い音を立てながら迫ってくる枝を払った。
共鳴する。赤い髪と、怪しく輝く紫の瞳。それは大鎌と相まって死神のような雰囲気を醸し出していた。堂々とした態度で前を向いている姿は、実に勇ましい。
「存分にかかってくるが良い、従魔よ」
レヴィとルキア、鈴は橘らを狙う枝を撃ちながら、時々飛んでくる葉に対処していた。
「まったく、数ばかりは多いんだから。デカブツってのはこう、もっと遅くてもいいんじゃないかねえ?」
「それには激しく同意だ!」
空になったオートマチックの弾倉を取り替えながら、ルキアはぼやいた。
「無駄口を叩いている暇があったら、もっと攻撃しませんか?」
「それはわかってるんだけどねえ……まったく、リオがもう1人増えた気分だ」
「……それはひどくないですか?」
フェイルノートから矢を放ちながらも注意する鈴の姿に、レヴィは思わず相棒であるリオの姿を重ねる。生真面目な人間というのはどこにでもいるということだろう。
話を聞いているのか聞いていないのか、ルキアが一歩前へと出た。
「きりがねーな。もっとガンガン行くぜ!」
ルキアとモダンタイムスは共鳴する。アイアンパンク特有の機械部分が淡い青の光を放ち始める。
「ヒュー。綺麗なもんだねえ……それじゃあ僕らもいこうか、リオ?」
「了解!」
レヴィとリオは共鳴する。大きく姿は変えないものの、髪色が半分赤に染まる。
グレートボウを構え、楽しげに笑った。
「ダンダカン」
「あいよ、リン。共鳴だな」
鈴もうーらと共鳴する。今までよりも遥かに上昇した腕を用いて、彼女は矢を放つ。
「それじゃ、いきますかね? 子猫ちゃんたち」
「……まったく」
「誰が子猫ちゃんだ! いいからやるぞ!」
「ははは」
オートマチックで鋭い一撃を放ち、ルキアはさらに前へ出る。レヴィは大木を中心に衛星軌道を取るように動き、突き刺すようにボウガンを撃つ。鈴は変わらずその場で弓を放ち続けた。翻弄された従魔の攻撃がバラバラになっていく。
「ほうら、今だよ。皆!」
足止めするかのように配置されたミーレス級従魔を倒し終わった凱、セレン、遊夜、真一郎らは再び森の中を走っていた。
「急がないと俺たちの出番、ないかもねぇ」
「それは少し困りますね。まだ試し足りないので」
「そういう問題ではないでしょう……」
のんびりとボケた発言をする遊夜とどこかずれた発言をする年上組に、凱は思わず突っ込んだ。セレンは苦笑している。
「それはともかく急がなきゃいけないのは間違いないでしょう。今この瞬間も他の能力者たちはデクリオ級と戦っているはずです」
「そうだな。悪いねえ、俺が遅いばかりに時間がかかってしまって」
頭をかきながら笑う遊夜にふっと笑みをこぼす真一郎。少しの間だが共に戦っていたため慣れたのか笑う余裕が出てきたようだ。
「……ん、音が聞こえてきた。もう少しで、着くかも?」
「お、そうかい。リーヤ、ありがとうな。それじゃあ、気合入れて急ぐとしましょうかね」
森の中を走り続けていると、発砲時に聞こえる音。何かを弾いている音が聞こえてくる。ユフォアリーヤが言う通り、戦場はもう近い。やがて森がだんだんと明るくなってきた。
光の中に飛び込むと、そこには傷つき朽ちていく大木と息を吐いて軽く脱力している先行組の3人、残りの2人がいた。
「……あれ? もしかして終わった感じ?」
遊夜のそんな間の抜けた言葉がだだっ広い空間に響いた。
●魔の森<内部――殲滅戦――>
「所詮は下級の化け物よな。正体が割れている時点で貴様らの負けは確定しているのだ。再生などさせぬよ。貴様らのような存在は枝葉の再生が常道ゆえなぁっ!!」
《アァアアアアアアアアアア――!》
剣を振り、枝葉を叩き落とし、従魔を蹂躙する悠騎とブリジット。共鳴している今、英雄が主導権を握り戦っているようだ。その姿は、妙に楽しげに映った。
「我を敵に回したことを、足りぬ知識で後悔して逝くがよい、我が前に無様な死に体を晒すことを、特別に許してくれよう」
「……随分と、楽しそうだねえ。いや、俺も少し暴れるか?」
「暴れるのはいいけど、森は燃やさないでね?」
悠騎と遊夜、レヴィの3人で組んで、彼らは北側の敵を殲滅していた。
見ての通り、倒しているのは半分近く悠騎1人であるが。どうやら、コアとの戦いで満足できる動きができなかったらしく鬱憤を晴らす勢いで暴れている。
遊夜とレヴィの2人は時折、銃とボウガンによる援護射撃を行うくらいだ。
「こっちは早く終わりそうだねえ」
「終わったら一服どうだい?」
「いいねえ。ま、その時は共鳴を解除してからだね」
「違いない」
遊夜とレヴィの2人は声を上げた笑った。
鈴は凱、セレンの2人と組んで東側へと向かっていた。
突撃しすぎるきらいのある2人をある程度たしなめつつ、順調に従魔を討伐していく。その数はあまり多くなく、最早散歩の様相であったため、その姿は保護者と子供と言ったものに見えなくもなかった。
「外周部から順に、と進めてきましたが。随分とこちらは数が少ないのですね。……それとも、コアによって維持されていただけで数はそれほど多くなかったのでしょうか?」
あまりに暇であるからか、考察を始める始末。
現状が想定内であることも相まって本当にやることがないのだ。
「この後、どうしましょう? どうやらこちらはもう従魔はいなさそうですし」
「私は他の所も見に行こうかと思っていますが」
「僕もそうしたほうがいいと思います」
「……そうですね。他の手伝いをしていればやることも出てくるでしょうし。早く終わるでしょうから。それじゃあ、移動しましょうか」
凱とセレンを先頭に、彼女らは移動した。
「うおぉおおおおおっ!!」
「はぁああああああっ!」
「いくぞおおおおおっ!」
「……はぁ」
そろいもそろって突撃していく様を見ながら、真一郎はため息を零した。
橘、レオン、ルキアの先行班3人と組んだからか敵の数が多い西側であっても見つけるたびに従魔がやられていく。腕試しが目的だというのに、道中くらいしか活躍していない。
「……ふぅ」
それに加えて、なぜか妙に暑苦しい。真一郎以外が皆叫び声を上げて突撃してるからだろうか。そんなに声を上げていると敵に位置がばれてしまうんじゃないかとも思ったが、もう殲滅のみだから関係ないかと思いなおした。
こっちは早く終わってしまうなと真一郎は思う。
彼がそうして思っている間にも橘は木を圧し折るんじゃないかという勢いで切り付けている。レオンは他の木も巻き込んでしまうんじゃないかと冷や冷やするほどに大鎌を振り回している。ルキアは狙いを定めているのかというほどに連続して鉛の塊を吐き出し続けている。
「これ、自分は必要だったんですかね……」
しまいには、真一郎は共鳴を解除していた。正直、彼の出る幕がないのである。下手に前に出ようものなら味方が起こしているあの暴風に巻き込まれ、怪我を負ってしまうだろう。
西側の殲滅作業は他の場所よりも早くに終わるのであった。
コアの討伐及び、従魔の殲滅完了。被害はなし。能力者たちの怪我もほとんどなかった。ゴミなんかも残されておらず、残されているのは危険をできうる限り排除した元の森のみ。確かにここで被害にあった者も少なくはなかったが、それらを最低限で抑えることができた。最高の結果で終わることができたのではないだろうか。
魔の森に住まう魔物たち……従魔は討伐された。これからはこの森はただの森となり動物たちも戻ってくるはずだ。こうして――魔の森、攻略完了。
結果
シナリオ成功度 | 普通 |
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