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綴る日をあなたへ
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/01/14 01:57:21
オープニング
「今月は、ダイアリーデーなのよ」
H.O.P.E.東京海上支部での研修後、パク エヒがそう切り出してきた。
彼女は先月、非リア充の悲しみからプッツンして通りサバ折り魔になった経緯の持ち主だが、エージェント達の活躍もあり、H.O.P.E.へエージェントとして登録、また、エージェント活動もし易いだろうという会社の配慮で新宿支社へ栄転したらしい。……通りサバ折り魔になったことあるけど。
で、ダイアリーデーとは何だろうか。
その前に、韓国の恋人記念日事情を説明しなければなるまい。
韓国は、毎月14日は恋人の記念日である。
2月3月は日本でも有名なバレンタインデー、ホワイトデーであるが、それ以外にも設定されているのだ。近年はブラックデーなんかも外国に進出しているが、それはさておき。
1月はダイアリーデー、1年間使う手帳を恋人へ贈るというものだそうだ。
ただし、その手帳は相手に渡す前に自分の誕生日や2人の記念日を書き込んでおくらしい。
……とは言え、エヒがプッツンすることになった、12月14日ハグデー、マネーデーより殺傷力は高くないだろう。
「とは言え、私も愛姫(アイキ)もまだ相手はいないわ」
エヒは先回りして、そう言う。
中身は年相応の感性を持っているが、外見と仕事の実務能力で高嶺の花と回れ右されてたエヒ(だからプッツンしたとも言う)はエージェントになり、異性のエージェントと交流する機会も得たらしい。が、良くて、知り合って間もない友人といった間柄なので、当然恋人は出来ていないとか。まぁ、本人も通りサバ折り魔の一件でガス抜きされたのか、のんびりいくつもりらしいが。
「でも、記念日を記すとか、恋人へ、とか、そういうのを抜きにして、誰かへ手帳を贈るのは悪くないんじゃないかと思って」
英雄相手なら、今年1年共に在る証として渡せばいいし、気の置けない仲間や友人へは今年も多くの時間を過ごそうという意味で渡せばいいだろう。恋人なら、ダイアリーデー的に贈り合うのも悪くない。
「折角だし、皆で買いに行かない? 日本には色々な手帳があるみたいだし」
エヒに誘われた『あなた』達は、時間もそんなに遅くないし、恋愛に特化して考えずに贈るならいいかと誘いに乗った。
さて、贈る相手に合う手帳は見つかるだろうか。
解説
●出来ること
・誰かへ贈るダイアリーを1つ購入する
※複数購入不可。また、贈る相手との関係は必ず添えてください。
確実に贈ることが可能な相手は下記となります。
・英雄
・同じ参加者(能力者・英雄問わず)
・リスト(後述)にあるNPC
購入は出来ますが贈る相手の明確な描写は出来ません。
・シナリオに参加していないPC
・リスト(後述)にないNPC
どちらも名前の提示があっても暈します。
●購入場所
・都内の大き目の雑貨を扱う店
特に女性向けのみ、男性向けのみという店内ではありません(一般的なもの)
ダイアリーも1年の始まりだけあり多く取り揃えてあります。
電子系・高級過ぎると判断出来るもの・版権もの以外なら、あるものとします。
詳細に悩んだ場合、相手への想いとある程度のジャンル指定をいただければ、お任せでもOKです。
●リア充的な贈りをする場合
・予め誕生日や記念日を書いて渡すか、2人で決めながら書き込み、贈り合うかはお任せします。
●贈答可能NPC
・剣崎高音、夜神十架
プレイングで指定があった場合のみ登場します(交換の為に贈ってくれた人の分だけ購入、交換します)
指定なければ登場しません。
・パク エヒ、愛姫
指定なければ最低限登場&彼女達同士での交換となります。
指定があり、複数の場合は贈ってくれた人の数だけ購入、交換します。
●注意・補足事項
・公共の場がメインとなります。TPO注意。店内には皆様以外の方も多くいますので、ご注意ください。
・手帳のアイテム配布はありません。
・糖度希望の場合は「☆」を。ただし、プレイングの内容や双方の関係的に糖度が厳しい場合もあります。また、全年齢の範囲での頑張りとなります。予めご了承ください。
・ダイアリーの希望ジャンルによって、店内で他参加者様と遭遇した場合、挨拶や軽い雑談程度の絡みが任意で発生することもあります。特定の方とだけ接していられる可能性については断言出来ません。
リプレイ
●ずっとあなたへ
「あ、えっと、あの……あっちを見てきますのでっ」
卸 蘿蔔(aa0405)は、店内で遭遇したパク エヒと愛姫に声を掛けられるよりも先にそう言って脱兎のごとく逃走した。
(こ、怖かった)
レオンハルト(aa0405hero001)と別行動である為、初対面に等しい彼女達と会話なんて出来ない程怯えている。
(一緒に来なければ良かったかも……)
そうすれば、こんなことにならなかったかもしれない。
蘿蔔は誘いに応じてしまったことを後悔した。
深く溜息を吐き、直後、すぐに周囲に気づいて「何でもありません」と慌てて逃げ出した。
(何なんだ一体)
レオンハルトはトイレの近くにあったベンチに首を傾げながら座っていた。
研修後、少し席を外した際に何かあったのか、蘿蔔は皆と買い物へ行くと言い出した。
店に着くなり待っているように言われ、待っているのだが、蘿蔔が交流関係にないエージェント達と買い物など出来るのだろうか。
(俺がいなくて平気なのか?)
任務ならともかく、そうでなければ一緒にいなければならないこともないだろうし、と思う。
(我ながら甘いが)
レオンハルトは、軽く溜息を吐いた。
そんなことを知らない蘿蔔は落ち着いたカーキ色のダイアリー、そして、ラッピング用品を手にレジへ。
「贈り物ですか?」
「とととととんでもないですそのままでいいですごめんなさい」
レジを担当する店員すら怖くて泣き出してしまった。
「どうかされました?」
レジ周辺の注目に気づいた剣崎高音(az0014)が声を掛けてくる。
だが───
「えっと、何でもないですごめんなさい!」
蘿蔔は品物をひったくるように受け取り、逃げ出した。
ガタガタ震える手を押さえつつ、購入した手帳へそれを書き込んでいく。
(私はレオンがいないと何も出来ませんから)
全て書き終え、ラッピングも済ませ、待っているレオンハルトの元へ。
「え、俺に?」
「あの、今日はダイアリーデーって言って。韓国で大事な人に手帳を送る日らしいのです……それで、これ。レオンにあげます……」
レオンハルトへそれを差し出すと、蘿蔔から贈り物は初めてとあり、レオンハルトはとても嬉しそうだ。
中を開け、手帳であると、スマートフォンの扱いが今だ得意ではない彼は更に嬉しさを滲ませ、蘿蔔は嫌がらせの一環である女の子らしいデザインを断念し使用頻度重視で考えて良かったと心の中で呟く。
「何か、げーむっぽい単語が書いてあるけど」
「正解です。欲しいゲームの発売日です」
蘿蔔がレオンハルトへ買って貰えるかもと思って書いたと微笑む。
「俺に贈ったものなのに……」
レオンハルトの呟き通り、カレンダー部分へ書いたのは蘿蔔の要望とも言えるもの。
この世界に疎い彼でも解るよう簡潔な説明も添えた。
「こんなことだと思った」
気に入ったけど、と言いながらもレオンハルトは溜息。
「これは今年1年分のものですからね」
「なら、来年も欲しい」
「はいっ。来年も再来年もその先もずっとあげるのですっ」
「ところで、聞いたんだが───」
レオンハルトが嬉しそうに笑う蘿蔔へ高音から泣いて逃げ出した話を聞いたと切り出してきた。
蘿蔔の贈り物で大体気づいたようだが、余計に心配とレオンハルトは彼女へ単独行動禁止を言い渡したそうだ。
●友達と共に
首を傾げて戻ってきた高音を見、カグヤ・アトラクア(aa0535)も首を傾げた。
「どうかしたのかえ?」
「蘿蔔さんが泣いていらしたので、何かあったのかと」
心配なので、レオンハルトへ伝えてくると高音は彼を見かけた場所へ歩いていく。
「こういうハプニングはネットの通販では味わえないのじゃ。のぅ、十架」
カグヤが夜神十架(az0014hero001)を見ると、十架はこくこく頷いた。
(こういう青春っぽいことを何でもやってみようと思えるのは友達だからなのじゃ)
記念日記したり一緒に行く予定を書いたり……友達だから出来ること。
尚、クー・ナンナ(aa0535hero001)は、幻想蝶の中で睡眠待機である。
「可愛い以外のものも意外にあるのじゃな」
久々の実店舗での買い物とあり、自身の趣味の範囲外の手帳も目に飛び込んでくるが、特に偏りがない店だからか、可愛い以外のものもある。
(エージェントの依頼をこなしている訳でもなし)
特に戦闘を伴う任務なら、効率良い立ち回りが必要だが、今日はそうではない。
女の子らしーく、ぶらぶら~っと店内を歩き、女の子だけが使っていい呪文アレモコレモカワイイを唱えれば、買い物はバッチリだ任せておくが良い!
「……これ、カグヤ、みたい……」
十架がカグヤの着物の袖をちょいちょい引いた。
「十架にはわらわがこう見えるのかの?」
「綺麗な表紙ですね」
カグヤが手にしてみると、別のものを物色していた高音も加わった。
十架が指し示したのは、和紙張りのものだ。
黒、赤、金が印象的な配色で、柄は蝶が舞っているもの。
配色は身に纏う着物のイメージだろうが、蜘蛛のような女と評されることを知っているカグヤは喰らう方ではないかと思ったが、十架は選んだ理由をこう語った。
「……次から、次に……ひらひら、してる……もの」
臨機応変の対応を、そのように受け取っていたらしい。
「わらわも気合入れて選ばねばの」
贈りたいから、選んでくれと言って誘ったのだから、選ばれっぱなしにすることは出来ない。
「私もプレッシャー掛かりますね」
そう笑う高音も2冊になってしまうがカグヤの手帳を選んでくれるそうで。
「依頼で各国に行くこともあるからの、コンパクトなサイズが良いじゃろうな」
「そうですね。折角買っても使い難いのは困ってしまいますし」
カグヤと高音の会話に、これにしようと決めた十架はそれに該当していると言われ、嬉しそうにはにかむ。
と、中城 凱(aa0406)と離戸 薫(aa0416)、礼野 智美(aa0406hero001)と美森 あやか(aa0416hero001)を見かけ、彼らも持ち運びから大きさを重要にしている話を聞き、考えることは皆同じかと思ってみたり。
(今まで使ってた手帳では無駄を考えなかったからのぅ。楽しいのじゃ)
任務関連の記録、専門分野の講習会、資格や免許の試験予定……最近ではスマートフォンの普及もあってスケジュール管理はデータで行うことが多かったが、自分の手で書くことが大事ということもあるし、今回はなしで、と頭の中で考える。
「高音と十架の分じゃ、ペアルックになるようなデザインがいいのじゃ。……これなんてどうじゃ?」
カグヤが見つけたのは、レースのついた可愛い系の手帳だ。
ある程度書き込みが出来る週間のセパレートタイプで、高音はパステルブルーで星とリボン、十架はパステルピンクで花とリボンとペアルックでありながら単純な色違いだけではないものだ。
(高音もわらわと同じで事務的な手帳を使っておったからの)
それ専用にならないチョイスは、高音と十架も顔を輝かせる。
「私は、これを」
高音が切り絵で花を表現した表紙のダイアリーを指し示す。
少し大きめなのは、十架が持ち運び可能なものに対し、こちらは家用でデータバックアップに使い易いようにと選んだそうだ。
「データは幾重にも管理が必要じゃからの」
そうして、3人は贈り合うダイアリーを手にレジへ。
「ありがとう」
こういう機会だ、しっかり言葉で伝えたいとカグヤが2人へ礼を言えば、2人からもお礼が届く。
これも、友達と一緒の買い物ならではのこと。
●それぞれに交わる
凱、薫、智美、あやかはコンパクトサイズの手帳を見て回っていた。
「妹達なら大き目の方がいいと思うんだけどね」
薫は幼い妹達ならばと触れるが、まだそういう年齢でもないと軽く肩を竦める。
「今はお絵かき帳でいいんじゃないか? 俺達位からちょうど使うかなって感じだし」
「そもそも記念日にならないと買えもしないのか?」
智美は「よく考えつく」と呆れた声で物色する。
「日本人の俺と薫には馴染みがないから何とも言えないが、馴染みがないと手帳にでも書き込まない限り忘れそうだよな」
「お前達の年齢ならバレンタインとホワイトデー、クリスマス、誕生日程度で十分だ」
凱の意見を智美はばっさり。
4人で纏まった形で見て回っていると、天都 娑己(aa2459)と龍ノ紫刀(aa2459hero001)も自分達と同じようにあちこち見て回っているのが見えた。
龍ノ紫刀がこちらを見たので、歩み寄る。
「沢山あるから、娑己様が悩んでるんだよ」
一生懸命悩んでいる様子の娑己の側で龍ノ紫刀は「去年も書かずに終わったのに買うみたいなんだよねー」と言いながらも、その眼差しは優しい。
「去年……契約してどの位ですか?」
薫が自分の契約時期を持ち出し、尋ねてみる。
というのも、記憶がない英雄達は誕生日を憶えていないが、英雄の中の時間経過はどうなのだろうという話題になったのだ。
「どうなんだろ? 英雄によっては、そもそも長生きって人とか、元の世界じゃ人間じゃない人もいるし」
龍ノ紫刀が自分が契約した時期を話すも、時間経過に関しては自分もよく解らないと零す。
英雄という括りで能力者と誓約を成立させているが、元の世界で人間ではなかった者や時を超えて生きている者もおり、時間経過がどうであるかなど、正確に答えられる者はいないだろう。
「それもそうですね。色々な英雄の方がいますし」
「実感することがあれば、自分の中の時間が判るかもしれないが、今はまだ、か」
あやかと智美も顔を見合わせる。
そこへ、サラ・カミヤ(aa0527)とアリア・ピト(aa0527hero001)がやってきた。
「いい手帳が見つかりましたか?」
「中々いいのがなくて」
娑己が悩んでいると伝えると、サラはアリアに贈るものを既に見つけたとのことで、自身のチョイスを見せてくれた。
アリアを考慮し、失くさない大きさの手帳は記入欄も余裕があるものの週間タイプらしい。
それでいて、使うことに飽きたりしないようにデフォルメされた動物達がティーパーティーを開くというストーリー仕立てのあるものにしたとか。
「小学生位の子に贈るようなものですけど、ピトに贈るとなるとそうなってしまいますので」
「……それだっ! ありがとう! 紫、あっち行こう!」
サラの微笑に何か思いついた娑己は、「またねー」と手を振る龍ノ紫刀の腕を引っ張り、別のコーナーへ歩いていく。
「ヒントになったようで。……皆さんは決められました?」
「俺達位だと逆に生徒手帳と同じ位の大きさが扱い易いと思うんですよね」
「値段的にもお小遣い圧迫しない範囲がいいですから」
サラの問いに凱と薫が答えると、なるほどと頷く。
智美とあやかはバイトをしているとのことだから違うだろうが、彼らは中学生、お小遣いの遣り繰りを考えれば、ここにある中でもお手頃なものを選びたいのだろう。
「サラ、あたしも買っていいのかな?」
「いいですよ」
サラの買い物に付き合う感覚だったらしいアリアは自分も選んでみようと思ったらしい。
息抜きにもなるし、選ぶのも楽しみたいから色々見て回りたいという主張を聞き、サラもアリアと共に別のコーナーへ消えていった。
「俺達も見繕うか。……ん、あれなんか良さそうだな」
智美が何気なく視線をやった先にコンパクトな手帳が目に入った。
無地の表紙のものだが、色のバリエーションは多い。
値段も高くなく、制服のポケットにも入れられる為、皆これにしようという話になった。
「あやかは赤だよな?」
智美が赤を取り、あやかへ振り返る。
言うまでもなく、智美はあやかへ贈るつもりらしい。
親友同士贈り合うのもいいか、と凱は黒を手に取った。
「薫は黒でいいか?」
「うん。凱も黒でいい?」
「智ちゃんも黒となると、あたし以外の区別が大変そうね」
あやかがぱっと見の区別がつかないと言うと、すぐ近くのシールコーナーを指し示した。
贈る手帳の表紙にシールを貼付すれば解決する。
ここで個性を出せばいいかとなり、シールを物色へ。
「僕と凱の誕生日、あと、家族の誕生日かな。あやかさんと智美さんは誕生日憶えてないから、出会った日がそうなのかな」
「だろうな。中学に入って習い事の類は忙しいから止めたし。塾もまだ問題なさそうだ。強いて言うなら、エージェントの研修とかだろうな」
薫に続き、凱が手帳をパラパラ捲る。
コンパクトなだけあり、薄くて軽い手帳は必要最低限の機能ではあるが、使い勝手は悪くなさそうだ。
「しかし、調べてみたが、色々な日があった。男が金を出す、女が金を出すと判るものもあるが、判別つかないものもあった」
未成年じゃ参加出来ないものもあった、と智美は凱を生暖かく見ながら話す。
そう話している内にシールコーナーへ。
割り勘でシート1枚だけ買えばいいとなり、冬っぽいシールを選ぶと、纏めて購入。
「こういうのも手作り感あっていいよね」
「だな」
薫が焼けた餅のシールを貼って凱へ渡すと、凱も木の葉のシールを貼って薫へ渡す。
「はい、智ちゃん」
「俺も貼ってみたぞ」
あやかが蜜柑のシールを貼って智美へ渡し、智美も炬燵のシールを貼ってあやかへと渡した。
落としたら困るから、家に帰ったら、住所を書いておくといいかもしれない、なんて話しつつ、彼らは彼らの買い物を終えた。
「んー、これなんかいいかなー」
アリアが手にしたのは、パステルの色使いが優しい和紙が貼られた手帳だ。
水の波紋を思わせるような模様は、そういう風に染めたと判る。
「優しい感じがするよね」
明るい感じであっても、原色ではなく、パステル系をというのはアリアの好みらしい。
「中は……結構普通ですね」
「あんまり野暮ったいのは面白くないし、サラは色々書くって言ってたけど、イマイチピンと来なかったんだよねー」
サラも見てみると、中はベーシックとも言える構成であった。
ビジネスマンが使うようなものではないが、使い難いと思うものではないようだ。
「色々聞いて参考にしたけど、これがいいかなって。サラは自分が使い易いの買うと思うんだけど、あたしはあたしが選んだのがいいかなって」
「それもひとつの贈り方ですよ」
サラが微笑んでいると、購入したアリアはエヒへそれを差し出した。
ダイアリーデーの存在を教えてくれたお礼、ということだそうで。
既にサラから贈られている為、エヒは手帳が楽しくなるようにと手帳に合いそうなシールをピトへ贈ってくれた。
「ありがとー!」
「なら、使い慣れないといけませんね」
お礼を言うアリアへサラが習慣づけることが大事と説く。
最初から使いこなそうとするより、出来ることからやってみた方がいい。
義務にするとつまらないから、楽しくなるよう自由に使った方がいいだろう。
「検閲はしますけどね」
にっこり笑うサラは自分の記録を自分で作らせても、抜かりなかった。
「あっ! これがいい! これにするねっ!」
コーナーを移動して、物色していた娑己はやっと見つけたと歓声を上げた。
「良かったね、娑己様」
「うんっ!」
(使い勝手は悪そうだけど、紫には絶対に似合うよね!)
手にしたのは、巻物風の手帳、というより、巻物そのものといった手帳だ。
「ここで待ってて、紫」
「了解だよ、娑己様」
娑己は龍ノ紫刀を待たせ、レジへ。
そして───
「はいっ!」
娑己が自分へ向けて買ってきた手帳をラッピングされた状態で差し出し、龍ノ紫刀は心底驚いた。
「紫って、毎日あったことをメモしてるでしょ?メモだとバラバラになっちゃうし、日記に書いたらどうかなって思って!」
「そんなとこ見てたんだ……」
娑己の言葉を聞き、龍ノ紫刀は自分の胸が温かくなるのが判った。
自分を大事な親友と思ってくれる娑己は、龍ノ紫刀にとって親友でもあり主でもある。
だから、いつも自分が見ているばかりと思っていただけに、この贈り物は嬉しかった。
(あ……)
開けて、手帳を見ていた手が止まった。
それは最後の部分に『もとの世界へかえって、しあわせにくらす』と娑己の字で書かれてあったから。
きっと店員にお願いし、特別に書き込ませて貰ったのだろうと察するも、龍ノ紫刀の心中は微妙だ。
頭に姫巫女という名が浮かぶ自分は、元の世界では愛する主に仕えていた従者だった。
大切にしていただろうと思うが、今は一生懸命な娑己に惹かれ、いつか帰りたいという気持ちが薄れていたのだ。
いつか元の世界へ帰してあげたいと娑己が自分のことのように考えてくれるのは素直に嬉しいけれど、気持ちをはっきりさせられない。
(でも、今は……)
「ありがとう、娑己様……。大好きだよー」
「ひゃぁ!?」
龍ノ紫刀が抱きつくと、娑己は顔を真っ赤にしてバタバタし出す。
それが、可愛らしい。
(最後のページはまだまだずっと先でいいや……)
その想いはまだ口にせず、娑己の傍にいよう。
●綴りに込めるは
「いいですか、立ったままや歩いたまま寝てはダメですからね!」
「寝る時は最低でも向かいのネカフェに行くから」
不知火 轍(aa1641)は、雪道 イザード(aa1641hero001)へブレることなく答えた。
早く帰りたい。寝たい。あったかおふとんにダイブしたいっていうかおふとんが来て。
轍としては早く家に帰って寝たいのに、エヒの言葉を聴いたイザードが今年も仕事をガンガン入れるには手帳が必要だからちょうどいいと便乗してしまった。
完全にやる気なく、帰ろうとしても、張り切りモードのイザードがまだ買っていないと許してくれない。
「これにしましょう」
機能性重視のものを選び、これでスケジュール管理が出来ると喜んだイザードの手帳は本人のセンスが壊滅的な為、うさちゃんファミリーのデザインを手にしていた。
「いいんじゃないの」
ファンシーに可愛いが、うさちゃんおじいちゃんが狩人で地味にシュールなそれであっても、本人がいいならいいんじゃないのと投げる匙すら最初から持っていない轍はそう言う。
それなら、と買おうとするイザードへ、轍が何かに気づいた。
「……それ、また今度」
そう言う轍の視線をイザードが追えば、その先には佐倉 樹(aa0340)の姿があった。
「どれがいいかな……」
樹はシルミルテの為にスケジュールダイアリーのカバーを物色していた。
というのも、樹自身は年末に手帳を既に買っており、しかも気に入っている為、購入の必要がなかったのだが、シルミルテが「2人デ使っテいくノをオ願いしタイノ」と願ったのだ。
「そレデね、『色』に、樹ノ想いヲ込メテほシイなっテ」
「シリィのお願いなら喜んで」
誰にも聞こえないであろう大きさの声で呟き、ほんの少しだけ微笑んで応じた樹は、そうした経緯でここに来ている。
手帳本体は最後まで使いたいから、年末自分が購入したものと同じものを、月間ダイアリーの他に日付ごとに1ページ設けられ、書くスペースがたっぶりあるものだ。
その後は、手帳に掛けるカバーの吟味へ移行している。
(シリィだと、白か黄色かな……。んー、でも、私が持ってるのとお揃いになっちゃうけど、やっぱり意味合い的には赤かな)
白は感謝、黄色は尊敬。黒は謝罪。
赤が女性からの好意を示し、青が男性からの好意を示す。
元々は……と思いを馳せつつ、己が半身へ贈りたい色は赤と樹は思う。
(なら、間に何か挟む奴を加えればいいかな)
それなら、白も黄色も含ませられる。
樹は店内で1番大好きで仲良しな友達の為に手帳選びをしているシルミルテ(aa0340hero001)を想った。
その姿を見た轍が今まで手にも取らなかったダイアリーを手に取る。
割と真剣な表情で、イザードが「おや」と表情を動かした。
「随分真剣ですね?」
「……人との縁は、大事だからさ。……感謝は伝えないと、な」
轍とイザードは、樹とシルミルテと年末年始のH.O.P.E.主催のイベントで知り合った。
平たい胸族などと言う者もいるようだが、轍とイザードは樹へ感謝を込めて渡せればと考えたのだ。既に年明けから日数が経過しており、本人も持っているかもしれないので、なるべくセカンドとして使えるものがいい。
「これなら、あっても邪魔にならない、かな」
轍が選んだのは、傘を広げたウサギが風に乗って木々よりも高い空を飛んでいる図柄のダイアリー。
少し大きめサイズで、家用のものだろう。
さっき通り過ぎた高音がカグヤへ持ち運びのものではなく、バックアップ的に家で使うものを贈っていたのを参考にしたのだ。
「受け取って貰えると良いですね」
「……その時は、その時、かな」
その樹は白いウサギと三日月のステッカーを手にしていて、シルミルテを想って選んだのだろうと判った。
頃合いを見計らって渡そうと決めた2人はレジへ向かう。
一方、シルミルテは真剣に悩んでいた。
(似合うノハ白ダよネ……)
自分の大好きを右ストレートでぶつける勢いなら、赤と青から選ぶ必要がある。
けれど、彼の友人には、断然、選びようの余地もない位、全力で、白が1番似合う。これは断言したい。
うさ耳から湯気が出る勢いだが、シルミルテは気づいていない。
「チョット静かニネ」
口をもぐもぐさせて呟いた後、白い手帳を吟味するシルミルテ。
「! コレ!」
シルミルテが手にしたのは、白地にちょっとふくよかなひよこが表紙に1羽書かれたシンプルな手帳。
裏を返すと、鶏がドヤ決めてポーズ取っていて、ちょっとコミカル。
中は書く所が多く、使い勝手は良さそう。
シルミルテはこれにしようと決め、ラッピングコーナーへ。
「ワー! 赤だー! 赤ダー!」
「赤でそんなに喜んで貰えるとは思わなかったよ。気に入った?」
「ウン! スッゴク!!」
シルミルテと合流した樹がそれを贈ると、シルミルテはうさぎの耳をぴょこぴょこさせて喜んだ。
だって、赤は本当に本当に大切な贈る色だから。
しかも、「このウサギ、シリィっぽかったから」と添えられたステッカーには三日月もあり、白と黄色も込めてくれた。
手帳には、ちゃんと出会った日が記念日として記されてて、こんなに嬉しい手帳はない。
「似合うの、あったの?」
「ウン!」
樹が問うと、シルミルテはご満悦。
ラッピングも青に星と雪が舞う袋と赤くくるんとしたリボンを買い、帰ったら自分で包装するそうだ。
きっと喜んでくれるだろうと樹が思っていると、轍とイザードがこちらへやってきた。
「……遅くなったけれど、縁繋ぎイベント、協力、ありがとうね。持ち運びはあるかもしれないから、家用にと思って」
「今後ともよろしくお願いいたしますね」
「不知火さん、雪道さん、ありがとう」
「あリがトー!」
家用ならいいかと樹が受け取ると、轍とイザードは邪魔にならない頃合いは見計らっていたが、長く話し込むことはせず、軽く手を上げて彼女達と別れた。
「……寝る」
「帰ってからにしましょうね」
轍へイザードがそう言うと、轍はイザードを見た。
「……何で、お前は幻想蝶に、入っててくれねぇのかなぁ」
「お世話するのが自分の生き甲斐ですので!」
ただし、出会いはある意味イザードが轍のお世話になっていたりする。
「……仕事、取って来なきゃ、好きにすれば良いさ」
「えぇ。好きにさせていただきますよ」
だから、夕食の買い物終わってから帰宅。
それを聞いた轍は、やっぱりおふとんが迎えに来るべきだと思った。
綴るべき日々は、明日へと続いている。