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猫ちゃん達を捕まえて!
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招き猫回収作戦
最終発言2016/01/03 02:06:43 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/01/02 22:07:42
オープニング
●まねき猫が招くもの
「俺は実験場でまねき猫の様子とだるまが逃げた経路を探すから、フィルは能力者を集めてくれ!」
今回、実証実験をしていたのは、だるまだけではない。九条特製のまねき猫型AGWも実験場に一緒においてあったのだ。
「あ〜……」
目をそらしたフィリップを九条は睨む。
「……今度はなんだ?」
「いや、まねき猫なんだけどさ……君のいとこが見学に来て、持ってっちゃったんだよね……」
「まねき猫を持っていった俺のいとこというのは、猫崎タマ子か?」
猫崎タマ子は猫カフェを経営している、気の強い女性である。
「そう。タマ子ちゃんが、どうしても欲しいって言って」
へらりと笑ったフィリップの横面に九条の拳がめり込んだ。
ふふふ〜ん♪ と、上機嫌で商店街を歩くのは猫崎タマ子である。その腕にはちょっと大きめのまねき猫が抱えられている。
「み〜ちゃんもいいもの作るじゃない! これでウチのお店も安泰だわ!」
経営する猫カフェに着くと、タマ子はさっそくまねき猫が鎮座する場所を作り、フィリップが教えてくれた方法でスイッチを入れる。
まねき猫の首についている鈴を指で弾いて、ちりんっ♪ と鳴らす。
たったそれだけ……。
「あとは、お客さんが来るのを待つだけね」
結果を楽しみに、猫達がいる部屋を掃除していると、数分後には信じられないことが起こった。
「……」
以前、ゆきだるま型AGWの実証実験をした時にゆきだるまが逃げたネットの穴を九条は見つめる。
それは、ゆきだるま逃走事件の後に、修繕したはずだった。
経費削減のために九条とフィリップで塞いだのだが、九条が塞いだ穴はしっかりと閉じられたままである。
再び開いてしまったのは、フィリップが雑に塞いだ箇所だ。
苛立ちながらその穴を見つめていると、白衣に入っていたスマートフォンが振動した。
九条はディスプレイに表示された名前を確認することもせずに、電話に出た。
途端、悲鳴が聞こえる。
『助けてー!! みーちゃん!!』
猫崎タマ子の悲鳴に、九条はその目を細める。
九条製作まねき猫型AGWが招き寄せるもの、それはその名の通り、猫である。
「そろそろ電話してくる頃だろうと思った。早々に返してもらおうか? まねき猫を」
今頃、外を散歩中だった飼い猫から野良猫まで、店内は大量の猫で埋め尽くされているはずだ。
『返す! 返すから!! 助けて! みーちゃん!!!』
「猛獣使いのエージェント達に頼んでやるから、みーちゃんと呼ぶな」
そう言うと、九条光(くじょう みつる)ことみーちゃんは通話を切り、フィリップへ電話をかけて、追加召集の指示を出した。
ピンポンパンポーン!
『追加召集する! 猫好き&猫の扱いに長けた能力者は至急、屋外実験場へ集合せよ! AGW試作品のまねき猫を回収してもらいたい! 詳しいことは屋外実験場にて説明する!! いいかい? これもやっぱり至急だからね! 超緊急だからね! タマ子ちゃんのためだからね! よろしく頼んだよ!!』
※屋外実験場で受けた詳細な説明は解説のとおり
解説
●目標
・猫だらけの猫カフェからまねき猫型AGWを回収してください。
●登場
・まねき猫型AGW 一体
・猫を招き寄せます。
・猫達のテンションを上げます。
・首についた鈴がスイッチです。
●場所と時間
・日中
・猫カフェ タマらんど(商店街のなかにあります)
●状況
・まねき猫型AGWによって猫が招き寄せられています。
・まねき猫のスイッチを切らない限り、時間の経過とともに猫は増える一方です。
・外に出れる飼い猫、野良猫、どんな猫でも招き寄せます。
・扉が閉まっていても、器用な猫が開けてしまいます。
・猫達はテンションMAXです。(※猫パンチや蹴り、爪などにご注意ください!)
リプレイ
●
「ああ……猫がたくさん……」
猫カフェ タマらんどを訪れたエージェントの遠江 琴葉(aa2565)は、店内の様子を見て、自然と頬が緩む。
狭い店内に、街中の猫をかき集めたんじゃないかというほどの猫が入り込み、床やソファーだけでなく、机の上やカウンターの上、戸棚の上にまで猫達がいる。居眠りするもの、ソファーや木材をひっかいているもの、走り回るもの、猫同士でケンカするもの……様々である。
そんな猫があふれすぎる状況も、琴葉には可愛く見える。
「たくさんもふもふできるかしら……」
店内に入った琴葉は、大人に交じってそわそわしている子猫を見つけると、そっと抱き上げた。
「面倒なことになってるわね」
ポッキーをぽきぽき食べながら、現場に到着した天間美果(aa0906)は猫カフェの扉から中を覗き込んだ。
「とりあえず、共鳴ね」と、美果は英雄のベルゼールと共鳴すると、そのふくよかな体をさらに膨張させ、衣装はローブに代わり、まるで物語に出てくる大魔女のような姿になった。
その巨体で、猫カフェの店内へと入っていく。
「エージェントの仕事ってこんなのもやるのかよ……」
猫カフェの扉を開けたはいいが、入るのにすこし躊躇しているのは犬派の佐々木 孝太郎(aa2574)だ。
「死人が出るようなもんじゃないだけマシかね」
店内に入ってすぐ、孝太郎は琴葉に気がついた。
子猫を抱いて、頬が緩みっぱなしの琴葉の様子に、孝太郎は口角を上げる。
「琴葉は猫が好きだったんだな」
そう話しかけると、孝太郎がいることにやっと気づいた琴葉は慌てて顔を引き締める。
「なんのこと?」
普段のクールを取り戻し、返答する琴葉に孝太郎は笑う。
「真面目な琴葉にも、そういう一面もあるんだな」
「わ、私は別に猫と遊びたいわけじゃ……!」
すこし大きな声を出した琴葉に驚いて、子猫がミャーと鳴く。
「あ、ごめんね。びっくりした?」
眉尻を下げて子猫を撫でる琴葉の姿に、孝太郎は琴葉の頭をポンポンと撫でる。
「別に、猫好きなのを隠すことねーだろ? 猫、可愛いじゃん」
「……孝太郎は犬派なんじゃないの?」
「犬派だけど、動物は全般的に好きだぜ? アニマルマスター感あふれてるだろ?」
「なんなの? アニマルマスター感って……はじめて聞いたよ」
「とにかく、早々に依頼を解決して、猫達と遊ぼうぜ」
そう言った孝太郎の耳に、悲鳴が響いた。
「イターイ! 痛いわよ〜!!!」
声のほうを見ると、無視のしようのない巨体があった。
その姿に孝太郎がすぐには気づけなかったのは、まるでキャットタワーのように複数の猫達がしがみついていたからである。琴葉が気がつかなかったのは、単純に可愛い猫達に夢中だったからである。
美果がまねき猫のほうへ向かった瞬間から、猫達は彼女に飛びついていたが、どうやらそれまではちゃんと爪の手入れがされている猫達だったようで、爪が皮膚に深く突き刺さることはなかった。
しかし、すこぶる目つきの悪い虎柄の斑模様が入った猫が飛びついた瞬間、美果は悲鳴を上げたのだった。美果の厚みのある肉に、猫の鋭くのびた爪が突き刺さる。
「いや〜! はなして〜〜〜!!」
その猫を離したくても、他の猫達も乗ってくるものだから、上手いこと体を動かすことができない。
「美果……大丈夫か?」
なんとか助けに寄ろうとする孝太郎だったが、その足元には猫達がうじゃうじゃいるため、美果に近づくこと自体が一苦労である。
●
店内に美果の悲鳴が響いている頃、猫カフェ タマらんどの看板を見上げるひとりのエージェントがいた。
「こんな形でまた訪れることになるなんてね……」
言峰 estrela(aa0526)…… 彼女は、この猫カフェの壁にイマーゴ級の従魔が憑いてしまった時にも、ここを訪れていた。
「あの時もらった無料券……まだ使っていないし、終わったら使わせてもらおうかしら?」
扉のノブに手をかけると、「ちょっとキミ!」と声をかけられた。
「わーっ、遅刻っ遅刻っ! エージェント初出勤で遅刻はまずいよ〜!」
エージェントとなったばかりのエリアス・B・ラビット(aa2870)は走っていた。
九条からとても単純な依頼だと聞いてはいたが、だからといって遅刻していいわけではない。それは、仕事をする上では当然のことだった。
これまでの記憶を失ってはいたが、そうした当然のルールはよくわかっている。知っているというよりは、感覚として理解しているという感じだ。
途中、転がる赤いだるまを杖を振り回しながら全速力で追いかける老人とすれ違いながら、エリアスは依頼の現場に到着した。
現場となる猫カフェの前で、ひとりの少女を見つけた。
(お客さんかな?)
おしゃれなニット帽子に、レースのついた可愛いコートとスカート……とても、これからAGWを回収するような姿には見えず、エリアスは彼女を客だと思った。
猫カフェの扉のノブに手を触れた少女に、エリアスは慌てて声をかける。
「ちょっとキミ! 今から、そこに入るの? 今はちょっとやめたほうが……」
少女が振り返る…… そして、振り返った少女の瞳と目が合った瞬間、エリアスは脳にガラスの小さな破片が突き刺さったような頭痛を覚えた。
「痛っ……!」
頭をおさえ、顔を伏せると、少女が駆け寄ってきた。
「大丈夫?」
頭をおさえてうつむいたエリアスの顔を、エストレーラは覗き込んだ。
一瞬、辛そうな表情を見せたエリアスだったが、エストレーラがその肩に優しく触れた瞬間、彼はぱっとその顔をあげて、一歩後ろにさがるとその優しい手から逃れた。
「なんでもないよっ!」
「そう……? ねぇ、貴方……ワタシとどこかで会ったことない?」
「え……」
戸惑うエリアスに、エストレーラは小首を傾げる。相手を悩ましたいわけではないから、エストレーラはすぐににこりと明るく微笑んだ。
「変なこと言っちゃったかな?」
「……」
「貴方、エージェントでしょ? ワタシもエージェントなの。行きましょう」
エストレーラは扉を開いた。
●
店内に入ったらタマ子に挨拶をしようと思っていたエストレーラの目に飛び込んできたものは、叫ぶ猫まみれの美香から猫を引き剥がしながら猫に埋もれていく孝太郎と琴葉の地獄絵図である。
「……すごいことになってるわね」
「うわぁ……これは、大変そうだね……」
店内にタマ子の姿を探すと、どうやら彼女は店で飼っている猫達の興奮を抑えるのにてんてこ舞いのようである。
「挨拶はスイッチを切った後になりそうね」
「お菓子! お菓子あげるから!! はなして〜!」
美果がローブを揺すって紅茶入りクッキーを床に落とすと、猫達は包装してある袋を見事に破って中のクッキーをあっという間に奪い去っていった。
しかし、美果をキャットタワーのように登り、楽しむ猫が減ったわけではない。
「どうして、はなれてくれないの〜!」
それは、身長百八十センチちょっとの美果の体型が猫達にとっては魅力的だからである。
ローブの間から他のお菓子もどんどん落としてくる美果に驚いて、琴葉は慌ててそれらを拾う。
「天間さん、私が買ってきた猫ちゃん用のお菓子で猫ちゃんの気を引きましょう! 人間用のお菓子では、猫ちゃんの体にはよくないので……」
琴葉の言葉に、美果は喜ぶ。
「本当!? やったー! 私のお菓子を全部とられちゃうかと思った!」
さっそく琴葉がおやつや持って来たくまのぬいぐるみを取り出すと、猫達は一気に琴葉に飛びかかった。
「おいおい、大丈夫かよ……」
孝太郎が琴葉からおやつを取り上げると、今度は孝太郎に猫達が群がる。しかし、さすが身長百八十三センチ、体重九十三キログラムのがっしりした体型である。猫達が数匹飛びかかったくらいではぐらついたりはしない。
しかし、美果よりもすこし高い身長と安定したバランスに気を良くした猫達は、どんどん孝太郎に登る。
「おいおい……そんなには、ちょっと……」
猫の重みで徐々に状態が崩れていく孝太郎の横を、エリアスが「がんばってください……」と声をかけながらまねき猫を目指して店内を進む。
「猫さ〜ん、ボク達お仕事だからちょっとどいてね〜?」
猫をひょいひょいとつまんで、横に移動させながら進んで行くと、おやつも持たず、キャットタワーにもならなそうなエリアスに突進し、猫パンチを食らわした猫がいた。
「え? なに?」
エリアスがパンチを食らった頬に手をあてて、猫が着地した後ろを振り向くと、そこに白と黒の斑模様の猫がキリッとした眼差しでいた。
「あら、その猫……」
斑模様に見覚えのあったエストレーラが、タマ子がいた猫達の部屋のほうを見ると、どうやら扉を突破されてしまったらしいタマ子が半泣きで叫んでいた。
「その子達、捕まえて〜!」
「その子……」というのは、きっと自分に猫パンチをした猫のことだろうとエリアスが猫を見ると、首についた名札に『ブッチー』と書いてあった。
「達……っていうのは……」
他にも、名札がついている猫を探そうとしたその時、エストレーラが「危ない!」とエリアスに注意を促した。
「え?」
キョロッとあたりを見回した瞬間、背中に衝撃を受けて、エリアスは倒れた。
「っ!!???」
一体なにが起こったのかと顔をあげると、目の前に虎模様と灰色の二匹の猫が立ちはだかるようにしていた。
その猫達にはそれぞれ『虎之介』と『グゥちゃん』という名札がついていた。
エリアスが驚いている間に、彼の周りに猫がよってくる。
「うわぁっ!? ちょっ!?」
体に乗ってくる猫達、顔に冷たく濡れた鼻を押し付けてくる猫達にエリアスは悲鳴をあげる。
「君達、相変わらずだね」
エストレーラはそう笑って、三匹を捕まえた。
「……」
その笑顔に、エリアスは見入る。
三匹を抱えたエストレーラは、琴葉の猫好きを見抜いて、彼女に「よろしく」と渡した。
「この子達はこのお店の子だから、逃がさないようにお願い」
「……」
じっと、自分を見つめてくるエリアスに気づいて、エストレーラは小首を傾げる。
「なに?」
「っ……いえ。なにも……」
エリアスは慌てて目をそらした。
「とにかく、まねき猫のスイッチを止めないことにはこの事態を収拾することはできないみたいね」
遠目からまねき猫を観察してから、エストレーラはまだ猫まみれになっているエリアスに指示を出した。
「ちょっとスイッチを押したいから、猫ちゃん頼んだわね?」
エストレーラの突然の指示に戸惑いながらも、エリアスは慌てて起き上がると、エストレーラの前にいる猫達を五匹ほど一気に抱えた。
そして、孝太郎に「お願いします」と、その猫達を渡すと、再びエストレーラの前に回って、猫達を抱え、今度は美果に渡した。
猫達はお菓子の甘い香りのするキャットタワー……美果に登ることを特に気に入っているようだったが、さらに高いところへ登りたい猫は孝太郎にしがみついていく。
エリアスが猫を抱え、二人に渡すという流れを何度か繰り返し、エストレーラはまねき猫までたどり着く。
まるでまねき猫を守るように飛びついてきた猫達は、持ち前の身の軽さでかろやかにかわした。
「……スイッチって、どれだったかしら?」
九条の説明を若干聞き逃していたエストレーラが聞くと、最後に抱えた五匹をそのまま抱えているエリアスが答えた。
「その首の鈴ですよ。指で弾いて、ちりんっと鳴らせばOKみたいです」
「これね?」と、エストレーラは鈴を指で弾いた。
ちりんっ♪ と鳴ったその瞬間、それまで騒いでいた猫達が急に大人しくなった。
美果と孝太郎にしがみついていた猫達は床に降り、一匹の猫が肉球と体重を利用してノブを回して扉を開けると、猫達は我先にと駆け出していく。
●
その場に残された猫は、店の猫達と、最初に琴葉が抱っこしていた子猫と、居眠りしている数匹の猫だった。居眠りをしている猫達は、十分な昼寝が終われば自然に出て行くだろう。
子猫は、タマ子が店で飼うことにしたらしい。正真正銘のまねき猫として。
「タマ子ちゃん、お久しぶり」
「レーラちゃん! 来てくれたのね!」
「新年早々、大変だったわね」
「本当に……みーちゃんのせいで、大変だったわよ」
その頃、九条はくしゃみをひとつした。
「このまねき猫、どうするの?」
「それは返すわ。お金を持っている人を招いてくれなきゃ意味ないもの」
「相変わらずね」
エストレーラはタマ子と話しながらも、視線を感じ、そちらに目をやる。
すると、エリアスと目が合った。
「……」
にこりと微笑みを返すと、エリアスは顔を赤くして、ぺこりと会釈した。
エリアスはソファーで居眠りしている猫をそっと撫で、もう一度、エストレーラを盗み見る。
「……あの子、知らないはずなのに……なんでだろう?」
なぜ、こんなにも気になってしまうのか? なぜ、彼女の笑顔にこんなにも心が揺さぶられてしまうのか……。
その理由を自分のなかに探しても、答えは見つからない。
エストレーラも、タマ子と話しをしながら考えていた。
(あの子……どこかで、見かけたのかしら?)
知っている……そんな気がする。それなのに、その答えはやはり見つからない。
「レーラちゃん、写真撮ってもいいかしら?」
突然のタマ子の申し出に、エストレーラの返答が遅れたが、タマ子は子猫を撫でていた琴葉をエストレーラの隣に連れて来て、二人にすちゃっと猫耳カチューシャをつけると、有無を言わさずに写真を撮った。
子猫を抱いたまま写真を撮られたため、琴葉の頬は緩み、目尻は下がっている。
「ブログに載せるけど、いいわよね?」
「え!? ブログ!?」
これ以上、猫にでれでれしている顔を晒したくはない琴葉は慌てる。
「ダメです!」と、断る前にタマ子がにこりと営業スマイルを見せた。
「OKね? はい、決まり!」
その頃、美果と孝太郎は商店街を歩いていた。
「動いたらお腹が空いたわね〜!」
美果はコロッケ、たいやき、フランクフルト、唐揚げ等、食べ歩きできそうなものを見つけると、手当り次第に買っていた。
孝太郎は自分の分と美果の分の甘酒を持っている。
「……そんなに食べて大丈夫か?」
「ふぇんふぇんふぁいふょーふゅっ!」
熱々のコロッケをほおばりながら美果は答える。
そんな二人の横を老人が赤と白、二つのだるまを抱えながら走っていった。
「ちょっと待って!! それ、返して〜!! おじいちゃ〜〜〜ん!」
すこぶる元気な老人をフィリップが追いかける。その距離は縮まるどころか、どんどん開いているように見えた。