本部

質素or贅沢? Let's鍋パーティ

東川 善通

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2016/01/07 00:45

掲示板

オープニング

●寒い日こそ、お鍋でしょ!
 スーパーの前で先程自分が買ったものチェックする椿康広(az0002)。そこにティアラ・プリンシパル(az0002hero001)が袋を持って現れる。
「康広、これ、忘れてるわよ」
「そういや、それも買ってたな。よし、あとは郵便局でカニを受け取れば準備はオッケーだな」
 結構奮発して買っちまったし、アイツらでも呼ぶか、と呟けば、ティアラもいいんじゃないと笑う。そして、二人はそのままの足で郵便局へと立ち寄り、カニを受け取った。
「それじゃあ、早速アイツらに連絡して――」
「あら、どうしたの?」
 高校の友人たちに連絡を取ろうと荷物を置いて携帯を覗き込んで言葉を切った康広。それにティアラは首を傾げつつ尋ねれば、通達メールが届いていると答えた。
『現在、買い物客が襲われる事例が多発。なお、けが人はおらず、食材だけが狙われている模様。姿は被害者により変わり、把握しているだけで猿、犬、烏が上げられる。目的は不明。複数種類であることから、従魔である恐れもあり。要注意されたし』
「また食材であることから、多くの被害者は戻ってくることを諦めている、ねぇ」
「食材だものね。切り詰めてない限りは諦めちゃうわね」
「にしても、目的は不明って、別に飢えてるわけじゃねぇだろうし、マジでなんだ?」
 まぁ、考えててもしょうがねぇから帰るかと置いていた荷物に手を伸ばすと何かが彼の手を掠めた。
「マジかよ」
「噂をすればなんとやらね」
 彼らの目の前にいたのは数匹ずつの猿と犬、烏の見事に目撃情報が上がった動物たちだった。ただ、それに加え、小鬼の姿もある。それらはしっかりと康広が購入したものとカニを抱えていた。
「流石に奮発したもんを掻っ攫われるのはムカつく」
 唇を引きつらせそういう康広に全くその通りねとティアラは苦笑いを浮かべる。
「キィ」
 一匹の猿の一声が合図になったのか、蜘蛛の子を散らす様にその場から去った。
「小鬼がいるってことはほぼほぼ間違いなく従魔だろ」
『間違いないわね』
 共鳴をし、カニを掲げ逃走する猿を追いかける。ただ、何を考えているのか猿は康広が飛びかかれば届くか否かの距離を保ちながら、逃げている。
「クソが!!」
 縮まらない距離に康広はライヴスの針を放ち、猿の捕獲に切り替えるもひょいっと軽々と避けられてしまう。まるでおちょくっているかのような猿の動きに苛立ちを覚えるが、康広は猿を見失わないように追いかける。そして、追いかけつつも携帯を取り出すとSNSを開き、書き込んだ。

 急募 食材を取り戻す仲間(特に標的の付近にいる人)。
 報酬はなし。ただし、取り戻した食材で鍋を振る舞う。
 標的、従魔と思われる猿、犬、烏、小鬼。
 協力求!

解説

 従魔より食材を取り返して鍋にしましょう。尚、会場は一人暮らしの康広の部屋になりますので、お酒は厳禁です。
 また、人通りは少ないですが、街中での食材奪還になります。攻撃の際には通行人などを巻き込まないよう周りをよく確認しましょう。尚、大技などをぶつけると従魔消滅はいいとしても、食材が台無しになる危険もあるのでご注意を。


●共通事項
 ミーレス級従魔。攻撃や防御は紙。しかし、その分、回避が高く、素早い。一撃でも与えれば、食材を落として逃げる。また、大体は一匹、一つ食材を持っている。

●猿
 ニホンザルより少し小さめ。細かい木の上に逃げたり、細い路地を通る。頭の上に食材を掲げて逃亡中。
 持って逃げているのはカニ、豚肉、牛肉、エビ。

●犬
 中型犬ほどの大きさ。直線になると速度を上げる。袋を咥えて逃走中。
 持って逃げているのは焼き豆腐、ニラ、うどん。

●烏
 通常サイズ。空中を逃げているため、持っている袋が目印になる。上空を逃亡中。
 持って逃げているのはしらたき、キノコ類、水菜。

●小鬼
 50cmほどの大きさ。白菜を持ってる小鬼は多少ふらふらしている。猫の通り道などを使って逃走中。
 持って逃げているのは白菜、ネギ、キムチ。

●康広&ティアラ
 カニを持った猿を追跡中。カニは少し奮発して購入したものなので何としてもゲットしたいところ。

リプレイ

●食材を求め走れ
 ヴヴヴと椿康広(az0002)の携帯が振動する。康広は目の前のカニを見失わないように気を配りながら、携帯を開けば、協力者を求め書き込んだSNSの依頼に返事があった。
『ありがたいわね』
「あぁ」
 共鳴しているティアラ・プリンシパル (az0002hero001)は康広の目を通して、それを覗き見た。康広は素早く協力者である彼らに連絡先と自分の今いる位置を含め、送る。するとすぐに康広の携帯が着信を告げた。
「はい、椿」
『あぁ、椿か。俺は皆月 若葉(aa0778)。丁度、椿の近くにいるんだけど』
「マジですか!? あ、合流したほうがいいですかねえ?」
『いや、合流するよりもこのまま挟み撃ちをしよう。で、猿の進行方向を教えてもらいたいんだけど』
「あぁ、それだったら――」
 電話相手である若葉と挟み撃ちの打ち合わせを行う。
『――ってことで、頼んだよ』
「あぁ」
 簡単な打ち合わせを済ませ、電話を切るとタイミングを外さないようにと何度も心の内で作戦を復唱する。

「すぐに連絡取れてよかったな」
「あぁ。一先ず、ポイントに向かいつつ、他のメンバーにもできる限り連絡を取ってみようか」
「まぁ、それがいいだろうな」
 若葉の言葉にラドシアス(aa0778hero001)は頷く。それに若葉はじゃあ早速とSNSでチェックした一番上から連絡を取り始めた。その間にもポイントへは急ぐ。
「そこの犬、待てー!!」
「……ん?」
 ポイントに到着し、聞こえた声にラドシアスが振り返れば、若葉も振り返る。すると、建物と建物の間からちらりと袋を銜えた中型犬が見えたかとおもうと、その数秒後に赤髪と茶髪の二人組の姿が駆けていった。
「……メンバーかな?」
「だろうな」
「うーん、とりあえず、あの二人は椿と逆に向かったと」
 若葉が確かめるようにラドシアスは肩を竦め、答える。それに若葉は一組の動向はわかったと頷いた。そして、頭の中にしっかりメモを取ると改めて、猿の姿がないか確認する。
「あ、あれかな? あの木の上にいるの」
「白い箱を持った猿だから、間違いないだろう。で、それを追いかけてるのが椿か」
「まぁ、それは約束の合図をすればわかるって」
 ふむと顎に手を当て、考察するラドシアスに若葉ニッと笑い、周りに人がいないのを確認すると猿に向かって弓を構える。するとそれに気づいた椿は持っている剣で宙を切った。
「よし、間違いない」
 確認が取れると若葉はラドシアスと共鳴し、今度は構えるだけではなく、矢を装填し、狙いを定める。
『驚かすなら、頭の上を狙うのもありだが』
「できるだけ傷つけたくないし、なんかあったら椿に申し訳ないから足元の木を狙うよ」
 で、驚いて落ちたところを椿に攻撃をしてもらうと伝えると猿の足元擦れ擦れを狙い撃つ。
「キィッ!」
 トスッと矢が足元に刺さると猿は驚き、荷物を持っていることから手が使えず地面に落下した。そこで、すかさず康広が距離を縮め、剣を振る。体勢を立て直していた猿はそれを避けきれず、真正面から受けることとになった。
「やった」
『だが、浅いな』
 当たるには当たったが猿の手に一線が引かれたのに止まり、決定的なダメージにはならなかった。しかし、食材を落とした猿は食材をちらりと一瞥した後、それを捨てて逃げだした。
「あ!」
『駄目ね。あそこまで離れちゃうと追えないわ』
 本来の素早さはかなりのものだったのだろう猿はあっという間に二人から距離を取り、去って行った。
「うーん、とりあえずカニゲット?」
「そうっすね。あと他にも」
 近くにいればと話しているとキィと声が聞こえ、見るとまた別の箱を掲げた猿が二人の姿を見て、Uターンして逃げる。二人は顔を見合わせると先程と同様にして、と走り出した。

 彼らが食材をゲットしている間、少女と見間違うほどの小柄な女性鴉守 暁(aa0306)と豊満な体つきの女性キャス・ライジングサン(aa0306hero001)はH.O.P.Eに連絡を取る。そして、情報収集のために掛かってきた若葉の電話にも対応し、目の前でふらふらとしつつも逃げている小鬼のことを伝えた。
「小柄だからなんだろうねー、これは大変だー」
 やたらと細いところや小さなところを逃げる小鬼に暁は苦笑いを浮かべる。そんな暁にアカツキー、助けてーと声がかかった。
「……なんで、こういう時にカメラとか持ってないかなー」
 でも、目に焼き付かせてもらうねーと暁の目の間で隙間に挟まり、否応がなくセクシーポーズを取らされたキャスにご馳走様ですと笑みを浮かべる。それに早くーと催促がかかり、暁はキャスを何とか引き抜いた。
「あ、小鬼」
「あそこにいるヨー」
 体を左右に振り、走る小鬼は思った以上にスピードがないのだろう、まだ捕捉できる距離だった。
「またキャスが嵌っても大変だからねー」
 そう暁は言うと周りを見渡し、小鬼のいく方向にクッションとなりそうな草が生えているゾーンを見つけるとあそこに入ったら、狙撃しようと周りを確認する。それと同時にキャスと共鳴し、ライフルを準備。いつでも撃てるように神経を集中させる。
「……当たれー!」
 一発目、偶々ふらついた標的のせいでそれは当たらず、飛んできたものに驚いた小鬼はその場を右往左往し始めた。それに一定のリズムを見出し、暁はもう一度と狙いを定める。少し大きめな頭を狙い、二発目を放った。
『オウ、消えちゃいましたネー』
「うん、でも、倒せたんじゃないかなー」
 頭に綺麗に銃弾が当たると小鬼はパタンと倒れ、砂になり、風に飛ばされた。暁は共鳴を解除し、白菜を確認する。そして、他にも周りにいないか確認しつつ、SNSに報告をした。

 同時刻、偶々居合わせた2ペアは肉を追いかけていた。
「食べ物の、怨みは……恐ろしい、よ。……特に肉」
「お肉を寄越しなさぁああい」
 桃色の目を持つ小柄な少女鐘 梨李(aa0298)とふくよかな金髪の女性天間美果(aa0906)に思わず、通行人は道を譲る。その後ろを追いかける青年コガネ(aa0298hero001)は梨李の目がヤベェと頬を引きつらせていた。その隣を妖艶な女性ベルゼール(aa0906hero001)が走る。
「美果さん、私、回り込むので、このまま追いかけてもらっても」
「うん、任せて! 絶対に見失わないから」
 グッとサムズアップした美果に梨李はこくりと頷くと金ちゃん、いくよと彼を呼び、回り込むために共鳴し、更に脇道に入った。
「美果、お肉は細い道に入ったみたいだけど?」
 暗に大丈夫なのかと伝えてくるベルゼールに美果は当然じゃないと笑みを浮かべる。そして、躊躇うことなく、細道へと入った。勿論、彼女にとって余裕のないそのスペースは苦しいだろう状況なのだが、肉への執念からか全くそれを感じさせない。そんな主人の姿を見ながら、ベルゼールは猿の進行方向を梨李へ送っていた。
「お肉ぅ」
「ウキッ!?」
 その執念たるや、逃げている猿すらも驚くほどのようだ。そんな驚いている猿に赤い瞳になった梨李が蹴りを加える。そして、放り出された肉を美果はすかさずキャッチをした。梨李は猿の手を掴み、捕獲する。
「おい、桃太郎を出せぇ!!」
「キィ???」
 梨李の口から出たコガネの言葉に覚えがないらしいその猿は首を振る。それに、え、いないのと落ち込むコガネ。その隙に猿は手から逃げ出し、姿を晦ませた。
『金ちゃん、次、行く』
「へ、あ、あぁ、そういや、まだ猿いるんだっけか」
「多分、それらしき猿ならそこにいるやつじゃないかしら」
 落ち込むコガネに梨李は次と声をかけ、気持ちを立て直す。それにベルゼールがほら、あそこと木の上で休憩をとっている猿を指差した。
「「……お肉!」」
 コガネに代わり、表に出てきた梨李と美果の声が見事にハモる。その声に気づいたらしい猿は逃走を開始した。しかし、そうそう簡単に逃がしたりはできないと肉を小脇に抱え、美果はベルゼールと共鳴をし、魔導書を取り出すと剣を生成し、猿へ放つ。
「ウッキャァ」
 驚きつつも、ひらりひらりと剣を避ける猿に斧槍を手に梨李が近づいていく。そして、それを振るえば、まさかそちらからもとは思わなかった攻撃に猿は避けれず、切断された。しかし、血が飛び散ることもなく、砂となり、消えたそれにやはり従魔だったかと納得する。
「これでお肉確保ね」
 ぽとりと落とされた肉を回収し、ほくほくとする美果に梨李も満足そうに頷く。互いの共鳴を解き、他がどうなっているのかを確認した。
「東に逃げた犬」
「誰も向かえてないみたいだし、梨李行くか?」
「……うん、行こう」
「じゃあ、あたしたちは皆が確保した食材を回収に回るわ」
「それがいいわ」
 また鍋会でと、梨李とコガネは誰も向かったという情報がない犬を追いかけ、美果とベルゼールは食材の回収に向かった。

 美果の食材回収が始まる少し前、通りを歩きながら仕事の反省点を懇々と説く男性尾形・花道(aa1000hero001)とそれを聞いているのか聞いていないのか携帯を弄る人片桐・良咲(aa1000)。そして、SNSの依頼を読み、空に目線を上げると、そこには袋を持って飛んでいる烏の姿。
「おい、片桐、聞いているのか!?」
「尾形、これ、あれじゃないかな」
「ん?」
 話を聞いてないその行動に花道が声を荒げれば、良咲ははいと携帯を花道に見せる。それを読み、空を飛ぶ烏を見て、溜息を落とした。
「話はまた帰ってからだ」
 そう言った花道によしと良咲は頷いた。そして、空を見れば、合流したのか袋を持った烏が二羽になっている。
「上手いことやれば、二羽いけるかな」
「二兎を追う者は一兎をも得ずということわざをお前は知らないのか」
「勿論知ってるよ。でも、一石二鳥って言うことわざもあるよね」
 食材は多い方がいいと言えば、違いはないがそれとこれでは話が違うだろうと花道は呆れた。しかし、ただ、黙ったまま見送るわけにもいかないということで、良咲と花道は共鳴をし、周りを観察する。高さがあれば、例え当てられたとしても、食材がダメになる可能性もあるため、出来るだけ建物の上に落ちるもしくはどこかに引っかかる可能性があるところを探した。
 ある程度あたりを付けると良咲は弓を構え、タイミングを計る。そして、一矢を放つ。一直線に烏目掛け飛んでいったそれは見事、一羽に命中。烏は地面に落ちる前に砂になって、宙に消え、持っていた袋だけが地面にぽとりと落ちた。
「まず、一羽」
『だが、次はやすやすとは当たらんだろう』
「まぁ、それはそれ。やってみないとわからないよ」
 食材回収は後に回し、もう一羽を狙う。集中力を高め、旋回して行き先を考えている烏を見据える。烏は行き先を決めたのかそちらに向かい始めた。
 良咲は意識を烏から外さないように注意しながら、追いかける。そして、烏の飛行速度が安定した頃合いを見計らい、矢を放った。しかし、これはすれすれで当たらず、また混乱した烏が旋回をする。それに良咲はリズムを見出し、そこを狙い撃つ。
「よし」
『ふむ、まぁ、悪くはない』
 命中した烏はふらふらと下降し始め、途中で袋を落とした。良咲はそれを受け取りに走り、確保するとSNSに確保した食材と場所を書き込んだ。

 時は少々遡り、康広と若葉が猿と対峙している時、彼らが見た赤髪の青年会津 灯影(aa0273)と、狐耳を持つ茶髪の女性と言っても納得してしまいそうな容姿の青年楓(aa0273hero001)もまた中型犬を袋小路に追い詰め、対峙していた。
「あとは頼んだぜ、楓」
「誰にものを言っている? 任せよ」
 不敵な笑みを浮かべた楓と共鳴し、灯影の姿が若干楓に近しいものに変化する。そして、扇を構え、犬を見据えれば、犬も足を地にしっかりとつけ臨戦態勢になっていた。
 楓はジッと犬の目を見つめ、犬の視線が動いた瞬間、エネルギー弾を生成、犬に向かって放つ。犬はそれを避け、楓の脇を抜け、逃走を図った。しかし、大きく開けられていた逃げ道はそう来させるために楓が用意していたもので、通り抜けようとする犬に向かって扇を振り下ろす。予測できず、尚且つ逃げることができない犬はそれを受け止めることしか出来ず、袋小路にギャンと犬の鳴き声が響いた。
『流石、楓!』
「当然よ」
 砂になって消えた犬の傍から袋を回収しようと楓は手を伸ばし、ある一点を見て止まった。
『楓?』
「いや、犬以外にも思わぬ収穫があったようだぞ」
 袋小路の隅で何かを一所懸命取り出そうと動くものがいた。それは明らかに犬などと違い従魔だと思えるそんな容姿のもので。
『小鬼だよな』
「あぁ、間違いなかろう。恐らくは隅の穴を通ってここに出てきたはいいが肝心のものが取り出せずにいるといったところだな」
 楓は袋を取るのをやめ、再度、エネルギー弾を生成する。そして、狙いをよく定め、放った。それは綺麗に取りだそうとしていた小鬼の頭に直撃し、小鬼の姿は一瞬にして砂へと変化する。
「一気に取り出そうとするからこのようなことになる」
 犬の方の袋を回収し、小鬼のほうを見れば、白い袋の中に赤い容器が数個見え隠れしていた。そして、それを共鳴を解いた灯影が回収し、全員に報告を上げる。

●これはパーティ? いいえ、戦争です
 食材を全て確保し、康広は先にSNSで協力感謝の意を伝えていたが、改めて集まってくれた彼らに頭を下げた。
「そう言えば、友達とか呼ぶんだろう?」
「いや、さっき連絡したら、今回は遠慮するらしいです。一期一会なんだから、助けてもらった人たちと鍋を楽しめって」
 まぁ、部屋も考えてみれば少し広いってぐらいなんでと言葉を濁らせた康広に、そっか、まぁ確かにこれプラス数人増えるときつそうだなと灯影は感想を零した。そして、自宅に案内し、康広は台所に立ち、鍋の準備をし始める。ティアラはお客様の相手ということで、改めて、自己紹介をしていた。
「椿、何か手伝うよ」
「え、あぁ、座っててもらって大丈夫っすよ」
「人数いるし、一人で作るのも大変だよ。それに料理なら普段からしてるし」
 台所に顔を覗かせた若葉は康広にそう言えば、じゃあ、頼みますといい、二人で並んで鍋を作成し始めた。
「これどうしたんだ?」
 二つある鍋とカセットコンロに尋ねれば、近所の人に借りたと答える。元々、結構な人数でやるということもあって、よく借りるらしいそれに若葉はじゃあ、食べごたえがあるなと笑みを浮かべた。
 そして、暫くして、鍋をテーブルに持っていけば、待ってましたと声が上がる。
「こっち桜色の鍋がカニとエビが入った鍋で」
「じゃあ、こっちの黒い方が肉だな」
「ぜひ、お肉はあたしの前に」
「あ、それはズルいネ。ワタシも食べたいヨー」
 康広の説明に灯影が反応するとそこの反応とは別の形でカセットコンロごとズズッと自分の前に移動さえる美果。それにキャスが声を上げる。
「結構、たっぷり作ったんで、皆で仲良く食おうぜ」
「それより、酒はないのか?」
「オレ、未成年なんで」
「なんだ、それでは我が楽しめぬではないか」
「お酒なら、キャスのがあるよー」
 飲む? 飲んじゃう? とどんとテーブルに暁が置いたのは一升瓶と数本のチューハイ。それにころりと機嫌を直す楓と苦笑いを浮かべる康広。
「まぁ、未成年は飲まないように注意したら、大丈夫じゃないかしら」
「確かに未成年は三人くらいだし、いいのか?」
「なんか、悪いな。酒瓶くらいだったらこっちで処分するし」
 ティアラの言葉に確かにオレと皆月サンと鐘サンぐらいだからなと言っているとごめんと灯影が手を合わせてきた。それに気にしなくていいと伝える。そして、全員でいただきますと合掌し、鍋パーティが開始した。
「野菜くわせ野菜ー」
「肉くわせ肉デース!」
「ちょっと、これはあたしが取った肉よ」
「残念、私の方が、早かった」
 サラダや野菜を食べる暁の隣で取り皿に肉を多めにとるキャス。一方では一枚の肉を巡って協力していた者同士が火花を散らしていた。
「ほら、椿も食べろよ」
「あ、ありがとうございます」
「こっちは会津さん」
「お、ありがとう」
 カニ鍋をつつく方では若葉が上手に全員に鍋をとりわける。肉鍋の方でも肉ばかりの人には野菜を入れたり、飲み物が足りなさそうであれば、継ぎ足したりなど、気配りを欠かさない。
「はぁ、桃太郎だと思ったんだけどなぁ」
「何がっすか」
「ほら、今回の犯人、犬に猿、鳥と鬼だっただろ。だから、黒幕は桃太郎じゃないかって思ったんだけど」
「外れだったと」
「桃太郎の名前に反応しなかったんだ」
 はぁああと落ち込むコガネに康広は、まぁ、敵じゃなくてよかったじゃないですかと言えば、それもそうかと考えを改め、笑みを浮かべる。それからは、よし、いざあった時のためにと食べ始めたコガネ。
 一方、別の所ではカニの殻をそっと相方の取り皿に入れているものもいた。
「片桐、俺の皿は捨て皿じゃない」
「ボクから、遠いし」
「そういう問題じゃないだろう」
 殻を皿に入れられ、花道がそれを指摘すれば別にいいじゃないかとケロリと良咲は返す。そんな返しにはぁと大きな溜息を花道は零した。
 そんなのがある一方で酒を嗜むものは盛り上がっていた。
「これはいい酒だな」
「そうデショー。とっても美味しいネー」
 盃を交わし、舌鼓を打つ楓にキャスも賛同する。鍋を進めつつ、酒も進むため、既に酒は半分も残ってはいない。そうして、会話を楽しみながら、具の取り合いをしながらも、鍋を楽しんでいると具も減ってきた。
「じゃあ、そろそろ締めにしますか」
「うどんー」
「肉の方にうどんを入れて、カニの方にご飯を入れるんで好きな方を」
 肉鍋にうどんを入れ、カニ鍋にはご飯を入れ、その鍋には溶き卵も加える。
「どっちも捨てがたいわ」
「私はお肉たくさん食べたし、今度はカニの方で」
 半熟の卵が入った雑炊をよそい、梨李ははふはふとそれを食す。それを見た、美果もそちらを選び食べるも、やっぱりこっちもとうどんにも手を伸ばす。
「どっちも美味しいわね」
 美果の隣でベルゼールも舌鼓を打っている。その上、周りには気づかれていないが、彼女も美果と同じぐらい食べている。
「ラスト、もらーい」
「ちょっと、それ、あたしが狙ってたのに」
「いやいや、天間さん、沢山食べてますよね!?」
「あら、まだまだ食べられるわよ」
「えー、マジですかって、楓、それ俺の」
「話してるからいらないと思ったのでな」
 ラストと自分の取り皿に入れれば、美果から声が上がり、反論を返す。しかし、その間にも隣で酒を飲んでいた楓につつかれ、それは微量になっていた。文句を言えば、ふふふと笑われ、もうと溜息を落とすしかなかった。
 そして、鍋は見事に空に。それから全員で片付けを始める。花道と良咲はカニの殻などを纏め、美果やベルゼールは机を片付け、暁とキャスは持ってきていた酒と缶を纏めていく。灯影と若葉は鍋にこびりついたコゲと格闘し、康広は台所の片付けを行った。そうして、片づけが終わると、皆にお茶を配り、一息ついてもらった。
「本当に今日はありがとうございました」
「助かったわ。美味しい鍋にもありつけたし、ありがとう」
 そう言った康広とティアラに全員がこちらこそと美味しい鍋をありがとうと告げる。さて、帰ろうと全員が腰を上げた頃には夜も深まっており、照明が道を照らしていた。
「じゃあ、気を付けて」
「今度は取られるなよ」
「あら、取られてもいいわよ。肉だったら全然協力するわ」
「もう料理目当てじゃないですか」
「でも、肉は、美味しい」
「皆で食べたらもっと美味しいー」
「できれば、尾形の説教があるタイミングだと嬉しいかな」
 そう声をかけた康広に灯影、美果、若葉と続き、それに梨李と暁が続いた。最後に康広に耳打ちする形でこそっと良咲がそう零す。その言葉に康広は苦笑いを零せば、気づいたのだろう花道は片桐お前はと声を出すが、まあまあ今日はと全員が宥め、わいわいと騒ぎながら、彼らは帰路につくのだった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778

重体一覧

参加者

  • 美食を捧げし主夫
    会津 灯影aa0273
    人間|24才|男性|回避
  • 極上もふもふ
    aa0273hero001
    英雄|24才|?|ソフィ
  • 小さな胸の絆
    鐘 梨李aa0298
    人間|14才|女性|回避
  • エージェント
    コガネaa0298hero001
    英雄|21才|男性|ドレ
  • ようへいだもの
    鴉守 暁aa0306
    人間|14才|女性|命中
  • 無音の撹乱者
    キャス・ライジングサンaa0306hero001
    英雄|20才|女性|ジャ
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
    人間|20才|男性|命中
  • 温もりはそばに
    ラドシアス・ル・アヴィシニアaa0778hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • 肉への熱き執念
    天間美果aa0906
    人間|30才|女性|攻撃
  • エージェント
    ベルゼールaa0906hero001
    英雄|24才|女性|ソフィ
  • 楽天家
    片桐・良咲aa1000
    人間|21才|女性|回避
  • ゴーストバスター
    尾形・花道aa1000hero001
    英雄|34才|男性|ジャ
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