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年末年始はWNLTVチャンネルを!

布川

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 6~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2016/01/04 12:49

掲示板

オープニング

●年末年始はWNL!
 ワールド・ネット・リンク。通称WNLとは、ご存じ、リンカーたちの活躍を一手に放送する世界最大級の放送局である。世界同時放送枠、タイムゾーン対応枠の数種類のチャンネルなどの機構を持つ、超巨大放送組織である。
 リンカーたちの心強い味方であり、また、時にはその影響力は障害であり、また、あるときはヴィラン組織の格好の獲物ともなりうる。

 年末年始は、テレビを前にくつろぐ視聴者の数も多い。そんな視聴者のハートをつかむために、水面下ではありとあらゆるチャンネルが熾烈に視聴率を争っていた。
 そういった中、テレビ局が企画したのは――やはり、エージェントたちにフォーカスを当てたコンテンツである。
「さあ、今年も終わりに近づいてまいりました! 『年末年始はWNL! HOPEしゃべくり能力者スペシャル』です!」
 司会者のタイトルコールとともに、拍手が辺りを包み込む。
 『年末年始はWNL! HOPEしゃべくり能力者スペシャル』は、この時期だけの特番番組だ。ゴールデンタイムをまたぐ、脅威の5時間放送スペシャル。収録にかかる時間はその数倍。一年を総括するバラエティ番組である。
「普段より、リンカーたちの活躍をたっぷりとお茶の間にお届けしている我々ですが、今回はリンカーたちの活躍を目いっぱいご紹介したいと思います! それでは、ゲストのみなさんです!」
 カメラが、順々にゲスト席をとらえる。席に座っているのはリンカーたち……すなわち、あなたたちだ。

解説

●目標
番組、『年末年始はWNL! HOPEしゃべくり能力者スペシャル』に出演し、番組を盛り上げる。
なお、この番組内で視聴者を最も魅了した人物に、リンカー・オブ・ザ・イヤー2015(非公式)が選ばれる。

●登場
司会者と、スタジオに乱入してくるアンチ能力者(後述)。

●場所
WNLテレビ局、撮影セットが用意されたスタジオ。

●状況
クリスマスを過ぎてから~年末までの期間の番組です。
放送時間はゴールデンの生放送。
リンカーたちは、セットに座っている。

●進行
・テロップとともにVTRを通して、今までの簡単な経歴が紹介され、
・司会者がVTRや事前インタビューとともにトークを展開していく
・能力者たちが持ってきたお土産を持ち寄って食べたり、視聴者からの質問や、一発芸の披露などを経て、
・最後に来年への抱負を聞かれる

●話題や可能な事(複数プレイング推奨)
・今年一番心に残った仕事について
(※具体的な依頼での描写は、引用の観点から詳細ではなく、やや抽象的な範囲になります)
ex:〇〇という依頼で銀行強盗をした××という敵を倒した→銀行強盗をしていたヴィランを倒した
・能力者たちが持ち寄ったお土産を食べ合い、感想を述べる
(※地元名産やスポンサー商品など。自分で品物を選ばなくてはならないが、経費で落ちる)
・能力者(英雄)に関して思っていること(フリップに書いて同時に公開する形式)
・視聴者からエージェントたちへの質問(プレイングで自問自答)
・一発芸の披露(歌やダンス、その他)
・来年への抱負

その他、ゴールデンのトーク番組の範囲でできそうなことは可能である。

●トラブル!
番組の中盤、ヴィランたち(×3)が乱入する。
手にナイフとメガホンを持っており、カメラに向かってHOPEを罵倒するが、かなり弱い。
特殊な能力はないが、スタジオ収録を見ている一般人がいるため、速やかな制圧が望まれる。
脅威を払うと、番組は続行される。

リプレイ


「テ・レ・ビ! これは白虎ちゃんのゆるキャラを押し売る今年最後で最大のチャンス到来!」
『いや、そんなチャンスは無い! 俺はゆるキャラでは無い!』
 意気込む虎噛 千颯(aa0123)を、白虎丸(aa0123hero001)がとどめる。
(ゆるキャラ白虎ちゃんのPR。もっと活躍して公認されるように!)
 この日に備えて虎噛はさまざまな準備をしていたのである。

「テレビの収録がこれ程時間が掛かるとは知らなかった」
『お~、原理は良く判らないけどこれでボクもテレビの中に入れるんだね』
 御神 恭也(aa0127)が収録のスケジュールを眺めてうなる横で、伊邪那美(aa0127hero001)は物珍しそうにテレビ局の内側を見回している。
『ねえねえ、千颯ちゃんに白虎丸ちゃん。二人はどうやってテレビの中に行くか知ってる? 恭也に聞いても良く分かんなくて』
「もっちろん」
 虎噛の説明に伊邪那美はふんふんと頷く。

「お仕事ってテレビ出演なん!? 現場に来てから話すとかあぐやんまじいけずやわ!?」
『……ん、仕事の内容は……言ってなかったか……?』
 鈴宮 夕燈(aa1480)が抗議の声をあげるが、Agra・Gilgit(aa1480hero001)はどこ吹く風だ。
「あ、でも前にライブでご一緒した人の顔もあって安心感☆ ……や! 緊張はしてるけど!? も、もう、コレは出たとこ勝負とかそんなんで行くしかあらへんかな!」
『ま、ジジイは引っ込んどくから……後は頑張れや』
 Agraはふっと笑うと、幻想蝶の中へと姿を消した。
「って! 蝶々入っちゃうんかいなっ!? ひどいでっ!」
『……なに、必要ならフォローしてやる』

「どうしようお姉ちゃん、ボクらそういうお店知らないよ」
『最低限の生活を保障する施設しか利用してないからね、そういう娯楽品は服を買ったとき以来だろうか』
 イリス・レイバルド(aa0124)とアイリス(aa0124hero001)は、番組に持ち寄るお土産の相談をしていた。かなりつつましい生活をしている二人である。
『まあ、というわけでアップルパイとハニートーストを買って来た訳だが……。コメントを要求されたら適当にごまかすか』
「道中にあったお店で買ってきただけだからボクらもそれ食べた事ないもんね」


 そして、番組が始まった。
「皆さんこんばんは、アルです! 最後まで楽しんでね」
 アル(aa1730)が輝かんばかりの笑顔をカメラに向ける。紹介用VTRの映像はどれもド迫力で、アルのベストショットをとらえている。
「アイドルステージを台無しにする人物を捕まえるための囮としてステージに立って、そのままデヴューしたんだ」
 背の高い美女(?)、雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)は、アルの横でVTRを満足げに見ている。

 次には巫女服とシスター服のコンビが映し出された。
「蔵李澄香です。よろしくお願いします!」
『クラリス・ミカと申します。よろしくお願い致します。今宵は肌を晒すのも厭わない覚悟で参りました』
「駄目だからね!?」
 息の合った蔵李・澄香(aa0010)とクラリス・ミカ(aa0010hero001)の掛け合いに、会場がどっと沸く。
『亡き両親の旅館を引き継ぎ頑張る女の子。巫女・時々アイドルの澄香。お色気シスター、時々芸能プロデューサーのクラリス。漫才で笑いを提供する二人ですが、その正体は魔法少女クラリスミカなのです……』
 画面にはふりふりのレースのついた、魔法少女クラリスミカの姿。
 恥ずかしそうに顔を真っ赤にする蔵李の隣で、一仕事終えたとばかりに満足げなクラリス。二人を会場は笑いと拍手で迎えた。

 小詩 いのり(aa1420)の傍には、セバス=チャン(aa1420hero001)が恭しく控えている。
 ラジオの収録風景や、華麗なダンス。観客は、気が付けば画面の中の少女を追っている。
「エージェントとしてもアイドルとしてもまだまだ新人かな。依頼は非戦闘のメディア系依頼を中心にアイドル活動をしてるよ。他に今日も一緒に出演してる澄香とリンブレイディオっていうラジオなんかもやってる。よろしくね!」
「みなさん、同じ事務所なんですよね。今日も最後に、素敵なパフォーマンスを予定されていますよ、お楽しみに!」

 鈴宮はきょろきょろとあたりを見回し、自分に番が来ていることを確認すると、背筋を伸ばす。
「は、はい! うちは鈴宮いいます! な、なんかエージェントになって最初のお仕事でアイドルさんとご一緒にライブとか出てたりしてうち自身もちょっと迷子感あるけど頑張ってます!」
「緊張されてますか?」
 新鮮なたどたどしさがウケたのか、会場の拍手が鈴宮を応援する。Agraは出てこない。

『チース! キャス・ライジングサンネー!』
「ちーす鴉守でーす」
 ナイスバディの金髪美女と、小柄ではあるが豊満なバストの「コンビ。キャス・ライジングサン(aa0306hero001)と鴉守 暁(aa0306)は、わが道を行くマイペースさである。おおらかさに和む客席だったが、クールに的を撃ちぬくVTRの二人の姿が映し出されると、はっと息をのむ。拍手が真剣さを増して二人を包み込んだ。

「本日はよろしくお願いします」
 次には月鏡 由利菜(aa0873)と、リーヴスラシル(aa0873hero001)の登場だ。由利菜は学園制服、ラシルは教師服だ。テール・プロミーズ学園、エージェント科の代表という肩書きが映し出されると、由利菜のイメージミュージック、月鏡の名を冠する『Moonlight Locus』に乗せて、VTRが披露される。
 学園で由利菜がラシルの授業を受ける日常風景。打って変わって、ブラッディランスを手に戦場を駆ける由利菜の姿。学園内では、もっぱら『月の姫騎士』『破壊の戦乙女』などという噂である。

「あれ? 加賀谷さんは?」
 スタジオの端から、演出用の白い煙があがった。Ebony Knight(aa0026hero001)は魔道式駆動鎧殻を纏っての出演である。「機械の鎧を纏った大男」機動戦士リョウマ。VTRには、ヒーローショーで子どもたちがはしゃぐ様子が映し出される。加賀谷 亮馬(aa0026)とエボニーの二人は拍手のさなか着席をする。

 続いて映し出された映像は、まるでマスコットの紹介である。コミカルな動きとともに、ホワイトタイガーがぺこりとお辞儀をする。虎噛の編集したVTRだ。
『な、なんだこれは! ストップ! ストップ!』
「白虎ちゃんをもっと有名にするぜ!」
『落ち着け千颯!』
 白虎丸のテンションとは裏腹に、会場は大盛り上がりである。

 ひときわ年若いイリスとアイリスの二人は、参加者の平均年齢を下げるようなコンビだ。VTRでは、年少ながら、エージェントとして目覚ましく活躍する姿が映る。おずおずとしつつも、根は元気いっぱいなイリスと、クールなアイリスのコンビは、お互いをよく補い合っている。
 彼女たちが能力者になった経緯は、VTRでは語られなかった。お涙頂戴のネタはごめんである。そうイリスは考えていたのだった。


「いやー、すごい登場でしたね!」
「戦いだけじゃなく、こうやってエンターテインメントの場でも皆の笑顔を守れるんだって事が分かって、それが俺の喜びでもあります……ああ、ちなみに! 「装甲騎士リョウマ」関連グッズ、絶賛発売中だから、皆も買ってな?」
 加賀谷はカメラに向かって笑う。
「まあ、確かに子供受けは良かったが、どうも我の上によじ登ろうとするやんちゃな子等が多いこと多いこと……意外な事に大人受けもそれなりによいらしいな。いや、実に光栄であるよ」
 エボニーは苦笑しているが、その表情はどこか嬉しそうだ。エボニー! と掛け声が飛ぶと、加賀谷とエボニーは手をあげて答える。拍手をする視聴者席の中には、たしかに大人の姿も多い。
 どこからか白虎ちゃん! とも歓声が飛んだ。虎噛はにこやかに手を振るが、白虎丸は顔を両手で覆う。

 きょろきょろとする伊邪那美を、御神がたしなめる。
「神の一柱を名乗るなら少し落ち着け」
『……逆に恭也は何で落ち着いて居られるの? 良く判らない方術を掛けられるかも知れないのに』
 収録が落ち着かないらしい。

「みなさん、エージェントとして活躍されているんですよね。心に残った依頼はありますか? 蔵李さんはどうですか?」
「一番印象に残ってるのは、初めての戦闘依頼です。緊張しました」
『ヴィランを辞めたい。という方の保護ですわね』
「口先で騙し討ちしたりしたね」
「そんなことしたんですか!?」
『魔法少女にあるまじき行為ですわね』
「君がさせたんだよ!?」
 クラリスがそそのかした光景が迫って見えたような気がして、またもや会場はどっと沸いた。

「印象に残った依頼では、過去にヒーローショーを装って行った依頼ですね」
 加賀谷は懐かしそうに答えた。
「一時的な役割ですが、これが子供達に受けが良かった事、次は何時ですか? と聞かれた手前、何やかんや本当のヒーローショーに出演することになりました。そのショーで子供達を笑顔に出来た事に喜びを憶え、時間があれば現在も度々出演しているんです」
『装甲騎士リョウマ』。ヒロイックなデザインの共鳴状態と、能力者による本格的ヒーローアクションという事でそれなりの知名度があるとかないとか。

「小詩さんはどうですか?」
「やっぱり大規模作戦かなあ。ボクは戦うことが苦手だから、同じようなタイプのみんなと一緒に後方支援に回ったんだ」
 大規模作戦。その熾烈な戦いは、否が応でも耳に入っている。激しい戦いを思い出したのか、アルは真剣な表情で頷いた。
 小詩は照れたように笑う。
「みんなで一生懸命やったらHOPEから表彰されちゃった。ボクが代表で貰ったけど、あれはみんなで貰った表彰だと思ってるよ!」

「んー、一番は決められないなあ」
『リンカーを電力に自動車を作ろうとした外道達が一番衝撃的だったでござるよ』
 感慨深そうに言う白虎丸。
「そんなことが!?」
「なんていうか、なんでもありだね!」
 加賀谷とアルがコメントする。

「イリスさんはどうですか?」
「能力者の父娘との仕事かなあ。人質に取られた娘を助ける為に救援要請してきた父親と一緒に娘を無事に助けたんだ。どことなく赤頭巾チックな依頼だったなあ」
「でも、狼側が正義だったんだよ」
「マスコットかな。ライバルだよ、白虎ちゃん」
『ライバルじゃないでござるよ!』
「正直思うところがあったのは確かだし、助かってよかったけど」
 イリスが小声でつぶやいたセリフは、マイクには拾われていなかった。
(本当に衝撃的だった依頼はお茶の間に流せないから無難なものを選んだ感じだね)
 アイリスが意図を汲んで、心の中で頷く。

「心に残った仕事か……初めて受けた仕事も捨てがたいが、未所属のリンカーとテロリストが起こした騒動を鎮圧した事が良い意味で一番心に残っているな」
 御神はどこか懐かしむような表情をした。
「契約してから初めて未契約者との戦闘になったからな……あの戦闘で相手からの攻撃が通じない事で自分が、今までと違う世界に居るんだと理解した」
「一般人と能力者。全然、違いますものね」
 クラリスが言うと、御神は頷く。
「当時は顔を合わせただけだが、後の良い友人とも出会えたしな」
 この仕事をやっているからこそ、縁に恵まれることもある。
「悪い意味で印象に残ったのは、最近にあった忘年会を盛り上げる依頼だな……。悪いが内容は言いたくない……」
『あれって、恭也が場の空気に酔っ』
「黙ってろ」
 伊邪那美を御神がさえぎる。なにか面白いことがあったようだが、話す気はないのだろう。

 次にはいはい、とキャスが元気良く手をあげた。
『ゲーセンに遊びにいったトキにたまたま現れたヴィランをたまたま居合わせた皆で捕まえマシター』
「たまたまですか?」
「能力者だけでなく、警察や民間人の協力が大事です。ご理解頂けるとこちらも仕事しやすいのでこれからもよろー」
 鴉守がひらひらと手を振る。
「俄然真面目な話になりましたね。どういった点での民間協力になりますか?」
「避難誘導に従ってくれたり『ここは今危険だ!』とか『悪い奴みつけた!』とか情報撒いてくれたらいいよ。警察もどきもやるから何かあった時に捜査協力もあ、HOPEは皆様の広告で成り立ってるからどんどん宣伝しちゃってー」
『HOPEはみなさまのご理解とご協力のもと活動しております!』というテロップとともに、画面にHOPEの緊急連絡先が映し出される。

「愚神などと戦うのは、恐ろしくありませんか? 鈴宮さん」
「うち!? めっちゃ怖いんやけど!! 頑張ってるで! ほんとっ怖いんやからねっ!? せめて応援してあげてなーっ!?」
 再び、HOPEのテロップが映し出され、笑いが起こる。

「一番印象に残ってる依頼は、やっぱり、最初に受けた遊園地の依頼ですね」
 月鏡は唇に指をあてて、思い出すような仕草をした。横でラシルが頷く。
「やはり、たまたま居合わせた私たちが対処に当たることになったんだ。一般の方の協力も要となってくる。よろしくお願いしたいところだ」
 エージェントたちは思い思いに頷いている。

「さて、お話も温まってきたところで、本日皆様にはお土産をお持ちいただいております! 皆様は何をお持ちくださったのでしょうか」
「からあげです!」
 蔵李からは、地元の商店街で購入したお気に入りのから揚げが差し入れである。
「おおお……!」
 澄香は本当に美味しそうに、クラリスは微笑みながらほおばっている。
「ん、美味い!」
 虎噛はからあげを一口にほおばった。
「ジューシー!」
「おでん、アルちゃんの手作り?」
「VTRとおでんはあたしが作ったの。中々良い出来でしょ」
 雅はカメラに向かってウィンクをした。芯まで味のしみ込んだおでんは、体に染み渡る。
「わー! すっごい!」
「あ。アルちゃん写真集の応募はこちらからドウゾ」
 雅が画面下を指さすと、ちゃっかりと応募要項が示されるのだった。
「どうぞ」
 イリスらがおずおずと差し出したのは、ハニートーストとアップルパイだ。彼女たちも、この店の食べ物を食べるのは初めてだ。
「はい、注目ー」
 鴉守は、カシューナッツ入りのトリュフチョコレートだった。
「ラム酒入りもあるよ。ホントはウィスキーなんだろうけど皆で飲むわけにはいかないからねー」
 そう言いつつ、テーブルの上に置くと、キャスがオーウと目を輝かせる。
「どこ土産か? キャスが住んでた異世界の土産……を、可能な限り近くしてみた土産。日本製だけど。見た目通りだけど砂と荒野の世界の人だよ」
『牛追いトカ賞金稼ぎトカ色々やってたデース』
 どういう生活なのか、周りは思い思いに想像する。キャスは唐揚げをつまみ、鴉守はハニートーストをつまむ。
「ラシルが手配してくれるということで、お願いしていたのですけれど……」
 月鏡が箱を開けてみると、出てきたのは静岡さんのイタリアンロールだ。
「お仕事の関係で買いに行くのが難しいということで、ご希望だけお聞きして、スタッフが持ってまいりました」
「……!」
 箱を開けると、月鏡の顔は嬉しそうにほころぶ。ラシルは、由利菜が長らく地元の両親や友人達と会っていないことを気遣うのだった。
「んー、おいしい……」
 鈴宮は菓子をほおばりながら幸せそうである。
「……栗とシュー生地の食感が堪らないね! スポンジの舌触りも滑らかだし……甘さも好みどまんなか」
 片頬に手を当て幸せそうにイタリアンロールをほおばるアル。表情もさることながら、直接的においしいと言わずともおいしさを見事に言い表す彼女は、プロリポーターさながらである。
 加賀谷の差し入れは、和菓子屋のどら焼きだ。中身は粒餡、こしあん、カスタード等多種に渡る。
「エージェントは戦闘ばかりではなく、こうやって日常生活では店の経営をしたり一般人と変わらない事もしてるんですよ!」
 加賀谷の言葉に、エージェントたちは頷く。
「へー、みんな色んな物持ってきてるね。ボクはねー……じいや」
 小詩が合図をすると、セバスがゆっくりとお辞儀をする。
「かしこまりました。不肖わたくしが作らせて頂いた、スコーンでございます。クロテッドクリームをたっぷりつけてお召し上がり下さいませ」
 美しいかごの上に現れたのは、本格的なスコーンである。どこか誇らしげに、アルは胸を張る。
「じいやはお料理がすっごく得意なんだ。家事全般なんでもござれなんだけど、ちょっとお小言が多いのがなあ……」
「お嬢様が一人前のレディになるためでございます」
「そうは言うけどねえ……むぅ……」
 会場を柔らかな笑いが包み込む。
「うまー! これ美味いな! 白虎ちゃん今度これ買って帰ろうぜ! 息子喜ぶかなー」
『ラム酒入りチョコレートはまだ早いのではないか? それよりはこちらの方が喜ぶと思うぞ。そういえば、千颯は何も用意してないのか?』
「ふふふ。俺ちゃんはね、じゃーん!」
 虎噛が箱を開けると、白虎丸は目を見開いた。
「俺ちゃんの店から持ってきた新商品! 白虎ちゃん饅頭だぜ! ゆるキャラ白虎ちゃんの愛くるしい顔を焼印で付けてあるこし餡のお菓子だぜ!」
『ち……千颯……お前そんなものをいつの間に……』
 いつのまにか、商品展開までしていたのだ。
「あ、甘くておいしい」
 白虎丸の意思に反して、なかなか好評である。


 お土産がひと段落着くと、今度はフリップを渡された。お互いの印象を書いてほしい、というミニコーナーである。
 せーのでフリップが裏返される。
 澄香は「困った姉」。クラリスは『愛玩動物(二重線)妹』。
「よし、その喧嘩買った!」
『売りました。お色気勝負です』
「勝てるか!!」
 相変わらずのコンビに、会場はまたもや笑いに包まれた。
 虎噛と白虎丸も、フリップをひっくり返す。虎噛は、「俺ちゃんに冷たいから偶には優しくして」白虎丸は「いい加減ゆるキャラ推しをやめろ」。
「白虎丸さんからは非公認なんですね!」
「俺ちゃん諦めないから!」
 ずっと幻想蝶の中にいたAgraも、この時ばかりは姿を現していた。
 鈴宮は「あぐやんいけず!」、Agraは「手の掛かる孫」。
 二人の関係性が見えた気がして、また和やかな拍手が起こる。早速蝶に戻ろうとするAgraを、鈴宮は幻想蝶をさっと隠して引き留める。こわもての大男は、しぶしぶと残ることになったようだ。

 続いては、視聴者からの質問のコーナーである。
 御神への視聴者からの質問は「英雄とどうやって出会えたのか」だ。
「……めぐり合わせとしか言いようは無いかな。俺が伊邪那美に出会ったのは愚神に追われた時だからな」
『追われた恭也と出会ったのは偶然じゃないのかな。特に神道の教徒でも無いし、氏子でも無いから関係性は無いんじゃないかな?』
「やはり、時の運で決定だな」
 幸運が二人を結びつけたのだろう。めぐりあわせの妙に、同じように幸運を感じているかもしれない周りの仲間たちが頷く。
 月鏡への視聴者の質問は、「エージェントになった理由」だった。
「ラシルがこの世界で活動しやすくなるためです。彼女の記憶が戻る手助けになればとも思っています。私自身にも、実地観測が容易になるメリットがあります。けど……」
 利害関係の一致、それだけでは説明できないこともある。
「ラシルと出会えなかったら……きっと私、今ここにいません」
 仲睦まじい二人の様子に、お茶の間は大いに和むのだった。


「さあ、新年ということで一発芸を披露していただきます! トップバッターはラシルさん!」
 拍手のさなか、ラシルがポーズを決めながら、胸部に手をやり、どこからともなくするすると教鞭を取り出した。
 七つ目のポケット。鞭の先がぴしりと床を打つ。
「……不埒な妄想をした者達には、教育的指導だ!」
 スタジオは感嘆と爆笑の渦に飲まれる。
「これ放送できるんですかね!?」

「はいはい、白虎ちゃんが槍術の殺陣をやります!」
『こういう場では慣れないので、上手くいくかわからないでござるが……』
 虎噛に手渡され、白虎丸は、ゆうに身長を超える長さの槍を構える。
 華麗なステップとともに、踊る様に殺陣を行った。
 一つ一つの動作に無駄がなく流れる水の様に滑らかに克つ、魅せる様な動きである。きらきらとライトを浴びて、鎗が鱗のように輝く。
 最後に白虎丸が礼をするまで、会場はコメントすら忘れて見入っていた。パフォーマンスが終わると、拍手が上がる。

 イリスとアイリスは、会場に出て顔を見合わせる。
「《共鳴》って一般人からしたら珍しいから芸にならないかな」
『確かに珍しいし私たちのそれは派手だろうね』
「まだ要求されるなら歌でも」
『おや、観客の前で歌えるのかい?』
「うん、お姉ちゃんと一緒ならだいじょうぶ」
 二人は共鳴した。黄金の瞳。四枚羽の比翼連理を象った黄金のオーラを纏った、美しい姿。人見知りも、アイリスが要れば大丈夫。
 二人が歌うは、不思議で綺麗で幻想的な妖精の子守唄。アイリスがたまに無意識無自覚で歌っているものである。妖精の歌。アイリスが歌に乗せる調べを、イリスがゆっくりとたどっていく。
 ゆっくりと歌が終わると、名残惜しそうに拍手が起こった。

「続いては、蔵李さんと小詩さんのプチライブです!」
 厳かな讃美歌が、あたりを包み込んだ。どこかクリスマスを思い起こすような演出。会場は、厳粛な雰囲気に包まれる。
 しっとりとした雰囲気が満ちたところで、突如として、蔵李とクラリスが光り輝いた。
 蔵李の姿が、ふりふりのレースに包み込まれる。
「魔法少女クラリスミカ、貴方のハートもくらくらりん!」
 ロック調の軽快なポップスが流れ出す。勢いよく転調したミュージック。
 蔵李は派手に舞い落ちるブルームフレアを完璧に操作し、神々しいカーテンを背に、決めポーズをとる。
 拒絶の風を纏い、幻影の光をアクロバットなダンスに乗せ、客席に惜しみなくばらまく。
「ちょっと不思議だと思わない?」
 小詩は歌いながら、何も持っていない手から次々にカードを出現させたり、消したりを繰り返す。リズムに乗ったダンスが、際立たせる。
(あは、やっぱり歌もダンスも楽しい!)
 フィニッシュには、小詩の雪のように降り注ぐたくさんのカードと、蔵李の色取り取りの蝶がキラキラと舞う。

 会場が割れんばかりの歓声に包まれた、その時だった。
 屈強な男たちが、スタジオに乱入してきたのだ。



「やいやい、お前らあ! おとなしくしやがれ!」
 銃を構えた、数人の男たち。どうやら、テレビ局を占拠しにきたヴィランらしい。ざわつく会場に、クラリスが素早く動く。
『失礼。手が滑ってしまいましたわ』
「!?」
「うわあっ!?」
クラリスがいのりのスカートをめくり、澄香の袴のをすとんと下に落とした。観客席とヴィランの視線をチラリズムで惹きつけ、ヴィランには大きな隙ができた。
 凶器を持ってはいるが、どうにも慣れていないような男たちだ。虎噛と加賀谷は目くばせをしあった。
「んじゃま、ちょっと俺ちゃんの結界に捕まって貰おうかな!」
『これで少しは捕まえ易くなるでござる』
 虎噛と白虎丸は共鳴し、ライブスの結界を張り巡らせる。
「危ないから下がってて! いくぜ、エボニーナイト!」
 まるでヒーローショーのような口上と身振りだ。
 虎噛の振る舞いと加賀谷の言葉に、動揺した客席は演出の一部だと思い始めたようだ。
「エボニー!」の掛け声があちこちから上がる。
「くそ、舐めやがって……!」
 虎噛がヴィランに対して、ライヴスの白い光を走らせる。
「悔い改めよ! なんちゃってー!」
『余り手荒な真似はしたく無いでござるよ』
「ひ、ひえええ……」
「スーパーリンク!」
「ぎゃあ!」
 敵の実力を見切った加賀谷は、徒手での攻撃に徹する。マフラーを靡かせながら相手を鎮圧する加賀谷は、さながら本物のヒーローだ。

 イリスは、ヴィランのでたらめの攻撃を盾で受け、剣で攻撃を叩き込んでいく。同じように、番組の演出だと思われているようだ。客席へ攻撃がいかないように、守るべき誓いで敵を惹きつける。
 ぐらりと体制を崩したすきに、力を込めたライヴスリッパーをぶつける。ヴィランはたまらず昏倒した。御神が駆けつけ、手足の関節を外して無力化する。かつてテロリストに対して使った手だ。
「今回はヴィラン達で少々手古摺ったが、当時はもっと早く簡単に関節を外せた」
『気のせいかな、あの時よりも手際が良い様な気がするんだけど』

 月鏡もまた、守るべき誓いをかざし、イリスとは別の敵に素早くヴィランに接近して注意を引き付けていた。
 きらりとブラッディランスをかざし、意表を突きライヴスショットを込めた蹴りを叩き込む。
「ぐはっ!」
「我は月の姫騎士。低俗な下郎は去ね!」
「みなさん、大きな拍手を!」
 鈴宮は観客を護れる所でお仕置きを見守り、実況をしている。
 軽くかすったらしい怪我人に、即座に治療を施す。
「ひいいい、強い! 勝てない!」
 一人のヴィランが、見かねて逃げ出す。

 ヴィランの来襲。鴉守とキャスが、それを想定してないわけがない。見慣れない男たちが現れたのを確認したときから、彼女たちはカメラの死角からスタジオを降りていた。素早く裏を通って、彼等が侵入してきた方へ回り込む。
(銃撃する訳にはいかないからね)
 皆が追い出しにかかれば。おそらくそこから逃げるだろう。鴉守の読みは当たっていた。ヴィランが逃げ出しているうちに、彼女たちは警備員を応援に呼びスタジオ周辺を封鎖していた。
「クソ、逃げ場がねえ!」
「キャスーアームロックだー」
『ラジャー!』
 鴉守は、背が低いことを生かして、鳩尾や股間に肘鉄や蹴りや銃床打撃をかましている。手配したHOPEの係官たちが来るはずだ。

「傷を見せて、治してあげる」
「あ、あ……」
 小詩は、おびえているヴィランに近づく。虎噛も、ケアレインでけが人を治療する。
『少しはこれで懲りたでござるか? 纏め癒すでござるよ』
「もうこんなことしちゃダメなんだからね?」
 にっこり微笑んでお見送りをする小詩に、ヴィランたちはこくこくと頷くのだった。


『残念ですが、誤解がある方々もいらっしゃいます。ですが、分かり合えると思うのです』
「何綺麗に纏めてるの!」
 真っ赤になり、涙目を浮かべる蔵李。
 これが演出だったのか、はたまた放送事故なのか。穏便にで解決したとはいえ、会場はざわついている。
 アルはマイクの前で、深く深く息を吸った。
『ボクの歌を聞けぇぇ!』
 注目は一手にアルに集まる。アルの声にふさわしいテクノポップサウンドが、会場を包み込む。
 キレッキレのダンスと共に、アルがパフォーマンスを開始する。
 徐々に、徐々に、手拍子が起こる。
(アイドル=カワイイ、だけじゃない! カッコ良さもグッと押したい! 釘付けにしちゃうよ?)
 掛け声や口笛の音。その間に、裏ではヴィランが搬送されていく。いつの間にか居なくなっていた鴉守が、またいつの間にか戻ってくる。
「ごめーんトイレ行ってたー」
 地味な仕事にこそ誇りあり。鴉守はそう思うのだった。

●来年の抱負
 番組もいよいよ終盤に近付いてきた。
 最後に、エージェントたちは来年への抱負を聞かれる。
「来年こそ怠ける」
『のんびりしたいデスネー』
 鴉守とキャスに、周りはうんうんと頷いた。エージェントたちが暇であるということは、すなわち、平和であるということである。
 涼宮はにこにことしながら、鈴宮は笑顔を見せる。
「来年こそはもうちょっとエージェントらしい事も頑張りたいんやけど! ……アイドル……も、頑張ってみたいかなぁ……」
 なかなか、アイドル活動が楽しくなってきたらしい。
「ボクは、アイドル活動にもっと力入れていきたいかな。目指せ、一流アイドル! あと、戦闘ももうちょっと出来るようになりたいかも」
 そこまで言って、小詩は微笑む。
「攻撃するんじゃなくて、誰かを守ったり癒やしたりする方面で」
 セバスは、誇らしげに小詩を見守っている。
「来年の抱負ですか」
『決まっておりますね』
 蔵李とクラリスは、あふれんばかりの笑顔で同時に答える。
『「皆様から頂いたご恩をお返ししたいです」』
 結局は、息の合ったコンビである。二人は拍手が巻き起こる。
「白虎ちゃんを公認のゆるキャラにしたい! その為にみんな応援よろしくなー!」
『待て! 俺はゆるキャラでは無いと言っているだろう!』
 虎噛と白虎丸は相変わらずである。
「異界の知識及び、実地観測の為の強さを深めたいと思っています」
「正規のエージェント科教師を目指しているところだ」
 月鏡とラシルは、それぞれ目標に向かっているようだ。

「ボクと同じように声を失った人達に勇気を届けたいな。それと……何よりもリンカーとして、ボクの手の届く範囲のものは全部守れるよう、もっと強くなるよ」
 アルは、そう言って微笑むのだった。


「それでは、いよいよ番組も終わりに近づいてまいりました。当番組での『TVリンカー・オブ・ザ・イヤー』を発表したいと思います。もっとも素晴らしいパフォーマンスを見せた方に贈られます。今期のリンカー・オブ・ザ・イヤーは……」
 ドラムロールとともに、スポットライトが当たる。
「蔵李・澄香さんとクラリスさんのコンビです! いやあ、魔法少女、お見事でしたね」
 嬉しそうに段に上がる二人に、トロフィーが授与される。周りのエージェントたちも、惜しみない拍手を贈る。
「皆さんも素晴らしかったですよ。それでは、また次回をお楽しみに! ありがとうございました」

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • きみのとなり
    加賀谷 亮馬aa0026
    機械|24才|男性|命中
  • 守護の決意
    Ebony Knightaa0026hero001
    英雄|8才|?|ドレ
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • ようへいだもの
    鴉守 暁aa0306
    人間|14才|女性|命中
  • 無音の撹乱者
    キャス・ライジングサンaa0306hero001
    英雄|20才|女性|ジャ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • トップアイドル!
    小詩 いのりaa1420
    機械|20才|女性|攻撃
  • モノプロ代表取締役
    セバス=チャンaa1420hero001
    英雄|55才|男性|バト
  • ~トワイライトツヴァイ~
    鈴宮 夕燈aa1480
    機械|18才|女性|生命
  • 陰に日向に 
    Agra・Gilgitaa1480hero001
    英雄|53才|男性|バト
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • プロカメラマン
    雅・マルシア・丹菊aa1730hero001
    英雄|28才|?|シャド
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