本部

【黒聖夜】サンタ・シアンの憂鬱

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2015/12/31 15:33

掲示板

オープニング

●騒動の予感
 聖夜が近づく、12月。
 各国の街がクリスマスムード一色に包まれる中、多くの愚神が不穏な動きを見せていた。
 あるモノは西、あるモノは東で。怪しき愚神たちは密かな企みを抱いて待っていたのだ。

 人類世界にとって大切な、不可欠のイベント――クリスマスウィークを。

 ほどなくして、H.O.P.E.所属のエージェントらにオペレーターからの連絡が入る。

「サンタが現れました」

 エージェントらは首をかしげる。

「失礼、何のことかわかりませんね。各地でサンタ姿の愚神が目撃されています。何が起きているのかは把握できておりませんが、エージェントの皆さんは心しておいて下さい。なお、悪事を働くと思われるこれらのサンタをH.O.P.E.では以後『黒サンタ』と呼称することになりました」

●クリスマスを楽しむ少女
 ら、ら、ら、ら~…。
 午前九時、六階建てのビルの上、フェンスを乗り越えた危険な場所で、足を小さく揺らしながら歌を歌う少女が居た。年は十五、六くらいだろうか……やや緑がかった鮮やかな水色のツインテールが揺れる。
「ジングルベル、ジングルベル……」
 ふわふわのフェイクファーの付いた赤いポンチョ、同じく赤のベルベットのワンピース、コートと同じ白いファー付きの真っ赤なブーツ。白いタイツには髪と同じ色のクロッカスの刺繍があった。彼女は……そのシアン色を除けばサンタクロースの仮装のようであった。

 ──……チッ。

 小さなクリスマスソングの流れる街の上で彼女は小さく舌打ちをすると、愛らしい顔つきを醜く歪めた。

 そのショッピングモールの広場に建つ巨大クリスマスツリーにはいくつものカラフルな包みがぶら下がっていた。
 半透明のその中にはドイツのケーキである『シュトレン』やクリスマスに似合いのデコレーションされた『レープクーヘン』といったクッキー、オーストラリアのクリスマスのお菓子『グーゲルフップフ』、ドライフルーツのぎっしり詰まった蒸しケーキ『クリスマスプディング』、ふかふかと柔らかいパンにカラフルなドライフルーツが練りこまれた『パネトーネ』、黄金色のパン『パンドーロ』。ソフトキャンディーの一種であるヌガー菓子、ナッツややはりドライフルーツの入った『トゥロン』、フランスのクッキー『プレデル』、『ベトメンヒェン』、サクサクとした『バニラキッフェル』、洋梨パン『ベラベッカ』、フィンランドのパイ『ヨウルトルットゥ』、ギリシャの焼き菓子『メロマカロナ』……それらの間に、ステッキや星、サンタクロースの帽子の形をしたキャンディーも吊り下げて。そのツリーは甘く幸福な香りをその場に充満させていた。

 クリスマス菓子で飾られたこの巨大なツリーはショッピングモールと一流製菓メーカーのコラボ企画である。今日からクリスマスを含めた年末までの間、このツリー前でゲームが行われる。ゲームの勝者にはこれらのお菓子を少しずつプレゼントするというもので、ゲーム自体は幼児も参加できるような運が勝敗を左右する簡単なものだ。
 今日はそのお菓子だらけのクリスマスツリーのお披露目式。いつもより遅い十一時の開店前に、抽選で当たった客、企業などからの招待客のみがその広場に特別に集まっていた。
 ──慰労と警備を兼ねたH.O.P.E.からの特別招待枠のリンカーもその中に含まれる。

「あれ、お姉さんは参加しないんですか?」
 スタッフらしい青年の言葉にミュシャ・ラインハルト(az0004)は顔を強張らせた。
「──あたしは警備で来たんだ」
 彼女のぶっきらぼうな返答に青年は残念そうに去って行った。
 クリスマスソングがあふれる広場の外れ、クリスマスツリーが辛うじて見える位置でミュシャは小さなため息を零した。
「ミュシャはお菓子を貰わないのかな?」
 呑気に笑いかける相棒のエルナー・ノヴァ(az0004hero001)に、ミュシャは軽く睨んでみせた。
「あたし、こういうの苦手なんです。まだ、剣を振るっている方がいいです」
 最近、少し自分にも心を開いてくれたミュシャの可愛く物騒な言い分に、エルナーは思わず笑う。
「これも仕事だよ。そう割り切ってゲームに参加して来ようか」
 彼がそう言った時だった。

「みずいろ、そらいろ、お花いろ! 花のように爽やかな冬の妖精、サンタ・シアン参上っ!」
 可愛らしい声を張り上げて、ツリーの上に巨大な絵筆を持った少女が立っていた。
「な、なんだ!?」
「危ないわよ!」
「見えた!」
「イベント!?」
 クリスマスツリーは十五メートルほどある。そのてっぺんで足のバランスだけで見栄を切る少女の姿に人々は騒めいた。
「うっふふ~、なぁにが、メリイクリスマスよお! 皆さんにアタクシ、サンタ・シアンからとっておきのクリスマスプレゼントよお!」
「ウオー!」
 サンタ・シアンの掛け声でどこからともなく現れたトナカイの着ぐるみたちが連係プレイであっという間にクリスマスツリーのお菓子たち、更には在庫の段ボールの中身をそれぞれが持っていた巨大な白い背負い袋に詰めて逃走した。
「クリスマスは頂いたわよお! この愚神サンタ・シアンがねえ!」
 甘いお菓子の香りの代わりに、招待客の悲鳴と子供たちの泣き声、そしてサンタ・シアンとトナカイたちの哄笑が広場に満ちた。

解説

 あなたたちはH.O.P.E.からの警備を兼ねた招待者です。
 少女のサンタ然とした格好からショッピングモールのイベントの一環だと思っていましたが、サンタ・シアンの自己紹介によって事態を悟りました。
 目的は招待客を無事に逃がすことと、愚神と従魔の退治です。
 NPCの装備・スキルはキャラクターシートの通りではありません。彼らはPCの行動を補助する形で動きます。

ショッピングモール広場:真ん中に巨大ツリーを配した中庭。植木や花壇、椅子・テーブルがある。周りを建物が囲み、搬入口が一か所あるがシャッターは閉じている。ロックキーを持っているスタッフはツリーの下で腰を抜かしている。建物のドアは三か所。それぞれ建物内に入る鍵は開いており、中から閉めるのも簡単である。だが、建物内から外に出る出入口の鍵は閉まっておりこの騒動の中開けることは非常に難しい。

ゲーム:1m程の巨大X'masオーナメントボール(下部を固定)。玩具のステッキを刺すと何回かに一回鐘が鳴る。五個設置。

観客:大人約三十人、小学生くらいの子供約十人ほど。
NPC:ミュシャ・ラインハルト、エルナー・ノヴァ

愚神サンタ・シアン:デクリオ級。巨大絵筆を持った素早く身の軽い少女。絵筆から粘着性のある絵具を1つ飛ばし、ヒットした相手の動きを1ラウンド行動不能。柄の部分は強力な鈍器となる。

従魔トナカイ:ミーレス級、10体。見た目は虚ろな目つきのトナカイの着ぐるみを着た人間。話せない。身体能力はリンカーに近く、シアン同様異様に素早い。トカゲのように自由に壁を移動。殴る・蹴る、道具・武器を使った攻撃。建物のドアや窓の破壊も試みる。最初数ラウンドは10体中5体は建物をよじ登り外にお菓子を運び出しているので居ない。※ステージ状況によって変化。戦闘開始時点でショッピングモールてっぺんに居り、基本7ラウンド後にステージに登場。

リプレイ

●甘いツリーの木の下で
 広い中庭に甘い匂いが満ちている。ワクワクするような色鮮やかな包装紙にくるまれたお菓子の包みをたわわに実らせた大きなクリスマスツリーが、昼前の冬の太陽の光を浴びてきらきらと輝いていた。
「今日は、プライベートでラシルと一緒にいたかったですけど……」
「……仕方あるまい。仕事が終わってからゆっくり過ごせばいい」
 どこか少し拗ねた様子の月鏡 由利菜(aa0873)をリーヴスラシル(aa0873hero001)は優しく宥めた。彼女も本当は由利菜が自分と二人で、せっかくの休日を一日ゆっくり過ごそう願っていたのは知っているのだ。
 とはいえ、今回は名目上警備の仕事も兼ねているが、リンカーたちも慰労を兼ねた特別招待客でもある。短いオープニングセレモニーが終わればゲームなどでクリスマス気分を楽しむことができる気楽なものだった。その場に居るのは要人などではなく、イベント関連の人間か抽選で選ばれた一般客がほとんどだ。人数だって子供を合わせてもそれほど多くない上、そこにはH.O.P.E.からのリンカーたちが英雄を含めて二十人も居る。小さな喧嘩ならともかく、事件が起こるなどは──警備を依頼したショッピングモール側ですら考えていなかった。

「お菓子は良いの?」
 オープニングセレモニーが無事に終わり、ツリーの前のゲーム人だかりができていくのを見ながら、アリス(aa0040hero001)はパートナーの佐藤 咲雪(aa0040)に尋ねた。
「……ん、あると、嬉しい。けど、めんどくさい」
 答える咲雪は中庭の隅で、半ば閉じた目で眠そうにぼうっと突っ立っている。
 ──……めんどくさい。本当は、咲雪は今日の招待の返事をその一言で放置するつもりだったのだ。しかし、それに対してアリスのお説教──しかも、三時間コース──の気配を感じたため、仕方なく受けたのだ。
「……まったく」
 そんなパートナーの姿に彼女の英雄であるアリスは嘆息した。
「咲雪さーん、アリスさーん!」
 大好きなお菓子の甘い香りが満ちた空間で、キラキラと瞳を輝かせて走ってくるのは今宮 真琴(aa0573)である。後を彼女の英雄である奈良 ハル(aa0573hero001)がゆったりと歩いてくる。そこに早瀬 鈴音(aa0885)と鈴音の英雄、N・K(aa0885hero001)、唐沢 九繰(aa1379)と九繰の英雄であるエミナ・トライアルフォー(aa1379hero001)が続く。
「お久しぶりです! 温泉以来でしょうか?」
「久しぶり……」
「あー、あそこに居るの、九字原さんだ。迫間さんも。結構、知ってる人いるね」
「あっ、もっちー! ミュシャちゃん、かがみちゃん、迫間さんたちも……」
「すごいわね、お知り合いがたくさん」
 真琴の声に、愛称を呼ばれた餅 望月(aa0843)が気づいて英雄の百薬(aa0843hero001)と駆け寄って来る。
「マコちゃん、早瀬ちゃん、咲雪ちゃん、唐沢ちゃん! みんなも来てたの? あっちにレーラちゃんいるよ!」
「友達がたくさん揃うと楽しいですね」
 いつものように淡々と話すエミナ。その右手のディスプレイには『楽しい!』という感情が目一杯表示されていて、それに気づいた女の子たちは顔を見合わせて笑い合った。
「こんにちは」
 楽しそうな少女たちの傍にマイヤ サーア(aa1445hero001)を連れた迫間 央(aa1445)がやって来た。仕事も兼ねているため、マイヤも幻想蝶の中から出て央と行動しているのだ。
「呼ばれたような気がしたのですが」
「こんにちは、迫間さん、マイヤさん。今日は知り合いが多くて楽しいですね!」
 鈴音たちが笑って挨拶をした──その時だった。

●憂鬱なサンタがやってきた
「みずいろ、そらいろ、お花いろ! 花のように爽やかな冬の妖精、サンタ・シアン参上っ!」
 賑やかな中庭に張り上げた声が響く。驚いて、声のする方を見上げれば、ツリーの上に巨大な絵筆を持ったミニスカサンタ姿の少女が立っていた。イベントの一環かと興味深げに見守る観客達の目の前で、シアンはぴんと立てた人差し指を頬に添えてウィンクを一つした。すると、どこからともなトナカイの着ぐるみたちが現れ、あっという間に全てのお菓子を強奪した。
「クリスマスは頂いたわよお! この愚神サンタ・シアンがねえ!」
 一部のトナカイ従魔たちが暴れだす。辺りには招待客の悲鳴と子供たちの泣き声が響き渡った。

「まぁ、タダでイベント参加とは思っていなかったけど、ここまで込みになるのは予想外だなぁ」
「そう愚痴るな。いつも通り始末して、何事もなく再開すればいいだけの事だ」
 九字原 昂(aa0919)とベルフ(aa0919hero001)は、テーブルや椅子を振り回し、一般客を襲う従魔トナカイをいなしながら、子供たちをその場から逃がしていた。
「プレゼントを奪っていくサンタというのも斬新だね」
「俺からしたら、無償でプレゼントを配るってこと自体が信じられなかったがな」
 サンタについて軽口を交わしながら、二人はトナカイの振り上げた椅子の背を蹴り、従魔の足を払う。共鳴していないためダメージを与えることはできないが、近くに居た数名の子供たちを逃がすことは出来た。襲われていた一般客が粗方逃げたことを確認すると、二人は素早くトナカイたちから距離を取り、共鳴する。
「そういえば、一応警備のお仕事として無線機を貸してもらったんですよね」
「打ち合わせもない、ゆるっゆるの警備の仕事だけどな」
 カチ。華奢なヘッドセットマイクの通信ボタンを押す。共鳴したリンカーの登場に、持っていた植木鉢を投げ捨て、ライヴスを纏わせた拳を固めて殴りかかる従魔。昂は太刀を構えた。

「え? ちょっと、これってゲーム中止ってこと? 折角、もうすぐ順番だったのに……」
 穂村 御園(aa1362)は、目の前のカラフルなステッキの刺さった巨大なオーナメントボールを恨めし気に見つめる。そんな彼女に暴れるトナカイたちを示しながら、ST-00342(aa1362hero001)は淡々と言葉を発する。
「ST-00342は直ちに他のエージェントとの協議を開始することを推奨する」
 御園は同じH.O.P.E.で働く憧れの相手を思い浮かべた。すぐにでも共鳴しようと手を伸ばすST-00342を押し留めて、自分より随分背の高いパートナーを見上げる。
「……それにまだ、先輩のプレゼント選びきれてないし……ちょっと、エスティ聞いてる?」
「ん? ああ、聞いている、済まない。だが、緊急事態……え? 勿論だ! 許し難い……」
 御園の想いを汲んで、サイボーグ然とした外見に反して優しいパートナーは憤りを露わにした。

 真琴は九繰たちと話しながら、そわそわとしていた。
 ──お仕事終わったらみんなで遊びたいなー。でも、何て言おうかな……お菓子もらえないかな──。
 うきうきとそんなことを考えながら、シアンの名乗りすらも右から左に聞き流していたが。
「と思ったらもってかれた! お菓子! 返せーーっ!!」
 トカゲのようにスルスルと壁を登っていく従魔たちに神業の速さで取り出したスナイパーライフルの銃口を向け、ハルは呟いた。
「──エルナー殿もそうじゃが、ワタシも苦労人といっていいよな……?」
 今の彼女ならそのまま使えそうでもあったが、とりあえず、真琴の肩を叩いて共鳴を促す。
「サンタの格好で悪さされるだけで人間側には大損害ですね」
「愚神が人間の文化に関与してくるなんて……何のつもりかしら」
 央が言うと、マイヤは憮然と答えた。少女の姿をとってはいるものの紛うことなき愚神であるシアンに、マイヤは強い眼差しを向ける。
「とにかく、私は愚神サンタ・シアンの注意を引きます。……佐藤さん?」
 央は顔見知りのシャドウルーカーである咲雪を見る。
「……ん、なんか……イタいのが……いる」
「あの名乗り、恥ずかしく無いのかしらね?」
 周囲の騒然とした空気など気にした様子もなく、しらっとシアンにツッコミを入れる咲雪とアリス。
「……めんどくさい」
 けれども、一応名目でも警備を兼ねた招待である以上、放置する訳にもいかない……。央の視線に気づいた咲雪は共鳴し、パイロットスーツを装着した姿に変化する。得物を確認すると、同じく共鳴した央の後に付いてツリーに向かって駆け出した。
「うわ、何あれ……きもちわるい……」
 壁を這うトナカイの着ぐるみ姿の従魔を見て九繰がバッサリと切り捨てた。
「変な相手ですが愚神と従魔のようです。一般の方の避難を」
 すでに仕事モードに切り替えて共鳴を促すエミナに、九繰は力強く頷く。光の蝶が舞い、瞬いた九繰の両眼は歯車模様と瞳孔の無い人形のような瞳にそれぞれ変わる。ぐるり、周囲を見回すと敵と仲間のリンカーたち、一般客と出口の位置関係を確かめた。
「私は避難誘導にまわります!」
 一般客と他のリンカーたちの動きを気にしながら、中庭に面した建物のドアの一つへと走る。
「何で今ここに態々来るのかなー……」
 残された鈴音とN・K、望月と百薬。鈴音は小さくため息をついた。
 ──警備名目でイベント楽しんで終わり、なんてのを期待してたんだよね。
「もー……仕方ないなあ」
 ──でも、始まっちゃったものはどうしようもない。邪魔者にはさっさと解散してもらお?
 言葉に出さない鈴音の声に英雄であるN・Kが応える。光が舞い、鈴音と共鳴したN・Kの姿が消える。
「望月、わたしたち、二人とも回復と遠距離攻撃だから連携取って動いた方がいいね」
 鈴音の声に硬い表情を浮かべた望月が頷く。
 ──H.O.P.E.のエージェントとして警備を請け負っておきながら、一般人が危険な緊急事態に非常避難経路も確保できていないとは。
 望月は予想外の事態にほぞを噛む。彼女はいつだって彼女なりに覚悟を決めて仕事に当たっていた。
 ──迂闊だった、なんて言い訳にもならないよ。始末書だけじゃすまないよね。これはあたし達、もうエージェント続けていられないかもね。
 思いつめたような望月の横顔を、百薬が心配そうにのぞき込む。
「百薬、いままでありがとう、楽しかったよ」
「えー? お別れなのー?」
「うん、多分最後の仕事だね、命に代えてもみんなは守るよ」
 凛と言い放った望月に、少し戸惑いながらも、百薬はいつものように額を合わせる。こつん。光と共に、望月の背に百薬より大きな白い翼が現れた。
「トナカイ従魔なんて、みんなには近づけさせないよ」
 翼を広げスナイパーライフルを構えた天使は、照準を一番近い従魔に合わせた。

 シアンと暴れるトナカイたちを眺めながら、言峰 estrela(aa0526)は呆れ顔で自分の英雄であるキュベレー(aa0526hero001)を見た。
「なに? あれ? クリスマスに嫌な思い出でもあったのかしら……失恋とか?」
 エストレーラの言葉にキュベレーが鼻で笑う。
「……愚神も恋をするのか」
 その瞬間、ツリーの上の愚神がキュベレーを指差した。
「そこの二人、なんか聞こえたんですけどお!」
 シアンの持つ巨大な絵筆が、まるで長刀のような動きで風を切る。
「えっ!?」
「何!?」
 巨大な絵筆から弾き飛ばされた大きな絵具の塊が二人を襲う。
 ──べちょ。
 やけに重く絡まる絵具が二人を地面に縫い付ける。それはすぐに固く固まって彼女たちを拘束する。
「あなた、これ、ワタシたちの新しい冬服なのよ?」
 怒りを込めた眼差しでシアンを睨みつけたエストレーラだったが、隣から立ちのぼる冷気に気付き、絵具を剥がしていた手を止めた。キュベレーは冷たすぎて痛みすら感じそうな氷点下の眼差しでシアンを睨みつけていた。さすがに一瞬、怯んだものの、シアンは下卑た笑みを浮かべる。
「ふふっ、一張羅を汚しちゃって、ごめんなさあい! お詫びにもっとキレイにしてあげますねえ」
 もがく二人に、どこから持ち出したのか、汚れたモップを振り上げるトナカイが迫った。
「あなたたちの相手は私です!」
 美しい光の鎧を纏った姫騎士が剣を構えて駆けつける。由利菜だ。共鳴したミュシャ・ラインハルト(az0004)が続く。トナカイは二人が斬りかかると、モップを投げ捨て両手にライヴスを集中させる。拳を固める構えを取るトナカイの着ぐるみの姿は異様であった。
「見た目が奇妙でも、人々の楽しい一時を邪魔をするあなたたちを許しません!」
 由利菜の言葉にシアンの瞳がギラリと光る。
「あなたたちに、アタクシの気持ちの何がわかるって言うのよお!」

「あの愚神、もしかして高い所好き系女子かなあ……」
 十五メートルはあろうかというツリーの上で、白タイツを履いてはいるものの、ミニスカート姿で元気に騒ぐシアンを見ながら御園は呟く。ST-00342のサイボーグのような外骨格を強化スーツのように纏っており、手にはスナイパーライフルを構えている。
「狙っちゃえ!」
 彼女は驚異の命中力を誇るジャックポットだ。トリガーに指をかけた御園へ、装着した無線通信機からST-00342のアドバイスが流れた。
「御園、愚神の足元辺りにある星を留めているワイヤロープだ……そう、二番目の継手を狙えばあの巨大な絵筆の重量は支えられ無い。本人の重量は知らないが……」
 アドバイスに感謝しつつ、御園は慎重に狙いを定める。

 くるっと一回転して、シアンは重そうな絵筆の先で由利菜を指す。絵具を警戒して、一同に緊張が走る。
「あんたたちにわかるう? 呼び出されて来てみれば、世の中キラキラお幸せムードで、カップルたちがイッチャイッチャイッチャイッチャしてた愚神の気持ちが! そして、アタクシは、愛らしさとお花の可愛さのシアンは、なぜかこのキモトナカイとお仕事でっ!」
「キモトナカイって言った」
 誰かのツッコミをシアンは無視した。ちらり、と赤いミニスカートの裾を引っ張ると、タイツに刺繍されたクロッカスを見せる。
「……クロッカス、まるでアタクシのような」

「もういいよね」
 呟いて、トリガーにかかった御園の指が動いた。狙い通り、星の留め具が一つ弾け飛んだ。勿論、残ったワイヤロープでは余分な重みを支えることはできなかった。
 ガクン、と足元の星が外れてバランスを崩したシアンは、そのまま盛大にひっくり返り、飾りがほとんど無くなった巨大ツリーの枝先を滑り落ちて行く。
「き、き、きゃああああああ!?」
 そのまま、シアンはゲーム用の大きなオーナメントボールの一つに突っ込んで一緒にどこかへと転がり去る。
「……大丈夫ですか?」
 トナカイを斬り伏した由利菜がエストレーラに声をかける。もちろん、心配しているのはシアンではない。礼を言ったエストレーラは周りに目を向けた。逃げられる者は既にリンカーたちに守られながら移動し始めている──。すると、ツリーの前でへたり込んでいる成人男性を見つけた。会場に入る時に挨拶をしてくれた警備スタッフの一人だ。
「……まずは一般人の避難が優先ね」
 絵具は既に外れており、エストレーラは解放されたキュベレーと共鳴する。そして、警備スタッフの男性の元へ走った。
「貴方……そんなところで座ってたら、従魔の餌食になるわよ?」
 エストレーラの声に、彼は一瞬びくりと肩を揺らした後、彼女の顔を見て安心したように息を吐いた。
「いや、腰が抜けてしまってね……しかも、さっき愚神が僕の隣を転がっていって」
 エストレーラは彼に肩を貸しながら、尋ねた。
「一般人を外へ避難させたいのだけれど、ここのドアって鍵かかってるの? 鍵とかもってる?」
 すると、彼は顔は顔を歪めた。
「開店前で、そこの中庭のシャッター以外は警備室から一括に鍵をかけてあるんだ。だけど、今から警備室へ戻って解除していたのでは間に合わない。……本当なら、僕が警備室に詰めている予定だったんだが……シャッターの鍵をスタッフに渡すのを忘れて──持って来たところでこの様さ。すまない」
「シャッターの鍵は預かってもいいかしら」
 男は頷くと、カードキーをエストレーラに渡す。
「でも、あそこを開けてもいいのかい? お菓子を持って行ったトナカイは外に向かっているんだろう?」
「いろいろとね、方法があるのよ」

●トナカイの兵隊さん
 ライフルを抱えながら、御園は愚神の狙える場所に移動していた。
「ピチャピチャ邪魔だよね? あの絵筆……御園の排除リスト登録完了です」
 ──確か先週登録した先輩の幼馴染の排除がまだ終わって無いぞ。
 ST-00342の声に頷きかけ、慌ててかぶりを振る。
「思い出したし……こっちが最優先だから! 絶対ぶっ壊す!」

 暴れる従魔たちに襲われない場所に移動した真琴はぐるりと中庭を見渡した。
 ──避難はまかせよう……まずはあのサンタを撃って落とす。そうすれば皆がなんとかしてくれる。
「ボクの役割は……従魔の数を減らすこと! いくよハルちゃん」
「あい分かった!」
 共鳴し、紫と紺の和装姿に変じた真琴は銃を構える。
「先手必勝!! 落ちろぉぉっ!!」
 誰よりも早く、真琴の銃から放たれた弾丸は外壁を這い上るトナカイをいともたやすく射貫く。銃弾を吸い込んだそれは落下していった。しかし、壁を登る従魔はまだいる。
「ジャックポットの数が少ない! ボクがやらなきゃ!!」
 ──いいのぅ、いいのぅ、よく見えとるわっ!
「従魔援軍とか簡単にさせないよ? キモトナカイ!」
 その瞬間、真琴の銃とは別の乾いた銃声が響く。はっと射線を追うと、高所で同じくスナイパーライフルを構えた鈴音の姿があった。ジャックポットに負けない銃を構える鈴音の凛々しいその姿に、真琴は胸の奥で渦巻いていた焦りが落ち着くのを感じた。そして、また弾を射出する音が響く。鈴音から少しだけ離れた場所で、天使の翼を背負った望月が銃を構えている。外壁を弾いたその一撃に、狙われた従魔は荷物を捨てて壁を滑り降りる。そこを剣を構えたミュシャが斬りかかる。残った従魔たちは壁を登る速度を加速させた。

「フリーゲン!」
 エストレーラが叫ぶと、ライヴスで生成された鷹が羽ばたいた。視覚を共有した鷹の瞳はショッピングモール前に停まったトラックとそれを操作するトナカイの着ぐるみという異様な光景を映し出した。エンジンをかけたままであり、更に荷台に溢れるばかりの荷物が乗っている所を見るとそろそろ出発するつもりなのだろう。
「騒いだり声を出さないで? 静かに移動すれば気付かれにくいはずよ」
 怯える人々に声をかけ、エストレーラは従魔たちの目を盗んでシャッター側に移動していた。警備の男性は他の男性客が手を貸している。エストレーラと別ルートで人々を避難誘導している九繰から定期的に無線が入る。
 九繰はいつもより薄暗い建物内部を人々を連れてシャッター側に向かって歩いていた。すると、一人の少年がぐずり始めた。
「もう歩けないよ……」
 逃げる際に転んでしまったのだろうか。膝から下まで大きく擦りむいた傷跡から赤い血が滲んでいた。
「今まで我慢して歩いていたんですね、偉い偉い! でも、こういう時は私に言って下さいね!」
 少年の前にしゃがんだ九繰の指先から温かなライヴスの光が溢れる。
「うわあ……すごい!」
 今まで萎れていた少年の顔きらきらと輝く。
「さあ、あと少しです!」

 由利菜の剣は的確に従魔たちの脚にダメージを与えて行く。既に原型を留めていない椅子を振り上げ、ショッピングモールの強化ガラスに叩きつけようとする着ぐるみトナカイを斬り伏せ、返す刀でガラスに映っていた背後の一体の身体を薙ぐ。そこへ、体当たりを狙ったトナカイがつんのめって、地面に転がる。
「出血毒に神経毒、いろいろあるけど何がお好みかな」
 共鳴した昂が、従魔の足をすくったつま先戻しながら現れた。
 ──昂、そうやって余裕ぶっていると足元を掬われるぞ。
 軽口を叩く相棒を戒めるベルフの声を聞きながら、昂は毒に濡れた切っ先を転がる従魔に突き立てる。その隣を物凄い速さで巨大なオーナメントボールが通り過ぎた。少し壊れたそれはシアンの突っ込んだものである。
「クロッカスの花言葉は、青春の喜びっ!」
 髪を乱したシアンの絵筆から生まれた絵具の塊が昂を地面に縫い付ける。
「けれども、紫のクロッカスは愛の後悔!」
 にまりと笑ったシアンへ、央の投擲用ナイフが放たれた。彼女の頬に赤い線が現れる。
「佐藤!」
「……ん、イタいミニスカサンタの相手を、する」
 咲雪のタガーがシアンの顎を貫かんと突き上げられる。辛うじてそれを躱した愚神は血走った眼で叫んだ。
「何がリンカーだ、英雄だ! お前らが相棒と離れて新年寂しく過ごせるよう呪ってやるう!」
「その服装にトナカイの手下、随分とクリスマスがお好きなようだな? 愚神風情がサンタに恨みでもあるのか?」
 シアンの絵筆が打ち出した絵具を難なく躱した央は不敵に愚神を挑発する。

 ──ひとまず私達で引き付けるわよ。トナカイの処理やら避難誘導が終わるまでは、攻撃より回避を優先して。
「いやがらせ、優先?」
 ──そうね。私達に火力はないからスキルでの行動阻害と地味にダメージ与える事でイラつかせるのが良いわ、怒れば攻撃は単調になるから避けるのもラクよ。
 共鳴した咲雪とアリスの意思疎通は瞬時に行われる。そして、アリスの支援により、咲雪の視界に敵の行動予測、投擲する己の武器の照準などが表示される。
 ジェミニストライクによって二人に別れた央の刃がシアンを襲う。愚神には央を捕らえることはできないようだった。ならばと、標的を変えて咲雪に、今度は絵具ではなく、絵筆の柄を叩きつける。
「……ん、遅い、から避けるの、かんたん」
 咲雪はその攻撃をぎりぎりで避けると、鍔の無い投擲用ナイフを打ち出す。
 由利菜と拘束を解いた昂は、シアンから離れ、役割である従魔退治へ向かう。シアンとのいざこざの間に建物に向かった従魔に昂が猫騙をかける。足を止めたそれを追いついた由利菜の刃が薙ぎ払う。思わず流れ落ちた汗を拭いながら、彼女は昂に声をかける。
「今、何体でしょうか」
 その時、建物の上に並ぶ従魔たちの姿が見えた。既にお菓子を詰めた袋を持っていないところから見ると、荷物は既に運び終え、そこから飛び降りて戦場へ加わるつもりらしい。昂の眉が顰められた。
 その時、無線機に真琴の声が響き、リンカーたちは咄嗟に目を塞いだ。
「逝けぇぃっ!! 登場と同時に退場させてあげる! まとめてくらえっ」
 ──響け……鈴鳴(フラッシュバン)!!
 眩い光が弾ける。目を閉じたリンカーたちの耳に、二発の銃声と次いで重い何かが落下する鈍い音が聞こえた。建物の下で従魔と戦っていたミュシャが、銃弾を避けてまだ息のある従魔に止めを刺す。

 思わず目を覆ったシアンの隙に、央はハングドマンを投擲する。今度はシアンが短剣とそれを結ぶ鋼線によって地面に拘束される。
「ぐっ!」
 思わず手から離れた絵筆の留めの部分が弾け飛ぶ。バラバラと分解された絵筆がシアンの上に降り注ぐ。御園のストライクだ。
 絶望したシアンの身体を刃が貫き、愚神はライヴスを手放した。

「……くそっ、力が足りない」
 剣を地面に突き立て、暗く呟くミュシャに、共鳴を解いたリーヴスラシルが近づいて来た。
「……私は、愚神や従魔に私の住む国を滅ぼされた記憶が、断片的に残っている。今の主と契約する時も、彼女に愚神の魔手が迫っていた。故に……私は愚神や従魔の存在を許せない」
 青く暗い瞳にリーヴスラシルの美しい姿が映る。それは清廉でかつ、苛烈な美しさだった。濁った声でミュシャは語る。
「……あたしは、ヴィランに家族を殺された──その時、あたしも死んだ。英雄の力を得たとは言え、人間でありながら、圧倒的な力で人を踏みにじるゴミクズ共があたしは許せない」
 『許せない』。同じ想いを抱いているはずなのに、なぜこんなに瞳に宿る色が違うのだろうとミュシャはぼんやりと思った。そして、彼女が吐き出した暗い想いを、その美しい騎士は否定もせずただ黙って聞いてくれたのだった。
 

●クリスマスの祭り
 リンカーたちは、荒れた中庭を片付けるスタッフたちを手伝っていた。ショッピングモール自体が営業は休むことになった。いつの間にか、避難していた一般客や開店準備をしに出社し各店舗のスタッフたちも集まり、作業は思いのほか早く済んだ。ちょっとボサボサになったツリーにも、リンカーたちの手によって、元のようにお菓子が括りつけられた。
「はあ……営業再開時間は未定かあ。どうしよう? クリスマスまでもうお休み無いよ。別のモールに行くにしても間に合うか分かんないし……」
 クリスマスムードを取り戻した中庭を眺めて、御園がため息をついた。
「大分派手にやったからな……だが、諦めるな御園。さっき会った店員を探そう。随分熱心だった。何とかしてくれるかも知れない」
 ST-00342の言葉に御園の顔が少し明るくなった。その時だった。鈴音がすたすたとステージへと歩いて行った。そして、置かれたままのマイクを手に取ると、スイッチを入れた。
「またさっきみたいのが来ても、私達がもっかい退治しちゃうし、皆は安心して楽しんでいって。折角、品物取り返したんだし、改めて遊んで貰いたいの。クリスマスの思い出が愚神に襲われて終わりってつまらないじゃん?」
 にっこり、笑うと鈴音はマイクのスイッチを切った。その場の人たちはぽかんと鈴音を見守っていた。
「あの……すみません。せっかくですので──みなさんも一緒にいかがですか?」
 やがて、リンカーたちに声をかけたのは店舗のスタッフだった。驚いて周りを見ると、大人も子供もにこにこと彼らを見ていた。少したんこぶを作った子供が居た。クリスマスのために新調したであろうコートが汚れてしまった人もいた。でも、みんな笑顔だった。
「今日のイベントは、いつも街を守って下さっているH.O.P.E.の皆さまの慰労を兼ねたものだったんです。会場はちょっと荒れてしまいましたが」
「お姉ちゃん、お兄ちゃん、僕もリンカーの人たちと一緒にゲームしたい!」
 その声が合図のように中庭に再び楽し気なクリスマスソングが流れ始めた。エストレーラが振り返ると、ベンチに座った警備の男性が無線機片手に彼女にウィンクしてみせた。
「せっかくのイベントです、楽しみましょう」
 由利菜の言葉に、一同は笑顔を浮かべた。
 そうして、一つ減った巨大オーナメントボールの前に人だかりができ、他の人たちには飲み物と少し崩れてしまったクリスマスのお菓子が振る舞われた。しかも、それを運ぶ手伝いをする由利菜がいつの間にかメイド服姿に変わっていたので、女性陣から「可愛い!」という声が次々と上がった。
 そんな中、ミュシャは荷物を掴むと出口に向かって歩き出していた。
「折角、年の近い娘が揃ってるんですから一緒にやってきてはどうです? 私みたいな歳になってしまうと、したくても、なかなか混ざれなくなってしまいますから。私の代わりに楽しんで来て下さい」
 突然かけられた声に驚いて振り返ると、そこには穏やかな表情を浮かべた央が立っていた。
「みゅしゃちゃんー、大丈夫だったー??」
 足を止めたミュシャに駆け寄った真琴が肩を叩く。
「今度温泉いこう! 温泉! みんなで!」
「あたし、肌を出すのは……」
「真琴、無理には引っ張るのはダメだよー。でも、戦うのも遊ぶのも友達と一緒の方が良いなっ」
「そうですね! 御園さんたちもみんなで遊びましょう!」
「というわけで遊ぼう!」
 困惑しながら、結局、ミュシャははにかんだ笑みを浮かべた。そして、真琴、鈴音、九繰に引かれ、ミュシャと女の子たちはゲームの列へ向かっていった。
 それを優しく見守った央は、おもむろに端末を取り出した。瓦礫の始末などがスムーズに行くよう、役所に連絡をするためだ。電話を切った彼はマイヤの視線に気づいた。
「央はゲームに混ざって来ないの? 顔見知りの娘も多いのに」
「学生さん同士で和気藹々してる所に社会人が入ると気を使わせそうだからね」
 そんな彼に、彼女は小さな包みを差し出した。ゲームの商品である。そういえば、しばらく姿が見えなかった気がするが、その時に参加していたのだろうか。
「プレゼントとか準備できないから……気持ちだけ。ね」
 赤いリボンを結んだ深い緑の包装紙に包まれたそれは、中身が何か知らせるように、微かに優しい甘い香りがした。
「エルナー殿おつかれさんじゃな」
 ハルはエルナーの元へ歩いて来た。
「そちらはどうじゃ? 変わったか?」
 興味深げなハルの言葉に、エルナーはもう一度視線をミュシャに向けると微笑んだ。
「そうだね。……びっくりするくらいに」
 彼の返事に、ハルはそうか、と嬉しそうに答えた後、沈痛な表情で額を押さえた。
「だが、ウチのはなぜか別方面に悪化した……」
 オーナメントボールのゲームの前で楽しそうな声が風に乗って聞こえた。

「えっ、この小さなクリスマスブーツの中にそんなにたくさんのお菓子が入っているの?」
 特別に作られたという『甘い魔法のクリスマスブーツ』と名付けられたそれを見て、望月が驚いた声を上げた。
「Mメモリーの技術ですよ。本当はゲームの特別賞で使う予定だったのですが、今日頑張って頂いたみなさんに」
 小さなサンタの姿をした子供たちがそれぞれリンカーたちにクリスマスブーツを渡した。
「こういうサンタなら可愛いのにね」
「……ん、異論はない……」
 両手で優しくクリスマスブーツを包んだ咲雪が微笑むアリスに同意した。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • エージェント
    言峰 estrelaaa0526
  • 撃ち貫くは二槍
    今宮 真琴aa0573
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445

重体一覧

参加者

  • 魅惑のパイスラ
    佐藤 咲雪aa0040
    機械|15才|女性|回避
  • 貴腐人
    アリスaa0040hero001
    英雄|18才|女性|シャド
  • エージェント
    言峰 estrelaaa0526
    人間|14才|女性|回避
  • 契約者
    キュベレーaa0526hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 撃ち貫くは二槍
    今宮 真琴aa0573
    人間|15才|女性|回避
  • あなたを守る一矢に
    奈良 ハルaa0573hero001
    英雄|23才|女性|ジャ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • 高校生ヒロイン
    早瀬 鈴音aa0885
    人間|18才|女性|生命
  • ふわふわお姉さん
    N・Kaa0885hero001
    英雄|24才|女性|バト

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 真実を見抜く者
    穂村 御園aa1362
    機械|23才|女性|命中
  • スナイパー
    ST-00342aa1362hero001
    英雄|18才|?|ジャ
  • Twinkle-twinkle-littlegear
    唐沢 九繰aa1379
    機械|18才|女性|生命
  • かにコレクター
    エミナ・トライアルフォーaa1379hero001
    英雄|14才|女性|バト
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
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