本部

ヒーロー、ヒロインになれ

saki

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 5~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2015/12/24 20:20

掲示板

オープニング

●某テレビ番組にて
 戦隊物のヒーローや、魔法少女ものなんかは何時の時代だって子ども達に人気のあるものである。それどころか、一部の大人にだって人気だ。
 そして、この番組は深夜枠を確保する大人向けのヒーロー、魔法少女ものを放送している。それはやはり、一部の大人に根強い人気があり、熱狂的なファンがいる程だ。
 この番組は深夜枠にあるからといって、エロスがプラスされているわけではない。よりリアルティが追求されているのである。
 それが大人に人気な理由と言っても過言ではないだろう。大人が作る、大人の為の番組として放送されているのである。
 そして、そのプロデューサーは考えた。どうすれば、よりリアルなものが描かれるのか――と。
 その末の考えがこれだ。
「そうだ。なら、本物の能力者に出演してもらえば良い。そうすればスタントマンやCGなんか無しにもっと良いものができる筈だ」
 こうしてそんな安楽的な考えの元、一つの依頼がもたらされることとなった。

解説

●目的
→子供向け……ならぬ、大人向け戦隊もの+魔法少女要素が加わった番組に参加すること

●補足
→敵の幹部キャラと、手下としてテレビ局側が用意した従魔が登場するので、それと戦闘になります。
→演出に使いたいものは申請していただいてOKです。
 あまり規模の大きなものは不可ですが、移動手段にバイクとかこういう演出効果を出したいとかなら可能です。
→流れとしては、勧善懲悪もの。

 敵が街で暴れる→それを退治しようとするが、敵が市民を人質にして逃走→それを追って退治する

 という流れを予定していましたが、こういう流れが良いというような希望があったら出してください。
 もしくは、こうすればもっと盛り上がるとか案があったら大歓迎です。
 番組を盛り上げる為に皆さんの案も出してください。
 尚、上記の案でいくのでしたら人質が怪我をするのはNGですので、上手く救出してください。
→変身シーンも勿論OKです。
 素敵にキメてください。

リプレイ

●打ち合わせ
 監督に依頼を受け、それぞれは顔合わせとなった。勿論知り合いもいるが、初対面の者だっている。
 柔軟というよりはフリーダムな監督の元、それぞれが役をすり合わせる。「やりたいことをやった方が上手くいく、つまりは好きこそものの上手なれというわけだ」と監督は言うが、今回はそれとはちょっと違う。だが、それによって配役を決めることとなった。

 その結果……
・魔法少女姉妹 ()は、幻想蝶の中に居る為
 長女:蔵李・澄香(aa0010)(クラリス・ミカ(aa0010hero001))
 次女:小詩 いのり(aa1420) じいや:セバス=チャン(aa1420hero001)
 三女(人質):ゼノビア オルコット(aa0626)(レティシア ブランシェ(aa0626hero001))
 四女(義姉妹):アル(aa1730)(雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001))
・妖精魔法少女
 イリス・レイバルド(aa0124) アイリス(aa0124hero001)
・魔法少女
 天城 稜(aa0314) リリア フォーゲル(aa0314hero001)
・ダークヒーロー
 紫ノ宮莉音(aa0764) レオンハルト(aa0764hero001)
・モブ・ガヤ寄り演技(物語進行調整)
 浦見 真葛(aa0854) シュノギ(aa0854hero001)
・正義のヒーロー
 仮面ライダー:防人 正護(aa2336) エキストラ:アイリス・サキモリ(aa2336hero001)
・魔法巫女少女
 緋茉莉 ゆかり(aa2534) 雪桜ノ姫(aa2534hero001)

 と、いうことになった。
「まぁ、その他の細かいところは実際にやってみればどうにかなるよ。そっちの方がリアリティというか、臨場感が出るだろうし。じゃあ、本番いこうか」
 ただ単にどういうキャラなのかを決めただけである。もうやるのかとこの場の誰もが思ったが、かなり大雑把な監督の元、撮影が始まった。

●移動中の一コマ
 それぞれが配置に移動する間、四姉妹として行動する澄香、いのり、ゼノビア、アルは細かい設定を作り上げた。それにより、孤児院で暮らす姉妹であり、そこに新しくアルが加わるがあまり馴染めていないという設定になった。
「今時のアイドルはお芝居もきちんと出来なきゃね。あ、でもやっぱり歌のアピールはしとかないと!」
「そうだよね。また一緒に仕事できてうれしいな。頑張ろうね」
「素敵な作品に仕上げようね。ボクを知ってもらう良いチャンスだからアピールも忘れないよ!」
 これまでも共演したことがあり、楽しそうなアイドル三人娘と、案外ノリノリのゼノビアは「みんな頑張ろ、です!」と盛り上がっている。幻想蝶の中でレティシアだけが、『この歳になって、こんな事するとは思ってもみなかった…』と呟いた。

「お姉ちゃん…この称号はいったい、いったい!?」『ああ、折角貰ったものだしね。それが折角使う機会に恵まれたんだ。なら折角だから使わなければもったいないと思わないかい?』「あ、アイドルなんて、何かの間違い…! 間違いに決まってるんだからね!?」『はははっ。例え間違いだったとしても楽しもうじゃないか』
 イリスをからかうアイリスは楽しそうで何よりである。

「ええーーーーー! 僕が男の子から変身する魔法少女役ーーーーー! 待って! どうして! え? 相方さんが勝手に決めて監督に話した? しかも、監督も乗り気なの!? リリアー! どういうことだよー!」『あら?私だって偶には羽目を外したいわ……それに、魔法少女って素敵だと思いません?』「そうなのかな? ……もう仕方ないなぁ……」
 男が魔法少女ということに疑問は覚えつつも、楽しそうなリリアに綾は頷いた。


「テレビに出られるなんて、とっても面白そうなのですよー! 頑張るです」
『俺様はヒーローじゃなくてヒール! 悪役なんだっつーの!』
 文句を言うレオンハルトに対し、莉音はとても楽しそうだ。やる気満々である。
 そんな二人の横で、「演技初めてだから緊張してますー(可愛い子と仲良くなっとこー)」『一生懸命やるのじゃ!(いたいけな少年ポジションは我と莉音だけじゃな、よしよし)』と言ってはいるが、真葛とシュノギの心の声はまぁ、聞こえない方がいいのだろう。

「今回は特撮をとるという事だ、だが失敗すれば大事故につながる可能性だってある。そのあたりは充分配慮して全力でアクションしよう!」
 通常のテレビ番組ではスタントマンを起用する程危険なものだ。これは尤もな言葉である。アイリスに向かっては「人質役、上手くやれよ」と声をかけた。

「人を襲い平和を乱す輩は許せません、どのアニメでもか鳴らす正義は勝つんだから
あれ、でもそうじゃないものもあった気がするけど、今回はちがうもんね魔法少女(物理)で悪を懲らしめちゃいます!」
 物理という辺りが非常に生々しいが、ゆかりの言葉に雪桜ノ姫は『そうですね』と頷いた。

●本番スタート
 天気の良い午後である。休日という事もあり、街は活気にあふれている。彼方此方から楽しそうな話し声や笑い声が聞こえ、平和そのものである。
 そんな麗らかな日に、突如悲鳴が響き渡った。そして響き渡る轟音。
 明らかに普通じゃない音を聞き、街に買い物に出ていた四姉妹――澄香、いのり、ゼノビア、アルは音のした方向へ向かうことにした。
 何を隠そう、この四姉妹は魔法少女なのである。危険だから近づかないという選択は端からない。弱き者や困っている者の為に力を使うのが、彼女達なのである。


 四人が現場に到着すると、従魔が暴れくるっていた。
 オーガにオークだ。
 こんな場所に従魔が現れるわけがない。だが、ここに現れたことは事実だ。まずはこの状況をどうにかしなければならない。
 四人は顔を見合わせると頷き合った。

「来て、クラリス!」『呼ばれて飛び出てですわ』
 澄香の相棒のクラリスが幻想蝶からぽむっと飛び出し、「『変身!』」と声を揃えた。
(いのりの歌がBGMとして流れる)
 するとクラリスの姿が光の衣装となり、澄香を包む。髪と瞳がピンクに染まりリボンが現れツインテールに。
「魔法少女クラリスミカ!」『貴方のハートをくらくらりんですわ!』

「おっけー、澄姉ぇ! じいや、変身だよ!」『かしこまりました、お嬢様』
(いのりの別パターンの歌が流れる)
 白い羽が乱れ飛んで体を包み、翼をふぁさっと開いてシスター姿へと変わった。
「魔法少女いのり! 悪者共め、覚悟だよ!」

「もう失うのは嫌!!」とアルは悲痛の声を上げるが、『時間は待ってはくれないの。さぁ変身なさい!』と叱咤が飛ぶ。それを聞き、決意の表情で頷く。
(いのりの歌別パターン)
 蝶の形の大きな光に包まれ、光が弾けた。すると近未来的なサイバー系衣装に、両耳には光で作られた大きな蝶が止まり、機械的な声音で『魔法少女アル。モード:パピヨン。起動します。お覚悟』と告げた。

 三人は変身したが、ゼノビアは何もできない。「皆、行くよ。ゼノは隠れていてね」という声に、ぎゅっと拳を握った。
 彼女だけは他の三人とは違って、まだ覚醒できていないのである。自分一人だけが取り残されているような、そんな劣等感をずっと持っていた。

 そして今を遡ること数分前、逃げ惑う街ゆく人々の波に逆らうように、魔法巫女衣装を着た少女が逆走している。
 ゆかりは雪桜ノ姫を見て、「来て、姫! あたしに力を貸して平和を守るの、日輪と桜の元に誓おう、あなたの刀に誓って」『わかりました、わかりましたからあんまり恥ずかしいことを言うのは』と言いながら共鳴した。
 一振りの刀を絆に身を躍らせる。
「もしかしてあなたの仕業ね! 騙されないわよ、さぁ正義の剣を受けなさい!」

 新たに現れた魔法少女に四人は目を白黒させた。
「ゆかりちゃん!? 偶然の神様に感謝。一緒に行こう! 魔法少女の結束を見せ…って、アル、合わせて! もう!」
 だが、「…これじゃ誰が敵か味方かなんて…」と呟いたアルは「ワタクシはひとりで戦う! 貴女方は勝手になさいませ!」と、敵に向かって突っ込んでいく。それに「ゆかりちゃん、炎の加護を!」と、味方識別を発動したBフレアで、ゆかりの剣技に炎を被せる。強烈な一撃だ。
 そこに澄香はマビノギオンより無数の剣を打ち出し、長大なブラッディランスを片手で振り回す。動きに合わせ光の粒が、歩みに合わせ星が弾た。

 「待ちなさい!」と声が響き渡り、そこにまた人が加わる
「己の力に溺れる者は、より大きな力の持ち主の前には必ず敗れ、己が不明を悔いるはめとなる! 人、それを「必滅」という!」
 太陽を背にし、逆光の為に姿がおぼろげだ。だが、「Start! UP!」の鋭い声とともに鎌を大きくふるった。シスターの格好には似つかわしくない強烈な武器だ。
「闇ある所に光あり……悪ある所に正義あり……天空からの使者、魔法少女マジカルリリア、参上!」

 集う魔法少女に「私たち以外にも戦闘中の人が、ど、どうしよう?」と声が上がるが、「夜に還りなさい」と、リリアは従魔に向かって鎌を振り始め、「上弦!」「下弦!」「半月!」と声が響き渡る。
 あまりにも鮮やかな連撃である。
 まるで演舞の如く、流れるかのように美しい動いであった。
 そして最後は横切りして通り過ぎると、「貴方に朝は訪れない……」と敵を屠った。

 それぞれの果敢な攻撃の甲斐あってか、あっさりと二体の従魔を倒した。だが、倒したと思ったのも束の間。悲鳴が響き渡る。
 ゼノビアだ。
 シアナスネークがゼノビアに巻き付いている。鎌首を擡げかけ、今にも噛み付きそうだ。
 ゼノビアを呼ぶ声が響く。
 よくよく注意して周囲を見渡せば、その二体の従魔の後ろに黒い意匠の服を纏った女がいた。目元を隠すマスクの為に全貌はハッキリとはしないが、その怪しいまでに艶めかしい赤のルージュが引かれ唇が楽しげに上がっていた。
「さぁ、恐怖と絶望を」
 女の声に合わせ、再び現れたオーガとオークは建物を壊し、木々を薙ぎ倒す。どうやらこの女が操っているとみて間違いはないだろう。
「ゼノ!? ――あぐっ!?」
「しまった! ゼノが人質に!」
 不意を突かれ、澄香は怪我を負い、膝を着いた。
「くっ、卑怯な真似を!」
「ダメだよ澄姉ぇ、治療しないと!」
 ゼノビアを助けようとするが、彼女を人質に取られたも同然。
「くっ……これじゃあ、ボクたちは手が出せない――! このままじゃやられちゃう」

 そこに、『虹の導きに従いて、邪なるものを討ち払う』「わ、我ら悲劇という雨をこえ、希望たる虹を人々の心にかけるもの」「『妖精魔法少女』」『アルク&』「し、シエル」『ここに参上!』「…で、です」と、新たな魔法少女が現れた。

 その二人はシンクロしたかのような、踊るような幻惑的なコンビネーションで舞う。
 戦いというよりは、まるで妖精の舞だ。
 可憐な二人の妖精――イリスは攻撃、アイリスは防御で上手く敵を翻弄していく。
 共鳴はしていない生身でありながら、その動きには余裕が感じられる。笑ってさえもいて、ただただ美しい。
 マタドールのように敵から巧みに攻撃をそらせ、その隙にリリアが止めを刺した。

「あれー? なんだかいっぱいいるのですよ~」
『おいおい、嬢ちゃんたちが集まってお遊戯会か?』
 そこに、バイクに乗った二人組の男女が登場した。
 更に、「なんか、すごいバラバラなメンバーだねー?」と、どことなくのんびりした声と、『失礼じゃぞ、真葛!』とオロオロした少年の二人組もバイクで乗り込んできた。

 こうも人が多くなれば、誰がこの事態を起こしたのか判断ができない。それに、煽るような台詞を口にするだけに、この人達があの女の仲間とも限らない。
 敵なのか味方なのか、それを問う。しかし、『どうだろうな? 敵? 味方? 本気で言っているのか?』と鼻で笑うようなレオンハルトの態度に魔法少女達は身構えた。
 その空気をぶった切るかのように、「レオンちゃんは悪者みたいな顔だけど指名手配はされてないですよー! それに毎日トイレとお風呂の掃除してくれるです!」と莉音の声が響き、『おい! 変なアドリブで楽屋ネタやめろ! 深夜枠でも全国ネットだぞ!』と突っ込みが入る。……ちなみに、この辺りは監督が面白がって放送時に削らなかった為、レオンハルトは視聴者から生暖かい目で見られることとなるのはまた別の話である。
 そんなやり取りをしていると、不意に悲鳴が聞こえた。
 まだ敵がいたようだ。
 その敵に少女(アイリス)が襲われている。
「敵だ味方だとくだらねえ。気に入らねえならぶちのめすだけだぜ! そうだろ?」
 莉音は共鳴すると、ヒールのようにそう言った。だが、対峙しているのは従魔だ。それ故に、ダークヒーローのようである。
「リーダー気取られても困るんですけどー?(てゆかレオちゃんその顔で掃除好きとかやばいうけるw)」と、肩が震える為に微妙に笑いを隠しきれていない真葛と、『み、みんなやめるのじゃ! 仲良くするのじゃ!(ここで涙目上目遣い…我ながら完璧じゃ)』という、シュノギの仲裁の声が入った。

 二人はそれぞれ共鳴すると、莉音は真葛のことを呼ぼうとするが、何と呼べば良いのか分からず「おまえらもリングネーム付けろよ! このビーストキング様みたいにカッコイイやつをよ!」と言いながら、敵の前に躍り出た。
 誰もが攻撃を受けるよ思うような至近距離で攻撃を避けると、そこにカウンターを入れる。相手の力を利用した攻撃だ。
 強烈なまでの一撃が入る。
「リングネームとやらも悪くないが考えるのは後じゃ。我があやつを広場へ誘導しよう」
 注意を引き、従魔の意識が逸れたその隙に、リリアは従魔の近くにいた少女を「大丈夫?」と救出した。
 少女が怯えないように笑顔で話しかければ、彼女は怯えながらも『はい』と返事をした。
『きみに何かあったら大変だ。この場から逃げると良い』
 アイリスのその言葉に、少女はその場を立ち去った。
「さぁ、我の力を思い知るがいい」
 少女が逃げたのを確認すると、殲滅を開始した。

 それぞれが共闘することにより、戦闘は無事に終わった。
 だが、時は既に遅し。ゼノビアの姿はそこにはなかった。

「しまった対立している隙に人質が!」
 ゼノビアの姿がないことに、魔法少女たちは意気消沈した。だが、長女である澄香は自身の出血を無視し、澄香は魔法少女支援アプリ起動する。
「見つかって、お願い……」
『発見しました。……を移動中! 先回りのルート検索!』
 それを確認すると、他のメンバーに頭を下げる。
「お願いします。皆さん、妹を助けて下さい!」
「(どうすれば…今まで戦っていた人たちも見るがそちらも不安そうにしている、もしかしたら?) あなたたちも街を救おうとしていたんですか、ごめんなさい、勘違いをしていたみたいで。それなら一緒に戦いましょう! すごい力が得られるはずです!」
 今まで諍いを起こしていたが、澄香を心配する姿を見るに、バイクで現れた面々が悪い人ではないということに気が付いたゆかりはそう言った。
 頭を下げる姉の横で、(妖精さんみたいな人が助けてくれた。彼女は味方……かな? でも、このままじゃ……。澄姉ぇが頭下げてる……ボクも意地はってる場合じゃない――!)と、逡巡した後にいのりも頭を下げた。
「ごめん…僕が間違ってた。みんなで戦おう」
 こうして、共同戦線が張られ共闘となった。

●閑話休題
「カット! 良いね、いい感じだよ」
 アドリブばかりでその場のノリでやってきたが、それなりのものに仕上がっている手ごたえはそれぞれが感じていた。
「それにしても、みんな凄いね。可愛いねー」
 リンクを解くと真葛は魔法少女たちにそう言った。まるでナンパでもしているかのような軽さである。
 それにシュノギが目を光らせる。ある意味いいコンビと言えよう。
『イリス、やればできるじゃないか。この調子でどんどんきみの可愛さをアピールしよう』
「お姉ちゃん……絶対に楽しんでいるよね」
 恨みがましくアイリスを見るイリスであるが、そこに「そうそう」とアルも同意する。
「せっかくのチャンスなんだから、いっぱいアピールしないと。いのりさんの歌もいい感じだったよ」
「ありがとう。アルも仲良くしたいのに仲良くできない感じが滲み出てて、いい感じだよ」
「綾さんも素敵でした。あの攻撃とか凄すぎです」
「ありがとうございます。ゆかりさんも登場が正に正義の味方って感じでしたよ。莉音さんはヒールなダークヒーローで格好良かったですし」
「ありがとうございますぅ。なんせ、ヒールですから」
 それぞれの演技を褒め合い、撮影中とは違い、とても和気藹々とした空気が流れていた。

●敵のアジト
 数人の男と檻に入れられた数体のオーガとオークの姿があった。その他に一人の女と、ゼノビアの姿もある。
 窓ガラスが割れる。
 バイクの轟音が響き渡る。
 バイクからジャンプで飛び降り、軽快な身のこなしで着地を決めて正護は現れた。
「最初に言っておく! 俺が…正義だ」
 堂に入った姿、そして言葉である。全身から正義感が漂っている。正義感であり、正義漢である。
 それに下っ端と女は警戒の姿勢をとる。
「変身っ!」
 腰に手を当てて共鳴する様は正に変身。その佇まいは他でもないヒーローそのものだ。
 下っ端は「やっちまえ」と正護に襲いかかるが、それを難なくいなす。
 特撮のようにアクロバットな素手での戦闘シーンを繰り広げ、確実に一人一人倒していく。
「くそっ、こいつ強いぞ」
 誰かが唸るように言ったのも無理はない。それだけの貫録と実力が正護には備わっていた。
 あっさりと正護は下っ端たちを片付けると、今度は女へと向かっていく。
 だが、女も流石に従えている者がいる立場のものというべきか、魔法杖で正護と切り結ぶ。
 殺陣だ。
 武器と拳や時に足が交わる。
 それは実に見事な攻防である。剣舞や演舞のように鮮やかな攻防が繰り広げられていた。
 しかし、唐突に女がにぃっと口角を上げた。
 何かを感じ取り、反射的に正護はその場から跳んだ。
 すると、そこに拳が繰り出される。
 従魔だ。
 下っ端の一人が重い体を引きずって檻を開け、従魔を外に出したようだ。
 流石に多勢に無勢だ。
 強く拳を握り締め直したところで、「そこまでです」「ゼノを返してもらうわ」「傷の治療は任せて! 治療役だからって甘くみないでよね!」と他の面々が加わった。
 正護はそれを見てにっと笑った。
「今だ! 防人流奥義、雷堕脚!!」
 鮮烈な印象を与えるまでの見事な蹴りがオーガに決まる。奥義とつくだけあり、その一撃でオーガを倒した。
「同じ思いを持つ者同士なら解るはずだ! 共に戦わないなど、ありえない!」
 それぞれは武器を構えた。

「上弦!」「下弦!」「半月!」と、リリアの声が響き渡る。
 その言葉の通り、鎌がゆらめき、敵を斬るのは月そのものである。ある意味、幻想的でさえもあった。
 斬撃も、鎌も動きさえもが彼女を引き立てていた。
 繰り出される攻撃を避け、敵を横に薙ぐ。
 その姿には静謐なまでの美しさがあった。

「シンプルに力をぶつけるのみ! それが僕の戦い方だ!」
 正にそれの体現である。力というよりは、気迫――それが籠った怒涛乱舞が炸裂する。
 その姿は苛烈極まる。
 周囲の敵をあっさりと一掃した。
「さぁ、次はどいつだ?」
 ダークヒーローの真骨頂である。

「我を相手にするのには、力不足だと思うのだが……」
 溜息交じりに呟いた言葉とともに銀の魔弾が放たれる。
 刹那の攻撃。
 何時放ったのか分からない早打ちにて、オークが倒れる。
 あまりにもの早い決着に、周囲の従魔は一歩退くが「さぁ、我を楽しませてくれるのじゃろう?」と笑んだ。

「防人流雷堕脚…兜!」
 敵の背後に回り込むと、回し蹴りを放った。そして、これからが正護の凄まじいところだ。
「防人流奥義、炎神連撃脚・究覇地」
 流麗なまでの流れで攻撃が繋がっていく。
 あまりにも見事で、感嘆の言葉しか出ない。
「…こいつがお前の地獄への片道切符だ」と、爆散とともに従魔を倒した。

「ここで体を張れなくては魔法少女じゃない。今時の魔法少女はタフなのよ、一発二発じゃ突撃するんだから、思い知りなさい!」
 魔法少女(物理)というだけあり、可憐な見た目に反し、ゆかりの戦闘はなかなかに痛快だ。
 ブレイドマスタリーによって強化し、敵を容赦なく殲滅するのである。
 赤い飛沫が飛び散る中、凛と咲き誇る花のように彼女はそこに存在していた。

 戦闘を見守りながら、ゼノビアは涙目になっていた。
 名前も知らないヒーローに魔法少女、そして姉と妹――。その戦っている姿を目にして、自分には何かできることが無いのか……と、切実なまでに思っていた。
 そして、愉しげに傍観を決めている横にいる女をきっと睨みつけた。しかし、女は嘲笑うかのように口角を上げるだけだ。
「……おねえちゃん、たち…つよいん、だから。みんな、も、つよいんだから。…あなた、たちに、負けない。ぜっっったい、まけないっ」
 その強い意志とともに、ゼノビアは覚醒した。
『ちょっとお呼びが遅かったんじゃないか?』
 幻想蝶の中からレティシアが現れ、皮肉を口にするかのようにそう言った。だが、顔は嬉しそうに笑っている。
『戦う覚悟、見せてみろ』
 不敵な笑みを浮かべると、ゼノビアを拘束していたシアナスネークを蹴り飛ばした。
 そして、共鳴した。
(いのりの歌が流れる)
 そして魔法少女になると同時に銃をぶちかまし、シアナスネークを迎撃した。

「ゼノビアちゃんが魔法少女になった」と、真葛が呟く声がやけに大きく響いた。

 妹が覚醒し、澄香は「もう、心配かけて」と涙を流した。
「えっ!? ゼノが……魔法少女に――! よかった……ホントによかった……」と、いのりは半べそ状態だ。
「…ゼノ、貴女…」と、ゼノが覚醒した瞬間にほんの一瞬だけ目を見開いたが、すぐにアルはしたり顔になると、「ワタクシの大切なもの達に易々と手を出したこと、後悔していただくわ」とその強い意志を見せた。

 そしてそれを見ていた妖精二人は驚いた顔をした後、顔を見合わせ頷いた。
 その次の瞬間、眩いばかりの光が二人から放たれる。
「『アルカンシエル』」
 その言葉とともに、妖精剣が現れる。

「まさか、あれは、妖精の真の姿――妖精剣!?」

 突然の光に周囲の視線は二人へと向かう。
 二人は悠然と歩き、喜び合う四姉妹の元へと行く。
 その姿は妖精というよりも、女神や天使といった方が相応し厳かさと神聖さがあった。
 人の絆の力に可能性を見出したのである。
『受け取るが良い』とアイリスが言う。
『私たちの力と人々の希望…確かに託したぞ魔法少女!』
 二人はその剣を姉妹へ託すと、語りかけるような言葉とともに二人の姿は消えた。
 その託された剣はただの力ではない。想いそのものだ。

「うん、こうなったらいがみ合ってはいられないね。みんなで一緒に戦おう!」

 そして、新たにゼノビアという戦力が加わり、彼女の援護射撃により戦いは更に有利な展開なものへとなる。
 それから次々と敵を倒し、残っているのは女だけになった。
「もう残っているのはそなただけじゃ。観念すると良い」

「澄姉ぇ、ゼノ、アル、今だよ!」
 澄香は剣を取った。
 怒りで強風(Gウインド)が発生する。
「よくも私の妹に酷いことをしたな!」
 力を籠め、妖精剣を借り敵を一閃する。
「アルカンシエル!! ……っ」
 しかし、使用することで魔力を使い果たし倒れる。だが、女にダメージは与えられたが彼女は倒れてはいない。そこを、アルが引き継ぐ。
「アルカンシエル…力を貸して」
 その言葉とともに剣が炎の蝶を纏う。
「食らいなさい! パピヨンフレイム!」

 女の悲鳴が響き渡る。
「おのれ! このままで済むとは思うなよ!」
 そして、その捨て台詞とともに女は姿を消した。

「やった……かな? 勝った……ボクたちの勝ちだ!」
 楽しげな声が響き渡る。四姉妹は喜び、抱き合った。

「無事、解決したか。だが、慣れあうつもりはない」
 そう言い残し、正護はバイクでその場を立ち去った。
 何か言いたそうな視線を感じたが、それでもバイクで見せる背は正に漢。背中が雄弁に、彼がヒーローであることを語っていた。

「くそ、いいとこ持ってかれたぜ!」
 莉音は乱暴な口調でそう言っているが、何処となく嬉しそうだった。
 それに真葛も「確かにそうじゃが、まぁ、たまにはこういうのも良いじゃろう」と同意した。

「また一人、魔法少女が増えることは喜ばしいことです。これからも、共に悪を倒しましょう」と、リリアは聖母のような笑みを浮かべる。
 その横で、ほっと胸を撫で下ろしたゆかりは、「あぁ、無事でよかった。いつまた悪意が現れるか分からないけれど、その時のためにあたしたち魔法少女がいるんだ。明日の平和も守って見せる!」と更なる決意を胸にした。

 四人の前で四人の少女たちが喜び合っている。
 ゼノビアは姉妹以外に人に向け、「(ありがと、です。助けてくれて)」と頭を下げた。
 姉は「本当に無事でよかった」「もう、心配したんだから」と言い、妹も「……ゼノに怪我がなくて良かった」と口にした。
 そのことに姉たちは驚いた。
 義妹のアルが「貴女」ではなく名前で呼んだのである。そしてその何を言わんとしているかわかる視線に、「何よ」とアルはぶっきらぼうに声を出した。

 今回のことが切っ掛けで、アルと姉の距離は多少であろうとも縮まった。そして、ゼノビアも自信を持つことができるようになった。
「ゼノも魔法少女になって、アルとも共闘したことで距離が縮まった気がする。ボクたちもっと仲良くなれたね!」
 いのりの言葉に顔を見合わせると、笑顔でう頷いた。

●撮影終了後
「はい、カットー!」
 監督の声が響き渡る。
「お疲れ様。みんなのお蔭で良いのが撮れたよ」
 満足いく映像が撮れたのか、監督はほくほくした顔をしている。
「良い感じに編集するから、放送を楽しみにしてね」
 その言葉に、「はい」という返事が次々に上がる。
 全員が全員、やりきったという顔をしている。自分ができることをやり切ったから、自然とそういう顔になっているのだ。
「おつかれさまー。 打ち上げしよー」
 真葛の提案に、否定の言葉は上がらない。
 一行は打ち上げへと向かった。

 乾杯と声が響き渡る。お疲れ様という言葉が飛び交う。
「それにしても、本物の従魔が出てくるなんて、驚きました」
 その言葉は尤もだろう。いくらリアリティを追及している番組だからとはいえ、本物を出してくるとは思わなかったのだ。
「あぁ、あれね。実はあの女の人も能力者で、いつもは裏方専門のスタッフなんだ」
「そうなんですか」
「そうそう。今は一応彼女の能力で従魔達は催眠状態にあるんだけれど、何時何があるかわからないから、保険の為に彼女に適役をお願いしたんだよね。もし何かあっても、彼女だったら対処できるし、それに、君たちもいたからどうにかできたんだよ。本当、能力者様様だよ」
 ほけほけ笑う監督に、敵だった女は「私一人ではどうにもなりませんでした。みなさんがいたからですよ。本当、私、いっぱいいっぱいでした」と言う。
「それにしても、正護さん本当に格好良かったですよね」
「そうそう。これぞ漢。正にヒーローって感じでした」
 女性陣んに褒められ、「別に」とぶっきら棒に答えた。
「ゼノビアちゃんも良い演技だったよね」
「ゼノが覚醒した時、本当に泣いちゃったもん」
「イリスちゃんとアイリスちゃんも女神すぎて、見惚れちゃったよ」
 晴れ晴れとした顔で互いを褒め合い、打ち上げは夜遅くまで続けられた。

 後日、放送された番組は、この番組は始まって以来最高の視聴率を獲得する。
 誰もが息を呑む攻防、そして姉妹愛に涙し、伝説の放送回として語り継がれることとなった。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • シャーウッドのスナイパー
    ゼノビア オルコットaa0626
  • ダークヒーロー
    紫ノ宮莉音aa0764
  • モブ顔の王者
    浦見 真葛aa0854
  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 惑いの蒼
    天城 稜aa0314
    人間|20才|男性|防御
  • 癒やしの翠
    リリア フォーゲルaa0314hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • シャーウッドのスナイパー
    ゼノビア オルコットaa0626
    人間|19才|女性|命中
  • 妙策の兵
    レティシア ブランシェaa0626hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • ダークヒーロー
    紫ノ宮莉音aa0764
    人間|12才|?|生命
  • Gate Keeper
    レオンハルトaa0764hero001
    英雄|32才|男性|ドレ
  • モブ顔の王者
    浦見 真葛aa0854
    人間|23才|男性|攻撃
  • エージェント
    シュノギaa0854hero001
    英雄|11才|?|ソフィ
  • トップアイドル!
    小詩 いのりaa1420
    機械|20才|女性|攻撃
  • モノプロ代表取締役
    セバス=チャンaa1420hero001
    英雄|55才|男性|バト
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • プロカメラマン
    雅・マルシア・丹菊aa1730hero001
    英雄|28才|?|シャド
  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336
    人間|20才|男性|回避
  • 家を護る狐
    古賀 菖蒲(旧姓:サキモリaa2336hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 魔法少女
    緋茉莉 ゆかりaa2534
    人間|14才|女性|生命
  • エージェント
    雪桜ノ姫aa2534hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
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