本部

ラノベ作家達と冬の同人誌即売会の招かざる客達

せあら

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
5人 / 4~6人
英雄
4人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/01/02 12:20

掲示板

オープニング

「完璧ですね。これならば絶対にあの担当にバレませんね!! さすが元コスプレレイヤーの愛川先生ならではの発想です!?」
 イラストレーターの如月祐希は自分達のサークルの長机の上に同人誌を並べながら女性のラノベ作家……愛川昴へと言った。
「でしょう。この格好ならば絶対にいけます。計画どおりです!」
 昴はピンク色の肩まで掛かるツインテールの髪を揺らし祐希へと振り向きながら自信満々にドヤ顔で答える。
 二人は普段の姿とは異なりコスプレ姿をしていた。昴は今人気アニメのバトル系魔法少女のコスプレをしており、祐希はそのマスコットのムスッとした顔の可愛くも何ともないペンギンの着ぐるみ姿をしていた。その姿は何処からどう見ても二人だと気づかない程そっくりだった。
 12月28日。
 二人の作家達は冬の同人誌即売会に参加していた。現在、大量の原稿と締め切りに追われていたが、それでも二人は担当にバレないように息抜きと称しサークル参加していたのだ。
 その時、ドンと後ろから祐希に一人のメイド姿の少女がぶつかり、謝りもせず何事も無かったかのように素早くその場を駆けて行った。祐希は何処か違和感を感じ、着ぐるみのポケットに手を突っ込んだ。
「ない……無い……」
 何度もポケットの中を探す。そこに入れていた筈の財布が無くなっていた。
 そしてハッと気づく。……まさかさっきのメイドからスラれた! あれには今月の食費が全て入っているのに!?
 そう思い、祐希は慌ててメイド姿の少女の後ろ姿の後を追った。
 その時、会場全体にアナウンスが流れ、先程とは違う緊迫した空気へと一瞬で変わった。
『サークル参加のお客様、並びにスタッフへとお伝え致します! 今会場内で従魔が発見されました。お客様達はすみやかにスタッフの指示に従い、避難して下さい。なお黒いメイド姿の少女のを見掛けたら絶対に逃げて下さい。それは従魔になります。繰り返しますサークル参加お客様並びにスタッフへ……』
 昴はその放送を聞き、すぐにその場から駆け出した。祐希がさっき追い掛けた相手は従魔だったのだ。
 このままでは祐希の身が危ない。
 本来ならば直ぐに避難をしなければならないが祐希一人を置いて避難なんって出来ない。それに彼は自分のパートナーだ。この世界でデビューする前、同人時代の頃から二人でやって来た。辛い事も二人で乗り越え、嬉しさも二人で分かち合ってきた。そんな大切な相棒を一人残してなんか行けない。そんな想いを抱きながら昴は会場内の通路を走りながら祐希を探し回った。

●同人誌即売会に従魔がログインしました。
 愛川昴達の担当はビザックサイトの長蛇の列に一人並んでいた。
 理由は単純だ。
 同人誌即売会にサークル参加しているであろう自分のところの担当作家達を連れ戻す。もしくは原稿を然り気無く催促する為だった。
 彼女達は同人誌即売会の事を隠していた様だが、そんなのは初めから自分にはバレバレだ。
 それに彼女達の作品は既にアニメ化が決定しており、それは来年から始まる。何としても書いて貰わないとこちら側としても困るのだ。彼は口の端を吊り上げ、三日月の形へと変えながら悪党染みた表情を浮かべた。
 ……絶対に見つけてやる……逃がしはせんぞ……
 彼の仕事への必要以上の情熱は作家達へと向けられていたのだった。

 暫くして彼は周りが必要以上にざわめくのを感じ、周囲を見渡した。そこにはスタッフが慌ただしく走り回る姿が見え、周囲には緊張した空気に包まれているのを感じた。そして近くの人間達の会話が彼の耳へと届いた。
「会場内に従魔が出たんだってよ」
「マジかよ! ふざけんなよ! 俺この日の為にバイト必死に頑張って嫁を向かえに来たってのにッッ!」
 会場に従魔が出ただと! 何って事だ! うちの作家達は無事なのか!
 彼の中で心配と焦りが生まれる。その時、一人のスタッフがリンカー達の元へと駆け寄る姿が見えた。おそらく同人誌即売会に参加しょうとしていた、もしくはスタッフがホープへと依頼したのだろう。それを見て担当は人混みを掻き分けながらスタッフ達の会話へと慌てた様子で割り込んだ。
「お話し中、申し訳ありません。うちの作家達を助けて頂けませんか! おそらく中にいるかもしれないんです! 俺にとって大切な作家達なんです。お願いします!」
 担当はそう頭を下げた。それを見てスタッフは付け足す様にリンカー達へと告げた。
「リンカーさん達、従魔の討伐と会場内に取り残された作家さん達二人の保護をお願いします。先程他のスタッフから連絡がありまして会場内の参加者とスタッフ全員の避難は完了致しました。出来れば速やかに速球に退治して下さい! お客様達はこの日を楽しみにして来たんです。お願いします!」

●予想とは違う現実
 メイドの姿の従魔を追うのを諦めた祐希と無事に合流した昴の二人は従魔達に見つからないように一階の通路側にある自販機の隅へと慌てて身を潜めた。参加者、スタッフ達は既に避難しており、入口付近には従魔達がさ迷っている為二人は身動きが出来ない状態だった。
「ごめなさい……」
 そうポツリと昴は言葉を溢した。祐希は彼女の方を見る。そこには俯き、今にも泣き出しそうな彼女の顔があった。
「私が同人誌即売会に参加しょうって言ったばかりにこんな事に祐希先生を巻き込んでしまって……本当に……ごめんなさい」
 ポタ、ポタと小さな水滴が床を濡らした。
 それを見て祐希はペンギンの着ぐるみの頭を脱ぎ、自分より年下の彼女へと励ますかのように笑いながら言った。
「先生の為では無いですよ。俺も同人誌即売会参加したかったし。それに先生は息抜きしたかっただけなんですよね」
 彼の言葉に彼女は小さくコクリと頷く。
「大丈夫だって! きっとスタッフか誰かがホープへと連絡をしている筈です。だからホープを信じて待ちましょう。そして無事に事件が解決して同人誌即売会が開催されたら一緒に同人誌売りまくりましょう!」
 ニカッとした笑みを向けて言う彼に彼女は涙を拭い、泣き笑いのような顔をして言った。
「それ死亡フラグですよ。祐希先生」

解説

同人誌即売会会場に浸入した従魔を退治、会場の中にいる作家達を保護、同時に担当との仲を取り持つ依頼になります。
ホープの依頼でやって来た、また当日同人誌即売会参加者として居合わせたと言う状況でも可能です

相川昴(19歳)女性ラノベ作家&如月祐希(23歳)イラストレーター……同人誌即売会に参加している時に従魔に遭遇し、逃げ遅れて身動きが取れない状態

担当……相川昴達の編集担当。仕事に向ける情熱が熱く、その情熱を昴達へと注ぎ仕事の量を増やしている。

場所……同人誌即売会会場(40万人が入場出来るくらいの規模の広さになる)会場は2階建ての作りになっておりA、Bが一階、2階がC、Dになる

従魔……ミレース級×6、イマーゴ級×4体
会場の入り口のAブロックにミレース級2体がいる。 Bブロックの通路にイマーゴ級3体と作家達がいる
2階C、Dブロックに2体ずつ(合計4体)ミレース級がいる。

攻撃……悪魔の姿をした従魔。(ミレース級)大きな鎌を持って攻撃をして来る、又風を操り段ボール箱に入った同人誌(大体の重さ5キロ)投げつけ、キャリーケースなどを加速させ突進させて攻撃して来る
 スリメイド(ミレース級)参加者の金銭を奪う。攻撃は抱き枕型ミサイルを発射して攻撃して来る。

イマーゴ級……ポルターガイストを引き起こす。

PL情報……同人誌即売会は10時に開催されます。10時までに従魔の討伐の完了、同時に作家達と担当の仲を取り持たないと失敗する
同人誌などが入った段ボール、グッズ類は出来るだけ傷つけないで下さい。

スリメイドはPCの金銭は奪わない変わりに二階に上がるエスカレーターを止めている。Aブロック(入り口)に二体いる。
スリメイドを倒したらエスカレーターは動き出します。またエスカレーター以外に階段がありますが、そこにはイマーゴ級1体がいます

時間……午前中の9時になります。戦闘開始(リプレイ)は入り口のAブロックから始まります。

リプレイ

「穢? 如月先生が行方不明? タイヘン!探さなきゃ」
 スタッフの話を聞いたシャンタル レスキュール(aa1493)は心配そうな表情を浮かべながらそう言った。彼女の言葉に彼女の英雄のスケジロー(aa1493hero001)は片眉をピクリと動かしながら、それに対して不満の声を上げる。
「はあ? 何でワシらが人探しせなあかんのや! この会場ごっつ広いで?……悪い事言わん、従魔の2、3匹スパッと刻んで帰る方がええて」
「ダメ! シャンテ先生のファンだモン! 先生の絵ガラが見られなくなったら死んじゃウ」
「死ぬて大げさな……まぁ、しゃあないわ。一通り探して居らんかったらそこらの一匹イワして終わりやで。別の出口から逃げ出しているかも知れへんからな? ……ほんま寄り道して報酬貰い損ねたら、えらいこっちゃで」
 スケジローはシャンタルの言葉に呆れ混じりに溜め息を短く吐きながら言った。
 その隣で木霊・C・リュカ(aa0068)静かに怒っていた。元々彼は目の事から通販などで同人誌を購入していた。だが今回相棒のオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)がついて来てくれると言ってくれたので某同人誌即売会に今回初めて参加していたのだ。初めて参加するという事もあり、彼は楽しみにしていた。
 なのに……――――。
(なのに……こんな事態絶対に許さない!)
 会場の参加者達と同様に従魔に対して怒りの炎をゴォォォと燃やすリュカに若干引き気味のオリヴィエ。ディープな世界に彼はまだついていけないようだった。
 そして、また片桐・良咲(aa1000)も、遊ぶ暇があったら勉強か筋トレでもすべきだと主張する自己投資推進派の英雄の目を盗んでコソコソと某同人誌即売会にやって来ていた。
 片桐は「たまには息抜きも大事だよね!」と理屈をこねながらスペース表のチェックをしていたところで今回の騒ぎを聞きつけ駆けつけたのだった。片桐とリュカの二人はスタッフ達へと、
「任せて下さい! 必ずお兄さん達が従魔を全て片付けて無事に即売会も再開させて見せます」
「愛川先生達もボク達が無事に保護して来ますので安心して下さい!」
 意気込みながらそう言った。
 彼らのその言葉にスタッフと担当の二人は「有り難うございます。くれぐれも宜しくお願い致します!」と頭を下げた。それを見てリンカー達はその場から駆け出し、会場の入り口を目指した。

●スリメイド
「人ごみを狙うのはテロの基本……少しは頭が回る敵なのかしら?」
 会場の入り口の通路を歩きながら言峰 estrela(aa0526)はポツリと呟いた。
 言峰の台詞に対して、隣を歩くキュベレー(aa0526hero001)はスタッフの言葉を思い出しながら彼女へと答える。
『……避難は作家達以外ほぼ完了だ、テロの効果的な機会はもう過ぎている』
「ふーん、じゃあただの単に運悪くここに現れただけかもしれないわね」
 そんな会話を交わしながら言峰達は歩みを進める。
 言峰達はH.O.P.E.の要請で現場に駆けつけ、この依頼を引き受けた。彼女達の保護対象である作家達を探すがそれらしい姿はまだ何処にも見当たらない。
 言峰達はAブロックにたどり着き中へと入る。中は広い空間なっており、周囲には長机が幾つも並べられていた。その真ん中にはメイド姿をした一匹の従魔の姿があった。従魔……ミーレス級のスリメイドは言峰達の姿に気づいていない様子だった。言峰達はそれを見て素早く共鳴をする。
 言峰は銀色の長いツインテールを靡かせながら敵へと接近した。スリメイドは彼女の存在に気づくと掌から抱き枕型のミサイルを出現させ、素早くそれを言峰に目掛けて発射させた。彼女はそれを華麗に避ける。
 するとミサイルはそのまま壁に向かい激突すると共に爆発した。言峰は敵に向かいイニシアチブで敵を翻弄した。それに続いて片桐の矢が宙を奔り、スリメイドの胸を射ぬいた。
 片桐は先程英雄と共鳴をしていた。
 従魔への攻撃は英雄と共鳴を果たさないと攻撃は出来ない。その為に片桐は英雄を呼び寄せ共鳴をしたのだった。攻撃を受け、スリメイドは近くにあるダンボールを持ち上げると二人に向かって投げつけて来る。二人はそれを避けた。
 それを見たスリメイドは再びミサイルを出現させようとしたが失敗に終った。片桐が弓から銃に持ち変え、スリメイドに銃で攻撃する。さらに後ろから言峰の獅子王が閃いた。
「……優秀で最良なエージェントだからね? これくらいのハンデは楽勝よ。それにしても、そーゆうの止めてくれる? 損傷が出るとワタシの評価に影響するんだからね?」
 言峰達の攻撃を受けて苦痛に似た甲高い悲鳴をスリメイドは上げる。それに構わず片桐はスリメイドへと銃を向け、
「みんなの夢と希望が詰まったダンボールを粗末に扱ったらダメなんだよ!」
 怒りながら言い放つとトリガーを引き絞る。パンパンと乾いた音と共にスリメイドは苦痛の表情を浮かべながらライヴスの光となり空気の中へと消え去った。
「取り合えず一匹目……だね。早く先生達を探さないと」
「そうね。そう言えばスタッフさん達は『速やかに』と言っていたけれど具体的には何時までかしら?」
 そう言いながら言峰はスマートフォンを取り出し、スタッフへと電話を掛けた。

●招かざる客
 石井 菊次郎(aa0866)は英雄のテミス(aa0866hero001)とすでに共鳴状態で、二階の階段を駆け上がっていた。
 階段を進んで行くと目の前にイマーゴ級の従魔がさ迷っていた。菊次郎はラジエルの書を取り出し、それを開く。ラジエルの書から白いカード状の刃が現れその刃がイマーゴ級へと放たれた。イマーゴ級はダメージを受け怯み攻撃しようとしたが失敗した。菊次郎は再度攻撃を放つとイマーゴ級は消滅し菊次郎はそれに構わず先を急いだ。

 菊次郎は二階のDブロックへとたどり着いた。、そこにはズラっと並べられた長机があり、その上には同人誌が置かれていた。
「これが全て書籍なのか?」
『その様ですね。同人誌専門の即売会だと言う事です……火は厳禁ですよ』
 呟くように言う菊次郎にテミスは菊次郎へと釘を刺す。
「……わかっておる。焚書の誹りは我も受けたくはない……しかし、これ程の嵩だ。燃え上がれば美しい事であろう」
『……早く行きましょう』
 テミスから促され、歩き出そうとした瞬間、殺気を感じ菊次郎は即座に身を屈めた。同時に頭長からヒュンと風を切る音が聞こえ、体を素早く右へと倒し、立ち上がるとそこには大鎌を手にした悪魔の姿をした従魔が二匹いた。
 菊次郎は即座にウィザードセンスを発動させる。悪魔達は左右に別れて大鎌を振り下ろそうとしたが彼はそれを回避し、悪魔達の脚へと狙いを定めゴーストウィンドを放つ。
 悪魔はダメージを受けた。だが体を動かし菊次郎へと襲いかかる。
 彼はそれを避けた。後ろから2匹目の悪魔が何冊かの同人誌とダンボールを持ち上げ、それを菊次郎へと投げつけて来るが彼はそれを右に避ける。そして彼は悪魔を刃で切り裂いた。悪魔は菊次郎の攻撃を受けその場から消え去ってしまった。
 菊次郎は近くに落ちていた一冊のボロボロになった同人誌を拾い上げた。それはもう読める状態ではなかった。
『ゴーストウィンド……迂闊だった。この本ボロボロでもう読めません』
「従魔を殲滅した後持ち主には謝ろう……。しかしこの区画……廃墟探索? そう言えば民俗学をかじっていた友人が同人誌を作るとか……あれはどうなったのだろう?」
『主よ!まだ敵は残っておるぞ!』
 テミスの鋭い声が脳裏に聞こえ、バッと背後へと菊次郎は視線を向けると、二匹目の悪魔がCブロックへと走って行く姿が見えた。
 菊次郎はその後を急いで追った。

 リュカと共鳴をしたオリヴィエはAとBブロックの中央の通路……エスカレータ付近にいた。
 二メートル先にはスリメイドがおり、自然と対峙するような格好になっていた。スリメイドはオリヴィエを見ると、即座にミサイルを放って来た。彼はスナイパーライフルを使い、抱き枕型ミサイルの左側を狙い撃つ。
 撃たれたミサイルは軌道をずらしオリヴィエの斜め後ろの等身大のパネルへと突っ込むと爆発音を撒き散らかしパネルは粉々に壊れた。オリヴィエはスリメイドへと踵を返し、その場から駆け出す。
 リュカのカタログに載っていた建物の構成によると休憩場所のスペースの場所が戦うに適した広さをしていた。その事を思い出し彼は敵を誘導する。
 背後からミサイルが放たれるがオリヴィエは周囲に気を配りながらそれを避ける。
 暫くして休憩場所が見え、戦えるだけの充分な場所を確保した彼は足を止め、後ろを振り向き素早く銃弾を敵へと放った。
 スリメイドへは動きを一瞬だけ止め、再度攻撃を仕掛けようとするが失敗した。オリヴィエはその一瞬の隙を見逃さずトリガーを引き絞る。再び着弾した銃弾によりスリメイドは光へと変化し、その場から消え去る。
 それを見てオリヴィエは動き出したエスカレータへと駆け上がった。
(確か……10時までに従魔を倒さないといけなかったか……)
 言峰からの情報を思い出し、オリヴィエはさらに走るスピードを加速させた。


 片桐達はBブロックへと移動していた。
 Bブロックの方はAブロック同様同じ作りになっており、イマーゴ級が3体いた。イマーゴ級はBブロック全体にポルターガイストを引き起こし、グッズ、同人誌などが宙を舞っていた。その中の一冊が言峰の方へと飛んで行き、それを彼女は手でぱしっとキャッチする。
「ちょっと? 投げていい物と良くない物があるんだけど?」
 言峰はムッとしながら近くの長机へとそれを置き、イマーゴ級へとジェミニストライクを発動させた。従魔は言峰へとポルターガイストを発動させ攻撃しょうとするが失敗し、分身した彼女の刃が従魔達へと閃く。彼女の攻撃を受け逃げようとする従魔へと片桐の矢が当たり従魔は呆気なく消滅した。
 だが、そのうちの三匹目の従魔はBブロックから通路へと飛び去りながら逃げ出した。

●華麗に登場! 魔法少女!
「あれ? 何か静かになったみたいだな……」
 通路の近くの物陰に隠れていた佑樹は辺りの静けさを感じ、柱に手を掛け通路側へと除き込んだ。先程入り口付近をさ迷っていた従魔の姿がいなくなっていた。二人は物陰から慎重に通路へと出る。
 次の瞬間―――
「ぎゅおおお」
 と甲高い声で叫びながら勢いよくイマーゴ級の従魔が佑樹達へと向かって来た。
「昴先生!!」
 佑樹は叫び近くにいた彼女を庇った。
 ……クソ! まだ隠れていたのか!!
 佑樹は苦虫を噛み殺したような表情を浮かべ震える足を無視し、従魔を睨みつけた。迫り来る従魔。だが彼の前に一つの影が動いた。
 それはシャンタルだ。
「大切な即売会をメチャクチャにするなんてスタッフが許しても、この私が許しません! インセンス・ブレイドムスク芳しく華麗に登場!」
 ビシッとキメポーズを決めるシュンタル。それに続きスケジローの台詞が加わる。
『スタッフディスると怖いで? リテイクやな』
 シュンタルは従魔へと鋭い視線を向け、ライブズブローを発動させる。従魔は周囲にあった特大パネルを動かし、シャンタルへと飛ばした。だが彼女はそれをヒラリと避ける。そして従魔へとシャンタルはグリムリッパーを閃かせた。シャンタルの攻撃を受け、さらにその後ろからドスと音を立てて従魔を矢が射ぬく。
 それは急いで駆けつけた片桐達の攻撃だった。従魔はその攻撃を受け一瞬で光となり空気の中に溶ける。
 シャンタルは佑樹達へと近づき、ほっと安心した笑みを浮かべ、声を掛けた。
「先生無事でよかッタ!わー抜……」
「助けて頂き有り難うございます」
 シャンタル達に礼を述べる佑樹にスケジローは穏やかな声音で言う。
「あー、ユー達、サインなんか個人的なお礼にくれへんでもええんやで? 普通ならそのままなんて気が済まないやろうけど……ワシら聖人君主やさかいええんやで」
 然り気無くサインを催促するスケジローに佑樹は頭を振りながら答える。
「そんな助けて頂いたのですからサインなんかで良ければ幾らでも差し上げますよ」
「先生! ソレ本当!!」
 佑樹の言葉にシャンタルは食いつく。それに対して佑樹は微笑を浮かべた。
「でもこんな所に隠れていたのね」
 言峰は自販機の物陰に目をやりながら昴達へと言った。
「はい。従魔から身を隠すのに、ここしかなかったので……」
「確かにこの場所が最適化もね。まぁ取り合えず救助対象を確保。任務コンプリートね?」
 言峰は腰に手を充てながら二人へと微笑んだ。そして、
「二階の方は大丈夫かしら?」
 彼女は上を見上げて小さく呟いた。

 Cブロック。
 オリヴィエはCブロックの近くの物陰に隠れ、入口でウロウロと歩き回る悪魔の頭へとライフルの標準を合わせ、スコープを覗き込む。
 そしてトリガーを引き絞った。銃口から吐き出された弾が悪魔の頭を吹き飛ばす。頭が無くなった悪魔は片手を広げ、近くにあったキャリーケースを2、3個動かすと、それをオリヴィエがいる方へと加速させて来た。
(気づかれたか……)
 内心毒づきながら彼はキャリーケースへとライフルを向け、撃つ。
 撃たれたキャリーケースは動きを止め、床にドサドサと音を立てて崩れ落ちた。オリヴィエは悪魔へと再度銃弾を放った。悪魔は銃弾を受けた後オリヴィエへと目掛けて駆け出しながら襲って来る。彼はそれを回避した。そして銃弾を悪魔へと放つ。オリヴィエの攻撃を受け悪魔はその場から消え去った。
 オリヴィエは扉へと移動し、身を潜めながら中の様子を伺う。彼は視線を巡らせ、そして。
(いた……)
 左側手前の長机の近くにいる二匹目の悪魔の背後へとオリヴィエは銃弾を放った。
「ぎゃぁぁ」
 悪魔は突然の不意討ちでの攻撃を受け悲鳴を上げながら、背から血を流す。オリヴィエはザッと悪魔の前に躍り出た。悪魔は大鎌でオリヴィエへと攻撃を繰り出すが、彼はそれを避けた。オリヴィエは一定の距離感を保ちながらライフルのトリガーを悪魔へと引き絞る。悪魔は銃弾を回避しようとしたが、加速する銃弾の方が早く、悪魔へと着弾した。オリヴィエの真後ろからヒュンと風が切る音がし、彼はそれを咄嗟に避けた。
 Dブロックから逃げ込んだ悪魔がオリヴィエの背後から襲いかかろうとしたのだ。
 瞬間。
 菊次郎のゴーストウィンドが悪魔へと放たれた。振り向くと菊次郎が入口の前に立っていた。
 3匹目と同様に2匹目もゴーストウィンドを受けており、二匹の悪魔達はダメージを受け消え去った。
「礼を言う……助かった」
「そんな良いですよ」
 礼を言うオリヴィエに菊次郎は苦笑した。彼はスマートフォンを取り出すと言峰へとコールした。
「こっちは今全て終わりました」
『こっちも終わったわ。対象者も無事よ。ま、とーぜんよね』

●作家とイラストレーターとそして担当と

「愛川先生! 作品読みました。握手して下さい!」
 そう言いながらリュカは昴へと手を差し出した。あの後会場にいた従魔を全滅した後リンカー達は会場の外に出て来ていたのだった。
「ありがとうございます」
 昴は微笑を浮かべながらリュカの手をそっと握った。それを見た片桐は自分も「ファンです!」と昴へとアピールをする。
「愛川先生の新刊待っていました!」
「楽しみにしてくれて有り難うございます。凄く嬉しいです」
 言峰は昴達へと視線を向け、一つの疑問を口にした。
「みんな避難していたのに何であんな所にいたの?」
「あの時、従魔を追い掛けた佑樹先生が心配で……それで探していたら逃げ遅れてしまったのです」
「そうなんだ……あ、そうそう担当とかいう人がなんか言っていたわよ」
「愛川さんの編集の方が心配していましたよ」
 言峰と菊次郎の言葉に佑樹はピシッと硬直し、昴は「そんな馬鹿なぁぁ」と叫びながら頭を抱え、その場に踞った。露骨に担当を嫌う昴達の態度に菊次郎は佑樹へと尋ねる。
「あの、どうかされたのですか?」
「実は……俺達の担当は仕事に情熱を注ぐ人なんですよ。ここまで来れたのは彼のお陰だってわかっているし、感謝もしています。だけど仕事の量が半端なくここ最近多いのです……しかも書いても書いても増えるのです! だから今回担当に内緒で息抜きも兼ねて遊びに来ていたんですよ」
 佑樹は肩を落としながら悲痛に似た言葉……愚痴を吐いた。
「先生!!」
 その時後ろから声がし、リュカ達は振り向く。そこには担当が駆け寄って来ていた。
「リンカーさん達先生達を助けて下さって本当に有り難うございます! 先生無事で良かった! 帰って休んで原稿の続き書きましょう。まだ書いてないのですよね?」
 明らかに原稿を書くように促す担当を見てリュカは三人の間に入り、担当を「まぁまぁ」と言って一度宥めた。
「良い作家や漫画家は早死にが多いと言います。それは始終原稿と向き合っていないとならない環境、運動不足、不規則な生活、締め切りに対する常に存在する精神重圧からだと言われております。適度な休みを与える事は担当の仕事という意味でも当然の義務ではないでしょうか?」
 リュカのその言葉を聞き担当は昴達を見た。そこには浮かない顔をしていた二人の姿があった。
 よく見ると彼らは何処か疲労が溜まっているようにも見えた。アニメ化が決まり、作品をさらに大きくしょうと必死で幾つもの仕事を彼らに与えた。それも休む暇もなく。
 彼はそれを思い出し、眉を下げ口を開いた。
「確かに……貴方の言うとおりです。俺は作品を大きくする事ばかり考えて周りが見えてませんでした。それも先生達が疲れている事さえも気づかずに……」
「先生達すみませんでした……。今日は原稿は良いです。なので今日は思いっきり楽しんで下さい」
 担当のその言葉に昴達は嬉しそうな顔を浮かべ、三人は言葉を交した。
 どうやら和解はしたようだった。リュカはそれを見て柔らかな笑みを浮かべた。

 菊次郎とテミスの二人は会場内を歩いていた。会場内は人が多く賑わっていた。
 彼は数人の参加者達とすれ違う。参加者達の顔には笑顔が浮かべられていた。隣を歩くテミスの顔にふっとした柔らかな微笑が浮いている事に彼は気づき、また彼も口の端を僅かに吊り上げた。暫くして菊次郎達は民俗学のブースへたどり着きスペースにいた男性に声を掛け、一冊の同人誌を手に取った。

 シャンタルは昴達のスペースの売り娘をしていた。
 あの後「え? 手弁当やて? シャンテはよ帰らな?……」と言うスケジローの言葉を無視し昴達へとサークルの手伝いを申し出た。昴達は快くOKし、それを見たスケジローは「はあ、しゃーない」と溜め息を吐きながら諦めた。
 シャンタルは目の前の客へと同人誌を渡し「有り難うございマス」と笑顔と共に言った。去って行く客を見ながら彼女は嬉しそうに、
「こっちガワ初めて! 楽しい!」
 そう呟いた。
 

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • エージェント
    言峰 estrelaaa0526
    人間|14才|女性|回避
  • 契約者
    キュベレーaa0526hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
    人間|25才|男性|命中
  • パスファインダー
    テミスaa0866hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 楽天家
    片桐・良咲aa1000
    人間|21才|女性|回避



  • 悲劇のヒロイン
    シャンタル レスキュールaa1493
    人間|16才|女性|防御
  • 八面六臂
    スケジローaa1493hero001
    英雄|59才|?|ブレ
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