本部

捕らわれのアナタは

トビネコ

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2015/12/18 17:20

掲示板

オープニング

●目が覚めれば

 目が覚めると、そこは牢。
 鉄格子に遮られた、薄暗い個室。
 辺りを見回すと、傍には同じ境遇の人の姿があるだろう。
 どうして自分達は此処にいるのか、混濁する記憶を思い返す。

「ここは……」

 アナタ達は、H.O.P.E.の依頼を受けとある犯罪組織のアジトの調査及び制圧任務を受けたはずだった。
 情報通り、アジトへ向かったアナタ達が内部へ乗り込んだと同時に強烈なガスの類の罠が噴射され、そこで自分達の意識は暗転していた。
 そして、目が覚めれば自分達は此処にいた。
 つまりは、捕まってしまったという事だ。
 もちろん装備などどこにもない、奪われてしまったのだろう。

「やぁやぁ、お目覚めかい?」

 どうするべきかとアナタ達が考えてる時だった、この場に似つかわしくない声が響く。
 鍵かかった鉄格子の向こう側。
 仮面を付けた一人の少女が現れた。

「うふふ、お前がやったのかと言いたそうだねぇ」

 仮面の下から響く笑い声。
 愉しそうなその声は、アナタ達を嘲笑うからのように感じ取れる。

「と、こ、ろ、でー」

 アナタ達の言葉や反応など一切意に介さず、少女は懐を探る。

「これ、なーんだ」

 少女が取り出したのは一つの鍵。
 愉しげな様子を見せたまま、彼女はその鍵を牢屋の中へと放り込んだ。

「ふふふ、ここから出てすぐにこの屋敷の監視室があるの、ちょうどそこは鍵が開いててがら空きなんだなー」

 くすくすと笑いながら、少女は呆気にとられるアナタ達を背を向けて歩き出す。

「逃げるなら、そこの資料を漁ってどうぞ……。ふふ、この状態でお仕事を完遂しても構わないけどね?」

 そんな事を言いながら彼女は部屋から出て行った。

 ―――愉しませてよ、H.O.P.E.さん。

 はっきりは聞こえなかったが、そんな言葉を残して。

●少女の名は

「うふふ、愉しいなぁ。アイツらがどうやって逃げ出すのか愉しみだなぁ」

 アジトの中を歩く少女はそう呟いた。
 周囲にはこのアジトを巡回する兵士達。
 しかし、彼らは少女の姿を見ても、何の驚きも示さない。
 彼女が仲間であるかのように、居て当然の存在であるかのように。

「さくっと逃げ出すのかなぁ、それとも情報を集めてこいつらの作戦を止めるように逃げ出すのかなぁ」

 くすくすと笑う少女は、それは愉しそうな顔をしている。
 まるで、自分が助けた人物達が一体何をするのか、待ち遠しいように。

「それとも、無理を承知でそのままアジトを壊しに来るのかなぁ……」

 ふと、通りすがった巡回の兵士が、少女を見て鋭く一礼する。
 屈強な男が小さな少女にこれほどまで整った礼をするなど、傍から見ればアンバランスさを感じさせた。
 そして何より、その構図は「兵士達より少女の方が『上』」ということを雄弁に物語っている。

「うふふ、アリスは愉しみで仕方がないなぁ……!」

 けたけたと笑いながら、少女アリスはアジトの奥へと消えて行った。

解説

※今回のシナリオは非常に特殊な状況から始まります。装備等に関して強い制限がありますので参加する際はご注意頂ければと思います。

■依頼内容
主目的はこの施設から脱走する事
可能ならばある程度の情報を集めての脱出が目的となります

■状況説明
とある犯罪組織が大規模テロを行うという情報を掴んだH.O.P.E.は貴方達をアジトに派遣、未然にそれを防ごうとしました。
ですが、事前に看破されていたのか、待ち伏せを行われ全員が捕らわれの状態です。

しかし、突然現れた仮面の少女によってアナタ達は解放され、近くにあった管理室まで向かう事が出来ています。
シナリオは牢屋か管理室から行動開始になります。

また、今回のシナリオに持ちこんだ装備は奪われている形となりますが
プレイング送信時点で持ちこんだ装備が破壊されることはありません。
※H.O.P.E.から支給されていた汎用装備が奪われた、という形になります

■アジトについて
アジトは山間の洞窟の内部に作られた地下施設で、アナタ達が居る場所以上の地下はありません
地上へ繋がる出口はアナタ達が入ってきた入口のみで、脱出さえしてしまえば敵は追ってこないようです

・アジト内部は巡回兵がおり、それぞれが2名のチームを組んで行動、剣と銃のAGWを別々に装備している
・構成員は全て能力者で、戦闘になると危険ですが、こちらも装備があれば戦えそうです
・武器庫、資料室、会議室の場所は調べがついていて、その部屋にはロックがかかっておらず敵もいない
・武器庫には一般的に支給されるAGWが置いてあり、任意の武器を持ち出す事も可能である
※プレイングにどのような武器があれば、という表記があればそれらを手にすることが出来ますがその場限りの装備になります
・これら以外のエリアもありそうだが、現時点では調べが付かなさそうです

管理室にあった手持ち式無線機を全員分で使用する事ができ、傍受される事がないことも確認済みです

リプレイ

●管理室にて

 薄暗い部屋を蛍光灯が照らす部屋。
 仮面の少女に示された通りに部屋に向かった能力者達は監視カメラのモニターを見ながら、各々に準備を開始する。

「………」

 ぐるりと部屋を見回すのは邦衛 八宏(aa0046)と伏黒 茉莉(aa2363)の二人だった。

「うん、監視カメラとか盗聴器とかはないな」
「………」

 茉莉が同じように調べていた八宏に聞くが彼から返事はない。
 だが、どうやら彼は必死に何かを探しているようだ。

「ほら、これ使え」

 そう言うと彼の英雄である稍乃 チカ(aa0046hero001) が監視室に転がっていたメモとペンを拾い上げると八宏に投げ渡す。
 すると、彼はいそいそとペンをメモに走らせる。

『すみません。こういうもので……監視カメラがないなら行動に移ってしまいましょう』
「どれどれ……うん、了解」

 彼の様子が気になったのか、Jasmine=Caelum(aa2363hero001) は不思議そうに覗き込む。
 最も、事前に彼らの事は理解しているので、特に不都合なく意思のやり取りは行えていた。

「さて、武器庫だったか」

 茉莉が言うと、他のメンバーも頷いた。
 ここからまずは武器庫へ向かい、武器を調達。
 その後、集められる情報を集めるだけ集めて脱出するのが彼らの方針で、今回の目的だ。

「ここ、どこかわかんないけど、私は私にできる事をするねっ!」

 行動を起こそうとした他のメンバーと違い、唯一管理室に残ろうとしたのは御代 つくし(aa0657)とメグル(aa0657hero001) だ。

「この状況。バックアップなしでは厳しい環境です。サポートはこちらで行います」

 メグルが補足するようにそう言うと、つくしは監視カメラのモニターに向かうとインカムと無線機を手に取った。

「これ、皆つけておいてね。何かあったらすぐいうから!」

 つくしがそう指示すると、皆一斉にインカムを装備していく。
 これで通信に困ることは無いだろう。
 準備は完了したと言わんばかりに、各々に行動を開始する。

「ああ、少しお待ちを」

 メグルが八宏を呼び止めると、余っていたメモとペンを受け渡す。

「それだけでは足りない可能性もあるでしょう。この分も持って行ってください」
『ありがとう、助かる』

 八宏は手早くそう書き残すと、他のメンバーを追っていく。

「じゃあ、こっちはモニターでいろいろ調べてみるよ」
「うん、こっちは通信を担当してみる」

 茉莉とつくし達は互いに頷き合うと行動を開始する。
 彼らが無事に生き残れるか、それはここに残された四人にかかっていると言っても過言ではなかった。
 

●武器庫にて

「よし、情報通り……モニタリングしてきておいてよかったね」
「ああ、そうだな」

 武器庫に向かった一団の中、管理室で監視カメラから武器庫と周辺通路を様子見し、内部に誰も居ない事を確認したファウ・トイフェル(aa0739)とフヴェズルング(aa0739hero001)は武器庫の扉を開きながらそう笑みを浮かべた。
 内部には誰もおらず、特別強力なものはないものの、ある程度の武器は確保する事が可能そうだ。

「お、これなんかよさそうだね」

 ファウ達が手にしたのは拳に嵌めるガントレットの様なもの。
 格闘系の武器を求めていたファウからすれば望み通りのものが手に入ったという感じだ。

「うん、こっちもいいものがあったね」
「そうだな、こういう物も悪くない」

 來燈澄 真赭(aa0646)と緋褪(aa0646hero001)も武器庫から投擲用のナイフいった物をいくつか見つけ出していた。
 傍では八宏ナイフや拳銃、小型の爆発物を見つけ出していたが、もう一つの目当てであった制服類はなかった。
 だが、あまり期待していないのと、そもそも行動指針からあまり必要は無さそうなので問題はないと着々と準備を進めていく。
 着々と皆が装備を集めていると、真赭が「それにしても」と話し出す。

「とられた装備からうちらがリンカーだとわかってるはずなのに幻想蝶はそのまんま……なんかいろいろと対応が中途半端だよねぇ」
「そもそもこの手の部屋に人が詰めてないのは異常だと思うんだが……」

 緋褪が彼女の疑問に応える様に自分からも現状についての疑問を浮かべる。
 アジトを攻める筈なのに装備は汎用装備、対象組織名の開示もない。
 この状況はただのドッキリなのではと思ってしまうが、待ってもドッキリでしたの看板は出てくる様子はない。

「皆準備は大丈夫かな?」

 変に考えていても仕方ないと、真赭がそう確認を取る。
 ファウ達は魔法具の様なものを余分に用意しているようで、反応が遅れたものの各々に装備が整ったことを確認すると一斉に行動を開始した。 


●行動開始

『このまま行くとあと10秒で巡回兵に遭遇するよ。気を付けて』

 薄暗い通路を進むメンバーに通信が入る。
 茉莉が調べた敵の情報をつくしが丁寧に通達する。
 同時にメンバーは通路の曲がり角に身を潜め、共鳴を行い各々に装備を構え直す。

「……いまよっ!」

 通路に敵の姿を捉えたと同時に真赭がナイフを投擲する。
 放たれた刃や寸分狂わず一人の男の腕に突き刺さり、突然の痛みに男は持っていた銃を手放す。

「たぁっ!」
「………」

 真赭の行動と同時に飛び出したファウは強烈な拳撃を武器を落とした男の鳩羽に叩き込み。
 突然の事態に怯んだもう一人には八宏がナイフを構えて飛びかかり、武器を持っていた腕を裂いたかと思えば銃を突きつけてその動きを制止。
 動けなくなったところにナイフの柄を叩きつけて昏倒させる。

『流石だね! 傍に扉が見えるはず。中には誰もいないみたいだね……たぶんそこが資料室で……ええっと。近くに会議室もある、どっちも今は人がいないね』

 つくしの通信を聞くなり、それぞれに無力化した男達を資料室に引きずるようにして隠しつつ部屋へ潜入する。

『こちらは、脱出口を確保します』

 資料室を確認した八宏はそうメモを残すと脱出経路を確保する為に警戒したまま部屋の外へと向かっていく。

「じゃあ、こっちは会議室に。そっちも気を付けてね」

 真赭はそう言って近くの会議室へと向かっていく。
 残されたファウ達は情報を得る為に手早く行動を開始する。
 
「なーんか脱出ゲームみたいだよねぇ。そのつもりで僕達を生かしておいたとか?」

 資料を漁るなら手が多い方が良いと、共鳴を解いたフヴェズルングはこの事態についてそんな事を呟いた。

「あの娘はここを『屋敷』って言ってたけど、牢屋やこの辺はそれっぽくないね。窓も見当たらないし、ここは地下なのかな」

 ファウのいう事ももっともで、屋敷というにはあまりに質素。
 窓もないことから地下という事は容易に想像できた。
 二人で資料を漁っていると、いくつかの資料が目に留まる。

「これは……」

 大量の爆薬を集めた履歴。
 最近都心で建造中の高層ビル。
 そして、そのビルを建築している建造業者へ回された大量の金。

「大規模テロ……これは止めたいけれど……」

 日時、日程はまだわからないものの、これだけ見れば何をするかは容易に想像できる。
 建造と同時にビルを爆破でもするつもりなのでは、そんな事が簡単にわかるほどに。

「既に行動は終わってるってことか。今僕たちに出来る事はこの情報を持ち帰る事だね」

 フヴェズルングがそう言うと、ファウも頷き、資料を握り締めて部屋を後にした。
 向かう先は会議室、既に真赭達が向かっているが、合流する事に越したことは無い。

「さて、此方は……」

 会議室のドアを開け、中に潜入すると情報はあからさまに残っていた。
 つい先ほど会議でもしていたかのように資料は机の上に置いてあり、持って行ってくれと言わんばかりの状態だ。

「やっぱり中途半端ね……」

 そんな事を呟きながらも真赭は資料を手にする。
 記載されていたのは、テロを行う日時。
 タイミングは完成した高層ビルに、多量の人を招き入れたタイミング。
 既に行動は終わっており、ビルが完成すればいつでも作戦は決行可能という事だった。

「これは、ヤバいね」

 その内容に冷や汗を流しつつも、彼女は散乱する資料から知りたかった情報を探していく。
 だが、自分達が待ち伏せされた原因については一切わからなかった。
 これに関してだけはどこにも情報がないのだ。
 そしてもう一つ、牢屋で自分達を解放した少女について。

「……アリス、か」

 資料としての詳細はない。
 しかし、資料の中には写真と共に名簿があった。
 この基地のトップに君臨する少女、それが彼女であり、名前はアリスという事だけがわかる事だったのだ。

「どうだった?」

 真赭が情報を集め終わったタイミングで、会議室にファウの姿が見えた。
 突然の入室に少し驚いたものの、無事合流した二人は情報を共有する。

「……とんでもないね」
「そうね。これは……何としても持ち帰らないと」

 情報共有を行っていると、突如管理室から通信が入る。

『これは……まずいですね。敵が管理室に向かってきてるようです』

 焦る様な、メグルの通信が通信機を通じて響く。


●単独行動

 あの少女が何を考えているのかはわからない。
 無月(aa1531)やジェネッサ・ルディス(aa1531hero001)はそれでも行動を行っていた。
 彼女にとって自分達は弱者に過ぎず、自分達は退屈しのぎの道具なのかもしれない。

「だが、それでもいい。弱者は弱者なりのやり方で抗うだけだ」

 共鳴を行い、1人の姿となった無月は管理室を出てすぐに見つけた通気口に潜り込み、匍匐前進を行って行動していた。

『無月さん、直ぐ近くに敵が居ます』

 管理室のメグルから通信が入る。
 眼下の通気口を見れば、直ぐ真下で話をしている二人組の姿が見えた。
 息をひそめ、耳を澄ませば会話が聞こえてくる。

「アリス様がまた玩具を用意したのか」
「あの人の我が儘や考えはよく理解できないな、おかげで苦労するのは俺達だ」
「言うなって。あの人に逆らえば何されるかわからんぜ」
「怖い怖い……次のテロ作戦、こっちも命がけになりそうだぜ」

 二人は笑いがなら会話をすると、その場から離れていく。
 彼らの気配が離れたところで、無月は金網をそっと外すと身を乗り出して飛び降りる。

「入り口付近、か」

 どうやら彼女は通気口を進んで入口付近まで移動してきていたようだった。
 無月は周囲に誰も居ない事を確認すると【罠師】の力を発動。
 周囲を目ざとく確認する事で入口周辺に踏むことで発動するセーフティガスを強化したような物を噴出する仕掛けを発見した。
 罠の精度は非常に高く、罠があると知った上で調べなければわからないほど、解除に至っては難しいという判断が下せるほどだ。

「だがこれは……よし」

 無月は何かを思いつくと、無線機を手に取った。

●脱出

「残っていたか。だが、時間切れだ!」

 バン! と、強烈な音を立てて管理室とドアが開け放たれる。
 警戒をしていたが故に接近には近づけていたのだが、管理室に居る彼らの手に武器はない。

「フル装備の私達が怖いからってここまでしなくてもいいのにね?」

 この状況をどうすべきかと考えるつくしとは対照的に茉莉はどちらかというと強気だった。
 最も、今相手をどうにかする術がない為、打つ手はなく、同じように思考をめぐらせている状況ではある。

「茉莉さん、一気に駆け抜けるよ」

 茉莉の傍でつくしはそんな事を言うと【ウィザードセンス】を発動する。
 自らの魔力を活性化させると同時に【ゴーストウィンド】を放つ。

「なっ……!」

 装備がない相手が何かしてくるとは思っていなかったのか、吹き荒れる不浄な風を男達は受けて大きく怯む。
 最も、武器が無い為大きな被害を与えるまではいかなかったが、それでも駆け抜ける為の時間稼ぎは十分だ。
 共鳴を行った状態で二人は男達の横をすり抜ける様にして部屋を飛び出すと、牽制射撃を行っている八宏の姿が見えた。

「二人とも、これ!」

 ファウがつくしに魔法具を、真赭が茉莉に大型の斧を投げ渡す。
 どちらも事前に確保を頼んでいたもので、これがあれば2人も戦うことが出来るだろう。

「一度見つかっちまえば、他の連中も駆けつけてきやがるぞ、走って逃げろ!」

 八宏と共鳴しているチカが叫ぶ。
 確かに、完全に姿が見られ、場所までばれた以上相手も群がってやってくるだろう。
 そうであれば、ここに留まる事は危険すぎる。
 八宏が殿を務める様に銃を放ちながら走り出すと、4人も顔を見合わせて真っ直ぐ走り出す。

「コテンパンよ!」

 先行して走っていくのは茉莉。
 その手に持った斧を振るいながら、通路で鉢合わせた相手に向けて一撃を振るっていく。
 彼女が仕留めきれなかった相手には真赭やつくしが追撃を行い、ファウの強烈な一撃がめり込んでいく。

「道はあっち!」
「わかってるよ!」

 脱出経路を確認していたつくしが指示を行い、迷うことなく出口へ向かっていく。
 殿を務める八宏も一度脱出経路を確認していたが故に迷うことなく進んでいく。
 交戦しながら進んでいけば、次第に自分達が入ってきた出口が見えている。
 だが、後方には集まってきた敵の姿。

「真っ直ぐ走り抜けて!」
「待って、あそこには罠が……!」
「いいから、いけ!」

 つくしが駆け抜けるように指示をすると、罠があったことを思いだした仲間が困惑する。
 だが、喋らない八宏に代わってチカが叫ぶと、全員意を決したように走り抜けた。
 罠は発動しない。だが、敵の姿は未だ見えたままで、此方に向かってきている。

「無月さん!」

 茉莉、ファウ、真赭、つくし、そして最後に八宏が飛び出した瞬間につくしが叫ぶ。
 それと同時に突如入り口から多量のガスが噴射され、追ってきていた男達は次々と倒れていく。

「無事でよかった」

 気が付けば、入り口の傍に無月の姿。
 彼女の手には握られた電子ケーブル。

「試してみたら罠の解除と、追加で操作が可能だったことが分かったのだ」

 あの後、入り口付近に待機していた無月は罠師によって罠を解除。
 更にそれを再利用して脱出時に追手を撃退する事を思いつき、提案していたのだ。
 無事に施設から脱出することが出来た。
 その事実に全員が安どのため息を付く、その瞬間だ。

『ぱんぱかぱーん。脱出おめでとーう』

 全員が装着している無線機から気の抜けた少女の声が響く。

『きっちり情報は手に入れたかなー? さて、そういうわけだ諸君。その決行日に私達と正面から対決といこうじゃないか』

 その声はとても愉しそうで、自分の思い通りにならない遊び相手を見つけたかのようで。

『アリスを愉しませてね?』

 あはははははっ、という愉しそうな笑い声と共に通信は切れた。

「………」

 その言葉を聞いて、無月は苦い顔をしていた。
 借りが出来たと思っていたが、返す以上に危険な相手であったことに。
 それでも、彼女は闇へ進むアリスを平穏な世界へ連れて行こうと思っているのだろうか。
 それは無月にしかわからない事である。

「いいじゃない、次は真っ正面からちゃんと倒しに来てやるわ!」

 対照的に、茉莉は気合を入れるようにそう叫ぶ。
 しかし、何故彼女が自分達に情報を掴ませるような真似をしたのか。
 それは一切わからない。
 いや……彼女は単純に、愉しみたいだけなのかもしれない。
 そんな事を考えつつも、H.O.P.E.へ情報を持ち帰る為に能力者達は行動を再開した。
 なんであれ、彼女の、アリスの好きにさせるわけにはいかないと胸に秘めながら。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 常夜より徒人を希う
    邦衛 八宏aa0046
    人間|28才|男性|命中
  • 不夜の旅路の同伴者
    稍乃 チカaa0046hero001
    英雄|17才|男性|シャド
  • もふもふの求道者
    來燈澄 真赭aa0646
    人間|16才|女性|攻撃
  • 罪深きモフモフ
    緋褪aa0646hero001
    英雄|24才|男性|シャド
  • 花咲く想い
    御代 つくしaa0657
    人間|18才|女性|防御
  • 共に在る『誓い』を抱いて
    メグルaa0657hero001
    英雄|24才|?|ソフィ
  • 誓う『世界』はここにある
    ファウ・トイフェルaa0739
    人間|6才|男性|生命
  • 共に在る『誓い』を抱いて
    フヴェズルングaa0739hero001
    英雄|23才|男性|シャド
  • 夜を切り裂く月光
    無月aa1531
    人間|22才|女性|回避
  • 反抗する音色
    ジェネッサ・ルディスaa1531hero001
    英雄|25才|女性|シャド
  • エージェント
    伏黒 茉莉aa2363
    機械|25才|女性|生命
  • エージェント
    Jasmine=Caelumaa2363hero001
    英雄|14才|女性|ドレ
前に戻る
ページトップへ戻る