本部
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 7人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/07/20 19:00
- 完成予定
- 2018/08/03 19:00
このシナリオは5日間納期が延長されています。
掲示板
-
幽霊退治
最終発言2018/07/20 16:24:08 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/07/18 19:20:38
オープニング
●死者を統べるもの
夜の小路に、小さな人影がぽつりと立っている。
袖も裾もゆったりと幅広の古風なつくりの漢服。はるか昔、この地を皇帝という王が治めていた時代の高貴な服装を思わせた。
黒い短髪の頭に冠はなく、ただ小さな耳を金のイヤーカフが彩る。
「ふふ……、やはり《燻る灰》の撒いた火種は素晴らしいね。少し掻き混ぜてやればすぐに燃え上がる」
誰に話しかけているのか、内緒話のように密やかに笑う。
「君は見ているかな? 硝煙の匂いには誰より敏感だった君のことだから、もし魂というものがあるなら、きっとここを見ているはずだ」
通りに街灯はなく、立ち並ぶ低い屋根の民家の窓にも明かりはなく。
打ち捨てられた様相の町並みの中、少年のかざした手の上にぽぅっと青い火の玉が生じる。
生じた青い火はいくつもあたりに散ってゆき、通りに転がる影達を照らす。
それは無数の死体。
あるものは額から、あるものは胸から血を流して倒れ、どれも粉塵にまみれている。
「デモ行進に無差別発砲か。軍は酷いことをするね。あははははは。痛かったろう、無念だったろう」
青い火はひとつずつ死体に吸い込まれてゆく。
「この北陰大帝が、お前達の無念を晴らす機会を与えてやる。圧制をしいたもの、犠牲の上に生きるもの。愛するものを道連れにするのもいいね。心のままに、命を刈り取って来るがいい」
青い火が、少年の整った顔を照らす。
まだ幼さを残すほどの年齢だが、浮かべる表情は無慈悲な冥界の帝王。
「憎しみを連ね、なるべく多くの命を刈り取っておいで。彼女はそうした人のありかたが好きだった。お前達の運ぶ命が、僕の盟友を弔うだろう。王に殉じた、あの《燻る灰》を」
●追跡、紅愛夢
「帰りましょう! もう帰りましょう!! こんなに奥地まで入る許可なんて、貰ってないじゃないですか!!」
柏木信哉は車の助手席で、半泣きになって訴えていた。
車は西へ西へと向かう。
風景は緑の田園地帯からだんだんと草原に変わり、遠くに羊の群れが見える。
この国に来てからレンタルした車にはカーナビなどなく、もうどこを走っているやら判然としない。
というか、そもそも地図がちゃんとしていないのだ。
なお、地方住民には地図が読める人もほとんどおらず、道を聞くのも一苦労である。
「聞き込みをした限り、『紅愛夢』の現在の活動地域はここより西だという話だった。もう少し情報を掴まないと、帰るに帰れん」
中年職員である野田は落ち着いて答える。
ニューヨークでヴォルケルフの隠れ家となっていた墓の持ち主、『紅愛夢』について調べたところ、同名の歌手が中国国内で活動していることがわかった。
N.M.墓地の管理団体からも、購入した華僑の女性は歌手であると名乗ったとの証言を得て、中国本土に調査に入ったところだ。
ただしお国柄、調査の許可が下りた地域は限られていたが……車にはカーナビもないので、迷ったという名目で西に向かっている。
「逮捕されたらどうするんですか! スパイ容疑で禁固刑でも食らったら、洒落になりませんよ!」
「……まあ、相手は法治国家だ、なんとかなるだろう」
中国は改革によって開かれた国となり、一昔前の秘密主義的性質はだいぶ薄れている。
この国で愚神や従魔が事件を起こした場合もH.O.P.E.に依頼が来ているので、それなりの交渉は可能だ。
そうこうしているうちに、道は集落にさしかかる。
土を固めただけの道に、土塀で囲まれた煉瓦の家。
人は見当たらないが、住む人が少ないせいか。
「この集落で話を聞いてみよう」
野田は車を停め、住人を探して歩き出す。
だが人の気配は、不審なほど感じられない。
「この村、荒れすぎ……いや、壊れすぎじゃないですか?」
車を降りて土塀の内側に入れば、窓や扉が壊れている場所が目につく。
更には、庭に椅子や小卓などの壊れた家具が撒き散らされている庭もある。
なにかがこの村に起こったことは、明白だった。
「あなたたちは……誰?」
神経を張り詰めていた野田と柏木は、ふいに声を掛けられて飛び上がるほど驚いた。
それがか細く震えた、若い女の声だったとしても。
●襲撃された村
「この村に化け物が来たのは、一昨日の夜からです」
少女は馮 利々と名乗った。
よく見れば子供で、十四だというが、語りはしっかりしている。
足の悪い祖父と弟との三人暮らし。両親は共に出稼ぎで不在。
「最初は、軍の車がたくさん東に向けて移動していきました。そして朝になると、村の住人も何人か消えていました。最初はみんな、何が起こったのかわかりませんでした」
この村では、農耕と牧羊が行われている。
羊に被害はなく、いなくなった住人はどこかへ出かけたのだろうと思われていた。
だが次の夜、『それ』はやってきた。
窓を割り、扉を壊し、そのあとは悲鳴が聞こえた。
利々は人の形をした『それ』を窓越しに見た。そして人でないものだと判断した。
「『それ』は人間とは思えない力で槌を振るい、あるいは瓦礫を投げました。服は血のような色でした。私は急いで、祖父と弟を連れて地下に逃げました」
馮家の地下倉庫は幸い堅固な造りで、扉も鉄製だったため、扉を叩く音はしていたが侵入されることはなかった。
「朝になると、あたりはすっかり静かになりました。村に残っていたのはほかに二つの家で七名ほど。車の音もしていたし、みんな傷つきながらも逃げたのでしょう」
助かった七名は、いずれも丈夫な倉庫に隠れていたとのこと。
朝になると、あちこちに血痕が残り、家屋が破壊された跡はあったが、死体はひとつもなかったという。
少女は、いない人は無事に逃げおおせたのだと思った。
それ以外の可能性は、考えたくもなかった。
「私の家はおじいちゃんの足が悪くて、車は無いし両親も遠くに行っています。村を出てもどこへ行けばいいかわかりません。だからここにいます」
じっと息を潜めて待っていれば、悪いものは去る。少女はそう信じている。
なぜなら『それ』は、村の命である羊を襲いはしなかったから。
「あの山。私の祖父の、そのまた祖父の頃は、あの山が国境だったそうです」
少女は外に出て、遠くに見えるなだらかな稜線を指した。
「山の向こうに軍隊が行って、何かよくないことが起きている。そして悪いものが来た」
その声は静かだった。達観したように言う。
「この村を、たくさん軍隊が通りました。だから、もしかしたら恨まれてるかもしれませんね。でも、なるようになります。天は見ています」
解説
●目標:中国奥地の村で従魔に遭遇したエージェントを救出する。
副目標:同村に来た人型の従魔を撃退する。
●現場状況
人口百人、二十世帯程度の牧羊と農耕の小さな村。現在残っている村人は計十名。
現場の村までは基本的にヘリでの移動となる。
●登場
馮 利々(フォン リィリィ)
・両親が都会に出稼ぎに出ている留守児童。
柏木 信哉
・『紅愛夢』の墓を調査した流れでなんとなく調査に借り出された新米エージェント。
・ニューヨークの墓碑名と中国奥地で活動する歌手名は(確かに芸名的ではあるが)偶然の一致では? と疑っている。
・幽霊の類は怖くないが、あらゆる国家権力は怖い。
●注意事項
エージェントはこの地域に入る許可を取っていない。従魔関連の行動は容認される可能性が高いが、住民の生活に過剰に干渉することはできない。
●PL情報
魄×100
・死体に憑依して動かす従魔。本体は直径10cmほどの火の玉。
・憑依する死体が生前最後に抱いた感情のうち、怒りが強いほど暴力的な性質になる。
・日の沈んでいる間だけ活動する。昼間は日の射さない場所に隠れている。
・この従魔に憑依された死体は爪が鋭く伸び、歯も尖る。
・一定ダメージ以上を与えると憑依が解け、しばらくは同じ死体に再憑依できない。
・今回与えられている命令は『なるべくたくさんの命を刈り取る』であって地域の制圧ではない。あるていど勢力が削られれば撤退する。
《噛み付き》《爪裂き》《怪力》
北陰大帝
・少年の姿をした愚神。古い冥界の神の名を名乗る。
・青い火の従魔『魄』を憑依させることにより死体を操る。
・非常に用心深く、今回も従魔だけを送り込んでいる。
※『●死者を統べるもの』はすべてPL情報です。
マスターより
こちらのシナリオは、『燻る灰の墓守り犬』の続編となっておりますが、前回のシナリオをお読みでなくとも問題ありません。
アッシェグルートとの親交を匂わせた少年は愚神としての本性を現し、本国に帰ってから《燻る灰》のために紛争を起こす、という約束を実行ましたが、こちら引き続きPL情報です。大帝を名乗るだけあり、たくさんのものに守られています。
また紛争の起こっている地域は、こちらの世界だけにある架空地域です。
その他、不明点があれば質問してください。
以上、よろしくお願いします。
リプレイ公開中 納品日時 2018/08/02 12:52
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幽霊退治
最終発言2018/07/20 16:24:08 -
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