本部
これは、起こりえた未来の物語
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 6~8人
- 英雄
- 7人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/05/11 07:30
- 完成予定
- 2018/05/20 07:30
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/05/10 09:37:25 -
【相談卓】
最終発言2018/05/10 23:07:10
オープニング
●
目が覚めた時には、わたしのまわりには誰もいなかった。
暗くて、冷たくて、さびしくて、泣き出しそうになった。
……誰かに、抱きしめてもらいたいと、思った。
誰でもいいから、あたためてほしかった。
それさえかなえられるのなら、わたしはもう一度あの暗闇に戻ったっていい。
●
不思議なうわさがあった。
夜に一人で歩いていると、唐突に一人の少女からハグを求められるというものだ。
その少女は夜闇の中だと輝いて見えるほど白く、小学生くらいの体躯にもかかわらずその瞳はあどけなさを一切宿していない、冷たい水色の瞳を持っているのだという。
少女は何を聞いても自分を抱きしめるように求め、言われたとおりにすると命を吸い取られたかのように死に至るのだとか。
最初『彼』は、その噂を単なる都市伝説のたぐいだと考えた。だってそうだろう。今のご時世、見知らぬ他人に近づくような小学生はほとんどいない。ましてや自分を抱きしめるように求め、その通りにさせると命を奪う、などと。真面目に信じるほうがばからしい。ネットの都市伝説だってもう少し筋が通るように創作されるだろう。
と、そんな風に考えていたのだが、最近になって彼の同僚もそんなことを話題にし始めた。冗談半分なのかと思いきや、案外真剣に。聞いてみるとその少女の姿を見た、という人間が近くにいるらしい。
「先輩も気を付けたほうがいいっすよ。見かけたら下手に近づかないで逃げたほうがいいっす」
「お前そんな都市伝説が事実だと思ってんのか? どう考えたっておかしいだろ」
「いやマジで近くにいるんですってその少女を見たってやつが!」
「わかったわかった。じゃあな、お疲れ」
彼が職場から出ると、外はすっかり日が落ちていた。風が強いせいか、天気予報で言っていた温度の割には肌寒く思えた。上着のポケットに両手を突っ込むと、足早に家路をたどる。
(今日はやけに寒いな……)
そんなことを考えている間にも、体感温度はどんどんと下がっていく。まるで雪国へ知らず知らずのうちに足を踏み入れているかのようだ。いよいよ歩調を早めようかという、その時。
「……霜?」
電柱の側面に、ほんのわずかに刺々しい氷がこびりついていた。ありえない。今の季節を考えれば、霜なんて絶対に現れない。だけど視線を奥に向けていくにつれ、電柱だけでなく家の塀や窓ガラス、屋根や電線にいたるまで霜が多く、そして大きくなっていっている。
なんだ、これは。
そう彼が戦慄して、
『…………抱きしめて、くれる?』
背後から、声がした。
「は……?」
驚いて彼が振り返る。視線を少し下げると、彼のへそのあたりに真っ白な頭が見えた。
『それ』が顔を上げる。薄氷の上から湖を見ているような水色の瞳に、暗闇の中であっても自ら光を発していると錯覚するほどに白い肌。そしてその背格好から想像できる年齢とはかけ離れた、寂しげで、およそ幸福と呼べるものを今まで享受してこなかったかのようなよどんだ雰囲気――。
すべてが、あの話に出てきた少女のようだった。
「……実在したのか……? 都市伝説だろ……?」
うわごとのようにつぶやく彼など意にも介さず、少女がもう一度つぶやく。
『抱きしめて、くれる?』
「まて。やめろ、近寄るな。何もするな、すぐにどこかへ行ってくれ」
『抱きしめて、くれないの?』
口にした瞬間、少女のまとう雰囲気が一瞬で変質した。暗い洞窟のような重々しいものから、吹雪のように凍てつくものへ。
『……じゃあ、いなくなって』
「やめろ、待て、近寄るな、いやだ、やめろ、あ、ああ――!」
かくして。
少女は雪のようにそこから溶け消えた。
●
「昨日未明、住宅街で男性の遺体が発見された。身元の確認ができないほどに遺体の損傷が激しかったものの、周囲の状況と遺体の状態からそれが愚神の仕業だと判明した。
敵の名前は『アイスバーン』。ただ存在するだけで周囲一帯を亜寒帯から寒帯クラスの気候に変質させる、まさに歩く異常気象だ。その冷気は『アイスバーン』に近づけば近づくほど強まり、奴に触れれば最低でもマイナス二百度近い冷気をもろに受けることになるだろう。当然ながら凍傷だけで済むとは思うな、まともに近づけば気管をはじめとした各種臓器に深刻な影響が出る。
すでにこの愚神によって五人は葬られているという予測が出ている。さらに奴が出現した地点をもとに戻すのにも手間取っている……放置しておけば人々の命はおろかこの地域一帯のインフラが機能不全に陥りかねない。何としても次に出現したときに倒してくれ。
こちらから極低温の空気を吸い込んでも問題のないように特殊なマスクを配布はしておくが、それ以上の対策は用意できない。先ほども言ったとおり下手に近付けば危険だ、接近戦を行いたい場合は各自で準備をしてくれ。ブリーフィングは以上だ、幸運を祈る」
●
ああ、神様。もしこの世界におわすのなら、どうか、お願いします。
わたしを抱きしめてくれる人をください。そして――
解説
目的:デクリオ級愚神『アイスバーン』の撃破
登場人物
『アイスバーン』
・デクリオ級愚神。幼い少女の姿をしており、全身から極めて強い冷気を発している。
・各地で亜寒帯化現象を発生させながら一般人の殺害を行っており、すでに五名が犠牲になっていると思われる。
・遺体から『アイスバーン』のものと思われる指紋が検出していることから、愚神は被害者に必ず物理的接触(指紋の検出状況から抱擁である可能性大)を試みていることが判明している。理由は不明。
・以下、ステータス。
・物攻:E 物防:D 魔攻:B 魔防:C 命中:D 回避:D 移動力:E 特殊抵抗:C 生命力:E
・憎まれるべきもの
・攻撃を受けるたびに物理防御が低下し、魔法攻撃が増加する。パッシブスキル。
・捨て置かれるはずのもの
・両手から冷気を噴出する。対象一~三体に対し魔法攻撃(中)と確率で減退(1)付与。
・見殺しにされるもの
・目の前の四スクエアの温度を急激に低下させる。その範囲にいた対象全員に封印を付与。
・愛されざるもの
・目の前の対象一体に抱擁を行う。対象に魔法攻撃(特大)と高確率で気絶(2)付与。
住宅街
・プリセンサーによって予測された『アイスバーン』の次の出現場所。すでに寒冷化が進んでおり、住宅街にいる限りその影響からは逃れられない。縦に長い構造。
・住宅街にいるとき、一ラウンドごとに一ダメージが加算される。何らかの耐寒策を施すことで一ダメージを受けるラウンド数を伸ばしたり(例:二ラウンドごとに一ダメージ)、ダメージを無効化できる。
マスターより
山川山名です。
今回のテーマは『飢渇』。何かに飢えているときって、大体苦しいものです。ところで空腹に耐えているとき、ある瞬間からそれを感じなくなることってありますよね? あれは体が体内の脂肪なり筋肉なりを分解して生命維持を図っているらしいです。あまりシナリオとは関係ありませんけど。
今回はかなり寒いので十分対策してもらえればと思います。ではではー。
リプレイ公開中 納品日時 2018/05/19 18:39
参加者
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最終発言2018/05/10 09:37:25 -
【相談卓】
最終発言2018/05/10 23:07:10