●自然は読めない
　今年の桜は、開花が早かった。
　そして、同時に散るのもとっても早かった。
「桜祭りなのに、桜が散ったー！！」
　町内会長が悲鳴を上げた。
　もうすぐ年に一度の桜祭りなのに、桜は葉桜を通り越して新緑である。花の面影もない。毎年盛り上がる桜祭りは、最大のピンチを迎えていた。
「会長、露天商の皆さんは別の地域に営業にでるそうです」
　外部から参加予定の屋台は「桜が散ったのならば客は集まらないだろう」と判断して、まだ桜が残っている北の地域へと移動してしまったらしい。
「桜もない……屋台もない……もう、桜祭りはお終いだ！！」
「会長！　まだ、アテがあります」
　そうして、話はH.O.P.Eへと流れ着く。

●できるのか、桜祭り！！
「ええっと、町内の皆さんと触れ合うためにお祭りの運営に参加しませんかっと」
　H.O.P.Eの女性職員は、祭りのスタッフを募るチラシを制作していた。
「主にやって欲しいことは、祭りをもりあげるアレやコレ。屋台、ステージ……なんだか、曖昧ね」
　チラシを作りならが、職員は眉をひそめる。
「桜祭りだろ」
　職員の同僚が、彼女に声をかけた。
「桜が散ったから客の入るとは思えなくて、毎年来る屋台とかが別の地域にいったらしいぞ。そして、ステージに関しては毎年漫才大会をやっていたんだけど……毎年デキが酷いから等々近所から苦情が来たらしい」
　どんな漫才だったのだろうか、女性職員は少しばかり気になった。
「まぁ、若者が叫べば面白いだろうって感じで大声出して、騒音になっていたからなぁ」
　どうやら去年の桜祭りに参加したらしい同僚は遠い目をした。
「あと、屋台で使って欲しい食材ってのがあるんだけど？」
「ああ、それは祭りの出資金を出してる店の商品だ。お金出してもらってるから、店の商品を屋台で使って、できれば店のアピールもして欲しいっていうのが毎年結構面倒くさくてな。外部の屋台から煙たがられる理由なんだ。まぁ、小さな町の祭りだから、そうやって経済を循環させないとどうにもならないんだけど」
　書類を作りながら、さらに女性職員は首を傾げる。
「気のせいか、この祭りってコッチに丸投げされない？」
「実行委員長がギックリ腰になったり、実行委員会が高齢化しすぎてて使い物にならなくなっていたりで大変らしい。若者は若者で、普段から仕事がいっぱいだし」
　女性職員は、チラシにH.O.P.Eのリンカーがやるべきことをまとめる。
・屋台の運営（指定した食材を使い、可能ならば購入店の宣伝）
・舞台の出し物
・祭りの治安維持および盛り上げ
※頑張っても桜が咲いていなくて、お客さんは少ないかもしれない。でも、例年は百人ほどのお客さんがくるから、もしかしたら多いかもしれない。
「……」
　思わず無言になる女性職員を男性は慰める。
「気持ちは分かる。無茶ぶりだよな」
「しかも……まだ欲求はあるの。少しの赤字ならともかく、大赤字だけは絶対に止めてくれって――客の入りも予想できないのに、そんな器用なことができるか！！」
　女性職員は、パソコンに向って怒鳴った。

　人間達を狂わせる魔性の桜。
　その桜を愛でる祭りは――果たして始まることができるのか！？

・桜祭りの運営

会場（桜公園）日中――晴天に恵まれた桜が多い、広々とした自然公園。遊具などはないが、様々な植物が植えられている。メイン会場は見晴らしのよい広場であり、出店はすべてそこに集まる。なお、証明が乏しいため祭りは夕方になると終了する。
メイン会場――出店とステージがある。なお。公園の桜の木は全てここに植えられている。
ステージ――簡単な作りのステージ。例年盛り上がりに欠けるステージで、去年は騒音による苦情がきた。
森コーナー――メイン会場の近くの林。さほど複雑な道ではないが、毎年迷子がでる。今回も出ると考えられている。
川コーナー――小さな小川のコーナー。メイン会場からは遠く離れているが、ゴミを棄てるお客さんもいる。

出店――用具一式はレンタル可能。商店街から買った食材（ノリ、豚肉、イカ、卵、サワラ、きゅうり）を使用し、可能であれば宣伝しながら販売しなければならない。なお、追加の材料や他の食材も用意可能。
　大きな赤字にはならないように販売してほしい、と町内会より話がきている。出資金により、30人分（出店の数に限らず、一軒ごとに30人分）ほどの材料費なら赤字にならずに購入できる。それ以上は、赤字となるため町内会への説得が必要である。（PL情報：お客さんの数は50人）