本部
救いは高らかに。人の命は地に墜ちる
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 6~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/07 12:00
- 完成予定
- 2017/06/16 12:00
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/06/06 05:24:07 -
救済とは何か(相談卓
最終発言2017/06/07 11:07:23
オープニング
●
この身はすべて、皆様の救いのために。
ですので、どうか、皆様方も――
●
「聖母様が来られたぞ!」
若い男が一人、狭い民家の一室に向けて叫ぶ。すると、そこに大量に詰めかけていた人々がわあっと歓喜の声をあげた。
異質だった。そこにいたのは若い女もいれば、年老いた老人もいる。子供を連れていたものもいたし、職場の同僚を引っ張ってきたものもいた。年齢も性別も、社会的地位も様々だったのに、身にまとうものは共通して白地に金の刺繍が入った頭から羽織る一枚布だった。東南アジアの民族衣装のよう、といえばわかりやすいだろうか。
全員が眼をぎらぎらと輝かせていた。何かに飢えているようでもあった。
「皆、姿勢を正せ! 聖母様が入られる!」
先ほどの若い男の声で、その場の全員が即座に正座の姿勢をとった。
彼らの奥から姿を見せたのは、背の低い女だった。
見た目では二十代後半。肩まで届く程度の黒い髪に、集った彼らと同じ一枚布を羽織ってしずしずと彼らの前に進み出る。顔は端正というよりどこか愛嬌を感じさせ、右目の下の泣き黒子が印象的だった。
「皆様、ようこそおいでくださいました」
彼女の登場で沸き立っていた人々が、その言葉だけで水を打ったかのように静まり返る。
「まずは、共にこの瞬間に立ち会えることを神に感謝いたしましょう。今日は特別な日でございます。私たちが神の御前に上り、永遠の幸福と平穏を約束される素晴らしい一日となるのです」
女の小さく、しかしよく通る声は続く。
「そもそも私たちは、この辛く、醜く、怠惰で抑圧的なこの世界からの解放とこの世界に縛られ続ける輪廻からの解脱、そして死後神のもとでの永遠の幸福と魂の平穏を信じ、今日まで布教と禁欲的な生活に努めてまいりました。この生活もまた、辛いものであったと私は感じております。そして、神の威光が現れなくなったこの時代で私たちの活動を広め、共に救いを求める兄弟姉妹を増やすことは、なおさらだと。しかし……皆様方の周りをご覧ください。今日、ここに集う、敬虔な兄弟たちを。ともに天の階段を昇らんとする、血よりも固い絆で結ばれた姉妹たちを」
わずかな照明しかないこの部屋をよく見れば、髪の色も、瞳の色も違う者たちがいることが分かると思う。お互いがお互いの顔を見て、そして穏やかな笑みを見せていた。
「私たちは、弱い」
女は胸の前で手を握り、苦しそうな表情をした。
「弱く、虐げられる私たちは、もはや死後に望みを託すほかありません。しかし、どうかそのせいで世界を恨まないように。なぜならこの暴力に満ちた世界もまた、神が作りたもうた世界だからです。いずれ彼らにも救いが訪れる――ただ、私たちのほうが先に向こうでお待ちするだけなのですから」
「聖母様! 俺たちは、今日何をすればいいんですか!?」
中年の小太りの男が脂汗を滲ませながら叫ぶ。
「焦らないでください。……私たちは、この選ばれた日に、殉教を遂げます。名誉ある死を、私たちで選択するのです」
死、という単語に彼らが特段の恐慌状態に陥ることはなかった。みんなそれは想定済みだったのだ。
「しかし、私たちだけで救いを独占するのは神のご意思に反します。信仰を分け与えよ、と神は仰せでした。であれば救いもまた、分け与えられるものでしょう?」
聖母は、いっそ無邪気とも言えるほど可愛らしく小首をかしげ、悪夢のような一言を放った。
「さあ――外へまいりましょう。救いを分け隔てなく、外の方々にもたらすのです」
虐殺が始まった。
雪崩を打って民家を飛び出した彼らは、手あたり次第目につく人々を、包丁で、猟銃で、バットで、ナイフではさみで縄で釘でハンマーで、聖母の救済を叫んで襲いまわった。
男がいた。
女がいた。
老人がいた。
子供がいた。
動物がいた。
赤子がいた。
けれど、みんな、いなくなった。
そうして彼らは目につく人々がいなくなると、まるで示し合わせたように同じ服を着た仲間と二人一組になってお互いを殺した。死ねなかったものは自分で死んだ。最期に怖気ずいたものは背後から別の仲間が殺した。
誰もが、いなくなった。
そして、最後に物言わぬ集落で一人残された聖母は、濃密な血の匂いと膨大なライヴスの海を前に舌なめずりして、こうつぶやいた。
このライヴスは、皆様方にはもう必要ないでしょう。
皆様方の死後に、平穏あれ。
●
「……俺が見てきた中で屈指の胸糞悪い事件だ。悪いが、付き合ってもらうぞ。
事件は昨夜、とある集落で起こった。人口は少なかったが、全員が穏やかに暮らしていた。農業が盛んだったが、畜産もやっていたらしい。君たちの中にもここの食材を口にしたものもいるかもな。……だが、彼らは突然、仲間内で殺し合いを始めた。いや、殺し合いというよりは一方的な虐殺か。とにかくそれが起こった。
犯行はここを拠点にしていたカルト教団によるもの。だが信者は全員自殺した。残るは教祖で『聖母』と呼ばれていた女だけだ。
愚神の、聖母だよ。
分かるか? この女は、ライヴスが欲しいがために自分では手を汚さず、無辜の人々を使って殺戮を行った。集落は壊滅し、かろうじて逃げ延びたわずかな人々も重大な心的外傷を負った。もう、あの集落は再興できない。あまりに風評被害が大きくなったからな。
事は最悪の段階に移行している。この愚神が次に潜伏する場所が新たな虐殺地帯になる。それだけは何としても回避しなければならない。
標的の敵性呼称名は『イル・マドンナ』。この偽りの聖母を、君たちが止めてくれ」
解説
目標:デクリオ級愚神『イル・マドンナ』の撃破、並びに市民の保護
登場人物
『イル・マドンナ』
・デクリオ級愚神。二十代後半の小柄な女性の容姿で、白地に金の刺繍が入った一枚布を羽織っている。
・教団の教祖。信者からは『聖母』と呼ばれ、精神的支柱になっている。
・以下、戦闘データを記す。
私の兄弟
・吸い込まれた自らのライヴスを活性化させ、対象にBS洗脳を付与。
私の姉妹
・BS洗脳状態にある人間を利用して攻撃、あるいは防御する。信者はあくまで一般市民であるが『イル・マドンナ』によりリンカー並みの力を発揮できる。
・この能力の対象には、すでにBS洗脳状態になったエージェントも含まれる。
神の救い
・吸い込んだ自らのライヴスを活性化させ、生命力を少量回復する。
信者
・『イル・マドンナ』のもとに集った信徒で、彼女と同じ服を着ている。二十人ほどおり、全員が解除不可のBS洗脳状態である。なお、一般人ではあるが上記『イル・マドンナ』の能力によりリンカー並みの攻撃力を持つ。半面防御力はないので一回攻撃を加えれば気絶させられる。
廃ビル
・都市郊外にある五階建ての廃ビル。電気、水道、ガスの供給は立たれていて、基本不気味なため周辺の人々はまず寄り付かない。このエリアのあちこちに信者がいるが、どこに何人いるかまでは把握できなかった。
・ただし、最上階に『イル・マドンナ』が存在していることは確か。当然推測できる事項として、最上階に多くの信者がいることだろう。ちなみにエレベーターは動いていない。
・窓は割れ、柱にはひびが入り、夜な夜な信者たちの祈りの声が聞こえる。一種の心霊スポットか、さもなければホラーである。
マスターより
山川山名です。
今回のテーマは『救済』。いま生きている時代に絶望し、超常の力に救いを求め、その結果に何を得るか。これを組織化したものが宗教ならば、ヒトによって説かれる救いはどれほどの力があるのでしょう。
皆様(能力者、英雄)はどう考えるのでしょうか。今回の敵はあまりにもわかりやすいので、むしろこっちを主題に考えてみるのもいいかもしれません。少しばかり、彼らとゆっくり対話してみてはいかがでしょう。
リプレイ公開中 納品日時 2017/06/11 13:00
参加者
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/06/06 05:24:07 -
救済とは何か(相談卓
最終発言2017/06/07 11:07:23