夜の闇の中で廃墟と化した街の中に三人のヴィランと一体のドラゴンの姿をした従魔がいた。
　街の中にはすでに人の気配と呼べるものはなく彼らの姿を見た人間達はその場から逃げ出し、また逃げ遅れた者達は無惨にも彼らに殺されたのだった。
　周囲には死体があちらこちらに散らばり、瓦礫には真っ赤な血が飛び散っており、また近くの建物からは火の手が上がっていた。
　まさにそれは地獄と呼べるものに近かった。
　そんな中、水色のミニドレスを身に着け、長く美しい金髪のウェーブが掛かった一人の少女は隣にいた背に漆黒のマントを風に靡かせ、黒い騎士のような姿をした厳格そうな男へと話しかけた。
「ラグルド・ヴァンス様、この街の人間は大体殺しました。残りは逃げられちゃったのですが、次の街に移ってサクっと殺しちゃいましょうか？」
「その必要はない。もうすぐ目障りなクズ供がやって来る。ここで迎え撃つぞ」
「えぇー！　もうエージェント達にバレちゃったのですかぁー！　あの脳筋オヤジなにやっていたのよ。まっったくほんと使えないんだから！！」
　ラグルドは手にしていた通信機の電源を切り、少女……エリアリスへと素っ気ない口調で答えた。ラグルドの言葉にエリアリスは頬を膨らませながら不機嫌そうにする。
　イグザードは倒れる直前に自身の通信機に電源を入れ、自分達の会話をラグルドへと流していたのだった。
　イグザード達がエージェント達へと強襲を掛けている中ラグルド達は街を襲っていた。その理由は多くの人間のライヴスを得る為と同時に人間達を殺し、また愚神に体を乗り移らせ、邪魔なエージェント達を襲うための戦力を手に入れる為だった。
　エリアリスの言葉に対して銀色の甲冑に頭には兜を被った一人の男……ラグーンは彼女へと軽い口調で言った。
「そう言うなって。アイツらも頑張った方だと思うぜ。それに邪魔な奴らをとっとと先に消していた方が良いだろう？　な？」
　エリアリスの肩をポンと軽く叩きながら彼女を宥めるラグーン。
　だがエリアリスはジト目で彼を見た。それは侮蔑の意味も多少なりとも含まれていた。
「アンタさっきいた幼女わざと逃がしたでしょ？」

「うっ……」と一瞬言葉に詰まるラグーン。だが彼は目をカッと光らせながら固く拳を握り、胸を張り、そして高らかと宣言するかのように言い放った。
「幼女は世界の宝！　それを逃がして何が悪い！　それにあの幼女はラグルド様の娘の聖羅様と同じ歳だ。おいそれ簡単に殺せるか！！」
「この変態！！」
　ラグーンの言葉を聞きエリアリスは彼を大いに罵っていた。それをラグルドはつまらなさそうな表情で一瞥し、視線を他の場所へと向けた。それと同時に彼は思考を巡らせる。

●闇のそこで願うもの
　数か月前。
　彼は愛する妻をある事件で失った。
　その時、目の前に現れた黒い騎士姿の愚神とある一つの“契約”を交わした。
　それはきっと赦されないものに近く、同時に世界の全てを敵にまわすようなものだった。
　それでも彼はその“契約”を愚神と交わしてでも、世界の全てを敵にまわしてでも叶えたい願いがあった。
　それから彼はその“契約”を叶えるべく一つの計画を実行に移すべく行動を開始した。彼の中に“躊躇”と“戸惑い”と言う文字は一切存在しない。あるのは自らの願いと、護るべき愛する娘の存在だけだった。
　それ以外は興味がなかった。
　いや、持っていなかったのだ。
　それほどまでに今の彼は狂っていたのだった。

　そんな思考を絶ち切りラグルドは視線をある方向へと向けると、瓦礫の下敷きとなっていた一人の青年に気づいた。
　青年は頭から血を流し、必死に手を伸ばしていた。
　それは青年が“生きたい”とそう強く願って手を伸ばしている。そう思えるものだった。
　だがラグルドはそれを冷ややかな瞳で見る。

　助かるはずなんかはない……。
　無駄なことをする。
　苦しみを長引かせるだけだという愚かな事にも気づきもしないで……。

　そう思い彼は無表情で青年へと掌をかざした。
　彼の掌から半径一メートル程の巨大なブラックホールみたいな球体が生み出され、それは青年の方へと向かい体を飲み込み球体の内部で青年の体を炎で焼き尽くそうとした。
　瞬間。
　即座に駆けつけた瑠璃（az0059）は青年を庇うように一瞬で青年の前へと出ると剣で球体を真っ二つに斬った。球体は黒い光を放ちながらその場から消滅していった。そして瑠璃は瓦礫の中から青年を助け出す。
　それを見、ラグルドは動じる事なく平然とした口調で自分の目の前に立つ瑠璃達へと言った。
「やはり来た、か……」
「あなたが全ての黒幕ね」
　ラグルドの前に一歩足を踏み出し、低い声音で瑠璃はそう言った。
　全ての元凶がいま目の前にいる。
　ここで彼らを捕らえなければきっとこの先悲劇が繰り返されるかもしれない。
　瑠璃はそう思い、ラグルドから放たれる威圧感を感じながらも言葉を発した。
「あなた達は必ずここで全員一人残らず捕らえます！　何としても！！」
　その言葉にラグルドは小さく眉をひそめた。
　そして。

「そうか……。お前達が私の計画を阻止するならば、私がとるべき道はただ一つだ」

　ラグルドはそう言い、どこからともなく取り出したバスターソードを頭上に掲げた。
　直後。
　彼を中心に約25メートル程の範囲に重力での攻撃が広がった。重くのし掛かる重圧を受け、瑠璃は地面に膝をついた。
　そんな瑠璃へとラグルドは重力を操り周囲の瓦礫、建物などの破片を瑠璃へと目掛けて放った。瑠璃はギリッと奥歯を噛み、ラグルドを鋭い瞳で睨んだ。
　重圧を受けている為回避が出来ない。
　そんな瑠璃を嘲笑うかのようにラグルドは自分の武器に重力を乗せ、瑠璃へと剣を振るった。重力を乗せている為その威力は絶大だ。
　迫りくる刃と同時にラグルドの攻撃を受けていなかったシルフ・ハムレット（az0009）達は瑠璃と青年の二人をラグルドの重力範囲から瞬時に引き上げ、そしてラグルドの刃を杖で防いだ。
　が、その直後エリアリスが即座に放った氷で出来たウサギの従魔がシルフ達へと向かい、そして自爆した。
　だが同時にシルフ達は回避した。そして後ろに跳び退ると共に爆発音がその場に轟いた。
　それを見、エリアリスは眉をひそめた。それに対して彼女の隣に立つラグーンは短く溜め息をついた。
「エリアリス。この程度の攻撃でエージェントが死ぬわけないだろう。頭を使え。それにしてもエージェント諸君、実に残念だ……。お前達が幼女かロリ辺りならば隠れて逃がそうと思っていたが、もう殺すしかなくなった。実に実に残念だ」
「まったく邪魔な奴らね。ヘンタ……ラグーン！　アイツらを始末するわよ！！」
「おまっ……また変態って言ったな！　……たっく、しゃーねーな、じゃぁさっさと片付けるぞエリアリス」
　二人はそう言いながらエージェント達へと駆け出したのだった―――。

目標
ラグーン達の体から愚神を切り離し撃破、共に青年を助け出す

ラグルドのスキルをいくつか提示する


登場人物

エリアリス（14）
ラグルドの側近。性格はツンデレ。計画の内容を知っている（ケントゥリオ級）
高回避

《戦いなさい！》
頭の髪飾りに手を触れると兎の従魔を2、 3体出現させ自爆させる。また仲間を回復させる（1、2回使用）

《スキじゃないっ！》
ライヴスで出来た氷の靴で蹴り技で攻撃してくる

《絶望冷気》
パッシブルスキル
エリアリスが纏う魔的冷気
シナリオに4回まで罹患したBSを『凍りつかせ』自動解除する


ラグーン（37）
ラグルドの側近。幼女が好きな変態（デクリオ級）
高攻撃力


従魔　ドラゴン　ミーレス級（1体）
口から火炎放射を吐き、旋回での攻撃をしてくる

《逝け我が同胞！》
指揮系スキル
ドラゴンが行動済みでも可能
ドラゴンの能力を上昇した状態で襲ってくる

《熱くなれ俺みたいにな！》
スキルを発動すると頭上から炎の球が雨のように降り注ぐ

《刃の錆となれ》
ドラゴンに乗りライヴスの炎を纏った剣で攻撃する


Pl情報

ラグルド・ヴァンス（35）
“漆黒の神”のボス。ある計画の為に動いている（ケントゥリオ級）

《死の檻》
掌から巨大なブラックホールのような球体を生み出しPCに放ってくる。球体の中に囚われると内部から炎で攻撃される

《グラビティ・デス》
パッシブスキル
武器のバスターソードを頭上に掲げると自身を中心に25メートル四方に重力での広域攻撃を仕掛ける(ダメージ＋拘束効果)

《グラビティエンチャント》
武器に重力を掛け武器の威力を上げる
命中率、回避が高い。ラグルドは3ターンしか攻撃せずその後離脱する

Pl情報ここまで

青年
重症を受けており瑠璃が敵から庇っている

状況
本部からの要請で瑠璃達と共に現場に駆けつけた設定。リプレイはラグルド達との戦闘から始まる

NPC
瑠璃&マーガレット
シルフ・ハムレット&ラプンツェル・ゴーデル

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  エージェント
  瑠璃（az0059）
  人間|16才｜女性｜防御適性
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  エージェント
  シルフ・ハムレット（az0009）
  人間|22才｜女性｜生命適性