本部
【屍国】 これは演習ではない
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/11/28 09:00
- 完成予定
- 2016/12/07 09:00
掲示板
-
これは演習ではない(相談)
最終発言2016/11/28 00:16:35 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/11/25 00:05:35
オープニング
●赤い染み
飯塚 栞莉(いいづか しおり)は買い出しの帰り、官舎の前に人だかりができているのを見てふと足を止めた。
数人での立ち話ならばいつものことだが、人だかりができるほどのこととは、何であろうか。
問うより先に、詩織の足元に白いものがすりよってきた。
犬だ。しかも、よく毛並みの整った小型犬。首輪もちゃんとついている。
「まあ、人懐こいのね。どこかの飼い犬が迷い込んで来たのかしら」
トイプードルというのだろうか。ふわふわの毛並みを撫でてやると、小さな迷い犬は甘えるように詩織の指を舐め、何かをねだるように、しきりに甘噛みまでしてくる。
「お腹が減っているのかしら? ごめんね、餌は持っていないの」
残念ながら、今日の買い出し品の中に肉類ははない。
「可愛いわあ。官舎でもペットが飼えたらいいんだけどねー」
他の誰かが言う。
詩織も、夫婦二人だけの生活にペットでもいれば……と思わないでもない。
しかし、いつ転勤辞令が下りるか分からない身としては、小さな命を背負い込むことは躊躇われた。
そのうちふわふわの迷い犬は、沢山の手に撫で回されるのに飽きたのか、すいっとどこかへ消えてしまった。
小さく頼りない存在に未練を残しながら、官舎の階段を上がる。
ドアを開けようとして、ふとスカートに落ちた赤い染みに気がついた。
「あら? どこで汚したのかしら」
よく見ると、詩織自身の指がわずかに血を流している。
痛みはなく、いつの間に怪我したのかも分からない。
家に入って簡単な処置し、スカートの血もつまみ洗いをするとすぐに汚れは落ちた。
それきり栞莉は、その染みのことを忘れてしまった。
●不安の正体
ぞっ……と、植地 広明(うえち ひろあき)の背に、悪寒が走った。
いまは訓練中、怯えている場合ではないはずなのに、悪寒が止まらなかった。
土を掘って壕を作る代わりに、土嚢を積み上げて陣地を作っている最中である。
雑念を振り払い、作業に集中する。
何に怯えるのか。これから行うのは撃ち合いの振りだ。戦闘訓練であり、戦闘ではない。
「どうした、顔色が悪いぞ」
植地のことを気遣ってくれるのは、上官の穂篠曹長だ。
尊敬する上司であり、彼の指示通りに動く限り、心配はないはずなのだが。
いままでずっと、そうだったのだが。
それでもぎりぎりのところで手足を動かし、着々と土嚢は積みあがってゆく。
「もうすぐ終わりだ、頑張れ」
そう、もうすぐ訓練は終了だ。
訓練の大部分を占めるのは、体を使った陣営作りであり、空砲で撃ち合うのは最後の儀式のようなものだ。空砲ではどれだけ命中したかも定かではない。
労働による汗よりも多く冷や汗を流しながら、作業自体は終わろうとしていた。
「よくやった、諸君」
隊長である飯塚二尉の声掛けにも、植地の神経はチリチリと過敏に反応する。
訳もなく、叫び声を上げて逃げ出したい衝動に駆られる。
(疲れてるのかな、俺)
そう思いつつも、わずかな違和感を感じていた。
何故だろう? 距離を取った陣地同士で撃ち合うのは、ライフルの予定ではなかったか。
なのに何故、飯塚の手にはマシンガンが握られているのだろう? 穂篠の手にまで。
「これで終了だ」
そう言った飯塚が浮かべたのは、いつもと寸分たりとも変わらぬ柔和な笑みだった。
何も変わらない、その銃口が隊員たちに向けられていること以外は。
(何が起こっているんだ?!)
反射的に植地は、衝動を開放した。
すなわち、身も蓋もなく叫びながら逃げ出した。
背後で炸裂するのは、実弾の銃声、そして隊員たちの悲鳴。
飯塚の脚にも、灼けるような痛みが走る。
(喰らった!)
痛みは無視し、土嚢を超えて無我夢中で走った。
悲鳴が上がることよりも、その声が消えることの方が恐ろしいと、そのとき初めて知った。
●動く死体たち
「徳島の自衛隊施設で、事件発生です!」
H.O.P.E.支部で連絡を受けたオペレータが、声を張り上げた。
「駐屯地内で訓練中に、実弾の乱射事件が発生しました。しかも、銃撃を受けて一度は倒れた隊員が……血を流したまま起き上がって、攻撃側に加わりはじめたそうです!」
事件の始まりは、射撃訓練だった。
攻撃部隊と防衛部隊それぞれ12名ずつに分かれ、壕を掘る代わりに土嚢を積み上げて陣地を作り、最後に射撃訓練を行う。
陣地は壕を模した細い通路状で、幅約1メートル、長さ約20メートルの閉鎖空間だ。
もちろん実弾は使用せず、空砲のみの予定だった。
しかし――いざ射撃訓練という段階になったとき、うち2名が敵方ではなく味方に銃口を向け、実弾を発射し始めたのだ――と報告したのは、からくも至近距離からの射撃を逃れてきた植地士長という若い隊員だ。
問題の2名以外は抵抗手段を持たず、悲鳴が上がらなくなるまで、銃声は続いた。
閉鎖空間で前触れもなしに撃たれた隊員のほとんどが、致命傷を負ったであろうことは想像に難くない。
そして更に恐ろしいことは、そうして一度は静寂の訪れた陣地内に、11名すべての動く姿が確認されていることだ。
臨戦態勢を取っていた防衛部隊側をはじめ、近隣駐屯地にも支援を要請して彼らのの鎮圧に努めたが、なんと彼らは、実弾にも砲弾にさえ倒れることはなかった。
「彼らは既に、通常武器では倒せない存在になったと認識した。よってH.O.P.E.に協力を要請する、とのこと」
ただし身についた習い性のためか、実弾の雨の中に堂々と出てくることは、今のところはない。
オペレータからの報告を聞いた職員の脳裏に浮かんだのは、ここのところ四国各地で起きている、人間が従魔化する事件のことだった。
何がきっかけかも分からぬまま、人間がさながらゾンビのように理性を無くし、従魔となって人を襲い、さらにそれが伝播する。
グロリア社の研究班により、この一連の事件が感染症によるものだという報告を受けている。
もしも気づかないうちに、自衛隊員が感染していたのだとすれば、大変なことになる。
「事件を起こした自衛隊員の特定は済んでいるのか。そうであれば、派遣歴を調べてくれ。すぐにだ」
同時に彼は、エージェント達に緊急招集をかけた。
「自衛隊駐屯地内に、従魔発生。鎮圧を要請する!」
解説
●目標
自衛隊駐屯地内で発生したゾンビ従魔の鎮圧。生死問わず。
●現場の状況
土嚢で壕の代替として陣地を設営している。高さ1.5メートル、身を低くして移動。
L字の頭に斜めにY字が連結した通路状の構造。通路の幅1メートル、長さ20メートル。攻撃目標に向かって湾曲し、枝分かれあり。前方に防衛部隊側が設営した対の形状の陣地がそのまま残っている。
建物は駐屯地内外のものを含めて充分な高さがない、あるいは射程外。
周囲は武器を持った自衛官が囲んでいるが、能力者は所属しておらず、従魔化した隊員にダメージを与えることができない。ただし現状、牽制効果はあり、包囲中。
エージェントの要請があれば各種支援を行う用意がある。
●従魔情報
【屍国】でお馴染みの従魔化した人間、及び従魔化した死体。
数は全部で11体。
感染前の自衛官と同程度の身体能力がある。また死体ゾンビには急所がなく、頭が無くなっても動く性質がある。複数箇所を攻撃して自力行動不能にまで破壊することで撃破。従魔に憑依されたのと同じ状態であり、完全撃破後しばらく経つと五体満足の死体に戻る。
感染体ゾンビを殺した場合、死体ゾンビになる。
オペレータの調査の結果、銃乱射を行ったのは飯塚二尉と穂篠曹長。彼らにゾンビ事件への派遣歴はなし(この情報は出発前に職員からエージェントに伝えられている)。
●PL情報
土嚢への埋設隠蔽という形で、彼らは充分な数の実弾とAGW小銃、AGWナイフを所持。偽装により隊員装備のジュラルミン盾もAGW能力を備えている。
マスターより
桜淵トオルです。
【屍国】シナリオで、舞台は徳島! ということでよろしくお願いいたします。
ゾンビモノのベタパターン、「知らないうちに隣人がゾンビに!」です。
徳島県内にも駐屯地はありますが、実在の施設とシナリオ上の施設はまったく関係ありませんのでご了承ください。
リプレイ公開中 納品日時 2016/12/06 21:46
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これは演習ではない(相談)
最終発言2016/11/28 00:16:35 -
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最終発言2016/11/25 00:05:35