本部
序章・静かな嵐
- 形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/06/21 19:00
- 完成予定
- 2016/06/30 19:00
掲示板
-
はじまりの嵐【相談卓】
最終発言2016/06/21 19:02:26 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/06/20 02:49:24
オープニング
「アリノスシジミを知ってる?」
透き通った声だった。少年にしては高く、少女にしては低いユニセクシャル。
「お世辞にも綺麗とは言えない翅を持つ、一応蝶々という事になっている、蛾のような虫なのだけれど。この幼虫がなかなか面白くてね」
その声は透明であり、無味無臭であり、砂漠だった。
感情の一切が抜け落ちた無機質な響きを孕む、それ故のクリアヴォイス。
「形は、よくゴムボートに喩えられるけれど、僕は焼き立てのパンのように見えたかな。ずんぐりむっくりした体格でね、うねうねと身を捩じらせながら木を登るんだ……そうして……葉っぱでも食べるのかと思う?」
蛍光灯が明滅する。純白の冷えた壁を彩る深紅の飛沫がぬらぬらと光る。
少年か少女か、その人物は独り言のように話し続け、事実独り言なのかも知れない。
目の前の椅子に縛られた男は猿轡を噛まされており、「んん」だの「んーんー」だのと呻く他ないのだから。
「蟻だよ」
鼻と口から血液を垂れ流す男を正面から覗き込み、その人物は白く細い指で男の首筋にそっと触れた。
呻き声に恐怖と懇願が滲む。瞼が大きく見開かれ、眼球が揺れる。
「アリノスシジミの幼虫は蟻の巣を襲い、その中の卵をむしゃむしゃと食べてしまうんだ。蟻達は勿論防衛するのだけれど、アリノスシジミの外皮は非常に硬くてまるで歯が立たない。蟻達の奮戦も空しく、アリノスシジミは彼らの卵でたっぷりと腹を満たし、あろうことかその巣の中で蛹になるのさ」
淀みなく語りながら――けれど一切の感情を露わさず――その人物は男の首筋を撫で上げて――猿轡に触れると――徐に首筋に手を回してそれを外した。
男の膝の上に唾液で濡れた猿轡が転がる。飢えた犬のような浅い呼吸を繰り返す男の顔を、無表情の彼、或いは彼女は覗き込みながら、小さく首を傾げて告げた。
「僕達は蟻だ」
◆ ◆
――地下、下水道。
「時間がありません。配置について下さい」
盗聴器から聞こえるやり取りに焦燥の色を滲ませた女は、あなた達にそう告げるとタクティカルアーマーに身を包む男達に広東語で指示を飛ばした。
「私もあなた達にこのような事を頼むのは気が引ける。これはいわば古龍幇の『内紛』だ……」
拳銃の安全レバーを外し、スライドしてホルスターに収めながら悔やむように語る女の言葉に、あなた達は事前に受けた説明を思い出す。
古龍幇――香港に本拠地を持つ『能力者を主軸に構成された』巨大な非合法組織。
その性質上H.O.P.E.とは敵対関係にあったが、能力者達の努力により合法組織への移行を表明。
H.O.P.E.との限定的な協力体制も築きつつあった――然し。
『古龍幇の幹部が、古龍幇の人間に拉致されました』
依頼内容の冒頭はそのような文言だった。
クライアントの名前は『劉士文』――古龍幇からの正式な依頼という事になる。
大まかな経緯としては、幹部の一人が行き付けのクラブから出たところを、武装した集団に襲撃され、護衛は一名を除き死亡、幹部は連れ去られてしまったとの事だ。
生き残った一名も重傷を負ったが、襲撃して来た集団が確かに同じ古龍幇の人間だと確認した事を証言。
また不幸中の幸い、幹部は有事に備えて発信機と盗聴器を(ダミーを含めて)複数身に着けており、行方を掴む事は容易かった。
だが追跡調査の結果、中国北部の廃病院に向かった事が判明。
そして拉致の目的が『拷問による情報の取得』である事を、盗聴器が教えてくれた――。
「……分かっていた事です。これだけ巨大な組織が急激に変わろうとすれば、何処かで歪みが生じる事くらい」
呟き、奥歯を噛み絞める女。
先の決定以降、古龍幇の内部には軋轢が生じていた。目に見えない亀裂がこれまで目立たなかった様々なものを浮き彫りにさせた。
先程盗聴器から聞こえて来た言葉は、恐らく実行犯のものだろう。自らを『蟻』と呼ぶそれは、まさしく古龍幇暗部の一端を象徴している。
アリノスシジミに為す術もなく搾取される、蟻という矮小な弱者……。貧困層などの社会的弱者の不満、怒り、憎悪は古龍幇という組織を形作る一翼となっているのだ。
古龍幇に何かが起きている。
新たな時代の到来を阻む何かが起きようとしている。
「それでも私は……あの香港の戦いにも参加した。あなた達と共に戦い、あなた達に助けられた一人だ」
女の細い瞳があなた達に向けられる。その瞳は拭い切れない迷いの中にも強い意志が灯っていた。
「香港協定は正しかったのだと、今も信じています」
◆ ◆
「因みに、蟻の巣で羽化したアリノスシジミがどうなるかと言うとね」
少年のような少女のような、その人物は淡々と語る。
「“蟻に食われるんだ”。羽化した為に硬い外皮を失った彼らは、蟻の群れに全身を食い荒らされて絶命する」
その手に恐ろしい形をした『器具』を握り、掠れた悲鳴を漏らす男に微笑みかけながら。
「さあ、僕達の時間だよ」
解説
○目的
廃病院で拷問を受ける古龍幇幹部の救出
○味方戦力
古龍幇構成員×複数
○敵戦力
古龍幇構成員×複数
?????×1
○作戦の流れ
PC達は抜け穴を通じて廃病院、地下一階より潜入。
地上一階の手術室にて拷問を受ける幹部を確保。
別経路より侵入した味方戦力(古龍幇構成員)が退路を確保次第、現場から撤退する。
○状況
廃病院内部の荒れ具合は軽微。
病院に残されていた予備電力が起動しており光源の心配はない。
内部を古龍幇構成員が見回っているが、地下フロアは人員が薄い。
極力交戦を避け、やむを得ない場合は騒ぎにならないよう処理する事が望ましい。
しかし、この段階に時間をかけ過ぎると、幹部が拷問に屈する・死亡するなどの可能性がある。
手術室の扉は一つ。内部はそれなりの広さがあるが手術用の機材が点在している。
手術室には椅子に縛られた幹部(能力者だが非武装)と?????が存在。
PC達には見取り図が配布されている。
○特殊ルール
PC達はインカムを通じて味方戦力に合図を出す事が可能。
合図を出すと味方戦力が【爆破工作】を発動。敵全ユニットに隙が生じると同時に、退路確保が開始されるが
早期に使用すると幹部の身が危険に晒される可能性がある為、最低でも地上一階に到達してから使用する事が望ましい。
【爆破工作】は一度のみ使用可能。
参加PC全員には『インカム型無線機』『古龍幇製消音ブーツ』を貸与。
無線機はPC・味方NPC全員と通信可能。
ブーツはある程度の足音を消す(注意して移動すれば足音は鳴らないが、スキル【フットガード】程の精度ではない)。またこのアイテムの為に足部位の装備を外す必要はない。
○?????
情報無し。
襲撃の生存者曰く「動きが非常に速かった」との証言があり、シャドウルーカーに類した能力を持つと目される。
対峙した際は、PC達の強さを測るような動きを見せる(PL情報)。
マスターより
初めましての方は初めまして、そうでない方はお久しぶりです。らららです。
二作目はAdivの一員としてのシナリオとなり、難易度もひとつ上げて「やや難しい」でお送りする事となりました。
大規模作戦【東嵐】とそれに連なる様々なドラマにより、世界は少しずつ変化しております。
それは古龍幇も勿論、例外ではありません。
確かに踏み出した未来への一歩。
けれど変革は大なり小なり、痛みを伴うもの。
一つの終わりが新たなる流れを生み、今、運命という大河が再び血の色に染まろうとしています。
ご参加、お待ちしております。
リプレイ公開中 納品日時 2016/06/24 09:02
参加者
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はじまりの嵐【相談卓】
最終発言2016/06/21 19:02:26 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/06/20 02:49:24