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【白刃】竜虎激突
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相談卓 ~だれでもうぇるかむ
最終発言2015/11/06 22:10:46 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/11/06 19:42:52
オープニング
●白き刃へ抗う為に
「総員、準備はよろしいですか?」
映像で、音声で、出撃し往くエージェント達にオペレーター綾羽璃歌が声をかける。
「H.O.P.E.東京海上支部としては初の大規模作戦。それに伴い、今回皆様には別働隊として動いて頂きます」
展開されたドロップゾーン。
そこから溢れ出す従魔、呼び寄せられる愚神。
別働隊はそれらを叩き、これ以上のゾーン拡大を防がねばならない。
「大規模作戦の成功……アンゼルム撃破の為にも、皆様の任務遂行が必須となります。
――どうか皆様、御武運を!」
* *
《生駒山周辺某所》
その者が大地を踏みしめれば、大地が死んだ。地面は砕けひび割れ。草花は生きることをやめるように枯れ果てた。その爪におびえ動物たちは逃げ惑い。その咆哮は飛ぶ鳥すら落とした。
その白銀の毛並みが優雅に風になびくが。彼から発せられる魔力で空気が毒づいた。
存在そのものが世界を壊す、そんな愚神は虎の姿をしていた。美しい虎だった。体長三メートルほど。四本の力強い脚には青白い炎が灯っている。
そんな彼が強大な力に引き寄せられ、この世界に厳戒すると。
彼はすぐさま一つの力を感じ取った。
同じく厄災のごとき力。
吹き荒れる風は鉄のように木々を切り倒し、操る雨と雷は命の存在を許しはしない。そう言う存在が、同じく強大な力に引き寄せられているのを感じた。
彼とはぶつかることになるだろう。
そう思った瞬間、彼の心の中から歓喜の感情があふれ出てくることに気が付いた。
あれと戦いたい、存分に雌雄を決したい、その欲望のままに彼は地をかける速度を上げた。
* *
《H.O.P.E.会議室》
アンゼルムの影響で愚神が大量に生駒山周辺に引き寄せられている。そうなると当然愚神同士での戦闘も発生するだろう。
そして案の定、虎の姿の愚神と龍の姿の愚神が農場上空で激突する予測をプリセンサーがした。
今回はこれの鎮圧が目的だった。
「場所は、バイオ燃料となる作物の大規模農場上空ですね。人が少ないことが幸いです」
高速で二体の従魔が向かっている。バッティングするのは一時間後。愚神と愚神の戦闘なだけに被害規模は大きくなるだろう。
「今避難勧告が出されていますけど、取り残されている人間がいる可能性はあります。そのことにも注意を配ってください。」
両愚神は人間に興味を持たず、従魔も引き連れていないがその戦闘が終わった後はどうなるか分からない、愚神が愚神を倒しさらに強くなるケースは報告されているので今はデクリオ級だとしても、その後ケントュリオ級になることも予測される。
「両方とも駆逐してください、アンゼルムだけでいっぱいいっぱいなのに、これ以上の厄介事はごめんです」
そしてリンカーたちが収集される。
解説
遙華「何も幸いじゃないわ! うちの契約農場じゃない! 冗談じゃないわ」
ということで急遽遙華が合流。仲良く敵と戦ってください。
目標、愚神デクリオ級二体の討伐(白虎 青龍)
デクリオ級 白虎の特徴
・機動力に優れ、反応速度も共にトップクラス
・遠隔攻撃に対し盾を形成する(魔法攻撃に対する防御力が高いという意味)
・攻撃手段は三つ。
爪での近接攻撃(命中にプラス補正)
突進攻撃(長距離を移動後に攻撃)
岩石をあたりにばらまいての攻撃(自身を中心にした範囲攻撃、空中の敵にも命中する物理攻撃)
こちらをランダムに一ターン二回行ってきます
デクリオ級 青龍の特徴
・魔法攻撃力が高く、長射程広範囲を殲滅するのが得意
・常に空に浮いている(攻撃を数発当てれば地面に落ちます、少しの間だけ近接攻撃が通ります)
・攻撃手段は三つ
風を前方に放つ(長距離広範囲の攻撃)
雷撃で周囲を薙ぎ払う(自身中心型広範囲攻撃)
尻尾で叩く(飛んでいる時限定、高威力物理単体攻撃)
この攻撃をランダムに一ターン二回行ってきます
周辺状況
かぼちゃやとうきびや稲やその他もろもろ、農作物が植えてあるだけなので、かなり視界は開けている。逃げも隠れもできません。
基本的にこの二体はお互いしか眼中にないので、合流しようとします、二体がであってもお互いを攻撃することしかしないでしょう。
その後どう行動するかはわからないですが、刺激していたら狙われる可能性が高いと思います。
また遙華の計らいによって、二ターン程度であれば、愚神を足止めすることもできます
遙華さんは今回は皆さんの指示に従います、一つの戦力として使ってあげてください。
リプレイ
空は鉛色で暗く。まだ正午を回っていないのにもかかわらず足元が不安なくらいだった。
そんな薄暗い畑の中を『御神 恭也(aa0127)』が歩いてくる。その背に足をくじいて動けないでいるおばあさんをおぶって。
そして『伊邪那美(aa0127hero001)』がまつ非難エリアでそのおばあちゃんを下した
「あと何人いるんだ。これだけ視界の効く場所で隠れられる場所なんて、さして無い筈だ」
「誰か居る~? 居たら返事か何か合図を送って欲しいんだよ~」
風が吹いてきた。広い田畑に伊邪那美の声は響かず、風に巻き込まれて霞んでしまう。
嵐が来そうだった、遠くから木々すらなぎ倒しそうな雷と豪雨が近づいているのが感じられる。
「まずいな、思ったより合流が早いかもしれない」
『荒木 拓海(aa1049)』がバギーに老人たちを乗せながら遠くを見た。
「そろそろいっぱいですね。拓海運転して」
後部座席には『メリッサ インガルズ(aa1049hero001)』が乗っている。
このバギーはH.O.P.E.からの支給品ではなく、グロリア社からの貸し出し品だった。それも二台貸し出されている。
もう一台を運転するのは『ロクト(az0026hero001)』で、助っ席には『西大寺遙華 (az0026)』が暗い顔をして座っていた。
「ずいぶん暗いな、どうした?」
気になり拓海が声をかける。
「ねぇ、今からでもいいわ、うって出ましょ、この農場にたどり着く前に撃破するの」
そんな夢物語を遙華は語って見せる。
「デクリオ級の愚神を二人か三人で相手にするのか? 六人で一体の相手をするのもつらいのに?」
遙華は黙り込んでしまう。
「わかってるわよ、そんなこと」
「西大寺さんには悪いが人的被害が出にくい畑で良かったな」
そうこうしているうちに、周囲を探索に出ていた『三坂 忍(aa0320)』と『玉依姫(aa0320hero001)』が合流する
「あっちに戦いやすそうな場所があるわ、あっちに移動しましょう」
その指示にする方向を見据えてロクトは車のキーを回した。全員が車に乗り込み目的地へ向かう。
「敵は地形の影響を受けないわ。逆にこっちは足元を気にしなきゃいけない。収穫済みっていったって、残ったかぼちゃを踏んだら足ひねるし、とうきびは根が張って堅くて足取られるし」
「確かにそうね、でもここら辺一帯そう言う畑よ」
遙華が答える。
「生産性あげるなら稲は乾田よね。じゃあ、戦闘場所は愚神の進路上で見通しのいい乾田がいいわ」
そして忍いわく、ちょうどおあつらえ向けな乾田がそこにあったらしい。
「先に着く愚神を担当班が足止め、別班は取り残された人たちがいたら避難誘導を優先させて」
「さすがだな」
そう恭也が感嘆した。
しばらくバギーが進むと、そこには三人の男女が立っていた。
『大宮 朝霞(aa0476)』と『ニクノイーサ(aa0476hero001)』そして『弥刀 一二三(aa1048)』だ
「朝霞さん、一二三さん準備して」
そう忍が叫ぶと、朝霞は親指を立てて合図を送った。
「ニック、変身よ!」
「あぁ。それはいいが、またあの変身ポーズと掛け声をやるのか?」
ニクノイーサはいぶかしげに朝霞を見つめる。
「もちろんよ!」
「あら、魔法少女には変身と口上はつきものよね」
「そうですよね」
朝霞と一二三は意気投合した。しかしニクノイーサは割り切れず目が死んだ魚のようになっている。
「……、せめて全員が集まる前に変身したかったな」
「いまさら遅いです。変身! マジカルトランスフォーム!!」
共鳴開始。
朝霞の体が謎の光に包まれ。白とピンクを基調とした意匠に替わっていく。日k理がはじけてスカートが形成され。指で目をなぞると光が集まってバイザーになったそしてマントを意翻し。背中にはマントが翻る。
「聖霊紫帝闘士ウラワンダー!」
「その掛け声、俺は本当に恥ずかしいんだが……」
たいして一二三は元からして変わっていく、背丈も体格も変わり。ピンクの長いツインテールに赤の制服をもした衣装に替わる。10代前半くらいの可愛い系美少女に変身した。
「あたしがいれば大丈夫よ!! 魔法少女フミリル、愛と勇気を携えて、あなたを折檻しちゃうわよ」
そして加速度そのままに突っ込んできたバギーに二人は飛び乗る。
「手はず通り行くよ」
そう拓海が声をかけアクセルを踏み込んだ。
* *
虎は前足をふりおろし、その力強さで大地を割った。
龍は轟く稲妻で周囲の作物を焼き払っていく。
白い虎に青い龍。二本に古より伝わりし、守り神の姿を模してはいたが、その実、その存在は天災か何かであった。
空気を揺らす咆哮と、大地と空をさく力が真っ向からぶつかっている、それをリンカーたちは遠巻きに眺めていた。
「ああ、始まってしまった。」
そう、遙華はため息をつきその戦闘を眺めていた
リンカー一行は、その竜虎激突の光景を、周囲の救助活動をしながら回っていた。
「白虎、青龍ときたら、次は朱雀と玄武も出て来るんどすやろか?」
一二三が隣にいる伊邪那美に双眼鏡を私そう言った。
「お~、恭也は居ないって言ってたけどやっぱり怪獣は存在するんだね」
伊邪那美は目を輝かせながら恭也に双眼鏡を押し付けた。
「……知り合いの英雄に似てるから少々やり辛いな」
「その考え方は失礼だと、ボクは思うよ?」
「白虎、青龍ときたら、次は朱雀と玄武も出て来るんどすやろか?」
一二三も同じように目を輝かせ、頬を赤らめていった。
「一二三さんは幻獣の類が珍しいからって作戦に参加したんだよね?」
「そうどす、面白い思って」
「実際はどうです?」
「実際は、あら……やだ! 目が合っちゃった……。……ちょっと、可愛いかも」
「それってまずいんじゃない?」
メリッサがそう言った瞬間だった。
白虎がその爪で大地を引き裂き、巨大な岩石を数発こちらに投げてきた。
その岩を回避するバギー、しかし田畑はもはやめちゃくちゃだった。
「西大寺さんごめんなさいっ!」
「いったん一般人を安全な場所まで誘導して、そして白虎の攻撃に移りましょ」
そう一二三が白虎を見据えてつぶやいた。
* *
「いやー、収穫時期が過ぎててよかったわね。人も少ないし派手につぶし合ってくれれば戦闘も楽じゃない?」
そう忍が声をかけると、遙華は呻くように返事を返した。
「そうね……」
「って西大寺さん、そんな目で見ないでよ。分かってるわよ、早めにしとめて被害をおさえましょ」
「ふむ?大規模な事業を行う時は保険とやらに入ってるもんだと忍が言うておったが…、愚神災害保障とかないのかの?」
玉依姫が問いかけた。
「愚神災害補償、それもありね……」
「そんなことを言っている間に、戦局に変化があったみたい」
朝霞が言う。
「私は本当にここにいていいの?」
「ええ、朝霞さんは貴重な回復役だからね、危ない人がいたら助けてあげて」
そう忍が指示を出した。
「早く終わらせましょう」
遙華が口早にそう言う、少し焦りが見えた。
「でも人命が最優先だからね」
忍が釘をさす。
「それはわかってるわ、それにもう回収し終えたって報告があったわ」
「なら、もう仕掛けても大丈夫そうね」
「ええ、ここからが本番よ」
見れば白虎へ向けて、青龍が執拗なまでに雷撃を放っていた。白虎はそれになすすべなく倒れ込んでしまっている、このままでは決着がついてしまう。
それだけは阻止しなくてはいけない。
「忍さん、遙華さん、お願いします!」
その朝霞の号令で三人は動いた。まず朝霞からの援護射撃が青龍の鱗に見事に食い込む、しかしその視線は相変わらず白虎にむいていた。
―― 眼中になしと言ったところだのう
玉依姫がくつくつと笑う。
「あの余裕も今の家だけよ」
そう忍はクリスタルファンで、遙華は自前のアサルトライフルで狙いをつけて青龍を攻撃する。
その攻撃によって青龍は体制を崩した。ダメージが蓄積していたのが地面に落ちる。
そして背後で怒りに満ちた白虎の声。
「我らの勝負を邪魔するな!」
「喋れたのね」
「うっとおしい奴らだ」
青龍が鎌首を持ち上げ二人を凝視する、次の瞬間イカヅチが降り注ぎ遙華と忍に直撃する。
「まったかしら」
その時一二三の声、バギーが飛び出してきて、白虎に体当たりした。
弾き飛ばされ、青龍と距離ができる。
「間に合ったのね」
「あとは、足止めか、ロクト、大仕事よ全力で行くわ、縫いとめる! 忍、手伝って」
「わかった、しばらく時間を稼ぐからみんなは白虎を」
そう忍が叫んだ瞬間。
白虎の爪に引き裂かれてバギーが爆発した。
バギーが爆発する瞬間リンカーはすかさず飛び降り、戦闘を開始する。
まず動いたのは拓海だった、爆炎の中を突っ切り白虎に拳の連打を浴びせる。空中でそれを受けた白虎は威力を吸収できず地面に叩きつけられた
その隙を逃さず一二三が接近する。切り上げるように一太刀浴びせ、フラメアの柄を空中を無防備で漂う拓海の足場にするため差し出す。
その柄を蹴り、拓海は素早く白虎の射程圏から離脱。返す刃で一二三がもう一度切りつけて、彼も後ろに跳躍して距離をとった。
だが白虎も黙って見ているわけではない、白虎はそれを異常な瞬発力で追おうと全力で前に飛んだ、しかし交代で肉薄してきたのは恭也。
コンユンクシオ の分厚い刃で恭也は白虎の鋭い爪と真っ向からぶつかる。
激しく火花が散り。衝撃波が地面を割る。お互いの加速度がゼロになり、静止した瞬間。一二三と拓海が追撃のため肉薄しようとするが。
「なめるな!」
白虎は気合で地面を割り、浮き上がった岩石たちを三人に向けてとばした。
ダメージ自体は重くはない、まだ三人とも戦える。だが、距離を離されてしまった。
白虎はにやりと笑らう。そして機動力をしかして三人の周囲をグルグルと回り始める。
三人はお互い顔を見合わせて頷きあった。
まず最初に飛び出したのは拓海だ。チームで一番身軽な彼が白虎に接敵しようと追いかける。
だが実際に追いつこうと思っているわけではなかった。追いかけると見せつけてその走行ルートを狭めるのが本来の目的。
一二三が白虎の走行ルートを予測、真っ向から立ちふさがるが、白虎は跳躍し一二三を飛び越えてしまった。
「しまった!」
そう白虎の狙いは包囲網の突破、そして地面に降りている青竜の撃破。
「ははは、我のスピードについてこられるものか」
そう白虎は背後を振り返り、三人を見やる、追いついては来れない。安心して白虎は前方に向き直った。
そこで一つ、異様な物をみた。
「すごく素早いわ! どうしよ!?」
――落ち着け朝霞。
まずいと思った時にはもう遅い、白虎は失念していたのだ。敵は三人だけではないことを
――味方と連携するんだ。味方が攻撃したあと、敵がかわす方向を先読みして狙い撃て。
白虎は拓海の攻撃も一二三の攻撃も避けて真っ直ぐそちらに向かっていく。直線的に、猪突猛進的に朝霞の方へ向かって走っていく。
「……さらりと難しい事を言うのね。わかった! やってみる!!」
ニクノイーサの指示を受け、朝霞は弓を構える。その弓につがえられた矢が赤い輝きを帯び、ブラッドオペレートが。白虎向けて放たれた。
それが直撃する、鋭い一撃が白虎を貫き、あたりに白虎から漏れ出したライブスが散る。
思わず白虎は足を止めた。
それが運のつきだった。
――いっけ! 恭也!
伊邪那美の声に乗せ、恭也のオーガドライブ、鬼神のごとき勢いで放たれた斬撃が、下からすくい上げるように白虎にさく裂した。
肺からすべての空気が叩き出され。この時白虎は確実に無防備になった。
意識すら朦朧とし、頼りになる大地の力も今は数十センチ先にあり届かない。手を伸ばしても。地面に足が届かない。
「く、この私が、人間ごときに」
拓海がまず肉薄した。目にもとまらぬ掌底の嵐が白虎の横っ腹を穿ち、その隙に一二三が踊るように前へ出る。そして切り払い、切り伏せ。そして。
「正義の鉄拳、受けなさ~い」
ライブスブローがさく裂した。
だが白虎の足が地面につく。
――抵抗力をそげ
ニクノイーサの冷静な声が響き、その意味を瞬時に理解した朝霞の矢が白虎の四肢関節を穿つ。
だがそれでも白虎は倒れない。
ガァァァァァァァァァァア。
突如耳をふさぎたくなるような咆哮、そして、めくれ上がるように大地が爆ぜる。岩盤が人を吹き飛ばそうとまるで津波のように襲いかかってきた。
勝ったと思った、白虎渾身の一撃、この攻撃の前に立っている人間がいるなど想像できなかった。だが。
「これで、終わったと思うな」
その声を聴いた時白虎は、初めて恐怖という物を感じたのだろう。
いままで、それこそ青龍と戦っていた時にも感じなかったこの感情。
それを恭也に対して感じていた。
「なぜだ」
白虎は目を疑った。
「なぜ、立っていられる!」
信じられない光景を見たからだ。
恭也がその襲いくる石の津波の中でも、二本の足で確かに地面に立っていたのだ。
ダメージが無いわけではない、額から血があふれている。だがそれでも彼は倒れない。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!」
一刀両断。
オオオオオオオオオオオオオ!
白虎の悲鳴があたり一帯に響き渡った。今度こそ白虎を中心から真っ二つにし、その体が瞬時に霊力に分解される。
「やった、倒した」
そう拓海がガッツポーズをとろうとした瞬間
グルォォォォォォォォォォォォォオ!!
その咆哮で皆が我に返った。まだ敵は残っている。
* *
「遅いわよ……、っは。あんたたち」
「くっ。わかってたけど、足止めだけでもつらいね、これ」
四人が目の当たりにした光景は。空中でとぐろを巻く蒼い龍の姿だった。
サファイアのような硬質な輝きを持つ鱗で全身を覆った、まぎれもない神話に謳われた龍の姿。
そして四人が次に見たのは。
それを今まで抑えていた、血まみれの二人の少女の姿だった。
その少女のうち一人、遙華を青竜は尻尾で狙う。
「やらせないわ」
一二三が遙華と尻尾の間に入り込みハイカバーリングで攻撃を防いだ。そして二人を下がらせる。
リンカーたちはすぐさま戦闘態勢をとった。そして戦闘再会。
さっそく青竜はその周囲に雲を召喚した、雷撃で全員纏めて吹き飛ばす構えだ。
拓海はそれを見越して盾を前面に押し出し前に出る。
そしてその動きに合わせ、一二三はリンクバリアを張り攻撃に備える。
その瞬間だった。幾重にも重なった雷鳴、瞼の上からでも目をくらませるような雷光があたりを埋め尽くす。
それこそ視界が真っ白に染まるほどの閃光の中、神経が直接焼かれるような痛みを全員が味わった。
しかし、誰ひとりとして膝をついていない。
「撃って!」
遙華がアサルトライフルを構えるのと同時に恭也がスナイパーライフルを、忍がレーザーファンを構え真正面から一声砲火を食らわせた。
「これで」
朝霞がブラッドオペレートを放ち青竜を切り裂く。
「ぐぉおおおおおおおおおおお! 人間風情が!」
たまらず青竜が暴れのた打ち回る。甲高い悲鳴が聞こえ身悶える度に鱗が雨のように降り注いた。
だが青竜もただでは終わるつもりもなく、その巨大な尻尾を地面にこすり付けるように忍へと叩きつけるが。それを拓海がシールドで押しとどめた。
「ここから上って!」
その指示に従って一二三と忍が尻尾をつたって上った、もはや速度にまかせたがむしゃらの登攀だ、しかしそれを青竜は振り落せない。
「たぶん、このあたりのひげとかで雷を操作してると思うんだけど!」
忍は青竜の頭まで登りきる、そして鼻っ面を蹴り上げ空中高く飛び上がった、そして上下反転。狙い澄まして、銀の魔弾で、吹き下ろすように青龍へ攻撃を加えた。
その一撃が見事に利いた。青竜の体制が一気に崩れる。
「この鱗も、宝石みたいできれいどすな。けど」
たいして一二三は青竜の体を駆け上がりながらその美しい体を何度も切り裂いていく。
たまらず青龍は悲鳴を上げ地面に落ちた。
そこをめがけて朝霞と遙華の集中攻撃。鱗が爆ぜ、柔らかい肉体が露わになっていく、血液のかわりに体内を循環していた霊力が周囲を舞った。
―― 恭也また飛ばれたら不利だよ
「わかっている」
そしてその隙を逃さずに恭也がコンユンクシオに持ち替え、突進力にまかせてその刃を突き立てた。
「これで……」
龍は飛べない、もうその力も残っていなかった。
――やっちゃえ! 拓海
「はぁぁぁぁぁあ!」
ハンズ・オブ・グローリーを装備しての、掌底の連打、連打、連打。
その衝撃で青龍の巨体は地面につくことがなく、まるで掘り進むように青龍の分厚い鱗を引きはがしていく。
「これで終わりだ!」
そして渾身のアッパー。
その衝撃で青龍は完全に力尽きたようで、その体が一瞬にして霊力に変換されてあたりに散った。
ライヴスの霧が晴れ、リンカーたちがお互いの姿を確認できるようになった頃。
空を覆う曇天に切れ間が入った。
任務完了。二体の愚神の討伐に見事成功した。
* *
「ふぅ、空が高いわね」
戦闘終了後、忍はとりあえず空を見た。忍はあたり一帯の畑の状況から目をそらす。
「ああ、契約農場が……」
遙華は地面に座り込み両手で畑の土を握りしめていた。
以前は整備され、美しい正方形の田畑が地平線の彼方まで続いているような大農場だったのだが。今では幼稚園児の砂場のような有様である。
土はめくれ、掘り返され。穴や焼け焦げた跡。そしてわずかにあった収穫前の作物も、全てが台無しにされてしまった。
遙華はその光景を目の当たりに肩をがっくり落した。
「ああ、農家の皆さんの職がなくなる」
「あ~、一端の責任がある俺が言うのは何だが元気を出してくれ」
そう、恭也が遙華を慰めようと隣に座った。
「そうそう、待てば海路の日和ありって言うでしょ? きっと、明日には良い事があるって」
「なるほど、いいえて妙ね」
そう忍が言った。
それを聞いて遙華は忍をじーっとにらむ。
「なによ、プラントに被害が出なかったんだからいいでしょ。むしろ土壌の栄養が増えたと思いなさいよ」
「こんな栄養の増やし方なんてないわよ、それにこんなにひっくり返されちゃ、どこが畑でどこが通路化もわからないわ」
「もういっそ全部畑にしましょう」
「無理よ!」
そうじゃれ合っている少女二人を尻目に朝霞は一二三の治療を行っていた。
「はぁ」
唐突に一二三はため息をつく。
「どうしたんですかそんなにため息をついて、まだ体が痛いですか?」
「……白虎、可愛かったどすわぁ……。飼えたら良かったんに……」
「あんた豪快だな、あれだけぼこぼこにされておいて、まだそんなことが言えるなんてな」
ニクノイーサが呆れた調子でそう答えた。
「美しいものに罪はないんどす」
そう一二三は遠い目で遠くを見た。
「おーい、みてみて、トウモロコシがあったよ」
そう遠くの方から拓海とメリッサが山のようなとうきびを抱えてこちらへやってきた。
「これ、火が通っているみたいです」
「食べれるの?」
忍が尋ねた。
「おお、とうきびは初めて見るのう。どんな味がするか楽しみじゃ」
「いえ、これもとはバイオ燃料になる予定だから、味は保証しないけど」
「でもいい匂いはするよ」
「確かに」
恭也が頷いた。
「ああ、まぁ、お腹を壊すってことはないと思うから、持ち帰ってみんなで焼いて食べましょうか」
「やった!」
伊邪那美が小さくガッツポーズをとった。
そしてちょうどいいタイミングで迎えの車が、こちらへ向かってくる音が聞こえてきた。
リンカーたちはしばし戦闘後の空腹と戦闘後のけだるさに身を任せながら、心地よい日差しに身を預けていた。