本部

広告塔の少女~お掃除大作戦~

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2015/11/10 15:39

掲示板

オープニング

 ここはグロリア社、日本支部の会議室。
 ここでは月に一回重役を集めての会議が行われている。その重役会議に『西大寺遙華 (az0026) 』も出席していた。
 この会議ではそれぞれの部署の月間報告と今月の取り組みについてまず報告するのだが、不思議とその報告会の時点で空気が重い。それがなぜかと周囲を見渡すと。西大寺家の現党首の顔色がよくない。
 遙華はすぐに、原因が一体なんなのか、今日の報告会の内容を脳内で再生する。もしどこかの部署がへまをやらかしたのであれば、その部署だけ個別にしかりつけるのが西大寺家党首のやり方、それをしないということであれば、おそらくは。この場にいる全員にイラついているのだろう。
 そう、例えば会社全体で、利益が落ちていることなどが、おそらく原因だ。
「それで、全部か」
 推理に夢中になっていた遙華はその声でふと我に返る。
「ここまで利益が落ちているのは日本支部だけだぞ、何をやっている」
 遙華は頭を抱えたくなるのを必死で我慢した。
 しかりつけてどうなるわけでもないのにと。
「いえ、これには深い事情が」
 社員の誰かが口を挟んだ。その言葉の続きを西大寺家現党首は無言で促した。
「これは、最近起きているわが社のネガティブキャンペーンのせいで、イメージが」
「堕ちたイメージは回復させればいいだけだろう」
「そう申されましても……」
「社長、私にいい案があります」
 そう静かに手を挙げたのは『ロクト(az0026hero001)』だった。
「ほう、言ってみろ、英雄」
「ボランティア活動をするのです」


   *   *

「なんで、あんなことを言ったのよ! ロクト」
 遙華は顔を真っ赤にしてロクトをしかりつけていた。
 遙華は普段から声を荒げることはないのだが、今回ばかりは感情に身を任せなければ気が済まなかった。
「何がボランティアよ、悪趣味な企画ものじゃない、何であんなことを言ったのよ」
「一石二鳥だからね」
「何がよ……」
 ロクトが会議室で提案した内容はこうだった。
 最近出現したドロップゾーンがあるが、誰もそこにいる従魔を倒しに行かない。H.O.P.E.の戦闘員は誰もが嫌がってそのゾーンに近づきもしない。
 そこで我々が主催となってボランティアとして、そのゾーンの従魔を掃討することによって、会社のイメージアップをはかるということ
 そしてその従魔掃討作戦を公衆の電波に乗せ生放送し、グロリア社の活動をアピールすること。
 そして、その番組には遙華を参加させボランティア感をさらに増すこと。
 まぁ、そこまではよかった、そこまでは。
 ただ従魔討伐に行くゾーンが問題だった。
「貴方の言っているところってスライムゾーンのことでしょ?」
 遙華が頭を押さえながら、ソファーにもたれかかった。
「その通り」
 遙華は唖然として言葉が出ない。
「そこに、私も行けっていうんでしょ」
「その通り」
 そのゾーンに発生するスライム従魔は、ステータスも低く、数が多いだけしか取柄のない従魔だが、他の従魔と違う特色がいくつかある。それ故に敬遠され続け現在に至るのだ。
「私、あんなところ恥ずかしくていけないよ」
 そううなだれつつも、遙華は会社の決定に逆らえない、すぐさまH.O.P.E.の依頼を受けてくれそうなリンカーの何人かに連絡を取るのだった

解説

 今回のミッションは、町全体にへばりつくスライム従魔を掃討することです。
 ちなみに目標数はありません。何体でも倒せますし、倒した数によってグロリア社から報酬が、あるかもしれません。
 ちなみにスライムの特徴はこちら
・攻撃方法は、体の一部を射出する物理単体攻撃のみ
・スライムの攻撃にあたると、特殊な効果を受ける
 ぬるぬる…… 体全体がぬるぬる、てかてかします
 すけすけ…… 服がすけます、大事な部分はなぜか透けません
 悪臭  …… とてもくさくなります
 はつねつ…… なんだか体が熱くなり、なまめかしくなります
ちなみにこちらの効果はフレーバーで戦闘に影響はありません、そしてどの効果を受けるかはPLの任意です。特に希望がなければランダムです。

 そして4ターン目になると街の全てのスライムが合体して、とにかくでかい球体のメテオスライムになるので、それを倒せばミッションクリアです。
 メテオスライムは攻撃力が高く、広範囲の攻撃が得意で、さらに特殊な効果も付与してくるので、とても厄介です。

 ちなみにこの戦闘風景は生中継されてますから、ぜひとも派手なアピールしていってください、一番視聴率を稼いでくれた人にもボーナスがあるそうなので、ボーナス目指して頑張ってください。

※度を越えた性描写やエロ描写はマスタリング対象です。少年誌に乗せられるレベルまで表現をおとなしくさせていただきますね

リプレイ

 日本国内某所、避難勧告がすみ、あたり一帯から人気がなくなった町、そこに続く大きな道路にテレビ局の車が集結していた。
「カメラの準備はできてるわね、スタート地点へ運んで」
 そして番組スタッフでもないのに、なぜか現場の指揮を執る『西大寺遙華(az0026)』そして『ロクト(az0026hero001)』彼女たちグロリア社がスポンサーとなって番組に協力しているのは確かだが、なぜここまでしているのかは謎である。
 そんなお祭り騒ぎの中、参加者は続々と到着する。
 たった今到着した黒い送迎車から降りてきたのは『門倉 純麗(aa0126)』と『ルキウス・リヴォルタ(aa0126hero001)』
 会場の真ん中で混乱している彼女をみつけ遙華は駆け寄って手を差し出した。
「あなたが門倉さんね、私が今回のミッションの指揮をとる、西大寺遙華よ」
 ほのかに顔を赤らめて、そっぽを向きながら純麗はおずおずと手を差し出した。
「門倉 純麗よ」
「ルキウス・リヴォルタです、今日はお世話になります」
 そっけない態度の純麗に対しルキウスは丁寧に握手を交わす。
「今日は番組の撮影ということで緊張してしまって、夜も眠れないくらいでした」
「あら、テレビに出るのは初めて?」
「ええ、しかも今日はボランティアということで特に気合を入れてきました、困っている人たちを助けましょう」
「っていうか番組って何よ、人の嫌がる事をするってのはいいけどなんで生放送にしたのよ!?」
 純麗がだれもが不思議に思っていたことを叫んだ。
「それは、私も知りたいわ」
 遙華は痛む頭を押さえ、純麗と一緒にため息をつく。
「こんなミッションに参加してくれてありがとう、実際こんなミッションに参加してくれる人がいなくて困っていたの。ただでさえH.O.P.E.本部はバタバタしているし、女性にはつらいミッションでしょ? 全然人が集まらなかったの」
「いまでは、女性の方が多いくらいよね」
 そう純麗があたりを見渡すと、数名の参加者を発見した。
 例えば、小柄な少女が二人市街の地図を見ながら作戦会議をしている、彼女たちも参加者で『シグルド・リーヴァ(aa0151)』と『セレシア(aa0151hero001)』だった。
 少し低い机に広げられた地図を背を折り曲げて見ている、シグルドもセレシアも話に夢中なのか、お互いの肩や手が体に触れる度に、胸が揺れている。
「どこを見ているのかな? 純麗」
「え、いや。その……」
 ルキウスが上の空な純麗の顔を覗き込むと、純麗はあわてて目をそらした。
 その視線の先では一人の執事が少女に化粧を施していた。
「ねぇエアリーズ、これは戦闘に必要なことなの?」
「いえ、戦闘に必要なのではなく、人前に出るために必要なんです、あくまで最低限ですが」
 執事姿の頭に角を持つ青年『エアリーズ(aa0595hero001)』はなれた手つきで、『伊東 真也(aa0595)』にメイクを施していく。
 真也自体はその化粧に抵抗せず受け入れているが、相変わらず表情は薄い。しかしまぎれもない美少女であり、彼女もまたいいプロポーションをしていた。
 もしこんな少女たちがスライムに蹂躙されてしまったらどうなるのか。
 純麗はそれを想像せずにはいられなかった。
「ええ、まさか私も女の子がこのミッションに参加するなんて思ってなかったわ。カメラワークには気を付けてもらわなきゃ」
 上の空の純麗に遙華が話しかける。
「ええ……。せめて危ないシーンは編集とか、って危ないシーンって何よ!」
「まぁまぁ、落ちついてください」
 シグルドが純麗をなだめる。
「報奨金が出るって聞いたから、それを狙いに来ただけよ、人助けじゃない、あたしは報酬の為なんだから!」
 フンっと鼻を鳴らして歩き去る純麗を遙華は追いかけた。
 そんな二人を眺めながら『御神 恭也(aa0127)』が突っ立っていると。
「お! 恭也ちゃんじゃないの! 元気してた?」
「久しぶりでござるな!」
 その後ろから二人の男がからんできた。
 ソフトモヒカンでいかにもチャラ男という風体の男『虎噛 千颯(aa0123)』となぜか精巧なホワイトタイガーの被り物をかぶった『白虎丸(aa0123hero001)』だった。
「千颯と白虎丸か。驚いた、こんなところで会うなんてな」
「俺ちゃんがいうのも何だけど……恭也ちゃんこんな依頼受けて良かったの?」
「ああ、まぁ、どうしてもと頼まれてな、仕方なく。それにしても、集まりが悪いと聞いて困難な内容だと思ったんだが……虎噛達が居て助かった」
「あれ? ところで噂の伊邪那美ちゃんは?」
「あそこだ」
 そう恭也が指刺した方向には、TVの機材が置いてあった。大型モニター、小型の飛行カメラ。大型のスーパーカメラや、よくわからない機材もたくさん置いてある。その中に『伊邪那美(aa0127hero001)』はいた。
「おい、伊邪那美。千颯と白虎丸だぞ!」
 その瞬間だった、男三人の傍らを一陣の風のように一人の少女が駆け抜けていった。いや正確には少女と、それに引きずられるように引っ張られる少女の二人。
「鈴音! 鈴音! あの箱の前に立つと『てれび』とかいう『からくり』に出られるのかぇ? ほれ! はよ行くぞ!」
「うわわわ、ちょっと待って」
 正体は『御門 鈴音(aa0175)』の手を引いた『輝夜(aa0175hero001)』だった。機材の山に到着した輝夜は機材をばしばし叩いてご満悦だった。
「叩いたらダメ! 壊れちゃう」
「これが、てれびなの?」
 そんな二人に、機材を興味しんしんで眺めていた伊邪那美が話かけた。
「ねぇ、結局『てれび』ってなんなの?」
 伊邪那美が言う。
「これを通じてわらわ達が、全国に生中継されるらしい、わらわ達の活躍が全世界に知られることになるのじゃ」
「すごーい、でもなんでみんなは私たちの活躍を見ることができるの?」
「それは、こう、四角い箱に映し出されるとか……」
「うつす? 箱の中に入ればいいの?」
「どういう状況を想像しているのかわからないけど。テレビっていう機械の箱の中に映し出されるのよ」
 鈴音が暴走気味のカグヤを抑えながら注釈を入れる。
「これも『てれび』で、機械の箱も『てれび』なの?」
「これは、『てれび』を映し出す機械じゃ、『かめら?』といったかの」
「テレビに映像を映すための機械だよ」
 鈴音が注釈を入れる。
「ん?」
「ん?」
 輝夜と伊邪那美は同時に首を傾けた。そこに恭也が助け船を出すべく現れる。
「お互い文明になじみのない相棒を持つと大変だな」
「ああ、えっと。はい、そうですね」
 鈴音は半歩あとずさる。
「む、どうした?」
 恭也が語りかけると。鈴音は顔を伏せてしまった。
「やーい、おどかしてやんの」
 千颯がフォローを入れる。
「すまないことをした」
「ねえ、あの『かめら』で『てれび』の中に入れるの?」
 その時、伊邪那美が恭也に近寄って服の袖を引いていった。
「何度も言うが、あのカメラで俺達の姿を撮ってテレビに映し出すんだ」
「ん? ボク達の形代を作って、てれびの中に送るってこと?」
「テレビの中の世界から離れてくれ……」

「はーい、それではみなさん。今からスタート地点についてもらいます。準備のできた人から車で送るから、のってね」
 
 ざわめく会場に、メガホンを使ってロクトが指示を出した、リンカーたちはそれに従い、車に乗っていく。 
「いよいよ始まるわね、気が重いわ」
「何を言ってるの遙華。あなたはまだ準備が整っていないでしょ?」
「え、もう武器の手入れはすんでるし、それに……」
「遙華も普段化粧っ気がない分、ここで純麗にしてもいましょう、エアリーズさんこの子もお願いしていい?」
「いや、私はいいって、ロクト! 離して、引きずらないで、自分で歩けるわ!」
 そして時刻は放送開始時刻を回る。 

  *   *


「……俺、相棒が銃扱うの初めてだから是非教えてほしいって、そう言われて張り切ってきたのに……」
共鳴した姿で立ち尽くす魔銃少女は銃を片手に茫然とその光景を見つめていた。。中世の騎士を模した服装、ひらりと翻る可愛らしい姿に、金色の髪と瞳。
 そんないつもの『卸 蘿蔔(aa0405)』が共鳴した姿だがいつもと違って体の主導権は『レオンハルト(aa0405hero001)』がもっている。
「おい、蘿蔔」
――……
 蘿蔔は何も答えない。だんまりを決め込んで、説明放棄の構えだった。
「これは、いったいなんなんだ!」
 そうレオンハルトの見つめる先にには虹色のぶよぶよした何かが大量にいた。ビルの側面に張り付いたり、道路の上をうねうね動いたりしている。
「説明しろ、蘿蔔」
 その瞬間だった、レオンハルト、いや『魔銃少女レモン』の耳にかけられたインカムから声が響く。遙華の声だった。
「状況の再確認をしておくわ」
 レモンはそれにうなづいた。ぜひとも状況を説明してほしい、そんな気分だった。
「まず敵は無数のスライム。数は不明」
「スライム?」
「敵の戦闘能力は脅威ではないけれど、彼らの攻撃によっては様々な影響、そうバッドステータスが降りかかることがある……」
「質問だ遙華! バッドステータスってなんだ、それは戦闘に支障が出るレベルなのか」
「そんなことはないわ、ただ」
「ただ?」
「ヌルヌルになったり、体が火照ったり、そんな感じよ」
「な……」
 魔銃少女レモンは絶句する。
「そしてこれは全国に生中継されているから、まぁ節度を保った行動をお願い」
「生放送だと……」
「それでは、ゲームスタート、後武運を」
「は、謀ったな蘿蔔!」
 そんな叫びが街中にこだました。そしてその呼びかけに蘿蔔は答えない。
 そして参加者は一斉に街中を目指し進軍を開始した。
 一瞬遅れてそれにレモンも続く。
「くそ、こうなればやけだ。勝負を前に逃げるようなことはしないし、やるからには勝ちに行く!」
 坂を駆け下りながらとりあえず視界に入ったスライムたちを狙う。トリオで三体まとめて打ち抜いた。
「へへっ……俺の弾を避けられるかよ!」
 素早く身を翻して次弾を装填する。そして曲がり角を曲がり、大きな通りまで直進、そうしようと思った瞬間。覆いかぶさるように、スライムが落ちてきた
「うおっ!」
 それにレモンは頭から浴びることになる。
 あわててスライムの中から抜け出すレモン。幸いダメージなど無いに等しかったが、体がねとねとして気持ち悪い。
「……と言いたいところだが、俺もスライムの攻撃を避けられなかったようだ」
 そう余裕ぶってカメラ目線。
 ちなみに参加者一人に二台程度、飛行式カメラがついて回ることになっており、参加者は常にカメラを意識して行動するように促されていた。
――情けないですね。
「蘿蔔、やっと反応したな、どうなってやがる、あとで覚えとけよ」
「その前に自分の心配をした方がいいですよ、ほら見てください、服を」
 蘿蔔にそう促されレモンが自分の服を見ると、なんと透けはじめていた。
「なんだこりゃ!!? 革なのに何で透けるんだよ」
 それもワイシャツを水にぬらしたという感じではなく、ガラスのように透明になっていく。もはや下着丸出しである。
「これはまずい、お茶の間に、蘿蔔の体が」
 しなやかな背中のライン、なだらかな胸。そして細い腕、それらすべてが白日の下にされされるが。
 しかしレモンはそんなことは気にしなかった。
 見せても恥ずかしい体をしていない、だから大丈夫、そう結論付け戦場を駆け抜ける。
 やがてレモンは開けた場所に出る。
 その中心で炸裂音が鳴り響いた。
 見れば真也とシグルドが背中合わせで、群がるスライムと戦っていた。
―― う……植物の敵ですわ、一掃しますよ、シグルド
「ええ、まかせて」
 そうセレシアが的確に指示をだし、 シグルドはスライムの粘液攻撃を屈んで回避した、胸が地面につくほどに身を低くすると、その上空を真也の握ったツヴァイハンダー が通過する。
 それが襲いかかろうとしていたスライムを弾き飛ばし。あたりに虹色の滴が飛び散った。
―― 近くに他のスライムがいるから、気をつけて。
「うん」
「わかった」
 セレシアの指示にシグルドと真也が簡潔に答える。
 三方方向からの同時攻撃。
 その一発目を真也は背面とびの要領で回避する。無駄な脂質が一切ない美しい背を思いっきりそらし、胸を突きだして空中で一回転を決める。
 残る二発目をシグルドが武器ではじく。しかし飛び散ったスラムが服につき、衣服が透けていく。
 そして地面に着地した真也は飛んできたスライムの粘液ごと、スライムを叩き斬る。
 勢いよく左右に爆ぜたスライムの粘液が地面に黒い染みを創る。
「次はどこ?」
 真也は早くも次のスライムを求め目を泳がせる、その瞬間。
 スライムがビルの上から飛び降りてきて、真也の肉体にその触手を伸ばす。
「あぶねえ!」
 その間に入ったのはレモン。
 その銃撃でスライム空中で木端微塵にした。
「大丈夫か、真也!」
「うん、ありがとう」
―― 大丈夫ではないですよ、上を見てください!
 その時セレシアが叫んだ。はじかれたように真也とレモンは上を見る。
 そこにはざっと十体を超えるスライム降ってきていた。
「うわ!」
「あ……」
 真也は回避をあきらめ、茫然とつぶやき、レモンは叫び声を上げようとした瞬間。それに飲み込まれた。
 スライムの雪崩、当然近くにいたシグルドも巻き込まれることになる。
―― 大丈夫ですか、みなさん!
 そうセレシアが声をかける、幸い三人とも大したけがはなかった、しかし。
 様子がおかしい。
 シグルドが自分の体をきつく抱きしめているのだ。見れば肌がピンク色に染まり、息が荒い。
「ん……なんか熱い……でもなんか高揚する……」
「ちょ……っこりゃないぜ」
 それと同じ状態にレモンも陥っているようだった。両足を投げだし、つらいのか目を閉じ息をすることだけに集中している。
「……っ。ハァッ」
「くっ。まずい」
 それをヌルヌルになりながら真也が見ていた。
 服が肌に張り付き、腰のラインや胸のラインがくっきり見えてしまっている。それだけならまだよかったが、だんだんと服が透けてきている。
 白い下着が、徐々にさらされていく。
―― はずかしくないんですか?
 エアリーズが問いかける。
「べつに、なんで? シグルドだって恥ずかしがってないよ」
――組ませる人間を間違ったのかもしれない……
 ちなみに、先ほどふってきたスライムはと言えば。あれはもともと別の人間を追いかけていたようで、今はそっちに夢中だった、そしてなぜか今までこの大通り付近にいたスライムも信じられない速度でその人物を追う列に加わっている。
 その人物とは『雨流 明霞(aa1611)』と遙華だった
「なんで、私が追っかけられなきゃいけないのよ!」
明霞が叫んだ。
「わからないわ」
 それに絶望した顔の遙華が答える。
「数が少なければ、影を縫って止められるのに」
―― シャドウルーカ―は便利な能力を持っているのですね
 そう明霞の英雄である『火神 征士郎(aa1611hero001)』が答える。
 二人は走りながら細かい路地を疾走する、やがて二人はT字路に行きあたる。
「遙華ちゃん、あなたどっちに行く?」
「私は左で」
「じゃあ私は、上に!」
 直感的な判断だったが、スライムは上下の運動に弱かった。全てが遙華を追っていく。
「え! ずるい!」
 そんな悲鳴をよそに明霞は一人ため息をついた。
「前回のTV番組で泥酔した姿を同僚に見られたのに、今度は何!? あられもない姿を見せられる可能性があるの!? じ、自主退職の危機だわ下手すると……」
――今回は明霞にとって下手すると恥ずかしいとかのレベルを超えてしまいそうだね、ご愁傷様だよ……
 そう征士郎が声をかけた。
「絶対あの攻撃だけは回避しないと」
 一休みを終えた明霞はあたりを見渡した。
「さてここからはスライム狩りを頑張りますか、数によっては報酬が出るみたいだからね、頑張るわ……」
 しかしそんな明霞の目論みは甘かった、いつの間にか囲まれていた、周囲を虹色の物体が埋め尽くす。
「どんだけの数がいるのよ」
「ルキウス、出番よ!」
 その時だった、明霞がスライムたちの相手をしかねていると、一人のルキウスが現れ武器を構えた。
「うら若き乙女に、なんてことを、私が相手をしましょう」
 そして明霞の隣にいつの間にか純麗が立っている。
「別に助けに来たわけじゃないよ、ただ倒しやすそうな敵がいるなってだけ」
「……え、共鳴しなくて大丈夫なの?」
「大丈夫だと思うわよ」
「いいのです! まずは我が主の盾となり小手調べを」
 そう手にした剣を振るうがスライムには全く通用しない、それどころか返り粘液でどんどん服が透けていく。
「もういいわ、男の透けた服とかやっぱないわ。共鳴しましょう」
 共鳴を開始すると純麗はより中性的なフォルムに替わる。槍と盾を構えカメラにアピールした。
 そしてスライムを槍で吹き飛ばす。
「助けてくれてありがとう。私たちも!」
 明霞は素早く別のビルに飛び移り、体を縦回転させる、そして渾身の力を込めて攻撃を放つ、が。
 一撃では葬れず反撃を受ける。
「ちょ、透けてブラが」
 まるで霧のように噴出された粘液が明霞の服をどんどん透かしていく。
 そしてその上着に隠れていた真実を、露わにする。
 そう、今日の明霞はピンク色だった
 それを見てフリーズする純麗。
――間に合わない、盾で防げ。
 直後ルキウスが指示を出した。
 反射的に盾で防ぐ純麗、しかし飛び散る粘液が服を透明にしていく。
「純麗ちゃん、大丈夫?」
「こっち見ないで!」
 さて、他の場所でもスライム狩りは続いている、例えばスライムの群に襲われた遙華だったが、あの後すぐに助け舟が出ていた。
 それは遙華が走りつかれて、もう休みたい、別に透け透けになってもいいから休みたい、そんな風に思い始めたころだった。
「誰か! 助けて」
 その時、鈴音がスライムの軍隊にたいして怒涛乱舞を決めた。大量のスライムを粘液に変えた。。
「早く行ってください」
 遙華はすでに何度か攻撃を受けているのか服のところどころが透けている、それを見かねて鈴音が盾になる。
「感謝するわ、と言いたいところだけど、無理みたいね」
 しかし後続の敵がまだまだおり、その一斉攻撃が二人を襲う。
「やだっ……! 何これ……ねばねばして気持ちわるい……!」
 鈴音が叫ぶ。
「どうやらちょっとやそっとじゃ落ちないし、なぜか乾かない仕様みたいね。まいったわ」
 半ばあきらめた表情で遙華がそう言った瞬間。スライムの群がまた両断される。
 恭也が怒涛乱舞で切り刻んだのだ。
「大丈夫か?」
「は、はい、なんとか。あ、先ほどはあの、失礼を」
 鈴音が頭を下げようとした瞬間、生き残っていたスライムが死に際に攻撃を仕掛けてきた。それがべっとりと鈴音の胸部分に直撃。
「ひっ…………見ないで! 見ないでってばぁ~!」
 鈴音は武器をさくらんのあまり武器を振り回す。
「安心しろ、俺はロリコンでは無いからな」
―― それはそれで傷つくよ…… あれ? 千颯君だよ、どうしたんだろう
 伊邪那美が促す方向を見ると胸を押さえ、壁にもたれかかった千颯がいた。
「恭也ちゃん、こんなところにいたの、探したよ」
 明らかに様子がおかしい。
「あれ……なんだかちょっと熱が……。はぁ……」
「どうした白虎丸、どうなってる」
――おれにも何が何だか。おい……千颯大丈夫か?
 そして恭也にしなだれかかる千颯。
「あっ……駄目……俺ちゃんに酷い事するつもりでしょ……エロ同人……みたいに……エロ同人……みたいに……」
 はだけた胸に、汗ばんだ肌、そしてうるんだ瞳に映るのは恭也。
「そのケは無い! 悍ましいから正気に戻れ!」
 そう軽く頭をはたく。
「は、俺ちゃんいったい何を」
「わわわ、囲まれてます」
 鈴音は半狂乱状態から戻ったらしく。胸を押さえながら武器を構えている、それを見かねた恭也が上着を貸した。
「落ち着け、ここを突破してからどうするかを考えよう」
 そして四人は武器を構えた。
 その瞬間だった、スライムたちは警戒態勢を時、宙に浮いた。
 「あれを見て!」
 信じられない光景が全員の目に移った。
 何と、残ったスライムたちが町の中央に集結し始めた。まるで何かに吸い寄せられるように空中の一点に集まり、そして徐々に大きな塊になっていく。気が付けば、見上げるほど大きなスライムになった。 
「へー、奥の手か、いいね。なんか、楽しくなってきた!」
 そう明霞がインカム越しに全員に語りかけたその瞬間、巨大なスライムがタプンと音を鳴らして動いた。
 下から上に伸び上がるように、動きそして、発射されたスライムの一部が、ダパンと派手な音を鳴らして町のどこかに落下する。
 直後インカムの向こうから声が聞こえた。
「うわー……これは地味にきつい……」
「く……臭い! 臭い! 臭いでござる!」
「白虎ちゃん嗅覚が人よりもいいから……」
「千颯!何とかするでござる!」
「臭い!恭也、後生だから今すぐリンクを解除するか、体を洗って来てよ」
「敵を殲滅するまで我慢しろ。お前の勝手で離脱する訳にはいかんだろ」
「こんな依頼、もうヤダ~」
 恭也と伊邪那美、千颯の白虎丸ペアの悲鳴だった。
「私もこんな仕事もうやだ……」
それに明霞が同意する。
「あの攻撃を見る限り……。固まっていたら危なそうね」
 そう真也が言う、その声に、ある程度固まっていた参加者は散開した。
 そして巨大なスライムの第二回目の攻撃がさく裂する。
 狙いはシグルド。
「きゃっ」
 残念ながら直径数メートルの滴を回避するのは難しい、シグルドは直撃を受け、ぬれぬれのぐちょぐちょになってしまった。
――レモンちゃん……右。右でお嬢さんが困ってますよ。ほら……ちゃんと見て?助けてあげないと……
「俺の心の中の悪魔がなんか言ってるけど……何も聞こえない。見たくない!見たくない!」
 すかさず、レモンはフラッシュバンで敵の視界、およびさまざまなものの視界を遮る。
「今だ! 早くっ! 早くっ!! 終わらせてーっ!」
 それを好機と見た明霞がライヴスブローで切りかかる。
 ブラッドオペレートで千颯が追撃を加えると、その巨体が震えた。
「もう、はやく帰りたい!」
 フルンティングを振り回し、構え。オーガドライブで鈴音が切りかかる。
「やらしー目で見てたりなんて、ちょっとしかしてないんだからぁっ!」
 純麗がライヴスブローで穿ち貫くと、スライムが苦しむように悶え。
 シグルドもそれに続く。
 真也の銀の弾丸がその体の中心を貫き、そして。
「これで、終わりだ!」
 恭也がビルから飛び、メテオスライムの頂点からオーガドライブで真っ二つにそれをかち割った。
 戦闘終了。
 巨大化したスライムは爆発四散。あたりに粘液をまき散らして。そしてこの町からすべての従魔が掃討された。

   *   *

 そして番組の最後には表彰式が行われた。
 最多撃破数は御神 恭也
 最高視聴率は伊東 真也とシグルド・リーヴァが輝いた。
「やはり、乳か」
 遙華はそんな二人に賞金を手渡しながら、白い目をしてつぶやいた。
 あとでロクトに怒られていた。
「恭也、体を洗うまでボクに近づくのは禁止だからね!」
 共鳴を解いた伊邪那美は早速恭也がじりじりとはなれ、機材の陰に隠れてしまう。
「はいはい、スライムで汚れた人は一列に並んでくださいね」
 セレシアがそう、リンカーたちを集め。シグルドがクリアレイで悪臭やすけすけの効果を解除していく。
「御苦労さま」
 たいしてその列に加わらず、設置された長椅子に横たわっているのはレオンハルトだった。
 その隣に蘿蔔が立っている。
「……もうすんなよ?」
「それはちょっと約束できないです……」
 そんな蘿蔔の目は、今日のハイライトと称して流されている戦闘風景に注がれていた。
 それを見てはしゃぐ幼女が二人
「おぉ! 見よ鈴音! ここにわらわがいるのに、箱の中にもわらわがおる!不思議じゃの~面白いのぉ~」
「私はまだここにいるのに、なんであそこに恭也」がいるの?
 伊邪那美が輝夜に問いかけると、輝夜は首をかしげて笑った。
「わからん」
 その隣で鈴音は頭を抱えていた。
(……生放送でこんな姿晒して……もうお嫁にいけない……西大寺遙華その名は覚えたわよ!)
 その隣で明霞も頭を抱えている。
「な、なんで中継なんてしてくれやがりましたの!? あぁ……。同僚がTV見てませんように……」
「あ、あはは……」
 征士郎が明霞に羽織をかけ苦笑いを浮かべる。
 そんな風にリンカーたちが失ったものは大きかったようだが、視聴率はかなり良かったらしく。この結果にグロリア社は大喜びしたようだった。
 

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
  • 腹ぺこワーウルフ
    シグルド・リーヴァaa0151
  • エージェント
    伊東 真也aa0595

重体一覧

参加者

  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • エージェント
    門倉 純麗aa0126
    人間|17才|女性|防御
  • エージェント
    ルキウス・リヴォルタaa0126hero001
    英雄|19才|男性|ブレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 腹ぺこワーウルフ
    シグルド・リーヴァaa0151
    機械|14才|女性|回避
  • 財布を握る妖精
    セレシアaa0151hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 遊興の一時
    御門 鈴音aa0175
    人間|15才|女性|生命
  • 守護の決意
    輝夜aa0175hero001
    英雄|9才|女性|ドレ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • エージェント
    伊東 真也aa0595
    機械|20才|女性|生命
  • エージェント
    エアリーズaa0595hero001
    英雄|28才|男性|ソフィ
  • 酒豪
    雨流 明霞aa1611
    人間|20才|女性|回避
  • エージェント
    火神 征士郎aa1611hero001
    英雄|18才|男性|ブレ
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