本部

【終極】連動シナリオ

【終極】悪鬼羅刹

紅玉

形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
5人 / 4~8人
英雄
5人 / 0~8人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2018/11/23 20:23

掲示板

オープニング

●堕ちる定め
 “これは、運命だったのだろうか?”
 社長室の窓は割れ、色鮮やかな花弁が豪華なテーブルやソファーを壁に叩きつける。
 目の前に現れた顔を見ると、英雄と男は素早く共鳴して十文字槍を手の中で回した。
 純粋な力と力がぶつかり合うと、爆発に近い音が響いた。
「成程。未熟ながらも“お前”が“女王”となったのだな?」
 口元を吊り上げた男の視界には、黒髪を靡かせ紅い着物を着た少女『春君』であった。
『なんじゃ、腕が落ちようじゃな……真田 豪雪』
 目の前に共鳴姿の男『真田 豪雪』に、春君は嘲笑うかの様に答えた。
『ほれ、コレが欲しくて堪らないんじゃろ?』
「くれるというのか?」
 春君の手の中に現れた桜、梅、蓮が咲いている“ソレ”を見て、豪雪はただ睨みながら低い声で言った。
「春君を倒すぞ! その前に先に一般人である職員は避難するように連絡をとれ!」
 能力者である職員達が社長室に駆け込んでくると、豪雪は視線を反らさずに能力者である部下達に指示を出した。
『冷徹とは聞いておったのじゃが、意外と優しい所もあるんじゃな』
 豪雪の指示を聞いた春君は、桜で作られた竜『桜竜』から降りると豪雪を見つめた。
『冷徹とは聞いておったのじゃが、意外と優しい所もあるんじゃな』
「当たり前だろうに……何のための施設だと思う。花を統べる女王は人がなれるのか? そうすれば自ずと王に関しての情報が得られるからな!」
 と、吠える様に言うと豪雪は、鋭い槍さばきで春君を攻撃しようとする、がーー……

 英雄のスレイプニルの意思が、豪雪の心臓を掴むような感覚で支配しようと蠢く。

 部下達が、豪雪が動けないのを見て各々の武器を春君に向かって降り下ろした。

 一瞬の、間。

 桜竜が咆哮すると、部下達の心に恐怖を植え付けた。
 足が自分の物じゃないかの様に動かなくなり、後ろから豪雪ではなくスレイプニルの声がしたかと思うと……視界は反転し、地面と広がる赤い水溜まりが視界に入ると考える暇をもなく、蝋燭の火が消えるかの様に意識は無くなった。
『はっ、脆いなぁ……ニンゲン』
 スレイプニルは倒した部下達を無造作に積み上げ、屍の山にドカッと座り込んだ。
『成程、ここまでとは……予想外じゃな』
 春君はスレイプニルを横目で見ると、桜竜に乗りその場を去った。
『ショータイム、だ』
 社長室にあったロックを解除すると、スレイプニルはイギリスの港町に従魔を解き放った。
 豪雪の指示により、会社の周囲には一般人は全員避難済みであった。
『つまらぬ。ならば、コチラから動けば良いという事であろう?』
 と、笑みを浮かべながら町を見下ろすと、スレイプニルは呟いた。
『さぁ、殺戮の時間だ』
 半壊した社長から飛び出し、地面に足を着けるとスレイプニルは笑い声を上げた。

●倒す定め
『皆さん、お集まりいただきありがとうございます。本日、依頼の案内をするのはアーベントです。よろしくお願いします』
 と、言うとルチア・アーベント(az0137hero001)は優しく微笑んだ。
『イギリスで活動中のヴィラン組織Clematisが愚神の襲撃され、壊滅状態になった上にトップの真田 豪雪が王の影響かは不明ですが……邪英を通り越して、ほぼ愚神となってしまいました。しかも、実験として捕獲していた従魔達は港町へと放たれてしまい大変な状況です』
 ルチアはアナタ達に視線を向けながら言う。
「……愚神と成り果てた真田 豪雪と、逃げ出した従魔の討伐って事だ。仕事としてはウマイぞ」
 興味無さそうに颯 鋼迅(az0137)はタバコをくわえた。
「相手が、相手だよ。準備万端にして挑もうね。手が欲しかったら気軽に言ってね」
 笑顔で圓 冥人(az0039)はアナタ達に言った。

解説

【目標】
愚神『悪鬼羅刹』と従魔の討伐

【場所】
イギリスにあるとある港町(夕方  

【一般人】
警察や名も無きH.O.P.E.のエージェントが避難誘導をしてくれています。

【敵】
愚神『悪鬼羅刹』1体
ケントゥリオ級。
真田 豪雪と英雄スレイプニルが共鳴した、かなり長身で筋肉質のまるで鬼の様な姿をしている。
容姿に似合わぬ程に素早く、槍をメインに近接攻撃を好む。
能力はドレッドノート相当。


従魔『研究体』20体
ミーレス級。
全長3~4mの様々な種族を組み合わせたキメラ。
人形メイン、飛行系、海洋系、陸の獣系の4種がそれぞれ5体となります。
人形:平均的な能力
飛行系:回避、命中寄り
海洋系:魔法が得意
陸の獣系:体力が多く、物理が得意

【NPC】
圓 冥人(az0039):要請があればお手伝いします。
颯 鋼迅(az0137):美女が居れば喜んで手を貸します。

リプレイ

●壊滅と絶望
 現場に急行したエージェント達の視界には、戦闘が起きた時の衝撃で瓦礫の山となったビルだったモノ。
 モノを扱う様に、あるいは消えゆく命の灯火が消える前にライヴスを貪る、ゲームに出てくる怪物“キメラ”達は理性を失った瞳でコチラを見る。
「真田豪雪って聞いたことある気がするね」
 サンドリオンを探す餅 望月(aa0843)は、アメシストの様な紫の瞳を細め、冷たい風に髪を靡かせた。
『愚神にされちゃうってことは元に戻せるんじゃないかな』
 小さく首を傾げる百薬(aa0843hero001)が前向きに言う。
「うん、帰ってこない子たちのためにも、信じてできる事をやろう。圓くん、何か情報ある? たぶん女王とか春君とかの一味だよね」
 と、圓 冥人(az0039)の裾を引くと、望月は問う。
「みたいだね。花壇や花を付ける木が無いのに花弁が」
 ざり、と音を立てて靴をスライドして退けると、白、桃、紅と色鮮やかな花弁が地面に落ちていた。
「春君だろうけど、何故襲って壊滅させる必要があったのかは分からないよ」
 望月の問いに、冥人はゆっくりと首を横に振る。
「冥人さん、颯さん、従魔の討伐をお願いしたいので、一緒に行っていただけないでしょうか?」
 花邑 咲(aa2346)が二人の元に駆け寄ると、望月は冥人の手を握り締めながら頷いた。
「でもとりあえず従魔退治から一緒にやろう、生還しないと意味がないよ」
 ただ危惧していた。
 花を統べる女王の前で、誰も阻止出来ない程に狂った冥人が、また同じ過ちを犯さぬ様に。
「そんな美人に言われたら、断るのは男が廃るってもんだ」
 サングラスを外した颯 鋼迅(az0137) は、咲の手を取ると嬉しそうに答えた、が。
『お触り厳禁よ。ただでさえ、美人に弱いのだから……基本は私がやるから安心してよね』
 優しく微笑むルチア・アーベント(az0137hero001)は、共鳴すると使いなれた剣を腰に携えた。

「あのClematisも、最後は意外とあっけなかった気もするね」
 破壊されたビルのコンクリートの残骸を見て九字原 昂(aa0919)は、眉をひそめた。
『逆に言えば、アレが簡単に壊滅するような事態が起きたってことだ』
 煙草から口を離し、煙を吐くとベルフ(aa0919hero001)は冷静に数時間前に起きたであろう事を口にした。
「どちらにせよ、目の前に居るのは気を抜いて良い相手ではないね」
 昂は愚神スレイプニルを見据えると、震える拳を握り締めると落ち着いた声色で言った。

(早さと攻撃力のあるドレッドノートだった愚神かぁ。不謹慎かもだけど、わくわくする。だってまるで私達みたいじゃない? 戦場を自由に動く機動力、雑魚を蹴散らし道を開く攻撃力)
 向日葵の様な金から青薔薇の様に青い髪を靡かせ雨宮 葵(aa4783)は、愚神スレイプニルを見てニッと口元を吊り上げた。
『……リーチの差、どうする?』
 黒い服に白のフリルが付いた服装の燐(aa4783hero001)がスレイプニルを見据えると、葵に問う。
「懐に入り込んじゃえばこっちのもの!」
 共鳴し、蒼い翼を広げると葵は妖刀「華樂紅」を手にして、飛ぶように駆け出した。

●研究体の従魔達
 ぐちゃぐちゃだ、と誰かが呟いた。
 本来ならば、カラス天狗みたいな姿だとか、ケルベロスみたいな架空の生き物に似てたりするのだが、これは誰かが手を加えた“キメラ”としか言い表せなかった。
 とりあえず、何でもいいから良い部分をくっ付けただけで、中には人を使ったのではないか? と思う従魔も居た。
「颯さん……今はアーベントさんだったね。信用できそうだね、死なないように自由に上手く立ち回ってね」
 共鳴姿の望月は、聖槍「エヴァンジェリン」を手にすると隣に居る冥人に視線を向けた。
「ひとりで一体ずつ退治できれば早いですが、ここは確実に行きましょう」
「了解。……本当、落ちたな……豪雪」
 望月の言葉に答えると、冥人は静かに呟いた。
「今の私達がどこまで出来るのか、真向勝負!」
 葵は駆け出すと、陸の獣系に向かって妖刀「華樂紅」で斬りつけた。
 従魔を一刀両断すると、燐が『……強くなってる……!』と感嘆の声を上げた。
「まだまだ、従魔を倒しても大将がいるからね!」
 これは準備運動、と言わんばかりに葵はまだ残ってる従魔に向かって駆け出した。
「あの子に会えるまでは、あたしは倒れるワケにはいないんだよね!」
 だらしなく開いた口からダラダラと涎を垂らす従魔が、望月に飛び掛かると聖槍「エヴァンジェリン」を手の中で回す。
 神々しい輝きを帯びた白銀が、無慈悲に裁きを下し、手にしている者に勝利の祝福を与えた。
「解放、させたよ……苦しかったよね」
 冥人は毒で息絶えた従魔が海面にゆらゆらと、風に揺れ、無害なライヴスと化して消えてゆくのを静かに見つめた。
「これなら余力を充分に残したまま、愚神と戦えるね」
 葵の妖刀「華樂紅」が従魔を斬った事で朱く、朱く染まり、刀からなのか? 従魔からなのか? 判別つかない程に、刀身から朱の液体がしとしとと地面に落ちて、黒いシミを作っていた。

『アレは先に落としてしまった方が良さそうですね』
 ブラッドリー・クォーツ(aa2346hero001)が低く唸ると、人型の従魔から腕をもぎ取り、頭に翼を付けて足はカメレオンの様な頭部が生えていたりと、嫌な意味でバラエティーに取り揃えている従魔の『研究体』。
「飛んでる子たちは少々厄介ですからねぇ……」
 共鳴した咲は、小銃「S-01」の銃口を飛行系の研究体に向け、トリガーを引くと弾丸が射出された。
 飛行系を相手に出来るのは、咲だけしかいないので彼女は威力よりも手数重視で、地面に落とす事も考えて狙う。
『咲さん、ブラッドリーさん、アナタ達に近付く従魔は倒しますので、空の従魔はお任せするね』
 と、背中合わせでルチアは言った。
「はい、頼らせていただきます!」
 凛とした声で咲が答えるのと同時に、ルチアが迫り来る従魔に向かって剣を振り上げた。
『咲、風切羽を狙って下さい。ルチアさんが居るとはいえ……』
 やっと墜落した従魔を倒し終えたのを聞いたブラッドリーは、手数だけでは時間が掛かると察すると、咲に助言をしようと声を上げる、がーー……。
『咲っ!』
「あっ……!」
 ブラッドリーが声を上げるよりも早く、咲が気が付いた時には飛行系の従魔達が滑空し、大きな口を開けて食らいつこうとした。
 しかし、寸前の所で女郎蜘蛛の糸が全身に絡み付き従魔は、咲の目の前でドンと地面に落ちた。
「この距離でしたら」
 咲は風魔の小太刀を手にし、後続の従魔に斬りつけると素早く距離を取るために後ろに跳躍した。
「冥人さん、コッチに来ても良かったのですか?」
「向こうは、終わったら従魔の相手をお願いされたよ」
 咲の問いに冥人は肩を竦めながら答えた。
「愚神の足止めしている九字原さんが心配ですから、早く片付けて援護に向かいましょう」
 従魔の風切羽を切り落とすと、咲は風魔の小太刀を斬りつけた。

●悪鬼羅刹
『足止めすれば良い、だが……これは』
 ベルフが低く呻いた。

 これは、悪い夢ではないのか?

 愚神は“何かの肉”を当たり前の様に貪ってた。
 人が、お菓子の袋に手を突っ込んで口に運ぶかの様に。
『この男は、“悪鬼羅刹”と呼ばれてたみたいだが、我も肉は好みでな』
 スレイプニルは昂と葵を横目に貪る。
 昔、ヴラドという領主が敵国の兵の前で、敵の兵を串刺しにした真ん中でステーキとワインの食べたという話の様に。
「Clematisで、何があったのですか?」
 スレイプニルの動きに注意しつつ、昂は壊滅した疑問を投げた。
『雪ん子に聞かなかったのか? 知らないなら、我から言う事はない。一番の原因としちゃぁ、豪雪の自業自得ってヤツだ』
 トントン、と胸を指先で叩きながらスレイプニルは、豪雪に対して嘲笑っていた。
「何故、貴方は暴れているのですか?」
『知らん』
 昂の問いに、スレイプニルは呟いた。
「知らない? 何か目的があって……」
『ただ聞こえた声に、我は本能で従っただけだ! 王の為にとか何とかってな!』
 昂の言葉を遮り、スレイプニルが吠える様に言い、口元に付いた血を拭うと地面に刺していた槍を手にした。
『これ以上は聞き出せないようだな』
「そうですね。一人で可能な限り、足止めをするのが僕の役目すから」
 ベルフの言葉に頷きながら、昂は白夜の空のような光を常に放つ白色の刃と、闇のように黒く塗られた鞘と柄が特徴的なモノクロの刀『白夜丸』を抜刀した。
「……っ!」
 スレイプニルは、斬りつけられる寸前に刃を手で掴んで止めると、槍を風が起こる程に強く突き出すが、槍の先は鼻先で止まった。
『豪雪の身は、とても不便だ』
 腕は二本しかない、槍をもっと伸ばすには技術が必要だが、スレイプニル自信には豪雪の様な細かな技は出来ない。
「洞察力には自信がありますので」
 口元を吊り上げると昂は、掴んだ手が緩んだ瞬間に白夜丸を素早く引き抜くと、太陽の光で煌めく白刃が美しい残像を描く。
 白刃一閃。
『はっ……しかし、その太刀筋は弱々しいな』
 スレイプニルが鼻で笑うと、身体を捻りゴウッと風が唸り声を上げながら回避した。
(退けない、背中を見せたら、一気にやられてしまう)
 昂が雨の如く突く槍を避けるが、刃が近いとカマイタチが起きる程の力強さなのだろう。
 かすり傷が身体中に出来て、とうとう片膝を地面に着けた。
「助っ人登場! 私の相手もしてくれるかな? あっちは雑魚ばっかりで退屈だったんだよねー」
 スレイプニルと昂の間に元気よく入り込んだのは葵だ。
 明るい声で言うのに対し、彼女の瞳は強敵と戦える事にぎらぎらと燃えていた。

●事実と無気力さの先
 従魔を倒し終えたエージェント達は、スレイプニルと戦う昂の元へと集まる。
「大丈夫?」
 望月が昂に駆け寄り、ケアレイで傷を癒す。
「少し、休んでて下さい」
 と、言ってチョコを差し出すのは咲だ。
「ええ、体力が回復したら直ぐ加勢します」
 仲間から離れると昂は、瓦礫の山に背を預けると貰ったチョコを口にした。

『久しいな、女王の元許嫁殿よ。望んだ結果は得られたか?』
 冥人を見て、スレイプニルは嘲笑いながら皮肉を口にする。
 しかし、冥人は答えぬ。
「挑発する暇があるなら相手をしてよ!」
 葵がスレイプニルを妖刀「華樂紅」で斬りつけるが、刃を掴んで地面がへこむ位に力強く叩きつけた。
「あんなヤツの話なんて聞いたらダメだよ!」
 と、望月は冥人に言うと、聖槍「エヴァンジェリン」でスレイプニルを貫いた。
「豪雪さん? どうして愚神みたいな姿になっているのですか」
 望月は声を上げた。
『憑いている英雄が悪いみたいだよ』
 豪雪は既に飲まれしまい答えれないのを察した百薬が答えた。
「リンカーの共鳴はどちらかが支配したりされたりするものではありません」
 と、望月は一握りの希望を手に、豪雪に届くように大声で言った。
『我は、愚神スレイプニルぞ』
 地面が揺れる位に槍で大地を叩き、スレイプニルの咆哮が辺りに轟いた。
「くらえ! 今の私達の最大パワー!」
 葵はチャージラッシュでライヴスを充填し、疾風怒濤で妖刀「華樂紅」を激しく、疾風の様に素早く連続攻撃を繰り出した。
『ぬっ! ……うぅっ……』
 攻撃を槍で受けて軽減したものの、スレイプニルはうめき声を上げながら後ろに後退した。
「息を吐かせる暇を与えませんよ」
 咲が射手の矜持で命中精度を上げ、テレポートショットでスレイプニルの死角に弾丸を瞬間転移させ、撃ち抜いた。
『やはり、従ったのは正解だったようだな……面白い! この戦いは久方ぶりに血湧き肉躍る、本能が目覚める様だ!』
 地の底から聞こえるかの様に錯覚する程の咆哮が、エージェント達の耳に響きわたる。
「結果は得られなくとも、自分を取り戻したよ」
 静かに雪が降る音もない雪原に響くかのような声で、冥人はH.O.P.E.制式コートの裾を翻し、眼帯を外してスレイプニルを2つの緋色の瞳で見つめた。
「全力でも立っていられるなんて、まだまだ楽しめそうだね!」
 唇を舐めると、葵の瞳は更に光を増して楽しそうな声で言った。
「出来る限りの事をして、貴方を倒してみせます」
 猫騙で一瞬怯ませると、昂は距離を詰める。
『愛と癒しで爆発させて』
「豪雪さんに戻す!」
 百薬の言葉に続いて、望月が声高らかに言う。
『笑わせるな……この世界は、王のモノだ。人は我らのーー……エサである』
「違います……この世界、いいえ、生きる人達と半身や友人、もしくはそれ以上である大切な人の為に世界はあり、守るべき世界なのです」
 咲が凛とした声でスレイプニルに言った。
 従魔や愚神に家族、友人、故郷等を奪われた者。
 それは、英雄達も同じで、2度と会えぬかもしれないと言われたが、同じ悲劇を繰り返さぬ為。
 同じ悲劇で悲しむ者を出さぬ為。
 それぞれのエージェント達が抱えた思いを胸にして戦う。
「だから、あたしは諦めないよ! 戦うのも、守るのも、そしてサンドリオンを探すのも!」
 望月は《白鷺》/《烏羽》に持ち変えると、真っ直ぐな瞳でスレイプニルを見つめた。
「一人の力はダメだけど、英雄との絆があるから成長して強くなったんだよね」
 賢者の欠片をかじり、葵は再び疾風怒濤で連続攻撃を繰り出し、スレイプニルの血で妖刀「華樂紅」の刀身が朱に染まる。
「Clematisが何をしていたのかは、H.O.P.E.にある資料でしか知らないですが、恨みを買った位の事は何となく分かります」
 白刃が煌めき、昂の白夜丸は闇を払うかの様に横一閃に斬った。
『ヘドが出そうな事をな……』
 ベルフが感情を抑えるものの、少しだけ怒りが籠った声色で言った。
『1つだけは言えよう……まだ、お前達では我は倒せぬ、と……』
 スレイプニルが咆哮すると、足元が砂煙を上げながら地面が揺れる。
「逃がさないっ!」
 咄嗟に葵が妖刀「華樂紅」で斬りろうと降り下ろすも、既にスレイプニルの姿は無かった。
 従魔は倒したが、肝心の愚神スレイプニルを逃がしてしまった。
 もう少し、戦力と力があれば倒せただろう。
 誰もが倒せなかった事を悔しさを胸に、H.O.P.E.ロンドン支部へと帰還しようと歩き出した。
「イギリスが全然落ち着かないね」
『本場のフィッシュ&チップスが本当に美味しくないのかまだ挑戦できてないよ』
 望月は破壊されたビルと港街を見回すと、百薬はガックリと肩を落とす。
「それはまた今度でいいじゃないの」
『ワタシの愛と癒しと美食の旅はまだまだ続くよ』
 望月は明るく話すと、百薬はぐっと拳を握り締めると笑顔で答えた。
「いや、いろいろ行ってるけど旅はしてないよ……サ、ン、ドリ、オン?」
『誰?』
 望月の前に、見たことのある姿と顔の少女が現れた。
「会いたかった!」
 探していた少女に望月は思わず抱き締めた。
 冷たい風と、枯れ葉が全て落ちた木々が冬を感じさせた。
 春に向けて、エージェント達の戦いはまだ続くであろう。
 悔しさを次の勝利への鍵にしてーー……

結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧


  • 九字原 昂aa0919
  • 心に翼宿し
    雨宮 葵aa4783

重体一覧

参加者

  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 幽霊花の想いを託され
    花邑 咲aa2346
    人間|20才|女性|命中
  • 守るのは手の中の宝石
    ブラッドリー・クォーツaa2346hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • 心に翼宿し
    雨宮 葵aa4783
    獣人|16才|女性|攻撃
  • 広い空へと羽ばたいて
    aa4783hero001
    英雄|16才|女性|ドレ
  • 口の悪い英国紳士
    リアン ベルシュタインaa5349
    人間|19才|男性|命中
  • 狂気の国の少女
    アリスaa5349hero001
    英雄|10才|女性|カオ
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