本部

【終極】連動シナリオ

【終極】夏の名残の終わりの話

江戸崎竜胆

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
9人 / 4~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/10/03 16:01

掲示板

オープニング

 各地にて、異変が起きていた――
「それはそうとして、肝試しに行きましょう!」
「はあ……?」
 リン・ウォンが相変わらずのマイペースで猫耳をぴこぴこさせている。ほんわりとした表情でお茶を啜る姜。
「だって、私は夏バテで夏らしい事をしておりません! やだやだ! 夏が終わる前に何かしたいので御座います!」
「嗚呼~。秋刀魚が美味しい時期ですねぇ~」
 ほのぼのとした姜は、リンの事を気にしていない。いつもの事だからだ。
「姜様! 香港の鬼を探しに参りましょう!」
 鬼。
 中国では、日本とは違う意味で使われる。『亡霊』と言う意味だ。人ならず者、異形全体を指す言葉でもある。
「はあ~。つまり、お化け屋敷で御座いますか? 嗚呼、丁度良い所にぃ~。九龍城砦跡を復刻したと言うお化け屋敷がオープンするらしいですよぉ」
 九龍城塞と言うのは、香港の元スラム街。違法取引が公然と行われる巨大な建築物で、迷路状に入り組んだ無秩序な場所だった為、「九龍城には一回入ると出てこられない」等と噂される、今でもその道では伝説となっている有名な場所だ。
「それ、採用で御座います! 行きましょう!」
「ええ~とぉ。なんか、あちこちで大騒ぎが……」
「気にしたら負けで御座います! 私達は私達で御座います! 夏を取り戻せ! で御座いますよ!」
 リンが元気に宣言するのを見て、姜は『ああ~』等と何か分からない事を呟いている。
 颯爽と走って行くリンの後に続いて、姜がゆったりと外に歩み出る。
 空は白く、染まっていて。
 今まで楽しかった、日常の終わりを告げている。
「……最後まで、お付き合い致しましょうかねぇ~」
 我々の日常の最後の時が迫っているのなら。
 無力で非力な英雄は、いつも通り、興じるだけ。
 
 九龍場跡地を復刻したと言う館にて。
 鬼。
 そう言葉にするのに相応しい、どろりとした外見の従魔が蔓延っていた、
 強いものでは無い。だが、碌に戦闘した事が無いリンと姜は、鬼に会えば、喰われてしまうだろう。
 それは世界の異変の末端の雫。
 大きな歪みが作った小さな歪み。
 巨大な迷路の中を、多くの従魔がさ迷い歩いている。
 世界の終わりの片隅で。起きている小さな事件。
 日常が終わる今、館に足を踏み入れるリンと姜は何を考えているのだろうか――

解説

・敵
 鬼(ミーレス級)10体。
 迷路の中を彷徨っている鬼です。見た目的にはキョンシー的なものが近いです。
 特に強い力は無いですが、鬼の動き次第では一度に大量の敵を相手にしないといけないでしょう。

・場所
 九龍場跡地のお化け屋敷
 入り組んだ狭い通路のお化け屋敷です。東西南北に出入口があります。お化け屋敷として設定されたので、一定の道順がありますが、鬼は道順に関係無く動いてきます。
 真ん中に休憩用の広場があり、殲滅戦を仕掛けるなら必要になるかもしれません。
 迷路を使った各個撃破も必要です。

・NPC
 リン・ウォン(az0120)と、その英雄、姜 水龍(az0120hero001)が「お化け屋敷に行こう」と先に入って行方不明です。二人は戦闘経験が余りありません。エージェントの端くれとして死ぬ事はないでしょうが、合流出来ると喜ぶでしょう。
 又、二人は途中で見つけた一般人数人を保護しています。合流出来ないと一般人を全員無事に助ける事は困難です。
 二人は北側に居ます。

・目的
 敵を倒す事も大事ですが、一般人がいるお化け屋敷だと言う事を忘れないで下さい。
 一般人に被害が及ばないように最大限の努力をして下さい。

リプレイ

●事前準備
「取り敢えずは地図だよね」
 集まったエージェント達は、お化け屋敷内の地図をスタッフから貰い、数人で確認している。
 木霊・C・リュカ(aa0068)は地図を人数分貰い、配って内部の構造を確認をする様に呼び掛けていた。
 紫 征四郎(aa0076)は地図を貰い、通信機を全員と共通して使用可能に調整していた。
「暗いのも怖い……」 
 ピピ・ストレッロ(aa0778hero002)が呟くのに、皆月 若葉(aa0778)は頷く。
「あぁ、暗いと避難にも支障が出そうだね」
 地図を貰い受けながら、リュカと運営側に普段は暗い状態のお化け屋敷の光源を明るくして貰う事を相談して、室内にいる一般客の数の確認を急いでいた。
 客数としては、長く広い迷路状になっているとは言え、同時に客同士が会わないようにしてある為に、そう人数は居ないとの事。
「恐らく、先に入ったエージェントの方がほぼ纏めているのではないかと思います。他に居るとしても、一組、二組……」
 とは、スタッフの言。
 リン・ウォン(az0120)と、その英雄、姜 水龍(az0120hero001)が一般客の大半を保護している事が確認されている。他にも、鬼の数はほぼ10体で間違いない筈、と連絡が入った時点で、リンと姜との連絡は途切れたらしい。
「保護されていないお客様方は、鬼が出たと言う事も知らないと思います」
 スタッフが怯えた様に言うのに思案して、他の一般客にその場を動かないようにと、Jennifer(aa4756hero001)が施設のマイクを借りてアナウンスを掛けるのを提案する。
 施設内の音響設備を借りて、Jenniferが落ち着いた声でアナウンスをする。
『電気系統の不具合を確認したため、臨時メンテナンスを実施致します。係員が参りますので、指示に従いご退出下さいませ。恐れ入りますが、安全が確認されるまで、鬼へは手を触れないようご協力お願い致します。繰り返します……』
 Jenniferの声色は柔らかく、人々を落ち着かせるのには充分なアナウンスだった。
「元ウグイス嬢?」
 小宮 雅春(aa4756)が訊くのに、静かにJenniferがマイクの音源を切ってから答える。
「お人形だもの。なりきり遊びは好きよ」
 シュエン(aa5415)とリシア(aa5415hero001) は、地図以外に分かるお化け屋敷の内容を改めてスタッフに確認していた。
『お化けと従魔の見分けが付かないということはないと思いますが、念の為です。中のお化けはどんな格好をしていますか?』
 リシアは共鳴時以外は喋る事が出来ないので、筆談でスタッフに確認をお願いしていた。
「びっくりして壊しちゃっても困るもんなー」
 リシアの問いに答えるスタッフによると、九龍城砦跡を模しているので、割りと頑丈ではあるが広く遮蔽物は多い。スタッフ自体ははお化けと言うより賊に近い亡霊の服装をしているし避難している。リンからの情報によると、鬼はキョンシーに近いもの、跳ねる様に移動しているので生き物として不自然な動きなので直ぐに分かると伝わっている。と情報が入った。
 点灯と館内アナウンスが行われる間、皆が地図を頭に記憶しようとしていく。
「楽しそうなとこだな!」
 シュエンが目輝かせ尾を振る。
『玄、仕事。GO』
 リシアが、これは仕事だと半ば呆れつつも、楽しめるなら悪いことではないとも思い苦笑する。行きますよ、とリシアが先に歩き出すのに、シュアンが待ったをかける。
「待って、そっち違う! 先生……もしかして、方向音痴……?」
 リシアが一旦戻って来て、シュアンを主体に共鳴をする。
「これで何の問題もないのです!」
 問題だらけの気がする。
 ルカ マーシュ(aa5713)とヴィリジアン 橙(aa5713hero001)も地図を見ながら、ぼそぼそと喋っていた。ル「よし、今日はお化け屋敷で鬼退治だ」!
「鬼……? うん……」
「お化け怖いから、ヴィン後は宜しく!」
「何でこの依頼受けたんだよ……」
 ルカがお化けを怖がっているのに対して、ヴィリジアンは『お化けはまあまあ怖いけど、此処にいるの従魔だろ……?』とリアリストな面を見せてしまっていた。
 五十嵐 七海(aa3694)とジェフ 立川(aa3694hero001)も通信機を常に通話可能な状態にセットしつつ、お化け屋敷、と言う場所に微妙な心境を語っていた。
「何でお化けがアトラクションになるのかな……霊は祈り鎮めるもので玩具じゃないんだよ……」
「怖いと素直に言って構わないぞ」
 ジェフが七海の髪を撫でるのに、七海がくすっと笑って答えた。
「お化けが怖いんじゃないもん……それに従魔と分かってるなら平気だよ」
 七海は、祖父母に霊の存在を教えられ育ったので敬う気持ちが強い。それに、暗い場にいきなりぬぅ、と立つ系統が大嫌いなので、お化け屋敷と言う環境に恐怖心がある。
「……けど明るければ、大丈夫」
 お化け屋敷内の照明が点灯した。
 鬼退治が始まる。

●東西南北
 リュカと凛道(aa0068hero002)は南口から紫組と共に侵入していた。
「ふふーふ、せーちゃんあんまり怖がらないようになったねぇ」
「ええ、リュカ。お化け屋敷のお化けは作り物ですので、怖くはないのです!」
 紫がそう答えるのに、ユエリャン・李(aa0076hero002)が口を挟む。
「本当はちょっと怖いけど、お仕事なのでがんばります。ということであるな」
「うう……」
 そんなやり取りをしつつ、リュカはスマートフォンと通信機で他の入り口から入った組と情報交換しつつも、モスケールを起動させておき、鬼がいる箇所を探索し、発見次第、急行出来るようにしていた。
 地図を持っているにも関わらず、行き止まりまで人と鬼の有無を確認してから戻り、を繰り返し一本ずつ確実に道を潰していく。
 紫とユエリャンもモスケールを起動させていた。
「鬼の目的が一般人のライヴスであれば、一番拙いのは敵が固まっているところであろうか」
 ユエリャンがそう推測する通り、鬼はリンが保護している一般客のライヴスを狙っているらしく、ほぼ南口には居ない。
 リュカと手分けし、紫とユエリャンは優先度の低いところへ鷹の目を飛ばしてみる。
 結局、南口から見付けたのは一般人一組。どうやら鬼は南口からは遠くの方に居るらしい。
 一般人を確保した際、退路に敵影が無い事を確認し、保護した一般人に地図を渡し一番近い入口まで自力で避難して貰うように凛道が指示をする。
「お怪我はありませんか? ご迷惑をお掛けしてしまいすみません。単なる猫使いのスタッフです」
 抱っこして、てろんと長く伸びるオヴィンニクを見せながら、一般人を安心させて退路まで避難をして貰う様にした。
 一般人が落ち着いて避難したのを見送ってから、それを各出入り口の方へ伝達。
「目指すは中央でしょうか?」
 二組は鬼の密集地帯と思しき方を目指して行った。

 皆月とピピが東口から入っていく際、ピピが一言。
「シュエンとリシア、よろしくなんだよ」
 二人は共鳴し、東入口から共鳴したシュエンとリシアと捜索を開始する。
 主に、協力・連携を重視して、他のメンバーと連絡を取りつつの探索となる。オートマッピングシートで通った道を記録、地図と照合し確認漏れを防ぎつつ隈なく探す。
 シュエンとリシアは鷹を先行させ索敵。皆月達と探す場所が被らない様に相談し手分けして捜索をして行く。
「オレらも負けてられないな! 行け……鷹!」
「名前が無いと締まりませんね」
 共鳴中のリシアから、そう言うツッコミが聴こえる。
 ゆっくりと、だが素早く丁寧に、鬼や一般人がいない事を確認しながら進んで行く。
 東口から入って暫くすると、一体の鬼を発見した。
「あれか!」
 跳ねて跳ぶのを二組で挟み込み、施設を傷つけない様に注意して攻撃に当たる。
「さて、タマさん出番です」
 皆月組が黒猫の書を開き、小回りの利くタマを召喚し対応する。
 狭い空間を機敏に駆け抜けて、タマが敵に飛び掛かり攻撃をする。注意を引いて隙を作り、シュエン組の攻撃に繋ぐ。
 シュエン組がジェミニストライクを放ち、連携して無事に一体の鬼は倒す事が出来た。
「退路は確保出来たな」
 他の組、特に北口の方が気になり、鬼を倒した事を報告しつつも、気に掛かる事があった。
 鬼は一体、何処に居るのだろう?

 西口から入ったのは、七海とジェフ組、熊田 進吾(aa5714)と重力を忘れた 奏楽(aa5714hero001)組、の二組。
「お客様、施設トラブルでアトラクション中止となりました」
 七海が一般客が居る事を想定して、声を掛けながら進む。
(なりきり道士(的なもの)になって、キョンシー(的なもの)を倒す!)
 熊田と奏楽は(二人合わせてユニット名は【ソラくま!】)一般人への見映えは常に意識、お客が必ず通る分岐点を起点にして、道順は無視して気の向くままに探索をする。通路の隅々まで通り、通った分岐点、通った場所には味方にも分かる様に微弱蛍光ペンで目印をつけていく。
「僕のことも忘れずに……」
 身体を使った動きはソラに任せて、熊田は冷静に状況を分析していく。
 オートマッピングシート+マップラインプロジェクターを使用した地図と照合しての迷路内部の把握、連絡から入る敵撃破数や眼に映った気になる点を細かくフォローしていった。
 二組が見付けた敵は一体、まさに一般客を襲わんとしている所だった。
「道士ソラ、見参!」
 ポーズ決めてビシっと登場するソラ。
「雷の呪符でお前を成敗!」
 ソラくま! が気合いを入れてアトラクション風に決めて、背後を取られないようにして、更に狭い行き止まりの通路へ移動。自分の手前に向かい合う様になるよう誘導して、一体を撃破した。
「アナタはお助けキャラに遭遇しましたー! 一緒に亡霊を倒しながら進みます☆ ドキワクな展開を楽しんでね!」
 ソラくま! が全力で一般人を不安にさせない様に心掛け、笑顔で応対する。
 七海が交戦が終わった事と一般人発見保護の連絡を仲間に入れて、味方に前後を守る様に頼むと、保護した一般人に最短ルートを辿って外に出る様に頼む。
「スタッフが救助に来ました。足元にお気をつけて、大丈夫です。こちらへ」
 七海がふと、比較的小さい子供が居たのを見付けて、目線を合わせて微笑みかける。
「ここで働く人はね、日頃からお化け退治のお勉強をしてるのよ、任せてね」
 子供がトラウマにならない様に、との七海の気遣いだった。
「スタッフのノリが良すぎてスイマセン……」
 ソラくま! も少しばかり反省した様子。
 一般人も大慌てで外に避難して行った。

 北口から突入した小宮と、絶賛新人のルカは他の出入り口の様子を連絡で聞いて、リン達の居場所は北ではないかと当たりを付け、貰った地図を参照しつつ先に入ったと言うリン達との合流を目指していた。
「現在、北口から入って暫くです。中央に近いですね……」
 一般人への避難の迅速化の為、人の居ない袋小路は施設の大道具で塞ぎつつ、分かりやすい避難経路を作りながら進んでいく。
 共鳴は結局ルカ主体になっているルカ組は、悪態をつきながら進んでいた。
「くっそくっそ、ヴィンのやつ……!」
 ルカは明かりがないならびくびくと進む所を、光源がある為にどうにか怯えずに進んで行けている。とは言え、一般人を守る事を主体に考えていて、余り余裕がない。他の仲間の連絡を聞いて、逐一小宮に指示を仰ぐ状態となっていた。
 中央に近い北口から入ってかなり進んだ場所。リンと姜が一般人を保護し、遮蔽物でバリケードを作って警戒しているのを見付け、無事合流する事が出来た。
「……助けが来ましたねぇ」
「はあ~。助かりましたぁ~」
 リンと姜の二人とも、気が抜けた様子でへたり込んでいる。余り経験した事が無い状況に、気を張り過ぎて疲れ切っているのがありありと見えた。
 小宮がモスケールを換装して、周囲の探索を行うも、周囲には鬼の気配がない。
「あ。敵と言うか、鬼なら、中央に集めておきましたぁ~。はい」
 姜が当たり前の様に言ってのけた言葉に、ルカが驚いた表情でのほほんとした英雄を見た。
「ど、どうやって……?」
「ええ~。こう、ふわっと。天啓がぁ? 要約すると、石兵八陣……と言いますかぁ~……」
 ほわほわ、とした普段は長話をする姜も、疲れたらしく説明がいつもより短く端的だ。
 小宮が周囲の鬼と一般人の気配を念入りに確認後、リンと姜の話と他の出入り口との連絡を総合すると、残りの鬼は八体が中央の広場に集まり、一般人はこの集団が避難すれば全員救出、と言う結論になる。
 仲間と連絡を取り合い相談して、一般人は取り敢えず外に避難して貰う事にした。
 中央には鬼がいる、と言う事は、最短距離で進んで貰うにしてもかなり中央に近い位置に居てしまっている状態では万が一、と言う事がある。
 相談をすると、リンと姜組で一般人を護衛しつつ、北口から脱出すると言うのが無難と言えた。
「僕らが来るまで、ずっと二人だけで皆を守ってくださったんですよね。ありがとうございます。僕一人では、同じ事はきっと出来ないから格好良いです」
 苦笑いをしてリンが横に首を振る。姜がにこにこと笑いかけてくる。
「あの、僕もお客さんを逃がす方に向かった方が良いですか?」
 おっかなびっくりのルカが、そう提案すると、小宮が少し悩んでから答える。
「リンさんと姜さんと一緒に行ったら、鬼が北口から出て来るかもしれない。鬼を殲滅するのなら中央に行って欲しい」
「いやいやいや、一般人護衛しましょう! 大事です! 最優先です!」
「北口から鬼が来ると危ない……お願い出来るかな?」
「は、はい……」
 ルカは先輩エージェントの指示に大人しく従って、中央を目指す事にした。

●中央、広場
 東西南北から合流したエージェント、そして鬼が一同に会する場所。
 明るい照明の元、八体の鬼がうろついているのが見える。
 事前に連絡をしあった状態なので、一般人はすべて避難済み。鬼は此処にいる七体だけと言うのは分かっている。他、なるべく娯楽施設としての設備は破壊しない事を前提に動く事を話し合って決めていた。
 リュカと凛道が共鳴を始める。
「そっち行ったもんで、後お願いね」
 極力周囲を破壊しないように気を付けつつ、鬼が固まっている場所に釣竿を使い、敵を中心の広場に集めて包囲網を敷く。
 単調な動きをする鬼の攻撃行動は分かりやすいが、大振りな為に、周囲に被害が及ばぬように手足を優先し攻撃を行う。数体の鬼の動きが鈍くなった。集中的に叩くチャンスを作り、他の者に連携を繋ぐ。
 シュエンとリシアは女郎蜘蛛を使って複数の鬼を足留めしていくのを目的としていた。半数の鬼が足止めを喰らう。施設を傷つけない様に、敵の動き止めながら交戦をしている。
 二人の連携で、全ての鬼がほぼ動きを止めた。
 紫とユエリャンは共鳴。休憩用の広場とは言え、多少の障害物がある。地不知を使い、重力を無視した動きで壁や天井を走り、ものを壊さない様に近接攻撃を試みる。
 一応娯楽施設内、極力物を壊さない様にと気を付けて、カバーリングからターゲットドロウを使用して引きつけを行う。自身に攻撃を集中させて、鬼の動きを封じる手に出た。
 動きが鈍くも反応をする鬼も居るが、紫達に狙いを定めてのろのろと動く為に攻撃が当たらない。
 皆月とピピはリフレクトミラーで攻撃範囲を広げ、足止めを喰らった鬼を複数巻き込みなぎ倒していく。
 七海とジェフの共鳴。足止めされた鬼には接近を許さず、遠距離から弓で打ち抜く。建物の倒壊と接近戦で戦う仲間への流れ弾の事故を防ぐため一打一打確実に狙い弓を放つ一撃必殺の矢。
「舞え『風花』、春に先立ち我が郷を包む白き花よ、邪を凍てつかせ冬に返せ、我らが道行へ春の先触れを示したまえ」
 謳う様に高らかと宣言しつつ、風花が舞う様に鬼を打ち抜いて行く。
 ソラくま! は赤き声で燃焼させつつも、建物は燃やさない程度の加減をして近接攻撃を叩きこむ。七海達の方へ向かいそうな気配を感じれば、碧の髪で吹き飛ばしてしまう。
 共鳴中のルカはインタラプトシールドと盾でひたすら防御しつつ、ウェポンディプロイで時雨村正を装備し攻撃。防御が追い付かず「ぎゃー! 無理! こわっ!!」となって、やっとヴィリジアン主体の方の共鳴に切り替わる。カオティックソウルを使用し攻撃を始める。
 八体の鬼は、歴戦のエージェントの前に呆気なく倒れてしまった。

●廃墟の名残
「夏の終わりも素晴らしく……いやはや……」
 リンがうっかりして居た所為なのか、それともリンが居て、助けを求めたから一般人は救われたのか。
「もう大丈夫です! 安心して下さい!」
 紫が避難して来て怯えている一般人に向かい、元気づけている。小さな少女と言える容貌の紫に声を掛けられて、一般人は少し驚いているらしい。
「征四郎は貴方達を守ります! 今までも、これからも。きっと守りますから」
 必死に声を掛け続ける紫に、笑顔を見せ始める人々。
「オバケ……怖いんだよ。怖いの、助かったよ」
 幼い容姿のピピも、人々の笑顔を見たいと声を掛ける。
「中の人達もきっと怖いだろうから、早く助けてあげよう。ピピとそう言い合って頑張ったんですよ。だから、あの! 俺達をこれからも頼りにして下さい!」
 皆月がピピの言う事を後押しする。
 七海が全員避難後に建物内をモスケールも使い、鬼の討ち漏らしがないかを確認し、ドロップゾーン化してないかも見て回ったのが終わり、頼りにしている皆月とピピにそっと近づく。
 白い空を眺め、二人が小さく話しているのを聞いてしまった。
「空、白いままかな……」
「大丈夫、取り戻してみせるさ」
 この空も大切な日常も……
 と、それはさておき。
「折角だしさ、お化け屋敷寄っていこっか」
「えーっ!!?」
 皆月が、わー! きゃー! と騒ぐピピと遊んで帰ろうと笑う。
「ピピちゃん、若葉さん、お化け屋敷は遊ぶところ……だけれど、遊んじゃダメだよ」
 思わず七海が注意してしまうのに、皆月とピピがわいわいと賑やかにしている。ジェフも加わり、どうやら四人で鬼が居なくなったお化け屋敷を回る事になりそうだ。
 リシアは少し考える事がある。
(これは件の北京の影響なのでしょうか。それとも王とやらの? どちらにせよ、早急に決着をつけねばなりませんね)
 小宮も、Jenniferと小さく話し合っている。
「大事の前の小事、かしら」
「うん。でもこんな時だからこそ、今ある日常の風景を疎かには出来ないよね」
 流れ聴こえてくる会話の合間、リュカは、弱視の目を細め、ふと思った。
(こんな依頼も、戦闘も、言い方は悪いが日常の一部になっていて。もし日常が、良くも悪くも終わってしまうなら、こんなに寂しいことは無いのだろう)
 夏の名残の――
 何かが終わり、何かが始まる。
 その前兆の、とある一端、だったのかもしれない。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • 絆を胸に
    五十嵐 七海aa3694
  • エージェント
    熊田 進吾aa5714

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 断罪者
    凛道aa0068hero002
    英雄|23才|男性|カオ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 全てを最期まで見つめる銀
    ユエリャン・李aa0076hero002
    英雄|28才|?|シャド
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
    人間|20才|男性|命中
  • 大切がいっぱい
    ピピ・ストレッロaa0778hero002
    英雄|10才|?|バト
  • 紅の炎
    アリスaa1651
    人間|14才|女性|攻撃
  • 双極『黒紅』
    Aliceaa1651hero001
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • 絆を胸に
    五十嵐 七海aa3694
    獣人|18才|女性|命中
  • 絆を胸に
    ジェフ 立川aa3694hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • やさしさの光
    小宮 雅春aa4756
    人間|24才|男性|生命
  • お人形ごっこ
    Jenniferaa4756hero001
    英雄|26才|女性|バト
  • 仲間想う狂犬
    シュエンaa5415
    獣人|18才|男性|攻撃
  • 刀と笑う戦闘狂
    リシアaa5415hero001
    英雄|18才|女性|シャド
  • 魔法マニア
    ルカ マーシュaa5713
    人間|19才|男性|防御
  • 自己責任こそ大人の証
    ヴィリジアン 橙aa5713hero001
    英雄|25才|男性|カオ
  • エージェント
    熊田 進吾aa5714
    獣人|45才|男性|生命
  • エージェント
    重力を忘れた 奏楽aa5714hero001
    英雄|6才|?|ブラ
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