本部

酔っ払いのためのRPG~お祝い編~

落花生

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~8人
英雄
6人 / 0~8人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2018/06/24 21:31

掲示板

オープニング

「ご結婚おめでとうございまーす!!」
 晴天、吉日。
 まさに結婚式日和であった。そんな愛でたい日に、H.O.P.E.の職員が挙式を揚げた。結婚式は親族のみで行なったが、結婚式後の二次会、三次会には職場の人間も呼ばれる予定であった。
 二次会はつつがなく終わった。
 そして、三次会はH.O.P.E.支部の近くの居酒屋で行なわれることになった。店内は広いが、気取らないアットホームな雰囲気に三次会参加者もリラックスしていた。
「えー、本日はキョウヘイ君とミオさんの結婚を祝う祝賀会であります。若い夫婦を祝福し、朝まで飲みましょう!!」
 かんぱーい、とH.O.P.E.の職員の一人が音頭を取る。
 すでに酒は十分に回っており、祝いの席なのか普通の飲み会なのかの境目が曖昧になっていた。しかし、全員が「めでたい、めでたい」と口々に言うので、周囲の客たちもお祝いをしているのだと何となく察せる雰囲気であった。
 
 そんな雰囲気をハンカチを噛みながら睨む男がいた。
「ぐやしい……」
 泣きながら酒をあおる男――実は愚神に取り付かれていた。男は結婚の約束をした女性がいたが、実は彼女は結婚詐欺師だったのだ。結婚資金を持ち逃げされた男は愚神に心を許し、何故かガブガブと酒をあおっていた。
「ふははははっ。なにが、めでたいだ! なにが結婚だ。もう女なんて信じられるかー!!」
 愚神は気がつかなかった。
 自分が、ものすごく酔っ払っているのだと。

解説

・結婚式の三次会に参加し、思い思いに酔っ払ってください。
※リンカーは本来は酔っ払いませんが、このシナリオではおめでたい雰囲気に酔っています。なお、お子様にはソフトドリンクをお出しします。

居酒屋(18:00)――支部の近くの店。広くてアットホームな雰囲気の個人店。和風料理が中心で、日本酒が豊富。カクテルなどの洋酒もそろっている。

新郎新婦とH.O.P.E.の職員(五人)――楽しく飲み食いしており、お祝いムードを発している。周囲の客(十人)も、結婚式の三次会であることを察している。


愚神――店の端っこで号泣しながら日本酒をがぶ飲みしている男。宴が盛り上がってくると「女なんて信用できない!」と叫びながら、新婦を襲おうとする。男から愚神は切り離すことはできるが、男が女を憎む気持ちを愚神が離れても消えない。なお、攻撃しようとすると以下の状態になる。
千鳥足――上手く歩くことができず、色々なものにぶつかる。
立ちくらみ――酒が回って立っていられなくなる。
嘔吐――お祝いムードが台無しになる。

リプレイ

「おめでとうございまーす」
 今日何度目か分からない祝杯に、御神 恭也(aa0127)はため息をついた。
「結婚か……俺にはピンと来ない代物だな」
 恋愛すらも自分には縁遠いと思っているのに、結婚など別次元の出来事にしか感じない。おめでたい、ということは勿論頭では分かっていたが。
『二人共、幸せそうですね……羨ましいですね』
 やはり女の子だからなのか、不破 雫(aa0127hero002)が花嫁の姿を見てうっとりと呟く。花嫁はドレスを脱いで、シンプルなワンピース姿。けれども一目で彼女が主役であると分かるキラキラとした雰囲気を纏っていた。
「しかし、二次会だけではなく三次会まで続けるのか……新郎新婦は大丈夫なのか?」
『解ってませんねキョウは、喜ばしい事は何回でも皆で祝った方が良いでしょ』
「言いたいことは分かるが、見世物とされている二人は辛い物があると思うんだがな」
『これだから枯れて朴念仁は……見て見なさい、あの新婦さんの幸せそうな笑顔を』
 世界で一番幸せそう、と雫はうっとりする。
「……その横で新郎が疲れた乾いた笑みを浮かべている様に見えるんだが」
 本気で新郎新婦を心配している恭也に、雫はあきれ返った。乙女心というものをちっとも分かっていない。
「恭也、そんなんじゃモテないよ」
 ジュースを片手に春月(aa4200)は、バシバシと恭也の背中を叩いている。普段だったらそんな失礼な態度は止めろと英雄のレイオン(aa4200hero001)が割って入るのだが、今日の彼は店に入ってきて早々につぶれてしまっていた。
『水……水を』
「あれっ、動かなくなっちゃったよ。しょうがないなー」
 普通の人間であればアルコール中毒一歩手前の相棒に、春月はにやりとする。煩い保護者がいないときにやることは一つだ。
「いつもはレイオンに止められちゃうけどね! 今ならいける! 誰か一緒に踊ろうよー。なに踊る!? 盆踊り!? フォークダンス!?」
 もう踊るしかない。
 一人で盛りあがる春月の邪魔をしないように、店員がそっとレイオンに水を用意する。実は、レイオンを一目見たときから店員は彼に好意を抱いていたのだ。柔らかな物腰に、にじみ出る懐の深さ。明るく可愛い春月に対して妹や娘へ向けるような視線を向けるレイオンは、きっと自分と同類――男だが男しか愛せない人間だと店員は確信していた。
 レイオン――ロックオン。
『今夏の流行なのよ、可愛いでしょう』
 メリッサ インガルズ(aa1049hero001)は、スカートの裾をつまんで春月に普段の私服よりもちょっと高価なドレスを自慢する。
 材質は滑らかで大人っぽいく、縫い付けられたビーズは涼やかな青。まさしく夏のためのドレスである。せっかく目出度いお祝いの席だからと、奮発して購入したかいがあったとメリッサは上機嫌である。春月も可愛いと褒めてくれる。
 ――これで、隣で荒木 拓海(aa1049)が管を巻いていなければもっと良かったのに。
 拓海は酔っていた。隣に座る知らない男の肩を、十年来の親友みたいに堅く抱きしめるぐらいに酔っ払っていた。そんな拓海の姿をAT(aa1012hero001)はニヤニヤしながら、写真に収める。
『浮気の証拠写真だね』
『もっと、決定的な証拠風にしたほうが面白いと思うぞ。もうちょっと二人が近づいて見える角度で撮影してだな』
 エル・ル・アヴィシニア(aa1688hero001)が、ATにパパラッチ風の写真の取り方をアドバイスする。このままでは結婚生活に罅が入ると思った魂置 薙(aa1688)は、慌てて二人の酔いをさまそうと知らない男に水を差し出す。
「お、落ち着いて、ください……! ほら、お水、飲んで」
『薙、こういう時は飲ませてやれ。それに酔わせないと、面白い絵がとれんだろう』
 エルの言葉に、ガッツポーズを決める女子たちがいた。彼女たちはいわゆる腐った女子たちであり、エルやATも自分と同族ではないかと色めきたつ。流行のアニメの話題をちょっと振ってみようかしら、と腐った女子たちは目を光らせた。
 AT、エル――ロックオン。
「……ふむ、よもや3次会まで進むとはのぉ……。お祝いじゃし、わしはいっぱい食べられるからよいがの……」
 帰るタイミングを逃した音無 桜狐(aa3177)は途方にくれた顔をしていた。馴染めない居酒屋でジュースを飲みつつ、お通しの油揚げ入りのおひたしを摘まんで目を輝かせる。
「…ぬ、これはなかなか美味なのじゃ…。…セレン、食べてみるとよいのじゃ……」
 桜狐は小皿をセレン・シュナイド(aa1012)に差し出すが、肝心の当人は「……油揚げが好きなんだよね」と呟きながら、メニュー表のなかから一生懸命油揚げがついてきそうなものを探している。他ならぬ桜狐のためであったが、あまり面白くはない。桜狐は隣に座るセレンの裾を引っ張り、口を開く。
「……セレン、あの料理が食べたいのじゃー。食べさせてくれぬかの……? ……あーん」
 桜狐の大胆な行動に、セレンの頬が茹蛸のように赤くなった。新郎新婦の衣装がフラッシュバックし、自分の顔と桜狐の顔が衣装の上にピタリとはまる。
『6月の花嫁ってやつかな。良いねぇ。お二人とも末永くお幸せになって欲しものだ』
 ATが手酌で日本酒を飲みながらしみじみと呟くものだから、セレンは思わず意識してしまう。自分と桜狐が、今日の主役のように白い服を着て――末永く幸せに生活をする姿を。
「ふぇ?!」
 思わず、可笑しな悲鳴が漏れた。
 思春期の少年には、あまりにも刺激が強すぎたのである。
 その様子を見ていた客がいた。彼はテレビプロデューサー。今度のドラマの主人公について悩んでいたところであったが、決まった。女の子を意識しすぎて、妄想しすぎちゃう系の男子が主人公だ。そうと決まれば、モデルの観察である。 
 さぁ、少年よ。もっと恥ずかしいことを考えてあたふたしてくれ。
 セレン――ロックオン。
『お・さ・け・飲み放題にゃー♪ 飲めるだけ飲むにゃー♪ 目出度い時はいっぱい飲んでいっぱい騒いでいっぱいお祝いするにゃー♪』
 祝いの宴を力いっぱい楽しんでいた猫柳 千佳(aa3177hero001)が、セレンと桜狐の間に割り込んできた。桜狐はむっとしていが、セレンはほっとしていた。今は桜狐と目を合わせるだけで、心臓が高鳴って痛いぐらいなのだ。
『ATさん、ぐいっといくにゃ、ぐいっと♪ 皆ももっと飲んで行くにゃー♪ 美味しいお酒を飲まないなんて損にゃよー♪』
 千佳は笑いながら、セレンのグラスにオレンジジュースを注ぐ。さっきまでお茶が入っていたコップだったが、酔っ払いには瑣末な問題である。彼らは空いているグラスを見ると飲み物を注ぐ本能があるのだ。
「ありがとう、千佳さ……」
 次の瞬間、セレンはこの世の終りみたいな悲鳴を上げた。
『にゃ? このドレスちょっと肩紐が長すぎたのかにゃ?』
 千佳が着ているドレスはキャミソールタイプであり、さっきまではカーディガンを上に羽織っていた。しかし、いつの間にかそのカーディガンは客席の端っこに丸めて置かれていた。そして、千佳の激しい動きで肩紐はずり下がり、セクシーな光景がセレンの目の前で出来上がっていた。
『うーん、どんどん暑くなって来たにゃー。脱げば涼しいにゃー♪』
『それに……おやおや、可愛いことになってる。千佳ちゃんも火照ったような頬になってきたね。可愛い可愛い。お姉さんもお酒が進んじゃうね』
 大人の余裕なのか、酔っ払いの余裕なのか、ATは相変わらず日本酒を離そうとしない。その酒を取らないから千佳を止めてくれ、とセレンは心の底から思った。
「……超ショックで、ならチューさせるな……お前のチューはどんだけ安いんだと。おーきーろーレイオンも聞けー」
 そのころ拓海の失恋話は、三度目の架橋を迎えていた。何故三度目なのかというとレイオンわずかに動き始めるころに話し始め、途中でレイオンが力尽きるとわざわざ起こして最初から話をしていたからである。
「はるか昔の青春時代な。告って、女の子と付き合った事がある。デート重ね、2ヶ月恋人と思ってたが……彼女の友達を交えた遊びでの『二人お似合いよ』の言葉へ『え? 好きと言われたから付き合ってあげてるけど私から好きと話した事無いわ。お友達よねぇ拓海?』って」
 青春の傷がまだ痛いのか、拓海はビールをあおる。
「友達が「それ酷いよ…」と諭してたがその場は誤魔化され……日を空け改めて気持ちを聞くと『付き合ってるんだから判るでしょう~』だった」
 どん、と中ジョッキがテーブルに叩きつけられる。
「今思うと恥ずかしかったのだろうが。当時のオレには判らず辛く……距離置いたら付き纏われ、改めて聞いても明確な言葉は無く……別れた」
 メリッサはジュースをちょびちょび飲みつつ『確かに酷いわね。彼女はプライドが……高かった?』と慰めになるかどうか分からない言葉を呟く。
『その後も他の子と付き合ってる時点で……良い経験ね』
 メリッサの言葉に、拓海は頷く。
「たしかに、この経験を経てオレは幸せになった。幸せだけど、あえて言いたい!」
 拓海は、新しく届いたビールを片手に立ち上がる。
「オレも少年漫画のラブコメみたいな、青春がしてみたかった! 年上のお姉さんと同居して可愛いい本命の彼女がいて、その子が他の子に可愛く嫉妬してオレが彼女を「お前が一番だよ」って慰めて、彼女が赤面して「もう拓海君ったら……」みたいな感じで下校する経験をしてみたかった!! うう……でも、夢と現実は虎に襲われるかハムスターか位に違う……辛いな……女だけが相棒じゃないぞ!」
 意気投合した見ず知らずの男を拓海は、抱きしめた。
 初恋に敗れ、結婚詐欺にあって傷ついた、哀れな男たちの抱擁である。ちなみに男は愚神であったのだが、酔っ払いたちは誰一人として気がついていなかった。深く考えてはいけない。酔っ払いとはそういうものなのである。
『実際の話は、説得力が違うの。おお、よい浮気写真が取れたな』
 エルは、満足そうであった。
『男と出来ちゃったものね。その写真は……あんまり良くないかも』
 メリッサがエルの写真を心配そうに見つめるが、拓海のフラレ話は第四週目に突入しようとしていた。
「出来上がってる……」
 薙はちょっとばかり、酔っ払いの二人から距離をとった。
『絡み酒か。珍しいの。……いや、そうでもないか』
 前も似たような光景を見た事があったような気がする。もしかしたら拓海はあまり酒癖がよいタイプとはいえないのかもしれない。
「でも、あんなことを言われたら……それは、ショック、だね……」
 薙は、少しばかり寂しい気持ちになってしまった。失恋話は聞いたことがあるが、やはり顔なじみのものは心が痛くなる。
『相手が幼かったと言う外ないの。儘あることよ』
「好きだからチューしたんじゃ、ないのかな……。だって好きな人としたい、よね?」
 自分だったら、と薙は考えてみる。
 好きな子――好きな人――好きな相手。その人が真っ白いドレス姿で、瞳を閉じて自分を待っている姿。
「結婚式のチューって……どんな感じなんだろう」
『ん? 興味があるのか?』
 エルの言葉に、薙は真っ赤になって首を振る。
 その様子を見ながら、エルは呟いた。
『きっと相手の女が言いたかったのは『付き合ってるんだから、言わなくても私が思ってることは判るでしょう』ではないか? 自分から言ったら負けと思っていたのかもしれぬな。幼い女の意地だが、幼い男には少々難問すぎたのか』
 その言葉が、薙にはとてもしっくりきた。
 近くに友人がいて、好きな人が目の前にいて、きっと女の子も薙以上に心臓が痛かったに違いない。だって、好きって言葉はものすごく言うのに勇気がいる言葉だから。
「そう、だよね。……でも、言葉にするのは勇気がいるのも、わかる、かな」
 真っ直ぐ目を見て好きという行為は、恰好がいいと思う。
 でも、簡単な行いを恰好いいなんて思わない
『互いに、良い経験になっておれば良いな。こうして、酒の席で語るような。む、酒が無くなっておるの』
 エルは、自分の酒のお変わりを注文する。
 その向いでは、恭也が難しい顔をして玉露を睨んでいる。いや、正確には難しい顔をして雫の「愛し愛されるカップルの幸せ論」を聞いていた。少しでも興味がないそぶりを見せると『もしかして、二人の幸せにあやかる気はないんですか?』と睨まれる。
『女の子は、自分が一番綺麗で幸せなときを見せ付けたい生き物なんです。そして、他の女の子は、そんな場であわよくば自分のパートナーも見つけたいものなんです』
「それは合コンだ」
『分かってないですね。同世代が集まりやすく、花嫁あるいは新郎の友人という身元のしっかりした相手との出会い。こんなお手ごろかつ、合法的な出会いの場は結婚式意外にないでしょう』
「むしろ、非合法な出会いの場はどこだ?」
 二人の話は、段々と別方向にエスカレートしていく。その話をH.O.P.E.の女性職員たちは頷きながら聞いていた。仕事に追われる昨今では、結婚活動も大変なのだ。
『……そんなんだから女性にモテないんですよ。十八歳で恋人の一人もいないとは、情けないです』
 雫の言葉に、H.O.P.E.の女性職員たちは打ち抜かれた。十八歳、結婚できる。しかも、H.O.P.E.のエージェントだから収入もある。
 ダイジョウブ、トシウエのオンナ。コワクナイ……。
 恭也――ロックオン。
「お前な……俺は気にせんが、こっちの男には致命傷だったみたいだぞ」
 さっきまで拓海の友人みたいだった酔っ払いが突然立ち上がった。
「女なんて信用できない!」
 男は結婚詐欺にあった。その心の隙を愚神に付けいれられたのだ。
「女は関係ないよ! 悪いのは結婚詐欺師だよ!」
 春月は、力いっぱい答える。
 そして、にかっと笑った。
「そういう悲しい時はね……踊ればいいんだよ!! 私、なんでも踊れるよ」
『ちょ……春月……それは……』
 その酔っ払いは、何かがおかしい。
 レイオンは、そう伝えようとした。
 しかし、動けば動くほどアルコールがまわる。あんなに水を飲んだのに、とレイオンは思った。
「レイオン、無理しちゃだめだよ。はい、ちょいとお店の人に水を持ってきてもらったよ。ちゃんとメニュー表に書いてあった水なんだよ」
 メニュー表に水があるって珍しいよね、と春月は言う。レイオンは薄れていく意識のなかで思った『それはいわゆるお冷やではなくて……水割りなんだよ』と。未成年である春月が居酒屋のメニューに詳しくないことは、予想すべきだった。
『どうりで、ちょっと酒の味がすると思った……』
「今のレイオンはお酒臭いから、きっと水に移っちゃったんだね」
 春月は「今日は仕方がないから休んでいて!」と親指を立てる。
「その千鳥足ステップいいね! 輝いてるよ!」
 お祝いだから皆で踊ろうよ、と春月は声をかける。
『ふむ、ではわたしも少しばかり参加することにするか』
 エルが、春月の踊りに加わる。
 さっきまで春月主体のタップダンスのような激しい踊りであったが、エルが混ざった途端にタップダンスが背景となる。妖艶で大人なダンスをつまみに、ATはさらに酒を開ける。
『この銘柄は初めて飲んだなー。こういう濃厚な味は、やっぱり大人の色気と一緒に頂くのが乙だよね』
『踊りたいにゃー。でも、熱いにゃー!!』
 千佳が転げまわる隣では、桜狐がセレンの膝枕に寝息を経てていた。
「……むぅ、いい気分なのじゃ……。……とっても気持ちいいのじゃ……」
 ぱたぱた振っていた尻尾も今ではすっかり大人しく、思わずセレンは笑ってしまった。
「もう、この寝顔だけを見ていたい」
 セレンの言葉は、現実逃避の言葉であった。
 雫は恭也が何故もてないのかという理由を店からもらったペンと紙を使って書き出しているし。
『笑顔がない。乙女心が分からない。女装が似合う……これは好意になりえますから外すとして』
「ちょっとまて。女装が似合うか似合わないかは、モテるモテないに関係がないだろ」
 ATと千佳の露出度は、どんどんと上がっていくし。
『……いやセレン、違うんだ。服のボタンは暑かったから、うむ』
「もうこうなったら全部脱いじゃうにゃ……みゃみゃみゃ!?」
 拓海は薙を捕まえて「ちゅーはな、楽しくて一緒に居るとふあっとした感覚になるぞ。気持ちは言葉にして伝えろよ……相手を捕まえガツッと言ってやろう! そっからのちゅーなんだぞ、ちゅー」とセクハラなのか恋愛相談なのかギリギリの会話を一方的にしているし。
『もう、収拾が付かないわね』
 メリッサは呟く。
「んっ! ……ウプ」
 突然、拓海の顔色が青くなった。手は口元を押さえ、それを見たメリッサは悲鳴を上げる。
『……きゃ、ストーップ!!』
 機転を利かせた恭也が、拓海をトイレに投げ込まなければ店は大惨事となっていただろう。
『しかし、結婚詐欺に騙されるとは可愛そうですね。今日ぐらいなら、私がお酌をしてあげてもいいですよ。あっ、私の好みとは違うので付き合えませんから』
 いつの間にか、愚神の隣にいた雫がにこりと笑う。
 ちなみに、気分がすっかり高揚した雫は男が愚神であると気がついていなかった。そんな愚神は、雫に告げる。
「いや、子供はノーサンキューで」
 吐いたり、踊ったり、脱いだりしている面々のなかで、もっとも理性ある一言であった。
 だが、雫の逆鱗には触れた。
『キョウ、本日のおさらいです。乙女心を打ち砕くとこうなります』
 雫は恭也と共鳴し、男の顔面を拳で撃ちぬいた。
 こうして、知らぬ間に愚神は退治されたのであった。
 その光景を見ていた客の一人が呟く。
「あの拳、女子プロレスの世界でも通じるかもしれないわ」
 雫――ロックオン。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 久遠ヶ原学園の英雄
    不破 雫aa0127hero002
    英雄|13才|女性|シャド
  • マグロうまうま
    セレン・シュナイドaa1012
    人間|14才|男性|回避
  • エージェント
    ATaa1012hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 共に歩みだす
    魂置 薙aa1688
    機械|18才|男性|生命
  • 温もりはそばに
    エル・ル・アヴィシニアaa1688hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • アステレオンレスキュー
    音無 桜狐aa3177
    獣人|14才|女性|回避
  • むしろ世界が私の服
    猫柳 千佳aa3177hero001
    英雄|16才|女性|シャド
  • そうだよ、楽しくやるよ!
    春月aa4200
    人間|19才|女性|生命
  • 変わらない保護者
    レイオンaa4200hero001
    英雄|28才|男性|バト
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