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物欲センサーは悪い文明!
最終発言2018/04/07 23:24:49 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/04/07 23:24:21 -
質問してもいいでしょうか?
最終発言2018/04/07 23:27:16
オープニング
この【AP】シナリオは「IFシナリオ」です。
IF世界を舞台としており、リンクブレイブの世界観とは関係ありません。
シナリオの内容は世界観に一切影響を与えませんのでご注意ください。
● 春香もやられた。
「また……また飲まれた」
グロリア社の前で立ち尽くす少女春香。
彼女の目の前には山のようなA品。そしてB品が積まれてる。
つまりは装備品、つまりは装備ガチャの副産物。
彼女はなけなしのお小遣い全てをはたいて、こう。
グルグルーっと……ガチャを回してきたのだが、一つもS品が出なかった。
それだけならまだよかった。
人は敗北を続けると冷静になれないものである。頭に血が上った春香は鞄の中の『生活費』と書かれた封筒にまで手を伸ばしてしまった。
「あー、もうしばらくおかずがキャベツだよ」
白熱して拳を振り上げガチャを回す春香。そんな春香を正気に戻したのはerisuの一言である。
「らら。私は、ご飯食べないから、いいよ? つかって」
春香は凍りついた。その言葉にまるで自分が育児放棄した親であるかのような何ともむなしい思いを抱いてしまった。
一気に血の気が引いた春香は今、グロリア社カフェテラスで突っ伏して水を飲んでいる。
erisuはシェイクを飲んでる。
「ごめんね。erisu。二人のお金だもんね」
「ららら、おいしいの」
そんなerisuの頭を撫でると春香は再びテーブルに突っ伏した。erisuの笑顔がひどく刺さる、胸に刺さる。
「嵐の前の静けさのうちに装備を整えたかったなぁ」
「ららら?」
「忙しくない今のうちに、全身S装備で固めて……ってやってみたかったの。ロマンだけどね」
「ららら?」
首をひねるerisuはストローを噛んで笑っている。
「物欲センサー。いい仕事したなぁ」
「らららら~」
春香はそんなerisuの頭を再びなでた。
「そう言えばロクトから聞いたことがあるの、あのね物欲センサーあるんだって」
そう、唐突に口にするerisu。
「え? なにそれ」
春香はerisuも冗談を口にするようになったのか~。なんて微笑ましく思いながら、物欲センサーとはなんだったか説明する。
「物欲センサーって造語だよ、そんな便利なものこの世界にあるわけ……」
「でも、ロクト、これは秘密なのよって言って教えてくれたよ?」
erisu曰く。グロリア社地下99階には謎の大フロアが存在し、そこに……。
グロリア社を訪れるものすべての欲望を察知、欲しいアイテムを当たらなくするマシーンが存在しているらしい。
グロリア社はそれでがっぽがっぽ稼いでいる。らしい。
「許せない! グロリア社!」
その言葉を聞いて春香は自分の財布を見た。そして叫んだ。
「らら!」
二人は立ち上がる。
「こうなったらみんなで結託して、グロリア社の地下に侵入して物欲センサーを壊すよ!」
「らら!」
そう新たな目標が見つかった春香は揚々とH.O.P.E.を目指す、暇をしているエージェントに声をかけてみるつもりだった。
● マッドサイエンティストロクト
「来たわね」
ロクトはモニターに視線を巡らすと立ち上がる。
90階のダクトが丁寧に取り外され、そこから数名のリンカーが現れる。
ロクトはこれを待っていたのだ。
「グロリア社はAGWが売り、けれど事業拡大は常に求められる。そこで私達が新しく提案するのは、対リンカー用の防犯設備」
そうロクトはPCのキーを叩くと周囲のモニター全てが反応し、各部屋の様子が全て映し出された。それらすべてがリンカー用のトラップである。
だがここで一つ、ロクトにとって誤算が発生する。
「って、春香……よく見たら」
そう本来の想定ではグロリア社にとって敵対的なヴィラン達が侵入してきて、それを実験台に使う予定だったのだが。
今回侵入してきたのは春香たちだ。
「うーん。これは」
ロクトは少し考えるが、死ぬようなトラップは無いのでいいかと、思い直す。
「報酬を後で出せば文句はないでしょう」
こうして。ロクトの作った迷宮VSリンカーたちの構図が出来上がった。
● グロリア社、隠された地下階
グロリア社は地下にもふかーく研究エリアを持っています。
ただその研究エリアは本来89階までのはず、しかしerisuの話によると99階まであるそうです。
今回皆さんにはこの99階にある『物欲センサー』を破壊してもらいます。
ただし、向かう方法は潜入です。エレベーターは89階までしか繋がっていないので、ダクトを通っての潜入。
ここで最下層の99階まで行って物欲センサーを破壊できれば、それでめでたしめでたしですが。
そうやすやすと破壊させてくれるはずがありません。
ロクトはこの十の階層それぞれに試練を設けました。
この試練に打ち勝って物欲センサーを破壊したとき、全ての人間がS品を手に入れられる、幸福な世界が約束されるのでしょう。
一つのフロアは一直線の道になっていますが左右に四つの部屋が隣接しています、部屋には入ることができません。
ちなみに最終階の試練はぶつよくせんさーそのものなので。残る九階の試練について説明します。
試練は5つの内ランダムで配置されています。
1封鎖
前と後ろの出入り口が封鎖されます。
隔壁がおりますが、隔壁の防御力は1500存在し。やすやすと突破できないでしょう。
対処方法については任せます。
2 ベンケークン
目の前に体長二メートルほどの警備ロボットが出ます。
薙刀を主武装としており、物理戦闘が得意です。
対処方法については任せます。
3 レーザーユニット
赤いレーザーが何本も走ってきて、皆さんを細切れにします。
魔法攻撃でレーザーは最初は一本なのですが。
二本、三本。とどんどん増えていくことでしょう。
対処方法については任せます。
4 バルカンユニット
天井から皆さんを撃ちまくる自動狙撃銃です。
天井に五台配置されており、遮蔽物のない廊下で、その攻撃を受けきるのは難しいでしょう。
5 機械蝶
無数の機械による蝶が召喚されます。
一体一体は貧弱で、一撃で破壊可能ですが数が多いです。
この機械蝶はただでさえ睡眠を誘発する鱗粉を舞い散らせていますが。
この蝶に取りつかれると睡眠剤を流し込まれるので注意です。
特殊抵抗が高ければ寝ませんが、投与量が多ければ眠ることになるでしょう。
・物欲センサーについて。
物欲センサーは皆さんがこのシナリオで経過させた時間によってその装甲が強化されるという仕様があります。
物理防御力が際立って高く、電撃系の攻撃に弱いです。
その体はタワー型のコンピューターで全長三メートル程度。AGWの衝撃からも身を守れる仕様です。
さらにこの物欲センサーは皆さんの運を操作して行動を抑制してきます。
つまり判定がファンブルになる可能性が高まるということですね。
解説
目標 物欲センサーの破壊。
今回のシナリオは皆さんに物欲センサーを破壊していただくことですが。
この物欲センサー、実は相手によって運を調整しているようです。
というのが、S品を装備していればいるほど、物欲センサーはそのリンカーを目の敵にする用に運を落とし。
逆にB品やC品などで装備を固めていると物欲センサーはその人の運を見逃すらしいのです。
その性質をうまく使えば各階層のトラップでもうまく立ち回れるかもしれません。
リプレイ
プロローグ
「まさか、本当に物欲センサーがあったなんて…………」
『九字原 昂(aa0919)』は驚愕に目を見開いていた。グロリア社の闇、物欲センサー。優良企業だと思っていたのにそんなあくどい商法でお金を稼いでいたなんて。
「ひどい、ひどいよね」
そう言葉を失う昂、そして春香に『ベルフ(aa0919hero001)』は言葉をかけた。
「そんなもんがあったとしても、関係ないと思うがな」
「少しでも可能性がある限り、挑戦はしないとね」
「畜生、グロリア社め…………物欲センサーなんて作りやがって…………ぶっ壊してやる!
…………ついでに何か土産として持ち帰ろうかな」
そう怒りをあらわにするのは『古明地 利博(aa5567)』。そんな利博の肩を『兎川 結衣(aa5567hero001)』が叩く。
「確率操作っていうんですかねこれ~?まぁ、とりあえず壊しちゃいますか~」
「そうだそうだ! 壊しちゃおう、そしたらみんなハッピーになれるよ」
その言葉に頷いたのは『葛城 巴(aa4976)』であった。巴は思うのだもし依頼を成功させたら『レオン(aa4976hero001)』 の食欲にも変化が出るのではないかと。
レオンの食欲はなかなかのものだ。レオンは今回のこの物欲センサー事件には興味がなさそうな素振りをみせたので、巴は。
「依頼目標を達成したらケーキ食べ放題に行こう」
そう餌で釣らざるおえなかった。
そんな盛り上がりを見せる一行、その中心にいる春香を見つめて『Arcard Flawless(aa1024)』はほくそ笑む。
「いいじゃん、付き合うよ」
そうニッコリ笑顔で春香の肩を叩くと同時に英雄である『Iria Hunter(aa1024hero001)』はロクトに連絡を取るのだった。
「がうがう」
他人の不幸は蜜の味。厄介なメンツが仲間に加わったことを、今はまだ一行は知らないのだった。
第一章 潜入
その後、グロリア社研究施設一角。
「物欲センサー保全で引きこもりかい」
珍しくメガネをかけたロクトがモニターの光を眺めていると背後のドアがぎぃっと音を立てて開いた。
「すごい近くに、監視ルームがあるんだね、驚いたよ」
「あら、あなた春香にくっついてなくていいの?」
そう椅子をくるりと回してArcardを眺めるロクト。
「ん? まぁ、途中からでも追いつけるから、ところで」
そうArcardhはPCを立ち上げるとその画面をロクトに突きつける。
画面に走っているのは文字列。それをざっと眺めるだけでロクトにはそれがなんだか理解できた。
「ネット散布型自律プログラム?」
「御明察」
そうArcardが告げるとぱたりとノートPCを閉じる。
「ホラ、ジャックエリザの件でロクトが対策として作った駆除プログラム。アレ弄ったら、面白い型が出来たんだけど……」
「あなた持ち帰っていたのね。流出禁止って言ってたのに」
「流出はさせてないさ、ただ利用しただけ」
その言葉にロクトが目を細めるが、それに対してArcardは愉快そうにするばかりである。
「ボクもちょっと遊んでくるよ、三船君で」
「競合はしないみたいね」
「そうだね、見守っててよ、僕のゲームをさ」
告げるとArcardは英雄主体で共鳴。廊下に出るとはじかれたように走って行った。
春香らの音や痕跡を頼りに追う。
* *
『氷斬 雹(aa0842)』はメタリックな通路に視線を巡らせながら最後尾を歩いていた。
物欲センサー破壊チーム、その殿を務めあたりを観察している。
表情からは読み取り辛いがわくわくしているようだった。足取りは軽い。
「コレって事実上のテロ行為じャネ? いや、マ。俺様は全然オッケーなんだケド」
告げる雹は弾かれるような動作で銃を天井、一角に向ける。そして。
「ナーンか気になるんだヨナ……」
廊下に轟音が反響する。それと同時に監視カメラが煙をあげて無力化された。
「実はうちはクジを引くのは一年に一回って決めてるんだ」
そう巴は道中何のけなしに話し始める。
「だから今の装備品の殆どは交換で入手した物なんだ」
買物の際は『それいつ使うの? 使わないでしょ』と独りツッコミを入れて買わないクチらしい。
「だってどのアイテムがイイのか分からないし」
そう悪戯っぽく微笑む巴。
「他人の物欲を都合よく使ってるだけだろ」
「ちゃんと等価になるように相談して取引してるもん!」
そうレオンに言われるとぷりぷりと怒り出す巴である。
「まぁそれは認めるけどな……」
そうレオンは誰かさんに視線を向けて告げた。
そんな視線を向けられた誰かさん……昂はその視線にハテナマークを含んだ表情を返すと、全員に声を向けた。
「いいですか皆さん、ここから先はもうグロリア社のトラップ設置範囲です」
告げると昂はベルフと共鳴、それにリンカーたちも習った。
「基本方針としては、全員一丸となって障害を解除、或いは強行突破して物欲センサーを目指します。
道中の障害は余裕があれば分析し、対応策を練って解除。
分析や安全な解除に時間がかかる様ならば、お互いに援護しつつ強行突破ないし破壊を試み、可能な限り時間を掛けずに先へと進み、物欲センサーの強化を最小限に抑えて撃破を目指します」
「はーい」
その言葉に春香が元気よく返事を返した。
そして巴は返事のかわりに共鳴。盾を背負いザイルで固定し、まるで亀のようになりながら進軍する。
「何か面白い物があればいいな」
そう利博は告げると先頭となって階段を下りた。
その先で。
ガン、ガンッと前後の通路に隔壁が下りる。
「閉じ込められた!」
春香があわてて扉に近づくも時すでに遅すぎる。
――かなり頑丈そうですね~…………殴って壊せますかね~?
「ちょっと1発やってみるか……」
利博が壁を一発殴ってみるもあまりの頑丈さに呆然とした。
「…………駄目だこれ」
――壁が壊れないなら、床を壊せばいいじゃん。
そう人垣を押し分けてIriaが前に出た。一撃で床材を吹き飛ばし人一人が通れそうな穴を作る。
「あ、Arcardさん、今までどこに」
――ちょっとね~
そう悠々と歩き去るIriaの背を一同は追った。そのIriaの足取りを妨害したのはバルカンユニットである。
精確な射撃から逃れるためにIriaは走り舞わざるおえなかった。壁や天井を駆け巡り状況を確認する。
同じくバルカンユニットに付け狙われているのは利博であり、利博は一直線に眼前の階段を目指していた。
「俺の身体能力を舐めんなぁああああ!」
――当たらないでくださいよ~?結構威力高そうですし~。
そのバルカンユニットを雹が狙う。
試験型ライヴスアイにて狙いを定めM110で砲塔自体に狙いを定める。
天井に取り付けられているのは三機。であればトリオで撃墜できる範囲内。
票の視線が細まった瞬間、トリガが絞られ三発の弾丸が早打ちで放たれた。
見事に沈黙するバルカンユニット。
助かったと膝をつく利博。
そんな一行を尻目に次の階を偵察してきた春香が告げる。
「次もバルカンユニットっぽいんだけど!!」
春香が叫びをあげる。すでに攻撃系トラップのオンパレードである。殺意が高い。
「さっきのバルカンを見てて考えがある」
告げる利博。
そんな利博に一行は任せてみることにした。
利博は全力で廊下を駆ける。その動きに反応したユニットが三機、利博へと弾丸を命中させるべく追い込むように弾丸をみまった。
その弾丸をなるべく避けて接近。そして利博は壁を駆け上がって飛んだ。
その手に握られているのはウレタン噴出機。
なんとそのウレタン噴出機からウレタンを噴霧。
そのまま空中でウレタン噴出機を投げ捨てると手持ちのボトルから水をかけ固まるまでの時間を縮めた。
そして着地した利博は頭の上に盾をかぶって弾丸をはじく。
首振り機能が死んでしまったバルカンたちは、グイングインと無理な動作を繰り返す。
そのまま利博が前に転がり出ると弾丸を誰もいない場所にばらまく機械の出来上がり。
それを昂が壁を駆け上がり一つ一つ粉砕していった。
「回収~」
そう幻想蝶にバルカンを回収する利博、ほぼ完全な状態での回収なので胸が躍った。
家に返ったら解体してみよう。そうもう一つ余分に回収してみる利博。
そんな一行が次の階層に進むと今度は謎の光景が広がっていた。
明らかにメタリックで重たそうな蝶がひらひらと飛んでいたのだ。
「あれ? なんだか眠くなるよ」
春香が告げると、レオンはその異常を素早く察知した。
――息止めて!
レオンの声に従って全員が次の階めがけて走り出す。
「僕がやるしかないみたいですね」
そう昂が移動力にまかせて先行。敵の中央に躍り出た。
そのまま息を止めての繚乱。多数の蝶がバラバラの鉄塊になって地面を転がる。昂はわずかな眠けでふらつくが、それでも踏ん張って着地し走る。
ただ、全部の蝶を刈れたわけではなかった。
その後方から一行は蝶を破壊しながら次の階層を目指す。
利博はゴエディアで蝶を破壊しながら隙があればすごいむしとりあみで蝶を捕獲していた。
その姿はさながら虫取り少年であるが、捕獲した蝶が凶悪で、噛まれれば一発睡眠地獄である。
まぁ、結果的に利博は眠りに至らなかったのだが。
「こいつはなかなか面白い作りをしてるな…………。」
――気をつけてくださいよ~。
「大丈夫だ、俺を誰だと思ってる?」
そう利博は告げながら、一匹づつ確保し計数匹幻想蝶に入れる。
「あ……」
――あ、ってまさか!
そのまま利博はスヤァ~っと地面に倒れた。
「わあああ! 利博ちゃんが倒れた!」
春香がその小さな体を抱えて走る。
そんな春香がIriaがなにも言葉を発していないから大丈夫かなぁと思ってあたりを見渡すと、Iriaは防護マスクを着用していた。悠々と春香を追い抜いて走る。
「その手があったか」
そうつぶやいた春香は濃厚な鱗粉を吸って眠りに至る。
第二章 これは悪夢
その後一行は回想を次々と突破していった。
またも顔を見せた封鎖トラップでは昂が素早く反応し扉の間に挟まって道を作るというファインプレーで道をこじ開けたし。
レーザーが照射されるフロアではそのレーザーユニットを破壊して進むという荒業で突破した。
そして最後の階。
ここを下りれば物欲センサーだ、という階層でそれは現れた。
地面を揺らして立ちはだかる戦士。ベンケークン。
思わず利博は叫んだ。
「S武器おいてけ なあ 弁慶だ、弁慶なんだろう!? なあ弁慶なんだろうおまえ!S武器おいてけ!」
――…………うわぁ。
その腕ごと武装を奪わんと飛びかかる利博。
それを雹がM110にて支援した。
昂が背後を取り一撃加えている最中、春香がピアノ線でがんじがらめにして動きを封じる。
そのわずかな時間の間に票は敵の弱点、装甲の切れ間を見つけそれを狙える位置につく。
――あっ義経様があちらに!
レオンがそう指をさした先を思わず見てしまったベンケークン。
その隙が命取りとなって、ベンケークンは見事倒された。
「やった、これで物欲センサーに」
そこで春香は気が付くことになる、一人メンバーが足りないことに。
「あれ? Iriaさんがいない」
* *
Arcardは地下にいた、目の前の物欲センサー、その正体をArcardはよく知っている。
「そろそろ起きなよ、エリザ」
そう接続したPCのエンターキーを叩くと、PCの画面に何かの映像がポップアップした。
その画面には少女が映し出されている。
そしてその少女は薄く目をあけるとArcardに告げる。
「おはよう、私の世界」
* *
春香は謎の不穏を抱えたまま最終階層に降りるとそびえたつ物欲センサーそして。
その前に脳立ちするArcardの姿があった。
――ふふふ、待っていたよ、春香。
「え? Arcardさん、どういうこと?」
「思い通りにならないからって、他人様の商売にケチとは偉くなったなァ。ん?」
次の瞬間Arcardは物欲センサー討伐舞台に襲い掛かってきた。
「彼女は僕と三船さんで抑えましょう」
昂が告げると春香は頷く。
「レベル的にもそれがいいかな、みんな物欲センサーをお願い」
そう雹、レオン、利博が物欲センサーと相対することになる。
ただ、御願いされても~、という感じだった、対象はあまりに大きく強大で、硬そうだ。
「とりあえズ……ぶっ壊ス」
告げたのは雹。
それに習って巴は物欲センサーに走った。
――さっさと終わらせてケーキ食いに行くぞ。
(何コレ、どこ押せばいいの?)
そうキーボードやボタン、片っ端から押していく巴である。
――いいからとにかく弄り倒せ!」
そうレオンは巴の機械特攻Aの能力を信じて弄繰り回す。
(じゃあ、むよくのしょうり、と……」
そうボタンを押すと物欲センサが光りはじめた。
がむしゃらに攻撃する利博、それを援護する形で雹が弾丸をばらまいた。
射程ギリギリのところからArcardの動きに注意しつつ、装甲の接合部部など狙って雹は弾丸をみまっていく。
しかし埒があかないと思えばその肩に担ぎ出したのはフリーガーファウストG3である。
「やっぱ攻撃は重量級の物理だゼ! ……ロケランぶッぱしちゃダメ?」
そう誰にでもなく問い掛ける雹だったが、春香はその言葉に親指を立てる。
雹は快く頷くと遠慮なくトリガーを引いた。
爆炎に包まれる地下数百メートル。
「ブチかまして殺ルゼッ!!」
装甲が歪めばその隙間に弾丸を叩き込んで装甲を引きはがす作業に従事する。
「電源ハどこだ!」
その様子を二人のリンカーに阻まれながらArcardは見ていた。
「さすがに無謀だったかな」
そう春香のピアノ線を引っ張って春香を引き寄せると蹴りを。
そして蹲る春香の耳元で何事かを囁く。
「整備が甘いよね、あと装備コンセプトが温い」
「コンセプトって、いいじゃない! 音!!」
春香はそうArcardを振り切って立つと叫んだ。
「あと、ボクから言わせると、装備相性考察がおざなり」
「ああああ! 言ったな! 私も頑張ってるのに」
「お頭が寝てるんじゃオールS対オールEでだって負けのマの字も見えんぞ」
「かっちーん、もうArcardさんでも許さないんだから!!」
そんな二人のケンカを眺めながら昂は苦笑いを浮かべていた。
やがてむき出しの装甲の向こうにコアユニットを発見した雹。それを打ち抜くと施設全体の電源が落ち。
そして。
物欲センサーの停止が確認された。
「これで僕も高ランク品の限界突破が…………」
そう昂は自分の両手を見つめて何か悪魔的力を得てしまったかのように言った。
「強化できるだけの素材と財布があればな。」
やり遂げた感に包まれた昴に、ベルフが無情に告げる。ため息をつきながら。
そんな電気の落ちた物欲センサールームの電源が復旧した、
するといつの間にかフロア中央に立っているロクト。
そのロクトに雹は尋ねる。
「フーン、報酬をクレるって?」
「ええ、報酬、と言ってもそれをあなた達は現実に持ち替えることはできないのだけど」
そう告げるとリンカーたちの視界が歪み始める。
「だってこれは、夢なのだから」
そして一同はベッドの上で目を覚ますのだった。