本部

【愚神共宴】連動シナリオ

【共宴】咲き誇るのは小さな花

紅玉

形態
シリーズ(続編)
難易度
不明
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
7人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/04/18 21:06

掲示板

オープニング

●春の枝を与えし女王
「初めまして、H.O.P.E.所属の皆様。わたくし、花を統べる女王のアルノルディイと申しますわ。そして、お久しぶりでございますわ……お兄様」
 屈託のない笑顔でアルノルディイは、直に対面したアナタ達を見つめた。

 ……気にくわない

 圓 冥人は表情1つ変えずに左目で女王を睨む。
「わたくしは争いしに来たのではなく、妹達を介して見た皆様の行動に興味を持ちまして、お話をしてみたいと思いましたの」
 夜の公園、白、桃、紅の花弁が春風に乗って、質素な公園を、空を、色鮮やかに染め上げる。

 ……あぁ、胸の底から……沸き出る

 甘ったるい花の香りが、まるでアルノルディイから発せられているかのように錯覚する。
「“イエス”でしたらわたくしの方からは攻撃は一切致しません。“ノー”でしたら、皆様に一切の手加減も慈悲も無く血に濡れて貰いますわ」
 幼い少女の姿で口から紡がれたのは、優しい言葉と冷たい針の様な言葉。

 嘘、だ……その言葉で……何人殺した?

 彼女が言葉を発する度に、冥人の心の奥底から現れる感情は“憎悪”だった。
「あぁ、偽善……いえ、善性の皆さんが見せた姿と違うかと思いますけど、妹のゲンティアナの体を借りていますわ。そういう“力”を持っている子だと思って下さいませ」
 アルノルディイは裸足のまま、ゆっくりとアナタ達に歩み寄る。
「話すだけか、死か……選ばせてあげますわ」
 真紅のドレスを広げ花の中で座る姿は、花を統べる女王と呼ばれる理由が分かった。
「ただし、妹達を売るようなマネは姉として出来ませんわ。他の愚神の皆さんは……そちらが一番知っているでしょう。わたくし個人の話やヴィラン組織『Clematis』の事、ただお話をしてくれるだけでも良いですわ」
 アルノルディイは小さな両手で花弁を集め、固めたり形成して鳥の形をしたソレは翼を広げて飛び立った。

解説

【注意】
対話するだけでしたら、難易度は下がり『危険』な事は起きません。
討伐、戦闘の意思がある場合は難易度通りになります。
覚悟を決めなければ最悪『死ぬ』可能性があります。

【目標】
アルノルディイと対話orアルノルディイ(ゲンティアナ)の討伐

【場所】
皆さんが夜の花見をしている公園

【敵】
愚神『ゲンティアナ』1体
美しい青髪、サファイアの様な瞳、一番幼い容姿のデグリオ級の少女型愚神
アルノルディイの“意思”と憑依している為、ケントゥリオ級の強さをがあると予測
【攻撃しない限り戦闘になりません】
詳細は不明ですが、アルノルディイに対して『愛情』や『友愛』を感じては危険だと、古い資料に残されていました。
※資料に関しては、途中参加PCが希望すれば送ってもらえます。
圓曰く「憑依されている状態では弱点を攻撃しても意味ない」

【NPC】
マデリーネ:遠くから様子を見ています
冥人:様子がおかしい

【PL情報】
・特殊
冥人は現在『OP』の通りに、アルノルディイに対して『憎悪』を強く感じております。
無視していると、対話中にも関わらず攻撃開始します。
皆さんも戦えば、アルノルディイ(ゲンティアナ)を倒す事は可能ですが、冥人がどうなるかは不明(死亡、再起不能、邪英化等)です。
彼をどう落ち着かせるかは、PLの皆さんにお任せします。

リプレイ

●女王と関わった者の末路はーー……
 突如、エージェント達の前に現れた愚神『アルノルディイ』に驚きと戸惑いを感じつつも、構築の魔女(aa0281hero001)は共鳴するとライヴスゴーグル等を使ってライヴスの変動を監視する。
『不測の事態は何時でも起きますしね』
 と、静かに呟いた。
 その中で辺是 落児(aa0281)は静かに見守る。
「花の女王や姉妹達とは、既に対話の余地がない状態だったはずですが……」
 月鏡 由利菜(aa0873)は以前『椿姫』からの交渉を断り、倒す道を選んだ事を思い出しながら呟いた。
『向こう側から話がしたいとは、どういう風の吹き回しだ。……善性愚神などが表舞台に出てきた影響か?』
 リーヴスラシル(aa0873hero001)は、訝しげな表情でアルノルディイに視線を向けた。
 普通ならば、敵対しているのだから呑気にお話する様な状態ではない。
「善性愚神の言葉全てが正しいかどうかH.O.P.E.もまだ測りかねています。私達にしても同じ事。で、あるならば、善性愚神相手にそうしたように、悪性と称された愚神からも対話の申し出があるなら応じる必要がある。と思います……会長ならそうするんじゃないかな」
 と、アルノルディイの言葉に迫間 央(aa1445)は、同意するように頷きながら仲間に自分の意思を伝える。
『私達は、あの愚神に特別私怨がある訳ではないから……央と皆の判断に委ねるわ』
 マイヤ サーア(aa1445hero001)は一歩下がると幻想蝶の中へと消えた。
『……綺麗な景色なのにね。兎に角クリス、怪我しない様に……って、別に心配してる訳じゃないんだからねっ!』
 ぼう、と景色を見つめていた砺波 レイナ(aa5558hero001)は、直ぐにハッとした表情になるとクリスティン・エヴァンス(aa5558)に言う。
「はいですの」
 そんなレイナに対し、クリスティンは笑顔で頷いた。
「ファリン隊長は心が壊れるような恋愛をしただけに女王に同情的ですね! わたしはそうやすやすと愚神との共存はできないと思ってるけど」
 少し辛辣な言い方をするセレティア(aa1695)は、共鳴姿でアルノルディイの前に立ち尽くす。
「女王に関する資料要らなくないです? 本人に聞けばいいよ! 第一失礼でしょ、目の前で自分の過去の記録読まれるなんて面接じゃあるまいし」
 と、過去の記録を持ってくるように言われたものの、手ぶらで来たセレティアは仲間にひらひらと手を振る。
 分かってる、本来ならば共鳴すると封印される過去の記憶。
 セラス(aa1695hero002)から伝えられる記憶が、守りたいと思っていた“姉妹”に対する言葉を思い出すと握り締められた拳に自然と力が入る。
 しかし、それ以上にアルノルディイに対して濁流の様に激しく、闇の様に果てしない憎悪が一人の男から発せられていた。
「冥人さん……?」
 一番近くに居た花邑 咲(aa2346)は、それを間近に感じると名前を呼ぶ。
 しかし、言葉なんて届いておらず……圓 冥人はぐしゃりと右目の眼帯を握り潰した。
 言葉を口にするよりも咲は、刀の柄を握ろうとした手を取るとジッと見つめた。
 ブラッドリー・クォーツ(aa2346hero001)は静かに咲の行動を見守ると同時に、彼女に害を及ぼす場合を考えて共鳴出来るように準備をする。
 でも、優しい咲はそれを望まないかもしれないが……ただ身を案じる英雄の一人として、無慈悲に切り捨てる覚悟は誓約した時からある。
「……圓様、いけません。たとえ彼女の言葉が人を惑わす甘美な香だとしても……あなた様がどれだけ苦しめられたとしても……ここは一度引くべきでしょう」
 Гарсия-К-Вампир(aa4706)は凛とした声で言った。
『皆さんは対話を選んだ方が多いみたいですが……大丈夫ですか? 常道を語るだけではあれかもしれませんが……目的の為に不利益を飲み込むことが必要な時もあります』
 と、構築の魔女も声を掛けるが、冥人は荒れ狂う獣の様な瞳でアルノルディイを睨みつける。
「……私も過去、ラシルと契約する直前に愚神に瀕死にされたり、その後親友を殺されたりしています。ですが……これは当時の私がなりふり構わず英雄を求めた報い。故に、それらの愚神を恨んでいる訳ではないのです。もちろん……HOPEのエージェントとして、人々に危害をもたらす愚神を放っておくわけにはいかないですけれどね」
 冥人の前に立つ由利菜は諦めずに声を掛ける。
「私とて激情家であり、花の姉妹達との因縁を深めていった立場ですが……冥人さん、今は昂ぶる感情を抑えて下さい。相手は花の『女王』……感情が赴くままに戦えば甚大な被害が出ること、ラシルも、冥人さんも分かっていないはずがないでしょう」
 憎悪に支配された冥人と、アルノルディイを睨むリーヴスラシルに向けて由利菜は必死に、思いが届くのを信じて力強く言う。
「冥人さんの憎悪に共感する事も、否定する事もわたしには出来ないけれど……それでも、対話を望む皆の意思を無駄にしたくはないんです」
 優しく握りられた手の温もりに抑止力が働き、冥人は両目でずっと見つめていた咲に視線を向けた。
 すると、ブラッドリーは両手いっぱいに救った花弁を冥人の頭にバサッと落とし、彼は花弁まみれになってしまう。
『……少し落ち着いてください。その激情のままに彼女と対峙した所で、良い結果に終わるとは思えません』
 予想外の事をされて冥人は目を丸くし、落ち着いた声色で話すブラッドリーに視線を向けた。
『その命を無駄に散らすつもりですか? ヘイシズより開示された姿とは違うではないですか。あの愚神が“アルノルディイ自身とは決まってない”でしょう?』
 ブラッドリーがそう言うと、冥人はハッとした表情でアルノルディイに視線を向けた。
「確かに、俺が昔見た姿よりかは幼すぎる……考えられるのはゲンティアナしか居ないね」
 落ち着いた冥人は、視線を反らすとГарсияに視線を合わせると頷いた。
「アルノルディイ様、圓様を公園の外に移動してもよろしいでしょうか?」
 と、アルノルディイにГарсияは会釈した。
『その範囲ならよろしいですわ。昔話でもしたかったですわ……それは、いずれイヤでもする事になるでしょう、いずれね』
 Гарсияの提案にアルノルディイは、クスクスと小さく笑いながら許可を出した。
『……後で構いませんが弱点も御存じなんでしたか?』
 と、歩き出す冥人の背中に向かって構築の魔女は問う。
「女王に弱点はないよ。関わった人は全て死んでいるからね」
 振り向かず冥人は答え終えると、Гарсияと共に公園の外にへと向かった。
『さぁ、アナタ達の意思は固まった様ですので、楽しくお話をしましょう?』
「ええ、武器は全て収納して対話を希望致しますわ」
 ファリン(aa3137)は凛とした声で答えた。
 これから始まる話し合いにヤン・シーズィ(aa3137hero001)は、興味津々にアルノルディイに視線を向けた。
「愚神13騎、アルノルディイだったか。差し支えなければ記録を残したいんだが、同意は得られるか?」
 と、動画も撮れるデジカメを央は取り出した。
『ふふ、構わないですわ。わたくしから一方的なお願いでは不公平ですからね』
 と、言ってアルノルディイは承諾した。
『あくまで対話という感じでしょうか……?』
 構築の魔女は問う。
『ええ、こんな素敵な春なのに争うなんて野蛮ですわ』
 アルノルディイは優しい笑みを浮かべたまま頷いた。

●花を統べる女王は言葉を紡ぐ
「ラシルでは愚神との対話は荷が重いでしょう……ここは私に任せてください」
 由利菜はリーヴスラシルを見つめながら言う。
「敵であろうと、対話を求められて応じないわけにはいきません。私もまた……ラシルによって見出された姫であり、騎士ですから」
『……私達と花の愚神達が敵対関係にあるのは変わらん。安易に気を許すなよ』
 以前よりも何処か頼もしくなった由利菜の背を見て、リーヴスラシルは頼もしく感じながら言葉を投げた。
「……分かっています」
 視線をリーヴスラシルに向け、こくりと頷くと由利菜はアルノルディイの近くに座る。
「どうして沢山の姉妹を倒し、尚且つ椿姫の誘いも断って敵対関係であるエージェント達と……話をしたいと思ったのですか?」
 その場に居るエージェント達が思っていた事を由利菜は問う。
『知っているのですわ。全てのエージェントが、必ずしも刃を向け合うだけではない、と……現に桜華や椿姫に対してそうでしたわ』
 アルノルディイは花弁を操りながら答える。
「単なる気まぐれ……というわけではないのでしょう?」
『勿論、わたくしが知ってる人間と違うのですわ。対等にわたくし達と話すというのは、今のわたくしさえ知らない事ですわ』
 訝しげに問う由利菜に、アルノルディイは目を丸くして驚く仕草をする。
「先の物言いだと、このオーパーツはアルノルディイ、お前の物という事になるのか?」
 央はオーパーツをアルノルディイに見せる。
『そうですわ。とても素敵な子が、そういうのが好きだと聞いて贈らせてもらいましたわ』
 と、嬉しそうに答えるアルノルディイ。
「確かにいい趣味だと思う。故意にこの公園に落とした……のなら我々が回収しても差し支えないか?」
『構いませんが、わたくしの欲しいモノを対価としていただける、と同意したものと見なしますが……よろしいかしら? 哀れな少女の胎内に埋められたそのオーパーツを』
 アルノルディイの言葉に央は一瞬息を飲んだ。
 故意に落としたオーパーツとはいえ、出処不明でコチラの世界にあっても良いモノなのか不明だ。
 しかも、簡単に渡してくれる様子は無さそうだと感じた央は、オーパーツを元の位置に戻した。
『では、姉妹と対峙した時に何故優しい言葉を掛けたのかしら?』
 オーパーツが元の位置に戻されたのを見て、アルノルディイはエージェント建ちに問う。
「静音様に貴女がしたことは悪い事です。が、恋愛感情とは時としてそのようなもの。貴女がたの行動に共感を覚えたのですわ」
 と、ファリンは答える。
『ふふ、そんな事を言う貴女は罪人ですわね。冥人と同じ……』
「貴女方は恋愛以外眼中になく、侵略や捕食には積極的でないように見えております。姉妹たちの多くは、人の世の法に照らしても、まだ償うことができるのではと考えておりますの」
 アルノルディイに真剣な眼差しを向けながらファリンは言う。
『本当に、そう思っているのかしら? わたくしは、愛なんてモノは嫌いですわ。静音……いえ、契約した全ての少女達は愛情という皮を被った大人達を争わせ、残った者と契約者を貪るだけですわ。残念ながら、妹達は人間が嫌いですわ』
「それでも、償えますわ。こちらでは、大きな何かを1つもしておりませんわ」
 アルノルディイの言葉にファリンは首を横に振った。
『言ってない様ですわね。冥人の住んでた村はもうありませんわよ。豪雪が全てを狂わせたあの時から……他の方はどうかしら?』
 と、言ってアルノルディイはエージェント達を見回した。

「……マデリーネさまは、お話をしないのですか? ですの」
 と、傍観しているマデリーネをクリスティンは見上げた。
『オーパーツの事とか聞けば、意外にあっさり教えてくれたりして』
「気付かないか?」
 首を傾げるレイナと紅茶を用意するクリスティンに、マデリーネは静かに言った。
「何がですの?」
「一般人は寝てしまっている事だ」
 少し眉間にシワを寄せながらマデリーネは答えた。
『それが?』
「はー、私も一般人なのに何故眠らせないんだ?」
『んん? 確かに……さ、最初から変だと思ってたのよねっ! クリスが鈍いから合わせてただけよっ!』
 マデリーネの言葉にレイナは、腕を組んでうんうんと頷きながら言った。
「マデリーネさまはクリス達が守りますので、取り合えず紅茶をもう一口如何ですか? ですの」
「それは頼もしい。貰おう。多分、あの愚神が指定した人物は私なのだろう」
 クリスティンから紅茶を受けとると、マデリーネはアルノルディイの言葉を思い出しながら話す。
『妹、だっけ? でも、何で成人しているマデリーネを? 少女でもないのに』
「簡単だ。愚神の実年齢は分からない、だから彼女からしたら私でも少女の範囲かもしれないな」
 レイナの問いにマデリーネは答える。
「クリスの言いたい事を言ったら、マデリーネさまも公園から離れるですの」
「あぁ、頼むよ。小さなエージェント」
 クリスティンの言葉を聞いて、マデリーネはこくりと大きく頷いた。

「貴女もまた忌み子なのでしょうか」
『さぁ? 確かに迫害されていた記憶はありますわよ。人間とは、己と少し違えば嫌うなんて愚かな生き物ですわね』
 ファリンの問いにアルノルディイは無邪気な笑い声を上げた。
「貴女の目的は冥人様。私情にて動かれているようにお見受けしますけれど、貴女も王の命で侵略を為さんとしておられるのです?」
『だって、彼の気持ちと目覚めた力は最高に美味しそうだからですわ。ふふ、わたくしは妹を増やす為なら何でもしますわ』
 ファリンの問いにアルノルディイが恍惚とした表情で空を見上げた。
「善性愚神の登場により此方も混乱しているのです。愚神の殲滅以外の道を人類が選びうるのか知りたいのです。戦争はただ武力に訴えるだけでなく、例えば……敵の攻撃的な王を廃し、穏健派の者に協力して下克上を為さしめ君主に据える方法もございますの」
 と、思うことは口にするファリン。
「この時機に及んで、柊の言葉が……敵なのかというエージェントの問いに対し『理解できない』と。何故あなた達は私達を殺すのと問い返した言葉が大きな意味を持つようになったのです。わたくしにとっては善性愚神などより、貴女方姉妹のほうがよっぽど近しい存在に感じます。あの言葉の真意は……貴女方は人類を滅ぼす意志が無いのですか?」
『一言で言えばノー、やはり人間はわたくし達からしたら『命を狙う者』……貴女達が『守る』と言っても、人の意思からは敵だという気持ちは消えません。そして、もし世界各地に愚神が生きるとしても、死ぬより苦しい気持ちを味わうだけですわ。あと、柊は……やはりわたくしの元に置くべきだったようですわね。人を守るのが柊の葉でしたが、とある事情により彼女は人に近しい状態でしたわ。だから戸惑っていたのかもしれませんわね』
 と、静かに語るアルノルディイは、小さな胸に手を当てた。
「貴女が敵でしかないのなら、わたくしに言えるのは終戦を迎えるその日までともに健在であれと。それだけですわ。無論、貴女が虐殺に及んだときは身命を賭して戦いますが。矛盾しているようですけれど、敵という立場ではこれが示せる精一杯の友情ですのよ」
 凛とした声でファリンは言った。
 戦う意思があるという事を言ったアルノルディイの言葉に、ファリンは
彼女が虐殺等の非道をした場合は、負の感情ではなく花を手折る様にこの手で倒す事を決めた。
「わたしが戦う理由は、復讐ですらない八つ当たりよ! ムカつくから当たってるだけ! なのに正義の味方だって褒めてもらえる。愚神は人を喰う侵略者だから」
 と、共鳴姿のセレティアは吠える。
「わたしの仇は何処にいるかわからない。音沙汰もない、顔も知らない。猫の従魔を使うって事だけしか……。でも絶対にあなたたち姉妹ではないのです。お母さんを……、優しくて上品で、綺麗だったお母さんにあんな事ができたのだから、女の子じゃないのよ! あなたたちを恨む理由はわたしにはありません」
 わなわなと肩を震わせながらセレティアは言葉を投げる。
「善性愚神はわたしも偽善者だって思ってます。武力によらずHOPEを無力化する美人局。女王、わたしがあなたに友情を示せば、きっとあなたもあんな風に人に媚を売らされる! だからわたしはあなたを『敵』として扱う。前にも言ったけど、あなたたち姉妹の誇りを守る為に戦う。それはこういう意味だったのです」
 今現在、H.O.P.E.で善性愚神が行っている事を思い出すセレティアは、善性愚神の名前に無かった事に内心ホッとしていた。
 ニコニコ笑顔で、平和に見えるその光景は何処か違和感を感じて、周りは『良い事じゃない!』と言うその言葉は偽りの言葉に聞こえた。
 だから、アルノルディイの『偽善』という言葉に同意した。
「人類と愚神が敵対しているには理由があります。その問題点の解決無しに、解り合える友達になれるなんて言えるほどわたしは自分に酔っていない。ケジメとか……引くべき一線を越えない事こそ相手を尊重するという事」
 だから、セレティアは決意した。
「わたしはあなたを殺すつもりで戦う。そのかわり戦ってわたしを負かせたら、そのときはわたしをあなたの妹の列に加えてください。お姉さんとして尽くし慕いましょう。それが正々堂々という事なのよ」
 と、強い意思を込めてセレティアは、アルノルディイの瞳を見つめた。
『そのお言葉、貴女の意思として、わたくしは受けとりましょう。小さな花よ、大輪に咲かせる時来たれば』
 アルノルディイはこくりと頷くと歌うように答えた。
『そういえばわたくしの事ばかりですけれども、他の愚神について話して欲しいですわ』
 少し間を置いてアルノルディイは言った。
「クリスにとって、愚神は愚神ですの。それぞれ、言葉だけではなく、全てのモノには表と裏があるとクリスは思ってますですの。真実は一つだけではないですの。クリスがクリスで在るように、そのモノはそのモノとして在るだけだと思いますですの。喰うか喰われるかの関係が、きっと上手く絡み合っていないだけ。という気もしますですの。冥人さまは、一つしか見えてないと思いますですの。それが[憎悪]であってでも……ですの。裏には表が、表には裏が在ると。ですの」
 クリスティンは辿々しく言葉を紡ぐ。
「今までの事もありますから、容易に信用する事は出来ません……それでも何十年、何百年先の未来の話だとしても、共存できる未来が訪れ、争いがなくなるとすれば、今のわたし達の行動も意味のあるものなのかもしれませんね 」
 ふと、自分の過去が脳裏に過ったがそれを振り払う様に首を横に振ると、咲は優しい笑みを浮かべたまま自分の胸に手を置いた。

 仲間に紅茶を配り終えたГарсияは、やっと届いた古い資料に目を通す。
(愛情を抱く事を禁じている……つまり、彼女に抱く感情の深さにより、彼女はその方の操作、もしくは束縛する事が可能なのかもしれません。……どちらにしても注意しなければ)
 しかし、アルノルディイ自体の力は未だに不明な部分が多いので、Гарсияは仲間に情報を共有すると直ぐに冥人の近くに待機する。
 もし、戦闘が起きたらアルノルディイが狙うのは冥人の可能性が高い、そして彼はまた感情に呑み込まれて戦うだろう。
 その時、最終的に全員が無事に帰れる保証は無い。
 話終えたクリスティンは、マデリーネの手を引いてこっそり取ってきたオーパーツを手に公園から出てくる。
「大丈夫ですの? マデリーネさま」
「あぁ、デクスワークばかりしていたから……少々……息が……」
 クリスティンは肩で息をするマデリーネを見上げた。
『しかし、あの愚神はあまり近くに居たくないのよ。こ、怖いというワケじゃないのよっ! ほ、ほら、マデリーネを守らないといけないからよっ!』
 レイナは背中に冷や汗をかきながら言う。
『想定外ですわね……』
 アルノルディイが低く唸る。
『……さて、ここまでですか』
 構築の魔女は増加するライヴスを見て呟いた。
『央、嫌な予感がするのよね』
 幻想蝶から聞こえるマイヤの声は少し緊張していた。
「戦う気では無い事を祈るしかないだろうな……」
 体を屈めて、央は幻想蝶に触れて共鳴出来るように準備をする。
『本当、賢い子が居て妹にしたい位ですわ。良いでしょう、クリスティンという子の賢明な行動と、言葉に免じて退かせていただきますわ』
 花弁が視界を覆う程に舞い、アルノルディイの姿が見えなくなった。
 そして、花弁が全て地面に落ちた後には彼女の姿は消えていた。
「愚神と対話する機会も増えましたが……やはり、花の女王とは最終的に戦う運命なのでしょうか?」
 由利菜は何も無かったかの様に起きた一般人を見つめた。
『それは向こうの出方次第だな……』
 アルノルディイが居た場所を見つめながらリーヴスラシルは答えた。
 緊張の糸が切れたエージェント達は、その場に座り込んで少し冷めた紅茶を口にした。

『まさか、狙っていた子とオーパーツを守られるとは……逸材じゃないのか?』
 春君が目覚めたアルノルディイと、帰還したゲンティアナに言った。
『女王さま、私はあの子が欲しい……』
『ふふ、また会ったら妹達に言っておきましょう』
 アルノルディイが、ゲンティアナの小さな頭を撫でると周囲にゲンティアナの花が咲いた。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • 幽霊花の想いを託され
    花邑 咲aa2346
  • 守りもてなすのもメイド
    Гарсия-К-Вампирaa4706
  • 春を喜ぶ無邪気な蝶
    クリスティン・エヴァンスaa5558

重体一覧

参加者

  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
    人間|11才|女性|攻撃
  • 柘榴の紅
    セラスaa1695hero002
    英雄|9才|女性|ソフィ
  • 幽霊花の想いを託され
    花邑 咲aa2346
    人間|20才|女性|命中
  • 守るのは手の中の宝石
    ブラッドリー・クォーツaa2346hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • 危急存亡を断つ女神
    ファリンaa3137
    獣人|18才|女性|回避
  • 君がそう望むなら
    ヤン・シーズィaa3137hero001
    英雄|25才|男性|バト
  • 守りもてなすのもメイド
    Гарсия-К-Вампирaa4706
    獣人|19才|女性|回避



  • 春を喜ぶ無邪気な蝶
    クリスティン・エヴァンスaa5558
    人間|10才|女性|防御
  • 山瑠璃草
    砺波 レイナaa5558hero001
    英雄|16才|女性|バト
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