本部

エイプリルフールIFシナリオ

【AP】魔法少女にお願い!!

落花生

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2018/04/11 15:40

みんなの思い出もっと見る

掲示板

オープニング

 この【AP】シナリオは「IFシナリオ」です。
 IF世界を舞台としており、リンクブレイブの世界観とは関係ありません。
 シナリオの内容は世界観に一切影響を与えませんのでご注意ください。

●魔法少女の契約
 OLのアルメイヤは、会社帰りの夜道を歩いていた。
 就職してから、毎日が同じことの繰り返しで面白くない。だが、刺激が必要だと嘆くほど子供でもない。
『こういうとき子供だったら……夜空から友達が降ってくればいいのにとでも考えるのかもな』
 そう呟きながら、アルメイヤは夜空を見つめた。
 そして、自分に接近してくる流れ星を見つけてしまった。

『なんだ、なにが起こったんだ!』
 目を白黒させて驚く、アルメイヤ。
 彼女の足元には、光る球体が落ちていた。自分の記憶が正しければ、この球体は流れ星で、間違いなく空から落ちてきたはずだ。
『隕石って、落ちたらすごい被害がでるはずでは……』
 落ちてきた流れ星は、何も壊さなかった。
 壊れたのは驚いた拍子に折れた、アルメイヤのヒールぐらいである。アルメイヤは信じられないという顔をしながら、空から落ちてきた球体を指でつつく。
 その時――球体は少女の姿に変化した。
 小柄な少女は、乏しい表情でアルメイヤを見つめた。夢見るような瞳に見つめられたアルメイヤの心臓が高鳴る。
「私の遠い星からやってきました。私の星を滅ぼした敵を追いかけるために……。でも、私一人の力では敵には敵わないでしょう。どうか、私と契約してまほ――」
『契約しよう!!』
 アルメイヤは、叫んだ。
 エステルは、無表情ながら口元を引きつらせていた。
「自分でいうのもなんですが……私みたいな怪しい人と即決で契約するのは……その無用心ですよ」
『いいんだ。このまま君が去って、別の人間と契約することが耐えられない!!』
 声をかける人間を間違ったかもしれない。
 エステルは、そのとき思った。
「……これぐらいやる気があったほうが、過酷な運命に耐え切れるかもしれません。では、改めて」
 エステルが手を伸ばす。
 アルメイヤの指がきらめき、そこに銀色の指輪がはまった。
「あなたには……私と契約して魔法少女になって……もらいます」

●変身
 アルメイヤとエステルは、とある小学校へとやってきていた。日中であるから、なかでは当然授業が行なわれていることだろう。そんな場所にやってきた理由――。
「……ここから敵の気配がするの」
「ここで変身しなければならないのだな」
 アルメイヤは、目の前の小学校を見る。
 日中の小学校だ。
 きっと生徒がいっぱいいる。近頃の小学生は侮れない。携帯も持っているし、SMSだってやっているかもしれない。
 万が一目撃されて写真を拡散されたら、ちょっと泣いてしまうかもしれない。これまではできるだけ夜に戦っているが、今回はどうしても日中に戦う必要があった。なにせ、敵は日中の学校に潜んでいるのだから。
「変身しないと……敵の真の姿は、見えないはずです」
 エステルの言葉に背中を押されて、アルメイヤは自身の指輪に唇を落とす。バラをかたどった赤い石の付いた指輪は、口付けを受けて赤くきらめいた。
 その光は、アルメイヤを包み込み……彼女は姿を変えた。
 ただのOLではなく、魔法少女に。
『くっ、なんど変身しても慣れない』
 アルメイヤは拳を握った。
 年齢からいってちょっと無理のある短さの赤いスカート。しかも、プリーツがはいっていてちょっと制服っぽいデザイン。胸元には、これまた可愛らしい大きなリボン。リボン中央のブローチには、真っ赤な宝石がついていた。
「これは……私の星で作られた最新の戦闘用ボディスーツです……」
『もうちょっと万人受けするデザインにしてほしかった!!』
 心の底からの思いをアルメイヤは叫んだ。
 そして、小学校のほうを見る。変身した彼女の目には、他の人間とは違う気配を身に纏う存在が屋外にいても分かった。
『なるほど、今回の敵は学校の教師だったのか』
 アルメイヤは、飛び上がる。
 彼女の体は空中に浮き、その手には赤い杖のようなものが握られていた。
『この杖で校舎に攻撃を加えて、敵を外へとおびき出す!』
「……もうちょっと魔法少女らしい作戦を考えて欲しいです」
 背後で実態を失ったエステルが、はぁとため息をついた。

解説

・魔法少女になって戦ってください。

小学校(13:00)――六階建ての小学校。全校生徒は五百人ほどで、アルメイヤの攻撃を受けると生徒たちは外に逃げ出す。教師が戦闘にはいると、魔法少女ではなく教師のほうを応援する。校庭は広く、遊具は端にしかないため見晴らしがとても良い。

教師――小学校の女性教師だが、その正体はエステルの故郷を滅ぼした敵の一人。生徒たちをワザと外へと避難させ、アルメイヤへの人質にしようとしている。なお、戦闘になるとアルメイヤと同じ魔法少女風の恰好に変身する。武器には杖を使用する。自身がピンチになると生徒の一人を人質にして逃げようとする。
キラキラ・アタック……杖で水を発生させて、その水相手に勢いよくぶつける。
サファイヤ・シャワー……宝石を大量に発生させ、それを雨のように降らせる。宝石は地面に落ちると爆発する。
ジェム・バリアー……巨大な宝石を発生させ、盾にする。


アルメイヤ――エステルと契約した魔法少女(?)。炎の杖を持っており、それによって炎系の攻撃を繰り出す。自身の姿を恥ずかしいと思っており、早期決着を望んでいる。そのため、被害をあまり考えず強力ワザを連発する。他の魔法少女の存在は知らない。なお、変身中のアルメイヤは敵の存在を見抜くことができる。

エステル――アルメイヤと契約した宇宙人(?)。アルメイヤが魔法少女になっているときは実態がなくなり、アルメイヤにしか視認できなくなる。アルメイヤの戦闘を荒っぽいと思っているが、地球の常識がないのでそれが地球の普通だと思い込んでいる。

リプレイ

 ここは、とある小学校。
 授業中のせいもあって、保健室は静かなものであった。だが、なにやら外は騒がしい。ロゼ=ベルトラン(aa4655hero001)は、重い腰を持ち上げて窓の外を見る。空中には、真っ赤な魔法少女が浮かんでいた。それを見たロゼは、ぺろりと唇を舐める。
「ロゼさんっ! 早く変身をっ!」
 黒縁眼鏡の柴犬のヌイグルミ高野信実(aa4655)が叫んだ。
 その声を聞いてもロゼは驚くことなく、むしろ益々好戦的な表情になっていった。
 アルメイヤは、叫びながらも校舎に攻撃を放つ。
『早く、終われー!!』

●変身!
「な、何よ……また隕石!?」
 今月に入って二度目よ、と風深 櫻子(aa1704)は叫ぶ。
『隕石では……ありません! これは他の魔法少女の波動です』
 ガブリエル(aa1704hero002)は、危険を叫んだ。凛々しい顔も可愛いな、と櫻子の顔がやにさがる。櫻子が何を考えているかうっすら理解したガブリエルは、額を押さえた。
 二週間ほど前、ガブリエルは櫻子と契約した。今思い出しても、アレでいいのかと疑問に思う契約であった。なにせ櫻子ときたらガブリエルを見た途端に「キター!! ロリキター!! あたしのロリコンチャートがギュンギュン更新してらぁ!!」と拳を突き上げて叫んだのである。ちなみに、当時深夜だった。
『え……あの、契約……』
「するする、余裕余裕!! 印鑑ついちゃうし、連帯保証人にもなっちゃう!!」
 この人の人生は大丈夫だろうか、とガブリエルはうっすら思った。
 もう冗談にならないような借金を背負ったりしていないだろうか。ともかく、ガブリエルは櫻子の情熱に背中を押されるような形で彼女に力を与えたのだ。
『どうやら、近くの小学校に敵が現れたようです』
「近くの小学校? もしかして、最近体操服のデザインを変えた学校のこと?」
 それ、知らない。
 そんな思いをこめて、ガブリエルは首をふる。
『敵は、変身しないとわからないので……。お姉さま、変身です!!』
 ガブリエルの願いを受けて、櫻子は指輪にキスをする。白い光が彼女を包み込む。
『お姉さま、可愛い!!』
「でしょー? SNS映えしまくりよー。今度エルちゃんに着せたげるわ。はっ、こんなことをしている場合じゃないわね。ご近所のロリを守るためにも、急がないと!!」
 そんな魔法少女の変身を盗み見る、眼鏡の姿があった。
「くっ。このままでは討伐に出遅れて視聴率が下がってしまうミン!」
 悔しそうな声だが、いったいどこで発音しているのか不明である。なにせ、彼の姿は手足が付いている眼鏡だ。
「でも、これはチャンスでもあるよな。あの魔法少女を撮影して、俺たちも変身だミン!!」
 目指せ、高視聴率!
 最近のテレビ局はシビアだから容赦なく打ち切りを提案してくるぞ、と眼鏡もとい藍那 明斗(aa4534)は力説する。一方で、クロセル(aa4534hero001)の顔はさえなかった。
『また、見たくもないし、見せたもない姿にならないといけないのかな?』
「つべこべ言っている時間はないミン。いざ、変身!!」
 明斗のカメラが、魔法少女を盗撮する。
 紛れもない犯罪行為だが、これが力を失った明斗が唯一魔力を集めることができる方法であった。
「うおぉぉぉぉ!!」
 眼鏡は、野太い声を上げて、変身する。ここまできたらもう後には戻れないクロセルも覚悟を決めて変身した。
『やっぱり、またスカートになってる……他の格好にしてよーっ』
 クロセルが身に着けているのは、ナース服をイメージした衣装だ。清潔感を感じながらも、実際の病院ではまずお目にかかれないスカート丈が魅力である。
「仕様だから無理だミン。言わなきゃバレないミン!」
 そういって、明斗は胸をはる。
 とても立派な大胸筋、抱きしめるものを壊すために存在しているとしか思えない上腕二等筋。「魔法少女とはなんぞや」と問いかけたら「筋肉だ」と答えが返ってきそうな外見に変身した明斗に、クロセルはぼそりと呟いた。
『ゴリキュア……』
「違う! 魔法青年プロティン☆ ミントだ! いくぞ、クロセル。泣いている誰かを助けるために、俺達は戦うんだ」
『僕と一番最初に出会ったとき、魔法少女の活躍を故郷へと放送するのが使命だっていってたよね……』
「もうちょっと仲間とか友情とか子供受けするものを入れてほしいって、プロデューサーに言われたんだミン」
 反論するのも面倒になってクロセルは『あ、そっ』と呟いて現場へと急いだ。
「ほら、さっき言ったとおりだよ。この街には他にも魔法少女的な人が居て、色んな騒動が起きる可能性が高いんだよ。今、通った人も魔法少女なんだよ』
 ゴリラのほうは若干違うけど、と伊邪那美(aa0127hero001)は自分達の隣を走り抜けていった二人組みを指差す。
「世界ではなく、この街でって言う所が現実味があるな」
 となりで頷く美少女(元御神 恭也(aa0127))は、はっとした。
「おい、契約を結んで戦う事は了承したが、女になるとは聞いていないぞ」
 実は、恭也は今さっき魔法少女の契約を結んだばかりだった。そのため、自分が美少女になっていることにも今気がついたのである。
『えー、さっき署名した貰った契約書の裏に確りと書いてあるよ……すごく小さな文字で』
「命を捨てる覚悟はあるが、男を捨てる覚悟は無い。この契約は無効だ」
 クーリングオフを要求する、と恭也は伊邪那美を睨みつける。魔法少女の契約書にサインと印鑑を押す時点で何かおかしいなとは思っていたが、詐欺まがいの契約に引っかかってしまっていた。自分がなさけなくなるが、今の姿はもっと情けない。
 恭也は、まごうことなき美少女に変身していた。腰まで伸びた艶やかな髪に、漫画でしか見ないようなミリタリーロリータの衣装。硬いイメージのジャケットの下に柔らかな印象のスカートというのは男の恭也から見ればちぐはぐな印象だが、伊邪那美によると『それがいい』らしい。
『別に良いけど、騒動を納めないとそのままだよ? あと、一度でも契約内容を履行したら無効には出来ないからね』
「……この悪魔が」
『ふふふっ、神様は扱い方を間違えたら怖いんだよ』
 
●激突、魔法少女
 校庭にアルメイヤの他にも、もう一人の魔法少女が現れていた。透き通るような白い肌の少女が身にまとう衣装は、どこか趣が暗い。けれども、その可憐な装いこそ染井 桜花(aa0386)が魔法少女である証拠であった。
『死神令嬢……このあたりに何度も姿を現した、魔法少女』
 エステルは怯えたように、アルメイヤの背に隠れる。
「……ここは、わたしの縄張り。……平和を乱すことは……許さない」
 赤い瞳で、桜花はアルメイヤを見つめる。
 そして、アルメイヤが校舎を攻撃したせいで避難してきた生徒の影へと文字通り飛び込んだ。
「……眠りなさい……全てが終わるまで……そして忘れなさい」
 眠りの刃で子供一人の意識を奪い、死神令嬢はその子を月夜の楽園へといざなう。
「……わきまえて。わたしたち魔法少女は……けっして人々に姿をさらしてはいけない。闇の存在でいなくては……人々の心の平和は守れない」
 桜花は、なおも子供たちの意識を奪って自分の楽園へと招待していく。
『死神令嬢さん、この町には私達もいるんですよ』
「……死神令嬢ほどの知名度はないがな」
 CODENAME-S(aa5043hero001)と御剣 正宗(aa5043)の登場にも、桜花は表情を崩さない。
「……生きていたか」
『ちょっと、大きな戦いをしたせいで最近は治療に専念していただけです。さぁ、正宗さん、いまこそ私の力を使うときです』
 CODENAME-Sの言葉に、正宗は頷く。
「我が下僕シルキーよ! このボクに力を与えたまえ!」
 正宗の体が浮き上がり、大きな翼が姿を現す。その翼は正宗を包み、一瞬で彼の姿を変貌させた。左半分が白、右半分が黒のシンメトリーのゴシックドレス。片目を覆い隠す、眼帯。
「ふふふ……ボクの封印されし瞳がうずく……ふふふふふ……ははははははッ!! 光と闇が備わり最強に見える。新たな復活を遂げたボクたちに、敵などいない!!」
 魔法少女となった正宗は、アルメイヤを見て笑う。
「ボクのことは、白黒の魔剣士と覚えておいてくれたまえ。死神令嬢を追い越す、魔法少女の名だ!」

●影の少女
『……と、言うわけで急行してみたけども……こうしてみると、けっこういるんだね、魔法少女って』
 セーラー服姿の淡島時雨(aa0477hero001)は、双眼鏡で他の魔法少女の様子を確認する。小学校の屋上に彼女はいたが、他の魔法少女たちは彼女たちの存在を感知してはいないであろう。
 校庭には、魔法少女が三人。
 近隣では名の知れた二人がでてきたが、アルメイヤは見たことがない魔法少女だった。
「ああ、さらに別の方向からも魔法少女の気配がある。一人は眼鏡でゴリラだ」
 飯野雄二(aa0477)の言葉に、時雨は首を傾げる。
 意味が分からなかったのだ。
「え、あのゴリラ……ホントに俺達と同業?」
 ぶつぶつ独り言をいう成人男性は、これでもれっきとした魔法少女のマスコットである。一見すると女子高生を誘拐してきた男に見られてしまうが。
「納得いかないが、これも仕事だ。しかたがない、ちゃっちゃと変身してアレを片付けろ」
『……はぁ。わかったよ、雄二』
 時雨はため息をつきながらも光に包まれる。いつもならば時雨は可憐な魔法少女になっているはずだが、彼女の衣装は野暮ったい迷彩服に変わっていた。魔法少女というより、ただのミリオタである。
『ねぇ雄二、何だか普通の迷彩服なんだけど。いつもはほら、迷彩柄のドレスとかじゃなかった?』
 結構気に入っていたドレスだったのに、今はダブダブのズボンである。
「ああ、改良型だ。生地は若干薄くなったけども防御力は結構上がってる。……前の服を見たお偉いさんが”なんだこの格好は、現場スタッフを何だと思ってるんだ”ってえらくオレの上司に怒ったらしくてなぁ」
 マスコットの世界で色々あったらしく、雄二は遠い目をしていた。
『とりあえず、雄二の上司が大変な目にあわないための衣装チェンジだってことは分かった』
「その納得の仕方、社会に出たときにきっと役に立つぞ」
 ぐっと親指を立てて、雄二は笑う。
 時雨は「まぁ、いいか」と呟きながら、双眼鏡を覗いた。
『もうすぐ、ゴリラが射程にはいる』
「そっちは、敵じゃない! 俺達の敵は、これから出てくる悪いやつだ」
 
●再び激闘
 木の陰に隠れて、校庭を観察する男の姿があった。彼の方には小さな白猫がちょこんと乗っていて、不安げな瞳で男の方を見つめる。
『あの方たちは、わたくし達の先輩ですよね?』
 アルテア ヘレスティス(aa0780hero002)の言葉に、晴海 嘉久也(aa0780)は頷く。
「片方は知らない顔ですが、もう片方は死神令嬢という有名な魔法少女です。わたし達の仕事はあくまでアルメイヤが魔法少女に相応しい人間かどうかの素行調査ですが……胸騒ぎがしますね」
 アルテア、と嘉久也は白猫の名を呼ぶ。
「わたしたちも変身です。アルメイヤには、魔法少女として相応しいものが欠けている」
『分かりました。――全ては愛と希望と勇気の名のもとに』
 厳かにそれを唱えた白猫の姿は、光に溶ける。
 彼女の正体は猫ではない。その正体は、ディレティアの魔法の根源たる魔獣である。故に、アルテアは自分の肉体の形を自由に変えることができた。今のアルテアは、猫でも魔獣でもなく、白銀のロッドであった。太陽・月。ハートの意匠が施されたそれを白マント姿の嘉久也は握った。
「魔法美青年・ディレティア――只今、参上」
 嘉久也は瞬間移動で、アルメイヤの前へと現れた。
 そして、咄嗟に放たれたアルメイヤの攻撃をアルテアで防ぐ。
『男の魔法少女だと!』
 アルメイヤは驚いたように、嘉久也を見つめた。
「いいえ、魔法美青年です。愛と勇気と希望の為の魔法少女で、それが絵空事だからこそ守らなくてはならないのに憎悪で魔法を振るうとは如何な事ですか!? わたしたちが真もべきものをもう一度考えてみてください。そう――あなたのパートナーを契約したときの気持ちを!!」
 嘉久也の言葉を聞き、アルメイヤは思い出す。
 エステルと最初にあったとき――この子を誰にも渡さない、と誓った。
 燃えるアルメイヤの瞳を見て、嘉久也「話が上手く伝わっていないような気がします」と小さく呟いた。
『美青年って、自分でいって恥ずかしくないんじゃろか?』
 嘉久也たちの様子を隠れて撮影していた飯綱比売命(aa1855hero001)は突っ込んだ。
「実際に顔はいいし、言うぶんならまだ恥ずかしくないわよ。無理やり女児用のセーラー服を着るよりはね」
 橘 由香里(aa1855)の厳しい言葉に、飯綱比売命は唇を尖らせる。
『今の妾は、小学校に体験レポをしているただの実況者じゃ。最近の子供は、テレビよりもネットなんじゃ。わらわもネットで子供に大人気の実況者になるんじゃ!』
「はいはい……」
 突っ込むことも面倒になった由香里は、両手を上げて降参した。
『ほら、わらわは少女って設定じゃし! きっと動画をあげれば大きいお友達にも大人気実況者になれるのじゃ』
 設定って、なんだ。設定って。
『……ところで、気がついておるか? この地には、どうも同輩が多くおびき寄せられているようじゃ』
「わたしには、カオスな人々の同窓会みたいな光景にしか見えないけど」
 巻き込まれたくないな、というのが由香里の本音であった。
『たわけ! わらわたちも魔法少女のはしくれぞ。変身し、悪を滅するために戦うのじゃ』
「さっきまで実況とかいってたくせに……はぁ、しょうがないわね」
 二人がそろって変身しようとしたその時、女の甲高い笑い声が響いた。
「魔法少女ども、馴れ合いはそこまでだ。今日こそ、貴様らの魔法エネルギーを私が食らいつくしてやろう。そこの小娘の故郷を破壊しつくしたときのようにな」
 声の主は、生徒と共に避難していたうら若い女性教師だった。彼女の体が光に包まれ、アルメイヤと似た魔法少女風の衣装を身にまとう。
「何だって? あの優しかった国語の先生が!?」
 生徒の避難誘導をしていた海神 藍(aa2518)は、驚きに目を見開いた。彼はこの小学校の教師であり、敵として変身した魔法少女の同僚でもあった。教師という夢もあるが過酷な商売を励ましあって乗り越えてきた、優しい微笑の同僚。そんな彼女が、敵側の人間であったなんて信じられない。
『変身しないとわたしたちの力じゃ敵わないよ、兄さん!』
 掌に乗るほどの小さな人魚――禮(aa2518hero001)が「しっかりして」と藍を励ます。
『生徒のために変身して、兄さん!!』
 お願い、と禮は藍に懇願した。
「やるしかないのか……あの服装を?」
 だが、しかし可愛い生徒たちを守るためには背に腹は変えられない。断腸の思いで、藍は変身する。
 ざぱーん、とどこからともなく聞こえてくる波の音。
 その音と共に黒と青の光に包まれ、藍は変身した。
 魔法少女(元男)に。
「ほほえみ、おとぎの海!」
 両手で胸に作る、ハートマーク。
 よく分からない力で、ピンクの光がハートに宿った。
「しゅばるつ★ ろーれらい、ただいま参上!!」
 死にたい、心の底から藍はそう思った。
 せめて、このキメ台詞を止めたい。
『ダメですよ、兄さん。この台詞をいうことで、わたしたちは本来の力をようやく発揮できるんですから』
 禮に諭されて、藍は肩をすくめた。
 どうして、人生には逃げ道がないのだろうか。
「まさか、職場にお仲間がいるなんてね」
 ヌイグルミの信実を抱いたロゼが、生徒たちを背中に隠して前にでる。
「そして、この町にこんなにたくさんの魔法少女がいたなんて……」
 ヌイグルミから警官の制服姿の少年に姿を変えた信実が、それぞれ個性あふれる魔法少女たちに驚いていた。
『あたしたちの地球を誰にも汚させたりはしない! ある時はベテラン養護教諭! ある時はアラフィフ変身ヒロイン! しかしてその正体は……』 
 ロゼの周囲にバラの花びらが撒き散らされる、その花びらに人々の視線が奪われた一瞬。その一瞬で、艶やかな戦士の変身は終了する。
『薔薇の乙女、ルージュローズよっ!』
 豊満な肉体を包み込む、ワインレッドのボディースーツ。宝石が煌くロングブーツ。ハート型に開いた胸元に引き寄せられる視線に投げキッスを一つ返して、ロゼはルージュサーベルを握る。
『生徒のために、戦うわよ! しゅばるつ★ ろーれらい!!』
 その名前で呼ばないで、と藍は顔を両手で覆っていた。
「小学生に手を出すとは、神様が許しても私が許さない。ロリコンの風上にも置けぬ変態め。聖なるロリ魂で燃やし尽くしてくれるわ」
 真っ白な衣装に身を包んだ櫻子が、ファンシーに装飾された槍を持って戦いに参上する。「間に合った、ロリの神様ありがとう」と櫻子は内心小学生を守れる喜びに浸っていた。
「契約で得たこの力……八つ当たりに使わせてもらう」
 美少女もとい恭也が、敵の魔法少女の背中に回りこむ。
 恨みつらみを乗せた拳が、敵の魔法少女の背中を殴打する。
『恭子ちゃん、ボクの営業成績の為に頑張ってね~。ボクの神格が上がれば管理地域が増えて新たな子と契約が結ぶ事も可能だよ。新たな権能も追加できるから今は影しか無いけど、追加されれば火とか使えるようになるんだよ。これは初回契約サービスの一部だよ。お徳でしょ? ボクと契約してよかったでしょ?』
 一緒に頑張って行こうね、と伊邪那美は言うが、恭也は「契約は白紙に戻してやる」と低くうなるばかりであった。
「白黒の魔剣士の新しい力を見せてやろう。シルキー、もっと、もっと……もっとボクに力を!!」
 天を仰ぐ正宗に、CODENAME-Sが己のありったけの力を注ぎ込む。
『正宗さん、あなたこそこの地を治めるのに相応しい方です。どうか、私の力を全てお使いください。私は、ずっと見ていますから』
「シルキーよ、おまえの献身に答えよう。お前の心に答えよう。お前の力を得て、ボクは最強になる!!――カオスドライブ!!」
 高笑いを上げながら、正宗さんは敵の魔法少女に向っていく。技の効力によってかかる肉体への負担など度外視して、自分の力を証明するために正宗は戦う。
『これ以上は……正宗さんの体が持ちません』
「そんなものどうでもいい! シルキー、ボクとおまえのコンビは最強だ。誰にも負けない、死神令嬢にも勝つのだ。だから、今ここで負けるわけにはいかない!!」
『正宗さん!!』
 もう戦わないで、とCODENAME-Sは願う。
 その願いを受けて、一人の魔法少女が変身する。
『まじかる★ 娘狐のいづなちゃん! 華麗に参上ぢゃ!』
 振袖獣耳姿の相棒に、由香里は戸惑った。だが、自分が飯綱比売命のサポートをしなければならないと思い出し、遅れて変身する。
「魔法騎士クリュスタウィリデ! この世に仇成す魔女の妄執、祓ってさしあげます! ……って、一瞬だけどシリアスな流れだったよね。あの作戦でいいの!」
『作戦にシリアスもコメディーもないのじゃ。あっそれ、コン』
 飯綱比売命の合図で、由香里は敵の攻撃をライブスミラーで跳ね返す。傍目には飯綱比売命が、技を放ったように見えたであろう。
『もう一つ、コン』
 由香里は敵の魔法少女を拘束しようとしたが、さすがに相手も油断は見せてくれなかった。
「ふざけるのは、ここら辺が限界よね。もしも、敵の魔法少女が逃げるようなことがあれば私が全力でいかせてもらうわ」
 体の線が露になる衣装に身を包みながらも、魔法騎士の鋭い瞳で由香里は戦況を見定める。この場にいるのは、寄せ集めの魔法少女たち。連携が取れていない。敵を取逃がしてしまう可能性は十分にあった。
「……降り注げ」
 桜花が小さく言葉を呟き、敵に攻撃を浴びせる。
 そして、冷えた瞳で正宗たちのほうを見た。
「わたしは……あまりに孤高でいすぎた。正宗たちがわたしに追いつき、隣に立つ日を……待っている」
 その言葉を聞いた正宗は、唇をかみ締めた。まだ自分は最強の魔法少女の座には届かないらしい、と悟ったからである。
「おっと、回復するまでの盾役はお任せください」
 嘉久也が、正宗の前に立つ。
『わたくしたちは同じ魔法少女。そして、今は一緒に戦っています。だから、もう私達は仲間ですよね?』
 アルテアの言葉に、嘉久也は苦笑いする。
 この町には、あまりにも魔法少女が多すぎる。全員が仲良くなることは、きっと難しいだろう。
『それでも、目的は同じだよ』
 嘉久也の耳に、女の子の声が聞こえた。
 それと同時に、敵の魔法少女が屋上から放たれる弾丸に撃ちぬかれる。
 その弾丸は、校舎の屋上から放たれたものだった。
『上司とか提出書類とか、そういうくだらないものにボクらは縛られている。でも、一度変身してしまえばこの町を悪から守る聖なるヒロインだ。悪をくじく、その目標一つでボクらは仲間になれる』
「熱いねぇ。書類と上司に縛られているのは俺たちだけなような気がするけど……。時雨、敵の心臓を外すなよ」
『雄二こそマスコットなんだから、可愛く射撃のサポートをしてよね』
 無理難題を言うな、と雄二は苦笑いをした。
『俺たちマスコットにできるのは、力を授けることだけだ。その力を正しく使うのが、魔法少女だろ』
 時雨は、引き金を引く。
「どうやら、俺達も間に合ったようだミン」
 明斗はカメラを構えるが、弾丸を避けた敵の魔法少女に体当たりされて眼鏡が割れた。眼鏡の妖精だった明斗は筋肉を失い、眼鏡に戻った。
「くっ、眼鏡に筋肉が付かないことが敗因か……」
『敵の後ろに警戒せずにいきなり現れたのが、最大の原因のような気がするよ』
 明斗がただの眼鏡に戻り戦力が半減したクロセルは、他の魔法少女たちの回復を行い始める。
「ロゼさん、俺が抑えているうちに攻撃を!!」
 眼鏡に戻った明斗を踏まないようにしながら、信実は敵の魔法少女を拘束する。
『薔薇は、枯れないっ! 美しい姿を永久に――ローズモンスーン!!』
 ロゼが放った必殺技が敵の魔法少女に命中し、悪の道に落ちた魔法少女が倒れる。
『アルメイヤちゃん、アタシ達を見て。誰でも魔法少女になれるのよ♪』
 必要なのは、大切なものを守るために最強になれる少女の心。
『それさえ持っていれば、世界中の誰でもが魔法少女なの。年齢も性別も関係ないわよね』
「そうっすよ。なんせ、ロゼさんの年齢はご……」
 お喋りな信実の頬を、ロゼは引っ張る。信実は涙目になっているが、ロゼは微笑んだままである。
「はははっ。コレで終わったと思うな。必ずやお前達の魔力を食べて、この星を死の星へと変えてやる。そのためにも……こっちに来い!!」
 敵の魔法少女は、小さな女の子の腕を乱暴に掴んだ。
「な……! ミナミちゃん!?」
 担任のクラスの生徒を奪われた藍から、羞恥が消えた。そして、さきほどロゼが口にした魔法少女に必要なものを彼は宿す。
「私の生徒を……かえせ!」
『魔力が高まってます、行けますよ!』
 せんせー、頑張って。
 自分の後ろで、クラスの子供達が応援してくれている。何が起こっているかわからない子もいるだろうし、怖くて泣いていた子もいた。それでも、先生である藍が何とかしてくれると信じて応援してくれている。
「海の女神よ。どうか、そのお力をお貸しください!!」
 藍の願いを聞き入れ、敵の魔法少女の足元から鉄砲水が噴出す。その水流に吹き飛ばされた女の子を藍は受け止めた。人質は奪還した。しかし、悪を討つにはまだ力がたりない。
「かつての力があれば」
『それってもしかして……』
 UNdoLOGos――明斗たちが持つ魔法の書。それを使えば明斗は真の姿に戻ることができるが、今の彼は眼鏡である。
「皆、お願いだ。俺は訳あって他の魔法少女に魔力を分け与えてもらえないと変身ができない。だからみんな――魔力を俺達に分けてくれ!!」
 明斗は、カメラを構えた。
 そのカメラに映りこむ、白い魔法少女の櫻子。
「クロセルくんが可愛いから特別よ。あっ、違うの。エルちゃん、浮気じゃないの。ちょっと愛が多いだけなの。小さい子が、可愛すぎるのがいけないの」
『浮気だなんてそんなこと……思ってないです』
 納得いかないものを感じながらも空気を読んで撮影に耐える黒髪の美魔法少女、恭也。
「こんな空気のなかで嫌だといえるわけがない……」
『じゃあ、契約続、行だね。やった!』
 遠く離れた屋上から実弾という名の魔力を届ける魔法少女、時雨。
『報告書にかかなきゃいけないことは山ほどあるけど、全部雄二の仕事だから安心して』
「相棒なのに手伝わない気だな。この鬼魔法少女め」
 アルテアが姿を変えたロッドを掲げて清浄な光を身にまとう、嘉久也。
「単なる素行調査だったはずなのに、随分と大掛かりなことになってしまいましたね。しかし、これも魔法少女の仲間の仕事というものですよね」
『はい、わたくしたちの力もどうかお使いください!』
 疲労のため未だに立ち上がれず、それでも希望の光を仲間に届ける、正宗。
「いつかボクらが最強になる……。ふっ、だから力を分けてやることなんて造作もない。全員の力が集めっても所詮はボクらが超えていく壁に過ぎない」
『正宗さん、いつかこの町の最強になりましょう』
 孤高の魔法少女桜花は、シンメトリーの魔法少女正宗に向って呟く。
「……待っている。いつか私を……孤高ではなくしてくれる……存在を」
 魔法できつね饂飩を召還して油揚げを食べさせようとする、飯綱比売命。
『いづなちゃん激熱あぶらげすぺしゃる、じゃ』
「それは、敵に食べさせる作戦だったよね!」
 まったく、と言いながら由香里も魔力を光輝せる。
 生徒達に囲まれ「先生、かわいいー」「次の授業で、またやって」「運動会で、それで一緒に走ってね」と頼まれている、藍。
「教頭、しばらく年休を頂きます……もうやだ、おうちにかえる」
『兄さん、教師はなかなか年休が取れないんですよ』
 禮に現実を突きつけられて、藍はうなだれた。うなだれながらも、藍は青い光を発する。
「すごい……みんなの魔力が集まっているよ」
 信実は、目を見開く。
『この光は魔法少女の心が一つになった証なのよね。アルメイヤさん。あなたも仲間を信じて強力してくれるのならば、この町の魔法少女の仲間入りよ』
 ロゼの言葉に、アルメイヤも魔力を輝かせる。
『私が魔法なんたらをやる理由は、常に一つだ。その一つを守るためだ』
 魔法少女たちの魔力が集まり、明斗のカメラに映りこむ。
 そして、魔法少女の魔力は明斗の筋肉の材料になった。ただの筋肉ではない。鋼鉄のように堅く、バネがあり、無償の愛で包み込むための筋肉である。
「みんなの力が、筋肉に集まっていく! ああ……これこそが、俺の本来の筋肉だ」
 明斗は、敵の魔法少女を力強く抱擁する。
 全員の魔力で強化された筋肉は、敵の魔法少女の魂すらも浄化していく。
「やっ、やめろ――私は、綺麗になんてされたくない! このまま誰かに恨まれながら、誰かの力を食らいながら、ずっと、ずっと生きていたいんだ!!」
「誰かを傷つけるその生き方を、魔法少女は許せない。だから、おまえはここで敗れるんだ」
 敵の魔法少女が、断末魔を上げながら消えていく。
 ぱしゃり、と雄二が写真を撮る。
「悪が現れ、魔法少女が退治する。そんな日常が終わったんだな」
 
 この町には、これから多くの敵が現れるだろう。
 けれども、人々は夢や希望を忘れない。

 だって、この町には魔法少女が住んでいるのだから!!

みんなの思い出もっと見る

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • ー桜乃戦姫ー
    染井 桜花aa0386
    人間|15才|女性|攻撃



  • エージェント
    飯野雄二aa0477
    人間|22才|男性|生命
  • エージェント
    淡島時雨aa0477hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • リベレーター
    晴海 嘉久也aa0780
    機械|25才|男性|命中
  • エージェント
    アルテア ヘレスティスaa0780hero002
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • あたしがロリ少女だ!
    風深 櫻子aa1704
    人間|28才|女性|命中
  • エージェント
    ガブリエルaa1704hero002
    英雄|14才|女性|バト
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • 狐は見守る、その行く先を
    飯綱比売命aa1855hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • 飛込みイベントプランナー
    藍那 明斗aa4534
    人間|26才|男性|命中
  • アホ毛も武器
    クロセルaa4534hero001
    英雄|16才|?|カオ
  • 特開部名誉職員
    高野信実aa4655
    人間|14才|男性|攻撃
  • 親切な先輩
    ロゼ=ベルトランaa4655hero001
    英雄|28才|女性|バト
  • 愛するべき人の為の灯火
    御剣 正宗aa5043
    人間|22才|?|攻撃
  • 共に進む永久の契り
    CODENAME-Saa5043hero001
    英雄|15才|女性|バト
前に戻る
ページトップへ戻る