本部

我等は贖うべきである

ガンマ

形態
ショートEX
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2018/03/06 18:51

掲示板

オープニング

●GoldenEye
 その日、H.O.P.E.へ「アルターリソース・エンタープライズのヘイシズ」と名乗る男がひとつの電話を寄越した。
「一つ、依頼をしたい。単純なオーダーだ。とある愚神の討伐なのだが――」
 落ち着いた低い男の声は、そこに深い理性を湛えていた。

「――そう。愚神の名はヴォジャッグ。間もなく捕捉したとの連絡が入る筈だ。
 今度こそ、これまで諸君の尽力を幾度もすり抜けてきた、かの忌まわしき愚神を仕留めて欲しい」


●ブルー・オールブルー

「ぬがァあああああああああああ!!!」

 ヴォジャッグと呼ばれたその愚神は、今や「海藻と海洋生物の化身」と呼んでも差支えがないかもしれない。
 全身に、そして水上型に改造したバイクに、ビッシリついた藻やフジツボやイソギインチャクなどなど。さながら沈没船の擬人化めいた愚神は、今、怒りに猛り狂っていた。

 ヴォジャッグが最後に海上の景色を見たのは実に一年以上前である。そう、【卓戯】において海上にほっぽり出されて、とんでもない爆撃を食らい、意識を失って……気が付けば海底。
 ライヴスを極端に消耗した状態で、海上に浮上する力もなく――そもそも弱った状態で浮上すればそれこそ撃破される危険性があり。ヴォジャッグはずっとずっと海の底にいた。細々と、そしてH.O.P.E.に捕捉されないように、地道にライヴスを蓄え続けていたのだ。

 が。

 ヴォジャッグは察知したのだ――海上に、強いライヴスの反応。
 そして直感的にこう思った。H.O.P.E.の連中だ!
 そうだ、きっとアイツらに違いない。
 アイツらだ。俺のモヒカンを壊し、こんなシケた海底にブチこみやがった連中だ。
 赦さねえ。アイツら……力も戻ってきた。今度こそ、ブッ殺してやる!

 かくしてヴォジャッグは水柱を上げて浮上し、古龍幇武装船と相対する。

 ヴォジャッグに古龍幇とH.O.P.E.を見分けるオツムなどなかった。とりあえず人間、ライヴスの元、愚神の糧だ、ぶっ殺してライヴス食ってやる。
 斧をひと振るい。海中から海洋生物をベースにした従魔が次々と飛び出してくる。

「死ねェ!!」

 ヴォジャッグが吼える。古龍幇一同も咄嗟のことに驚愕しつつも迎撃態勢を取った。
 その瞬間だ。戦場に凍てつく風が一陣、抜けて――巨大な氷の壁が、古龍幇の船を守った。
「……おいおい冗談だろ」
 船員が呆然と呟いた。彼が見やる先、氷の壁の上に、ヴァルヴァラがいる。

「あの愚神、ずぅっと倒せてなかった奴でしょ? ほったらかしにしてたらダメな、悪い愚神」

 無垢な少女が振り返る。その笑みに敵意は……ないのだろうか? AGWを向けはすれど、“自分達を守った”ヴァルヴァラの奇怪な行動に、船員は攻撃をすべきかどうか迷っていた。
「私達“善性愚神”は、もう悪いことするのは止めたの。人間と仲良くするの!」
 構わず、少女は笑顔で続ける。その間にも従魔がヴァルヴァラの氷を砕こうとするが、それを少女は氷の杭で撃ち落とす。そう、古龍幇の船を守り続けている。
「な、にを……」
 船員は呆気にとられる他にない。善性愚神? 人間と仲良く? つまり共闘を申し込んでいるのか、この愚神は……!?
「知ってるわ、ほんこんきょーてー!」
 そんな彼らの考えを見透かすように、幼い舌使いで少女は笑う。

 ――第二条、H.O.P.E.及び古龍幇は愚神との取り引きや協力要請に応じない事。

「私が勝手に皆を手伝ってあげてるだけだから! 私、一言も“協力して”なんて言ってないもんね。
 ……ほら、ヴォジャッグは危ないから、距離を取って体勢を立て直さないと。ヘイシズが連絡してくれたから、もうじき対ヴォジャッグの増援も来るはずよ。私はあのわらわらいるザコをどうにかしてあげるから、もう少しだけ踏ん張ってね?」


●吉と出るか凶と出るか
 君達は、支給されたALブーツやライヴスヴィークルによって海面を駆けていた。
 そうして水平線の果てに見たのは、沈没船めいた外見になったヴォジャッグ、海より数多現れる従魔、それらを相手取る古龍幇武装船、そして――古龍幇の船を守るヴァルヴァラ。

「あ、来た来た! おーい、こっちこっち!」

 いち早く君達に気付いたのは雪娘だった。こちらに快活に手を振る。
「思ったより従魔の数が多くって! ヴォジャッグのことお願いできる? 私はクーロンパンの人達を守るから!」
 言いながらも、ヴァルヴァラは氷を展開し、ヴォジャッグが船へ投げた爆裂する斧を分厚い氷で防御する。
「人間はこういう時にこう言うんでしょ。“大丈夫、誰一人死なせない”って」
 雪娘が可憐に笑んだ。一方でヴォジャッグは荒れている。「てめえ愚神のくせに!」と唾を飛ばし、殺気を向ける。
『あー、すまない、決して香港協定を破ったわけでは』
 と、通信機から古龍幇の者が連絡を寄越してきた。彼等の声にはありありと困惑が滲んでいる。無理もないだろう。……が、今は、因縁の愚神と戦いの時に集中せねば。

 ――トリブヌス級愚神ヴォジャッグ。
 【白刃】を始めとした数多の戦いにおいて、いずれもいずれも“取り逃がしてしまってきた”相手。
 その愚神が君達へ振り返る。
 そして数年前から変わらない語彙力で、こう叫ぶのだ。

「ブッ殺してやるァ!!!」
 

解説

●目標
ヴォジャッグの撃破

●登場
トリブヌス級愚神『ヴォジャッグ』
 物理特化のパワーファイター型。武器は斧。
 凄まじい機動力と耐久力を有する、ライヴスによる魔改造水上バイクに騎乗。
 バイクが破壊された場合、1~2ターン消費してバイクを復活させることができる。
▽アクティブスキル
・クリメイトダート
 広範囲への火炎攻撃。減退【2】付与
・アックスキッス
 スクエアを貫通する直線攻撃。攻撃判定を二度行う
▽パッシブスキル
・ロードキラー
 バイクによる暴走移動。ヴォジャッグが移動するスクエア上の対象に攻撃判定が発生
・グラップルボム
 「クリメイトダート」以外の攻撃・スキルが命中時、命中した対象を中心とした範囲(1)内の対象(ヴォジャッグ以外)へ2d6ダメージ。また回避を行う対象に回避時ペナルティを付与
・怒髪天
 憤怒によって拘束・気絶無効

従魔*多数
 ミーレス級メイン。おぞましい海洋生物の外見。
 ヴァルヴァラと古龍幇武装船が相手取る為、PCはこれらに考慮しなくて良い。

ケントゥリオ級愚神『ヴァルヴァラ』
 冷気を操る少女の外見をした愚神。
 PCに対して友好的であり、古龍幇武装船を守るように立ち回りつつ、従魔を撃滅する。
 声をかければ、水面を凍らせて足場の作成などの協力をしてくれる。
 ただしヴォジャッグを直接攻撃するようなお願いは「従魔がわらわらいて忙しいの!」と断られてしまう。実際、彼女が攻撃の手を休めると、従魔の妨害がPCに及ぶ。

古龍幇武装船
 従魔を相手取る。高い練度を誇る為、心配ご無用。

ALブーツ・ライヴスヴィークル
 ワールドガイド参照。希望者に貸し出される。

●場所
 南米大陸付近海域。海上。時間帯は日中。

リプレイ

●二月の海

 南半球は真夏である。
 南の海で優雅なクルージングだったらどんなに良かったか。

「朝霞、気持ちはわかっているつもりだが、今回はヴォジャッグの撃破が最優先だぞ」
 後方待機部隊のライヴスヴィークル上にて。ニクノイーサ(aa0476hero001)は大宮 朝霞(aa0476)に眼差しを向けた。
「……言われなくても私はちゃんと冷静だよ、ニック」
 答えながら、朝霞は自前のALブーツ――アクアティック・ライヴス・ブーツ――をギュッと履いた。扱いが難しいこれは、ここ一番では慣れているものを使いたい。さて。乙女は凛と相棒へ振り返る。縁のある相手がいようと、自らの成すべきことを。
「ニック、変身よ!」
「ギャラリーもいないのに、やるのか?」
「当然よ! ――変身! ミラクル☆トランスフォーム!!」
 変身決めポーズ、そして、聖霊紫帝闘士ウラワンダー参上。「とうっ!」とヒーローらしい前転宙返りで、海へと出撃を。

『善性の行動をした愚神、か。少し怪しくはあるが』
 ALブーツで雁屋 和(aa0035)は水面を駆る。一見して外見変化はないが、その姿はヴァン=デラー(aa0035hero001)と共鳴を果たした姿である。
「善きサマリア人、であると私は考えるわ」
 英雄の言葉に、和は答える。
「彼女は私が助けなければ彼らはどうなるか、を考えた。その判断を、“今”信用するには十分でしょう」
『そう、だな。そもそも、やることは変わらない。さて、ノドカ――“怖くはないか?”』
 ライヴス内からのその問いに。和は深呼吸一つ分の間を開けた。
「もちろん、怖いに決まってる。真っ向から強敵に立ち向かうのは、初めてだもの。逃げたいわ」
 トリブヌス級。【森蝕】でも凶悪な愚神と相対したが、あの時は大規模作戦だった。ここにいるのはあの時のような大人数ではない。けれど。それでも。
「引かない。――恐怖は伴に、怯懦を糧に。そして、私が、決めたことの為に。……あんたとの誓約の為にも。私は、戦うことを恐れるけれど、逃げない」
 その眼差しは、キッと前を見据えていた。

『善性愚神が信用できるかどうか俺様にはちとわからんが。これが、最後にして最大の好機だろうな』
 その近く、紫 征四郎(aa0076)と共鳴中のガルー・A・A(aa0076hero001)が、ライヴス内より相棒に言った。青年の姿になった少女は、凛と頷く。
「はい。決着を、つけなければ」
 征四郎のその言葉に、凛道(aa0068hero002)のライヴス内の木霊・C・リュカ(aa0068)も同意である。
『三度目の正直きてもいいよね!』
 水上バイク型搭乗物ライヴスヴィークルで海を駆けつつ。体の主導権を握っているのは凛道であるため、今は凛道と呼称するのが正しいだろう。

 愚神ヴォジャッグ。
 好意的な言い方をすれば、H.O.P.E.は「何度もトリブヌス級愚神を退けている」だが、悪意的な言い方をすれば「何度も敵を取り逃がしてしまっている」こととなる。

「もう……二度と逃がすもんか……」
 ここで決着を。九重 陸(aa0422)の想いは一際強い。(HN)井合 アイ(aa0422hero002)と共鳴した銀冠白麗の威風堂々たる姿の心に刻まれているのは――【屍国】にて芽衣沙を取り逃がしてしまった記憶。それは今もなお鮮烈な屈辱であり、背に乗った罪悪感の十字架である。
「この世界に生きる全ての人間、全ての命は、いつか俺の音楽を聴いてくれる大切なお客様だ。だから……俺が守る!」

 決意の眼差し――その果ての水平線。
 直後、まるで北半球のように凍てつく風が吹いてきた。

 ヴォジャッグ、従魔、古龍幇の武装船、そしてヴァルヴァラ。
 古龍幇の困惑、雪娘の笑みと、示された“善意”。

『誰一人殺させないと、その言葉を愚神の口から聞くことになるとは……』
「信じてもいいんでしょうか?」
 十三月 風架(aa0058hero001)が呟き、零月 蕾菜(aa0058)は少々の困惑を見せる。
『今は信じるほかにないですね。ともかく、目ぇ覚ましていきますよ』

 一方で、豪徳寺 神楽(aa4353hero002)は愚神の言葉を鼻で笑った。尤も、その顔は笑顔の欠片もないが。
『邪英化の逆は善神化だとでも言うのか? 面白い冗談を言う』
「美少女は得よね。ヴォジャッグがそう名乗ったって端から信じて貰えそうにないわ」
 英雄がライヴス内で言った言葉に、梶木 千尋(aa4353)も同意である。本当に美少女の千尋が言うと妙な説得力がある。
『ふん、阿呆がとち狂ったと思われるのが精々だな』

 諸手を上げてどっぷり信用、も、露骨な敵対意志、も、いずれも示さず。
 千尋、そしてフィー(aa4205)のスタンスは「油断は忘れず一先ず中立」であった。

「……つーかまだ生きてたんですな、コイツ。全く音沙汰ねえもんだから、てっきりくたばってたもんかと」
 コイツ、が誰を指すのか? 知らんな。ヒルフェ(aa4205hero001)と共鳴し銀の髪を翻るフィーはブレない態度だ。とまあ、利用できる内はしておこう。ALブーツにライヴスを込めて――戦いへと進む。
 そんなエージェント達を、因縁の愚神は怒りの声で迎え撃つのだ。すなわち、台詞はこうである。

「ブッ殺してやるァ!!!」



●ALL BLUE

 ころん。

 ヴァルヴァラの足元――凍った海面に、ライヴス通信機「雫」が転がった。
「それ、ええと……拾っててください!」
 雪娘が不思議そうに顔を上げれば、遠巻きから征四郎が声を張る。協定のこともあり、おおっぴらに協力はできないが、ヴァルヴァラに何かあれば作戦に支障が出るのもまた事実。だからこれは征四郎がヴァルヴァラに道具を支給したのではない、「落としたので拾ってもらっただけ」である。
「もー、しょうがないなぁ」
 意図を汲んだヴァルヴァラが悪戯っぽい笑みで通信機を拾い上げ、装着した。

 ライヴスヴィークルが海を駆ければ、プルミエ クルール(aa1660hero001)と共鳴中のCERISIER 白花(aa1660)の、若き日の豊かな黒髪が潮風に翻る。その腰のベルトには、後ほど映像資料提出用のハンディカメラ。理知的な緑の瞳で、白花はヴォジャッグを見やる。
「ごきげんよう。さて、グリムローゼさんがつい先日斃されたお話はご存知?」
 本来、ヴォジャッグはエージェントと話すような余裕もないほど激昂していたが――さすがにその言葉にはギョッとしたようだ。
「なんだと!? グリムローゼがッ!?」
「信じるかどうかはお任せするけれどもね。グリムローゼさん、その直前まで愚神商人さんの護衛をなさっていたそうよ。斃された現場に商人は居なかったそうだけれども。……タイミングが少し可笑しいってアナタもお思いになるでしょう? まるで見捨てられてしまったかのよう」
 言われてみれば確かにそうだ、ヴォジャッグは歯列を剥いたままであるが、何か思うところがあるらしい様子を見せている。白花は言葉を続けた。
「そして私達や、あそこの白い愚神が現れたタイミングも奇妙ではないかしら? もしかしたら、アナタを唆すだけ唆してポイっとしてしまったのかもしれないわ」
「愚神商人がッ、この俺を捨て駒扱いしたって言うのか!? まさかッ……」
「どうかしら? そうかもしれない、可能性は大いに。……ねぇ、そんな商人が少しでも困りそうなことを、こちらに教えてみせてみないかしら? きっとスッキリするわよ」
 白花の巧みな誘導に、ヴォジャッグは愚神商人への怒りを募らせた。そして息巻いて“情報”を吐こうとしたが、ここで愚神は首を捻るのだ。白花はすぐ理解した。話せるネタがないのだな、と。
(ああ、どこまでも愚神商人に利用されていただけなのね。……可哀想なコ)
 商人らしい手口というか。この知力も高くない小心の愚神――こんなにも簡単に誘導されるような男に、自らの弱味を見せるはずもないか。ここまで信用されていなかったことが分かると、いっそヴォジャッグが可哀想である。状況も、その残念な気質も。
(それじゃあ、プルミエ。戦闘はお願いね)
 ライヴス内の英雄にそう語り、白花は目を閉じる。そして開いたその瞳は澄んだ黄色になっていた。
「はい! 白花様に良いところをお見せします!」
 主導権を得たプルミエは、嬉々として光線銃「トラブルシューター」をその手に構えるのである。

 そして新たなライヴスヴィークルが一台。飛沫を散らしてヴォジャッグへ向かうのは、メリッサ インガルズ(aa1049hero001)と共鳴した荒木 拓海(aa1049)だ。
「久しぶり! 覚えてるか?」
 その声に、銀の髪に、緑の瞳に、ヴォジャッグは心当たりがあった。
「てめぇはァ!!!」
 挑発の眼差しに、愚神は分かり易く怒りを露わにする。水上バイクをうるさいほど吹かせ、斧を振り上げ、一直線に拓海へと襲い来る。しからば上等と、拓海も一気にヴィークルを加速させた。
『……本気?』
 メリッサがライヴス内で呟く。
「本気!」
 拓海は真っ直ぐ前を向いていた。ヴォジャッグのバイクと拓海のバイクが正面衝突したのは直後のことである。爆発と水飛沫と衝撃と――流石にトリブヌス級愚神のライヴスを込められたバイク相手には押し負ける、拓海もバイクも宙に投げ出される。
「っッ……!」
 ぐるんと回る視界、引力の先が地面じゃないのが幸いだ。だがそれよりももっと幸いなのは、拓海に気を取られてヴォジャッグが隙を晒したこと。もう一つの幸い、吹っ飛ばされたことでむしろ仲間の攻撃の斜線を塞いでしまう事態を回避できたこと。
「今だッ!」
 落下しながら拓海が声を張った。
「はいな」
 飄々と答えたのはフィーだ。ヴォジャッグに迫り、面白く仕上がった玩具――戦斧ハルバートを振り被る。先ずは何事も準備が大事。重量と衝撃力を高めた刃で、力任せに叩き斬る。一気呵成。重心を崩された愚神の姿勢が崩れる。
「はいもう一発」
 今度は突きで、ヴォジャッグを大きく押しやった。呻きつつ、なんとかバイクからの落下は堪えた愚神であるが――立て続けに、征四郎が押しやるようにもう一撃、蝶の片羽根を思わせる刃を閃かせた。
「今ですノドカ!」
 その声に。和と千尋が挟撃の形でヴォジャッグの側面へそれぞれ肉薄する。
 和は『御骨頂戴≪おほねちょうだい≫』と名付けられた無骨な大剣を握り締めた。
「右ィ!」
『左じゃないか?』
「『どっちでもいいか!』」
 彼岸の花の炎を燃やし、力の限り振り被る。
「そこから引きずり落としてあげるわ……!」
 同刻、身を低くし矢の如く駆ける千尋もまた、炎を纏う重き大剣をその手にしていた。艶やかな着物を翻すその様はさながら派手な舞踏のよう。既に攻撃姿勢、和と交わす視線の合図は一刹那。

「「吹っ飛べッッ!!!」」

 乙女二人の、色鮮やかな猛炎の双撃。
 加速の勢いをそのまま武器に、和はヴォジャッグを、千尋はバイクを、それぞれ反対方向に吹き飛ばす。
「ぐぉわアッ!?」
 今度はヴォジャッグとそのバイクが宙を舞う番となった。反対方向にそれぞれ、これでもかと吹っ飛ばされ、二つの水柱が海に立つ。
「やりやがったな――」
 ざぶっと海面から顔を出しつつ、ヴォジャッグは己のバイクを探す。
 かくしてバイクはすぐに見つかった。

「あわわ あわわ ああああああ~~~……」

 ざばばばばばばばば。それはまさしく暴走していた――凛道を乗せて。
 そう、吹き飛ばされたバイクに凛道がすぐさま搭乗したのである。ヴォジャッグはバイクの修復能力を持つが、逆を言えば破壊されなければ修復のクソもない。ついでに乗ってしまえば回収もされない。策略の一手である。
「マスターこれめちゃくちゃライヴス吸われてます!」
『酔うっ! 酔うっ! ちょっとしっかり運転してっ!』
「制御が困難です! あと吐きそうです!!」
『我慢して!!』
 ヴォジャッグ専用バイクであるがゆえ、劣悪すぎる操作性と極端に制御が難しいことを除けば、これほど効果的な作戦はなかったろう。リュカは遠い昔に暴走族に淡い憧れを持っていたけれど。こんなモンスターマシンだなんて聞いてない。「大丈夫、借りるだけ借りるだけ。すぐ返すから」――そう思っていた時代もありました。
「盗んでもないのにどこまで行けるのかしら」
『十五の夜にゃダブルスコアなんじゃねぇか』
 異常なスピードに悲鳴を乗せて遠くまで行ってしまった戦友を見、和とガルーが呟いた。

 想定外のこともあったが、ヴォジャッグの最大の厄介な能力を抑えることができたのは紛れもなく好機だ。

「野郎ォオオ!!」
 怒れるヴォジャッグが水面より斧を振り上げる。アックスキッス――既に仲間から伝えられたその予備動作に、マントを翻して立ち塞がったのは朝霞だ。
「かかってきなさい! ウラワンダーは退かないわ!」
 堂々たる正義のヒロイン、その眼差し、ヴォジャッグは彼女のことを覚えていた。だから、もちろん、彼女を狙った。
「お望み通りィ!」
 ヴォジャッグが斧を投げる。それはまっすぐ朝霞の首へ飛んで行く。が。
「かかったわね!」
 それは朝霞の作戦だ。ヴォジャッグをバイクから引きずり下ろす際、一手足りなければ――と念の為に展開していたライヴスミラー。それは斧を弾き、無効化し、ミラーで受け止めた衝撃をそのまま愚神へと返す。そして本来の自分の攻撃、魔法少女が用いるような白とピンクのファンシーな杖(全長二メートル)で、きらきらハートを舞わせながらヴォジャッグの頭部を思い切り殴り付ける。
「俺はバイクが大っ嫌いなんだよ! あんな騒音発生装置っ!」
 そこへ追い打ちのように。ALブーツで間合いを測りつつ、眉を吊り上げた陸が全長2000mmの対愚神用支援火器をヴォジャッグへ向け、引き金を引いた。海を震わせる砲撃音、射撃というよりは砲撃と形容すべきそれが、陸の嫌悪感情をそのまま示すかのように容赦なく愚神を攻撃する。
 ヴォジャッグの精神構造は単純だ。とりあえず攻撃してきた奴が腹立つからそれを狙う。すなわち視野が狭い。立ち泳ぎ状態で波や飛沫が顔にかかるから物理的にも狭くなっている。
 それを、風架――今は相棒の雪娘への懐疑心やヴィークルの操縦ゆえと表出しているのは風架、ならば風架と形容すべきだろう――は見逃さない。ヴィークルを巧みに駆り、愚神の背後へ回る。
「――“武器を放棄しろ”」
 告げるそれは支配の言霊。大声ではないが脳に響くその声に、一瞬愚神の体が硬直した。ヴォジャッグが驚愕の顔で振り返る。その手は震えながらも――斧を海へと落とす。
「しまっ――」
 その隙はまた、エージェント達に猛攻の機会を与えることとなった。

 一対多において、一側が一手でも手数を削がれることはあまりに致命的である。
 エージェント達の隙のない作戦に綿密な連携、機動力を大きく殺がれたヴォジャッグは忌々しいと言わんばかりに歯列を剥く他になかった。

「大丈夫?」
 さて、その最中。海へ落ちた拓海に、征四郎より借り受けた通信機で話しかけてきたのはヴァルヴァラであった。彼の近くの海面を凍らせて足場を作り――更に、先ほどリュカが乗っていた、今は無人のライヴスヴィークルまで氷の道を作ってくれる。
「ああ、ありがとう。それから……久しぶりだね」
 ありがたく足場に上がる。「滑らないようにね!」と挨拶に笑顔で答えた雪娘が、悪戯っぽく言う。「分かってるさ」と笑みで返し、拓海はライヴスヴィークルへ向かった。話したいことはたくさんあるが……今はヴォジャッグの討伐に専念せねば。
(……ヴァルヴァラ、……)
 横目に見やるのは、その冷気で従魔を足止めし、撃破しつつある雪娘の背中。その向こうには古龍幇の武装船が、船の機銃や船上からのリンカーの攻撃で従魔共を相手取っている。劣勢の雰囲気はない、むしろ優勢だ。それにしても、冷気使いにとって海上戦ほど有利な戦場はない。凍らせることができる水がこんなにも大量にあるのだから。
「ひさしぶりね、雪娘」
 と、ヴォジャッグへの戦闘姿勢を崩さぬまま、朝霞が通信機で雪娘に声をかけた。
「いつも一緒のルドルフはどうしたの? お留守番?」
「ルドルフまで連れてきたら、ほら、絶対に警戒されちゃうでしょう。強そうに見え過ぎちゃうから」
「なるほど……」
 ニクノイーサは『塩水は苦手だとか?』なんて言っていたが、なるほどそういう理由か。確かにヴァルヴァラが完全戦力で登場すれば、H.O.P.E.も古龍幇も警戒を強いられたことだろう。
『それにしても、善性愚神……か』
 ライヴス内でのみ英雄が怪訝げに呟く。ええ、と朝霞は頷きを返した。 
(雪娘ったら、いいように使われている感がひしひしと感じるわ……)
『誰に使われてるんだろうな』
(例の、ヘイシズ? とかいう奴かしら)
 投げつけられた斧を、軽やかにマントを翻して横っ飛びに回避しつつ、朝霞は海上で姿勢を立て直す。なおウラワンダーのスカートはアグレッシブなアクションをしても鉄壁である。
 その間にも、視界の端に映るヴァルヴァラは、その氷の力でヴォジャッグ戦域への従魔乱入を阻止し続けている。ヴォジャッグも従魔も同時に相手取ることになっていたら厄介極まりなかっただろう。おかげで、状況はエージェントの優位で進んでいた。
『しっかしながら、こいつは凄まじいな。トリブヌス級と遜色ないレベルだ』
「かなり成長したみたいだね」
 ヴァルヴァラの戦闘力にニクノイーサと朝霞が呟く。改めて、朝霞はレインメイカーを構え直しつつヴァルヴァラへこう告げた。
「それじゃ、従魔は任せたわよ!」
「うん! そっちはよろしくね!」

(気紛れか、それとも保護下で力を蓄えたいのか……)
 フィーにとっては、ヴァルヴァラの愛くるしい笑顔も“今更媚を売ってきた”としか思えない。ヴォジャッグと間合いを取りつつも、彼女は雪娘への警戒を忘れなかった。
 従魔を攻撃する片手間にヴォジャッグの攻撃をしのぐなど、かの愚神に敵対的ということも気がかりだ。ヴォジャッグはトリブヌス級、本来ならばケントゥリオ級のヴァルヴァラは上位愚神たるヴォジャッグに服従姿勢を見せるはずである。
(て、こたぁ……実質トリブヌス級に片足突っ込んでる可能性が?)
 もしくは、この服従が絶対的なものではなく、こちらが勝てる、撃退できると踏んでいるからか?
(もーひとつの可能性としては――、ヴォジャックと同格以上の愚神の命令で動いている、とかですかねぃ)
 ヴァルヴァラに命令した愚神がトリブヌス級以上であれば、ヴォジャックの命令の影響も受けないか。となればヴァルヴァラに命令をした愚神は? 例のアルター社のヘイシズ? となるとアルター社に愚神が所属していることになる……?
(めんどくせぇぇぇ~~……)
 考えるだけで面倒な事態だ。とまあ、楽しい答え合わせはひとまずこのアホモヒカンをどーにかしてからだ。まあ、なんのかんの、仕事はキッチリこなさねば。可愛い恋人も待ってることだし。手にするのは地味な色合いの22口径オートマチック。海面を滑りつつ狙い定める。放つ高精度の弾丸は、破壊の一言に尽きる火力。

「こ、こぉの人間共がァア……!」
 エージェント達の間断なき攻勢に、愚神は顔面をだらだらと血に染めつつ。ヴォジャッグとの戦いはエージェント側のほぼワンサイドゲームに近かった。バイクの奪取(修理封印)、動きにくい水中、的確な散開。一でも手数を失えば、倍以上の攻撃が飛んでくる。状況打開の為にヴォジャッグが従魔を使おうにも、ヴァルヴァラと古龍幇がそれを許さない。結果的に、エージェント側はかなりの余裕を以て戦闘できていた。それが更にエージェント優勢に拍車をかける。
 それだけじゃない。【白刃】の時よりも、【東嵐】の時よりも、【卓戯】の時よりも――エージェント達はずっとずっと強くなっていた。武器も、技術も、作戦も、連携も。
 流石のヴォジャッグ、流石のトリブヌス級とはいえども、この状況は……
(ま、まずい……!)
 どうする? 逃げるか? どうやって? ヒットアンドアウェイに次々飛んでくる攻撃を、なんとかかんとか拾い上げた斧で凌ぎつつ。ヴォジャッグは血を流す頭で必死に考える。

 と、そこへ。

「海が好きだな?」
 リュカが乗っていたヴィークルを駆り、雷斧ウコンバサラですれ違い様に切りかかる拓海が挑発の言葉を投げる。
「落としたのはテメェらだろおおが!!」
 まずはどうにかして水中状態で動きにくいのを打開せねば――そんな理性も、簡単な挑発でヴォジャッグの頭からは吹っ飛んでいく。もしヴォジャッグが理性的な愚神だったならば、ここですぐに反撃に出るよりもまず状況解決に努めただろうが。
『まあ、そこで理性的な行動が取れるなら、そもそもこうはなってなかったろうけども』
 メリッサが遠慮なしに拓海のライヴス内でそう呟く。
「確かに……。こっちとしては、御しやすい相手で助かるけどもね!」
 ヴォジャッグの攻撃に身構えつつ、拓海は油断を崩さない。あの動作、火焔を吐き出すクリメイトダートだ。報告書をしっかと読み返して脳に叩き込んだ動作。通信機で共有する直後、青い海面を染め上げるのは赤い炎だ。
「っと、……!」
 合わせるように魔杖を掲げたのは風架だ。五色の幻影水晶が舞い、大華のごとき炎を咲かせる。割り込み妨害用の術式ではないがゆえに相殺こそできないが、攻撃であることに変わりはない。

 雪娘の氷で冷たい風ばかりが吹いていた海上に、頬を炙るような熱量。

 陸の外套が翻り、内側の宇宙の煌きがいっそう輝いた。16式60mm携行型速射砲のアウトレンジより攻撃しているがゆえに、近くに仲間がいない状況のため“庇う”ことはできないが、届く攻撃を防ぐ手段ならある。
「喰らうかッ……!」
 展開するのは強力なライヴスの盾。それは星のような輝きと共に炎を打ち消し、傷一つ負わさせず彼の体を守り切る。
 ふ、と息を吐く間もなく、陸は火砲を向けて反撃の引き金を引く。
(妙な気配は……、)
『ひとまずは見当たらないな』
 その間にも周囲への警戒を忘れない。ヴォジャッグを絶対に逃がさないためだ。海、空……奴を逃がす為に待機している従魔はいないか? 妙な動向の個体は? アイと協力して意識を研ぎ澄ませるが、そういったモノは見当たらない。従魔については古龍幇とヴァルヴァラが完全に相手取ってくれている。言い方を変えよう、彼らがヴォジャッグに邪魔されず従魔に専念できているおかげで、従魔は「そういうことをする暇も隙も与えられていない」とも表現できる。
『あれだけキレれるから、ただ単に指示の余裕がないだけかもしれんが、な』
 ライヴス内でアイが言う。ヴォジャッグはエージェント達に散々翻弄されて精神的な余裕は皆無と言えるだろう。それはつまり、それだけこちらの好機でもある。
 ヴォジャッグ逃走の可能性、それを留意しているのは陸だけではない。多くのエージェントが周囲に気を配りつつも、ヴォジャッグを今度こそ倒す為に力を尽くす。

 前線、金属の響く音――それは征四郎が振り下ろした片翅の剣を、ヴォジャッグが斧で受け止めた音。
「っッ……!」
 拮抗する力。互いが歯列を剥く。
(ここで、雪娘と、“ヴォジャッグを共に倒した事実”を作る為にも――!)
 青年の姿をした少女の心には想うことがある。刃に纏う毒花の色が一層増した。
「負けられません!」
 決して隆々とは呼べぬ腕に見合わぬ膂力で、偉丈夫の愚神を押しやった。半水中の愚神は勢いのままに一瞬水に完全に沈む。
 そこへ容赦なく降るのはプルミエの射撃、千尋のWアクス・ハンドガンによる斉射だ。
「ぶっ殺してくれるんでしょう? でも大丈夫? 海底で眠っている間に時代に取り残されたロートルになってないかしら」
 手斧の銃口より硝煙を立ち上らせつつ、千尋は大ぶりな花飾りが咲いた銀髪を潮風に靡かせる。
「――ほら、聞こえてるんでしょう。それとも塩水に慰めて貰いたい気分なの?」
 辛辣な挑発。監修は神楽。
 ごぼ、と水面に泡が浮いた。
「がああああああああああああああ!!!」
 案の定の結果だ。怒りに顔を皿に赤くして、海面から飛び出してくるヴォジャッグ。
 が。

 どごっ ――と鈍い音が響いて、ヴォジャッグが宙を舞った。

 ヴォジャッグのバイクに乗ったことで暴走状態だった凛道が、なんとかUターンに成功して戦線に戻って来たのだ。そして制御がやはりままならないので――そのまま高速でヴォジャッグをはね飛ばすことにしたのだ。
「……! ……っ!! ……っ!!!」
 多大なライヴスを消費し続けるバイクの上、劣悪な操作性、凛道の顔色はすこぶる悪い。色々と言葉を紡ぐことすらできないほど余裕がなかった。しかしこのバイクをヴォジャッグに渡す訳にもいかないので、気合で乗り続けている。
 とかく、暴れるバイクをどうにかこうにか乗りながら。凛道は黒猫「オヴィンニク」を召喚し、はね飛ばされた直後で未だ宙のヴォジャッグにけしかける。ポイズンボトルによって、黒猫の燃える眼差しには毒が秘められていた。
「ぐあッ!」
 吹っ飛ばされたヴォジャッグは、奇しくもヴァルヴァラが凍らせていた海面にビタンと落ちた。
「……ナメやがってぇえええええええッッ!!」
 ようやっと二本の足で立つ。投げる斧――掠っただけでも起きる爆発が和の体を痛みと共に傷つける。
「ふ、っ……!」
 それでも彼女は怯まなかった。怖気なかった。彼女のやること、成すことは、いつだって変わらない。恐怖を自覚して、それに屈しないこと。
「貴方に密着は悪手だけれど――生憎それしかできない、から」
 海を駆ける。囂々と戦意を滾らせて、燃え上がらせて。
「殴り合いにはならないけれど! お付き合い願おうかしら!」
 氷上のヴォジャッグへ飛びかかり、振るうのは重き三撃。手数を武器に、和はヴォジャッグを追い詰める。

 なぜ……それがヴォジャッグに湧いた感情だった。
 人間というものは、愚神の餌。弱くてみみっちくて、束になっても……。
 いや……そうじゃないのか?
 アンゼルムもグリムローゼも“コイツら”には勝てなかった。
 俺は勝てない? 人間に負ける? 馬鹿な! 嘘だ! ありえない!

 ――なぜ愚神は人に勝てない!?

「なぜだアアアアアアアッッ!!!」
 切り裂かれた傷、穿たれた傷、ありとあらゆる傷、命の赤色を流しながらヴォジャッグは吼えた。なぜ、に答える声はなかった。そしてヴォジャッグは殺されるのは真っ平御免だった。今逃げられる場所、そこはもはや海しかない。愚神は酸欠で死なないことは知っている。追い縋る和から、そして全てのエージェント達から、ヴォジャッグは逃げた――海中に深く飛び込んで。
「あっ」
 プルミエが黄色の瞳を瞬かせる。
「でも、アレですよ。残念ながら、想定の範囲内、なのですわ!」
 我が絶対者へ奉仕する為。奉仕によって完璧な幸福を得る為。トラブルをシューティングするのがプルミエの使命。レーザー銃を、まだ朧に見える海中の影へ向けた。ディストピアの長き光線がZAPZAPと海中へ逃げたヴォジャッグを焼く。
「白花様! ご確認頂けましたか! 当たりました! 当てましたよ! このプルミエが!」
 先ほどから一発当てる度にこれである。その目はまた一つ白花へ奉仕できた喜びに輝いているが、まだ戦いは終わりではない――言動こそあどけなさがあるが、そこはプルミエもちゃんと理解している。レーザー銃を手放すな。
「逃がすかよッ!!」
 ヴォジャッグの水中逃亡は誰もが想定を、そして対策をしていた。陸もその一人である。ALブーツをオフに、仲間達と共に躊躇なく海へ飛び込んだ。リンク中であれば酸欠することはない。光の差し込む海の中は幻想的である。だが、光景に酔いしれている暇はない。
 愚神を取り逃がせば、悲劇が起きる。誰かの日常が壊される。その可能性が一でもあるのであれば。陸はあらゆるものを懸けてでもそれを阻止したかった。

 ヴォジャッグが追跡してくるエージェントへわずかに振り返り、露骨に忌々しげな表情を浮かべた。そしてその斧を投げつけてくる――先程、ヴォジャッグが水中にて回避がままならなかったように、今度はエージェント達が攻撃を食らう番であった。水中に爆発音が重く響き、青い海に赤い血がジワリと広がり解けてゆく。
「足止めします!」
 爆発の余韻に未だ震える一同の鼓膜に、次いで響いたのは通信機越しの仲間の声。暗くなりゆく海の中だが、見やればヴォジャッグの体に突き刺さっていたのは二本の鎌。凛道のロストモーメントが、アックスキッスの二回攻撃にそれぞれ反撃をした証である。
 だが、凛道の言った「足止め」とはこのことではない。海上――ちょうどヴォジャッグの真上。凛道の周囲に数多展開されたのは断頭台の刃である。
『逃がす訳には、いかないもんねぇ……!』
 ライヴス内でリュカが言う。それは、海上の風架とて同じだ。ライヴス内で「風架さん、」と蕾菜が英雄を呼ぶ。その意図に、もちろんだと言わんばかりに風架は頷きを返してみせた。
「逃がしてもロクなことにならねーなら、ここで必ず仕留めます」
 振るう錫杖。五色の光から生み出されるのは数多の蝶。
 ――重く罪を裁く刃が錨のごとく海へ落ちる。それに追随して、海に煌く霊力の蝶が美しくも残酷に飛んで行く。
 背中からライヴスキャスターと幻影蝶をモロに受けたヴォジャッグが、ごばっと口から泡を吹いた。
 そして、その服の端にプスと刺さるのは釣り針である。AGルアーによって水中戦特攻を得た釣り竿「黒潮」が、釣り竿としての本懐通りヴォジャッグを釣った決定的瞬間であった。
(よし……!)
『拓海、巻いて巻いて!』
 釣り主は拓海だ。その姿は普通のウェットスーツに見える、だがその実、ジョーズのきぐるみに改造を施した、水中戦の為の一張羅である。きぐるみを着て愚神を釣る、文字にすれば冗談のようにしか見えないが、道具の特性をしっかりと把握して効能を駆使する戦略である。事実、拓海が指に水膨れができそうな勢いでリールを巻き上げれば、ヴォジャッグの潜水速度が鈍った。地上なら容易に踏み止まられただろうが、生憎ここはふんばりの利かない水中。
(クソがぁ!)
 ヴォジャッグは糸が容易に切れないものであると察知すると、遮二無二釣り針の刺さった服を脱ぎ捨てる。
 が、凛道と風架と拓海が稼いだ時間は十二分だ。
 水の流れる音――真っ先に愚神へ肉薄したのはフィーである。
(まさかアマゾンの装備が海で役立つたぁねぇ)
 インカ支部謹製、ジャングルランナー。マーカーを設置したものに一瞬で移動できる優れもの。何が優れてるかって、愚神にもマーカーを設置できるところ。移動の勢いを乗せて、フィーの戦斧が深々とヴォジャッグの腹に突き刺さる。
 そのまま、獲物を突き立てた手とは反対の手で、彼女は躊躇することなくヴォジャッグの海洋生物だらけな姿を力の限り掴んだ。愚神のスキルの類は風架の術によって封じられている。けれども「離せ」と言わんばかりにヴォジャッグがフィーへ斧を振り下ろした。
 されど、それはフィーの白い肌ではなく、カバーリングに入った陸の肌を切り裂いた。痛みはある、掠り傷では済まない、それでも防御展開したライヴスによって被害は極力抑えられている。グラップルボムも発動するが、背に腹は代えられない。
「っ――」
 真っ向から攻撃を受け止めれば、流石のトリブヌス級だと改めて思い知り、陸は奥歯を噛み締める。だからこそここで逃がしてはならない、絶対に。フィーに協力するように、愚神の体を掴み取る。

(海だろうが空だろうが、もう逃がしません! ヴォジャッグ!)

 その愚神へ、潜水し追跡する征四郎は霊弓雷上動を引き絞る。掴み抑える仲間達は射抜かぬように、その間隙をしっかと狙い。ミリ単位のズレも、ましてや外すことも許されない。
(ここが、正念場――!)
 集中。英雄と同じ色の瞳を細め、弦を弾けば澄んだ音。紫電の矢が海を駆けた。
 それはヴォジャッグの眉間に刺さる。愚神の頭が仰け反った。
『やったか!?』
(ニック! そういうのは駄目!)
 海水を行く朝霞は、ライヴス内で英雄を叱りつけた。『わかってるよ』と飄々しつつもニクノイーサは油断ない。
『に、しても、だ。脳天に矢が刺さってるというのに』
 ヴォジャッグはまだ生きていた。トリブヌス級愚神、文字通りのバケモノ、人間の理解や常識を超えたモノ。そう形容すべきなのだろう。
『死んだフリをされると厄介そうだ』
(そうね。絶対に、ここで、完全に! 倒すわ、聖霊紫帝闘士ウラワンダーの名に懸けて!)
『ああ、英雄として力を貸すとも。……必殺技を叫べないのだけが残念だな』
「ごぼごぼごぼっ!」
『水を吸って噎せないでくれよ。さあ、終わらせよう』
 朝霞はレインメイカーを構える。長き因縁もここで終わり。復活怪人もここまでだ。こんな時でもウラワンダーは愛らしさを忘れない。ハートのエフェクトを纏いつつ、魔法のステッキで幾度目か、ヴォジャッグを殴り付けた。

(あれだけ皆の攻撃を食らって、それでも倒れないなんて)
 状況は優勢な戦況だったが。だからこそ、「それでも瞬殺されないヴォジャッグ」に和は戦慄すら覚える。
『簡単だ、ノドカ。殴れば倒せる』
 そんな和に、英雄はいつものように語りかけてくれる。
(ええ、――それもそうかッ!)
 戦うことに恐怖はあれども迷いはなし。守るべき友がある。守りたいものがある。追いこすべき人が居る。
 後方に回り込む和は、海面から射し込む光が揺らいだことに気付いた。上を見やれば、千尋が愚神の上を抑え、攻撃態勢に入っていた。視線が合う。頷きを返した。言葉もハンドサインもない、それでも二人は通じ合った。
 奇しくも、であるが。もう一度挟撃を。
(華々しく散るがいいわ。更に私を輝かせるために)
 海の中でも燃えるライヴスの炎を纏う刃。千尋はそれを握り締め、一気に深く潜る。暗くなりゆく海中なれど、その在り様は薔薇よりも華やかに艶やかに。体全てのギアを高める。この一撃で必ず決める。

 ヴォジャッグは――抑えられ、包囲され、負傷し、逃げ得る可能性など万が一もそこになかった。
 迫る紅蓮の刃。愚神は目を見開く。
 今度もまた自分は逃れられる。どこかでそんな楽観があった。
 どうせ人間共は。そう思っていたがゆえに。
 けれど。
 しかし。
 なのに、――

 ……ヴォジャッグの思考はそこで途切れ、そして永遠に続きが紡がれることはなかった。

 疾風怒濤、六つの刃。力の限りのそれはまさに嵐。
 燃える剣が、かの愚神と人類との因縁を完全無欠に断ち切った。
 かくしてヴォジャッグは、ライヴスの塵となって海の中へと消えたのである。



●共宴序曲
 ヴォジャッグの完全撃破を確認。
 それにともない、かの愚神のライヴスが作り出していたバイクも消滅した。結果的に水中に投げ出された凛道は風架のヴィークルに乗せて貰いつつ、モスケールを起動する。周囲にヴォジャッグの反応はない。
 と、そこへ。
「流石だね!」
 戦い終え、海面へALブーツで“這い上がった”一同へ、ヴァルヴァラが手を振った。古龍幇武装船の火力も合わせ、従魔も粗方片付いたようだ。
『ええ、感謝します雪のお嬢さん』
 今回は良き出会いで良かった。答えたリュカの物言いは穏やかだ。今回、雪娘は単純に助けてくれた――そう判断しているがゆえの好意的態度である。。
 と、風架がヴァルヴァラへ賢者の欠片をポイと放った。受け取った愚神が、風架と欠片を交互に見やる。
「お前は愚神と英雄の違いは何だと思う?」
 そのまま質問を。賢者の欠片を飴のように口へ放ったヴァルヴァラは、やはり無垢な顔で笑んだ。
「違いなんて、きっとないわ!」
「そう。それで、H.O.P.E.は善性愚神と会談はできるのか?」
 まさか今回限りの接触な訳があるまい。その問いに、雪娘はこう答えた。
「もちろん! 私達もそのつもり。もうじきヘイシズがH.O.P.E.の方に連絡を取ると思うの。古龍幇の皆の、香港協定っていうのにも考慮してるって、ヘイシズ言ってたわ。アルター社伝手に古龍幇にも連絡をするって」
「……、」
 それは風架が提示しようとしていたカードをことごとくクリアした内容だった。千尋も懇親会を提案しようとしていたが、既に向こうがそれを想定済みだとは。古龍幇の面々も困惑した様子で顔を見合わせている。
「ヘイシズって誰? 何者なの?」
 朝霞が問う。雪娘は声を弾ませる。
「善性愚神、私達の仲間! ライオンみたいな顔で、おーっきくて……それでとーっても頭が良いの。もうすぐ皆も会えるわ」
「……貴方達は、これからは人間には危害を加えない。そう言ってるの?」
「うん!」

 一方、拓海はヴァルヴァラの言葉に安堵の様子を見せていた。愚神との共存。それを望んでいる者は、一人じゃない。
「その、善性愚神っていうのはたくさんいるのかな。君達は共存を望んでいるんだよね?」
「そうよ! ヘイシズと、パンドラと、アッシェグルートと、私!」
 聞いたことがある名前もあった。ライヴス内で、メリッサがわずかに眉根を寄せる。拓海は紳士的な態度は崩さぬまま、言葉を続けた。
「その共存は君自身の意志でもあるの?」
「そうよ?」
「なあ、悪いことを止めたなら……今すぐミロンを返してくれないかな?」
「ああ――、」
 ヴァルヴァラは悲しそうな顔をした。それから俯くと、小さな小さな声で「ごめんなさい」と呟いた。
「ミロンね、食べちゃった」
「…… え、? ……冗談だろ」
「ごめんなさい。私がまだ悪性愚神だった頃に。……私が、自分の罪に気付くのがもっと早かったら、ミロンは……!」
 ヴァルヴァラは両手で顔を覆った。「ごめんなさい、ごめんなさい」を繰り返す。
「私、悪いことをしたわ。だからこそ、償いたいの。……ねえ、人殺しの私でも……あなたは、赦してくれる?」
 顔を上げた儚い眼差しは、まるで縋るようだった。
 見かけこそ愛くるしい無垢な少女。庇護欲をそそる、可憐な外見。あんな美少女に潤んだ目で切なく乞われれば、大抵の人間が好意を以て頷いてしまうだろう。
 だが。
 陸は彼女の「ミロンを食べた」という言葉に、殺意ではらわたが煮えくり返る気持ちだった。
『……おい』
 アイがライヴス内で一言をかける。「分かってる」と陸は思念で答えた。気がかりなことは既に仲間達との質問で明らかになった。改めて話し合うことについても賛成だ。
 もしヴァルヴァラが少女でなく不気味で醜い異形だったら――? そんな仮定がふと湧いては、更に形容できないほどの怒りが込み上げてくる。それらをどうにかこうにか飲み下して、陸はヴァルヴァラに声をかけた。
「いくら俺たちの手助けをしてくれるといっても……お前達は人間のライヴスを食い荒らしていく。お前が、ミロンっていう少年を食い殺したみたいに。俺たちと共闘することになっても、それは続けるつもりなのか?」
 それは千尋も気になっていたことだ。
「もし英雄になったというのなら、オゴリで歓迎会開くのもやぶさかじゃなかったのにね」
『ライヴスを生み出せぬ愚神ならば奪うしかあるまい? 飢えぬためにどうするつもりだ?』
 神楽と共に問う。
「私達、もう悪いことはやめたの」
 ヴァルヴァラは首を振ってそう答えた。

(っ……)
 風架のライヴス内の蕾菜は言葉を失っていた。“犯人”から謝罪と贖罪の言葉はある、されど一人の人間の命が愚神に奪われていたという事実。否が応でも思い出してしまうのは、実の親や育ての親達が愚神によってこの世を去ったこと。ミロンという少年にも、大切な人がいたろうに。そう思うとやりきれない気持ちになる。
(落ち着いて)
 風架は相棒を宥める。その目はじっとヴァルヴァラを見据えていた。
 愚神と英雄の違いは、宿主等の負担を考えライヴスを扱うか否か。風架はそう考えていた。だから――もしミロンなる少年が無事ならば、彼女は英雄に近いのではとも思ったのだが。
(……皮肉なものですね)
 己は過去に二度も暴走し、能力者と周りの人間を殺めてしまった。自分だって愚神に近いモノなのに。溜息を飲み込んだ。
 さて。一見して“殺人者の”ヴァルヴァラは、あのようにしおらしく反省して見せた。善性愚神のトップが何を考えているかは知れないが、雪娘の贖罪の意志が本物ならば、信じる価値はあるのだろうか……?

 凛道は、雪娘をつぶさに見詰めている。その眼差しの奥には多少の困惑があった。
(敵であり、正義を犯した者であり……けれども、購い償い悔いる者であるならば――その首は、……)
「……この行為は、貴女、または貴方がたの、“贖罪”ですか」
 静かに問うた。雪娘は、コクリと頷いた。
『……また、次も笑顔で会えると良い』
 見守るリュカも、そう呟いた。
「たくさんの愚神と戦いました」
 ポツリ、最中に呟いた征四郎の心境は、複雑極まりないものだった。
「人のように人を愛した愚神も、人の心を残したままの愚神も……斬りました。――もし! そうじゃない明日があったなら! わたしは手を伸ばしたかった……!」
「……うん。これからは。一緒に手を取り合いましょう?」
 ヴァルヴァラが答える。それから、「これありがとうね」と通信機を征四郎に返却した。
「いくら善性であると説いても、アナタが愚神であることはN・P・Sのような団体からすれば格好の攻撃対象になるの」
 と、そこへ落ち着いた声。緑の目をした白花である。
「ならば説くよりも、まずは結果を示してごらんなさい。愚神商人が困る情報なら、わかりやすい上に古龍幇も是としやすくておすすめよ」
「愚神商人のことは詳しくは分かってないんだけど……、その代わり、愚神十三騎全員についての情報を、ヘイシズがH.O.P.E.に提供するって言ってたわ」
「そう」
 愚神十三騎とは何か、と突っ込むことはしなかった。提供するというのなら、これから明らかになるのだろう。
「香港協定に関して、私達にできることは上のお偉方が判断するための材料を持ち帰ること。判断するのは支部長や会長、そして劉さんの仕事。
 また、不用意に変更した場合香港協定に異議があった古龍幇構成員にもその機会を与えることになってしまうでしょう。古龍幇内部もまだ不安定でしょう?」
 そう、全てはこれからだ。ここで全てを決めることはできない。そう皆に周知してから、白花は古龍幇の者へ通信機で語りかける。
「一つよろしくて? 貴方達の上に“私の姪孫の右目と覚悟を無駄にだけは絶対にしてくれるな”とお伝えしてね 」
 声音は穏やかな貴婦人のそれ。『もちろんですよ!』と返事はすぐだった。
『正直ね……少なくともこの船の皆は、愚神を信用してないですよ。そこは安心して下さい。……そちらさんの共存派の人には怒られそうですが。それから、樹小姐のこと。本当に、俺達は感謝しています。どうか小姐にお伝え下さい』
「ええ、どうも」

 ……それらのやりとりを遠巻きに。
「はあ」
 フィーは溜息を隠しもしなかった。
「……しっかしこれで共存だとかいう戯言を言う奴も出てきそうですなぁ、面倒くせえっつーかなんつーか」
「同感」
 千尋が肩を竦めた。愚神とはライヴスの簒奪者。共存できるとは思えない。仮に共存できたとしても、それはよもや人間と家畜の関係を指すのでは?
『家畜という観点ならば、人間も豚も共存していると表現はできるな』
 神楽は辟易とした物言いだった。千尋は遠くの雪娘に目を細める。
「それに……愚神が異界との扉を開くことを諦めたとは思えない……」
『ふん、蕁麻疹が出そうなほど同意見だ』



●帰還後の幕間
 古龍幇武装船のバトルメディック達から傷を治療され、H.O.P.E.の輸送船に帰還し――
 海水に濡れた衣服の着替えと、シャワー室へ向かうその最中。船内の廊下。

「……畜生!」

 陸の唸りと、壁を殴り付けた音が、彼と英雄しかいないそこに響いた。
「おいおい、壁が痛がってるぜ?」
 隣にいるアイが肩を竦めた。
「……まあ、よく頑張ったよ。あんなに憎んでたもんな、愚神のことを」
 溜息を吐きながら続けられた英雄の言葉に、陸は俯いたままだ。赤くなった拳を、痛いほど握り込んでいる。
「愚神さえいなければ……今日生きてた人がたくさんいる。愚神さえいなければ、人殺しになってなかった奴も……」
「あんまり思い詰めるな。まだどうなるか決まったわけじゃないんだしさ」
 声を震わせる相棒の肩に、アイはそっと掌を置く。
「……ほら、まずはあったかいシャワーでも浴びて、飯でも食ってさ。船が着いたら、家に帰ろう」

 ――アルター社のヘイシズ。
 フィーはすぐに彼について情報を調べ始めた。結論から言うと目ぼしいものは見つからなかったが、実在は確かだ。というのも――ヴァルヴァラが言っていた通り、向こうからH.O.P.E.と話がしたいとコンタクトを取って来たのだから。
(アルター社と愚神は繋がっている……?)
 フィーは眉根を寄せる。【森蝕】のRGWの件と併せて真っ黒か。
「……ふむ、ともすると【絶零】の頃からですかなぁ」
 幾度目かの溜息を吐いた。それにあのヴァルなんとかっつー雪んこ。「私“達”」という発言は、彼女が言っていたように善性愚神のことだろうが。
(……高位愚神との繋がりが?)
 とかく、今は状況が進んでいくのを待つ他にない。

 愚神と共存を望む者。
 愚神を疑う者。
 決めあぐねている者。

 あらゆる人の思惑を乗せて、物語の幕は開く。



『了』

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 【晶砕樹】
    雁屋 和aa0035
    人間|21才|女性|攻撃
  • お天道様が見守って
    ヴァン=デラーaa0035hero001
    英雄|47才|男性|ドレ
  • ひとひらの想い
    零月 蕾菜aa0058
    人間|18才|女性|防御
  • 堕落せし者
    十三月 風架aa0058hero001
    英雄|19才|?|ソフィ
  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 断罪者
    凛道aa0068hero002
    英雄|23才|男性|カオ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 無名の脚本家
    九重 陸aa0422
    機械|15才|男性|回避
  • 叛旗の先駆
    (HN)井合 アイaa0422hero002
    英雄|27才|男性|ブレ
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
    人間|22才|女性|防御
  • 聖霊紫帝闘士
    ニクノイーサaa0476hero001
    英雄|26才|男性|バト
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 龍の算命士
    CERISIER 白花aa1660
    人間|47才|女性|回避

  • プルミエ クルールaa1660hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • Dirty
    フィーaa4205
    人間|20才|女性|攻撃
  • ボランティア亡霊
    ヒルフェaa4205hero001
    英雄|14才|?|ドレ
  • 崩れぬ者
    梶木 千尋aa4353
    機械|18才|女性|防御
  • エージェント
    豪徳寺 神楽aa4353hero002
    英雄|26才|女性|ドレ
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