本部

【森蝕】連動シナリオ

【森蝕】異端強襲

雪虫

形態
イベント
難易度
やや難しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
25人 / 1~25人
英雄
25人 / 0~25人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2017/11/25 23:34

みんなの思い出もっと見る

掲示板

オープニング

●願い
 救済なんて興味はない。
 世界なんてどうでもいい。
 救われて欲しいのは、大切なのは、護りたいのは、お前だけだよ、
 ■■■■。

●異端強撃
 バリアが破られたと同時に、ウールヴへジンとヴァルキュリアが群体となって雪崩れ込んだ。巨大な猿のような従魔、巨大な犬のような従魔、戦乙女のごとき従魔が、腕を、牙を、翼を、掲げ、剥いて、広げ、咆哮しながら疾走する。
「キュウサイ……キュウサイ……ッ!」
「タスケテ! ヤメテ! コロサナイデッ!」
「行け! 真なる世界の使徒達よ! 我が主の名の下に救済の道を切り開くのだ!」
 背を気色の悪い汗が滑り落ちていくのを感じた。従魔はただのプログラム。故に、従魔達の並べ立てている言葉も、意味も意義も有しない音の羅列に他ならない。
 いや、だからこそ、この一団には狂気めいたものを感じた。壊れた戦士と、獣と繋がれた犠牲者と、偽りの戦乙女が隊を為して差し迫る。
「メザスベギ……ジンナルゼガイ……」
「シニタクナイ……シニダグナイィィ……」
「行け! 選ばれし神の使者達よ! この穢れた世界に聖なる光をもたらすのだ!」
「セキュリティシステム準備完了! 総員白線の位置まで退避せよ!」
 端末を操作していた職員が声を上げ、別の職員達が「君達、こっちへ」と応援に駆け付けたエージェント達を誘導した。そして起動ボタンが押された、瞬間、地面から柱が競り上がり周辺の従魔を弾き飛ばした。柱を避けた従魔達へ、壁際に並べられた四つの砲身が向けられる。
「発射!」
 号令と共に直径2mの砲弾が射出され、直線上にいた獣共に襲い掛かり薙ぎ倒した。「今だ、掛かれ!」の合図と共にリンカー達は戦場に踊り、剣を、槍を、銃を構えて眼前の敵に差し向ける。
 と、その時、戦場をスノーボードに乗った一人の青年が駆け抜けた。青年は迫る砲弾を、柱を、立ちはだかるリンカーを最小限の動きで躱し、そのまま単身インカ支部のゲートへと突入する。
「まずい、突破された!」
「エントランスシステム起動! 今の内に撃退を……うわ!」
 職員が支部に突入しようとしたその時、鬼火のような従魔……ムバエと、巨大な兎のようなウールヴへジンがバリア内に入り込んだ。ムバエは手当たり次第に爆風を巻き起こし、兎型ウールヴへジンはM・Aを狙って宙高く跳躍する。
「踏ミ潰セ、踏ミ壊セ、踏ミ躙レ」
「M・A!」
 戸丸音弥(az0037)が駆け出し、M・Aを突き飛ばし代わりに従魔の蹴撃を受けた。ヴァルキュリアが杖を掲げ、従魔達の傷を癒す。
「行け! 真なる世界の使徒達よ! 我が主の名の下に救済の道を切り開くのダ!」
 M・Aが倒れればバリアが壊れ、更なる従魔が押し寄せる。
 従魔とフレイを倒さなければインカ支部が破壊される。
 どう動き、どう戦うか。リンカー一人一人に選択が迫られていた。

●願ウ
 フレイはエントランスに出現した樹木に行く手を阻まれていた。見た目は模造植物だが、何らかのライヴス技術が使われているのだろう。破壊して先に進むには少々時間が掛かりそうだ。
 が、フレイに焦りは見えない。何があろうと表情が変わる事はない。感情など消え失せた。彼の中に残る心は、たった一人への想いのみ。
「救われて欲しい……大切……のは、護りたい のは、
 お前だケ」

●戦域情報
・インカ支部前
 40×40sq。PC、NPC、従魔が入り乱れて点在している
□□□□AA□□□□
□● ●  ● ●□
□        □
□ 柱 柱  柱 □
□        □
□ 柱  柱 柱 □
□        □
□ 柱 柱  柱 □
□      M □
□□□□BB□□□□

A=インカ支部入口
B=バリアの穴
M=M・A
●=大砲型AGW。3ターン毎に直径2mの砲弾を発射。砲弾は40sqを直進し消失。砲弾に当たると固定ダメージ5を受け3sq後退(無差別)
柱=太さ1×1sq。一定ダメージで破壊可能。壊れると周囲2sqに瓦礫を落とす。瓦礫に当たると【衝撃】発生(無差別)

・支部エントランス
 20×20sq。現在防壁トラップ「樹木壁」が生えフレイの進行を妨害している。樹木は一定ダメージで破壊可能。樹木ではフォレストホッパー使用可能
 
●敵情報
 フレイ
 ケントゥリオ級愚神。ステータスは特設ページ参照。樹木壁を破壊し奥に進もうとする。一定ダメージで逃亡しようとする
・グリンブルスティ
 パッシブ。地上から10cm地点を浮遊するスノボーに乗って移動、足場の制約を受けない。スノボーを盾のように使い防御を行う。スノボーを破壊された場合物防・移動・回避が大幅に減少。スノボーを修復するのに2ターン要する。修復中のスノボへのダメージは修復後に引き継がれる
・ブローズグホーヴェイ
 アクティブ。赤い馬の幻影を召喚し、前方に横3×縦8sqの無差別攻撃
・アルフヘイム
 妖精型のライヴスを周囲に舞わせ惑わす無差別攻撃。1d6で判定を行い、勝利した場合対象に【減退(2)】【封印】【劣化(防御)】【狼狽】付与
(例:フレイが4を出した場合、3以下を出した者にBS付与)

 ヴァルキュリア×10
 デクリオ級従魔。翼で地上から50cm地点を浮遊し移動、足場の制約を受けない
・戦乙女の加護
 杖から回復のライヴスを放ち、対象の生命力を10回復。一度だけ自身の生命と引き換えに範囲8にいる者全て(無差別)の生命力を10回復

 ウールヴへジン(山猿)×8
 デクリオ級従魔。体長3m。ラグナロクを讃える言動をする
・虫払い
 周囲にある瓦礫や人間を掴んで1~8sq先に投擲。当たると【衝撃】発生
・虫穿ち
 前方5sqに突進
・虫潰し
 腕を振り回し範囲5sqを攻撃
・教架
 パッシブ。生命力が減る程攻撃力上昇

 ウールヴへジン(山犬)×6
 デクリオ級従魔。体長3m。助けを求めるような言動をする
・爆牙
 爆発性の牙型RGW。命中すると爆発し、攻撃対象に通常+1d6ダメージを与えるが、使用者にも1d6ダメージを与える。なお、攻撃が外れた場合は、使用者にのみ1d6ダメージを与える。PCが牙に攻撃した場合、ウールヴへジンに通常+1d6ダメージ付与
・虫穿ち
 前方5sqに突進
・教架
 パッシブ。生命力が減る程攻撃力上昇

 ウールヴへジン(山兎)×6
 デクリオ級従魔。体長2m。破壊を愉しむような言動をする
・蹴撃
 1ターン目で跳躍し、次ターンで敵を踏み潰す
・虫潰し
 足を振り回し範囲5sqを攻撃
・教架
 パッシブ。生命力が減る程攻撃力上昇

 ムバエ
 ミーレス級従魔。飛行能力あり。大量に集まり一斉に自爆する事がある。リプレイ開始時に20体おり、戦闘終了まで1ターンにつき10体増える
・集団自爆
 半径2sq以内に集まったムバエの数×1の数値を範囲内にいる対象に無差別/防御無視の固定ダメージとして与える

解説

●目標
 敵の殲滅
 インカ支部防衛
(フレイがエントランスを突破/フレイが逃亡/支部建物が大幅に破壊される/M・Aが戦闘不能になる/NPCに死者が出ると失敗)

●NPC
 インカ支部職員×20
 4人は大砲の操作を行い、残りは戦闘に当たる。剣装備のドレッドノート×4、盾装備のブレイブナイト×4、銃装備のジャックポット×4、魔法書装備のソフィスビショップ×4

 戸丸音弥&セプス・ベルベッド
 バトルメディック。アサルトライフル/禁軍装甲所持。ケアレイ/クリアレイ使用。指示がなければM・Aの護衛を行う

 M・A
 ギアナ兼インカ支部長。バリア維持のため戦闘行動は不可。戦闘不能でバリアが解け、「敵情報」記載従魔が各3体ずつ追加される

●その他
・PC/NPCが支部エントランスに入るには1ターン以上を要する(フレイに会敵出来るのは2ターン目以降)
・ウールヴへジン/ムバエが支部建物に到着すると壁の破壊を行う
・ヴァルキュリアが支部建物に到着するとフレイの回復を行う
・使用可能物品は装備・携帯品のみ
・PL情報は「PCは知らない情報」/活用するにはPC情報への落とし込みが必要です
・プレイングの出し忘れにご注意下さい
・英雄が二人いる場合は英雄の変更忘れ/装備・スキルの付け忘れにご注意下さい
・装備されていないアイテム・スキルはリプレイに反映する事が出来ません
・能力者と英雄の台詞は「」『』などで区別して頂けるとありがたいです
・「●願い」「●願ウ」「マスターより」はPL情報です

リプレイ

●突入前
 三木 弥生(aa4687)は三木 龍澤山 禅昌(aa4687hero001)と共鳴し、薄桃色の唇を真一文字に引き結んだ。戦いに緊張している……訳ではなく、彼女が緊張している理由は別にある。
「こ、今回は御屋形様とは別行動……でも御屋形様の命ならば粉骨砕身の覚悟、参ります!」
 骸骨鎧をガシャリと鳴らし、己自身に喝を入れ……と、敬愛する『御屋形様』、沖 一真(aa3591)の共鳴姿が普段と違う事に気が付いた。一真主体時の髪は白。だが今の髪は……黒。
『大丈夫。一真と相談して決めたから……』
「そういうこった」
 月夜(aa3591hero001)の声が弥生に応え、一瞬一真の口調が響く。従魔が元は何だったのか……それを考えた時、月夜の胸には静かに燃ゆる火があった。月夜の感情の昂りも、主体が相棒である事も一真は既に了承している。一真は意識の底に潜り、月夜は得物の背を撫でる。

『フレイは、壊れています』
 アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)からの指摘に志賀谷 京子(aa0150)は目を閉じた。思い出すのは北欧の件。ふうと息を吐き、瞼の下から緑の光を覗かせる。
「かもね。でも彼にだってきっと物語はある。した事の代償は払ってもらうけれど、救いの形があるのなら果たしたいとも思う」
『いつもながら欲張りですね』
「わたしは我儘だからね」
 笑みを浮かべ、共鳴。緑の瞳が青へと変じる。弓を右手に握り締め、駆け出す準備は出来ている。

(みんな思うところがあるみたいだけど)
 十影夕(aa0890)は無表情でリンカー達を眺めていた。皆英雄と共鳴し、武器を確かめ……腰にカメラを仕込んでいる者もいる。夕の知り合いも、ある目的を胸に秘めこの戦いに臨むらしいが。
「ま、殺す気でいかなきゃどうにもなんない」
『死ぬ気で、じゃありませんのね』
 結羅織(aa0890hero002)からのツッコミに夕は「ん」と首を傾げた。笑うでもなく、淡々と、ほぼ真顔で問い掛ける。
「俺と死にたい?」
『イヤです!』
「でしょ」
 真顔のまま軽口を叩き、共鳴。意識が混ざり一つに融ける。金の瞳をぱちりと開いたその先には、戦場を見据える真壁 久朗(aa0032)の姿があった。
「後悔しないようにね、久朗さん」
 普段の夕では見せる事のない屈託ない笑みで声を掛けられ、久朗は「ああ」と小さく返した。自分の行動の結末が、どうなるかは分からない。
 それでも。
『頑張りましょう、クロさん』
 セラフィナ(aa0032hero001)の言葉に視線を合わせ、久朗は微かな笑みを浮かべた。「セラフィナイト」に触れ、共鳴。
 そして戦場に躍り出る。

●激突
「タスケテ」
「シンナルセガイヲ」
「行け! 救済を果たすために!」
 戦場は砂塵と従魔の猛りに満ち満ちていた。山猿が我が身を砲丸に変え支部職員へと突撃し、山犬の牙が喰い込んだと同時に爆風と血が周囲を舞い、ヴァルキュリアの回復の光が鼓舞の声と共に飛ぶ。
「勇猛なる使徒達よ! 救済を拒む愚か者にせめて死の安らぎを!」
 そしてまた回復の光が放たれる……瞬前、妖しく美しい真紅の光が戦乙女の目を染めた。何かを認識する前に、疾風怒濤の三連撃がヴァルキュリアの身を斬り刻む。
「……!」
 口上を述べる間もなく戦乙女は絶命し、雨宮 葵(aa4783)は更なる真紅に塗れた華樂紅を軽く振るった。そして悪戯っぽくニッと口角を吊り上げると、次の獲物を求めて柱の向こうへひた走った。

「ぐっ!」
 山猿の攻撃に、職員の一人が背を強かに打ちつけた。横合いから山犬が特攻を仕掛けるが、そこに飛盾「陰陽玉」を掲げ虎噛 千颯(aa0123) が滑り込む。
「俺ちゃんがいる限り誰も死なせないんだぜ!」
『皆で護るでござるよ!』
 白虎丸(aa0123hero001)との勇ましい掛け合いに、職員達も奮い立ち改めて従魔と対峙する。
 一方、ニウェウス・アーラ(aa1428)は支部入り口前を目指しつつ、宙を漂うムバエを見上げた。
「あの鬼火……危険、だね」
『んー、要チェキかな!』
 ストゥルトゥス(aa1428hero001)の軽い調子にニウェウスは魔導書の頁を捲った。ムバエは既に戦場じゅうに点在している。
「とりあえず……支部の防衛かな」
 ライヴスを集中、と同時にリフレクターが散開し、放たれた絶対零度を四方八方に撒き散らした。炎ごと凍らされて従魔は次々地面に落下し、すかさずバルタサール・デル・レイ(aa4199)がRPG-49VL「ヴァンピール」を別のムバエ群へと向ける。
 鬼火へ迫るロケット擲弾。着弾と同時に大爆発を巻き起こし、従魔の身も炎をも爆風の中へ葬った。
 水落 葵(aa1538)は守るべき誓いを発動、ライヴスを発散して敵の注意を自分へ引き付け、イリス・レイバルド(aa0124)もまた敵の的にと金色に輝く我が身を示す。
「ボクが相手だ、かかってこい!」
 山猿は手にした瓦礫を黄金の少女へ投擲した。迫り来る石くれにイリスはパラディオンシールドを構え、優美な宝石盾を振るって粉微塵に打ち壊す。
 単純な物理攻撃で立ち止まるほど戦闘経験は軽くない。
「お姉ちゃんに鍛えられたボクの力、甘く見ないで!」

「守り抜かなきゃ、だな……」
『ああ、俺達は周りの奴らを減らすぞ』
 アーテル・V・ノクス(aa0061hero001)の声に木陰 黎夜(aa0061)は頷いた。アルヴィスの書を手に開きゴーストウィンドを呼び起こす。不浄の風は従魔を巻き込み防御力を低下させ、木霊・C・リュカ(aa0068)の姿を借りた 凛道(aa0068hero002)が、モノクルの下から敵を見据える。
『罪には罰を、正義の断頭を。来なさい。一人ずつ、確実に、その首を刎ねて』
 その声が聞こえたか否か、山猿が咆哮と共に凛道目掛けて駆け出した。凛道はポルードニツァ・シックルを構え、低く小さく声を落とす。
『魂だけでも、貴方を愛していた者達の御許まで送りましょう』
 瞬間、かまいたちが一筋走り、ウールヴへジンの太い首に長く赤い傷を作った。赤い飛沫を上げる従魔をヴァルキュリアが回復しようとした、そこに狙撃銃LSR-M110の弾丸が叩き込まれる。
「エインヘリャル、何故我々の邪魔をしようとするのです!」
 抗議を上げつつヴァルキュリアが自身を回復。だが、それは無駄と言えた。アウグストゥス(aa0790hero001)と共鳴した黛 香月(aa0790)は、銃口を合わせたまま従魔の叫びを一蹴する。
「何が救済だ。私が私であるために、貴様らは消えねばならない。貴様らが差し出す救いの手など要らぬ!」
 拒絶と共に弾丸は放たれ、戦乙女の胸の間を一直線に穿ち抜いた。完全に沈黙した敵の骸を視認した後、香月は別方向へ走り出す。
 
●交戦
「インカ支部にも御屋形様の名を轟かせてみせようか!」
『……御屋形様の凄さは、国境も越える?』
 高らかな雨宮葵の声に燐(aa4783hero001)は疑問符を投げ掛けた。御屋形様……沖一真。最初はノリで呼んでいたが、今では尊敬をこめてこの名称を使っている(勿論彼の英雄、月夜の事も慕っている)。
 自由に生きると決めて、葵は自分を縛るもの全てを切り離す道を選んだ。
 だが一真の近くは心地よい。恋愛感情という意味ではなく、「ただいま」と言えば当たり前のように「おかえり」と返してくれる。ここに居てもいいんだと思わせてくれる暖かい場所。
 だから人は、彼を御屋形様と呼び慕うのだろう。
 支部職員やエージェント達がウールヴヘジンを押さえる間に、葵は粉塵に隠れ、気配を消し、まるで滑空する鳥のように戦乙女に肉薄する。気付いた時にはもう遅く。鮮烈な紅が軌跡を描き、頭に、胴に、足に、襲い掛かる。
「……ッ」
 偽りの命を失くした女従魔は地へと落ち、葵は辺りを見渡した。二体撃破したのはいいが次は一体何処に行こうか……。
「手が空いている人がいたら、東側のヴァルキュリアよろしく!」
 アル(aa1730)のテクノボイスが通信機越しに響いた。『軍の頭を潰すと統率が崩れる』『統率は防御力と同じ、そこを潰せば脆くなる』……アルはそのように考え、鷹の目を上空に飛ばし、戦況把握と群のリーダーの特定に努めていた。そしてヴァルキュリアが腕を振り上げ、ウールヴへジン達を指揮しているのを確認した。
『回復役兼指揮官という所ね』
 雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)の声に同意を示し、味方全体に情報伝達。礼を述べる葵に、アルは元気な声で答えた。
「コソコソするのは得意でねぇ。探り入れるのは任せて!」
 そしてアルは偵察を続け、葵は東側へと赴く。

 地不知の技で中央の柱を駆け上がった紫 征四郎(aa0076)は、高所から敵、味方、全ての様子を観察していた。その様子を仲間に共有し……と、ユエリャン・李(aa0076hero002)が静かに告げる。
『ほれ、敵が来ておるぞ』
 足下へ視線を向ければ、粉塵に紛れ抜けようとする巨猿の姿。LSR-M110を構え、銃撃。従魔の右腿に風穴を作り、即座に仲間へ声を発する。
「凛道! こっちをお願いします!」
「行って。ここはうちが」
 山猿を示す黎夜に一先ずはこの場を任せ、凛道は強く地を蹴った。目の前の全てを薙ぎ払うように大きくシックルを振り被り。風が生じる。風は刃となって従魔の背後を二つに裂いた。崩れ落ちる巨体を視界の端に認めながら、黎夜はアルヴィスの書を撫ぜる。
「助けを求めても……プログラムなら、問題ない……。討ち落として、解放するよ……」
 瞬間、魔法の剣が生成され、そのまま弾丸を飛ばすがごとく従魔へと飛翔した。剣は従魔の臓を貫き、ウールヴへジンは悲鳴もなく後方へと倒れ込む。
 黎夜に大きく影が落ちた。黎夜がはっと視線を上げると、そこには兎と呼ぶには醜悪な顔の獣の姿。
「踏ミ潰セ、踏ミ壊セ、踏ミ躙レ!」
 山兎の蹴撃が黎夜へと襲い掛かり、吹き飛ばされて黎夜は土の上を転がった。手をついて起き上がる、その横合いから山犬の牙が迫り……
「タスケテ! イヤダ! コロサナイデッ!」
 爆音。だが、黎夜の身に痛みはなかった。顔を上げると飛盾を掲げ、黎夜を護るように立つ千颯の姿。
「大丈夫か、黎夜ちゃん」
「ありがとう、虎噛」
 爆発の傷を負いながらも、千颯は常のごとく飄々と笑った。全力で駆けた疲れも見せず、高らかに声を張り上げる。
「それじゃ、気合い入れて行くんだぜ!」

『職員は各クラス、1人ずつの4班を形成して下さい。主標的はムバエ、こちらに従魔が近づいた場合の援護。それ以外については付近で交戦中の救援部隊との連携を意識するようお願いします。1班は大砲の護衛を』
 構築の魔女(aa0281hero001)は足を動かし、インカ支部職員達に適宜指示を行っていた。自衛しつつ状況を把握し、現在地と交戦の有無を確かめてはその都度全体に情報を伝え、既に負傷の深い者への応急処置に、あるいは緊急用に手持ちの賢者の欠片を渡し……これにより戦場には職員で構成された計4班、救援部隊で構成されたM・A護衛班1班、そしてそれぞれ迎合したり、遊撃に回ったりするその他救援部隊の構図となった。
「大砲の用意が出来たぞ!」
『分かりました。各位待機願います』
(ロロ……)
 内面から辺是 落児(aa0281)が話し掛け、構築の魔女は正面を見つめた。先には猛攻する従魔の姿。それを喰い止める仲間達。
『ええ、守りましょう。必ず』

 拒絶の風に衣が揺れる。
 練り上げられたライヴスが黒い髪をなびかせる。
 月夜は今、従魔群とM・A達との中程に立っていた。迫りくるのは猿と犬。巨体の織り成す地響きが月夜の身を細かく揺らす。
「シンナルセカイヲッ!」
「シニタクナイ! タスケテッ!」
 そこにムバエが2体加わり、徐々に距離を狭めてくる。が、月夜に動揺はない。魔血晶を砕き、血の奔流を周囲に舞わせる。金烏玉兎集を宙に浮かばせ、冷徹とも言える口調で零す。
『さぁ、残らず灰に戻しましょう。嘆きの声も皆焦げ付かしましょう……命を土へ還しましょう』
 まるで祈りを捧げるように、月夜は金の瞳を閉じ……瞬間、ライヴスの火炎が炸裂し従魔共を呑み込んだ。ムバエ2体は蒸発し、ウールヴへジンも威力を増した熱源に焼かれて転げ回る。
 慟哭が響く。だが月夜の心は揺らがない。それよりも強く、月夜を焦がすものが胸の内に灯っているから。

「みんな、大丈夫か!?」
「問題ない、大丈夫だ」
 職員達の返答の後、水落葵は頬についた煤を拭った。原因は群がってきたムバエ4体。守るべき誓いで自分に引き寄せたは良かったが、ムバエの自爆攻撃は半径4m。結果、近くにいた職員にも攻撃の余波が行った訳だ。
 葵がグリムリーパーを構え直す……そこに、犬型従魔が唸りと共に飛び掛かった。葵は咄嗟に鎌を盾と掲げるが、間に合わず爆牙をもろに喰らってしまう。
「ぐっ!」
 更なる火傷を負いながら、それでも葵はグリムリーパーを振りかざした。爆発にダメージを喰らっているのはウールヴへジンも同じ事。銀色の刃は従魔の鎖骨辺りを掠り。獣が吠える。
 その側頭部で、髪飾りがシャラリと揺れた。
 
 イリスもまた、ムバエの爆発により少々ダメージを負っていた。
 とは言え、これは既に戦場に散在していたムバエに拠るものであり、これ以上は然程気にしなくても済む筈だ。構築の魔女の指示で支部職員はムバエに集中しているし、ニウェウスやバルタサール、月夜も喰い止めてくれている。職員達が負ったケガも、構築の魔女が配った賢者の欠片の備えがある。
 仲間を信じて任せよう。自分は自分の為すべき事を。
「いくよお姉ちゃん、全ての理不尽を叩いて砕く!」
『イリスがそれを望むなら私は力を貸すだけさ。頑張りたまえ』
 アイリス(aa0124hero001)の声に、イリスの表情が少し和らぐ。イリスの背を包んでいるような。その感覚が進む勇気をイリスへと与えてくれる。
 山猿の一匹がイリスを掴もうと腕を伸ばした。3mもの巨体と、これ程の数で連携を維持するのは至難だろう。
 よって崩す。
 イリスはライヴスを盾に纏わせ、従魔の顎下に潜り込み――勢いよく突き上げた。ライヴスリッパーを乗せた痛烈なシールドバッシュ。山猿の脳がぐらりと揺れる。
『大砲発射します。皆さん、軌道上から下がってください』
 通信機からの声に、リンカー達は一斉に大砲の向きを確認した。門に近い2門はやや内側を向いており、外周に近い2門はそのまま。
 門側は入り口への侵入を線として防ぐため、外周はエントランスや大砲に向け進軍する従魔の足止め。また集団化したムバエの散逸等にも随時使用……それが構築の魔女の考えだ。
『2号と4号を発射します。撃ち方用意』
 左から1~4号と識別し、通信機で砲弾の射線を告知。『放て』という声を合図に、砲弾が二つ叩き出された。

●防衛
 弥刀 一二三(aa1048)は桜小路 國光(aa4046)と共に、M・Aに向かう従魔の突撃を我が身を盾に喰い止めていた。
「神を語るんに、卑怯ばっかしよりますな……」
『北欧神話が泣いているぞ……意地でも守り抜け、いいな?』
「て、共鳴状態どすえ?」
 一二三からのツッコミを、キリル ブラックモア(aa1048hero001)はクールに無視した。とは言え彼女の正義魂は言葉と共鳴姿を見れば明らか。右目が銀、左目が金に変じ、赤い短髪襟足にシャギーが入った銀髪が混じり腰辺りまで長く伸びる……この姿は二人のやる気が高いという証である。
「壊レテシマェッ!」
 別方向から山兎の虫潰しが迫る……そこに、「ウラワンダー☆ガード!」と少女の声が響き渡った。白とピンクが基調の衣装。敵を阻むウラワンダー☆ソード(重い)。背中にはマントが翻る。そう、彼女の名は。
「聖霊紫帝闘士ウラワンダー参上! M・Aさん、私から離れないでください!」
『M・Aが目立つナリですぐみつかったな。が、敵からも狙われやすくないか?』
 大宮 朝霞(aa0476)の名乗りに続けニクノイーサ(aa0476hero001)が指摘した。朝霞はイメージプロジェクターを使った。地味になったM・Aは少し不満そうだった。
『ほら、ボンクラ。気張るですよ。前と違って今回は防戦、ノア達が得意なことですよ?』
「……そうだね。大事な局面なんだ。感傷に浸る余裕は無い……そんなこと後で出来る。今は、乗り切る」
 ノア ノット ハウンド(aa5198hero001)の声に紀伊 龍華(aa5198)は口を結ぶ。ウールヴヘジンと先日交戦した際、龍華は思った。
 これは人殺しなのだと。
 しかし龍華はそう思いながら戦った。そして再びその決心を固めている。何よりも重要なのは支部の防衛。その要となるM・Aを守る為に、全力を尽くす。守りきれなかった場合に訪れる惨事の恐怖を脳裏に浮かばせて。
 故に。
 ライヴスを両手に集中。標的は、ニウェウスから襲来を警告されたムバエ3体。撃ち出されたライヴスショットは鬼火共を巻き込んで、盛大に弾け飛んだ。國光と一二三が揃ってM・Aに声を掛ける。
「M・Aさん、とにかくバリアの穴から離れるように」
「せやな、あの中央にある柱の方に……」
 そしてM・Aを移動させようとした矢先、山犬が涎を垂らし、歯肉を剥いて突撃してきた。山犬の攻撃はまず眼前の一二三へ向かい、防御無視の爆破ダメージを一二三の両腕へと負わせる。
「あいてっ!」
「大丈夫か!」
「平気おす。この程度でへこたれるようなヤワな男と違いますえ!」

「よーし、ウラワンダーの名を南米に轟かせるチャンスよ!」
『動機が不純だぞ、朝霞』
「……照れ隠しよ、言わせないでよ恥ずかしい!」
 ニクノイーサのツッコミに白いマントを揺らしつつ、朝霞はウラワンダー☆ソードをレインメイカーへ換装した。ハートマークのオブジェが付いた可愛らしい杖(2m)を、先程攻撃を仕掛けてきた山兎の側頭へ叩き込む。
「もう終わりなのかもしれないな……繁栄を享受するだけの時代は……」
『はい?』
 國光の小声の呟きにメテオバイザー(aa4046hero001)は疑問符を投げた。モノクルの向こうの瞳は戦場を映しており……その言葉がどのような意図で発せられたかは分からない。
 いずれにしろ、やるべき事は決まっている。國光は双神剣「カストル&ポリュデウケス」を諸手に構え、今最も近くにいる山猿へと剣を振るった。肩口から腰へと線が走り。血飛沫が舞う。山猿は少しぐらついた後、なんとそのまま國光を右手で掴み上げた。
「何っ!?」
「オロカモノニハ……サバキヲッ!」
 投げられた國光が直線にM・Aへと向かう……それを一二三がハイカバーリングで受け止めた。178cmの成人男性がもろに一二三に伸し掛かる。
「すいません、大丈夫ですか?」
「とりあえず……降りてくれれば……」
「潰レ、潰レ、潰レテシマエッ!」
 ヴァルキュリアの回復を受けながら山兎が跳躍し、そのままM・Aを踏み潰そうと巨大な足に力を込めた。朝霞が咄嗟に駆け出して敵の蹴撃を代わりに受け止め、そこに構築の魔女から通信が入る。
「大砲を発射するそうです、皆さん、備えて!」
 國光の声から一拍、砲撃音が響き渡った。國光達のいる方へ砲弾は来なかったが、響いた音に従魔達は一瞬だけ動きを止める。
 その一瞬で体勢を立て直し、國光と一二三は陣形を整えた。山犬の爆牙を國光が双剣で押し留め、山猿の突進を一二三の盾がカバーする。國光と一二三はわずかばかりたたらを踏み、その隙にヴァルキュリアの回復の光が飛ぶ。
 龍華は細い眉をしかめた。ライヴスショットでムバエを押さえていたのだが、使い切ってしまった。バリアの穴からは新たなムバエが侵入し、一部がこちらへやってくる。龍華一人で全てを制するのは難しい。
 龍華は敵を引き寄せるライヴスを周囲に発散した。目論見通りムバエは龍華に接近し、爆発。防御無視のダメージは、わずかながらも龍華の身を痛め付ける。
 だが、これでいい。龍華はM・Aから遠ざかる。本当は他の従魔も引き付けたい所だが、少なくともムバエからはM・Aと仲間を守れるだろう。
 気付いた一二三が声を上げた。加勢に行きたいが、従魔がそれを許さない。
「紀伊はん!」

●壊れた人形
 フレイはエントランスの中程に立ち、樹木の壁を退けるべく幻影の馬を奔らせていた。なかなか丈夫な防壁のようだが、攻撃を繰り返せば壊せない事もないだろう。
 無感情な瞳のまま、再度右手を振り上げる――そこに、フレイの背後を打つように、一本の矢が疾走した。フレイはボードで攻撃を阻み、攻撃の主、京子を認め、赤い馬の幻影を返礼にと差し向ける。
 だが、その攻撃を久朗の陰陽玉が代わりに受けた。京子はその隙に位置を変え、再度銀晶弓「ナランハルフト」を引き絞る。
「お久しぶり。また誰かを連れにでも来た?」
 京子の問いにフレイは答えず、京子はそのまま夕陽のごとき橙の矢を走らせた。攻撃はまたもやボードの隅で止められたが、先程も含め、むしろ狙い通り。弾着の衝撃でボードは愚神の手から弾かれ。敵の防御姿勢が崩れる。全力移動で距離を詰めた夕がふわりと笑みを浮かべる。
「お人形でも血は温かいのかな?」
 可愛らしい雰囲気に激しい攻撃性を滲ませて、ふらついた足首に聖槍「エヴァンジェリン」の穂先を突き出す。夕は味方の攻撃を考え一時敵から距離を取った。
『何だろうね~……この違和感。リズムが狂ってる、カンジ』
 樹上で弓を構えるレイ(aa0632)に、カール シェーンハイド(aa0632hero001)が語り掛ける。音楽用語に則った表現を好んで使うのは二人の癖。だがそこに、楽し気な様子は微塵もなく。
「余程の悪癖なベーシストとドラマーが後ろに居るのかも、な……。……更にそのボーカリストはオーディエンスを見ていない。
 最低なライブ、だな」
 では、最低なライブに付き合わされてしまった場合は? レイは九陽神弓の弦を引き、フレイの頭上を狙い射った。放物線を描いた襲撃はフレイの集中力をブレさせ、その一瞬で八朔 カゲリ(aa0098)、リンクバリアの結界を纏った月鏡 由利菜(aa0873)が共に仕掛ける。
 先手はカゲリ、双炎剣「アンドレイアー」。【燼滅の双剱】に相応しい黒焔がフレイの傷と肉を焼き、 後手、由利菜のフロッティが光と共にグリンブルスティに叩き込まれる。
 だが、愚神にもその持ち物にも未だ崩壊の兆しは見えず。赤馬がカゲリと由利菜に迫る。久朗はカゲリのカバーを選んだ。幻影は由利菜と久朗を強かに踏み付けたが、防御力の高い二人を傷付ける事は叶わない。
「あの時お前が言っていた『救われて欲しいのは……』って誰の事だ?」
 久朗の言葉に、フレイの目元が僅かに動いた、ような気がした。カゲリは久朗の影から転がり出ながら黒焔の剣を再び振るい、京子は反撃の狙いを絞らせないよう不規則に移動しながら矢を向ける。レイはフォレストホッパーで樹上を飛び回りつつ神弓の弦を歌わせ、仲間の作った隙を突き由利菜の白銀の刃が踊る。
(話しかけたり不意打ちしたり、なんだか矛盾してて悪いんだけど)
 夕もまた久朗の言葉、そして仲間の連携に乗り、機動力を削ぐために今度は膝へと槍を繰り出す。話したい、という面々のため声はかけない。だが手は緩めない。それもまた矛盾しているようだとは、まあ、少しは思うけど。
 フレイは顔を向けないまま夕の方へと手だけを向け、そのまま赤馬の幻影を放った。だがこの攻撃もまた、前衛のカバーに集中する久朗の飛盾に阻まれる。
 盾越しに覗く機械の瞳にフレイが微かに首を動かす、その時樹木の隙間から弥生の小柄な影が飛び出た。本当は仲間が近付く前に仕掛けたかった所だが。
「御屋形様のためにも、止めさせて頂きます!」
 エントランスに侵入し、弥生がまず行ったのは鷹の目の生成だった。フレイの行動を常に監視し、居場所を特定しつつ仲間の攻撃に合わせて移動。故に最初の想定より遅くなったという訳だが、甲斐あって死角を突くという点ではパーフェクト。
 発動した女郎蜘蛛は、蜘蛛の巣に掛かった蝶のようにフレイの身を絡め取った。元々樹木壁に囲まれ、さらにスノ―ボード持ち、行動は大分制限されていたようだが、これでさらに身動きは取れない。
 この機を逃す手はない。
 まずは京子が弓を引いた。狙いは違わずボードの破壊。それにナイチンゲール(aa4840)も便乗する。本当はもう少しライヴスを活性化したい所だが。
『好きに動け。お前の思うままに』
「……うん」
 墓場鳥(aa4840hero001)に小さく返し、ナイチンゲールはフレイを見据える。拘束されてなお、感情らしきものは見えない。
 それでも。
「行きます!」
 京子の合図と共に、二度目のシャープポジショニングが愚神へと放たれた。防御を突き崩す夕陽色の矢に合わせ、ナイチンゲールがソルディア――愛称「ジークレフ」へとライヴスを纏わせる。
「お願い、壊れて!」
 ト音記号を模した剣がボードへと打ち落とされ、瞬間、ボードは盾の役割を果たせぬ程に崩壊した。夕が、レイが、足元と頭上から全く同時にフレイを撃ち、由利菜がリンクバーストと同時にフレイとの距離を零にする。
『豊穣の姫神と神威の鷲が織り成す神域の技、その身に刻み込め!!』
 リーヴスラシル(aa0873hero001)の声と共にまず一打目が繰り出され、その横合いからカゲリの双炎剣が煌めいた。リンクコントロールを重ね、誓約を遵守し、仲間達との絆を意識し、自分らしさを失わず……それらの行為が英雄と自分との絆の力を強化する。白銀の刀身と黒焔を纏う刀身が、目にも止まらぬ乱撃となってフレイ一人に叩き込まれる。
 歪んだ情念を浄化する刃、万象を灰燼に帰す刃は、ケントゥリオ級愚神の身も、生命さえをも大きく削った。裂傷を無数に作り、切れた肉を覗かせながらさすがに肩で息をするフレイに、久朗は改めて問い掛ける。
「今俺達の仲間がフレイヤと戦っている。戦いの中で彼女は傷つけられてしまうかもしれない。側で守ってやらないのか? 彼女はお前の妹……家族じゃないのか?」
「……」
「それにお前……豊穣神だなんてそんな都合のいい名前ではないだろう。誰にその名を呼ばれていた?」
「……」
「いつもつまんない顔してるね」
 沈黙するフレイに、久朗に合いの手を入れる様にナイチンゲールも問い掛けた。その理由をずっと考えていた。組織の理念も救済も、何も見てない目。
「どうして? 何の為に戦うの? ラグナロクのフレイじゃない、“あなた”に聞いてるの」
「……」
「私達には勝てないよ。あなた達は誰かの掌の上で踊らされてるだけだもの」
 問いながら、脳裏には別の影がちらついた。愚神商人、エネミー。きっと結果より、戦い自体に何かメリットを見出している。
 少なくともそれは、『救済』じゃない。
「だから“あなた”が尽くしたって何も……“誰も救えない”。
 なのに戦うの? “何が不満”なの? フレイヤだってこのままじゃ……」
(もし彼の本当が聞けたら、私は……)
 ナイチンゲールはフレイを見つめた。その緑がかった青い瞳に、フレイの目がわずかに揺れた。久朗はフレイの胸元を掴んだ。負傷の危険を承知の上で、顔を近付け無理矢理フレイに視線を合わせる。
「お前にまだ想いや“願い”が残っているなら……お前の心を他人に利用されるな、侵されるな、手放すな」
「……う」
 フレイが唸った。ガラス玉じみた瞳が確かに久朗の方を向いた。だが、その口から洩れたのは、予想外の言葉だった。
「私の名はフレイ。私の名は……違う。それは俺の名前じゃない。俺は誰だ。あいつの名は何だ。思い出せない。思い出せない!」
 久朗は唖然とフレイを見た。ナイチンゲールは青ざめた。「フレイ」は……名前さえも失くした男は、久朗に捕まれたまま瞳を細かに揺らし続ける。
「あいつが……あいつが大変なんだ。あいつの目が……早く助けないと……私の名はフレイ。違う、俺の名は……あいつの名は……思い出せない!」
「そのまま、押さえていて下さい!」
 久朗に頼み、弥生は再び両の手をフレイへかざした。縫止を放つ好機は今この時以上はないだろう。
 だが、フレイは想像以上の力で久朗の身を突き飛ばした。その腕の肉がさらに裂け、鱗が見えた。否、それは剣だった。白く光る剣先が、まるで鱗のようにフレイの肉から生えている。
「あいつを……助けるんだ、そのためなら俺はっ!」
 瞬間、血のように赤い光がリンカー達を呑み込んだ。暴発のような攻撃。故に予測不可能。
 光に呑み込まれる瞬間、樹木がバキバキと砕けるような音がした。

●攻戦
『放て!』
 構築の魔女の言葉を合図に、砲弾が二つ叩き出された。元の位置からやや斜めへと吐き出された砲弾は、途中にある柱にも衝突しつつ進撃する。
 凛道は通信を傍受するや、眼前にいる山猿を砲撃の射線へ弾き出した。砲弾に押され支部から引き離された従魔へと、すかさず征四郎が銃口を合わせる。
『半端な生命力の敵を残すな。叩くならば沈めよ』
「はい! 確実にトドメを、ですね!」
 ユエリャンに元気に応えながら、唐紅の狙撃手は敵の頭部へ狙いを定め――発砲。飛来した弾丸は山猿の頭部を穿ち抜き、ウールヴへジンは断末魔もなく地面へと倒れ伏す。
「壊シ、壊セ、壊レロッ!」
 醜悪な叫びと共に山兎が跳躍した。それを見上げる黎夜の表情に揺らぎはない。
「讃えるなら声を消す……戦いが好きなら、存分に……? 当たっては、あげねーけど……」
 山兎の巨体が降る直前、黎夜は魔法の剣を生成し、直線に疾走させて従魔の足ごと貫いた。山兎は地面に転がり、息を吐く黎夜へと別方向から山犬が奔る。
「タスケテ、ウチ二カエシテェッ!」
 咆哮と共に迫る牙。千颯が飛盾を掲げて代わりに受ける。併用するリフレックスは従魔の身に呪いを掛け、 山犬は通常の倍の爆破ダメージを負った。その悲鳴に、千颯の眉間に一瞬皺が浮かんだが、すぐに掻き消し普段の快活な笑みを見せる。
「俺ちゃんが守るから存分に暴れていいんだぜ、黎夜ちゃん!」
「ありがとう……そうさせてもらう」

 迫り来る山犬の牙にイリスは盾を構え直した。イリスを噛もうとするには敵はあまりに長大過ぎる。強引な攻撃をしようとすれば当然その分体勢は崩れる。
 故にイリスは敵を待った。山犬が吠え立てながら口を開け、牙が盾に触れる――瞬間、山犬の横っ面に盾の側面が殴り込まれた。牙は従魔の口腔のみを爆撃し、イリスは告げる。
「半端な攻撃を通すほど、ボクは甘くないよ!」

「救済ねぇ……」
 ニウェウスと共に侵入するムバエを押さえつつ、バルタサールは特に興味なさ気に呟いた。相棒の呟きに紫苑(aa4199hero001)はくすくす笑みを漏らす。
『救済の押し付けは、いい迷惑だけど。あの従魔たち……まるでフレイに言い聞かせているみたいだね。フレイは救済する側だって。本当は自分が救済されたがっているのかもね。……なーんて』
 救済を謳っているのではなく、救済を求めている。なかなか面白い考えだ、と言う者もいるかもしれない。
 だが少なくとも、それさえも、バルタサールには興味はない。
 ニウェウスの攻撃、構築の魔女の指示により、ムバエ対応は落ち着いている。M・A班の方に若干流れているようだが、あちらはあちらでなんとか対処するだろう。
 それならもっと効率の良いやり方を優先させようか。
 バルタサールはSSVD-13Us「ドラグノフ・アゾフ」に換装し、先程から目についていたヴァルキュリアを的に定めた。柱に隠れ、微妙に狙い辛い位置にいるが、まあ、何も問題はない。
 弾き出されるテレポートショット。ライヴスを纏った弾丸は軌道上から瞬間転移し、ヴァルキュリアの背中から腹の下へと貫いた。従魔がぎゃあと悲鳴を上げる。続けて口上が述べられる。
「共に歩みましょうエインヘリャル。我々と共に救済の道ヲ……」
 バルタサールは再びライヴスを込め始めた。その言葉が本物だろうと、プログラムだろうと、答えは同じ。
「興味ねえな」
 バルタサールの声と共に弾丸は解き放たれ、転移した弾丸は戦乙女の口蓋を撃ち抜いた。

 金烏玉兎集を宙に浮かばせ月夜は敵を静かに見据えた。山犬が慟哭しながら月夜を轢き潰さんと駆け出す。
「ドウシテタスケテクレナイノッ!」
 月夜は答えなかった。返すべき言葉は既に述べた。嘆きの声も焦げ付かせ、命を土へ還しましょう。
 十二の式神の霊体が現れ、山犬へと雪崩掛かった。衝撃が山犬の身と偽りの命を討ち滅ぼし、別方向から山猿が月夜へと飛び掛かる。
「シンナルセカイトユウゴウヲッ!」
 その時、天叢雲剣を閃かせ、影が二つ躍り出た。潜伏しながら敵との距離を詰めたアルが、ジェミニストライクの分身と共に山猿の脚へと斬り掛かる。
「加勢させてもらうよ!」
 己の姿を一つに戻し、アルはテクノボイスを響かせた。月夜は微かに口元を緩め、再び敵へと視線を戻す。

 香月は戦場を走っていた。周りには支部職員も他のリンカー達もいるが、共に行動してはいない。いわゆる遊撃というヤツだ。縦横無尽に走り回り、従魔の殲滅に専念する。
 そこには彼女の抱える怒りも含まれている。
 狙撃銃を構え、未だ遠方にいるヴァルキュリアへ銃弾を。銃声に反応し猿と兎が香月を向いた。邪魔な肉塊。耳障りな声。それら全てを挽き潰すべく香月は怒涛乱舞を展開。
 爆発的な屠剣の演武は従魔共を殴打したが、葬り去るにはもう少し相手をする必要があるようだ。
 山猿が香月に猛撃を加えた。痛みを負いつつ振り回した刀で胴を盛大に吹き飛ばし。そこに山兎の蹴撃が降る。割れた額から血を撒きながら、香月は神斬を振り落として肉の塊を押し潰す。
 香月は走った。先には傷付いたヴァルキュリア。黒地の羽織の花を踊らせ、香月は一気呵成を乗せて大剣を振り下ろす。重心を崩され、ヴァルキュリアが転倒する。土に翼を汚しながら戦乙女が訴える。
「共に歩みましょうエインヘリャル。我々と共に救済ノ」
 その言葉は、従魔の頭蓋骨ごと豪快に打ち砕かれた。香月は声を荒げるではなく、むしろ冷静に声を落とす。
「フン……どこまでも気に入らん奴らだ。貴様らが如何なる行動原理を持ち合わせようが所詮貴様らは愚神……
 人類と和解するなどありえんのだ」

 山犬の虫穿ちと山兎の蹴撃が、左手と上方から雨宮葵を挟み込んだ。突進は転がって躱したが、そうなると上空への視線が外れる事になる。襲い来る衝撃。だが葵は倒れない。華樂紅を煌めかせ、自身を囲む従魔共へと怒濤乱舞を叩き込む。
 すぐさまヴァルキュリアが回復の光を飛ばし、葵は獣をすり抜けて戦乙女の方へと向かった。気付いたヴァルキュリアが上空へ逃れようとするが、葵はいっそ、愉快気に笑う。
「私達に空での戦いとか喧嘩売ってるよね! 大人しく地面に這いつくばってて貰おうか!」
『ん。鳥相手に空を奪おうなんて……万死に値するね』
 背に負うた鳥の翼に空を飛ぶ力はない。だがこの翼で飛べずとも鳥としての誇りはある。
 まずは地を蹴り、空を舞うがごとき優美さで従魔の元へ跳躍する。空を駆け、青い翼を持つ少女は、紅色の妖刀にライヴスを集中させた。重量と衝撃力を高めた武器を、そのまま敵の胴へ一撃。地に落ちた戦乙女の胸を、舞い降りた勢いのまま深く貫く。
 引き抜いた華樂紅を軽く振り、葵が背後を振り返った……その視界に、背を向けて駆けていく二体の従魔の姿が映った。先程立ち塞がった犬と兎が脇目も振らずに走って行く。
『あの方向は……支部?』
「そうはさせない!」
 燐の言葉に刀を仕舞い、葵は従魔の後を追った。

 アルは山猿へ肉薄すると、抉り込むような一撃を従魔の鳩尾へ繰り出した。霊奪と呼ばれる攻撃は山猿のライヴスを奪い取り、スキルを回復させたアルは無邪気な笑みを見せる。
「備えあればってね!」
 山猿は呻きつつ、アルと月夜を直線に捉え全力で飛び出した。迫り来る肉塊を共に側面に逃れて回避し、月夜は再び十二の式神を召喚する。
『破ッ!』
 印と共に衝撃が従魔の巨体を押し流し、山猿は瞳から光を失い転がった後動きを止めた。アルは鷹の目に意識を集中させ、そこで支部に向かおうとする群体を二つ発見する。
「従魔の群れが支部に向かってる! 行ける人は対応お願い!」
『私は引き続きこの辺りの対応を』
 月夜にこくりと頷いて、アルは支部の方へと走った。月夜もまた周囲を見渡し、別方向へ足を動かす。

「コロサナイデッ!」
 命乞いの羅列と共に襲い掛かる従魔から、千颯は黎夜を守りつつダメージを募らせていた。山犬は千切れた歯肉からボタボタと血を滴らせ、再度仕掛けようとする。
「ワタシヲタスケテ!」
「虎噛、伏せて!」
 黎夜の声に千颯が咄嗟に身を屈めた。その頭上で、黎夜が放ったライヴスの剣が一直線に疾走した。剣は従魔の牙に当たって口腔内を爆発させ、さらに凛道がシックルを肩に担ぐように構える。
『そろそろ向こうにお行きなさい』
 かまいたちが宙を踊り、山犬の牙ごと寸断して線から上へ刎ね飛ばした。隙の出来た凛道の背に、不規則に跳び回りながら山兎が差し迫る。
「壊セッ!」
 山兎の巨大な足が凛道を踏み潰す……瞬間、周囲に鎌が無数に展開、高速で回転しながら山兎へと突き刺さった。悲鳴を上げる従魔を、すかさず征四郎の銃が狙う。
「あなたもそろそろおやすみですよ!」
 狙撃銃が音を鳴らし、顎下に風穴を作って山兎はドタリと倒れた。そこにアルからの通信が入り、千颯は支部を指し示す。
「みんなは応援に行ってくれ。俺ちゃんは他の仲間の援護を」
 三人は頷き、それぞれ得物を携えて支部建物へと駆け出した。千颯の脳裏に先程の山犬の言葉が木霊する。
 ウールヴへジンに対して思う所がない訳ではない。だが、同情は出来ない。戦場での一瞬の気の迷いが、味方を危険に晒す事を嫌という程知っているから。
 一瞬だけ顔を歪め、しかしすぐに表情を戻す。悲痛な思いを胸に仕舞い、千颯は戦場を駆け抜ける。 

「みんな、一気に攻勢に出るよ!」
 職員達に声を掛け、イリスはアタックブレイブを展開した。英雄との絆の深さを力に変え、範囲内の仲間の攻撃力を上昇させる。
 山猿が気絶から目を覚まし、イリスへ突撃しようとするが、イリスは手の宝石盾でその攻撃を弾き返した。即座に無影の光刃『ルミナス』へ換装、光の刃を従魔へ向ける。
「茨散華!」
 茨散華……それは光の刃『煌翼刃』を茨状に変化させ、回転を加え擬似チェーンソーとして敵を切り裂く技の一つ。盾で受け、剣で反撃を基本とし、痛みで怯まない闘争心と体に染み付いた的確で苛烈な戦闘技術で敵を圧する。それがイリスの戦い方だ。
 山猿が倒れ、反対側から山犬が接近するが、イリスの動きに澱みはなかった。再度シールドを出現させ、今度は巨体を受け流して攻撃の基点を作る。
「天翔華!」
 背後に翻る黄金四翼の全てを光刃に変え、比翼連理の剣を以て従魔の全身を羽撃き貫く。山犬もその場に崩れ落ち、イリスはようやく小さな肩から力を抜いた。

 水落葵は従魔の攻撃に傷付きつつ無心に鎌を振るっていた。
 目標は目の前の山犬の、側頭部にある髪飾り。元に戻す事は叶わずとも、せめてその『名残り』だけでも。
「コロサナイデッ!」
 山犬は吠え立てながら再度葵へ跳躍した。全弾命中とは言わないが、山犬の意識は完全に葵を的と決め、葵は髪飾りを落とす事に集中している。それらも要因の一部を為し、葵の身体に着々とダメージを溜めていた。
「タスケテッ!」
 山犬の頭が葵の胴に潜り込み、そのまま首を捻って眼前の肉に齧り付いた。爆発音。腹の噛み痕に爆撃が重なり葵は地面に弾き飛ばされ、従魔も肉の焦げる臭いを撒き散らしながら悲鳴を上げる。だが、山犬はすぐに起き上がり、今度は獲物の首に噛み付こうと口を開く。
「ウチ二カエシテェッ!」
 その時、金属が衝突するような音が響いた。葵が顔を上げると腕に火傷を作りながら、千颯がニッと笑んでいる。
「よしよし、まだ大丈夫だな」
 突然の侵入者に齧り付こうと山犬が再度牙を向ける……その側面を、十二の式神が作り出す衝撃波が押し流した。駆け付けた月夜の攻撃に地を転がった従魔の、側頭部へ、葵がトドメの一撃を繰り出し髪飾りのみを宙へ舞わせる。
『一応手に入ったかな』
 ウェルラス(aa1538hero001)の呟きには答えず、葵は髪飾りを拾い上げ大きな袋へ仕舞い込んだ。それが何かは問わない事にし、千颯は周囲に視線を向ける……そこに砲撃音が鳴り響き、三人は思わず顔を上げた。

●打ち倒せ
『聞こえますか! 皆さん冷静に!』
 構築の魔女は大砲の傍に立ち、適宜M・Aの安否を支部職員へ伝達していた。支部内の状況はよく見えないが、何かあればすぐに対応出来るように警戒し……と、アルからの通信が入る。
「従魔の群れが支部に向かってる!」
 目を凝らしてよく見れば、確かに粉塵の向こうに疾走する影が見える。通路としては大砲1号直前上。どうやら主戦場を避け、バリア側面に沿うようにしてこちらに向かっているようだ。
 構成は山猿1、山兎2、ヴァルキュリア3。そこに別方向から山犬と山兎が合流し、計8体の従魔が隊列を為して押し寄せる。
『1号発射用意……放て!』
 構築の魔女の号令に侵略者へと砲弾が奔る。山猿と山犬が巻き込まれたが、山兎は跳躍し、ヴァルキュリアは羽ばたいて砲弾を横に避けた。そのまま砲身と建物へ雪崩れ込まんとする敵の、その背後で、黎夜が魔法書の頁を摘まんで口を開く。
「道、開けるから、どいて……」
 雷鳴と雷光が同時に轟き、直線上にいた山兎2体を雷の槍が貫いた。雷を逃れた山猿には、アルが雪弓「シュネーグリューエン」で白熱する程の高温を差し向け、バルタサールはセミオート狙撃銃の先に女従魔の姿を捉える。
「さっきよりは狙い易いか」
 瞬間、繰り出された早撃ちの乱射は、3体のヴァルキュリアの翼を一挙に撃ち抜いた。騒ぐ戦乙女の1体へ雨宮葵が接近し、一気呵成を乗せた刀二連撃で切り落とす。
 征四郎は跳ね回る山兎の姿を見据えた。醜悪な獣はニイと笑み、目の前の女を踏み潰さんと地を蹴り高く空を跳ぶ。
「壊、壊セ、全部壊セッ!」
「あなた達が何をしようと、私は、インカの皆を守りたい!」
 それが征四郎の答えだった。蹴撃が降る直前、敵の身柄を捕らえるべく征四郎は女郎蜘蛛を放った。蜘蛛の巣が従魔の脚に絡まり、その隙を逃さず凛道がエリアルレイヴを展開。大量の予備攻撃で敵の防御を突き崩し、最後の鎌の一撃で兎の首を刎ね飛ばす。
「勇猛なる使徒達よ! 進み、進め、進むノです!」
 ヴァルキュリア2体が怒声と共に従魔の傷を回復し、そのまま突き進もうとする。黎夜がゴーストウィンドを放ち従魔達を霧で巻き、そこに構築の魔女の指示で大砲3号が向けられる。
『発射!』
 大砲は柱に激突しつつ、まるでボーリングの玉のように敵というピンを薙ぎ払った。転がり起きた山犬が青い髪の男を認め、突進する。
「ドウシテタスケテクレナイノッ!」
 凛道はそれを、まるで跳び箱を跳ぶように片手をついてひらりと躱し、黒猫「オヴィンニク」に換装、武器の負荷を度外視した一撃を背後に叩き込んだ。苛烈なまでの黒猫の火焔は従魔の背中を一瞬で焦がし、征四郎の狙撃銃が山犬の心臓を貫通――完全に沈黙させた。
「壊、壊ス、全部壊スッ!」
 別方向から山兎が征四郎へ飛び掛かるが、これは全力で駆け付けた千颯の飛盾に阻まれた。征四郎が礼を言おうとした所で、爆音。見ればライヴスショットを喰らったヴァルキュリアが衝撃に吹き飛ばされており、右手を挙げたままの水落葵がようやくそこで一声かける。
「ちっと弾けるぞ!」
 事後かもしれない、と葵は思った。
 かもしれないではなく事後だった。
「ここから先には行かせないよ!」
 潜伏しながらギリギリまで距離を詰め、アルがジェミニストライクで数を増やし山兎へと斬り掛かる。月夜が従魔のみを対象に定め、幻影蝶を羽ばたかせる。光の蝶は従魔達のライヴスを吸い取り奪い尽くし、後には蝶に幻惑されたヴァルキュリア2体が残った。
「何故レすエインヘリャル、なレあなた方が我々の邪魔ヲすルのデス!」
 その言葉はバルタサールの銃弾に喉の骨ごと撃ち砕かれ、もう一体のヴァルキュリアには雨宮葵の妖刀が迫った。青い翼と紅い刃が交錯し、次の瞬間にはヴァルキュリアは命ごと地へ落とされる。
 従魔達の完全な沈黙を確認し、構築の魔女はM・A班へと通信機越しに呼び掛けた。
『こちら構築の魔女。M・A護衛班、応答願います』

●護り抜け
「紀伊はん!」
 一二三の叫びを掻き消すように、山兎はM・Aへと虫潰しを繰り出した。朝霞が咄嗟にM・Aを庇うが、範囲10mに及ぶ攻撃は柱へもダメージを与える。
 一二三は辺りを見回した。敵は山猿1、山犬1、山兎1、ヴァルキュリア1、そして侵入してくるムバエ複数。こちらはM・Aを護るのに精一杯でなかなか攻勢に出られない。
 従魔共が一丸となってM・Aへと雪崩掛かる……寸前、一二三は周囲へライヴスを撒き敵の意識を引き付けた。
「M・Aはんは死んでも守ったらあ!」
『私は死ぬのは断るぞ?』
「そ、そういう心でやるっちゅー意味やろが!」
 キリルの無情なツッコミは、しかし従魔共の咆哮によって上書きされた。標的をM・Aから一二三に変え、獣達が躍り出る。國光は一二三を援護するため前方で剣を構える。
 最初に来たのは山犬だった。3メートルの巨体を丸め、遠慮容赦ない頭突きを繰り出す。
 だが、ただの突進では一二三にダメージが及ばないのは立証済みだ。一二三のシールドに鏡面と張られたリフレックスが山犬の姿を映し出し、呪いのダメージを従魔に与える。山犬の足がよろめいた拍子に國光の剣が落とされる。
 そこに山猿が接近し、腕を振り回して一二三と國光を広範囲に薙ぎ払った。ダメージはないが、勢いに押されて二人は後方へ弾かれる。その隙にヴァルキュリアが回復の光を放つ。
「M・Aさん、私から離れないで下さいね」
 一二三と國光が攻勢に出ている間、朝霞はM・Aの盾として立ち回る事を選んだ。とは言え状況を傍観するつもりはない。フェイルノートに武器を替え、音弥とM・Aを振り返る。
「戸丸さん、後ろをお願いしてもいいですか」
「もちろんだ」
「それじゃあ行くわよ。ウラワンダー☆アロー!」
 無駄なしの弓を真横に構え、必中の矢を宙へと放つ。ルーンの加護を受ける矢は山兎の首へと突き刺さり、その隙に一二三が扱いやすいミラージュシールドに盾を交換。
「何か掴もうとしたり、前足出したりしたら来ますえ!」
「了解」
 一二三が敵攻撃時の前動作を伝え、國光が短く返事を飛ばす……そこに、まさにその通りに山猿が一二三へ腕を伸ばし、山犬が前足で土を削って駆け出した。一二三は斜め後ろにステップを踏んで巨体二つを寸でで躱し、國光が強く踏み込みながら双神剣を突き入れる。

 龍華はムバエの自爆攻撃を受けながら、レイディアントシェルにライヴスを溜め込んでいた。M・Aが標的から外れた今、一二三と國光の加勢に向かう手もあるが。
『行くですか、ボンクラ』
 ノアが内から決心を問う。『人殺しを行う』決心を。龍華はそれに黙って頷き、盾を掲げて走り出す。
 目標はヴァルキュリア。従魔を統率し回復させる戦乙女を倒せれば、更にこちらの有利になる。ヴァルキュリアが回復を飛ばす。その光に紛れるように、龍華は従魔へ一気に踏み入る。
「行けっ!」
 溜め込んだライブスにライヴスブローも上乗せし、龍華は漆黒の双盾「陰影」を従魔へ叩き込んだ。そこにムバエも襲来し、広範囲の自爆ダメージをヴァルキュリアにまで浴びせ掛ける。
「エインヘリャル、我々と共に救済の道ヲ」
 戦乙女の呼び掛けに龍華はただ口を噤んだ。敵からどんな声を投げかけられようと、惑わされず受け止める意志を持って。ムバエの爆発に肌と髪を炙られつつ、再度ライヴスをチャージする。

「もう一回行くわよ、ウラワンダー☆アロー!」
 朝霞のフェイルノートが一直線に宙を駆け、山兎の胴を貫き大地へと縫い留めた。一二三はザミェルザーチダガーに換装、鋭過ぎる切れ味のダガーで山猿の首を一気に掻き斬る。
 國光は確実に撃破するべく、宝石を柄に抱く剣にライヴスを纏わせた。山犬が一二三を狙って迫る、その背後へと立ち回り、双剣の切れ味と硬度で山犬の背を叩き折った。
 撃破される配下の姿に、ヴァルキュリアは翼を広げ逃亡を試みた。だが、龍華は粉塵を舞わせながら戦乙女へ喰らい付き、ライヴスで威力を増した双盾を振り被る。
 そして繰り出された攻撃は、ヴァルキュリアを挟み撃ち永遠に動きを止めさせた。膝をつき、火傷の痛みに息を吐く龍華へと、侵入したムバエが迫る。
 だが、それは國光の放ったライヴスショットに阻まれた。それでもなお新たなムバエが侵入を試みるが、駆け付けた支部職員達が剣や魔法書で撃ち落とす。
「M・Aの防衛、感謝する。申し訳ないがもうしばし付き合って頂きたい」
 見れば他の従魔達の殲滅も終わり、後はムバエと愚神のみ。一二三もいつでも撃てるようライヴスを備えつつ、龍華へニッと歯を見せる。
「向こうさんが落ち着くまで、もう少しきばりましょうか」
 京都弁と大阪弁が混在する独特の口調に、釣られるように龍華もわずかに微笑んだ。

●『希望』
 由利菜とリーヴスラシルは、フレイが『奥の手』を隠し持っているのではと考えた。
『神話の豊穣神は勝利の剣を持っていた。……今はまだ最終戦争ではない』
「鹿の角ではなく、勝利の剣か類するものを隠し持った可能性……」
 あくまで可能性ではあるが、同時に「零」とは言えぬ可能性。故に警戒しようと考えた。戦いながら発見に努め、見つけ次第破壊の方法を模索しようと。

「護るんだ、あいつを……そのためなら全てを犠牲にしても構わない!」
 フレイは吠え猛っていた。感情を暴れさせ、裂けた肉から光る剣先を覗かせて。
 由利菜とリーヴスラシルの推測はある意味当たっていたと言える。そしてフレイの内から生える剣は、もう一つの事実をリンカー達に告げていた。
 フレイはもう人ではない。
 もう人には戻れない。
「みんな、大丈夫か!」
 久朗は仲間を振り返り、最もダメージの大きいレイへと回復の光を飛ばした。ケアレインも考えたが、仲間が散らばり過ぎていて効率が悪いと判断した。
「助けなければ……あいつは俺が護らなければ!」
 フレイが入口に駆けようとした、その挙動に弾かれたように京子は素早く弦を引いた。樹木壁は崩れ掛かっている。ボードが完全に修復すれば逃げられる可能性もある。
「……その護りたい誰か、わたしが護るって言ったら、あなたは止まるのかな。馬鹿にするなって怒るのかな」
 京子は呟くと共にテレポートショットを射ち放った。矢はフレイの死角に転移し、後頭部を叩きつけて愚神の意識を翻弄する。
「『何処を目指し、誰の為のspielenだ?』」
「『アンタだけのオーディエンスは……』」
「『本当にアンタが救いたいのは……誰だ?』」
 レイはカールと声を重ね、意識のブレた愚神へとキリングワイヤーを振るわせた。超高振動のワイヤーはフレイの皮膚を容赦なく切り裂き、新たに出来た傷口から別の剣先を垣間見せる。
 夕は仲間の攻撃に紛れフレイの背後へ肉薄し、胸……それも右側へとエヴァンジェリンの狙いを定めた。
(そう簡単には死なないだろうし、肺にでも刺されば動きも鈍るでしょ。
 肺呼吸してれば、だけど)
 そして白銀の槍を繰り出す。槍は確かに肺の辺りに当たったが、貫通はしなかった。まるで刃物にでもぶつかったような感触がしただけだった。背中の傷からも新たな剣先を覗かせながら、フレイは頭を抱えて呻く。
「俺が救いたいのは……本当に、救いたいのは……」
『人と英雄としての気高き魂を失ったか……愚神フレイ!』
 その「愚かさ」を咎めるように、リーヴスラシルは高らかに声を放った。由利菜はフレイを見据え、いっそ悲し気に問い掛ける。
「何故バルドルの下にいるのです……! 『彼女』の為なら見境がなくなる程に、今の世界の全てが憎いのですか!」
「……」
『誰しも生涯の中で大きな壁に直面し、乗り越える道を模索する』
「自分達の問題へ向き合おうとせず、諦め、安直な答えへ逃避するあなたが豊穣神の名を冠すること……私は許しません!!」
 由利菜は諭すように言葉をぶつけた。その言葉には確かに怒りも含まれていた。一人以外の全てを諦め、愚かな道を選んだ、目の前の男への。
 だが、由利菜を見るフレイの目は、激しい憎悪に彩られた。許さない? 安直な答え? 世界の全てが憎いかだと? 
「憎いさ。あいつの目を潰した連中が。泣き叫ぶあいつの目を焼き潰した連中が。それを『正しい』と言った連中が。そいつらを護ろうとするこの世界が。どうして? あいつの事は護らないくせに、どうしてお前達はあんな連中の事だけは護るんだ!」
 フレイの目に映るのは憎悪、絶望、そんなものだけだった。言葉の裏に含まれた由利菜の心は届かない。
「お前達に何が分かる! あいつの痛みを見ようともしなかった、お前達のような『偽りの希望』にっ!!!」
 フレイは由利菜に手を向けようとし、そこにカゲリが躍り出た。真紅の瞳を共有し、ナラカ(aa0098hero001)は愚神へ語り掛ける。
『神話に曰く、フレイはスルトに討たれるそうだ。ならば汝が覚者に滅ぼされるも必然であろう。
 ――我が《燼滅の王》が焔を終末の劫火として逝くが良い』
 瞬間、刀身に宿った黒焔がフレイの身を呑み込んだ。影俐。彼はフレイを否定しない。対等として彼の殉ずる意志を認めつつも、轢殺するが如くに焼き祓うのみ。
 捕縛も想定されているそうだが、今の所明確な成果は見られていない。逃すぐらいであれば。この場で燼滅するのみである。
 滅却の劫火は愚神の肉の内さえ燃え上がらせ、フレイは咆哮した。剣が錆びたような色に変わる。
 しかしフレイは持ち堪える。
「救いたい……妹を。誰も救ってくれないから、俺があいつを救うんだ!」
 グリンブルスティが復活し、フレイはボードに飛び乗った。そして入口へ走り出した。リンカー達がフレイを追うべく駆け出すが、フレイは身を捻り、手をかざす。
「来るぞ、備えろ!」
「お前達に、俺の妹は殺させないっ!」
 絶望が血色の馬となってリンカー達へ襲い掛かった。弥生は素早く判断を下し、この中で一番傷の重いレイの前へと陰陽玉を展開する。
「たとえ私が砕けようとも……この心、屈したりは致しません! 三木家の名に懸けて!」
「もっと遊びたいんだから、誰もリタイアしないでよ!」
 夕が全員に声を投げ掛け、そして幻影は弾け飛んだ。リンカー達が顔を上げると、赤に焼かれた視界の向こうに出て行こうとするフレイが見える。
 構築の魔女に伝えるべく、京子は通信機へ声を発した。

●愚者
 憎かった。
 全てが憎かった。
 妹を傷付けた連中も、そんな連中ばかりは護ろうとする『希望』ってヤツも。
 そんなもの、壊れてもいいと、思った。

『フレイが来ます!』
 構築の魔女が叫んだのと、フレイが這い出たのは同時だった。フレイは新たな敵を認め、手にライヴスを集中させる。
 アルと征四郎は仲間を護るため、そして愚神を止めるため、率先して前へ飛び出した。二つの影に反応し、フレイは手を振りかざす。
「邪魔だ、そこを退いてくれ!」
 赤馬の幻影が嘶きを上げアルと征四郎へ踊り掛かった。アルは雪弓で防御したが大幅に生命を削られた。だが怯む理由にはならない。アルはそのまま白弓を構え、フレイのボードを破壊するべく白熱する矢を射ち放つ。
 ニウェウスはライヴス結晶を掲げた。今この戦場にいる一真との絆、そして今共にあるストゥルトゥスとの誓約を確かめる。
『誓約確認。汝、己が意志で道を選び、思い描く未来を掴め』
「返答。我が意志、希望の標たる星を目指す。掴むは瑠璃の空――安寧の訪れ」
『故に』
「まずは」
「『お前を――ここで、止める!!』」
 リンクバースト――荒れ狂うライヴスが軍服をはためかせ、ニウェウスは愚神目掛けリーサルダークを発射した。闇に込められた呪力にフレイの瞳がグラリと揺れ、入口から出た京子が、レイが、十字に位置して得物を向ける。
「逃がさない。……これ以上、罪を重ねさせはしない」
「ここで一度、幕を引かせてもらおうか」
 京子のナランハルフトの矢が直線に飛んでボードを打ち、レイのSVL-16の銃弾が転移して反対側を穿った。十字砲火は確実にボードを捉えたが、衝撃にフレイは目を覚まし再び走り出そうとする。
「確かにここで止めないと、ね」
 夕が二人の攻撃に合わせロケットアンカー砲を差し向けた。フレイはこれを回避したが、後方に意識が向く事は前方が疎かになる事と同義。組み付いてでも止める勢いで征四郎が戦場を駆け、女郎蜘蛛を投げ打って愚神を完全に拘束する。
「目くらましは……いらねえな」
 バルタサールは狙撃銃にオプティカルサイトを併用し、倍増した命中力でスノーボードを撃ち壊した。逃亡手段を奪われ自由を封じられてなお、フレイの目から殺意は消えない。
「壊れてしまえ……こんな世界!」
 憎悪が妖精の形を成して羽ばたこうとした――瞬前、ニウェウスのリーサルダークが妖精ごとフレイを押し潰した。フレイが白目を剥き、職員達が銃口を向ける。その光景にナイチンゲールはライヴスプロテクトを自身に掛け、傍らの久朗に笑って告げる。
「あとのこと宜しく」
 ナイチンゲールは駆け出した。銃弾がフレイに命中する、その寸前にナイチンゲールは滑り込み、迫り来る攻撃を銀晶盾で受け止めた。フレイが意識を取り戻し、呆けたような表情で目の前に立つリンカーを見つめる。そんなフレイを見つめ返し、ナイチンゲールは微笑み掛ける。
「エルエルに斬りかかってフレイを庇って、あべこべだね私。
 あなたはまだ死なせるべきじゃない、そんな気がしたから。
 命を使う理由はそれで充分」
 そう微笑むナイチンゲールに、フレイは錆びた金属のように変色した腕を伸ばした。 久朗や京子が二人へ駆け出そうとするが、フレイは笑った。
 心の底から愛おしいものを見るような目で。
「オルリア」
「……!」
「やっと……思い出せた、オルリ……」
 そして、フレイは崩れ落ちた。微笑みを浮かべたまま、事切れて動かなくなった。フレイの身体は錆び切った剣のように崩れ去り、後には砕けたボードだけが残された。
 ナイチンゲールの足下で、水滴が染みを作った。

●終幕
「君が庇った時には、既にフレイは戦闘不能・重体状態だったと考えられる。愚神は英雄と同じく、現世界で存在を維持し続けるには膨大なライヴスを消費する。彼は存在を保つ事が出来ない程消耗していたのだろう」
 フレイの消滅についてM・Aはそう説明した。項垂れるナイチンゲールを見つめつつ、M・Aは努めて優しい口調で後を続ける。
「オルリアと言ったそうだな。フレイの護りたい者の名前だろう。それを思い出せたのは、君達のおかげじゃないのかな」
 ナイチンゲールは顔を覆い、フレイと戦った者達もそれぞれの反応を示した。久朗は腕を組んだまま、ただ静かに瞼を下ろした。

 朝霞は職員達と共にバリアの穴塞ぎに奔走していた。千颯が予め安全場所を確保しており、救護も行ってくれていたため大事に至る者はいなかったが、人手は単純に喜ばれた。各地でやたら連呼された『御屋形様』と共に『ウラワンダー』の名もインカ支部に定着するが……それはまた別のお話。

 水落葵は征四郎と共に夕に傷を少し回復してもらった後(なお、残ったスキルは支部職員達の手当てへと回された)(アルについては持参したエネルギーバーをもぐもぐしていた)、H.O.P.E.へと提出する物品をまとめていた。腰の前方後方に付けていたハンディカメラのコピーデータ、アルから預かった分の動画データ、久朗が集めたグリンブルスティの残骸……フレイの身体については完全に消滅したそうである。
 それと従魔の髪飾り。これは遺品として提出し、保管・管理・残滓ライヴスの調査、遺族が見つかった際の返却を頼むつもりだ。あとは現場の残滓ライヴスの調査を依頼して、調査補助に名乗り出て……。
「……"家"に帰りたかっただろうになぁ……」
 髪飾りを見つめ、葵は小さく息を吐いた。それを傍らのウェルラスは、葵に対して非常に気まずそうに聞いていた。

みんなの思い出もっと見る

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
    機械|24才|男性|防御
  • 告解の聴罪者
    セラフィナaa0032hero001
    英雄|14才|?|バト
  • 薄明を共に歩いて
    木陰 黎夜aa0061
    人間|16才|?|回避
  • 薄明を共に歩いて
    アーテル・V・ノクスaa0061hero001
    英雄|23才|男性|ソフィ
  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 断罪者
    凛道aa0068hero002
    英雄|23才|男性|カオ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 全てを最期まで見つめる銀
    ユエリャン・李aa0076hero002
    英雄|28才|?|シャド
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
    人間|22才|女性|防御
  • 聖霊紫帝闘士
    ニクノイーサaa0476hero001
    英雄|26才|男性|バト
  • Sound Holic
    レイaa0632
    人間|20才|男性|回避
  • 本領発揮
    カール シェーンハイドaa0632hero001
    英雄|23才|男性|ジャ
  • 絶望へ運ぶ一撃
    黛 香月aa0790
    機械|25才|女性|攻撃
  • 偽りの救済を阻む者
    アウグストゥスaa0790hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • エージェント
    十影夕aa0890
    機械|19才|男性|命中
  • エージェント
    結羅織aa0890hero002
    英雄|15才|女性|バト
  • この称号は旅に出ました
    弥刀 一二三aa1048
    機械|23才|男性|攻撃
  • この称号は旅に出ました
    キリル ブラックモアaa1048hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • ストゥえもん
    ストゥルトゥスaa1428hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • 実験と禁忌と 
    水落 葵aa1538
    人間|27才|男性|命中
  • シャドウラン
    ウェルラスaa1538hero001
    英雄|12才|男性|ブレ
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • プロカメラマン
    雅・マルシア・丹菊aa1730hero001
    英雄|28才|?|シャド
  • 御屋形様
    沖 一真aa3591
    人間|17才|男性|命中
  • 凪に映る光
    月夜aa3591hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • きっと同じものを見て
    桜小路 國光aa4046
    人間|25才|男性|防御
  • サクラコの剣
    メテオバイザーaa4046hero001
    英雄|18才|女性|ブレ
  • Trifolium
    バルタサール・デル・レイaa4199
    人間|48才|男性|攻撃
  • Aster
    紫苑aa4199hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • 護りの巫女
    三木 弥生aa4687
    人間|16才|女性|生命
  • 守護骸骨
    三木 龍澤山 禅昌aa4687hero001
    英雄|58才|男性|シャド
  • 心に翼宿し
    雨宮 葵aa4783
    獣人|16才|女性|攻撃
  • 広い空へと羽ばたいて
    aa4783hero001
    英雄|16才|女性|ドレ
  • 明日に希望を
    ナイチンゲールaa4840
    機械|20才|女性|攻撃
  • 【能】となる者
    墓場鳥aa4840hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 閉じたゆりかごの破壊者
    紀伊 龍華aa5198
    人間|20才|男性|防御
  • 一つの漂着点を見た者
    ノア ノット ハウンドaa5198hero001
    英雄|15才|女性|ブレ
前に戻る
ページトップへ戻る