本部

【紫雲】OKINA☆GP

砂部岩延

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
4人 / 4~12人
英雄
4人 / 0~12人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2017/11/19 19:18

掲示板

オープニング

●紫峰翁大學文化祭
 茨城県つくば市にある紫峰翁大学。
 日本有数のひとつながりの広大なキャンバスには、居住区の他、商業施設も併設され、紫峰翁学園都市の呼び名をほしいままにしている。
 今日はその文化祭の一日。
 キャンパスを南北に貫くメインストリートに沿って、学生たちが出店を並べて、盛んに声を出しては、道行く人々に自慢の一品を呼びかけている。
 出店を眺めるのは学生だけでなく、近隣住民、遠方からの観光客や、来春に受験を控えた受験生たちもいた。
 賑々しいメインストリートをよりにぎやかに彩っているのは、学部棟や施設棟のあちこちに貼られた派手なポスターの群れだった。
 その、ポスターに曰く――

●紫峰翁文化祭ダービー・グランプリ「OKINA☆GP」
 今年もまたこの季節がやってきた! あの興奮が再び……
 紫峰翁文化祭ダービー・グランプリ、通称「OKINA☆GP」開催!
 キャンパスの敷地を惜しげもなく活用した広大なコース、バリエーション豊かな4つの難関。
 今年のテーマは「海兵隊式ブート・キャンプ」!
 某有名軍曹監修の元、現役軍人も悲鳴を上げる過酷なコースに仕上がりました。
 さらに、今年はエキシビジョンマッチとして、現役リンカーたちによるガチレースバトルも開催予定。
 コースの難易度もズドンと上げて、彼らも大苦戦間違い無し!
 エクストリームなレースで、本戦の合間も大いに盛り上がろう!!
 最後に、軍曹から、お一言。
「オマエらはみんなウジ虫だっ!!」by軍曹

===エキシビジョンマッチ 参加者募集のお知らせ===
・現役リンカーのみ
・年齢性別不問
・来年度受験生の呼び込みも兼ねているので、どうか大いに盛り上げて下さい
・報酬少なめ、ただし上位3名には追加報酬あり
・コース全4種
 果たして、エキシビジョンマッチの栄光は誰の手に……
 奮ってのご参加をお待ちしております。

===コース全4種 解説:軍曹===
1)早食い大食い崖走り
 ステージ:崖
 全長:垂直10スクエア
 軍人に必要なスキルとはすなわち早食い早グソ早走りだ!
 今回は紫峰翁大生御用達の巨大丼専門店「DONDON」からBIG☆BAN☆DON(激辛3kg)を用意した!
 カラの丼ぶりをゴールに届けて、次のステージへ急げ!
 食べきるまではコースから出してやらん!
 崖には適度なとっかかりや足場がある。
 食べてから登っても、食べながら登っても、登ってから食べても自由だ!
 当然、登り方によって難度は当然変わってくる。
 キブアップした奴は残したkgx30秒間、その場で待機だ!

2)十字砲火
 ステージ:森林
 全長:100スクエア
 鬱蒼と茂る森林の中、10名の凄腕スナイパー(濡れない水鉄砲)が狙っている!
 矢弾を恐れず一気呵成に駆け抜けるもよし、茂みや木立をうまく利用して慎重に進むもよし。
 ただし、弾に当たるたびに10秒間、貴様はその場で死んでいろ!

3)雪中行軍
 ステージ:雪山
 全長:100スクエア
 紫峰翁大学研究室の最先端特殊技術を結集して、贅沢にも猛吹雪の雪山を再現してやった! 感謝しろ!
 物理的圧力を伴って襲いかかる猛吹雪、胸まで埋まる深い新雪の中、如何にすばやく駆け抜けるか!?
 雪山には要救助者(人形)が待っている。
 3人確保して、ゴールを目指せ!
 要救助者を見捨てる不届き者は人数x30秒の間、ゴールで待機だ!

4)流鏑馬
 ステージ:市街地
 全長:100スクエア
 貴様らがウジ虫か、いっちょまえの戦士か、真の信頼が試される!
 共鳴不可、能力者と英雄は二人一組で、この戦地を闘い抜けろ!
 おんぶ、だっこ、肩車、なんでもかまわん。
 一方が他方を担いでコースを駆け抜けつつ、途中の標的にボールを投げて当てろ!
 的は3つ、球数は無制限!
 走りながら投げるもよし、立ち止まって投げるもよし、当たるまで近づいて投げ続けるもよし、やりようによって難易度は下がる!
 的を放置だ……? この「ピー」で「ピー」の「ピー」め! ひとつにつき30秒、ゴール前で待機だ!

解説

●目的
 障害物レースの走破
 レースを盛り上げる

●報酬
 少なめ
 上位3名には追加の報酬あり

●諸注意
・疑似戦闘ルール
 移動力の他、各々のコースにあわせたステータスが適用され、走破時間を計算します
 また、スキル、装備品、アイテムの効果も認められます
・共鳴
 原則可、ただし一部のコースは不可、記載有り
・妨害行為
 可、ただし傷害を負わせた場合は即時失格
・施設の破壊
 不可、即時失格

リプレイ

●ファンファーレ
 文化祭まっただ中の紫峰翁大学キャンパス。
 ただでさえ浮き立った雰囲気は、いままさに始まらんとするレースへの期待感で、一層の盛り上がりをみせていた。
 広大な敷地内のあちこちに設置された巨大なオーロラビジョンには、スタートレーンに並ぶ4組のリンカーの姿があった。
「2017、紫峰翁文化祭、OKINA☆GPエキシビジョンレース! まもなく出走です! 今回はH.O.P.E.よりお招きした4組の現役リンカーによる、エクストリームでエキサイティングなバトルに、目が離せない! 解説は私、ジョン・佐藤と、特別ゲストの――」
「ハードマンだ! 戦士諸君の健闘を祈る! ガンホーッ!!」
「――で、お送り致します!」
「サーイエスサー! ですわね」
 第1レーンに立つファリン(aa3137)が敬礼の真似をする。
『ふむ、押韻が美事だ。口汚いようでいて洒脱を解する御仁らしい』
 隣に立つ相棒のヤン・シーズィ(aa3137hero001)も、感心したように頷く。
「あれ? 出たい種目だけ出ればいいんじゃなかったっけ?」
『説明ちゃんと読んどけよ……』
 第2レーン、首をひねる葛城 巴(aa4976)にレオン(aa4976hero001)がつっこむ。
『若人たちが学び舎に集いて。なんともほほえましいものよ』
「うんうん、ジュレには不釣り合いな場所だね。小さすぎて。あ、あとで出店に行ってみようね」
 第3レーン、ハニー・ジュレ(aa5409hero001)と乙橘 徹(aa5409)はリラックスしている。
「入賞狙って、全力で勝負して、全力で楽しむよ!」
『ハル、その意気だ』
 第4レーン、琥烏堂 晴久(aa5425)と琥烏堂 為久(aa5425hero001)は今日も甘やかな空気を振りまいていた。
 全学構内に、高らかに、ファンファーレが鳴り響いた。
 道行く人々が足をとめ、オーロラビジョンに見入る。
「それでは、レース……スタート!!」
 レーンが開く。
 一斉に、スタートした。

●第1関門 早食い大食い崖走り
「第1関門は紫峰翁大生御用達、巨大丼専門店DONDON様より、BIG☆BAN☆DON激辛3kgをご用意しました。そして、目の前にはそびえ立つ崖! いちはやく次のポイントに空の丼を置くのは誰か!」
「皆の見ているところでお兄様と料理を分け合うなんて、なんだか……」
 サラダボールの如き丼を前にファリンは頬を赤く染めつつ、レースの審判員に取り皿を要請する。
 各組とも、丼と崖を見て、作戦を再確認する。
 その隙きをついて、さっそく動き出した影があった。
「……なにしてるの?」
 こっそりと他のペアの丼になにかの粉末をかけて回るジュレに、徹が胡乱な視線を向ける。
『妨害工作じゃ!』
 自慢げに調合漢方薬「犀の目」の袋を見せてくる。
「漢方薬か……カレーの隠し味に胃薬を入れると美味しいって言うし、大丈夫だよね」
 食べ物を粗末にするのは忍びない。
「さーて、お味のほうはどうかなー」
 それとは知らず、ハルが丼を手にして、箸で口に運んだ。
「ん!? ……美味しー! あ、辛っ! でも美味しい! 上にかかってる変な粉はちょっと苦いけど深みがあってこれはこれでいいかも。……あれ? あと、なんか目がスッキリする?」
 徹が隣のジュレを見やる。ジュレはそっと視線を外した。
 ため息をついて、二人も丼にとりかかる。
「さて、崖の前で丼にとりかかったのは3チーム。葛城ペアは妨害のないうちに崖を登りきってしまう作戦か」
 共鳴した巴とレオンは丼を片手にロケットアンカーを駆使して崖を登りはじめる。
「さあさあ、各選手。無事に丼を平らげることができるのか」
「カプサイシンダイエット! ですわ!」
 持参の牛乳を片手に、汗をかきながら果敢に挑むファリン。
「兄様ごめん、もう、限界……」
 ハルが呟いて共鳴すると、セーラー服の美少女となった為久が引き続き丼を食らう。
「熱い……脱ぎたい……」
 涙目でセーラー服(に見えている)の胸元を引っ張って扇ぐ。
 見目麗しい少女たちが汗を流しながら食べる姿に、会場中の男性たちがソワソワする。
『年寄りは食が細くてかなわん』
「子供には刺激が強すぎるね。俺が食べるよ……ジャンクフードは好きだけど同じ味が続くのが辛いなぁ」
 ジュレから徹にバトンタッチする。
「そして、葛城ペアが崖上に到達。丼にとりかかった!」
「やっぱり、美味しく食べられなきゃね~」
 ふーふーしつつ、猫舌の巴が丼を食べては、持参の牛乳で辛さを和らげる。
『一度口に入れたイコール食べたと見なすなら、口に入れては出すの繰り返しでも食べきった事になるんだろうけどな』
「AUTOするのはさすがにちょっと……」
 コース脇の判定員をチラリと見やると、必死に両手でバツを作っている。ですよねー、と丼を食べ続ける。
 そして、500gほど食べたところで、巴たちはおもむろに持参のポリ容器に丼の残りを収めて、空の丼をチェックポイントに置いた。
『兵糧の確保も軍人の重要スキル、だよな』
「おおっと、葛城ペアの大胆な作戦! 判定は……残念ながら無効! 残した丼の量から75秒の待機です。そして、琥烏堂ペアもここでギブアップ! 45秒の待機! しかし、どうやら両ペアとも、これは作戦のうちのようです! そして、乙橘ペア……え、ええっ!? こ、これは!!」
 オーロラビジョンに、今まさに空になった丼が映された。
「乙橘ペア、見た目によらぬ驚くべきヴァイタリティ! そしておもむろに崖を登り始めた!」
「グッドフォーユー!」
「軍曹も絶賛だ! そして今、待機を抜けた琥烏堂ペアも助走をつけて、飛びあがった! 高い! 乙橘ペアに一歩リード! さすがリンカー、驚くべき身体能力です。一方、ファリンペアは」
 崖の下で、丼を前に苦戦していた。
 涼しい顔をしているが、ヤンの尻尾はだらりと垂れ下がり、テンションの低さは明らかだ。
 ジロリと崖を見やる。懐から取り出したナニかを、八つ当たり気味に崖めがけて投げつけた。
 破裂したソレの中身が、登頂中の二人に襲いかかる。
「う、これは……」
 白濁汁に汚れたセーラー服の美少女がうめく。
「食べている時にこの匂いがあれば、辛味も紛れたのにねぇ」
『同感じゃな』
 むせかえるような甘いココナッツの香りに、碧眼の美青年もまた白い液体にまみれてため息をつく。
 観戦する人々の間にあやしいどよめきがわく。
「ファリンペアの容赦ない妨害! なんだかイケない気持ちになりそうだ! そして今、待機を抜けた葛城ペアが真っ先に第2コースに進入! 琥烏堂ペア、乙橘ペアも追い上げる!」

●第2関門 十字砲火
『こういう時に使えって意味だよな?』
 フォレストホッパーにより移動力が底上げされた共鳴中のレオンは全速で密林地帯に突入した。
 前面には鏡のように輝く盾を構えている。
 森林を全速力で抜けるレオンに、コース外から水鉄砲ライフルが狙いを定める。
『当たったら反射する、ってことだ!』
「(でも、当たったらその場で死ぬルールは変わらないんじゃ……)」
 気の抜けたような発砲音。
 死角を突いて高速で飛来する幻影の水。
『くっ!』
 盾を向けるが、防ぎきれない。
「ヒット! ダメージ有効、葛城ペア、10秒の待機です」
 レオンはその場に立ち止まる。
 つづいて、共鳴状態で為久もコースに入ってくる。
 体を低くしつつ、木々の間を縫うように全速力で進む。
「密林はやっぱり迷彩だよね♪」
 イメージプロジェクターで森林迷彩を投影し、スナイパーの目を誤魔化す。
『虫がひどいな……いや、コレのせいか』
 未だ拭いきれないヤシの液が放つ芳香に虫が寄ってくる。
 地味だが妨害としては効果的だ。目の前に飛来した虫に思わず身体が反応する。
 すかさず、水の弾丸が飛来。隠神刑部の編笠で防御を試みるが――
「ヒット!」
 水が身体にかかるが、衣服が濡れることはない。
「水の幻影でも、兄様が濡れるのなら見てみたかったなぁ」
『……ペナルティがあるのは覚えているか?』
 琥烏堂ペア、10秒の待機。
 徹とジュレのペアも共鳴して森林地帯に入る。
 森林迷彩を投影、フォレストホッパーで移動力を底上げして、木立の合間を縫うように、最適なルートを探りながら進む。時折、木々のそれらしいところに弓矢を打ち込み、スナイパーの狙撃を惑わせ、着実に有効打を防ぎながら進む。
「……心頭滅却すれば、火もまた涼し」
『そしてわしらは、飛んで火に入る夏の虫、と。やれやれ』
 とはいえ、身体にまとわりついたヤシの香りと、集まる虫には閉口していた。
「さあさあ目が離せません! 強行軍で距離をかせぐ葛城ペア、琥烏堂ペア、歴戦の古強者の如く着々と追い上げる乙橘ペア! そして、ファリンペアは……」
 オーロラビジョンのカメラが第1コースを映す。
「……唐揚げが……最後に揚げ物は、ダメですわ……」
『……孔明の罠か……』
 丼ぶりに残った最後の唐揚げを前に、二人の持つ箸の先が震えている。
「わかります、その気持ち! お、葛城ペアがヒット! チェックポイントは目前だ! 琥烏堂ペアもヒット! 乙橘ペアが並ぶ! そしてファリンペア…ついに、完食です!」
「グッジョブ!」
「お兄様……」
『うむ……』
 胃と口元を押さえながら、共鳴。崖に対して、距離を取る。
「ファリンペア、助走をつけて初動の飛距離をかせぐ作戦か! 今、駆け出して……うおおおっ!?」
 オーロラビジョンを前にする、すべての観客が驚愕の声を上げた。
 うさ耳の仙女はかるがると崖の高さまで舞い上がり、一足でいただきへと至った。
 両足に貼られた呪符があやしい存在を放っている。
「お、おそるべき跳躍力! 機動力!」
 丼をチェックポイントにおいて、密林コースの入り口に立つ。
 コース内を先行する2チームの位置、コース取り、スナイパーの位置などを双眼鏡でつぶさに観察する。
「さあ、ここからがわたくしたちの本領ですわ……うぷっ」
「ファリンペア、ここも持ち前の機動力を活かして押し切る作戦か……って、疾い疾ーい!」
 全速力で駆け出したファリンは一陣の風のごとく、木々の間を抜けていく。
 一息遅れて飛来する水の幻影をゆうゆうと後にして、徹と為久を追い抜かす。
 一度、ゴールの手前で身を隠すが、再び駆け出して、あっという間にチェックポイントを抜けて、隣のコースへと進んだ。
 徹、為久が急ぎ後を追う。
 為久がチェックポイントに入ろうとして、派手に物音が鳴った。
『しまっ――』
 すかさず、狙撃が飛来。命中。
『やられた……』
 茂みを利用した手製の鳴子トラップ。
 さきほど、ファリンたちが仕掛けていったものだったらしい。
 その隙きに、乙橘ペアが隣のコースへ。
 遅れて琥烏堂ペアもポイントを通過する。

●第3コース 雪中行軍
 先行するレオンと巴は、共鳴を解いて肩車で吹雪の中を進んでいた。
 レオンは深い雪を槍で薙ぎつつ、探りつつ、前進する。
 肩の上の巴はランタンを風から守りつつ視界を確保、方位磁針で進行方向を指示する。
 かせいだアドバンテージを最大限に活かして、今、3人目の要救助者――に見立てた人形を雪から掘り起こすと、巴の背中にザイルでくくる。
 そして、レオンはかわりとばかりに、おおきなぬいぐるみを雪の中に埋めこんだ。
『ふ、いい人に拾ってもらえよ』
「これで妨害になるのかな……」
 半信半疑ながら、二人は再び前進する。
 その横を、黒い影が猛スピードで滑り抜けていった。
『スペシャルズ・ペンギンドライヴの出番だ』
 イメージプロジェクターの投影を解き、腹這いになったペンギンスーツのファリンが雪原の上を滑走していく。
 雪の中の感触をお腹で探り分けて、次々と人形をピックアップする。
 続いて、共鳴状態の徹が猛吹雪の中に突入してくる。
「義手が冷たい……」
 先行した二人のわだちを利用しながら、進軍速度をかせぐ。
『なんじゃ、それは?』
「いやぁ、大好きなんだよね、こういう胡散臭いもの」
 徹の手には折れ曲がった金属の棒――ダウジングロッドが握られていた。
『そんなもので見つかるかの?』
「昔はこれで地下水脈や金脈、遺失物を探したって言うし、案外馬鹿にしたものでも……おっ!」
 ダウジングロッドがくいっと開く。
 その真下を掘り起こすと、果たして人形が出てきた。
 人形は人形でも、でかいもこもこのぬいぐるみだった。
『……遺失物、じゃな』
「……そうだね。まぁ、持ち主に届けようか」
 再びロッドを手に、猛吹雪の中を進みはじめた。
 そして、雪原を突き進むペンギンが、ここにもまた、一体。
「黒猫連れたペンギンって可愛いと思うんだ♪」
 ペンギンスーツを身にまとった為久が、黒猫のオヴィンニクを従えて突き進む。
 足と尻尾に灯火を宿した黒猫は、とある雪の上で、ここ掘れにゃんにゃんをする。
 掘り起こすと、人形が見つかった。
 しかし、氷柱の中に氷漬けになっている。
「琥烏堂ペア、要救助者人形を見つけたようですが氷漬け……これはいったい?」
 解説の声に、雪原を駆け回るもう一体のペンギン乙女が、MM水筒を取り出して嗜虐的な笑みを浮かべる。
 しかし、こちらのペンギンもさる者。
 オヴィンニクの炎が氷を溶かして、無事に人形を回収した。
「ペンギン同士の熾烈な争い! しかし、ここでファーストペンギン、ついに第4コースを突破! 単独首位に躍り出る! 他の3ペアもすでに要救助者の探査を終えて、チェックポイント目指してデッドヒートを繰り広げている!」
 先頭の為久が氷牢の呪符を掲げる。
 巴とレオン、徹の進路を氷の杭が阻む。
「琥烏堂ペア、大胆な攻撃による進路の妨害! 有効です! チェックポイントを通過! 葛城ペア、乙橘ペアと、ほぼ横並びで追い上げる! いよいよ、最終コースです」

●第4コース 流鏑馬
 共鳴を解除したヤンが、ファリンを肩車して立ち上がる。
『……重い』
「気にしているんですのよ?」
 上のファリンが不満げに呟く。
 ボールの入った籠を受け取って、ヤンたちは駆け出す。
 ハルと為久もチェックポイントを通過、ハルがボールの籠を持つ。
「お姫様抱っこでお願いします!」
『……投げにくくないか?』
「大丈夫!」
『……背負う方が走りやすいんだが』
「その分ちゃんと妨害するから! ね、いいでしょぅ、兄様ぁ」
『……落ちるなよ』
 諦めると、為久はボールの籠を抱えたハルをお姫様だっこして、駆け出した。
 つづいて、レオンがザイルを利用して、両手を開けた状態で、巴を背負う。
「数打ちゃ当たる作戦、だね」
『手が4つ使えた方が便利だからな』
 ボールの籠を手に、二人もまた駆け出していく。
 ほぼ同時に徹とジュレも、ジュレが籠を持ち、徹がおんぶして駆け出した。
「走者、第4コースに出揃いました! 泣いても笑っても、これが最後のデッドヒート! 勝利の栄冠は誰の頭上に輝くのか!」
 先行するファリンとヤン。
 コース横の的に接近すると、ファリンが籠からボールを手に取り――ヤンの頭上に落とした。
『…………。重いって言ったこと、根に持っているのか……』
「いえ、そういうわけではないのですけど……」
 ファリンは籠のボールをもうひとつ手に取る。
「こういう趣向なのでしょうか」
 ファリンが首をかしげつつ、ぬるぬると滑るボールの油を服で拭って対処する。
「これは! すべてのボールに油が塗られている!? いったい!?」
 動揺する解説の声に、お姫様抱っこされたハルが、どこででも売ってそうなサラダ油のボトルを手に、ニヤリとほくそ笑んだ。
「なんと、晴久選手、最終コースの罠をあらかじめ仕込んでいた模様です! かなり際どい作戦のようですが、軍曹、これはルール上認められるのでしょうか!?」
 いささか縁起ぶった口調で、解説者が隣の軍曹に問いかける。
「世の中には二種類のリン公がいる! 鍛えられたリン公と、そうでないリン公だ!」
「言っている意味はよくわかりませんが、とにかく有効っ! まさに恐るべき戦略! 恋と戦争ではあらゆる手段が正当化されるというのか! しかし、さすがは鍛えられたリンカー達! 予想外の妨害をものともせず邁進する!」
 巴とレオンは、油にかまわず、二人がかりで両手に玉を持てるだけ持って、的に向けて放つ。数で命中精度を補う作戦だ。
 徹とジュレは、砂や土をまぶして滑り止めにしている。的の付近で速度を落として、堅実に当てていく。
「勝利の栄光は誰の手に! そして今、第一走者がゴール!! 続々と、ゴールに飛び込んだー!!」

●表彰式
 万雷の拍手。
 特設ステージの表彰台に、歓声に手を振って応える8人の姿があった。
「2017紫峰翁文化祭、OKINA☆GPエキシビジョンマッチ! 当初の予想を遥かに上回る大接戦でした! まさにエキサイティング! エクストリーム! 手に汗握る名試合となりました!」
 壇上の司会役でもある解説者が、興奮冷めやらぬ表情で声高に叫ぶ。
「それでは、表彰に移りたいと思います! 軍曹から贈呈品と、祝辞が送られます」
 空が割れんばかりの拍手と歓声が鳴り響く。
「まずは第3位! 道具を用いた柔軟な発想と、無理を押し通す大胆さ、硬軟合わせた作戦で魅せてくれました、巴&レオン選手!」
「グッドフォーユー! これでさらに身体を鍛えろ!」
 贈呈品の鉄塊が手渡される。
「(売ったらそこそこの値段になりそう)」
『(売ったらそこそこの値段になるな)」
「第2位! 氷柱による進路の妨害、試合前に罠を仕込むなど、可憐な見た目からは予想もできない過激な手管で魅せてくれました、晴久&為久選手!」
「エクストリームなソルジャーだ! グッドフォーユー!」
「ありがとうございます♪」
『ありがとうございます』
「そして、栄えある第1位! 初戦の早食い大食いでは苦戦をしつつも、疾風怒濤の追い上げで、一気に巻き返しました! その姿はまさに、紫峰の皇帝ペンギン! ファリン&ヤン選手っ!!」
「貴様らは英雄だ! グッドフォーユー!」
「ありがとうございますわ」
『ありがとうございます』
 ひときわ高い歓声が鳴り響いた。
「そして、最後に、惜しくもタッチの差で4着となりましたが、全選手の中で一度もペナルティを受けず全コースを完全制覇し、軍曹も絶賛しておりました――徹&ジュレ選手!」
「敵に塩ならぬ薬を送り、要救助者ばかりか敵の遺失物まで拾って届けるその敢闘精神! 貴様らは最高のソルジャーだ! ガンホーッ!」
 贈呈品こそないものの、軍曹が言祝ぐ。
「……ありがとうございます」
 徹とジュレはにこやかに軍曹と握手を交わした。
「(まぁ、偶然なんだけどね。俺、ちょっと和マンチだし)」
『(まぁ、偶然なんじゃがな。こやつ根っからの和マンチじゃし)』
「それでは、最後にもう一度、参加いただいたリンカーの皆さまに盛大な拍手を!!」
 大歓声が鳴り響く。
 会場中の賞賛を受けて、8人は晴れやかな顔で手を振って応える。
「OKINA☆GPエキシビジョンマッチ2017でした! シー・ユー・ネクスト・レースッ!!」

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 危急存亡を断つ女神
    ファリンaa3137
  • 奪還屋
    琥烏堂 晴久aa5425

重体一覧

参加者

  • 危急存亡を断つ女神
    ファリンaa3137
    獣人|18才|女性|回避
  • 君がそう望むなら
    ヤン・シーズィaa3137hero001
    英雄|25才|男性|バト
  • 新米勇者
    葛城 巴aa4976
    人間|25才|女性|生命
  • 食いしん坊な新米僧侶
    レオンaa4976hero001
    英雄|15才|男性|バト
  • ガンホー!
    乙橘 徹aa5409
    機械|17才|男性|生命
  • 智を吸収する者
    ハニー・ジュレaa5409hero001
    英雄|8才|男性|バト
  • 奪還屋
    琥烏堂 晴久aa5425
    人間|15才|?|命中
  • 思いは一つ
    琥烏堂 為久aa5425hero001
    英雄|18才|男性|ソフィ
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