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花の冠・唄
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【相談卓】
最終発言2017/11/13 12:41:56 -
【質問卓】
最終発言2017/11/08 22:59:25 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/11/10 22:17:27
オープニング
※(11月8日16時25分更新)
前作のシリーズシナリオにご参加されていたキャラクターの参加枠を確保する為、参加上限人数を最大10名に変更しております。
そのため、以後の「花の冠・詩」にご参加されておられないPCでのご参加はお控えくださいますようお願い致します。
(同一PCであれば異なる英雄を連れての参加は可となります)
●かくして唄は紡がれた
某所、むせかえるような甘い香りに満たされ、世界の花という花が咲き乱れる場所に春君と邪英化したヴィラン6名が足を踏み入れた。
「お帰りなさい。春君と新しい妹」
下半身が大きな花の少女は微笑んだ。
「只今、春君として帰還したのじゃ。相変わらず良き場所のう……彼岸は遊んでおるようだし、蓮は便利だがちと『見え過ぎる』のう」
様々な花の花弁が風に吹かれ、鮮やかな色の花吹雪が舞う。
「蓮は唯一、全ての姉妹の監視をし記録する事しか出来ない、非力であり頭が回る素晴らしい妹ですわ」
「そのおかげで、今回は助かった部分が多いのは確かじゃな。さて、女王よコレをお返ししよう」
春君は『器』を掲げると、女王と呼ばれた少女はツルを伸ばして受け取る。
「これで……」
女王が『器』を手にした瞬間ーー……
●綴られた詩は誰の為?
『皆、とても不快な招待状が届きました』
トリス・ファタ・モルガナが会議室に集められたアタナ達に、何時もより険しい表情で言った。
『先日、ヴィランを邪英化して連れ去った『春君』という愚神からの招待状です。『明日、イギリスのサウサンプトンの港にて待つ。小細工は一切せずに戦おう。もし、そちらが応じない場合は街に蒔いた種が人々を襲います』という内容です。既にサウサンプトンの港にはツルで覆われております』
トリスは眉間にシワを寄せた。
『ほぼ、一対一の戦いになるでしょう。ヴィランの能力に関しては、調べ済みではありますが詳細は分かっていません。それと、邪英化したヴィランは戦いに慣れており最悪の場合は……断罪の許可が出ております』
「なので、皆さん……相手が悪い人であれ手を掛ける覚悟の上でお願いします」
ティリア・マーティスが凛とした表情で言った。
「可能であれば、種の回収をして下さい。よろしくお願いします」
と、言いながらティリアは恭しく頭を下げた。
解説
【目標】
邪英化したヴィランの捕縛or討伐
種の回収
【場所】
イギリス南部にあるサウサンプトンの港(昼)
【一般人】
街に沢山居ますが、今回は事前に避難させておりますので、港には客船や従業員等は一人も居ません。
【ルール】
ツルのドーム内には7名しか入れません。
街から一般人を避難させる、外からの攻撃、7名の突入時に何かをすれば街に蒔かれた種が発芽し一般人を襲います。
【敵】
邪英化したヴィラン6名
愚神1体
の計7名
氷花(真田 雪)
リーダー
ドレッドノート(槍、?)
真田家の槍術を扱い、体術も得意です。
力任せだけで勝てる相手ではありません。
部下
ブレイブナイト2名(剣、盾)
ソフィスビショップ1名(杖、本)
カオティックブレイド2名(狙撃銃、剣)
強さは皆さんが一対一で戦えるレベルです。
愚神『柊』
デグリオ級。
フランス人形の様な美少女。
無口だがなんとか会話が可能。
遠距離撃力と素早さが高め。接近戦は苦手。
『先見の明』
5分に一回だけ1m先に瞬間移動ができる。
『祝音』
鈴を鳴らして対象者の傷を癒す。
『鬼の目突き』
柊の葉を四方に投げる。
登場シナリオ『柊の嫉妬』『年1度の想い』
【NPC】
プレイングにて同行等の指示が無ければ支部で待機となります。
(参加人数が少なければ補充要員として参加します)
リプレイ
●歌い始め
イギリス南部にあるサウサンプトンの港、以前来たときにはコンテナターミナルの機械や沢山のコンテナに、それを保管する大型の倉庫が並んでいた。
しかし、春君との戦闘により殆どの倉庫や機械は破壊されてしまい、ドーム状にツルが港を覆っていた。
「なんとも奇怪な招待状、それ以上に、あたし達が負ける事を全く想定しないで依頼回してきたよね」
と、ドームを見上げながら餅 望月(aa0843)は明るい声色で言う。
『信頼の証だね』
だからこそ負けられない、と思いながら百薬(aa0843hero001)は力強く頷く。
「応えてあげるしかないか」
拳をぐっと握り締めると、望月は圓 冥人にそっと視線を向けた。
「圓くんがなによりも不安だよ、ちゃんと生きて帰ってきてよ」
望月が冥人へ手を伸ばそうとするが、伸ばしかけた手を引きアメシストの様な瞳で見つめながら言った。
「大丈夫、今この場に居る皆はそれを望んでない。むしろ、許さないだろうね」
穏やかな笑みを浮かべながら冥人は答えた。
「うん、圓くん約束だよ!」
「応、約束だね」
仲間の元へと駆け出す望月の背を冥人は静かに見つめた。
「少し、悩んでいるのですか?」
冥人の様子が何時もと違う事に気が付いた花邑 咲(aa2346)は、少し不安そうな声色で言った。
「悩み? そんなの無いよ。覚悟は出来てる……どちらの、も」
「覚悟は出来ていても、実行はさせませんよー?」
咲の紅玉の様な瞳は冥人を射抜くように見つめた。
「互いに、ね」
『……ええ』
冥人の言葉を聞いてブラッドリー・クォーツ(aa2346hero001)は、空に視線を向けながら小さく答えた。
「……皆様、ご迷惑をおかけしてすみません。ようやく怪我から復帰しました」
『すまないな……皆の者。ただでさえ森蝕作戦が本格的に動き出した時期だ……前回と同じ轍を踏むわけにはいかぬ』
春君との戦いによって重たい傷を負った月鏡 由利菜(aa0873)とリーヴスラシル(aa0873hero001)は、一緒に戦った仲間に向けて謝罪の気持ちを乗せて言った。
『そんな事ないよ? 由利菜ちゃんが頑張ったから一般人に死者はでなかったし、皆が生きているのは2人の功績でもあるんだよ』
と、2人の言葉を聞いて百薬は首を振った。
「港がツルだらけでわけわかんないことになってるわね!」
雪室 チルル(aa5177)がツルのドームを見て声を上げた。
『おそらくこの前の愚神の仕業だね。ここまでやるとは……』
チルルとは正反対にスネグラチカ(aa5177hero001)は、落ち着いた様子で今回の戦いに関して思考を巡らす。
「問題ないわ! どっちにしてもぶん殴ってやっつけちゃえば良いんだし!」
と、ぶんぶん腕を振り回しながらチルルは元気よく声を上げる。
『相手の目的がわからないのが不気味だね。なんで戦うことにしたんだろう?』
一対一の戦い、に関して考えていると脳裏にスネグラチカは、見えない『何か力が』動いてい様な気がした。
『”小細工は一切せずに戦おう”。ですか』
海神 藍(aa2518)は、春君の招待状に書かれていた言葉を口にしながら訝しげな表情でドームを見る。
「市民を人質に取ったうえでの同数での決闘が、か」
『一体何が狙いなんでしょう…?』
禮(aa2518hero001)は顔をしかめた。
「もちろん、一対一で『お願い』してもアナタ方が素直に従う様に見えないから」
エージェント達の前に氷花が現れ、笑みを浮かべているものの腹の底に隠された黒い殺気は漏れていた。
体の主である真田 雪は元エージェント、彼女の記憶を知っている氷花はエージェント達がどう動くかも想定済みだ。
「同じ顔の女の子、色違いだから判別は可能」
『みんな冥人の妹さんにそっくりなのね』
氷花とドーム内部で静かに佇んでいる愚神『柊』を見てセレティア(aa1695)が言うと、セラス(aa1695hero002)はアメシストの様な大きな瞳を丸くした。
何故、冥人の妹にそっくりなのか? と、セレティアは霧で先が見えない道を歩く様な不安が胸の中で渦を巻く。
女王と呼ばれし愚神が、冥人の妹と契約していたのは咲の口から語られたが、どうして姉妹達は似ているのか?
それが未だに分からない。
だが、今は目の前の事に集中するしかないのだ。
(煩わしい……)
リアン ベルシュタイン(aa5349)は、ドームの出入り口の横に立ち人数以上が入らぬように仲間を見ながら、タンタンと足先でコンクリートの地面を叩く。
その隣でアリス(aa5349hero001)は、大人しく一言も発せずにドームに入る仲間を見つめた。
「これは喜ばしい、丁度7名……守ってくれた事に感謝しよう」
氷花がドームに入ると、入り口はしゅるりとツルが伸びて閉められた。
「行くぞ」
見届けたリアンは、やや長い髪を風になびかせながら街へと向かった。
その後ろからアリスが小さな足音を立てながら着いていった。
「春君からの招待状……ふむ、やはりハーブや紅茶よりも珈琲を持ってくるべきだったでしょうか? リゼの初陣にしては流石にきつい相手でしたからね……何か身を引いてくれる方法を……」
春君と以前戦った事を思い出しながらГарсия-К-Вампир(aa4706)は、
メイドとして用意すべき飲み物を思い出しながら呟く。
『ヴぁう………あ゛ぁ?』
うめき声に近い言葉を発するМашаль-слезы(aa4706hero002)は、ドームの中に氷花が入って行くのを見たあとにГарсияを見上げた。
「……えぇ、そうですね。まずは目先の仕事をこなしましょう」
丈の長いスカートの裾をはためかせ、Гарсияはコンテナターミナルの反対にある街の方へと足を向けた。
●間奏の合間に
静かにたたずむ柊は、エメラルドの様な瞳で近付いてきたセレティアとセラスを映し出す。
「貴女は魔除けの葉の名を冠する守護者。他の姉妹と何か違う立場にいる」
柊という葉は、鬼の目を潰すという言い伝えから魚の頭とセットで玄関に魔除けとして飾られている地域がある。
それを知ったセレティアは愚神『柊』に言葉を投げた。
『そして貴女は必ずしも人の敵と断言できる立場をとっていないわ』
と、セラスが凛とした声で言った。
「冬の守護者、柊。役目を果たさせて頂きます」
柊は、手にしていた柊のナイフの様な形にして、セレティアに向けて投げた。
素早く共鳴し、セレティアは玻璃「ニーエ・シュトゥルナ」で叩き落とす。
「目的は何なのです? 女王はどこに? 梅姫は『壊れていた』! 春君の行動はあなた達も納得しているの?」
「目的……? 私は、女王の命に従ってる……場所は、言わない。冬の守護者だから。春君は、元の春君、最愛の姉様」
セレティアの問いに柊は答える。
壊れていたハズの梅姫に関しては、柊の言葉から何を言いたいのか伝わらない。
もどかしい、雲を掴んだ様な感覚のままセレティアは柊との距離を縮めようとするが。
素早く後退しながら無数のナイフが投げられた。
『どっちにしろヴィランは返して貰うわよ』
と、セラスが声を上げると、近場の建物を破壊しようとするが……何も無い場所なので足元に落ちていた瓦礫を投げた。
「違う……以前戦った記録の柊と違う!」
セレティアはアメシストの様な瞳を見開きながら声を上げた。
瞬間。
柊の手と足の首に付けられた鈴が一斉に鳴った。
「……覚悟なんて、遠の昔に出来ていますよ……ですが……」
咲は、声を震わせぎゅっと両手を胸元で握り締めながら呟く。
『……出来る事なら、その手は使いたくない、ですね』
ブラッドリーは、目の前に居る邪英化したブレイブナイトのヴィランを見据えながら、脳裏に『邪英化』という言葉が過ぎると少し視界が揺れた。
守るために、その手を使うのは、咲は躊躇わないだろう。
しかし、この場でするべきなのだろうか? と自問自答するが、最終的に決めるのは咲だ。
自信の思考を振り払うかの様にブラッドリーは首を振ると、その手で、その力で守る為に幻想蝶に触れた。
「ごめんなさい。痛い思いはさせますが、どんな人でも人間で命があります。だから、断罪なんて選択はしません。邪英化を解いて贖罪してもらいますね」
咲は小銃「S-01」の銃口をヴィランに向けた。
ブレイブナイトのヴィランの手には剣、接近されたら銃では対応出来ないであろう。
戦いを知ってるヴィラン、銃を見ても躊躇せずに地面を蹴って咲から距離を縮める。
『あぁ、覚悟してるその瞳は……誉めましょう』
邪英化しているヴィランは、咲の足元にうずくまると逆立ちになり鍛えられた足で腕を挟み、うつ伏せ倒すと腕の間接を外す。
『サキ……あの動きは……“人を殺し馴れてる”』
ブラッドリーが声を微かに震わせながら言った。
「あっという間に、銃を持っていた腕の間接を外されました」
『しかも、綺麗に……』
医学の知識が無い咲が自分で間接を戻す事は難しい。
“そこ”に腕はあるのに動かせない咲は、暫くは片手でどうにかするしかないと覚悟を決める。
『H.O.P.E.のと死ぬまで戦えるのでしたね。わたしく、フェアじゃない殺し合いは嫌いです。だから……』
邪英化しているヴィランは、口元を吊り上げて妖艶な笑みを浮かべると間接を元に戻した。
「どいう風の吹き回しですか?」
『言ったでしょ? 殺し合いは全力でヤらなきゃつまらないでしょ?』
咲の問いに邪英化しているヴィランは楽しそうに答えた。
「殺し合いなんてしません。わたしは、貴女の邪英化を解いて贖罪して欲しいだけですよ」
『よろしい、そこまで馬鹿馬鹿しい話をするならば……そうせざる得ない様にしてあげましょう』
と、邪英化しているヴィランは剣先を咲に向けた。
「久しぶり、氷花」
『やぁ、冥人』
氷花がにこやかに微笑むが、素早く冥人の懐に入り槍で貫こうとする、が。
「動きは良いのにね」
冥人はあっさりと避けた。
『どういう事! 何で冥人が相手?』
「知らないよ。そこらへんのエージェントを捕まえて聞けば良いよ」
『いや、お主がそれをさせないのは知ってる。今度こそ、殺させてくれるのか?』
氷花の言葉に、近くで戦っている咲は瞳を見開いた。
彼は元から“殺すかもしれない”ではなく“殺されるかもしれない”と。
「完全に愚神になるつもりなのかな?」
『笑止、そのつもりなら此処へは来ない』
冥人の言葉に氷花は笑う。
「獅子ではなく、猫にしろよっと?」
『なんじゃ、わかってるじゃないか』
雪に似た仕草で氷花は、今にも泣きそうな表情で答えた。
「その時は、俺を殺す権利をあげるよ」
『よかろう、決めるのは雪次第ではあるが、な』
冥人が鞘から刀身を抜くと、氷花は槍を構え直した。
「邪英と単独で戦えと来ましたか……春君、姑息な手を!」
『己の力を信じろ、ユリナ。私も力を貸す』
由利菜が吠えるとリーヴスラシルは手を握り締め、真っ直ぐに見つめると力強く言った。
剣を手にした邪英化しているヴィランを、共鳴した由利菜はフロッティを手にすると、リーヴスラシルの手も添えられた気がした。
一人で戦っているのではない、と語りかけている気がした。
『さぁ、踊りましょう……』
邪英化しているヴィランの頭上に、複数の武器が召喚された。
『邪英化による一撃は重みと鋭さが増しているが、大振りさが目立つ傾向にある。落ち着いて避けろ!』
無差別攻撃が開始される前にリーヴスラシルが声を上げると、由利菜を含め戦闘しているエージェント達は警戒する。
『さぁ! 染め上げましょう!』
召喚された複数の武器から攻撃が雨のように降り注ぐ。
まさに“ウェポンズレイン”という名が合う。
「くっ……!」
またも、あの時と同じ過ちを繰り返してしまうのでは? と、思ってしまい由利菜は踏みとどまってしまう。
『大丈夫だ、加減を間違えそうになったら私がユリナを止める!』
「あ、あぁ……」
リーヴスラシルの言葉に由利菜はこくりと頷き、鉛のように重たくなったと思ってしまう位に動かない足をゆっくりと一歩踏み出す。
(姑息な手、と言ってしまったが……皆はそれでも戦っている)
由利菜の耳に、仲間が邪英化しているヴィランと戦う音が響く。
銃撃、格闘、剣劇、一対一だけれども双方とも“二人”で戦っている。
(私にはラシルが居る。声を出せば、手を伸ばして助けてくれる仲間が居る)
「深淵にて悪夢に抗え! ヴァニティ・ファイル!」
由利菜はミラージュシールドを構えて銃の雨の中を走り抜くと盾でライヴスリッパーを放ち、邪英化しているヴィランのライヴスを乱す。
『うぁぁぁぁぁっ!』
邪英化しているヴィランが吠えると、手にしている剣の複製を周囲に大量に出現させた。
「相手は邪英且つ一対一……反撃の手さえ防げれば、これで!」
『ユリナ、私の力を全て集中させる! 連続斬りで一気に畳みかけろ!』
由利菜はフロッティを握り締めると、リーヴスラシルとの絆の力を活かしコンボ攻撃を繰り出す。
サウザンドウェポンズを放たれる前に、素早く剣で邪英化しているヴィランを斬る。
「マガツヒのような外道の集団であれば、やむを得ないこともあるでしょうけれど……今はそのような時ではないと思うのです」
ライヴスを使い果たした能力者から、英雄の魂がゆらりと出てくると由利菜を見つめた。
「それに殺せば、ラシルによる再教育だってできなくなってしまいます」
由利菜は魂を幻想蝶に固定し、残った能力者を抱き上げるとドームの外へと向かった。
「前回は不覚を取りました、リベンジのためにもここは乗り越えさせてもらいます」
共鳴姿の望月は、既に戦闘を始めている仲間より外側をぐるりと見渡す。
(居た)
『どーするの?』
(もちろん、あたし達の足なら)
百薬の問いに望月は自分の足をポンと叩いた。
足の速さなら自信がある、相手が狙撃戦を好むのであれば懐に入れば後は戦闘不能になるまで戦う。
由利菜と戦ってる方は、剣を主軸にガンガン攻めるタイプの英雄となればもう片方は、隠れて仲間の援護を得意としているだろうと望月は読む。
いや、相手がカオティックブレイドならば、攻撃を激しくするも静かに狙撃するも距離を取らなければならないからだ。
バトルメディックである百薬、もしブレイブナイト等の近接専門である英雄だったら相手にするのは大変だ。
だから、防御が低いカオティックブレイドを選んだのだ。
「トリガーを引くより速く、狙いを定めるより前に」
望月は、RR「ブラックテール」を邪英化しているヴィランに向けて降り下ろした。
『……っ!』
邪英化しているヴィランは、銃身で槍を受け止めた。
「はっ!」
『シ……セッ!』
再び望月がRR「ブラックテール」で突こうとするが、銃身で受け流された。
「言いたい事は、再教育の時に聞かせてもらいます!」
流石に接近戦は苦手だったのだろう、望月の槍を全て受けきれなくなった邪英化しているヴィランは剣を手にするも、つばぜり合いに負けてしまい力無く地面に倒れた。
『あっさりと終わったね』
百薬は倒れている能力者をじーと見つめる。
「カオティックブレイドだからね」
そんな百薬を横目に望月は、英雄の魂を幻想蝶に固定すると小柄な女性の能力者を百薬と一緒に、ドームの外へと運んだ。
「さて。差出人の春君さんが居られないようだが?」
ドームに入った藍は、先日見た少女の愚神を探すが居ない。
『……どこで見てるんでしょうね?』
街に種を蒔いた本人かもしれないのだから、何処か居てコチラを見ているかもしれない、と思いながら禮は首を傾げた。
「(……今回は殺害の許可まで出ている。どういう心算なのだろうね、HOPEは)」
藍は訝しげな表情のまま考える。
しかし、断罪に関してはこれが始めてではなく、危険なヴィランやランク付けされているヴィランとの戦いで、やむ得ない事情が発生した場合は許可されているのだ。
10人の一般人の命を奪われて1人の命が助かるか、1人の命が奪われて10人の一般人の命が救われるなら、後者を選ぶのがエージェントの役目である。
「まあ……どの道倒すことに躊躇いはない。殺すも殺されるも戦うのなら付きまとうものさ」
藍は考えても仕方かないと、判断し肩を竦めながら言った。
『全力で行きましょう。手加減はしてあげません』
そんな藍を横目に禮はやる気満々であった。
『ハロー、ハロー? H.O.P.E.のエージェントさん?』
マジシャンの様に華のある服を女性は手を振る。
「(敵はソフィスビショップ。互いに手の内は明らかだ。それを前提として戦わなければ)」
邪英化しているヴィランの武装を藍はじっと見つめる。
『(まずは……敵に切れない札を切りましょう……きっとこれを使われたことは無いでしょうね)』
と、2人は相手に聞こえぬ様に会話をする。
『舞い踊れ、幻影蝶』
禮の周囲にライヴスの蝶が舞うと、ヴィランに向かって飛び立つ。
『ぐっ……! 燃やしてしまえばっ!』
邪英化しているヴィランは、ブルームフレアを放ちライヴスの蝶を焼き付くす。
「普通のヴィランなら効果はないが……君は邪英だね?」
それを見た藍は確信をし、その言葉を口にすると邪英化しているヴィランは苦虫を噛んだような表情で見つめる。
聞かなくとも、答えが来なくとも知っていた。
もし、ヴィランと愚神が手を組んで居ないとも限らない。
だから、藍は幻影蝶で確認をしたのだ。
「べつに戦闘自体での小細工は許されるだろう?」
『咲き誇れ、烈火の華』
藍がそう言うと、禮は邪英化しているヴィランの眼前に青い炎が破裂した。
邪英がブルームフレアに囲まれている間に、藍はトリアイナに持ち変えると三叉に杖を引っ掻けて奪う。
『すぐ持ち替えますよね、でも』
「その判断が、命取りだ」
禮の言葉を藍が続けて言うと、拳を握り締めると思いっきり邪英を殴り飛ばす。
『……其れは暗き荒波を貫く一条のひかり』
と、言葉を紡ぎながら禮はケイローンの書に持ち変えた。
『無明の夜を裂け! ”ライトニング・トライデント”!』
ライヴスによって形成した雷の槍を一直線に放った。
サンダーランスが消えると、ライヴスが削られて戦闘不能になった能力者は地面に倒れ、英雄の魂は怯えた様子で逃げようとするが素早く禮に幻想蝶に固定されてしまった。
「よし、出るぞ」
藍はヴィランを肩に担ぐと、ドームの外へと足を向けた。
●サビで記憶に残る
「で、あたい達はブレイブナイトと1対1で戦うよ!」
チルルがスネグラチカに言う。
『え? こういうのってベテランに任せた方が良いんじゃないの?』
戦うより街に蒔かれた種の回収を考えていたスネグラチカは、アクアマリンの様な瞳を見開いた。
「あたいだってさいきょーを名乗ってるんだし、同じ戦法の敵との戦い方位わかってるんだからね!」
と、意気揚々と言いながら無い胸を張るチルル。
『本当? 具体的には?』
訝しげな表情でスネグラチカは問う。
「相手は盾で防御を固めながら剣で殴ってくる事はわかってるんだし、こっちも基本に沿った盾で防御を固めながら剣で応戦するよ。とはいえそれだと千日手になるだろうし、剣を防御しての盾のカウンターから体勢を崩して、そこから盾を持つ手を狙って盾を持てなくして防御能力を削いでみるよ」
『反撃を察知されたら警戒しちゃうだろうし一発勝負だね。頑張ろう』
チルルの作戦を聞いたスネグラチカは、納得した様子で答えながらぐっと拳を握り締めた。
「っと、話していたら向こうから来たよ!」
共鳴したチルルは、ウルスラグナを握り締めると邪英化しているヴィランを待ち構えた。
「あ、リゼ、貴方は触らないでくださいね。せっかく回収した種が傷んでしまうかもしれません。そうなると後処理が大変ですからね」
街に蒔かれた種を回収しているГарсияの隣で、Машальがおもむろに種に手を伸ばそうとしているのを制止させた。
「いえ、それ意外にも傷口から何が出ない可能性も否めないです」
誰かが種を踏んで、そこから何が出てきて襲うなんて事を考えるだけでもゾッとした。
街の清掃を装いながら、Гарсияは一般人が種を踏まぬように拾い集めている。
本当は一般人を避難させたいが、ルールに反して発芽してしまう。
しかし、種を全てを回収しても発芽する可能性があるので迂闊に変な行動が出来ないのだ。
「Гарсия! 交代をお願いします」
通信機からセレティアの声が響いた。
「リゼ、ドームの方に行きますよ。ティリア様、後はお任せします」
「ええ、気を付けていってらっしゃいませ」
Гарсияが恭しく一礼すると、ツルのドームに向かって駆け出した。
「……しかし、その「種」とやらは一体どんな物で、どれだけの数があるんだか……」
リアンは拾っても、拾っても、あちらこちらに落ちている種を見て少し苛ついていた。
「春君という愚神が蒔いた、という話はあるが……資料に書かれていた特徴の少女なんて見かけない……」
何時ものように生活している一般人に視線を向けると、リアンは憤りを超えて大きなため息を吐いた。
「僕はみんなの幸いのためならば!」
『僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない!』
セレティアが言うと、セラスが続いて言葉を紡いだ。
「焼くのが弱点とは変わっていますが」
『ブルームフレア!』
柊を中心に青い炎が破裂する、が。
両手首、両足首の4ヶ所に付けられた鈴が鳴ると、あっという間に傷を癒されてしまう。
「来たようですね」
セレティアが通信機から聞こえた声に答える。
『リーサルダーク!』
その間にセラスが、呪力を込めたライヴスの闇を柊に向けて放った。
柊が倒れて気絶したのを確認すると、ドームの外へと駆け出し外で待っていたГарсияと交代した。
「お初お目にかかりますでしょうか、私はガルシアと申します。此度はとても充実したお時間にさせたいと思っております。もし貴方様方の利点が戦うこと自体にあると申されるのなら、様々な戦術と戦い経験を積む……そう考察いたしました」
目を覚ました柊に向かって、Гарсияはメイドらしくお辞儀をすると愚神であれど丁寧に言葉を紡いだ。
「貴女が、エージェントである限り、私は戦う」
柊はГарсияを見上げると、たどたどしい口調で答える。
「ですので、第二ラウンドでは戦い方を一転させてあると思います。どうぞ心行くまでご堪能ください……」
戦う意思を受け取ったГарсияは、黒い霧に身を包みプレート状の光の壁を突き破るとゾンビの様な共鳴姿と成った。
「さぁ行くぞぉお……ゲーム、スタァァァァアアアットォ!!」
と、吠えるとГарсияは柊に向かってリビングデッド・クロー を振り下ろした。
●唄は終わるモノ
「これしか、方法が無かったのでしょうか?」
セレティアが泣きそうな表情で言った。
「ええ、望んでた事です」
と、答えるГарсияは少し寂しそうだ。
柊から女王に関してあまり語られずに、Гарсияの手で柊は倒された。
邪英化したヴィランは全員捕縛され、由利菜の希望によりH.O.P.E.ロンドン支部にて再教育される事になった。
予想外の出来事があるとしたら、集めた種が消えていたのだがセレティアが偶然にもスマホで写真を撮っていた。
それと、アリスが偶然にも一粒だけ幻想蝶に入れていたので消失せずに済んだ。
そして、氷花を戦闘不能にした瞬間に倒れた冥人。
誰もが春君の策略だと思っているがーー……
「帰ってきた、帰ってきた。お兄さまはコチラでもわたくしのモノ……さぁ、わたくしの“夢の中で愛しましょう”」
瞳に光が無い少女は椿の花を手に微笑んだ。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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