本部

WD~夜を焼き尽くせ~

鳴海

形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/11/13 09:18

掲示板

オープニング

● 南の島の悲劇

 その島から夜が奪われた。
「あれは……なんだ」
 住民が目を覚まし、朝の仕事に出かけようと家に鍵をかけた矢先、空を見あげれば何やら黒い影が太陽に重なるようにそこにあった。
「日食?」 
 いや、違う。
 その島の天文学者は首をひねった、最近そのような星の動きは確認されていない。
「夜がきた?」
 いや、違う。 
 夜の街の女王はその体にたまった眠気から、昨日太陽が沈みきってからの十数時間を記憶している。
 であれば、なにが。
 であればなぜこんなことに。
 答えはただ一つ。
 愚神だった。
 大きく巨大なドロップゾーンが島をすっぽり覆うためゆっくり拡大しているのだ。
 そのドロップゾーンの向こうにあるのか。それは分からない。
 あるいは取り込まれてみなければ分からないのかもしれない。
 だがそれは死を意味すると直感的に分かった。
「ああ、あれは、あれは」
 誰かがドロップゾーンを指さす、浸蝕を続けるドロップゾーン、その前に浮かぶのは黒い豹のような戦士。
 大剣を担ぎ愚かな人間たちを見下ろす戦士。奴は……ああ奴はおそらく。
「死を司る神か……」
 そう恐れおののく住民たち、しかし彼らに逃げる場所はない。
 この島が全てで、この島でいき。この島で死んでいくことを胸に誓った人々なのだ。
 だから彼らは希望にすがるしかなかった。
 君たちに出動要請だ。
 直ちに南アメリカのとある島へ赴いてケントゥリオ級愚神『テスカトリポカ』を打ち滅ぼしてほしい。




●霊核鳥

 愚神『テスカトリポカ』は従魔を複数使役している。これを『ククルカン』と呼称、総数は四体。
 H.O.P.E.解析班に寄ればテスカトリポカの本体というべき核は四つに分散されこの鳥にて運ばれあたりを飛び回っているようだ。
 テスカトリポカの戦闘するための媒体。以降これを『影』と呼称。
 この影を操るために戦闘区域内から離脱することはできないらしいが、とんでもない素早さと回避性能を持つらしい。
 個体差こそあれ値に直すと1500から2000程度。
 熟練のジャックポットですら命中させるのは一苦労だ。
 さらに独特の飛行法によってステータスに補正がつくので注意が必要。
 この飛行法や逃走法で自由に空を飛ばせないために、後ろから追いすがったり、逆に捕まえてしまうひつようがある。
 回避と移動力のステータス以外は駆け出しリンカーにも劣るので。
 基本的に捕獲方法を考えるか。
 攻撃を当てる方法を考えるか、どちらかのアプローチになるだろう。
 幸い鳥の大きさはカモメ程度。がしっとわしづかみにしてしまえば逃げられないはず。

・対抗飛行
 対象一人を選択します。
 対象の周囲をグルグル回るように攻撃することによって、視界と死角を行き来します。
 これによって対象が放つ攻撃に対して回避ステータスを1.2倍にするとともに。全ての近接攻撃に対して回避+300を得ます。
 これは対象が1~10SQにいる時のみ使用できます。

・対面飛行
 対象一人を選択します。
 対象に対して真っ直ぐ飛行しプレッシャーを与え、攻撃の際に急移動。敵の攻撃をすり抜けます。
 これによって対象からの攻撃に対して回避+400を得ます。
 さらにこのスキルで回避を選択しなかった場合、対象との距離が瞬時に0になり対象の生命力に固定で20のダメージを与えます。

・逃走飛行
 俊敏性を生かして上へ下へと移動しながら逃げます。
 移動力が1~10プラスされ。さらに自身の回避が1.1倍になります。

・着水逃法
 思い切り水に飛び込むことによって自身の移動力と回避能力を0にするかわりに。攻撃対象に選択されなくなります。
 ただ、なんとなく放った攻撃であったり、面制圧をするような攻撃は当たる可能性があります。

● 空を飛ぶなら。

 今回は天翔機を使用していただきますが。
 新型開発した、ローコストな天翔機を使用していただきます。
 従来のものですと、機体の重さを懸念して翼部分をエネルギーにするしかなかったのですが。
 逆に、翼部分に金属骨子と、軽量カーボンの翼を装備。そこから霊力を噴出して飛行能力を向上させました。
 例によってお好みのフォルムに変更可能。
 種類は三種類。お好みの物をお選びください。

天翔機・鳳火
 大出力の炉を二つ搭載したパワーこそすべてな機体です。
 天翔機はその加速度や霊力密度からリンカーの攻撃力を増大させる機能がありましたがそれを強化。
 自身与えるダメージが常に1.1倍となり。移動力に+3の補正が入ります。


天翔機・青龍
 空気抵抗を下げ、さらに反応性を高めた結果リンカーが持つ本来の適性速度まで、速度を引き出すことができるようになりました。
 移動力と回避能力に1.1倍の補正にくわえ。自身のスキル使用回数を一回回復させる能力があります。

天翔機・黒天
 こちら開発中の気体を引っ張り出してきたので脆いです。被ダメージが常に+5され、さらに天翔機自体も壊れやすいのですが。
 これしかない機能として周囲の光に干渉する能力が存在します。
 それゆえ。回避、命中が1.2倍に引き上げられます。
 なぜ天翔機にそんな機能をつけようと思ったのかは遙華にきいてほしいのですが。
 この天翔機は持ち主の攻撃の動きを予測し、周囲の光を束ねレーザーとして発射するので、攻撃の影響範囲が1SQ増えます。

● 愚神について
ケントゥリオ級愚神『テスカトリポカ』
 先ず、このテスカトリポカ核となるべきものは鳥が抱えているのは上記で説明した通り。
 あれを倒すまで影は皆さんを攻撃しつづけます。 
 その影は二足歩行の猫類のフォルムをしていますが全身を鎧で覆っています。
 防御力が低く攻撃を受けると各部位が破損し、ステータス低下を起こしますが次のラウンドでは回復します。
 攻撃方法はスキル三種類と大剣による斬撃。
 この中から二つを毎回のラウンド選択し行ってきます。

・紫鏡
  死を選ぶ鏡、この鏡を使用するとリンカーの誰かが映し出され、そのリンカーは回避することができなくなります。
 この効果は一回しか発動せず、効果を発揮したなら鏡から姿が消える。
 鏡は大きく、テスカトリポカの首から吊るされています。
 こちらは破壊が可能ですが、狙うのは難しいでしょう。

・黒杖。
 右手で扱う大剣とは別に左手に杖を持っていることがあります。
 この杖から黒い煙が漂い出すと、テスカトリポカの周囲50SQにいるキャラクターは全員が。防御半減、命中半減、スキル封印。のいずれかの効果を受けます。
 この効果はラウンド終了時に解消されますが、クリアレイなどでも回復可能です。
 
・夜落とし
 対象三体を選択ドロップゾーンから遠隔攻撃させます。
 この攻撃は必ず命中する魔法攻撃です。威力は高くないのですが、射程という概念がなく、リンカー全員が攻撃を受ける可能性があります。

解説

目標 ケントゥリオ級愚神『テスカトリポカ』の撃破


 このシナリオの問題としてはですね。
 普通に霊核鳥に攻撃を当てられるリンカーが出てくると、簡単にシナリオクリアになってしまうので。
 それを回避するためにテスカトリポカはジャックポットらしき人達を優先的に攻撃するように設定してあります。
 
 さらにテスカトリポカとその従魔である霊核鳥は別の存在です。
 テスカトリポカ本体をいくら攻撃しても倒すことはできませんが。かわりに霊核鳥全体を破壊することで勝利することができます。
 攻撃力よりは命中力が重要となってくる依頼ですね。
 さらに霊核鳥がテスカトリポカのスキルを使用することはできず。 
 鏡によって映しだされたPCが霊核鳥の攻撃を受けてもHPが減少することはないのでご安心ください。
 

リプレイ

プロローグ
「ずるいぞ鈴音!わらわもこれで思いっきり飛びたいぞ!わらわに身体を貸すのじゃ!」
 ドロップゾーンに包まれようとしている島の外、海に浮かぶ大型せんの甲板に甲高い声が響きわたった。
 その声の主は『輝夜(aa0175hero001)』彼女は全身を使ってその抗議の声がいかに大きいのかを示している。
「はいはい…………仕事終わったら思いっきり遊んでいいから共鳴は私に任せてね?」
 だが『御門 鈴音(aa0175)』もその対応になれたものでため息交じりに適当にあしらっている。
 その背中に翼を装着し、輝夜に変じゃないかなぁ? と問いかけた。
「翼を使った仕事もこれで何回目かしらね」
『水瀬 雨月(aa0801)』はそうつぶやく『アムブロシア(aa0801hero001)』が傍らに立っていたが雨月の言葉には反応を示さない。
「空を飛ぶ愚神の相手もなれたものね」
 今回討伐目標に含まれるククルカン。奴らの飛行能力はすさまじく、これまでと違った戦い方が求められるだろうが。
 まぁ、何とかなるだろう。
「こういう無茶が出来るのもリンカーならではかしら」
 そう雨月が視線を向けた先には、怖そうな女性と、おどおどする少女が見える。
「いよいよ空まで飛ぶたぁーな…………行くぜ威月」
 告げた『青槻 火伏静(aa3532hero001)』その言葉に『無明 威月(aa3532)』はフルフルと首を振った。
「…………おいどうした威月、さっさと行かねぇと…………おめぇ、まさか…………」
 そう顔を赤らめて威月は両腕でスカートを抑えた。
 その顔面温度はまだ上昇を続け、最終的には俯いてもう一度威月は首を振るのだった。
「…………このバカ乙女がぁああこんな状況でスカートの心配してる場合かあああ!!」
 涙目でなおの事首を振る威月。
 まぁ、正直なことを言うと女の子としての反応としては正しいと思うのだが、それは戦場以外での話である。
 それと対局的に戦闘に臨む意志を固めた女性たちは真っ直ぐドロップゾーンを見つめていた。
 『志賀谷 京子(aa0150)』は背中に背負った鳳火の出力を確かめながら武装を召喚。『アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)』と共鳴した。
「開けた空間で、そうそう遅れを取る訳にはいかないな」
――まして魔女どのもおられる。負けられませんね。
 その言葉に『構築の魔女(aa0281hero001)』はにこやかに笑った。
「ええ、そうですね。京子さんがいて任務失敗となっては、構築の魔女の名折れです」
 そう二人は愛銃のマズルをかちりと合わせた。
「うんうん。いつも通りよろしくね、魔女さん」
「えぇ、こちらこそ頼りにしているわ。きっちり撃ち抜いて魅せましょう」
 直後構築の魔女は共鳴。京子と構築の魔女が並び立ち。
 その背に携えた鳳火に火を入れる。
「よい機体です、派手に始めましょうか」
 リンカーたちの準備が整ったようだ。
「鳥のワイルドブラッドとして鳥の敵には負けられないね!
 気合十分の『雨宮 葵(aa4783)』そんな彼女の言葉に『燐(aa4783hero001)』が頷いた。
――…………ん。鳥じゃなくても負ける気は、ないよ。
 広がる蒼い翼は失われた空のように広がる。
 その翼はセキセイインコのワイルドブラッドである葵、その翼と同化するように広がった。
「いい気合いだ。俺達も燃えるぜ、なぁガイ…………」
――ああ、人々の安寧を奪うとは、許しては置けない。すぐに倒すぞ豪。
 『飛岡 豪(aa4056)』と『ガイ・フィールグッド(aa4056hero001)』は拳を打ち合わせて共鳴。
 翼が彼らの意志となり烈火のごとく燃えたった。
「ケントゥリオ級愚神……か。強敵だな」
――へへっ、久しぶりの大物だな! 燃えるぜ!
「奴らが絶望の使者なら俺達は希望の使者。絶望を焼き尽くし、奪われた夜を取り戻す!」
 その言葉に頷く葵。
「蒼天を宿した翼と称される、私達の本気を見せてあげようか!」
――行きます!
「速さを極めろ、攻撃を研ぎ澄ませ!」
 ガイは黒々とした炎燃える翼を翻し。葵に追従する。
 赤黒の翼と青の翼が螺旋を描いて船から飛び立った。船が沈み込み大波をたてるほどの加速度で二人は愚神を目指す。
 夜を焼き払うため。業火と蒼炎の翼は闇を引き裂き、矢のように飛んだ。


第一章 死と夜の支配者。



――はて……?煙を吐く鏡だったか
 風がバタバタと耳を叩く、なれない空中戦、翼の駆動音が思いのほか大きく邪魔くさい、しかし空を飛ぶという体験は、なるほど。
 確かに『ディオハルク(aa4472hero001)』の好みに合っている。
「いや鳥に掴まれてる奴だろ?」
 『逢見仙也(aa4472)』がそうそっけなく言葉を返した。
――鏡に関わる何かがあるかもしれんぞ? 名前の意味がそんな感じの筈だ。
 告げるディオハルクの視線の向こうには黒豹を模した神格のテスカトリポカ。
 その強大な力は数十メートル離れたここからでも伝わってくる。
――あれもまたお猫様デスかニャー?
『朱璃(aa0941hero002)』がそう面白がって問いかけると『彩咲 姫乃(aa0941)』武装を構えて言葉に答える。
「いや、知らねえよ」
 そんなことはどうでもいい、そんな口ぶりの姫乃である。
――なぁんか死とか言っちゃってるのもあたしと属性被っちゃってませんデスか?
「妖怪と神を一緒にしてるお前のほうが不遜なんじゃねえか?」
――日本的な考えだと一緒のようなもんデスニャ。むしろご主人のほうが馴染み深いはずデスニャ。
「全員が自国の特異性を理解しているわけじゃねえよ」
 死せるものを連れ去るという逸話を持つ妖怪、その具現である朱璃。
 そんな彼女にもきっと思うところがあるのだろう。
 いつもより冷えた声音に姫乃は意識をとられた。
――ところで誰かがすかぁとで飛ぶことを気にしていたようデスがニャ。
 その矢先いつもの調子に戻ってしまう朱璃。
 がっくりと肩を落として姫乃が指差す先には威月がふわふわと飛んでいる。
「あー、極力見ないように……」
 グイッと自分の顔を横にずらして事なきを得る姫乃。
――ご主人もすかぁとデスニャ。
 朱璃との共鳴は、朱璃に姿が引っ張られる、極めて女性的な衣装となるのだが、それを姫乃はなるべく考えないようにしているのだった。
「…………」
――しかもみにニャ。
「追い討ちかけんじゃねえよ……」
 その直後である。霊力が黒い嵐のように巻き上がったところで姫乃は弾かれたように進行方向を変えた。
 代わりに背後から現れたのが鈴音である。
 ふいに突っ込んできた鈴音とつばぜりあうテスカトリポカ。
 その鈴音に対して迎撃を行おうとククルカンが一斉に飛びかかってくる。
 だがその進行方向を弾丸がかすめ。霊核鳥は進行方向を変えた。
『鬼灯 佐千子(aa2526)』はテスカトリポカの動きを見つめながらホバーリング。その背後を構築の魔女と京子が並んで駆けて行った。
「まかせたわ」
――くるぞ、攻撃の隙を与えるな。
『リタ(aa2526hero001)』が告げると佐千子は全身の火薬庫を開く。
 これでもかと満載に装備された重火器を惜しみなく使用していく。
 その弾丸をテスカトリポカは器用に大剣ではじいた。
 そして左手に取る錫杖。
 鈴音の斬撃を受け止めるとその錫杖をかざして周囲に霞を回せる。
「くっ」
 鈴音の表情が曇るのが見えた。
「あの杖……」
 佐千子は仙也と視線をかわす。二人は愚神を挟み込むように左右に散った。
「ここは私が抑える」
――神じゃか、なんじゃか知らぬが。我が刃の前に立ち続けることができるかの?
 輝夜が高らかに宣言すると同時に、鬼帝の剣が閃いた。
 赤い奇跡が夜へ鮮やかに浮かび、飛び散る火花が瞬くようである。
「私が抑えます! 早く!」
 そう鈴音はテスカトリポカを縫いとめることに専念するつもりだ。
「はぁ!」
 苛烈な攻撃は勢いをさらに増す。だが敵も愚神としては上位の個体だ。
 薙ぎ払うような斬撃で鈴音の体制が崩された。くるくると回りながら落ちる鈴音。
 直後空から闇が渦巻いた。
 追撃の構えだが。それを許す仙也ではない。
 加速度をうまく使い、ロールしながら銃身を固定。その射程ギリギリに収めた愚神……振り上げたその腕に渾身の銃撃をみまう。
 はじかれた愚神の左手。
 次の瞬間には吹き飛んだはずの腕が再生している。
「切っても切っても治るとか、いろんなやり方出来ていいな。次はどうやるかね?」
 テスカトリポカは歯噛みして。大剣を構えて鈴音を追撃した。
 その眼前に躍り出たのが威月である。
「【暁】が隊員、無明 威月、参ります……!」
 一度刃を交えてしまえば彼女とて戦士。敵の刃を弾いて鈴音に手をかし、体勢を整えた鈴音は空中を蹴るように加速、テスカトリポカに肉薄する。
 その鈴音の視線の先にテスカトリポカがぶら下げる鏡が目に入った。そこに映し出されていたのは威月。
――鈴音よ……。
「うん、不吉だ」
 翼を吹かせ二段階目の加速をおこなう鈴音。
 迎撃態勢をとるテスカトリポカだったが仙也と佐千子の弾丸が対応する隙を与えない。
 だがテスカトリポカもやられっぱなしではない。
 落ちる夜。上空から柱のように伸ばされた闇が、鈴音、佐千子そしてククルカンを狙う誰かへと伸びた。
 その闇の中に飲まれる佐千子。しかし。
 その瞳は死んでいない。体全体を貫く激痛に耐えながらもありったけの霊力を重厚に集積、そして。
 渾身の砲撃を放つ。
「あなたの考えは御見通しよ!」
 闇を切り裂く霊力の光。
 それが、ククルカンを追おうとしたテスカトリポカの背中に突き刺さった。
 その背後に刃を突き立てる鈴音。
 このタイミングを待っていた。
 そう佐千子は肉薄してその体に至近距離から鉛玉をぶち込んだ。
「まだまだ!」
 鈴音の回転切りではじかれるテスカトリポカ。その体を仙也と佐千子が挟み込むように弾丸を放つ。
 たまらずテスカトリポカが張ったのは黒い霧。杖から発せられるそれは著しくリンカーたちの感覚を奪う。
「あの杖!」
 仙也はサイトを覗き込み慎重に弾丸を叩き込む、だが攻撃は当たらない、せめてこの煙の範囲内空で泣けラバ。
 鳳火が一際強く輝きを放つ。
 その闇の中をかけようと飛び立つが。その背中を闇が射抜いた。
「くっ」
 歯噛みする仙也。振り返りながら弾丸をばらまくが死の神を捕えることはできない。
 その追撃を阻止しようと躍り出たのが威月。
 ただ、その体は呪われていた。テスカトリポカの攻撃範囲に入った瞬間体の動きが止まり。
 そして、避けることもままならず斬撃を受ける。なんとか防御態勢に持っていくことはできたのだが、衝撃が全身を、骨まで貫いた。
 だが威月は激痛に耐えながら。仙也を見ている。
 仙也から先に回復を。
「ご無事ですか……!今、回復を……」
 一瞬のすきを狙ってスキルを飛ばし、自身はテスカトリポカの射程内に射つづけた。
 鏡が再び威月の姿を映す。
「皆様、諦めないで……! もう少し、もう少しです……!」
 威月が噛みしめるように告げると、テスカトリポカにさらに肉薄する。
 背後から追いついてきた佐千子と鈴音。三人で愚神を抑えにかかる。
――……ニヤけた面しやがって……それで勝ったつもりになってんじゃねぇぞ! 頼むぜぇ!
 火伏静の声に頷いて威月は体制を立て直す。まだ戦いはこれからだ、へばってはいられない。
「まだ……まだです、この程度で……根を上げてる場合じゃねぇです!」
――こんくれぇでヘコたれてる場合じゃねぇぜぇ…テメェが戦う理由ってヤツ、思い出しナァ!
 明けない夜はまだ続く。
 希望を失うのが先か、それとも暁の光が地平線を照らすのが先か。

第二章 翼
 爆炎が花開く最中、夜の闇に濃く浮かび上がる。
 その赤い花は空中で轟音を立てて広がって中から二、三羽の鳥が飛び出してきた。
 あれがククルカンである。
「逃がした! 行けたと思ったのにな」
 葵はカチューシャ弾倉をパージしてその速度を上げると一体に真っ向から接近。
 その逃げ道をふさぐように前から襲いかかる。
「この!」
 ポジショニングはよかった。ククルカンのまん前をとることができた、だが相手の反応スピードは速すぎた。するりとすり抜けられ振り返る葵。
「悔しい! でも次もギアあげていくよー!」
 刃を振るう葵、その全身が青色の炎で包まれた。
 武器と翼が共鳴している。これなら刃を当てるだけでもククルカンを切断できるだろう。
「いい熱気だ!」
 その葵の視界に割って入ってきたのは赤黒い炎を翼に宿す男。
「俺は夜を取り戻す太陽黒点(ヤタガラス)!爆炎竜装ゴーガイン・ブラック!」
 そのすれ違いざまの薙ぐような蹴りも、切り上げる斬撃も悠々と交わされてしまうガイ。ただ、体勢がくずれたククルカンを葵が追う。
 翼で叩いた空気が海面を割って、はるか上空にいるはずの葵までしぶきを返す。
 直後隕石のように加速した葵。
 それにガイが追従した。黒光りするフレームは闇にまぎれうねる炎の翼をコントロール、加速と旋回を繰り返し二人でククルカン一体を追いこんでいく。
「残念だったね! 本気の私の方が速くて強い!」
 電光石火のごとく接近した葵、その一撃は空気を切り裂く。
 しかしククルカンは翼をひねって回避。風の流れを味方につけて悠々と回避して見せた。
 だがそれは囮。
 ガイが上空からカモメを襲う猛禽類のように飛来、爆導策で絡め取り火をつけた。
――捉えた!
「ワイヤーは扱い慣れている。こいつでどうだ!」
 再び空に火焔の花が咲く。
 これで倒せたとは思いにくい。だが今度は先ほどのようには逃がさない。
 ガイは懐から刃を抜く。シンガンブレードの刃は怪しく光を反射した。
 葵はさらにカチューシャを装填。爆炎の中からもがくように現れたククルカンへさらに爆撃を加えた。
 風が乱されれば飛ぶこともままならないのが鳥の性。
 ズタボロのその体、そして守るべき宝玉にはひびが入っていた。
――この一太刀は全ての曇りを払う。
「龍気一閃……シンガンブレード。……チェストォーーー!」
 斬撃は刹那。ククルカンの翼を切り飛ばし。
 追撃で襲い掛かった葵が。
 その刃に纏う加速力で一気に敵の核を撃ち砕いた。
 これぞ神速の一撃。
「次は!」
 二人は撃破を確認後次の対象へと視線を移す。テスカトリポカはうまく縫いとめられているようだ。
 であればこちらも対処はたやすい。
 そう二つの翼はさらに夜をかける。

   *   *

 対してククルカンとひたすらに追いかけっこを繰り広げるのは姫乃。
 僅かばかりにスピードが足りないことを歯がゆく思いつつも、雨月の支援でスピードを削がれるククルカンは完全に振り払えずにいる。
「…………当たらないものね」
それでも普段の攻撃よりも黒天の支援がある分避けにくい攻撃になっているはずだが、ククルカンはそれをものともしない。
 代わりにククルカンは姫乃の周囲を飛びながら視覚、そして死角を行ったり来たりして翻弄した。
「だけどそれって俺より速く動けることが前提だよなあ?」
 にやりと姫乃が微笑む。直後姫乃は加速した。
――ご主人はまだまだ未熟なんで長距離移動はそこそこデスからなー。寄って来てくれたほうがやりやすいニャ。
 二つの影は雨月の爆風という障害物をスルスルよけながら、水際上空。下降して水面ギリギリのチキンレースと、追いかけっこを繰り広げる。
 確かに、ククルカンの方がスピードは上だ。平常時であれば姫乃は追いつけないほどのスピードを出せる。しかし。姫乃の方が反射速度は上だった。
 ククルカンの動きを素早く察知し、その頭を押さえるように飛ぶことができる。
 死角を行き来はむしろ大歓迎、相手が同じタイプなら手の内も見えると言うもの。
「それは俺の領分だ! 死ね!」
 放たれた斬撃は空を切るがククルカンの体制が崩れた。
「とんでもないわね」
 おかげで何の妨害もない雨月はその翼を大きく広げ魔王のように空に君臨した。
 その行動パターンを分析、情報を集積、自身の魔術が範囲攻撃であることを踏まえて相手の動きを計算に入れる。
「あと少し……」
 直後風を纏ってククルカンが水面に突撃した。
 水しぶきが上がりその姿が見えなくなる。
「それは御見通しよ」
 次いで漂ったのは常夜の闇。しかしそれはテスカトリポカの闇ではない。雨月が放ったゴーストウィンドウ。
 それがククルカンの体を軋ませ、力を奪う。
 逆上したククルカン、その体をひねらせながら雨月めがけ飛ぶ。
 だがそれすら雨月の手の中である。
 翼が纏う威光を束ね、雨月は渾身の霊力を白く変わってしまった終焉之書絶零断章に注ぎ込んだ。
「頑張ったけど、これで終わりかしらね? …………零に還りなさい」
 その全てを眼前に放った。
 空間を薙ぎ払うような飽和攻撃、それに対してククルカンは回避の術を見いだせない。
 その翼は凍てつき、羽ばたくこともかなわない。
 そのすれ違いざまに姫乃は刃を抜いた。
 逆手で握ったその柄をスカバードによる電磁抜刀で閃かせる神速は更に加速した。
――あたしの一足一刀に入った時点で速度勝負とか馬鹿じゃねえのって感じデスニャ。
 海の中へと落ちていく従魔の残骸、それを眺めながら姫乃は告げる。
「まぁ、戦ってんのは俺だけどな」
 そう一息つく姫乃に朱璃が告げる。
――ご主人は持久力が足~りないデスニャー。
「一応一般的なリンカーと比べたら速いほうだと思うぞ」
――一般と比べて満足しているようじゃいつまでたっても高みにはたどり着けねぇデスニャよ。
「はいはい、そうかよ」
 そして二人はテスカトリポカに視線を移した。

第三章 撃滅の弾丸

夜が訪れるのは目前、ドロップゾーンの生成が終わればこの世界はどんな悪夢へと変貌するのだろう。
 構築の魔女は額の汗をぬぐいながらその未来を思い浮かべた。
「時間はなさそうですよ」
「なら……全力で行くよ」
 京子の一声を合図に二人は散開、上下に敵を追い詰める。
 蛇行し複雑な機動を描いて飛ぶククルカンに二人の弾丸はまだ当たらない。
 しかし完成しつつある包囲網を察してかククルカンは急上昇。構築の魔女を狙う。
 しかしこちらに向かって真っすぐ飛ぶ影なら的も同じ。
 空気を読み、流れを掴み、トリガを引き絞るも弾丸はさけられ。構築の魔女はあわててメルカバの装甲で攻撃を受けた。
「近距離で戦闘できないなんて思わないことね?さぁ、どちらが堅いかしら」
 反撃の銃身の叩きつけ。ダメージにはならないがククルカンの勢いを大きくそぐことに成功した。
 放たれる京子の弾丸。その弾丸を翼にうけつつ、受け流しダメージを速度に変換して再度飛び立つ。
「テスカトリポカの方に逃げる」
「なら一気に加速を」
 二人の翼が大きく広がる。時にはククルカンの進行を阻むように弾丸を撃ち。
 時には背後をとるように飛び回る。
――天翔機、持ちますか?
 アリッサが不安そうな声をにじませた。
「そこは遙華さんを信じてる」
「届かないのであれば……確実に届くようにすればいいのです」
 上に抜けたククルカンめがけ構築の魔女は海を背に弾丸をばらまく。
 重力による軌道変更がない分弾丸は真っ直ぐ飛ぶが、そのうち上げるような弾丸をククルカンは器用に回避した。
 その上空から強襲する京子。そのメルカバの硬い装甲版にて突撃し、ククルカンを水面に叩きつけた。
「こんな砲を持ってるから鈍重だなんて思った?」
 さらに京子は攻撃の手を緩めない。水しぶきの中にその愚神の姿を想像した。
 三点バースト。マズルフラッシュが一瞬のうちに連続して、神速の弾丸が散発放たれたことを知らせる。
 それは当ったら儲けものな一撃だが、外れたとしても儲けものである。
 射手とは本来将棋を撃つことに等しい。
 弾丸とは敵を射落とすだけのものではなく、その場面、その一瞬に、敵はその場にいることができないという状況をもたらすものでもある。
 だとすれば。
 構築の魔女は想像した。 
 京子の思惑、そして最善手。
 そして構築の魔女は覚った、王手は近い。
 構築の魔女は動く、その行動に京子はにやりと笑みを浮かべた。 
 直後水しぶきを切るようにククルカンは水面すれすれを蛇行。
 トリオは命中しなかった。だが命中しなかった時点でククルカンが抜けられる道は限られていた。
 それを読んで先回りをしていたのが構築の魔女。
 水面の揺らぎ、海水の変化、入水角度、そして京子の思惑、全てを頭の中で並べ、状況を『構築』した時勝利が見えた。
「ここまで、お膳立てされたら外せませんね」
 弾丸がククルカンの背中に突き刺さる。
 ジャストヒットと呼べる一撃がやっと出た。
 だが火力がまだ足りない。
 水に叩きつけられバウンドし、空で無防備をさらすククルカンに。
 二人はトドメの一撃を放った。
「空中には跳弾させるところがない?」
「障害物の無い空中? いいえ、障害物ならありますとも」
「砲弾がそこを飛んでるじゃない」 
 次いでばらまかれた弾丸は無作為に見えて悪意に満ちている。
 もがき、ばたつき包囲網を抜けようとしたククルカン。しかし。
 その身に心があれば、絶望という色を塗りたくられていただろう。

 ダンシングバレット。

 互いの弾丸が、互いの弾丸とぶつかり、跳ね。そして愚神に向かう。
――敵が回避に秀でているというのなら、我らはその先を征く!
「魔女さん、いくよ! ぶっつけ本番だけどさ!」
「いえ、何度となく私たちは私達で、私達の任務をこなしてきました」
 その言葉に京子が笑う。
「そうだね、心配する必要なんてなかった」
「ええ、私達から逃れるすべなどないと示しましょう」
 直後。弾丸の軌跡が幾何学模様を空に浮かべる。ククルカンめがけ全方位から殺到する銃弾。
 それが余さずククルカンの体をかみ砕いて。弾丸は空に花火のように広がり轟音を立てて勝利の鐘となる。
「やったね、魔女さん」
「ええ、京子さん! 鳥だろうと砲弾だろうと狙えないものなどないわ!」
 メルカバの砲身を打ち鳴らし、それを勝利のハイタッチとしたのだった。


第四章 迎えた朝に
 夜が降る。その攻撃に何度貫かれても威月は意識を手放さない。
 ぼろぼろになりながらも前だけ向いて。テスカトリポカを威嚇する。
「くぅ…………動きが、素早いです…………ですが……」
 威月はきっちり壁役を務めている。
 常にテスカトリポカにとっていてほしくない地点にいつづけた。
 そのせいで体力の限界を迎えそうだったが、仲間が傷つくよりはずっといい。
 テスカトリポカが歯噛みする。そして無視できなくなったのか、大剣を構えて威月に突撃した。
 それを威月は盾に隠してあったA.R.E.S-SG550で応戦。 
 命中を狙うよりひたすら弾をバラ撒くが動きを制限するに至らない。そして鏡に映る誰かの姿。
――おい威月、あの鏡お前のパンツもうつるんじゃねぇか?
 火伏静がつぶやいた矢先、威月がスカートを抑える。
 その無防備を狙うようにテスカトリポカは杖を突きあげた。
 その時。
 その杖を中心として腕が吹き飛ばされた。
 ブルームフレア。
 それを放つのは絶対零度を纏う魔女。雨月である。
 その背には夜を象徴する黒い翼。漆黒を纏う乙女は冷たくも美しく見えた。
「天翔機の耐久性が無いから持久戦はあまり考えないわね……」
 だが内心はバチバチ言い始めた翼の音にひやひやしっぱなしである。
「残るククルカンは一体。それまで。足止めさせてもらうわ」
 雨月は魔本をかざす。その本からありったけの霊力を引き出して、そして。
 スキルをばらまいた。
 その隙を逃さず鈴音が肉薄する。
――あれか? 鈴音の見てるアニメのように歌とか歌ったら相手の動きが止まるかも? おぼえとるかの~♪
 そう楽しげに歌を口ずさむ輝夜にイライラが頂点に達した鈴音。
「……だぁぁぁもう! 集中してるんだから気を散らさないで! ……そうだ! こっちも変則的に飛ぶ機動を取れたら敵を翻弄できるかも……」
 直後つばぜりあっていた鈴音は一気に距離をとると落ちてきた夜を大剣でそらす。
 そのまま旋回して愚神の斬撃を避けると小刻みに動いて敵を翻弄した。
 ゲーム脳の鈴音の経験上どんな弾幕STGにも抜けられる穴があると知っている。
 経験を生かして自分が狙われている今は攻撃よりも回避に専念して、敵の動きを妨害する方が先決だと判断したのだ。
「いざという時の弾幕を消すボムとか残機がないけどね」
――お主も楽しんでおるではないか。
 そんな鈴音の眼前をククルカンが一直線にかけた。
 あわてて飛びのく鈴音。それを追うのが葵である。
「くそおおおお、早い! 追いつけない」
 葵は空中で器用に体を反転。上空から迫る夜を刃で弾き返す。
 だがすべてを受け流せるわけではなく。ククルカンからはじかれてしまった。
 だが葵の愛刀『華樂紅』は主を守った。
 彼女の速さについてこれるのはこの妖刀のみ。
 それゆえのドレッドノートには珍しい刀使い。
 そして、その信頼は力となって主を庇った。
「次こそは!」
 そう空中で反転する葵。その肩を叩いたのが威月である。
「ごめんなさい!」
 そうぱちんと突き出された張り手が葵の顔面を掴む。
 何が何やら分からない葵であったが、その視界にうつるテスカトリポカ。その鏡から自分の姿が消えていくのをみて、全てを悟る。
「ありがとう」
 次いで葵は大きく身を翻して。背後から突撃してきたククルカンを回避。
 そのまま体を回転させて刃を振り落した。
「手ごたえありだね!」
 衝撃でくるくるとはじかれ吹き飛ぶククルカン。
 そのククルカンめがけて東急ポーズを構えているのが豪だ。
――攻撃を避けるのが得意なようだけど、消える攻撃はどうかな!?
「試してみるか。爆炎投法ドラゴンスロー……! 必殺魔球! ゴースト・ストライカー!」
 その魔球は確かにククルカンを捕えていたのだろう。しかし。
 テスカトリポカが動いた。その魔球を大剣の腹で捕えそして打ち返した。
――なに!
「場外ホームランだと!」
 悔しさに歯噛みするガイ。しかし彼には奥の手が乗っている。
「まさか、最後の技をつかうことになるなんてな」
 装備が分解され豪の眼前で再構築される。
 召喚されたのはドラゴンハウル、ククルカンの進行先を予測、さらにテスカトリポカがガードに入ってきたことを想定して広範囲を爆撃するつもりだ。
「唸れ! 爆炎竜砲ドラゴンハウル!」
――大雑把に撃つからな! 皆、巻き込まれるんじゃねーぜ! 熱いぜファイヤー!
 爆炎に煽られ空中でわずかに速度を殺してしまったククルカン。
 だがそれが命取りとなった。
 闇から浮上するように現れたのは姫乃。
 極限まで気配を殺し、敵の動きを予測してここにいた。
 網を張った蜘蛛のように敵を手繰り寄せる。
「なんかアサシンスタイルがどんどん進んでいくな」
――それはご主人の責任なのでかっ飛ばしていくといいデスニャ
 斬撃にて翼を切り飛ばされる霊核鳥。
 それを見つめる双眸があった。
「明けない夜は無い……、なんて、流石にベタ過ぎるかしら」
――問題ない。事実は事実だ。
「…………そう言うコトではないのだけれどね」
 風で衣服をはためかせながら佐千子は自由降下を開始。その弾丸を命中させることにのみ全力をそそいでサイトを覗く。
――否定する。これはそう言う事だ。愚神と我々とは根本的に相容れない。
 その姿をとらえた。絶対にはずさない。そんな意志が彼女の指先に満ちる。
――これは対立組織間での戦争とは違う。種の存続を掛けた生存競争だ。
「つまり、私たちが生き延びたいなら、力づくで夜を吹き飛ばせ、と言うコトね」
――――肯定する。状況は簡潔だ。
「はいはい。じゃあ、行くわよ」
 リタの言葉に頷いてはじき出された弾丸。
「そして…………ばいばい」
 落ちるククルカンに向け弾丸を放つ佐千子。その弾丸は見事に鳥を射抜き。
 直後、苦しみ悶えるようにテスカトリポカは暴れ、次の瞬間には爆発して霞となった。
 爽やかな風がその霧をさらうと、照りつける太陽光身に沁みる。
 空には蒼天が映し出されていた。
 リンカーたちは空を取り戻すことに成功したのだ。

エピローグ
 
 『辺是 落児(aa0281)』は浜辺で波が押しては返す様子を眺めてる。
 その背後ではすっかり仲良くなってしまった京子と構築の魔女が談笑していた。
 そんな落児の顔面に大量の塩水が降り注ぐ。
 輝夜が天翔機の扱いにしっぱいして落下してしまった反動だ。
「ああああ! すみませーーーん」
 鈴音が水着姿で走り寄ってきた。
 あの後、戦闘が終わった後、帰りの船が到着するまで海で遊んでいようという話になったのだ。
 幸い町にあまり被害が無く。人助けする気満々で町に赴いた鈴音は、出鼻をくじかれた形になった。
「で? 遙華。黒天はなんであんな試用になったの?」
 そう渚で思い思いの休憩時間を過ごす皆とは対照的に。
 タブレット越しに遙華とお話しする雨月。
「あ~あれはね……」
 そうお話を始める二人。
 そんな一行を尻目に威月は遠くの空を眺めていた。
「なぁに考えてるんだ?」
 火伏静が問いかけると威月は振り返って目で語る。
 あの愚神が何処からやってきたのかを考えていたのだ。
「何者かに呼ばれたのでしょうか」
 その疑問に回答が得られることはまだないだろう。
 今はこの取り返した平和を享受することしかできないのだ。
 波の音が遠くに聞こえた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
  • 遊興の一時
    御門 鈴音aa0175
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941

重体一覧

参加者

  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 遊興の一時
    御門 鈴音aa0175
    人間|15才|女性|生命
  • 守護の決意
    輝夜aa0175hero001
    英雄|9才|女性|ドレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
    人間|18才|女性|生命
  • 難局を覆す者
    アムブロシアaa0801hero001
    英雄|34才|?|ソフィ
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
    人間|12才|女性|回避
  • 疾風迅雷
    朱璃aa0941hero002
    英雄|11才|?|シャド
  • 対ヴィラン兵器
    鬼灯 佐千子aa2526
    機械|21才|女性|防御
  • 危険物取扱責任者
    リタaa2526hero001
    英雄|22才|女性|ジャ
  • 暁に染まる墓標へ、誓う
    無明 威月aa3532
    人間|18才|女性|防御
  • 暗黒に挑む"暁"
    青槻 火伏静aa3532hero001
    英雄|22才|女性|バト
  • 夜を取り戻す太陽黒点
    飛岡 豪aa4056
    人間|28才|男性|命中
  • 正義を語る背中
    ガイ・フィールグッドaa4056hero001
    英雄|20才|男性|ドレ
  • 悪食?
    逢見仙也aa4472
    人間|18才|男性|攻撃
  • 死の意味を問う者
    ディオハルクaa4472hero001
    英雄|18才|男性|カオ
  • 心に翼宿し
    雨宮 葵aa4783
    獣人|16才|女性|攻撃
  • 広い空へと羽ばたいて
    aa4783hero001
    英雄|16才|女性|ドレ
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