本部

夏の終わりに肝試し!?

橘樹玲

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/09/14 18:45

掲示板

オープニング

●とある噂
 最近、SNS上で密かに噂になっている話がある。とある遊園地のお化け屋敷に、どうやら幽霊が出るらしい。
「えー、嘘だヨー」
 少女二人が商店街の一角になるカフェで話している。中学生ぐらいだろうか。
普段ならこんな真昼間からいるはずないだろうが、今は八月の後半に差し掛かったところだ。まだ夏休みなのだろう。
金髪ロングに青い瞳の、漫画に出てくるような清楚な印象の少女と、黒色短髪の活発な印象の少女たちがキャッキャと話している。
二人ともお揃いの星の髪留めをしていた。知らない人でもわかるぐらい仲良しのようだ。
「本当らしいよー。従業員の間でもそこにはいないはずなのに、人がいたって噂になっているらしいし」
「えー!信じられないヨー」
「夏休みも、もうすぐ終わっちゃうし、ちょっと行ってみようよー」
「そうだネー。私ももうすぐ引越ししちゃいますからネー」
「うんうん。もちろん引っ越ししても友達だけど、それまでにいっぱい思い出作ろう!」
「夏休みにいっぱい遊んだじゃないですカー?」
「足りない足りない!まだまだいっぱい作るよ!」
「ふふふ、そうですネ!いっぱい遊んでください!!」
 金髪の少女はふっと悲しげに笑う。
「さ、一息ついたところで、そろそろショッピングに戻ろう」
「ハーイ」
 少女たちは飲み終わった、紙カップを捨てると早々に店から立ち去って行った。

●次の日の朝
「……というわけで、ちょいと遊園地へ行ってきてくれないかの。夏休みということもあって、人も多く集まる。最近、何かと噂が出回っている遊園地じゃ。
プリセンサーが感知した内容によると、その遊園地のお化け屋敷で少女がその場で倒れこんでしまう予知夢を見たらしい。中は薄暗くて、詳しい状況もわからなかったそうだ。幽霊の仕業であるはずがないが、もしかしたら従魔の仕業かもしれん。
そこで、君たちエージェントに実際に行って確認してきてもらいたいのだよ」
 組織の依頼管理人の一人のエージェントが、資料を見ながら説明をしてくれる。
「まさか怖いなどとは言わんじゃろ。ただの噂であって、少女が倒れたのも貧血やら熱中症ならよいが……。プリセンサーが感知したということは少なからず危険な可能性がある。何事も慎重に調べてくれい。
もちろん、何らかの形で戦闘になった場合は、民間人を守ることが優先でな」
 一通り説明を終えたのだろう、読んでいたクリップボードを置き、肘をつく。
「健闘を祈るよ」
そう言ったエージェントはにっこりと笑った。

解説

●目標
 噂の調査。現地に行って、従業員やお客さんに聞き込みをしたり、お化け屋敷に実際に入り、噂の真意を調べてください。

●現状わかっている情報
・遊園地ついて
千葉県にあるテーマパーク。イギリスにあった病院が廃墟と化した設定。懐中電灯を持って、ナース服や入院患者のゾンビに遭遇しつつ、薄暗い病院内を出口目指して歩いていくお化け屋敷となっている。
・噂について
度々白い人影を見たとか、従業員の間でそこには配置されていない場所に人がいたなどの噂が立っている。
その上、幽霊の噂が流れ始めたしばらく後、行方不明になっている人がいた、幽霊を見ると神隠しに合うなどの噂も出ている。真意は不明。

リプレイ

●A:お楽しみと聞き込みと
 どこを見ても人人人の某遊園地内。今日は、日本で一番人が密集しているんじゃないかと思われるぐらいの中、ポニーテールの女性はその外見とは裏腹に、今にも飛び出して行ってしまいそうな少女のような顔つきで、ゲート脇の時計台前で人を待っていた。じっと入り口の方を見ている。
「それにしても遅いですわね」
 ちらりと時計に目をやった御手洗 光(aa0114)は、時間を確認する。現在13時14分、待ち合わせの時間は13時丁度。もうすでに15分近くオーバーしている。ふぅっと一つため息をつき、入り口のゲートの方を見る。
『これだけの人ですから、入り口で並んでしまっているんでしょう』
 すぐ近くのベンチで腰掛け、御手洗の呟きに答えたのはパートナーであるマリナ・マトリックス(aa0114hero002)だった。
 二人がぼおっと待っているところを周りの男性客がチラチラ見ている。それもそのはずだろう。容姿端麗で非常に発育の良い体をしている。そんな二人が入り口の前で動かずにいるのだから、声をかけようかと思う輩がいてもおかしくない。
「ねぇねぇ、カーノジョ♪ 二人は誰かと待ち合わせ?」
「そんな待たせるやつほっといて、俺らとお茶しないかい?」
 そんな彼女たちに声をかけてくる輩がいた。案の定、ナンパされたのだろう。
 一人は茶髪でもう片方は黒髪だがサングラスをかけている。服装だけで判断するのもあれだが、なんというかチャラチャラしている。
『あらあら? なんでしょう?』
「え? ちょ、ちょっとなんですの。待ってる人がいるので結構ですわ!」
 馴れ馴れしく御手洗の肩を触ってくる。
「いいじゃーん。つれないこと言わないでさ」
「ね? いいじゃん、いいじゃん! 待ってる間だけでもさ!」
 一体どうしようものか……あまり手荒なことをしたくない。眉をひそめて対策を考えてると、遠くから見知った人の声が聞こえてくる。
「すみませーんっ……遅れちゃいましたっ」
 小柄な二人がパタパタと息を切らして走ってくる。
「っち、こぶつきかよ……」
「連れさんきちゃったか、残念。また誘うね♪」
 流石に待ち人が着てしまったのは罰が悪いのか、彼らは逃げるように退散していく。
『あらあら……一体あの方たちはなんだったのでしょうか』
「た、助かりましたわ…‥」
 息を整えながら、彼女たちの呟きに首をかしげる狼谷・優牙(aa0131)だった。
「どうかしたんですか……?」
「な、なんでもないですわ…それより、遅いですわよ!」
「あう……すみませんっ! こんなに混んでると思わなくて」
 彼はぺこりと頭を下げる。
「ごめんなさいなのだ!」
 それを見たプレシア・レイニーフォード(aa0131hero001)も一緒になって頭を下げる。
「もう……遅れるときは報連相を怠らないようにしていただきたいですわね」
「そ、そうですよね……すみません。以後気を付けますっ」
「エージェントたるもの、しっかりしなくてはなりませんものね! さてと……早速ですが優牙さん、わたくし達と一緒に参りましょう♪ 遅れたんですから、拒否なんてさせませんよ!」
 彼女は早く行きましょうと、キラキラした目で彼の小さな腕を引っ張る。そんな様子を見て、僕も早く行きたいのだとプレシアがもう片方の腕を引っ張った。
『ほらほら、行くのだ行くのだ♪』
「わわわっ、御手洗さん、プレシア、そんなに引っ張らないでっ」
『クスクス……皆さん楽しいそうですわね』
 後ろから着いてくるマリナもどこか楽しそうである。何やらいい匂いがしますねと周りをキョロキョロと見渡していた。
「ちょっと走ったから喉乾いちゃったよ…」
「それじゃあ、どこかで飲み物でも飲みましょうか?」
『あ、それならいい匂いがするあのお店にでも行ってみませんか?』
『あー! 僕は甘いものいーっぱい食べたいなっ』
「ふふふ、それじゃあ一度あそこのカフェで腹ごしらえをしてから行きましょうか。腹が減っては何とやらと言いますからねぇ……」
 当初の目的はどこへやら、四人は人ごみの中へ消えていった。

●B:お楽しみと聞き込みと
『あんまり、情報が聞き出せないよねー』
 携帯端末に今まで聞いた噂についての情報を入力する。入力しつつ歩きながらそう言ったのは、水上 翼(aa3177hero002)であった。
『ほらほら、翼ちゃん。人が多いから、携帯に打つときは端によるかしたほうがいいじゃないのかな?』
 そう言いながら、共に行動しているAT(aa1012hero001)が通行の邪魔にならない方へと体を引き寄せてくれる。
『あ、ごめんなさい!』
 翼は慌てて入力し携帯をポケットにしまう。
『結構、聞いて回ったけどみんな同じようなものだよね』
『そうだねー。僕ちょっと休憩したいな! ね、ATさん、クレープ食べていい? あれあれ。美味しそうでしょ!』
 キラキラした目で、翼がATの方を見る。そんな彼女を見てATの表情がすこし柔らかくなる。そうだなと時計で時間を確認する。入園してから、約3時間は経っただろうか。確かに小腹が空いてきた。
『お、いいね。食べようか。翼ちゃんは何が食べたい?』
『え? もちろん、苺の♪ あ、でも……バナナのも捨てがたいかも』
 翼はお店のディスプレイの目の前で、あっちがいいかこっちがいいかと悩んでいる。そんな様子を見て、ATはふっと笑う。
『それじゃあ、私はこっちを頼むから、翼ちゃんはこっちを頼めばいいんじゃないかな? 半分こすれば、二つ楽しめるよ』
『ATさん流石だね! ナイスアイディアだよ♪』
 では早速とでもいうように、店員さんに二つクレープを頼む。
(翼ちゃんは初めて来たんだっけかな。合間にアトラクションにでも乗れるように、優先チケットなる物でもとってこようか。今回の目的を念頭に置きつつも、折角遊園地に来たんだ。楽しめる方がいいだろうな……)
 楽しそうにしてる翼を見て、ATはそんなことを考えていた。

 一方そのころ、別れて行動していた、セレン・シュナイド(aa1012)と音無 桜狐(aa3177)もまた、カフェのテラスで休憩をしていた。
「……ぬぅ、結局歩き回ってしまったのじゃ。ちょいと疲れてしもうたのじゃ」
 桜狐はお茶を一口飲むと、ふぅっと一息をつく。
「んん……ごくんっ。そうだね。みんな同じようなことしか聞けてないみたいだけど……」
 彼は食べていたホットドックをお皿に置いて、携帯端末を確認する。
「あ、でもちょっと変わったことも聞けたみたいだよ。夕方によく見るって話も出たらしい。これは、直接見たほうがいいのかな?」
 そういった彼の表情はどこかひきつっている気がした。
「そうじゃのぅ。翼たちと合流して現地に行ってみるかのぅ。もしかしたら、他の皆も綺麗るかもしれんからのう」
 残りのホットドックを頬張りつつ、彼はこくんと頷く。
「噂をすれば、あそこにおるのは翼たちじゃないかのう」
 彼女が指さす方を見ると、クレープ屋のワゴン車の前で二人が話しているのがわかった。
「本当だ。丁度良かったんじゃないかな。……あー、クレープ買ってる。いいなぁ」
「セレンも買えばば良かろう。それよりほれ……」
「ん?」
 彼女は自分の頬をつつく。
「ケチャップじゃ。付いておるぞ」
 あ、と彼はフキンでケチャップを拭い、えへへと笑う。
「さて、食べ終わったならそろそろ行くかの。すぐに向かえば追いつくじゃろう。」
「はーい」
 二人は空になった容器を片付け、クレープ屋のワゴン車の前へと向かっていった。

●C:お楽しみと聞き込みと
「結構いい情報が聞けたんじゃないか?」
 鼻歌交じりにお化け屋敷へと歩みを進めるのは、ルキア・ルカータ(aa1013)であった。
『いやはや……お化けがいるというのはにわかには信じがたい話ですがな』
 レッドラム(aa1013hero002)は、うむ……と考え込むそぶりを見せる。
「そんなのは実際行ってみりゃあわかる話だな! ……行かなきゃだよなぁ。あー誰か一緒に行かねーかなー……」
『おや? ルキア君! もしかして、怖いのでありますか?』
 ニマニマした目線で、ルキアの方をちらっと見る。
「う、うっせーな! ビビってねーよ! 一人でも全然余裕だけど、怖がっている奴がいるかもしれないだろ!そ、そういうやつをほっとけないというかなんというか……っていうか、そういうラム姉こそ怖くないのかよ!」
『自分は怖くないというか……』
 ラムはそこで黙ってしまう。
(我々英雄も幽霊のような存在だと思うのですが……そのせいか怖いとはあまり思わないんですよね。ルキア君はなぜ幽霊を怖がるんでしょうか。まぁ無意識の内に自分を信頼してくれているのであれば嬉しい限りですな。)
『ま、そういうことにしておいてあげますよっ』
 思ったことは、心の中にとどめておくことにした。
「ったく……お、あれじゃね? 例のお化け屋敷ってやつは。結構でけーなー……」
『ほう。これは確かに立派ですなあ』 
「……中、広そうだな」
 ボソッとルキアが呟く。いつのまにか鼻歌は止まっていた。先ほどより足取りは遅い。
『ん?何か言ったでありますか?』
 ラムはニマニマした顔のままだ。
「あ、いや。な、なんでもねーよ! さ、行くぞ!」
『おや、あそこの入り口にいらっしゃるのは、桜狐殿ではないでありますか?』
 二人の目的地に、依頼を受けた他のメンバーの四人がお化け屋敷の列の方へと歩みを進めていた。
「ラッキー……じゃなくて、あいつら怖がりそうだしな! しゃーねえ、俺がついてってやるか。な!」
 少し早歩きで四人の方へと向かっていく。
『ふふふ』
「なに笑ってんだ!」
『いやー……こういうのも楽しいでありますな』
「お? そうだな、俺も楽しいぜ!」
 その言葉に、お化け屋敷を見て渋い顔をしていたルキアは笑みを浮かべた。

●D:お楽しみと聞き込みと
『人が多いな』
 やれやれといった感じで、ディオハルク(aa4472hero001)が言葉を続ける。
『遊園地はいつもこうなのか』
「今日は特に夏休み中の日曜だからな。まあそうでなくても、確かに人は多いけどな」
 画面と睨めっこをしつつ、逢見仙也(aa4472)はディオに返答する。
『出没するのは夕方で、お化け屋敷でメインとなる箇所で目撃情報が多いんだろう?今のところ大きなけが人が出たりはないようだが……おい、おい仙也』
「あーん?」
 途中で話を切り顎でくいっと一方を指す。彼が指す方を見ると人ごみの中に、二人の女子高生がいる。それとも、違うものを指しているのだろうか。
「あっちになにかあるのか?」
『ほら…オペレーターが言ってた星の髪飾り。あそこにいるやつがつけているだろう』
 そういわれ、まじまじと頭部を確認する。確かにそこにはゴールドの星がキラキラ光っている。二人ともつけているな。
「本当だな。っていっても、星の飾りなんてつけてるやついっぱいいそうだけどな」
 そんな話をしている横を彼女たちが通り抜けていく。
「次はどこいくー?」
「そろそろお化け屋敷に行きましょうヨ!」
 すれ違う時にそのような会話が聞こえてくる。
「これは…ビンゴか?いや、まだわからないか」
『どうすんだ』
「もちろんついていくだろ。流石に急に行くなとも言えないしな。後ろからついて行きゃあ、何かあってもどうにかなるだろ。もし何かあったら守ればいいし、脅かし役の人に頼んで封鎖なりなんなりしてもらうさ。俺たちが先回りするのもありか……」
『別に俺が先に入って脅かしても良いが?』
「脅かすどころか嬉々としてトラウマ作ろうとしそうなんでやめい。てか、あの子達を驚かす必要はないだろ」
『冗談だ』
 適度な距離を保ちつつ、そのまま二人は彼女たちの後ろについてく。そして、お化け屋敷の列へと並んだ。お化け屋敷で前のペアに追いついたりすることは多々ある事だ。途中で一緒になっても怪しまれることはないだろう。
「結構並んでるな……」
 これは先が長そうだ。

●A:お楽しみは暗闇の中で
 薄暗い暗闇、懐中電灯の明かりとギリギリ5m先まで見える薄明かりを頼りに薄暗い病院内を進んでいく。途中見える病室に、人形だろうか―動かない人影のようなものが横たわっているのがかろうじてわかる。時折、進む先で白衣を着た人が通り過ぎるのが見えたり、突然現れるナース服を着たゾンビに遭遇しつつ、出口を目指しひたすら歩いていく。コンクリートでできている院内は妙にシンとしていた。外はあんなにも人の声と園内を流れる音楽で騒がしかったのに、別の空間に迷い込んでしまったようだ。
 そんな静まった中、他の客の悲鳴がコンクリートに反響して響く。
 時刻は4時半過ぎ。そんな薄暗い通路の途中で、女性三人に囲まれた一人の男の子が震えていた。
「うわあああぁぁぁ!?」
『あはは、お化け屋敷面白いのだ♪ 優牙、何でそんなに怖がっているのー?』
「何でって怖いから怖がってるんだよ!?」
 そんな二人のやり取りをにこやかな笑みで見ている御手洗とマリナ。
「まだ入ったばっかりじゃないですか。ほらほら、先へ進みましょう♪」
 御手洗は全く怖がった様子もなく、寧ろ優牙が怖がるのを見て楽しんでいるようだ。
『あ、今、白衣を着た方がいらっしゃったような……? ここに彷徨える方々が……!』
「ふえぇぇ! で、出たー!? うぅぅ…ちょっともう、マリナさん脅かさないでくださいよ!」
 マリナの発言に、優牙は顔面が真っ青になる。
「ほらほら、優牙さん? 怖くなくてよ♪ こうしていれば、大丈夫ですわね。うふふっ」
 そういって、御手洗がぎゅうっと優牙に抱き着く。
「ちょちょちょ、ちょっと!? 御手洗さん!」
 優牙も男の子なのだろう、女性のふくよかな部分があたり、顔が真っ赤になる。
『あはは! 優牙は青くなったり赤くなったり忙しそうなのだ!』
「ううぅ……早く出ようよぉ……」
 早くもギブアップしそうな勢いだ。
『あ、またあちらに……』
「ふぇ!?」
 彼らが出口にたどり着くのは、もうしばらく時間がかかってしまうだろう。

●BC:お楽しみは暗闇の中で
「ふむ、これがお化け屋敷という物か。初めて入ったがこんな風になっておるとは……」
 桜狐は怖がるとは言うより、作りに対し関心を寄せているようだった。
「うひゃあ! ……お、驚いた。よく出来てるね……」
「にゃあ! あー! おおお驚かすんじゃねーよ! セレン、大きい声だすんじゃねえ!」
「……ぬ…? 二人はお化けとか苦手じゃったかの…?」
「お、俺は怖いんじゃなくて、セレンの声に驚いたんだ!」
 お化け屋敷に入る前、ルキアが桜狐達を見かけたがどうやら追いつけたらしい。6人は合流し一緒に暗闇の中を進んでいた。相変わらずラムはニマニマとしているが、この暗さでは恐らくルキアには見えていないだろう。
『結構しっかり作ってあって凄いねー♪ 本物みたいに見えるー♪』
『そうだね。それにしても、今のところ噂らしきものには見当たらないけど、どうなのかな? このままだと、何もないままで愚痴についてしまいそうだよね』
 ATは鋭いところを突く。今は、中を3分の2行った程度だろうか。
『言われてみれば、何事も起こりませんね。やはり噂は噂なのでしょうか?』
 ラムもまた同じことを思ってましたと、うんうん頷く。
「人は恐怖心から幻覚を見ることもあるというからのう。本当にただの噂なのかもしれんのう。これだけ、作りがしっかりしているんじゃ。従業員ですら見間違える可能性もあるかもしれんからのう」
「僕もそんな気がしてきたよ。な、なにもないなら、このまま出て行ってもいいかもしれなよね。さ、進もう!」
「だ、だな! 早く出口に行こうぜ! ……くそ、ラム姉がずっと後ろでニマニマしてる気がする…っ!」
 その発言にまたラムは笑みを浮かべた。

●D:お楽しみは暗闇の中で
「以外に追いつけないもんだな」
『聞こえてくる悲鳴はそんなに離れてないから、もう追いつくだろう』
 距離が離れすぎないように、二人はサクサク進んでいく。時折、キャッと驚く声が聞こえてくるが、今のところ問題は起きていないようだ。
 入る際にスタッフに止められてしまい、入り口で少女たちと距離を離れてしまった。連れですともいえるわけもなく、大人しくその場は待つことにした。とはいえ、中は決まったルートを歩いていく、急ぎ足で後を追えばすぐに追いつくことができるだろう。とは言っても、相手のスピード次第なのだが……まあ、彼らはエージェントだ。一般人が走ったとしても追いつけないことはないだろう。ましてや高校生。特に問題ない。
『これ、そんなに怖いか? ……これなら俺の方が脅かせるんじゃないか』
「……それはオレも思った」
 二人にとって飛び出てくる驚きはあるものの、怖いなどといった感情は沸かないのだろう。スタスタとお化け屋敷の中を歩いていく。
『仙也も少しでも怖がれば可愛げがあるというものを……』
「……オレがびくびくしてるのを想像してみろよ」
『気持ち悪いな』
 少し想像したのだろう。はははと乾いた笑いが聞こえる。
「それにこんなのでビビったりするわけないだろ」
『ま、そうだな』
 相変わらずスタスタスタと先へ行く。薄暗くて先の事はよくわからない。かろうじてわかる足元に鼠の人形だろうか?小さい毛玉が転がっているのはわかった。
「廃墟だから、鼠を転がしておくのかね」
 足先で端の方へと転がす。足先にふにっという感触が伝わる。
『これ、もしかして本物じゃないか?』
「まさか。片づけるだろ」
 確認しようとしたところで、きゃあという聞きなれた悲鳴が響き、それと同時に焦るように名前を呼ぶ声が聞こえてくる。
二人は顔を合わせ、アイコンタクトをとると声の方へ走っていった。

●暗闇ハプニング
 少女の声がする方へ辿りつくと、そこには倒れる少女と腰を抜かしている少女がいた。
そこは病室で、今までの通路とは変わって少し広くなっているところだった。
(しくった……もっと早めに合流しておくべきだった)
 暗闇の中で倒れている方の少女の様子がわからない。今見える範囲でわかることは、周りのベットに転がっていた人形―病人の姿をしたゾンビが4体ほど少女たちを囲んでいるのがわかる。あと…足元に転がってるのは……先ほどの鼠か。
 先ほどと姿が変わり、目がオッドアイになった逢見がすぐさま駆け寄る。
『気を失っているだけのようだな』
 少女の無事を確認すると同時に、誰かがこちらにかけてくる音が聞こえる。
 大丈夫かという声が、三人分聞こえてくる。どうやら離れていないところに、セレン、ルキア、桜狐もいたらしい。三人とも逢見同様、姿が変わっている。
『どうしたの!?』
『これは、もしかして従魔か!』
 異変に気付いたのかセレンと、ルキアが少女らのそばに駆け寄る。
『すまねぇ。とりあえず、そいつらを非難させてくれ。オレはこいつらの相手しなきゃなんねぇから』
 そういって、戦闘態勢に入る逢見。
『僕は入り口の方へ戻って、お客さんや従業員さんをこっちに来れないようにしてくる』
 すぐさま、入り口の方向へと桜狐が走っていく。
『僕が倒れている彼女を運びますので、ルキアさんはそちらの女性を頼みます』
『おう!任せろっと……ちょっと、待ってろ』
 携帯を取り出しどこかへとチャットを打つルキア。
『よし、任せたぜ仙也』
『あいよ』
 ゾンビは殺気を放つ逢見を警戒しているようで、動きを止めている。二人が少女らを運ぶのを確認し、剣を握りなおす。
『よーし吹っ飛ばすか』
 暗闇でよく見えていなかったが、どうやら足元に転がっていたのは鼠のようだ。急に右往左往と動き出す。そして、こちらへ飛びかかってくる。
 逢見は顔色一つ変えず、その小さな物体を叩き切る。
『戦闘開始だ』
 その言葉と同時に、ゾンビも動き出した。

 一方その頃、出口付近のベンチで優牙達が一息ついていた。そんな休息もつかの間、携帯端末から着信音が聞こえてくる。
「あら、なんでしょう?」
 御手洗が携帯端末を確認する。
「んん…なにかわかったのかな」
 同時に優雅も確認する。
「ルキアさんからですわね。これは……緊急事態ですわね。急ぎましょう!」
「え、ええと……入り口に行って従業員さんに話をつけて……」
『あまり混乱を招くわけにはいきませんよね。連絡的には中に関しては大丈夫そうなので、とりあえず大げさにはしないほうがいいんじゃないでしょうか』
『はいはーい! 僕もそう思うよ! 僕たちはうまく従業員さんに話をつけておこうよ!』
 手を上げその場でぴょんぴょんとプレシアが飛び跳ねる。それに対し、御手洗と優牙はコクリとうなずく。
 四人の意志が一致したところで、すぐさま行動に移された。

 御手洗たちは入り口のスタッフに事情を話し、すぐさま中へもう一度入っていく。少女を運んだセレンたちは救護室へ向かった。桜狐は中にいた人を職員通路から外へと誘導する。 
 それぞれ、目的を成し遂げたところでお化け屋敷内で合流する。
『こっちは終わってるぞ』
 先ほどより少し荒れているように感じる病室内で、ひとり逢見が佇んでいた。
 足元には人形の破片らしきものが転がっている。
『これは…』
『怒られてしまいますでしょうかね』
 リンクした優牙と御手洗が、終わったことへの安堵と室内の惨状に苦笑いを浮かべた。
 しばらくして全員が合流のちお化け屋敷内を確認する。病室に集まっていたのか、他の場所には従魔らしきものは見当たらなかった。念には念をとお化け屋敷内だけではなく園内をくまなく確認、後に各自解散という形でこの場は後にするのであった。

●エンドロール
 一組は会話をしながら人ごみに紛れ歩いていく、閉園までの時間を楽しむようだ。他のグループもまた、まったりと遊園地を過ごすらしい。他にもレストランで過ごすものや、入り口の方へと歩いていくものもいた。
 一時、封鎖されたお化け屋敷は、病人が出たということで片付けられ、しばらくして封鎖はとかれた。少女に目立った外傷はなく、軽度の貧血だったらしい。
 こうして、日々続く物語の一ページが終わりを告げたのである。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • エロ魔神
    御手洗 光aa0114
    機械|20才|女性|防御
  • 天然エルフ
    マリナ・マトリックスaa0114hero002
    英雄|22才|女性|ソフィ
  • ショタっぱい
    狼谷・優牙aa0131
    人間|10才|男性|攻撃
  • 元気なモデル見習い
    プレシア・レイニーフォードaa0131hero001
    英雄|10才|男性|ジャ
  • マグロうまうま
    セレン・シュナイドaa1012
    人間|14才|男性|回避
  • エージェント
    ATaa1012hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • ひとひらの想い
    ルキア・ルカータaa1013
    機械|14才|女性|生命
  • エージェント
    レッドラムaa1013hero002
    英雄|22才|女性|カオ
  • アステレオンレスキュー
    音無 桜狐aa3177
    獣人|14才|女性|回避
  • シショク・コンプリート
    水上 翼aa3177hero002
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • 悪食?
    逢見仙也aa4472
    人間|18才|男性|攻撃
  • 死の意味を問う者
    ディオハルクaa4472hero001
    英雄|18才|男性|カオ
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