本部

【時計祭】きぼうさ茶屋

紅玉

形態
イベントショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
寸志
相談期間
5日
完成日
2017/08/10 18:36

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掲示板

オープニング

●ティックトック・フェスティバル
 ロンドン支部長キュリス・F・アルトリルゼイン(az0056)は頭を悩ませていた。
 世界蝕のもたらした技術革新によって通称『ビッグ・ベン』の改修工事はもうすぐ終わる。
 けれども、昨年末の愚神との戦いの直後に警戒態勢の上で改修工事に入った為、ビッグベンには陰気な噂が流れていた。
 いわく、ビッグベン周囲にはハロウィンの亡霊が彷徨う──といったような。
「これではいけませんね」
 七組のエージェントたちがロンドン支部に集められたのは数日後のことだった。


「あたしたちエージェントで作る、学校の文化祭のようなものだと思う」
 戸惑いながら、ミュシャ・ラインハルトは依頼内容を伝えた。
「文化祭、やる。やりたい」
「なかなか粋なことをするじゃないか」
「うんうん。スッゴク楽しそう!」
 弩 静華と布屋 秀仁、米屋 葵のポジティブな反応にエルナーが笑った。
「できそうかな?」
「勿論。文化祭だなんて何年振りかしら。今回くらいは童心に戻って楽しんでも悪くないわよねー」
「そうだね。だけど年相応って言葉もしっかり覚えておかないとね?」
 乗り気の坂山 純子だったが、ノボルの一言に言葉を詰まらせた。
「文化祭、ね。やっぱり、するなら喫茶店かな?」
「なら、和風にしようよ。徹底的にね」
 圓 冥人へ真神 壱夜が提案する。
「和服とか割烹着、素敵ですわね」
「母は、割烹着を着たいのよ」
 ティリア・マーティスとアラル・ファタ・モルガナのやり取りに、トリス・ファタ・モルガナが静かに首を横に振った。
「いいえ、ティリアには着物を着てもらいますよ」
 秀仁も同じく何か思いついたようだった。
「器具なんかは家のものを持ってきて、カップとかドリンクは自腹で買うか……」
 一方、ハロウィンから続いた事件を思い出した呉 亮次はしみじみと呟いた。
「あん時は新人中の新人で、しかも二回ほど死にかけたっけな」
「みんなが暗い気持ちになってるなら、また歌の力を借りるのはどうかな?」
 赤須 まことの期待に満ちた視線を受けて、椿康広とティアラ・プリンシパルが顔を見合わせた。
「季節外れの仮装ライブなんてどうっすか」
「ハロウィンの悪い思い出を、楽しい記憶に変えられればいいわね」
 ティアラの言葉にエルナーは軽く手を叩く。
「決行決定ってことかな。なら、僕たち以外にも参加してくれるエージェントを募らないとね」

●逆転茶屋?
『普通の茶屋じゃつまらないから、男女の服装を逆にしたら?』
 と、壱夜は笑顔で言った。
「ええっ! そうしたら浴衣が着れませんわ!」
 悲鳴に近い叫び声を上げながらティリアは、がくりと肩を落とした。
『大丈夫。甚平姿のティリアも素敵だと、母は思うの』
 アラルがそっと、ティリアの頭を撫でながら慰める。
「厨房担当は割烹着に統一してしまおうか? それと、やっぱり皆にお手伝いしてもらった方が良いんじゃないかな?」
『鍋、爆発、危険』
 冥人の案に静華はこくりと頷いた。
『ちょっと、ステージから離れた位置に』
 と、トリスは会場の左側に丸を描いた。
「王道なメニューをメインに、後は皆に任せて俺達は必要な物をっと」
『ええ、きぼうさ茶屋をしたいエージェント達を集めてきますね』
 トリスは急いでロンドン支部へと向かった。

解説

【目的】
きぼうさ茶屋(男装女装)を楽しくする。

【流れ】
茶屋の準備から参加可能です。
交代制にして、休憩中にフェスティバルを楽しんでいただいても構いません。
※注意:フェスティバルを楽しむ前提での参加、プレイングはお控え下さい。

【衣装】
女性→甚平
男性→浴衣(女性用)
料理係→割烹着

【NPC】
皆さんをアシストしています。
して欲しい事があれば言ってください。

リプレイ

●準備開始!
「女装できる茶屋か……」
 と、仁王立ちのまま御剣 正宗(aa5043)は呟いた。
『正宗さんは女装が好きですからね』
 嬉しそうに正宗を見上げながらCODENAME-S(aa5043hero001)はうんうんと頷いた。
「……誰だ、こんな企画を立てたのは」
 御神 恭也(aa0127)が企画書を持った手を震わせながら低く言った。
『途中までは普通の仮装だったのに、いつの間にか逆転してたね』
 企画書を横から見ながら伊邪那美(aa0127hero001)は首を傾げる。
『エフハリスタ! あたし、前からきぼうさちゃん絡みのイベントやってみたかったんだよねー』
 ウィリディス(aa0873hero002)が楽し気に鼻歌を奏でる。
「ベルカナから参加ついでに店の宣伝をしてこいと言われまれて……。まあ、こういった行事ではよくあることなので慣れましたが……」
 月鏡 由利菜(aa0873)は働いているファミレスの店長の顔を一瞬だけ浮かべると、小さくため息を吐きながら企画書を捲った。
「お祭りの時間デス! 全力で盛り上げていきマスヨー! 今回はどちらかというと裏方デスけどね! そういうのも大事デス!」
『何時でも何処でも全力全開! 楽しんで楽しませに行きやすぜー!』
 エマ(aa4839)と子供が泣きながら逃げそうな程に怖いピエロメイクと服装が目立つ逆神 笑満(aa4839hero001)の2人は、大きな声を上げると足取り軽やかに現地へと向かった。
「さて、皆に楽しんでもらえるよう、頑張るとするかの」
 天城 初春(aa5268)が狐耳をピコッと揺らし、圓 冥人が用意した衣装に視線を向けた。

 甚平、浴衣、そして割烹着が様々なデザインとサイズが綺麗に畳まれていた。
「割烹着とは随分と随分と古めかしい物を……」
 白い割烹着に袖を通す恭也。
『意外に違和感が無いね?』
 と、言いながら伊邪那美は微笑んだ。
「小学生時代は男女関係無く着て配膳をしていたからな」
 恭也が小学生の時、クラスで『給食配膳の当番』という役割をしていたのを思い出す。
『ふーん、恭也の小学生時代ってそんな事をしていたんだね』
「ま、日本特有のルール的なモノだね」
 と、冥人が声を掛けた。
「しかも、クラスに1人は忘れるヤツもいるしな」
「そうそう。でも、中学になると無くなるのは不思議だったね」
 小さくため息を吐く恭也に、冥人は頷きながら疑問を投げる。
『いや~、前から着てみたかったんだよね~』
 話している間に甚平に着替えた伊邪那美は楽しそうに言うと、その場でくるりと回った。
『ちょっと、ごわごわするけど楽で良いね~。恭也が愛用する訳が判るよ』
「麻製で風通しが良いからな。夏には重宝する」
 と、恭也は伊邪那美の言葉を聞いて同意するかの様に頷いた。
『あー、ユリナは割烹着固定なのかぁ。てっきりうさぎ関連だからバニーガールかと……』
 茶屋の名前から勘違いしたウィリディスは、きぼうさの刺繍がされた割烹着を着た由利菜を見て以前見たバニーガール姿を思い浮かべる。
「バ、バニーガールはベルカナの期間限定衣装でして、……恥ずかしかったです」
 頬を赤らめながら由利菜は、勘違いしているウィリディスに説明をする。
「……せめて割烹着じゃ駄目?」
 小宮 雅春(aa4756)が割烹着を手にして首を傾げた。
『恥ずかしがらなくても大丈夫よ。私は貴方のどんな面も受け止めてあげる』
 と、優しい声色でJennifer(aa4756hero001)は言った。
「(何か誤解されてる……!)」
 Jenniferの言葉を聞いて、雅春は心の中で叫ぶと冷や汗が頬を伝い服にシミを作る。
『貴方にはこれが似合うよ』
 そう言ってJenniferは、藤色基調の浴衣を手にすると雅春の肩に掛けた。
『うん、綺麗ね』
 恥ずかしさのあまりに顔を手で覆う雅春に、Jenniferは背中まである髪をそっと撫でる。
「(いや、今はそういう事をしている場合ではなくて……)」
 身に覚えのない依頼を受けた雅春は、Jenniferが受けたとは知らずに彼女の行動にされるがままだ。

『今回は南瓜を使った物が多いね~なんで?』
 と、伊邪那美は恭也が提案したメニューを見て首を傾げた。
「ハロウィンのイメージを変えたいとの事だからな。主役の一つである南瓜を使う事に決めた」
 恭也は破壊した元凶であるガイ・フォークスが起こした事件を思い出す。
 丁度ハロウィン前にあったお祭りの起源となった人物に扮し、ヴィランズを操り様々な場所で騒ぎを起こし人々の心に傷跡を残した。
『……ところで、これって紅茶に合うのかな?』
 伊邪那美は眉をひそめるながらメニューを見つめた。
「店自体が和風なんだから緑茶を出すんじゃないのか?」
『そうですね。茶屋なので、基本は抹茶に緑茶等のお茶類やひやしあめとかがあります』
 と、真神 壱夜が説明をする。
「そういう事だ。紅茶に関しては考えてもいなかったから判らんが……まあ、大丈夫だろ」
 恭也は肩を軽く竦ませた。

 その頃、現地では……

『歌って踊って作って飾ってクルっと回ってビシッと決める! 一家に一台逆神笑満の実力を見せてやりやすぜー!』
 と、声を上げながら特技の日曜大工を生かしながら笑満は、テキパキと簡易建物等の設置をする。
「此処はこうした方が見栄えが良いデスネ!」
 様々な装飾関係の手に、エマは見た目通りのエンターテイナーらしく見た目でも楽しめる様に飾り付けをする。

●開店『きぼうさ茶屋』
 次々と集合するエージェント達は、着いた順から甚平等の衣装に袖を通す。
『颯爽登場、逆神笑満! あっしの肉体美をとくとご覧あれ!』
 笑満が声高らかに言うと、浴衣の下からでも分かる位の筋肉を魅せる様にポージングをしつつ出てくる。
「視覚のテロデス! 引っ込みなサイ!」
『ごふぅ!?』
 エマの無慈悲な蹴りで、カンフー映画の様に後ろに吹き飛んだ笑満は更衣室へと消えていった。
『再び参上、逆神笑満! これならどうでございやしょう!』
 再び更衣室から出てきた笑満は、顔だけ見目麗しい女性の様に化粧を施されていた。
『見た目を変えようと奮闘したいのですが! 不可能だった事を他の方から聞いて顔だけでもと!』
 せめてまともにしようと努力したのだろうか、大きめの浴衣に変えて胸の辺りにタオルを詰めたりと工夫されて先ほどよりはマシになっていた。
「それなら仕方がナイデス! OKデス! 接客へGоデス!」
 エマは笑顔でサムズアップをした後、びしっとテーブルと椅子が並んでいる方向を指した。
『あいあいさー!』
 と、敬礼しながら笑満は駆け出す。
 行き交う人々はその姿に目を丸くしながら見つめた。

「ふふふ、どうかな、我ながら似合っていると思うが……」
『あら、とてもお似合いですよ、まるで女の子そのものです』
 更衣室から出てきた正宗を見て、CODENAME-Sは紅玉の様な瞳を輝かせながら見上げた。
「えすちゃんも、とても似合っているぞ」
 正宗がCODENAME-Sの甚平姿を見て、優しい笑みを浮かべながら褒める。
『そうですか、ありがとうございます。実はこういうのにちょっと憧れていたんですよね』
 少し照れくさそうに笑みを浮かべると、CODENAME-Sはくるりとその場で回った。
「お手柔らかにお願いしますっ」
 雅春は、ティリア・マーティスと冥人にぺこりと頭を下げた。
「お久しぶりですわ。雅春様。今日はよろしくお願いしますわ」
「うんうん、化粧のしがいがあるよ」
 丁寧に挨拶をするティリアに、浴衣姿の雅春を見て冥人は化粧道具を持って近づく。
「あ、打ち水してきます!」
 身の危険を感じた雅春は、水が入った桶と柄杓を手にし駆け出した。

『てやんでぇ、なんのようだ! とっとと答えれば、とっととオーダー入れますわねぇ』
 と、謎の江戸っ子風の言葉でウィリディスが声を上げた。
「あの、圓さん……リディスは悪気はないんですが、どうも勘違いしているみたいで……。途中で人格が変わっているのも気にしないで下さい」
 由利菜は申し訳なさそうに冥人に言う。
「うーん、一般の人が日本のお店は全てこうだ、と勘違いしないと良いんだけどね」
 冥人はただ面白そうに笑みを浮かべながらウィリディスに視線を向けた。
「この格好で人前に? しぬ!」
 共鳴姿になり、大きな鏡に映る自分自身を見て雅春は両手で顔を覆った。
『うふふ、それじゃあこうしましょう。もしもの時は、私が「貴方」の代わりになるの』
 と、Jenniferは扇で口元を隠しながら提案をする。
「少し、頑張ってみるよ」
 結い上げられた枯茶色の髪にスミレの簪を付けると、雅春はメニュー表を手にしゆっくりと客の方へ歩む。
 元からなのか、それとも分かっているのだろうか、ゆっくりと足を進める彼の姿は江戸の町を歩く花魁の様。
「写真撮らせて下さい!」
 と、客の一人がそう言うとスマホを取り出す。
「え、あ……そのっ……」
「はい、1枚だけでしたらどーぞ」
 女装した冥人が雅春の手を取り、従者や慕う町娘の様に寄り添う。
 分かって居る客、ただ物珍しさで撮る客達はスマホを掲げて撮り出す。
『ズルイ、僕も冥人と一緒に取られたい』
「ボクも、女の子として、撮られたい」
 正宗が壱夜にハンドサインで言う。
『はーい、コッチにも素敵な看板娘がいますよ!』
 元気よく壱夜が手を上げながら、正宗の背中をぐいっと押して前に出した。
「いらっしゃいませ、ですじゃ!」
 そんな事もあり店内は客の黄色い声が響いているが、初春は笑顔で客を出迎える。
『お席にご案内します』
 天野 桜(aa5268hero001)は空いている席に客を案内し、麦茶が入った透明の湯呑を人数分テーブルの上に置く。
『ご注文がお決まりでしたら、お声をお掛けください』
 と、桜は笑顔で言うと軽く一礼し、ゆっくりとその場から離れる。
「いらっしゃい! 何名様でしょうか?」
 出入り口で待っている客の元へと桜は急ぎ足で近付きながら声を上げた。

 キッチンではエージェント達が楽し気に和菓子や料理を作っていた。
『ユリナ、これどうやってるの? あたしには無理だよ!』
 どら焼きを作っているウィリディスは、生焼けだったり黒焦げになりすぎだったりと失敗作が皿に盛られていた。
 どうにか出来た生地で作ったどら焼きをデコレーションしようと試みるが、思った様に出来ず声を上げた。
「うーん……とりあえずイベント前に少し練習してみたら、手応えがあったので……」
 その隣で由利菜がずんだ餅パフェを作りながら答える。
「食は見た目からデス! 綺麗に可愛く作っていきまショー!」
 エマは割烹着の袖を上げ、注文された抹茶ラテに絵を描いたりお皿を鮮やかに彩ったりしていた。
『お手伝いしましょうか?』
 CODENAME-Sがキッチンに顔を出す。
「お願いしますデス!」
 と、元気よくエマがCODENAME-Sに向かって言った。

「なんじゃか、騒がしかったりそうでもなかったりと……」
 茶屋の裏に立てられた簡易建物に並べられている椅子に初春は座った。
 更衣室兼休憩室になっている簡易建物内では、壱夜がまかないを作ってエージェント達を待っていた。
『お疲れ様、まかない程度のモノを用意したから食べて下さい』
「おお、丁度お腹が空いていたからのう」
 初春は運ばれてきたまかないを見て、耳と尻尾を揺らしながら手を伸ばした。
『本当に動き易い……ボクもこれから愛用しようかな~』
 少しして伊邪那美は恭也に言いながら入ってきた。
「おまえにも甚平の良さが分かったか……」
 と、恭也は満足気に頷いた。
『お、まかないが用意されているなんて~』
「手を拭いてからな」
 椅子に座ると恭也は、伊邪那美に冷やしたおしぼりを手渡す。
『ひゃー冷たいー』
 伊邪那美は冷たいおしぼりを頬に当てる。
『一応クーラーとか設備は点いていますが、動いているコッチは暑いですね』
 壱夜が恭也達に冷やし飴を出す。
「料理しているこっちは火を使っているから更にな」
 と、答えながら恭也は冷やし飴を口にした。

●一蓮托生(?)
 昼食を終えた伊邪那美は、ゆらりと立ち上がり恭也の方に顔を向ける。
『さて、一人だけ逃れようとするのは許されないんだから』
「まて、今回はお前も事前まで知らなかっただろ! なんで、女装のセットを持っている!?」
 恭也は、伊邪那美が幻想蝶から取り出したモノを見て声を上げた。
『うん? 依頼で出かける時には何時も荷物に入れてあるよ。何かあった時に直ぐに対応できるように』
 と、にっこりと笑顔で伊邪那美が言い放つと、友人である由利菜と冥人の2人にがっちりと腕を掴まれた。
「そんな事態があってたまるか!」
 恭也が吠える。
『現に今、そんな事態になってるでしょ。さあ、観念して大人しく化粧されなよ』
 伊邪那美は化粧箱から道具を取り出した。
「うんうん、綺麗にしてあげようね」
「ご観念を」
 冥人は兎も角、友人である由利菜が楽し気に恭也に笑みを向けられると冷や汗が頬を伝う。
「まて! まて! 圓さんは兎も角だ。月鏡達は何故?」
『楽しそうだから!』
 由利菜の代わりにウィリディスが生き生きとした表情で言った。
 そして……
『出来た! 恭也、最高に可愛いよ』
 ばっちりと化粧をし、サイズピッタリの浴衣を着こんだ恭也を見て伊邪那美は満足気に頷いた。
「恭也さん凄く似合っています。ね? 圓さん」
 由利菜が笑顔で言う。
「そうだね。そうだ、終わったら皆で写真を撮ろうよ」
「それは、お断り」
『良いね。そうしよ』
 冥人の提案に恭也は断ろうとするが伊邪那美はその言葉を遮り、周りに居る仲間に同意を求める様に声を上げた。
「うむ、思い出として撮るのも良いのう」
『賛成だ』
 初春と桜は楽しそうに頷くと同意した。
『あ、そうです。こういうのも有るけどどうです?』
 壱夜がきぼうさの耳を模したモノが付いたヘアーバンドを取り出した。
「わらわは、自前の耳があるゆえに」
 ピーンと頭に生えている狐の耳を動かしながら初春は首を横に振った。
『付けたい方だけ、付けるといいですわ』
 と、言ってJenniferは躊躇いなく頭に付けた。
「午後も頑張りマス!」
 エマは新しい割烹着に袖を通すと、ぐっと拳を握り締め拳を掲げた。
『えぇ、午後からもあっしの笑顔を振りまくですぜ!』
 相も変わらず体格と顔がアンバランスな笑満も、足取り軽やかにエマの後を追う。

「きぼうさ茶屋に寄りませんか?」
 行き交う人々に声を掛けるのは由利菜だ。
「美味しい冷やし飴等もあります」
 その隣でティリアも声を上げる。
『いらっしゃいませ、お席にご案内しますね』
 見た目は雅春でも中身はJenniferである共鳴姿で、にっこりと柔和な笑みを浮かべながらお客をお店の中へと案内する。
『おまたせしました! きぼうさどら焼きと抹茶ラテです♪ごゆっくりどうぞー!』
 足取り軽やかに注文された品を運び、笑満はとびっきりの笑顔を客に向けながら踵を返した。
「ご注文はいかがなされますかの?」
 と、初春はお客を見上げる。
「コ、レ、ガ! 萌エ!」
 と、客が何故か目を覆うように手を当てながら言う。
「オーダー内容は君に任せる……」
「わし、がじゃ?」
 初春は指先を自分の顔に向けた。
「なんなら、メニュー、全部で!」
 ばぁんとメニューをテーブルに叩きつけながら客は声を上げた。
「では、メニューを一通りお持ちするのじゃ」
 こくりと初春が頷くと、客は何と言葉にしたら良いのか分からぬ表情のその後姿をただ眺めた。
「ありがとうございました!」
 桜の元気な声が響くと、お店を出ていくお客は笑顔で手を振った。
「~♪」
 普段から女性っぽい姿をしている正宗だが、今日はお仕事として堂々と女装し『女性』として見られるのが嬉しいのだろう口元が緩んで小さく微笑んでいた。
「……あ、セ、セクシーで可愛い制服の女性店員が一杯で、メニューもフルオーガニック指向のベルカナも……そ、その……よろしくお願い致します!」
 ちゃっかりというか、しっかりしていると言えば良いのだろうか?
 由利菜は、働いているファミレス『ベルカナ』のグラベリーパフェを出し宣伝をする。
『何だかんだで店の宣伝はするんだね、ユリナ……』
 と、隣でウィリディスは由利菜を見つめる。
「だって……頼まれた事で、良い宣伝だと思うのよ?」
『ちょっと説明不足? ま、ユリナらしいけどね!』
 口ごもらせる由利菜に、ウィリディスが明るく元気よく言った。

「……いらっしゃい、ませ」
 無愛想に接客する恭也。
『いらっしゃいませ。恭也君、そういう趣味の人から見たらたまらないから少しは……って無理な話だったですね』
 と、壱夜が言うと深いため息を吐きながら恭也は頷いた。
『客が多くなりましたね』
 Jenniferは七人の小人に6体それぞれに色違いの浴衣を着せ、人手が足らないであろうテーブルの片付けをする。
 ライブや舞台が始まる前と、終わる頃には全員で総動員して客を迎える準備にそれぞれの特技を生かして待っている客にパフォーマンスする等をした。
 そして、そらが夕焼けのオレンジ色に染まる頃。
『ありがとうございました!』
 CODENAME-Sが最後の客を見送った。
「お疲れ様!」
 と、冥人が皆に声を掛ける。
「何もしてないのに疲れた……」
 テーブルに顔を乗せながら雅春は呻いた。
『お疲れ様。浴衣姿も素敵だったわ』
 と、満足気なJenniferは言う。
「それにしてもジェニー、なんだかこなれていたね」
『お人形だもの。「ごっこ遊び」は好きよ 』
 雅春の問いにJenniferは表情を変えずに答えた。

「一番の報酬は皆の笑顔デスネ! 頑張った甲斐がありましたヨ!」
 エマが元気よく声を上げた。
『ふっ、あっしの接客スキルにお客さんはメロメロでやしたぜ』
 笑満が何時ものピエロ化粧に戻し、胸筋で浴衣が弾け飛ばしながら言った。
「それは気のせいデス」
『即答!?』
 間髪入れずにエマは答え、笑満がオーバーリアクションで驚きの声を上げた。
「えすちゃん、今日は楽しかったな」
『うん、正宗さんは好きな女装出来て良かったですね。私も楽しかったです』
 正宗の満足気な笑みを見て、CODENAME-Sは嬉しそうに頷いた。
「解放されるな」
 いつの間にか着替えた恭也は安堵のため息を吐いた。
『似合っていたのにもったいない』
 少し不満げに伊邪那美は、スマホに保存されている女装した恭也の写真を見ながら言った。
「消せ」
『えい』
 恭也がスマホを奪おうと腕を伸ばすが、伊邪那美が友人たちにその写真をメールに添付して一斉送信してしまった。
「……嘘、だろ」
 と、呟きながら恭也は頭を抱えた。
『ユリナやティリアさんはスタイル抜群なのに勿体ないなぁ。イベントの後で、サプライズ的にユリナを含む女性陣全員のバニーガール衣装お願いしようかな?』
「リ、リディス、余計なことはしなくていいです!」
 ウィリディスの提案を聞いた由利菜は、実現しそうで怖いので思わず声を上げてしまった。
「あら、私とアラル様でしたら喜んでしますわ」
「や。ややこしくなるので……その、無理はしないで……下さい」
 ティリアの返答を聞いた由利菜は慌てて制止する。
「ティリア姐は真面目に言っているから、諦めた方が良いよ」
 と、言いながら冥人は由利菜の肩にぽんと手を置いた。
 こうしてティックトック・フェスティバルは無事に終了した。
 参加したエージェント達は、お祭りの雰囲気を残したまま広場に建てられた簡易建物やテント等を片付ける。
 少しでも、あの惨劇で傷付いた心の傷を癒すと共に再び起きぬように、と。
 願いながら、いつもの広場に戻った会場を見つめた。

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結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
  • 大道芸人
    エマaa4839

重体一覧

参加者

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 花の守護者
    ウィリディスaa0873hero002
    英雄|18才|女性|バト
  • やさしさの光
    小宮 雅春aa4756
    人間|24才|男性|生命
  • お人形ごっこ
    Jenniferaa4756hero001
    英雄|26才|女性|バト
  • 大道芸人
    エマaa4839
    機械|10才|女性|命中
  • 道化師
    逆神 笑満aa4839hero001
    英雄|28才|男性|ソフィ
  • 愛するべき人の為の灯火
    御剣 正宗aa5043
    人間|22才|?|攻撃
  • 共に進む永久の契り
    CODENAME-Saa5043hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • 鎮魂の巫女
    天城 初春aa5268
    獣人|6才|女性|回避
  • 笛舞の白武士っ娘
    天野 桜aa5268hero001
    英雄|12才|女性|ドレ
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