本部

外来生物を捕獲して食べようinサファリ

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2017/06/18 19:37

掲示板

オープニング

●依頼
「あっ、うちのカミツキガメが!」
 その客の悲鳴に、オーナーは慌てて振り返った。
 ザブン!
 柔らかなランプの灯りの中、男のトランクケースは水面へと沈んで行ってしまった。
「ちょっと、うちの庭にカミツキガメを放ったの?」
 客は真っ青になってオーナーに謝った。
 彼がこのホテルで休んだ後に町のペットショップでサンプルとして引き渡し予定のカミツキガメの卵だったのだ。
「……朝になったら、探さないと……」

 ……それからしばらくの後。H.O.P.E.へ下記のような依頼が舞い込んだ。

 ──『外来生物を捕まえて自然を守り、その外来生物を美味しく食べよう』。

 その依頼を受けたエージェントたちは何故か自家用ジェットに乗せられ、アフリカの大地にやってきた。



●外来生物
「こいつらを倒して欲しいんですよ」
 屋根のあるテラスに集められたエージェントたちは、壁に映ったプロジェクターの映像を観せられていた。
 そこには鋭い牙のある亀が映っている。
「これ。カミツキガメ。この鋭い牙がどんだけ恐ろしいものなのかって君らもたぶん知っていると思うけど、怖いよね、こんなんでバクっとされたら。うちの動物たちがこれで噛まれたらいちころなわけよ」
 そう言って、ホテルのオーナーは外に広がる自然の中の動物たちを優しい眼差しで見つめた。
 視線の先にはあくびをするライオンが居た。
「このカミツキガメがこの辺に何匹いるか、正確にわからんから一番厄介なのだわ。大体どれも甲羅の大きさが三十センチくらい。十メートルを超えるのはわかってるだけで一匹くらいだけやね」
 メートル。その単位を聞き逃さなかった者は違和感を覚えたが、口を挟む間もなくオーナーの話は続いた。
「次にこの鳥なんですけど」
 画面に翼竜が映った。
「でっかいんで、仮にプテラノドンって呼んでます。大体七メートルくらいかな? こっちで二体は確認している。これもカミツキガメ」
 トサカのついたプテラノドン、ちょっと鶏に似ていた……。
「あと、これがトリケラトプスっぽいカミツキガメね。草食っぽいんだけど、ライブス食べるからね。草食とか関係ない。うちの動物たちが倒れちゃってて困ってるですよ。それぞれ九メートルくらい。もしかしたらもう一体くらい居るかも」
 軽く言っているが、図鑑で見たことがある恐竜そっくりである。
「そして、一番困ってるのがこいつら」
 画面の端に火柱が上がったのが見えた。
「体長十二メートルのドラゴン型カミツキガメ。これはまだホテルの近くまでは来てないからウチはまだ安心なんだけど、動物たちがことごとくやられちゃって、ほんと困ってる。あと──」
 地面が突如割れて、大木のような太さの蔦──いや、足がうねった。
「これはクラーケンって呼んでる。ココ、海じゃないんだけどね? 地面の中から突然襲ってくるからよくわかんないけど、大体ニ.五キロメートルくらいかなー? これも元カミツキガメ」
 プロジェクターの画面に今まで映ったカメと『外来生物』たちの画像が並んだ。ちなみにクラーケンは足だけである。
「これが今回うちの庭にやってきた『外来生物』たち。安心して、どれも元カミツキガメだし、従魔って言うんだっけ? あれに憑かれて変化しただけだから」
 そう言ってオーナーは愛おしそうに眼前に広がる大自然を見た。
「あと、うちの動物たち──大雑把に言うとライオン、アフリカゾウ、バッファロー、ヒョウ、サイ、シマウマ、カバ、ワニなんかが居るんだけど、そっちは傷つけないでね」


 オーナーによると今回の討伐隊は『第二弾』だと言う。
 第一弾のエージェントたちによって、『外来生物』は倒した後も肉体が残って調理可能であることは実証済みである。
 ホテルには一流シェフが勤めていてエージェントたちが倒した『外来生物』の肉を調理してくれるという。
 調理を希望する者は屋外用キッチンを自由に貸してもくれるそうだ。
 もしかしたら、美味しいものばかりとは限らないがその辺は愛嬌だ。

 ちなみに、第一弾の討伐隊のエージェントたちは三名ほどだったそうだ。
 オーナー曰く、今よりもまだ『外来生物』の数も多い状態での討伐だったため、全員試食する前に回復を必要として撤退した。
「だいじょーぶ、多くてもあと十体くらいでしょ? H.O.P.E.のエージェントサンなら、なんとなかるってー」

解説

※OPの内容とOP解説の情報は全てPCが知っている情報です

●目的:外来生物(従魔)を全部捕らえて、美味しく食べよう

●外来生物(従魔に憑りつかれたカミツキガメ)
生き物名の後には全て「のような従魔」という言葉がつきます
主食はライヴス
すべてミーレス~デクリオ級従魔と予想されている
・カミツキガメ:最大甲長10m×1、30cm×?体
・プテラノドンのような鶏型カミツキガメ:全長7m×2?
・トリケラトプスのようなカミツキガメ:全長9m×1?
・ドラゴンのようなカミツキガメ:全長25m
・クラーケンのようなカミツキガメ:体長2.5km?
カミツキガメの肉体は従魔の憑依とともに何故か突然変異を起こし、すっかり同化・進化・変化しており、
従魔を倒した後も新たな進化を遂げたその肉体のままである。
白い花びらを食べたせいだとか、以前ここにあったオーパーツのせいだとかいう話もあるが、
根も葉もないくだらない噂だとオーナーは言う。真相はもう誰にもわからない。


●ホテル『バラバラ・ヤ・マジ』
アフリカ某所にあるお金持ちのオーナーが半ば道楽で建てたホテル。
小さなオアシスを見下ろす、少し小高い丘に建つロッジ、隣には小さな施設サファリパーク※。
※境を示す柵があるくらいで、他東西・幅十キロ程度をなんとなく「うちのサファリパーク」と称しているだけに過ぎない。
しかし、『ビッグ5』と呼ばれる大型動物(ライオン、アフリカゾウ、バッファロー、ヒョウ、サイ)を見ることができる。
ロッジに泊まった客に四輪駆動車などに乗って野生生物の観察をする「ゲームドライブ」などのサービスを提供。
また、時々、水を飲みに象が傍を通り過ぎる。
オーナーの言葉はエージェントたちにはリンカーの力で意訳されているが、アフリカの方である。
ちょっと大らかな性格である。

・一流シェフ:リンカーであり、なぜかAGW製のこだわりの特製調理器具を持っていて貸してくれる。

リプレイ

●サファリパークへようこそ
 まだ雨季に入っていないアフリカは広大で美しかった。
 赤い瞳を細めて、彼女は感慨深げに青い大空を仰ぐ。
「アフリカ……全てがなつかしい……」
「でも、お前は異界のアフリカ出身だろう」
 別世界のアフリカコノハズクであったという英雄のコノハ(aa5065hero001)の台詞に、パートナーの内藤恵美(aa5065)は突っ込む。
 コノハと同じように鶏冠井 玉子(aa0798)は熱い眼差しを景色に向ける。
「広大なアフリカの大地だ。目にしたものから順繰りに狩猟していけば良いだろうが……巨大なドラゴン型のそれは大きさを鑑みても、聞き込みの感触からしても放置しておくと野生動物たちに大きな被害が出てしまっているのが、問題だね。
 ぼくはまずこのドラゴンを狙ってみようと考えている」
 鶏冠井に彼女の英雄で無口なハンター、オーロックス(aa0798hero001)は頷く。
「一流シェフとホテル! でも……亀かぁ……。バルトさんの野性的すぎるダディクールより全然ましですけど」
 サイズの大き目のジャージを着たセレティア(aa1695)が遠い目をした。
 婚約者でもあるバルトロメイ(aa1695hero001)はこれからBBQにでも出かけるかのように楽しげだ。
「楽しみだなぁ、亀。亀の捌き方教わっておかねぇとな!」
「あぁ……帰ってからミドリガメ食わされるフラグ……」
 回収したくないフラグである。
「なるべく環境への影響も少なくしたいものですが……私もドラゴンに向かいましょう。それから、カミツキガメは小柄な個体がどれだけいるかわかりませんし、注意……ですね」
 構築の魔女(aa0281hero001)が手を挙げ、そうして、話し合いののちに担当が決まる。
 オーナーから借りた無線機を配りながら、九字原 昂(aa0919)は確認する。
「二人組で各々で従魔を狩猟した後、他の人の援護に行きます。そして、最後に全員でクラーケンです」
「神出鬼没と言っても、従魔である以上、本能に似た反射と反応だけで知性を持たないはず。たくさんの能力者が集まっていれば、濃いライヴスに惹かれて姿を現すでしょう」
 セレティアの発言に昂は同意する。
「あとは、他の動物に被害が出ない様、周囲に動物が居ないタイミングを狙うか、居ない場所まで誘導ですよね。おおよその生息箇所や行動範囲、生態を調べてから行動を開始したいのですが」
 ハイエースに揺られながらモスケールで周囲を調べていた構築の魔女は、昂の『生態』という言葉に思わず反応した。
「……ええと、そういえば依頼はカミツキガメの駆除ではなかったでしたか?」
 外来生物の駆除の依頼を受けて──そういえば、何故、アフリカでドラゴンとの戦いに向かっているのだろう。
「カミツキガメの方が良かった? 代わる?」
「ロー…」
 木霊・C・リュカ(aa0068)の厚意だが、辺是 落児(aa0281)は首を振った。
「お気遣いありがとうございます。依頼内容の変化に少々腑に落ちないものを感じたので思わず声に出してしまいました。
 大丈夫です、予定通り決めた担当のカミツキガメの下へ向かいましょう」
 そう言って、構築の魔女は用意した地図を広げた。そこには彼女の手によってオーナーが従魔の姿を撮影した場所や被害状況が書かれている。──オーナーの大らかな性格のせいでだいぶざっくりとした情報ではあるが。
 モスケールで付近の様子を調べていた紫 征四郎(aa0076)は一旦共鳴を解いた。
「大体こんな感じであるな」
 構築の魔女が用意した周辺地図に征四郎の英雄、ユエリャン・李(aa0076hero002)が書き込む。
「これでおおよその行く先は決まりましたね。可能なら軽度の音や匂いなどで動物たちを避難させましょう」
「威嚇射撃で牽制を手伝う」
 構築の魔女の提案にオリヴィエが協力を申し出ると、ソマリア出身のキリンのワイルドブラッドであるジラーフ(aa5085)が身を乗り出す。
「それなら、ジラーフも協力できるでしょうか。──キリンは普通のライオンにもキリンは勝てる可能性があるんですよ」
「むやみに殺したりケガさせず追い散らしたいです」
 幻獣、麒麟と同じく殺生や争いを好まない麒麟(aa5085hero001)が言葉を添える。
「勿論です。水場や餌場などでしたら、動物たちもそう嫌がらず移動するのではないのでしょうか」
 従魔が現れて分離が不可能になる前にできれば済ませたい。
「とはいえ、もともと水場にひそんでいる可能性もあるんですよね」
 なにしろ、従魔たちは元カメである。



●カミツキガメたち
 しばらくハイエースで走り、周囲の動物を追い払うと、カミツキガメ対応組は一足先に車を降りた。
 オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は広がる景色を油断無く見渡しながら言った。
「解体は任せろ」
「頼もしい」
 オリヴィエの言葉に、きゅんと胸をときめかせる乙女よろしく答えるリュカ。
「だそうです! 出来るだけ優しく仕留めるのですよ、ユエリャン!」
「む。ロケランはやめた方が良いか……?」
 ユエリャンの不穏な台詞を聞くに、征四郎の心配は的を得ていたと言えよう。ロケットランチャーで粉砕しては食べるところまで行けない。
「せーちゃんも意外と物怖じしないよね……」
「腹が減っては戦が出来ぬ、です。征四郎はお肉が食べたいのです」
 カメ肉ではあるが──リュカに対して征四郎はむんと胸を張って言った。
 その時、はっとしたオリヴィエがまばらな木立の向こうを指した。
「ユエ、ユエ、あそこ」
 すわ、従魔かと身構えた一同の目に映ったのは悠々と自然を闊歩するヒョウであった。
「近付いたら駄目だろうか……」
 見つめるオリヴィエの瞳はどこか嬉しそうに輝いている。
「食肉目ネコ科ヒョウ属であるな。やはり美しくそれでいて無駄がないフォルム。美と戦闘力を兼ね備えるあたりは日本刀の如く……まぁ、我輩のオリヴィエも全く負けておらぬがな!」
 我が子自慢を付け加えながら、ユエリャンが感想を述べる。
「ユエリャン、煩いのです。動物が逃げる……!」
「すまん。ところで、こっちがカメか」
 四人はいつの間にか日陰の中に居た。
 振り返ったユエリャンが指したもの。それは小山か岩かという──巨大なカメの甲羅であった。
「これを十メートルと言うのは少々丼勘定過ぎやしないか」
「オーナーは大らかな性格だって言ってたね」
 十メートル(?)の巨大カメを目の前にして四人の胸中には何とも言えない想いが過ったが、甲羅の下から這い出して来た通常サイズのカミツキガメを見て共鳴する。
 共鳴の主導権を握ったオリヴィエが距離を取り、LSR-M110を構える。
「小さな個体優先なのですよ!」
 逆に囮とばかりに距離を詰める征四郎。彼女の言葉にセミオート狙撃銃でカメを狙いながら頷くオリヴィエ。
「傷が入った所から、味が落ちる」
 オリヴィエのトリオ、征四郎の頭を狙った孤月の刃。最小の手数で屠っていく二人。だが、カミツキガメたちは次から次へと湧いて出る。
 やがて──ぞわりとする視線を感じる征四郎。
『おチビちゃん、親亀が気付いたようであるぞ!』
 洞穴のように開いていた暗い穴の部分にいつの間にか巨大なカメの頭が伸びて、征四郎を一飲みにしようと首を伸ばした。
 ガツン!
 鋭い牙の付いた顎が素早い征四郎を捕らえ損ねた。
「オリヴィエ!」
 避けた征四郎が《フラッシュバン》を放つ。光から目を背けるオリヴィエ。
 目をやられたカメが首を引っ込めるその直前にオリヴィエの一撃がその喉元を貫いた。機を逃さず、征四郎も刃を叩き込む。
 ドォン!
 大きな音を立てて力なく地面へ投げ出される首。

「全部、仕留め──ましたね」
 再びモスケールを取り出し、カメの残数を確認する征四郎。
「本当は、泥を抜くのに暫く水の中で飼うと良いらしいんだが……鮮度は大事だ」
 その前で、オリヴィエは宣言通り的確にばらし始めた。



●トリケラトプス
 索敵のために高さ三十メートルほどのバオバブの樹に登ったバルトロメイは共鳴を解き、現われたセレティアを抱き留めた。
「さすがに高いですね。
 ……トリケラトプスは、四足歩行とも後ろ足二本歩行ともいわれていて、どう動くのかわからないんです」
「見たらわかるんだろうが、事前にわからねぇなら仕方ない。ぶっつけ本番だ」
 樹の上からは構築の魔女の地図にあったクラーケンの目撃地点も良く見える。
 バルトロメイたちは事前にそこに寄っていた。

 ジラーフたちとクラーケンが暴れた跡を見ながらバルトロメイが思案する。
『トリケラの戦い方はおそらく馬上槍のような正面突破力特化だ。隙のできるボディは硬い皮革で防御すると効果的だな』
『ジラーフにはこれがありますので大丈夫です』
『そうだな』
 メギンギョルズを示すジラーフに頷くバルトロメイ。

「対策としてはこんなもんか。……それはそうと、だ」
 セレティアがしっかりと自分にしがみ付いているのを確認すると、バルトロメイは空から降臨したがごとく大きく両手を広げた。眼下の広大な大地を見下ろす。
「ここがアフリカ……某TV番組とか某漫画でしか見たことないあの……!」
 読書好きのセレティアの影響で読んだ漫画と同じ場所に、感激する英雄にセレティアも緊張を和らげた。
「──あっ、わぁ! ゾウさんです!」
「ゾウって美味いのかな」
「わぁー、あっちはワニさんです!」
「ワニって美味──」
「わあ、トリケ……」
 灰色の巨大な何かが見えた。
「いけない、こちらに向かっているようです!」
 バオバブの根元に待機していたジラーフの無線機にバルトロメイからの連絡が入る。
『後退してバルトロメイ君たちを待ちましょう』
 共鳴したジラーフは麒麟の言葉に首を振り、そちらに向かって身構えた。
 それはすぐに目の前に現れた。報告通りの全長九メートルにも及ぶ巨大な恐竜、トリケラトプス。
 リズムを取り距離を計ると、地元で覚えたカポエイラを使いトリケラトプスに挑む。二メートル近い引き締まった身体に纏った布は身体の周囲に高密度ライヴスを発生させるメギンギョルズだ。
「ブモオオオオオオオオ!!!」
 身を屈めてダンスのようにステップを踏みゆっくりリズムを刻んだかと思えば、しなやかな全身と長い足を使った鋭い蹴りが繰り出される。
 ズガン!
 その姿はまさに野生動物であるキリンの戦い方、ネッキングを連想させた。
 トリケラトプスの張り出した盾のような頭部が一撃を受け止め、土煙を上げて巨体が後退する。
「怪獣大戦争でしょうか──いやこっちはそんな大きくないですけど!」
 だが、怒りに目を光らせたトリケラトプスが勢い良く前進、ランスのような三本の角が。避けきれなかったジラーフの身体を吹き飛ばした。
「──くっ!」
「待ってろって!」
 バオバブの樹から滑り降りる金髪の美女、共鳴したバルトロメイが巨大剣ベルゼビュートをトリケラトプスの頭上に叩きつける。地響きと共に地面に倒れる恐竜。
「打ち合わせ通り、移動だ! クラーケンが居るかもしれないがそんときゃそんときだ!」
「了解です」
 二人はクラーケンの出現ポイントを目指して走り出した。



●プテラノドン
「この辺りなんだが」
 恵美はタカ科ノスリのワイルドブラッドである。もちろん、空を飛んだりはできないが、何代も続く鷹匠の名門の生まれで猛禽類の気持ちをよく察した。
 しかし、今回は、鶏のようであるとの話ではあるがプテラノドンである。
「無理しない……プテラノドンの気持ちはわからないですよね」
 そもそも元はカメだし、とコノハ。
「それ以前に全長七メートルの鶏型プテラノドンなど遠くからでも見つかりそうだ──ん?」
「!?」
 臆病なアフリカコノハズクを自称するコノハは、びっくりしてコノハズクのように可能な限り身体をを細めた。
「ゾウか──いや」
 ゾウを狙って飛来したソレに気付いて威嚇の姿勢を取るコノハ。手を伸ばす恵美。
 幻想蝶が舞い共鳴した恵美がリンカーの脚力でアカシアの樹に飛びつき、登る。
「なんて言うか……進化とか突然変異とかじゃ言い表せない光景だね」
「完全に色々な学者に喧嘩を売っているな」
 昂の英雄ベルフ(aa0919hero001)が少し呆れたような顔をした。
「まぁ、僕らが言えた義理じゃないけど」
 アカシアの木の下で周囲を探っていたベルフと昂も即座に共鳴を果たした。
『ビック5は助けるんだったな』
「ええ、ですが、鶏型でも飛べるようなので奇襲では仕留められないでしょう──もう、少し距離を」
 《潜伏》のスキルを使用した昂が素早く前進した。
 大空から鶏似のプテラノドンが得物目がけて襲い掛かる。アカシアの樹の下を奔るゾウの背にその爪がかかる前に、蜘蛛の糸のようなライヴスのネット──昂の《女郎蜘蛛》がその翼と身体を絡めとった。
 轟音。
 まさに恐竜と言った叫びを上げて翼を絡めとられた従魔が墜落する。
「あれを捕らえるぞ!」
 潜伏のスキルを使い樹上に潜んでいた恵美が、《毒刃》をかけた猛爪『オルトロス』で猛禽のように従魔の頭上へ襲い掛かる。頭上からの攻撃は奇跡的に効果的な一撃をもたらした。」
 毒爪が深く食い込んだプテラノドンを絶叫を上げた。
 暴れる従魔の大きな翼は、しかし昂を捕らえることはできない。《ジェミニストライク》を使い分身すると翼竜の首を落とすようにその雪村の冷たい刃を走らせた。同時に暑いアフリカに氷晶が舞う。
 軽装で元々依頼前からの傷を負ったままの恵美はその隙に距離を取る。



●ドラゴン
「この辺りならば、他の動物への被害も抑えられますし、景観も損なわれませんね」
 落児と共鳴した構築の魔女は眠るそれを見て感想を述べた。
 鶏冠井はソレに熱い眼差しを向ける。また、彼女と共鳴したオーロックスも、特に好む巨大な敵が相手とあって彼女とは別の理由で張り切っているのがわかった。
「カミツキ自体は美味い食材だが、従魔に憑かれるというのはまた興味深い。巨大ならば味が良いというワケでは無いだろうし、逆に大味過ぎる可能性もある。過度な期待はしない方が良いのだろうが……いやいや興奮するなというのが無理な話だな。
 恐竜型に竜に巨大イカのカミツキガメともなれば、いかなる味、いかなる食感なのか」
 鶏冠井の気持ちは構築の魔女も良くわかる。未知を解き明かすその魅力、探求心は彼女もよく理解している。
「確かめずにはいられない、味わずにはいられない。
 ──さあ、この鶏冠井玉子がすべて捌き、存分に調理し尽そうじゃあないか」
 彼女にとっての愛用の円形包丁、威力を高めたシャムシール「バドル」を静かに構える鶏冠井。
 胡乱気に身体を丸めたドラゴンが閉じた目を開き、その瞬間、構築の魔女の37mmAGC「メルカバ」がドラゴンの翼の付け根を撃ち抜く。
「グァアアア!」
 大口を空けて叫ぶ従魔。
 ──元が亀なのであれば、狙うのは当然首だ。
 近付いた鶏冠井がドラゴンの首元にバドルを叩き込む。吹き出す血、荒々しく振るわれる尾。
「炎も吐くのでしたね……鶏冠井さんは吐きかけられないように挙動には注意を」
「巨大生物相手のハントは危険を恐れて、ちくちく長期戦に持ち込むのが悪手となる場合が多い」
「では、瞬発力を活かせないように足や足元を主軸に狙ってみましょうか」
「頼む、狩った後の肉の美味さ、ということを考えれば、可能な限り手早く倒すことが好ましい!」
 バドルをふるう鶏冠井。『食材』に対する鶏冠井の徹底したこだわりを微笑で受け止めて、脅威の命中力と威力を放つジャックポットは必中の一撃を放つ。



●クラーケン……?
「姿が見えませんね……」
 クラーケンの目撃地帯の近く。《鷹の目》で召喚した鷹を飛ばし、周囲を警戒する征四郎。
『二.五キロメートルのイカとか馬鹿げてるであるしな、戦艦か。相手が何か知ることが先決であろう』
 その鷹の瞳に爆走するトリケラトプスが映る。

「こっちだ!」
 大きく飛んだバルトロメイが着地と同時に片手を軸にして振り返って挑発する。
 元はカメだ。もしかしたら、トリケラトプスとしては遅いのかもしれない。他にトリケラトプスがいるのかは知らないが。
 何度目かの攻撃を避けながら、ジラーフも跳ねる。
 追いかける従魔の角がジラーフを追って突き出されたその瞬間。
 大きな地響きと共に恐竜の身体が地に沈んだ。
 野戦用ザイルで編んだネットに砂土を乗せてカモフラージュした落とし穴。従魔はバルトロメイが作ったそれに嵌ったのだ。土砂を足がかりに辛うじて頭は見えるものの、その体の大半はすっかり地面の下だ。
「逃がさないからな!」
 バルトロメイは暴れる恐竜の頭上からサバイバルブランケットを落とすとその上から止めの一撃を放った。絶叫、沈む従魔の頭を踏みつけて穴から飛び出るバルトロメイ。
『気を付けてください、イカです!』
 突然、無線機から征四郎の声が響き、足下から巨大な触手が周囲の土を崩しながら現れた。いや、すでに周囲には何本も。
「!」
 ジラーフを突き飛ばしたバルトロメイの身体が触手に絡めとられる。
「セレ──バルトロメイ君!」
 ジラーフが蹴りを放つが届かない。
 だが、絡めとられた金髪美女はニヤリと笑みを浮かべた。
「姿を見せるんだな!」
 バルトロメイの腕に嵌ったリュシフェルの銘を与えた白い籠手。その華美なリレーフに隠された発射口からビームが穴の奥へと撃ち込まれた。
 触手はセレティアを空中に放り出すと怒りに震えるその身を地表に晒す。大地は崩れ──はしなかった。
「!?」
「これは……」
 駆け付けたエージェントは唖然とした。
 巨大なイカの触手が十本、地表に転がって怒りに任せてうねっている。
 触手だけが。
「顔が付いていますね」
「……」
「キモ……」
「なにこれ」
 巨大な触手の頭を付けたイカが十体、地表を暴れ回っていた。
 とは言え、触手は一本一本大木程もある。その下の身体が小さくとも厄介な生物には違いない。
 ばしん!
 地面を叩く音に我に返ったエージェントたちはそれぞれ触手(?)を避けながらイカの本体に攻撃を仕掛けた。



●Bon Appetit!
「どれだけ獲物の図体がデカかろうと、バラす部位や刃入れの位置は変わらない」
「そうは言っても、この大きさはなかなか……」
 四苦八苦する昂。それを後目にてきぱきと解体するベルフ。
 体内に従魔化の原因が無いか征四郎が気にしていたが、とてもじゃないが見つかりそうもなかった。

 大自然の美しい夕陽の中、どっさりと山積みにされた元カミツキガメたち。
 鶏冠井、ベルフと昂、そしてオリヴィエによって可食部だけを寄り抜いて持って来たのだがそれでも中々の量だ。
 ちなみに巨大イカの足(?)たちもバルトロメイから見事な活き締めを施された。
「メルヴェイユ! こんな素晴らしい状態で運んでくるなんて思わなかったよ」
 想定外の下処理に感激するシェフ。
「プテラノドンは毒刃の影響がありそうな部分は避けて処分してもらった」
 恵美の頼みに応えたのは昂とベルフだ。
「楽しみにさせていただきます、よろしくお願いいたしますね」
「光栄です、美しい人。貴女の好みを聞かせて頂けたら希望に添えるよう頑張りますよ」
 構築の魔女はシェフの質問に答えるとプールサイドに用意されたテーブルへと向かい、グラスを傾ける落児の隣へと座った。
「折角の機会なのでプロの技術を堪能致しましょう」
 恵美たち、セレティアたちもそれぞれ席に着き、用意された果物と冷たい飲み物に手を付けた。
 ジラーフはアフリカの大地を気持ちよさそうに散歩している。
 鶏冠井と共鳴を解いたオーロックスも、何も語らないが探索と巨大な敵との戦いにハンターとして満足そうであった。

 もちろん、エージェントたちも調理場に向かった。
「いつもの、料理に煩い担当がいないからな」
 調理担当を買って出たオリヴィエは興味津々の友人たちを見回した。ユエリャンに調理をさせたくない、という理由は伏せた。
「我輩もやってみたい」
「今日は待機なのです! 台所を火炎放射で吹き飛ばされては困るのです……!」
 ユエリャンを止める征四郎はオリヴィエの手伝いに専念する。ちなみに、リュカは味見係だ。
 バトルランセットで手際よく解体していくオリヴィエだったが、包丁を握った征四郎も負けてはいない。
「包丁の使い方は教わりました!」
 感心したようなオリヴィエに嬉しそうにピースサインを出す征四郎。
 生姜と酒で臭みを抜いて蜂蜜で柔らかさを、下処理した後はひたすら焼くだけの男の料理である。
 諦めきれずに興味と好奇心の混じった瞳でうろつくユエリャンにリュカが年少組が作った皿を差し出す。
「料理はやっぱり食べる専門がお兄さん大好き~。どう?」
 焼いただけだが下処理をしっかりしたのと、味噌や醤油、カレー粉などで味の変化を付けたそれは予想外に美味であった。リュカがにっこりと笑う。
「爬虫類とか両生類は鳥肉っぽくあっさりしてて美味しいねぇ、お酒欲しい!」
 テーブルに各種酒類は並んでいるが、征四郎たちの調理を見守っているつもりの年長者としてはまだ我慢だ。


「渾身の一皿を提供すべく、全力を尽くそう」
 鶏冠井が素材の前に立つ。
 敢えてフレンチを選んだ彼女を、フランス人のシェフが険しい顔で見つめた。
「君は日本の料理人なのかい? ならcuisine japonaiseを作ればいいんじゃないかな」
 そう言う彼は何故か竜田揚げを作っていた。
 鶏冠井も従魔憑きで変化したカミツキガメを調理するのは初めてだ。
 素材を吟味し、調理法に見当をつけてじっくりワインと香味野菜で煮込む。
「『カミツキガメの赤ワイン煮込み~太古の竜の息吹と共に~』だ」
 完成した時にはシェフは彼女の隣に立っていた。
「一口いいかな?」
 味見をしたシェフが表情を崩す。
 アフリカの大地を意識して南アフリカワインをチョイスして筋張った肉を柔らかくするための煮込んだ。サイズの違った亀たちの肉の味の違いをそれぞれ楽しめるように、けれども、奇を衒わず、真っ向から亀肉の魅力を伝えたい、そのこだわりが伝わった。
「C'est un vrai delice!」


 きらびやかに飾り付けられてテーブルに並んだ料理。
 素材はカミツキガメ、ドラゴン、トリケラトプス、プテラノドン、クラーケン(?)だ。
 ドラゴンの肉は構築の魔女のリクエストで素材の味を生かすようなステーキに仕上げられていた。カミツキガメは醤油で漬け込んだ和風風味の竜田揚げもある。スープ、ジュレ、フリカッセ、コルドンブルー……、サラダや地元の料理を添えらえた。
 そして、メインは鶏冠井のカミツキガメの赤ワイン煮込みだ。
「これはアフリカの料理ですね」
「肉はプテラノドン──でしょうか」
 並んだ料理を見てジラーフがそう言い、麒麟がそれを見つめた。
「想像以上ですね」
「□□……」
「お気に召して頂けたのなら光栄です、美しい人。お嬢様方もお代わりは?」
 落児のグラスにワインを注いだ後、さり気なく構築の魔女の皿に鮮やかな花を挿したシェフは、恵美とコノハに微笑んだ。
「あ、美味しいですね……」
「どれも美味しいが、赤ワインの煮込みは特に絶品だな」
 シェフに対してなぜか身体を細く縮ませたコノハと、気にせず食事を楽しむ恵美。
「カミツキガメ、コラーゲンたっぷりの皮がぷるぷるして美味しいです!」
「白いご飯が欲しい」
 すると、セレティアとバルトロメイの前にライスの乗った皿が提供された。
 肉を待ちわびていた征四郎も目を輝かせる。
「ドラゴンステーキ……! おいしいのです!」
 美味しいものも食べることも好きなユエリャンもグラス片手に楽しみ、そして、ぽつりと呟いた。
「……なるほど。命を頂く、か」


 最後に昂とベルフは網焼きを試みていた。
「可能な限りゲソを丸々使って、世界最長を目指したいですね」
 昂たちのその試みに心から賛同したオーナーの全面協力によってあるだけの網が並べられ、足りない分は杭を刺して距離を取った。
「太い部分から火をつけて、時間差で焼くか」
「一定距離に人を配置しないと焼き具合が見極められませんね」
「動物たちも狙ってくるから」
 待機していたはずのエージェントたちが続々と手伝い始め、やがて醤油の香ばしい匂いが日の沈むアフリカの大地に漂った。
「こんな体験、二度とできないですよね」
 昂が笑う。
 巨大なそれは場所によって味わいが違った。しっかりとした歯ごたえのある部分、サクッと噛めて味が口の中に広がる部分、甘い部分……。
「でもこれ、カメ、なんだよなぁ」
 七味やマヨネーズなどの調味料を選びながら、感慨深げにバルトロメイが呟いた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 全てを最期まで見つめる銀
    ユエリャン・李aa0076hero002
    英雄|28才|?|シャド
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 炎の料理人
    鶏冠井 玉子aa0798
    人間|20才|女性|攻撃
  • 食の守護神
    オーロックスaa0798hero001
    英雄|36才|男性|ドレ

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
    人間|11才|女性|攻撃
  • 過保護な英雄
    バルトロメイaa1695hero001
    英雄|32才|男性|ドレ
  • エージェント
    内藤恵美aa5065
    獣人|18才|女性|攻撃
  • エージェント
    コノハaa5065hero001
    英雄|18才|女性|シャド
  • エージェント
    ジラーフaa5085
    獣人|19才|女性|攻撃
  • エージェント
    麒麟aa5085hero001
    英雄|18才|女性|バト
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