本部

妖刀・千雨の恐怖2

落花生

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~10人
英雄
6人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/05/31 11:36

掲示板

オープニング

 持ち主のライブスを吸い取る、妖刀・千雨。
 その正体は、従魔であった。
 そして、その従魔はリンカーによって退治をされた。

――自分を犠牲にしてまで、誰かを守るセイギでいようとするヤツなんて大っ嫌いです!

 小鳥はその事件以来、正義との共鳴を拒否している。


「従魔の行方が分からなくなっとるんか?」
 つい先日、妖刀・千雨を手に持ったばかりに大変な目にあった正義はH.O.P.Eの職員の話を聞いていた。
「念には念を入れて、千雨と同じような従魔が発生していないかを調査したわけです」
 刀購入後の話などを持ち主などに聞き、職員たちは刀に従魔が憑いていないかを調査した。その調査の結果、四本の刀に従魔が憑いていることが発覚。
 そのうち一本は、すでに従魔がついていたことが確認され、討伐されたという。
 だが、残りの三本については逃げられてしまったとのことであった。
 正義は苦い顔をする。
「戦った場所が奈良県在住のため、車で移動していない限りは奈良県にいると思われます」
「あっ、そやな。千雨は一度持ったら手から離れなくなったんやった。同じ性質やったら、電車やバスには乗れへんな」
 危険物を手に持ったままでは、さすがに公共交通機関は使えないはずだ。
「だから、奈良県からは出ていないと思うのです。奈良県は正義さんの故郷ですし、ぜひ一緒に行っていただきたいのですが」
「小鳥が反抗期やからな」
 正義は、困ったように笑うしかできなかった。
 現在、小鳥は正義との共鳴を拒否している。
 故に、正義は戦うことができない。


『それで、どうしてプライベートで奈良にきちゃうのです!?』
 人気がない神社で、小鳥は叫んだ。
 近所迷惑にもなるほどの音量であったが、幸運なことに近くに民家はない。見渡す限り田んぼや畑が広がっている。
「里帰りや、里帰り。その証拠に、ちゃんと実家の近所にあるお寺さんにも遊びに来とるやろ。一応これでも、重要文化財やで」
 ちょっと写真でも取ろうかー、と正義は呑気な様子でカメラを構えていた。
『奈良県では、シカと重要文化財はさほど珍しくなって言っていたのは正義ですよ』
「事実や事実。それにたまには気分転換せんとな」
『そうやって遊んでれば、小鳥が共鳴してくれると思ってるのですか』
 小鳥の一言に、正義はぎくりとする。
『正義のご機嫌取りは幼稚なのです。そんなんだから、恋人もなにもできないのです』
「……それ、あんま関係ないやろ」
『でも、正義はイイヤツなのです』
 小鳥は、神社に敷いてある玉砂利を力いっぱい蹴り上げる。
『イイヤツが、自分を犠牲にしてまで他人を守るなんてイヤなのです』
 そのとき、子供たちの騒がしい声が境内に響き渡った。寺の階段を上がってやってきたのは、子供たちと保育士であった。
「あ、幼稚園の遠足やろか。ここ観光地でもないから、近所の人はよく散歩にくるんや」
 場所を変えるのです、と小鳥は言おうとした。
 だが、その言葉は紡がれなかった。
『――正義、危ないのです!!』


 妖刀討伐のために奈良に集められたリンカーたちの耳に新たな情報が入る。彼らは妖刀が出現したと報告を受けて、今まさに現場へ向かうところであった。
「妖刀は、別の妖刀の被害者を好んで襲う傾向があるようです」
 H.O.P.Eの職員は、すでに討伐された妖刀の持ち主が何者かに殺された知らせが入ったと告げる。死体の様子から言って、刀を持った従魔に襲われたようである。
「無関係な従魔に襲われたとは考えにくく、逃げられた妖刀に襲われたと考えるのが妥当でしょう。もっとも、亡くなった方以外の被害者・正義さんは別の地方にいらっしゃいますから、彼が襲われる可能性はほぼないと言えるでしょう」
 どうして狙われるんだろう、とリンカーの一人が呟く。
「完全な予想なのですが……妖刀は持ち主のライブスを吸いますから、今の持ち主が弱ってくると新しい持ち主を探すようになるのかもしれません。破壊された千雨は他の従魔の呼ぶ能力を持っていましたし、もしかしたら私たちが分からない連絡方法で『この人は良いライブスを持ってるよー』と連絡を取り合っている可能性もあります」
 つまり、刀にカモと判断されてしまうらしい。
「気を付けてください。千雨の時とは違い、今回の妖刀は長く持ち主に所有されています。はっきりいって、どのような変化が起きているのか予測がつきません」


「ボクのことを庇うなんて、何考えてるんや!」
『……少しは、小鳥の気持ちが分かったですか!』
 正義と小鳥は共鳴していた。
 子供たちを逃がすためにも身を守るためにも、意地を張っている場合ではなかったのだ。
「ともかく、十体の従魔なんて一人では相手できへんで。子供たちを狙わずに、こっち狙ってくれるのは嬉しい誤算やけど」
『正義、くるですっ!!』
 しもうた!
 と正義は声を上げた。
 刀は正義の脇腹に突き刺さったが、血は一滴も流れることはなかった。

解説

・妖刀の破壊

寺(昼)……木々が多く、身を隠すことができる。古い木製で、傷つきやすい。玉砂利が敷き詰められているために足音が良く響く。

妖刀(三体出現)――持ち主のライブスを吸収する従魔つきの刀であり、戦闘が長引くと持ち主の生命が危険。相手の攻撃を受けることで、自分の強度を上げる。妖刀を持っているのはリンカーであり、刀の亡霊より肉体面は丈夫。撃破されるまで持ち主の手からは離れない。
吸収の斬撃……刀身を突き立てることで、自分のライブスを相手に流して操る。操っている間も相手は意識がなくなるが、攻撃力が上がっている。
幻の斬撃……目にもとまらぬ素早い斬撃。正面から攻撃してくるように見えるが、それは幻し。本来の攻撃は、横からやってくる。
止めの斬撃……必殺の一撃。大振りな攻撃であるが、攻撃力が際立って高い。技の発動後は数秒間の隙ができる。
偽りの斬撃……止めの斬撃を放ったふりをして、隙ができたと装う技。近寄ってきた敵に向かって、素早い斬撃を放つ。
囮の斬撃――一体が囮になり、相手が近寄ってきたところで他の刀が攻撃をしかける。

刀の亡霊(七体出現)――吸収の斬撃によって操られている人々。日本刀を持っているため、妖刀との区別がつかない。吸収の斬撃以外の妖刀の技が使用可能。一般人であるが身体能力がリンカー並みに上げられている。長期戦はライブスが枯渇する可能性があるため危険である。妖刀を全て破壊すると操られている人々は元に戻る。数に正義や妖刀は含まれていない.


正義……吸収の斬撃によって、操られている。正義は敵のライブスに抵抗することができたため、正義が手に持っている普通の刀を破壊するだけで元に戻る。

小鳥……正義が元に戻ると彼と共鳴することを拒否し、全員に逃げることを提案する。説得によっては、正義と再び共鳴することを了承する。

園児と保育士……すでに正義が囮に逃がし、寺から離れてもらっている。

リプレイ

「助けてください!」
 園児をつれて寺の階段を下りてきた保育士が、リンカーたちに助けを求める。
「上のお寺さんに……刀をもった人たちがっ!!」

●二人でいれば
 時が止まってしまったかのような寺には、異様な一団がそろっていた。皆が手に刀を持ち、会話をするわけでもなくたたずんでいる。ここがもしもメジャーな観光スポットであれば、誰かが悲鳴をあげたであろう。だが、この場所ではそんな人間は訪れない。刀を持った人々は、階段を降りようとしていた。
 ――もっとだ。
 ――もっと仲間を増やさなければ。
『こんなことになるのが分かっていたから、共鳴なんてしたくなかったのです……』
 小鳥が人知れず唇を噛んだ、その時。
 静かな寺に、声が響きわたった。
『妖刀ね……。使えそうならモノにしてしまうのもいいかしら』
 マイヤ サーア(aa1445hero001)の言葉に、迫間 央(aa1445)は苦笑いする。
「……使えそうなら、な」
 今回の刀は、すべて最近作られた代物だと言う。刀は時代が古ければ古いほど名刀だという説もあるが、それが当てはまるのならば今回の刀はあまり良いものではなさそうである。なにより、従魔が武器とした刀を使う気はなかったが。
「今度は三体か」
『あの人も運が良いのか悪いのか』
 アリス(aa1651)とAlice(aa1651hero001)は頷き合って、共鳴を果たす。
 似たような敵とは前回も戦っているのだ。あまり戦いを長引かせたくはないし、長引かせてやるつもりもない。
 刀を持った一人が、リンカーたちに向かって走ってくる。大きく振りかぶった一撃を受け止めたのは、リオン クロフォード(aa3237hero001)であった。
『仲間を攻撃したいなら、まず俺達を倒せよ!』
「妖刀なんかに誰も傷つけさせないんだから!」
 リフレックスはとある条件下で相手に呪いのダメージを付与する盾だ。これにより、藤咲 仁菜(aa3237)たちは守りながら戦うことができる。
「おもしろい。たかが刀が、戦車に勝てるかどうかを見ていてやる」
『まずは、操られているリンカーの解放だな』
 ソーニャ・デグチャレフ(aa4829)はにやにやしつつ、ラストシルバーバタリオン(aa4829hero002)の言葉を聞いていた。
「愚神か従魔がいるのは間違いないけど、他は一般人の可能性があるね。ライヴスゴーグルで流れが見えればわかる? それにしても一時期は収束してた気がするんだけど、またエージェントが愚神に操られる事件増えてない?」
 餅 望月(aa0843)の言葉に百薬(aa0843hero001)は、『流行が一周したね』と答えてみた。従魔が流行に左右されるとは思えないが。
「敵を操って駒を増やすか……」
『抵抗は出来るようですが、正義さんの様子を見ると操られるのは避けられないようですわ』
 ヴァルトラウテ(aa0090hero001)の言葉を聞きながら、赤城 龍哉(aa0090)は敵を見やる。アレに操られるのは、勘弁してもらいたい。
「とりあえず、技を喰らわないのが一番ってことか――いくぜ!」
 まずは正義の解放だ、と龍哉は正義の懐に入ろうとする。
 望月は、そんな龍哉を援護するためにパニッシュメントを使用する。この技があれば、刀が従魔か普通の刀かを見極めることができるはずだ。
「ダメージがなさそうってことは、正義さんの刀は普通の刀なのかな?」
 考えながら望月は、違う技もためしてみようかと百薬に尋ねてみる。たとえ誤射しても、正義のことだから許してはくれるだろう。
『セイギの心を持つ、正義って……みんなのゲンキをちょっとずつ集めたボールみたいなものだね』
「まさかあの国民的アニメも武侠にカウントしてるの?」
 百薬の言葉に望月が驚いていると、正義が悲鳴を上げた。
「悠長におしゃべりしとる暇はないで!!」
 もうちょっと真面目にやってとばかりに、正義がツッコム。
 刀に操られていても、関西人のツッコミ心は健在らしい。
「意識まで操られてる訳じゃなかったか。やるね、正義さん」
 正義のふとことに入った龍哉は、刀を握っていた手を抑える。そして、刀身に手刀を叩きこんだ。
 ――これで、きまれ!!
 龍哉が出せる渾身の力は叩き込んだ。
 仲間たちは他の敵にまわってもらっており、これ以上の援護は期待できない。だからこそ、この一撃で正義を元に戻して共に戦ってほしい。
 刀に罅が入る。
 かきーん、と刀が折れて地面に突き刺さった。
「おっ……おおきに」
「礼は後だ。今は、討伐を手伝ってくれ」
「あたしたちだけじゃ、ちょっと数がこころもとないんだよね」
 望月も仲間たちを加勢しようと武器を構える。
 今回の敵は、正義を含めなければ十体。数だけでいうならば、リンカーたちが不利である。
『逃げるです』
 小鳥が、共鳴を解く。
『こんなところで戦って、ぼろぼろになる必要なんてないです! みんなで、逃げるのです』
 パートナーに戦って傷ついてほしくない――小鳥はそう願ってリンカーたちに逃げることを提案した。そうでなければ、守れないと思ったからだった。
 戦いながら、そんな小鳥に反論するものがいた。
 迫間 央であった。
「逃げてどうする? 誰かがなんとかしてくれるのを待つのか? その"誰か"に押し付けて逃げる間に、逃した子供達が斬られれば、そいつの自己犠牲は無駄になるな? 俺は、俺の戦う理由を他者に背負わせはしない」
 繚乱を使用し、敵を攪乱しながらも央は呟く。
 その言葉は、まるで決意を思い出しているかのようであった。
「俺が戦うのは、俺自身の都合の為だ」
 舞い散る花弁にまぎれるように、央は姿を消す。
 潜伏を使用したのである。
「一生逃げ続けるのか? 思い出せ、たとえその命尽きようともこの場にて愚神の侵略の防壁たるが我らリンカーのさだめであることを」
 ソーニャは、冷ややかに切り捨てる。
 彼女の祖国は愚神の攻撃によって飲まれ、それを取り戻すために、学び、戦っている。
「貴公の言葉はリンカーを慮っての事ではあるが、義務を放棄しては勝は拾えぬが道理だ」
『……逃げても追ってくる場合もあるしな』
 ラストシルバーバタリオンは敵に攻撃しようとするが、操られている一般人と従魔の区別がつかずに迷う。刀を持っているせいもあって、彼らは一件判別がつかないのである。
「セーフティガスは効かないみたいだね」
『まぁ、操られているみたいだから寝ていようが寝てないだろうが関係ないんだろうな。見分けはつくようなったけど』
 仁菜とリオンは、眠りながらも戦う相手にも盾を使用する。
『それにしても、自分を犠牲にね……。どっかで聞いたことがあるよなー、ニーナ?』
 にこやかな顔のなかに、リオンは怒りをにじませていた。どこかの誰かさんが、同じようなことをやっていたような気がする。割と常習犯なような気もする。
「うぅ……」
 仁菜は、反論できない。
 リオンが怒ることも心配してくれることも、分かっているのだ。それでも、咄嗟の天秤は彼の怒りや心配よりも仲間の安否のほうに傾いてしまう。
『――でも、それ意味ないよ』
 リオンが、小さく呟く。
『たとえ俺達が共鳴しなくても、ニーナも正義さんも一人で突っ込んでくから。今回奈良に正義さんがいる事からも分かるだろ?』
 ずっとリオンは、仁菜を見てきた。
 だから、彼女の行動を言葉で止められないことは知っている。
『真っ先に自分を切り捨てちゃうなら、何も切り捨てず守れるくらい強くなるしかないよ。俺達が支えてさ。相棒くらい支えられないと英雄として情けないからな!』
 むろん、後でちゃんと怒るけど――とリオンは心のなかでしっかり付け足した。
「それに……どうせ撤退しても良田さん……はまた狙われる。何度も繰り返すなんて面倒は御免だよ」
 アルスペンタクルを挟み込んだアルスマギカを片手に、アリスは後方支援に徹する。今回は仲間が少ないのだから、確実に勝ちを掴みとりたいところである。
『強度を上げるのは知ってるよ、それじゃあこっちは下げればいい。そうだよね、アリス』
「そうだね、Alice。簡単なことだよね」
 逃がさないよ、とアリスは呟く。
「妖刀の傾向からして良田さん……を優先的に狙いそうな気がするかな」
『もしそうなら、こちらも狙いやすいけど……』
 二人のアリスの言葉に、小鳥ははっとする。
 ここで逃げても刀が追ってくると言うのならば、小鳥の行動は完全にからまわったものとなってしまう。
「正義さんとの誓約に反しないなら逃げるのも良い。ただ、この人が本当にそれを望むかは汲んだ方が良いんじゃねぇか?」
 龍哉の言葉に、小鳥は正義の顔を見る。
 聞くまでもない。
 正義は戦いを望んでいる。だが、イイ奴を見殺しにもしたくない。
『……私の気持ちは央と同じ。だから、私達は共に在る。あなたも――同じなのよね』
 マイヤは央の都合の中に、自分も入っている事を知っている。
 そして、小鳥も同じなのではないかと思う。
『共鳴していなくともパートナーを助けた、あなたなら』
「小鳥」
 正義は、小鳥に声をかけた。
「小鳥がボクを助けたように、ボクも人を助けたいんや。だから、手を貸してや」
 妖刀が、小鳥と正義に向かってくる。
 だが、央はその間に入った。
「……少しは使えるか。いいだろう、お前の土俵で相手をしてやる」
 天叢雲剣で、央は一撃を食らわせる。
 ふっ、と央は忍び笑った。
「斬りたい物を斬り、そうでないものは斬らないのが名刀に見合った持ち手というモノ。刀も持ち手もナマクラだったようだな」
『量産品だからな』
 ラストシルバーバタリオンは手甲で攻撃を受け流し、手首を返して刀身を掴む。これで、もう逃げることはできない。
「思いっきり、やってしまえ」
 ソーニャの言葉通り、ラストシルバーバタリオンの刀を持っていた人間に蹴りあげる。巨体に蹴り上げられたことによって、人間は地面に叩きつけられた。
「小鳥ちゃんは、正義さんとみんなを連れて避難してくれて大丈夫です。あとは任せてください。でも……一緒に戦ってくれるなら、その方がありがたいです」
 望月と百薬は、一般人を誘導するためにその場から離れるつもりだった。
 セーフティガスは使い切り、眠りながらも動く者たちには印もつけた。
 二人にできることは、精一杯やったのだ。
「そういえば奈良って、アンゼルムたちの出没したところだっけ? 土地勘があると色々と便利かもね」
 思い出したように望月は、呟いた。今回と言い、随分と難儀な土地だなぁという感想を抱いてしまった。
『トリブヌス級は地域の特産品じゃないと思うよ』
「それもそうか。ええっと……奈良の特産品は、土偶とかかな。あと、シカとか」
「いっぱい出るしいるけど、どれも名産品ちゃうわ!!」
 元奈良県民として、正義は力の限りツッコンだ。
「確か前回の依頼じゃダメージを喰らうと段々頑丈になるんだっけか」
 龍哉は、従魔にハングドマンを使用して妖刀の動きを止める。
『であれば話はシンプルですわね』
「要は一撃でぶち壊せって事だろ」
 一気呵成を叩きこむ。
 操られている相手も一般人ではなくて、リンカーだ。これぐらいの攻撃には耐えきれるであろう。
「恐らく攻撃を受ける度に強度が上がっていくんだろうね、極力当てる回数は少なくしたいかな」
 アリスもウィザードセンスを使用する。
『準備はいい?』
「もちろん」
 Aliceの言葉に頷いたアリスは、ブルームフレアを使用して龍哉の後ろにいた妖刀に攻撃を加えた。
「刀の亡霊は、小官たちに任せていただきたい!」
『我々は、一人たりとも逃がさない』
 ラストシルバーバタリオンは、アイシクルチェーンをもってしてリオンの側にいた刀の亡霊を一体惹きつけた。そして、ラストシルバーバタリオンは相手にひじ打ちを食らわせた。その衝撃で落した刀をラストシルバーバタリオンは踏みつける。武器を折ってしまえば、操られた一般人など恐れることはない。
『おおっと。やっぱり、こっちに来たね』
 リオンは盾を構えながら、正義と小鳥に向かってきた敵から二人を守る。
 そして、ポールスターアックスに武器を持ち替えた。
『油断大敵!』
 ポールスターアックスの光でひるんでいる刀の亡霊の武器に向かって、リオンは武器を振り下ろす。思った通り、相手はリオンを盾しか使わない人間だと油断していたようだ。だが、刀の亡霊はもう一体リオンに近づいていた。
『リオン、一体すり抜けたよ!!』
 仁菜の言葉で、リオンは振り向きざまに刀の亡霊に攻撃しようとした。だが、振りかぶった時、リオンは攻撃をためらった。この位置では、刀の亡霊の武器だけを破壊できない。相手は一般人なのに、傷つけてしまう。リオンは、それをためらったのだ。
 刀の亡霊の側には、いまだに共鳴していない正義と小鳥がいた。
 アリスと央は気がついたようであったが、二人では間に合わない。
『央、私たちが助けに!』
 マイヤは、間に合うかもしれないと央に語りかけた。
 だが、央はその言葉通りには動かなかった。彼は自分の周りにいる敵を狩り、正義たちの方へは足を向けない。
「大丈夫だ」
 央は、自分の近くにいた刀の亡霊の武器を振り払う。
「もう、あいつらは覚悟を決めたようだ」
 マイヤが再び正義たちを見たとき、彼らは共鳴していた。
 共鳴し、自らに向かってきていた刀の亡霊の武器をへし折っていた。
『……逃げる選択をしてほしかったでしょうに』
 ヴァルトラウテは、小さく呟いた。
 それは、小鳥に対する同情のような言葉であった。
「男が決めたことを曲げられるかよ!」
 妖刀の必殺の一撃を回避しながら、龍哉は叫ぶ。ありえないことだが、ヴァルトラウテが戦わないでと自分に懇願しても龍哉は戦いを選択するであろう。
「それにしても趣味の悪い仕掛けをしやがるな」
 呟く、龍哉。
 その声を聴きながら、ヴァルトラウテは言う。
『あなたは、そうですわね』
 たとえ、たった一人になろうとも龍哉は戦うことを止めないであろう。
「小官も戦い続けよう! 祖国を取り戻すまで!!」
 ソーニャが、雄叫びのように叫んだ。
「俺も戦い続ける……趣味でもあるからな」
 央の言葉に、マイヤはくすりと笑う。
「わたしも戦うよ。それが仕事だし、それに今度こそ」
 アリスの周囲で、炎が燃える。
 そして、その隣では仁菜が盾を構えていた。
「私も、逃げない。皆を守りたいから」
「うーん、あたしたちはこういうキャラじゃないと思うんだけど」
 望月は若干悩みながらも、共鳴している百薬のことを思った。
「天使の力が必要とされているうちは、頑張ろうかな」
 リンカーたちの言葉を聞いた小鳥は、笑った。
 それは、どこか悔しげな微笑であった。
『ああ、まったく。リンカーっていうのは、馬鹿ばっかりなんですかねぇ』
『それに力を貸しちゃう、英雄たちも馬鹿なのさ』
 どこか楽しげに、リオンは呟いた。
 戦いの最中では見られない表情に、仁菜は目を丸くする。
「さぁ、もうひと踏ん張りだね。アリス」
『そうだね、Alice。すぐに終わらせよう』
 英雄とリンカーの思いと力が、重なりあう。
 だからもう、何も怖がるべきことはない。
「力を貸してもらうで、小鳥」
『あんまり無理するようなら、次は絶交ですからね』
 正義と小鳥は、戦うために駆け出す。
 ――戦うために。
 ――助け合うために。
「二人なら、何が来ても大丈夫やろ」
 それを信じて。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 紅の炎
    アリスaa1651
    人間|14才|女性|攻撃
  • 双極『黒紅』
    Aliceaa1651hero001
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 守護する“盾”
    リオン クロフォードaa3237hero001
    英雄|14才|男性|バト
  • 我らが守るべき誓い
    ソーニャ・デグチャレフaa4829
    獣人|13才|女性|攻撃
  • 我らが守るべき誓い
    ラストシルバーバタリオンaa4829hero002
    英雄|27才|?|ブレ
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