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最終話企画室
最終発言2017/04/06 21:37:34 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/04/04 18:57:15
オープニング
この【AP】シナリオは「IFシナリオ」です。
IF世界を舞台としており、リンクブレイブの世界観とは関係ありません。
シナリオの内容は世界観に一切影響を与えませんのでご注意ください。
●ぜんかいまでのあらすじ
平和だった地球に突如現れたグシン軍、そしてその王レギヲン。
彼らは地球に豊富にある生命の力ライヴスを我が物にせんと地球侵攻を始めた。
絶望に包まれる地球……だが、希望は失われなかった!
グシン軍から地球を守ろうと、さまざまな異世界から地球に現れたヒーローたち。
そして、異世界のヒーローと共に地球のヒーローたちが対グシン軍正義の組織『ホープ』を結成したのだ!
ホープのヒーローたちの活躍により徐々に劣勢になるグシン軍────そう思ったその時!
ついに目覚めたグシン軍の王、レギヲンが地球のライヴスを吸収し始めたのだ!
巨大化したレギヲンとレギヲンを護るべく立ちはだかる幹部たち。
レギヲンが地球のライヴスを吸収しつくす前にレギヲンを倒さなければならない!
地球滅亡まであと3時間!
●シュメッターリングの奇跡
「なんだ」
ミュシャ・ラインハルト(az0004)は目の前に現れた青年を見て眉を顰めた。
「エルナー、まだ生きていたのか」
エルナー・ノヴァ(az0004hero001)は傷を負った右腕を押さえながらミュシャの前に立ちはだかる。
「君を止めるのが、師匠である僕の役目だからね……」
「あたしはグシンとしてレギヲン様と共にこの地球を滅ぼす。その邪魔をするなら……」
ミュシャの姿がぐにゃりと歪み、背中から無数の闇色の糸が彼女を包む。
同時にエルナーは幻想蝶を掲げ、仮面の戦士へと姿を変えた。
「手負いのお前に負けるはずがない……!」
蜘蛛の怪人体に変化したミュシャが鋭い爪の付いた腕を振るう!
「なっ!?」
その腕を避けもせずに自らの胸に刺したエルナーが一歩前に進み、ミュシャの胸を剣で貫く。
脂汗を滴らせながら、さらに前進するエルナーから逃れようとミュシャはもがいた。
「勇者としての役目だからね……!」
発光したエルナーの剣が爆発する!
ミュシャの身体は岩肌に叩きつけられ、エルナーはその場に崩れ落ちた。
「…………灰墨さん、シュメッターリングを奪い返したよ」
ミュシャの身体から剥ぎ取った光の指輪を握りしめ、エルナーはホープ本部へと通信をいれた。
『ご苦労だったな。今、そっちへヒーローを向かわせる』
文官らしい灰墨 信義(az0055)の悠長な言葉にエルナーは口の端から血を滴らせながらため息を漏らし────。
「……なるべく早めに、頼みたいかな……」
光が弾けて変身が解けたエルナーはミュシャの姿が消えたことに気付いて顔を歪めた。
●レギヲン登場! 地球最後の日
『申し訳ありません……一度は手にしたのですが……』
「あら……本当に使えない子ね。最後だって言うから任せてあげたのに」
息も絶え絶えのミュシャからの思念を受けたライラ・セイデリア(az0055hero001)はローブを翻した。すると、女性の顔が黒い滑らかな珠へと変わる。
「まあ、いいわ……レギヲン様はもう復活されたし、地球のライヴスを完全に頂くまであと少し。もうチェックメイトよ」
念話を切ると、彼女は周りに並ぶ魔導騎士たちを見渡した。
「さあ、雑魚を片付けましょう。レギヲン様のお食事の最中に小虫が飛んだら失礼だわ」
紫色の硝子の壁に囲まれたその向こうに空まで届くほどの巨大な怪人が居た。
胸には目を閉じた三つの顔が横に並んでおり、騎士のような鎧を纏っている。
────そして。
それが大地に突き刺したのは、地球のライヴスをすべて吸収する剣”アシミレイションブレード”。
銅色のそれが銀に変わり、そして金に輝く時、地球は終わる────。
解説
目的:最終回! 地球を救え!
●登場人物&アイテム
・グシン軍団:色んな世界から召喚された怪人でライヴスが生命源
ライヴス目当てにあちこちの星を破壊しており、ライヴスが無い時はレギヲンから分け与えてもらっている。
イメージライヴス体という幽霊のような姿でこの世界に現われ生命と契約、実体化する。
怪人体のモチーフは様々。幹部の役職は「魔導騎士」。
普段は契約者の姿をしているが性格はグシンのもの。まれにグシンを倒すと契約者を取り戻すことができる。
・レギヲン:攻撃無効のバリアを張ったボスキャラ「王」。
巨大化して剣で地球のライヴスを吸収している。
・ヒーロー組織ホープ:地球人と異世界のヒーローたちが作った正義の組織
グシン軍の暗躍により現在上層部は封印されてピンチ。
・灰墨将校:あまり性格の良くない情報部の偉い人。封印からたまたま逃れた。
・ロボット、武器、必殺技:ヒーローが自分の世界から各自持参
・シュメッターリング:ライヴスの塊でレギヲンのバリアを破る蝶の形をした魔法の指輪。
レギヲンの前で数分掲げればバリアを壊せるが、その間他の幹部たちが襲ってくる。
ヒーロー(ホープ)、敵側(グシン軍)どちらでも構いませんし能力者と英雄がわかれてもOKです。
ヒーロー側の司令官でもOKです。
ヒーローも敵も異世界から召喚されたので、様々なヒーローが居ても問題ありません。
裏ボス的な役の方がご希望の方は相談された方がいいと思いますが、
複数居た場合、こちらで対処します。
配役が足りない場合、こちらで当MS絡みのNPCを投入します。
NG行為がありましたら、必ず明記してください。
そのままの台詞や名称など社会のルールに引っかかるものは禁止です。
リプレイ
●序
「このままライヴスが無くなれば、この星の自然もすべて消えてしまいます……っ」
黒髪の少女が目の前の青年に語り掛ける。
黒衣の青年は無言で眼下に広がる豊かな緑を、そして森を静かな瞳で眺めた。
「この星の明日の為に、お願い……兄さん!」
次元航行船ブルーローズは引続き巨大化したレギヲンへ砲撃を打ち込む。
「バリアを破るのは無理そうですね」
操縦兼航法担当のガルド・アレッゾ(晴海 嘉久也(aa0780))の言葉に相棒の賞金稼ぎレオーラ・アルロス(エスティア ヘレスティス(aa0780hero001))が小さく唸る。
「多元宇宙一の賞金首を前にして手も足も出ないなんて、そんな……」
その時、灰墨将校からの通信がブルーローズへ飛び込む。
「待たせたな。シュメッターリングを奪い返した」
「良いタイミングです。では、サルベージしてもらった恩義、今、返しますね」
「こっちとしてはありがたいが、ホープは君らに随分高く恩を売ったもんだ。エンジントラブルは起こすもんじゃないな」
「懸賞金はこちらで頂いても構わないですよね」
「地球人には換金手段すらわからないからな。どうぞ、ご自由に」
「お墨付きを頂きましたね」
「ええ、行きましょう、ガルド君」
声は楽しげではあったが、二人の表情は真剣そのものであった。
次元航行船ブルーローズは砲撃の目標を周囲の怪人たちに切り替えた。
生贄たちを閉じ込めた牢の中で魔導騎士ライラは微笑んだ。
「ごめんなさい……私は母星を見捨てることはできません」
月鏡 由利菜(aa0873)──いや、ユグドラシル星系の惑星ミッドガルド第一王女『エムブラ』としての友人の言葉に、ウィリディス(aa0873hero002)は唇を噛む。
「いい子ね。きっと星の人たちも喜ぶでしょうね」
ライラは由利菜たちをグシン化すべく、ミッドガルドの破壊をちらつかせ彼女を篭絡したのだ。
「リディス」
「駄目よ。聖女イピゲネイアになるためにはそこの娘も必要だということは知っているの」
躊躇う由利菜の手をウィリディスは握った。
「大丈夫だよ。あたしはずっと一緒だから」
エムブラが地球で最初に会い、すぐに受け入れてくれた人間。そして、『由利菜』のためにホープでヒーローとして戦う道を選んだ親友。
苦しい想いを抱えながらも共鳴をする由利菜。消えた彼女の代わりに天衣アンゲルス・ストラがリディスの身体を包み、二人は聖女イピゲネイアへと変じる。
「ようこそ。グシン軍へ」
ライラの両手から黒いライヴスが放たれる。苦悶の表情を浮かべるイピゲネイアだったが。
「えっ!?」
ライラと由利菜の驚きの声が重なった。
ウィリディスが持つ緑色の守護石が強い光を放つ。
イピゲネイアの身体から弾き出されて床を転がる由利菜。
「あたしはただの女子高生……死んでも世界に影響は与えないよ。でも、ユリナは……」
「いいえ、何も違わないわ!」
乱れた髪の下から親友へ叫ぶ由利菜。しかし、ライラは冷たい瞳で由利菜を見ると小さく舌打ちして牢獄を出た。……イピゲネイアとなったウィリディスだけを連れて。
ショックのあまり崩れ落ちた由利菜だったが、すぐに顔を上げて強い眼差しで高窓を見上げた。
●契約と洗脳
重傷を負ったエルナーからシュメッターリングを受け取った寺須 鎧(aa4956)、マーズ(aa4956hero001)、リリィ(aa4924)はレギヲンを倒すべく森を駆ける。
「オイ、鎧?」
突然足を止めた鎧を相棒のマーズが訝しむ。
道の先で一人の男が巨大なレギヲンに向かって頭を垂れていた。
「先、生……?」
「……世良 霧人の生徒ですか」
振り返ったのは彼の探す恩師、世良 霧人(aa3803)ではなかった。けれども、同時に彼がずっと探していた男。
『自分が契約するから、その子は返してくれ!』
恩師はそう言った。
まだ力の無かった鎧は同級生たちに抱え込まれるようにしてその場から避難した。
抵抗しながら彼が必死で目に焼き付けたのは、ただ笑って自分たちを見送る恩師の姿と、燕尾服を着たイメージライヴス体の男。
「ようやく会えたな、クロード……!」
吼えるように叫ぶ鎧。
構えるリリィを手で制して、鎧はマーズと共に前に進み出た。
あの時から己の無力さを悔しさを抱え、強さを求めながら鎧は生きてきた。
──グシン軍幹部、魔導騎士クロード(aa3803hero001)。契約を使い霧人の身体を使って実体化した怪人。
「俺は……俺が先生を連れ帰る! 行くぞマーズ!」
──共鳴チェンジ!
鎧が幻想蝶のブレスレットを掲げると、火星のライヴスが彼を包み赤き戦士へと変貌させる!
「猛き情熱の星、マーズレッド! 俺の炎は、止められないぜ!!」
駆け出すマーズレッド。果敢に攻撃を仕掛けるが、クロードはそれを軽くいなす。
「学校へ帰ろう、先生!」
拳を突き出し叫ぶ鎧。しかし、彼の一撃はクロードに届くことはなかった。
地面を叩く鋭い音と共に鎧の攻撃は弾かれた。同時に赤い花びらが舞う。
「カノン……ねーさま……」
目を見開くリリィ。
鞭が鳴るたびに赤い薔薇の花弁が舞い散り、その中に立つウィップを構えた妖艶な美女。……それは姿を消していたホープの戦士、カノン(aa4924hero001)だった。
「なん……で……」
パートナーであるカノンの身をずっと案じていたリリィであったが、無事な姿に安堵すると同時に敵対行動を取る彼女に激しく動揺した。
「どうぞ、レギヲン様の元へ」
カノンの言葉にクロードは頷き姿を消す。追おうとする鎧をふたたびカノンの鞭が阻む。
「もうすぐ鎧君たちが来ます」
砲撃を続けるブルーローズ船内。曖昧な返事をするガルドにレオーラが困ったように笑いかけた。
「ジュピター・ブレスを使った初代は力に耐え切れず消えたのですよ」
彼らを地球へと導いてくれたブレス。それをガルドは強く握りしめた。
しなやかな手も身体も傷だらけにして、牢を脱出した由利菜は息を乱しながら森を駆ける。
だが、そんな彼女の目に同じホープのヒーローであるはずのカノンと鎧の戦う姿が飛び込む。
「邪魔をするなら例えカノンでも容赦しないぜ!」
「あなたの力であたしを止められると思っているの?」
信じられない光景に息を飲んだ由利菜だったが、すぐにあることに思い当る。
──まさか……彼も、私やリディスと同じように……!
「カノンねーさま!」
「慣れ無しいわね、誰なの?」
カノンの冷ややかな眼差しを受けて立ちすくむリリィ。
そこへ由利菜が飛び込んで来た。
「落ち着いてください、ライラの洗脳です! リディスも……っ」
「由利菜!」
後ろへ飛びカノンから距離を取る鎧、そして、逆に前へと進み出るリリィ。
「リリィさん……?」
決意を固めたリリィは小さな体の倍以上もある大剣を呼び出した。
「カノン……ねーさま…………リリィは貴女を……きっと元に戻しますの……っ!」
細かな装飾が施された美しい大剣が木漏れ日を弾いて光る。
薔薇の鞭をうならせてカノンはリリィへの距離を詰める。だが、その一撃を大剣は弾く。
「さぁ……皆さまはこの隙に先へ……!」
リリィは、自分の姿をただ映すカノンの瞳から目を反らずに挑み続けた。
何か言おうとした鎧と由利菜だったが、すぐに口を引き結ぶ。共鳴を行うパートナーをリリィと同じく持つ彼らは、少女の気持ちが痛いほどわかった。
「リリィは……リリィは……きっとカノンねーさまと一緒に、皆さまの許へ参りますわ……」
頷き、走り出したヒーローたちを妨害しようとするカノン。だが、リリィの大剣がカノンを追う。
薔薇の花びらが舞う中で、少女はもっとも信頼できる相手であったカノンを見つめた。
自身の世界を蹂躙したレギヲンとグシン軍を不逞を、決して許さないとホープで戦っていたカノン。そんな彼女がレギヲンに利用されている。
──もし……最も大切な相手を倒さなければならないのなら……自らの手で。
剣を振りかぶるリリィの瞳から堪えられなかった涙の欠片が散った。
何度カノンの鞭がリリィを傷つけ、鮮血と共に薔薇が舞っただろう。
ついに少女の大剣はカノンの身体を大地へと叩きつけた。
「カノン……ねーさま……」
勝ったはずの少女は、しかし、涙ながらに駆け寄り、彼女を抱き締めた。
「……リ、リィ……? 嗚呼、あたしは……何故……」
赤い瞳にきちんと映る自分の姿に気付いて、リリィは泣きながらカノンにしがみつく。
●決戦
岩船山の中腹に位置する広大な大地。
そこに突き立つ、すべてを吸収する剣”アシミレイションブレード”。
紫の硝子の壁に囲まれ目を閉じる巨大な怪人──レギヲン。
王を護ろうと、たくさんの復活した怪人たち。
攻撃を仕掛けようとした鎧が後に続く由利菜を庇う。同時に足下に地面に閃光が弾けた。
「仲間を見捨てるなんて、ヒーローも地に落ちたものね」
顔は黒い滑らかな珠となり体はゴツゴツとした鎧のような姿へと変じているが、ライラだ。
「リディス!」
ライラに従う闇色の天衣を纏ったイピゲネイアを見て由利菜が悲鳴を上げる。
苦しそうな様子のイピゲネイアが神槍スヴィズニルを放つと、大地が抉れた。間髪を入れずにライラがギラギラとした紫の光球を放とうとした。
──音もなく、黒い槍がライラの脇腹を貫いた。
「っ!?」
光球は消え、ふらつくライラ。けれど、すぐにその槍を引き抜き捨てる。
「久しいな、ホープ」
「シュバルツローレライ!」
彼らの前に現れたのは──黒衣の騎士、シュバルツローレライ(海神 藍(aa2518))であった。
かつての強敵の登場に、立ち上がった鎧が身構える。
「待ってください、兄さんは味方です!」
そう言って現れたのは銀の冠を頭に乗せた黒い魔法少女、ブラック☆スケイル(禮(aa2518hero001))だ。
「お兄さんとお話ができたのですね……!」
由利菜の言葉にブラック☆スケイルは嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「貴様らと轡を並べることになろうとはな……だが、この星の為にもレギヲンは止めねばならん。判るな?」
この星の自然を愛するがゆえ人を憎む最強の騎士。彼はライラの向こうのアシミレイションブレードを睨め付ける。銅色だったそれはすでに金色のオーラを纏いつつあった。
「あの剣を、止めないと……!」
ブラック☆スケイルが叫ぶが、復活した怪人たちは四十七体。対してこちらは治癒術を使う由利菜を含めて戦士が四人。上空のブルーローズからの砲撃で辛うじて戦うことができる状態だ。
その時、どこからか美しい音色が響く。それから、美しい歌声が埃っぽい荒地に響き渡った。
「リリィさん、カノンさん!」
リリィと共鳴しひとりのヒーローとなったカノンはその歌声で力を生み出す。
激しい嵐のような歌声は降り注ぐ刃のようなライヴスとなり、優しい癒しの歌声は仲間を守る盾となり、鼓舞する歌声は力を与える。
怪人たちを弾き、倒すカノンたちの参戦は大きな戦力となった。
一変して、怪人たちが防戦に回り仲間たちは攻勢に転じた。
……だが、仲間たちはリリィとカノンの身体が、先の戦いで大きなダメージを追っていることを知らなかった。
──これで、何体目? 早く──。
ゾクリとする殺気を感じるカノン。振り向きざまに咄嗟に顔の前で交差した腕に激しい一撃が放たれた。
共鳴しても塞げなかった傷口がズキンと痛む。
「あら、あなた、ぼろぼろじゃないの」
カノンのダメージに気付いて嘲笑うライラ。
だが、カノンはそれでも歌うのをやめない。
いくつもの光球がライラを襲う。弾き飛ばされ、ぼろぼろになったカノンだったが、それでも、また立ち上がる。歌声がより一層深みを増し、仲間たちへと力を与えた。
「黙りなさい!」
遂にライラがより巨大なライヴスの塊をカノンに叩きつけた。轟音が響く。
「ダメです──っ!」
ブラック☆スケイルが伸ばした手は熱風に巻き上げられた礫に打たれただけであった。
「……あたしの求める旋律は……命と共にあるのよ。この星までレギヲンに蹂躙させない……」
そう言い遺して力尽きるカノン。
だが、その言葉はライラへではなく──駆け寄ったブラック☆スケイルとその兄へと向けられていた。
「他ならぬこの星の為、我らが道を開く。征け、ホープ!」
シュバルツローレライの言葉と共に、バチバチと弾ける黒雷の槍が一直線にライラを貫く。
衝撃で後退したライラの面にピシリとひびが入る。
「こんな攻撃……」
だが、顔を上げたライラの前に距離を詰めたシュバルツローレライの姿があった。彼が大地から引き抜いた愛槍がライラの胸を貫く。
「貴様らの、借り物の大義などに……! この輝きをやらせるものか!」
「そんな──」
体内に貯め込んだライヴスが漏れだし爆散するライラ。
「射抜け、サジタリウスの矢!」
ブラック☆スケイルの魔力の矢が怪人たちを吹き飛ばし、道が拓かれた。
「今です!」
「わかったぜ!」
結界へ近づく鎧。奔りながら天へとシュメッターリングを掲げる。
すると、リングの輪郭が歪み──まばゆい光が溢れてその場いるあらゆる者の視力を奪った。
砕ける、紫の結界。
同時にシュメッターリングの光を受けて、イピゲネイアの指先に嵌ったウィリディスの守護石──シュメッターリングの欠片が光を放った。
「あっ、ああ……ユリナ……?」
聖女の姿から元の姿へ戻ったウィリディスを由利菜は抱きしめた。
「心配かけて……ごめん。でも、今は──」
瞳にたまった涙を払った由利菜とウィリディスは目線を合わせ──戦地に聖女イピゲネイアが降臨した。
「さあ、あたしたちにできることを」
だが、その足元にナイフが刺さる。
「レギオン様の邪魔はさせません。もうすぐこの星は終わるのです」
靴底を鳴らして、クロードが鎧の前に立ちはだかる。そして、最後の魔導騎士の後ろでアシミレイションブレードがまた一段と輝きを増す。
「今度は逃がさねぇ!」
飛び出す鎧。共鳴チェンジしたマーズレッドの双炎剣アンドレイアーにライヴスを込めた渾身の一撃。
「──なっ!?」
だが、鎧の攻撃はクロードに届く前に空中で止まり、ライヴスを激しく散らした。
クロードの掲げた見えない盾。涼しい顔で彼は構えたナイフにライヴスを集める。
「あ、ああああっ!」
強烈な一撃を喰らった鎧が絶叫を上げ吹き飛ばされる。その瞬間、マーズレッドへの変身が解け、鎧とマーズがそれぞれ大地に転がる。
「つ、強ェ……。クソッ、おい鎧、立てるか?」
相棒を気遣うマーズだったが、すぐに鎧の異変に気付く。
「何でだよ。先生、俺は、先生は俺が……」
放心状態で立つ力すら無くした鎧。
激しい戦いで幾度もパワーアップして来た鎧。だが、最強の一撃もクロードに容易く防がれてしまったのだ。
「……この程度ですか」
冷たい眼差しのクロードの周囲に新たな無数のライヴスが現われる。
「危ねェ!」
地面を蹴り飛び出したマーズはクロードの攻撃の前にその身を晒した。
鎧の目の前で、マーズの炎を纏った背中が爆散した。
「あ、あ……」
言葉を失った鎧の目の前で拳大の石となったマーズの欠片がばらばらと降り注ぐ。
グシンを追いかける最中、囚われた鎧と出会った火星の石で作られたグシンの怪人──火星を行くことを夢見る鎧を気に入って鎧と共にヒーローへと転身したおかしな親友であり、ヒーロー。
言葉を失う鎧とイピゲネイア。
そんな彼らに向けてナイフを構えたクロード。
──その背後で、アシミレイションブレードが黄金色に輝き、レギヲンが顔を上げた。胸に並んだ三つの顔もまた大地を見下ろして笑う。
数多の怪人たちを倒したシュバルツローレライとブラック☆スケイルだったが、さすがに無傷ではいられなかった。白く汚れ、千切れた黒の衣を風に靡かせながら、無言で地上を見渡す二人。
愛した自然はライヴスを失い、灰色の煙を広げながらその姿を崩していた。
「今がその時です……さいごの歌を、歌いましょう……」
ブラック☆スケイルが兄の隣に立った。
「ホープよ……この星を……頼む」
歌うブラック☆スケイルとその手を握りライヴスを高めるシュバルツローレライの姿が解けるように光と旋律へ変わる。
長い睫毛を揺らし、共鳴したカノンがゆっくりと目を開けた。
「──歌が、きこえる……」
春の優しいそよ風のように、静かに自然を慈しむ母なる海の歌。
小さく笑ったのは歌が好きなカノンか、それとも、リリィだったのか。
その旋律に寄り添うように、両手を合わせて唇を動かしふたりもまた歌う。
──そして、ことりとその手が落ち唇が閉じられても、命を愛するローレライたちの歌声は地上へ広がっていった。
ライヴスの旋律は崩れゆく地球に染みわたり、その崩壊を食い止め、ヒーローたちへ力を与えた。
マーズの欠片を握りしめ呆然とする鎧へ、どこからかマーズの声が響いた。
『火星に来るんだろ!? テメェの夢も、あのセンコーも、テメェの手で取り戻してみやがれ!』
握った欠片からまた熱いライヴスが鎧の体内を駆け巡る。
「……そう、だったな。あぁ、そうだ! 力を貸してくれマーズ!」
クロード目がけて駆ける鎧を一際激しいライヴスが包む。
「何!?」
信じられない、そんな顔をしたクロードが膝を着き倒れるその背後で、振り返るアンドレイアーを構えたマーズレッド。
だが、それは一瞬の事だった。
すぐにマーズレッドの姿は消え、親友の欠片を握りしめた寺須 鎧へと戻る。
大地が揺れた。
レギヲンにより、引き抜き下ろされた黄金のアシミレイションブレード。それを受け止めた者が居た。
「ジュピター・ゴールド!」
マーズレッドと同じ共鳴チェンジによる『最後の戦士』。素手ながらその動きは雷光の如く──だが、その強大すぎる力は使用者を食い潰す。
「ガルド、レオーラ!」
『命の歌の力だ。少しは、持つ』
ジュピター・ゴールドとなったガルドたちの答えに、鎧はもう一度マーズの欠片をグッと握る。相棒が、応えた気がした。
──ゴッドハンドラッシュ!
レギヲンの剣に負けない黄金の輝きを纏ったジュピター・ゴールドの腕と足が凄まじい連撃を与える。一撃一撃の衝撃波が黄金剣の刃を打ち──アシミレイションブレードを粉砕する。
剣を失い、両手が自由になったレギヲンがジュピター・ゴールドへ暗いライヴスの塊を放つ。
──ライトニング・ミラージュ!
しかし、レギヲンの攻撃を戦士はぶわりと量子化し回避、直後にまた雷撃のような攻撃を加える。
『──これでも、足りないのか』
レギヲンの攻撃を避け、ライトニング・ミラージュとゴッドハンドを使い分けて戦い続けるジュピター・ゴールドだったが、ライヴスに満ちたレギヲンは揺らがない。
そこへ美しいロボットが現われた。
聖女イピゲネイアが呼び出した槍を持つ女性天使型機体『アンゲルス・ストラ』だ。
癒しの輪がアンゲルス・ストラを中心に広がり、アンゲルス・ストラの前でレギヲンに対峙するジュピター・ゴールドと──復活したマーズレッドが構える。
天使型機体に乗り込んだイピゲネイアが告げる。
『神槍に貫かれ、滅せよ!』
「うぉおおおおお!!」
アンゲルス・ストラの槍にジュピター・ゴールド、マーズレッド、そして、大地に満ちる歌の力が合わさり、ライヴスの奔流がレギヲンを飲み込む。
そして、貪欲なる愚神の王、グシン軍レギヲンはライヴスを大地へ返し消滅したのであった。
●ヒーロー
「ユリナ……気を付けてね」
「ええ、大丈夫」
向かい合ったふたりの間に沈黙が落ちる。
レギヲンが居なくなった今、ミッドガルドの危機もまた去った。第一王女として彼女は星に戻り復興の為の指揮を執る。
「ユリナ、あたし……」
「リディス。私はここへミッドガルドを救ってくれるヒーローを探しに来ました。けれども、あなたとそして皆さんのお陰で私は自身が戦う力だけでなく本当の強さを貰うことができました。……だから、今度は私一人でも大丈夫」
「大変だったら呼んでね。聖女イピゲネイアはなんだって乗り越えられるんだから」
「ありがとう……リディス。地球で得たリディスと──皆との友情は私の力と誇りです」
そして、第一王女エムブラはヒーローたちに見送られながらミッドガルドへと旅立っていった。
それからしばらく後。
病院のベッドの上で熱心に教科書を読む霧人だったが、ふと入口へ顔を向け微笑んだ。
「寺須君、来てくれたんだね」
優しい笑顔は鎧が良く知る”先生”のものだった。
「先生、俺、しばらく行ってくるぜ!」
「……寺須君、僕は──」
「先生!」
「すみません、そうですね──。では気を付けて行って、ちゃんと帰って来るんですよ」
「ああ、大丈夫だ!」
鎧は自分の背負ったボディバックに軽く拳を当てて見せる。
「あれはきっと鎧さんのスペースシャトルですね。どこへ行くんでしょう」
くりっとした黒い瞳の少女が眩しそうに青空を見上げた。
「──火星だろう。きっと”彼”と共に」
最早物言わぬ石となったマーズの欠片を連れて、鎧は火星へと旅立った。
聖女イピゲネイアの力は失ったウィリディスは、テール・プロミーズ学園に戻り将来に向けて勉強に励んでいる。
霧人は教師として元の学校へ復帰することが決まった。
リリィとカノンは──その遺体はなぜか消えて見つけることはできなかった。
ガルドとレオーラ、それから次元航行船「ブルーローズ」もいつの間にか姿を消した。しかし、なぜかジュピター・ブレスだけが残されており、それを見た灰墨将校は「果たしてこれは平和になった証と受け取っていいものか」と呟き、それを厳重に保管したらしい。
もしかすると──、折角勝ち取ったこの平和も実は一時のものなのかもしれない。
「たくさんのヒーローが旅立ってしまいましたね。でも、きっとヒーローは……あっ、待ってください、兄さん!」
青空の向こうの宇宙へ、そして未来に想いを馳せた少女だったが、兄が先に歩き出したのに気づいて慌てて後を追う。
少女の頭上で銀の冠が陽光を弾いて明るく煌いた。
結果
シナリオ成功度 | 大成功 |
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