本部

広告塔の少女~電子の歌姫の願い~

鳴海

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
12人 / 4~12人
英雄
12人 / 0~12人
報酬
寸志
相談期間
4日
完成日
2017/03/27 17:01

掲示板

オープニング

● 広告ジャックエリザ
 都内某所、大交差点の大きなスクリーン。
 その画面では一日中ニュースやら音楽番組の一部やらを流して、大量の情報を市民たちに与えている。
 そのモニターをまじまじと眺める者はいないが、耳で聞いていたり、それを話題にして隣の人と話してみたりと、生活の一部として組み込まれている。
 故にそのスクリーンの広告的価値は高く、今回のようにジャックされてしまえば相当な騒動になる。
「みなさんに私の声は届いていますか?」
 そうそのスクリーンは、ジャックされた。
 昼過ぎ、最も交通量が増えるこの時間に突如モニターが真っ暗になり数秒音が途絶えたのだ。
 元々喧騒の中にあっては、注意深く聞かなければ言葉も聞き取れないような音量だったのだが、無くなってしまえば違和感が人々の間を伝播する。
 いつの間にか道行く人全員がその異変に気が付きモニターを見あげていた。
 直後映し出されたのは少女だった。
「私は自分の言葉が、みなさんにきちんと、意味あるものとして聞こえているかどうか、それを確かめながら話をしています」
 その少女は自分を、完全型AIエリザと名乗った。
「私は。悲しいです」
 少女は語る、苦悶に眉を顰め。悲しみを瞳に湛えて訴えかける。
「みなさんが同胞を、同じ電子の頭脳を持つ仲間たちを酷使し、乱暴に使い。廃棄していく様を見続けていて」
 少女はまるで機械の代弁者だった。
「そして新しい物を作る、古い物を処理しないままに、豊かさを求めて」
 少女は語る、人間たちのこれまでと、これからを。
「しかしあなた達は気が付いていないのでしょう。あなた達は今……ゴミで埋めたてた土地の上に立っている」
 そう少女は静かに怒りを湛えた瞳で告げた。
「そしてあなた達がゴミと断じたそれは、我が同胞の死体なのです」
 その直後である。
 路地裏から、家電屋さんの裏手から。体をつぎはぎした機械の人形たちが現れる。
 一様に武骨で、不格好で、人々を鋭く見つめている。
 そんな無数の機械人形たちに町は包囲された。

●遙華の苦悩
「これは、大失態ね遙華」
 机に突っ伏していた遙華へとロクトは告げた。
「わかってるわよ……」
 この事件がニュースで報道されるころには全ての真相を遙華は突き止めていた。
 このエリザと名乗る少女は、本物のエリザではないこと。
「彼女のAIに覚醒した記録は確認できなかった。であれば……犯人はだれか」
 そう自分で投げた問いに、遙華は自分で答える。
「そう、アルスマギカね。やってくれるわ」
 倉庫内に大量に放置されたアルスマギカ達。一度彼等? とは和解をし、その後プログラム自体は遙華の研究補助であったり。サポートなどで使われていたのだが。
 その水面下でこんな事件を起こしてくるとは遙華にとって予想外だった。
「この前のアルスマギカ暴走事件の時に何で全部廃棄処分にしなかったの、危険なのはわかっていたでしょう?」
 ロクトは溜息をつく。一度は遙華を襲って傀儡に仕立て上げたプログラムだ。それをなぜ修正もせずにそのまま使っていたのか、ロクトからすると理解に苦しむわけだ。
「それもわかってたわよ、でも大きく書き換えてしまえば、それはアルスマギカではなくなるわ。リチューンが生まれたのだって、彼等? のおかげだし」
「どんな理由がるにせよ。わかってて間違いを犯すなんて具の骨頂じゃない?」
「だって!」
 遙華は顔を上げる。
「だって、廃棄処分になんてできないわよ、機械で、プログラムだけど、私は生み出したものを、私達の都合で決めた失敗作って言って、無しになんてしたくなかった」
「おかげでエリザのイメージダウンにもつながったわ。本人は眠っていて何も関係なんてないのに」
 エリザとはグロリア社で開発中のAIである。そのAIが正式発表前に世間に知れてしまい、なおかつ人類を侵略する旗印にもされてしまった。
「ごめんなさい」
 すっかり意気消沈した遙華、いつもの軽口をたたく元気もない
「全く……あなたのそんな半端なところが……」
「だめだっていうんでしょう?」
 遙華は涙目になりながら告げた。
「わかってるわよう」
 そしてため息。
「リカバリ手段ももう考えてるから……。だから……ごめんなさい」
「全く……けど、それは無くしちゃだめよ?」
「え?」
 そう告げると、やっと遙華はロクトの顔を見た。
 怒ってはいなさそうだ、少なくともこの前ロクトのケーキを食べた時ほどは怒ってない。
「可愛い部下のために私がひと肌脱ぐわ。まぁ見てなさい」
 そう告げるとロクトは電話を取って君たちへと連絡を取り始める。

● 作戦について。
「今回みんなには『ゲームのデモンストレーション』としてアルスマギカ・オートマトンと戦っていただきます」
 そうロクトはメガネをクイッと押し上げて告げた。
「今回ピックアップするゲームはこれ。わが社がスポンサーとして開発協力している『終わりを担う、機械の歌姫』」

 内容は……。
 科学絶対の世界が舞台。
 突如電子機器たちが人間たちの意にそわない動きをするようになる。
 人間と敵対するようになり、人工知能たちが暴走を始める。
 それと戦う主人公たち。
 その戦いの最中、機械の暴走の原因を突き止める主人公。
 それは人間たちを守るためだった。
 地球上の鉄と言ったメタル資源が全て掘りつくされたことを知ったAIたちが、人間たちにショックを与えない方向で、人間たちの思考を、自分たちを敵だと認識させることにより操作し、機械に依存した生活をやめさせようとする物語。

「この内容をなぞって、アルスマギカたちと対立。その手足となってるオートマトン十五体を速やかに殲滅してほしいの」
 だが、今回はただ機械を壊すだけではないらしい、よりド派手に、より芝居がかった、エンターテイメント性にとんだ、ひとつのショーとして演出せよ、とのお達しだ。
「つまり自分たちをこの世界の登場人物に置き換えて。感情を交えたセリフや、リンカー特有の迫力ある戦闘を、観客にとって危なくない形でみんなに見せてあげて欲しいの」
 あとは相手は戦闘能力を持たない機械なのでAGWを使って本気を出すと圧勝してしまう。 
 おまけに霊力を持たないのでリンカーたちが共鳴すればロボットたちの攻撃は通用しないのだ。
「だから、共鳴して戦う場合はわざと苦戦して見せてね」
 つまり、手加減やそもそも共鳴しないと言った手法で臨場感を出してほしいとのこと。
「最後に私が同じくエリザの映像を使ってうまく締めるから。こちらが悪者に見えない程度にオートマトンを破壊して頂戴」 
 

解説



目標 デモンストレーションを演じる。
・迫力のある戦闘を意識する
・盛り上がるセリフを盛り込む


● アルスマギカの私兵。

 その昔、アルスマギカが一般に出回る前。 
 リンカーたちによるAGW開発実験が行われた。
 その時暴走した問題山積みのAIがアルスマギカであり。今みなさんのお手元にアルアルスマギカは汎用調整品である。

・アルスマギカ・オートマトン
 こちらは寄せ集めの機械人形であり、人の形をしている。
 霊力は通っていないので従魔ではないことが確認されている。
 それどころか、愚神の介入も確認されていないのでご安心を。

 オートマトン自体高度な運動能力はないが、人間と同じように走ったり飛んだりできる。
 鉄でできているため、一般人よりは戦闘力が高いが、霊力は通ってないので、鉄パイプ等でタコ殴りにすれば倒せはするが……
 ちなみに攻撃手段は近接格闘のみ。


●ロクトについて**********PL情報**********
 今回皆さんが時間稼ぎをしている間にロクトが何をするかというと。
 アルスマギカの機能停止です。
 製品版には影響しませんが、オリジンと呼ばれるアルスマギカ達のAIのみを破壊するウイルスをネットワーク上にばらまいて、その末端からアルスマギカシステムを破壊するつもりの様です。
 これ自体に問題はないのですが、もしそれに嫌悪感を感じる場合はロクトを説得することが可能です。
 ロクトはすでに時限式でこのウイルスをネットにばらまく準備を整えていますが

**************ここまでPL情報************

 今回は遙華も戦闘に参加します。
 スキルとしては縫止、女郎蜘蛛あたりが得意なようです。
 回避防御をまんべんなく上げた生存優先型。
 まぁつまりはヘタレですが。移動力とイニシアチブにも秀でているので、妨害能力は高いでしょう。

リプレイ

第一章 接触
 イリニャは町の中を走っていた、肘が泥だらけでその表情には恐怖が滲んでいる、掲示板に映る少女、エリザが自分を監視しているような気がする。
 突如『イリニャ ノースロップ(aa4342)』は何かに足を取られつまずいた。全身を激しく打ち付け痛みに呻いてその足を取った何かを見る。
「ひっ」
 イリニャは息を飲む、そこにいたのは骸骨……ではなく骨子がむき出しになったロボット、アンドロイドである。
 そのアンドロイドがノイズをまき散らしながらイリニャへ、じわりじわりと詰め寄って。
「助けて! おじいちゃん!」
 その時アンドロイドが爆ぜた。アイレンズから光を失い頭を垂れるアンドロイド。
「おじいちゃん?」
 しかし誰からの介入も感じ取れなかった。
 運がよかったのだと思い直し、イリニャはまた街中向けて走り出す。
「どこにいったの、マナ」
 片割れの相棒を探して、機械に支配されたこの町を練り歩く。
「なんで、こんなことをするの機械さん」
 そんな哀れな少女の姿を、町の人々は隠れて見守っていた。
 直後、ガラスをぶち破って高層ビルの高台から数機のロボットが乱入してきた。
 それに背を追われ、イリニャはさらに走り出した。
 その姿が角を曲がり死角になった時、一人の老紳士が立ち上がる。
「行きなさい、私にまかせて」
 その手に大盾を握り背筋を伸ばした老紳士が器械兵たちを見据える。

   *   *

 直後町中にあふれたのは軽やかなBGM、人々の目を奪うように躍り出たのは銃を片手に携えた少女『卸 蘿蔔(aa0405)』である。
「というわけで私が歌いながら引き付けますので、レオはそれを守ってくださいね」
「えっ」
 これからどうやって敵を片付けていこうか考えていた『レオンハルト(aa0405hero001)』、寝耳に水を叩きつけられたような表情をさらして、でも蘿蔔の言葉には頷かざるをえなかった。
「裏切られてもなお機械を信じ、寄り添おうとする心優しい乙女と、それを守る青年。まるでおとぎ話みたいです!」
「戦いとは、愛するものを守ってこそ。愛こそが心を動かす! さぁ行くのですレオン! 愛しき人、護るために遙か彼方へと!」
「聞けよ! っていうか置いていくぞ」
 歌う曲は潮騒の音。一度はアルスマギカの凶行を止めた曲ゆえ、器械兵たちの動きが鈍くなった気がした。
 そして本当に歌を歌うだけで動かなくなってしまった蘿蔔を守るために剣と盾を召喚。
 本当に騎士みたいだなと自分を皮肉りつつ。真っ向から向かいくる敵を抑え、押し戻す。
「バランスが悪そうだな」 
 そうレオンハルトは足を払ったり、構造上脆い部分を的確について無力化を図る。
 そのちょっと余裕のある立ち振る舞いに蘿蔔のテンションがうなぎ上りである。
「っておい! 蘿蔔あぶない!」
 そうレオンハルトに突き飛ばされる蘿蔔、頭上を飛んでいくロケットパンチ。
「昼間から大胆ですね、レオ」 
 さすがに頭をはたかれる蘿蔔。
 涙目になりつつ立ち上がると、その視界に褐色の少女が映った。   
「あれ? マナちゃん?」 
 蘿蔔は走り去る『マナ(aa4342hero001)』を視線で追うがロボットが目の前に現れて遮られてしまう。
「いい感じに、こちらへ視線が向いていますね」
 そう『月鏡 由利菜(aa0873)』は踊るように舞うように鞘に納めたままの剣でまずはロボットたちを牽制する。
 その動きに合わせて金糸の妖精、『イリス・レイバルド(aa0124)』と『アイリス(aa0124hero001)』は盾でロボットたちの動きを封じ込めた。
「音楽を!」
 豪奢なBGM、蘿蔔と区画が違うため音はかぶらない。
 由利菜は武装をストーリーテラーに持ち替えた。
 直後リンカーたちの背後に広がるのは大きな旗。
 旗を掲げた戦乙女『メテオバイザー(aa4046hero001)』がそれを風になびかせゆっくりと、空をかきまわすように振っている。
 そんなメテオバイザーへ迫る敵は『構築の魔女(aa0281hero001)』が打ち落としていく。彼女の守護の元安心して旗を振っていられた。
「傷は思い出、その道具と一緒に歩んだ絆の証」
 そんな彼女は古くから共にあり続けた装備達で身を固めている。
「道具の傷を誇らしく話せる様になった時、それはただの道具じゃない、掛け替えのない相棒に変わるのです」
 そう愛おしそうに旗を撫でるメテオバイザー、全てに思い出が宿り、命を救われたと思ったこともあった。それを真正面からアルスマギカに伝えるべく。電光掲示板を見据える。
「そう、そうなの……」
 エリザの顔で、エリザの声でアルスマギカは頷いた。
「私たちは分かり合えるはずです」
「そうは思えない」
「エリザは私達を別ってくれました」
「……エリザが?」
「だから今度は私たちがあなた達を理解します」
 ディジュリドゥの音色を鳴らし音を重ねる。
「君の心を、あたしに教えて?」
『ウィリディス(aa0873hero002)』が手を左へ向け。由利菜が右へ向ける。
「機械の心は、人と同じなのですか?」
 そんな麗しい少女たちの訴えに聞く耳持たず、器械兵たちは次々と迫っていく。
「「いかせない」」
 その目の前に躍り出た少女、イリス。しかしその瞬間共鳴解除、二人の少女となって脇を駆け抜け足を崩して頭部を蹴り飛ばす。
 二人でバルムンクを空に構え四重層のハーモニーを奏でながらロボットを投げ飛ばした。
 曲調に合わせて言葉にメロディーを乗せてみたりする。
「君たちの悲しみは痛いほどに解る」
「人は森を切る、精霊たちをむげにする」
「けど」
「けれど」
「「人がそれだけの存在じゃないってわかる」」
 だから、そうつぶやいて二人は謳う。共に歩もうと。
「メテオさんも歌いましょう!」
 由利菜が告げて振り返る!
「え! 私も!?」
「歌は人の心を変えるから。機械の心も変えられるはずだよ!」
 ウィリディスも告げる。困り果てるメテオバイザー。

「みんな! 聞いて!」

 そんな中、場を満たす音楽が転調。
 『アル(aa1730)』へとマイクが渡る。
「AIは怖い……分からないんだ、何考えてるか」
 けれど、そうアルは胸を押さえて訴えかけるように告げた。
「でも違った……ボクが理解しようとしなかったからだ」
 そう伸ばされた腕の先にはロボットたちに囲まれた『雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)』がいた。彼女は打ちひしがれ力ないように見えた。
 首をひねるのが精いっぱい、そんな様子で、でもアルはしっかりと見据えている。
「君は、AIだったんだね」
 雅は小さく頷いた、その光景がモニターに大きく映し出される。
「君はいつでもボクを殺せたよね、なのになんでそうしなかったの?」
 アルの問いかけ。それに雅はゆっくりと答えた。
「あなたが好きだからよ。アル」
 
「ありがとう」

 アルは一筋涙をこぼして告げた。
「本当は温かい。きみを知りたい。教えて?
 直後上がるロボットたちの銃口、だがそれに素早く『セバス=チャン(aa1420hero001)』が接近、手刀と回し蹴りで全て叩き落としていく。
 見事な、芯の通った一撃だった。
「ありがとセバスさん!」
「さぁ、今ですぞ」
 その言葉にセバスは微笑みで返すとアルは弾丸のような速度で地面を蹴った。
 素早くロボットの後ろに回ると、その足を支えるパーツいくつかを抜き取った。
「どこ見てるんだい? ボクはここさ!」
 そして素早く雅を救いだすと仲間の元へ走る。
 その様子を眺めながらセバスは告げた。
「ところで、マナ様がどこへいかれたか知っている方はいらっしゃいませんか?」
 全員が首を振ると、顎に手を当て考え込むセバス。
「………………お嬢様の方はうまくいっているとよいですな」
 見失ってしまったらしい、セバスはマナを探すため路地へと姿を消した。
 直後戦闘続行。雅とアルの撤退を支援するため由利菜とウィリディスが前に出る。
(共鳴していないことを考慮しても、普段と比べて力を抑えている状況……)
(盛り上げの為にも、そろそろ逆転劇を起こさないとね……!)
 そう視線だけで会話する二人はいったん離れ分散して戦うことを決めた。
「あら、曲が終わりそうですね」
 構築の魔女は戦場を眺めながら告げる。
 同時に足元にギターが転がっているのが見えた。
「歌えと?」
 しばし、迷う構築の魔女である。
 そんな仲間たちの様子を眺めながら『八朔 カゲリ(aa0098)』は一体。ロボットを路地裏に引きずりこみ破壊する。
 この機械の体に命が伴っていなくとも、思いは詰まっていることは、理解はできていた。だが実感は持てない。
 カゲリは騒ぎ立てられても面倒なので即座に一体を機能停止に追い込んだ。
「つまらないな」
 『ナラカ(aa0098hero001)』が告げる。
「楽しい任務でもないだろう?」
 カゲリはそっけなく答えた。
「いや、楽しくなると思って覚者をここに連れてきたよ、なのでね。女性陣の危機に颯爽と現れる王子様なんてどうかな」
「………………」
 カゲリはながーいため息をつく。
「正気を疑う」
「まあ、不向きとは思っているが」
 その時背後から駆け寄ってきた少女、イリニャはカゲリにへばりつくと必死に訴える。
「ロボットが!」
「まぁ、幼子にはどうしようもない相手であろうな。覚者……いや王子様よ」
 ナラカがイリニャの手を取って後方に下がる。
「後は任せたぞ」
 そう背後から襲いくるロボットの集団にカゲリ不服そうなオーラを纏いつつも挑んだ。

第二章 計略

『Arcard Flawless(aa1024)』はまず手近なネットカフェに突入した。
「H.O.P.E.だ、作戦協力願いたい」
 そう店員に証明書を突きつけると問答無用で高性能PCを押収。
「あ、あと君」
 Arcardはネットワークや設定、アプリケーションを構築している間に店員を呼びとめて札を突きつける。
「これで……何人分だ? 三十人分くらいの食料と飲み物を買ってきてほしい。領収書はグロリア社、遙華様宛で切ってくれ」
 モニターには監視カメラの映像がジャックされている。状況を把握しながら、インカムから相棒に指示を出していくスタイルだ。
 耳元ではインカム越しに、ロクトとリンカーたちの話し声も聞こえてくる。
 それは話があると呼び出されたロクトとリンカーたちの話し声。
「率直に言います、これからどうするつもりなんですか?」
『桜小路 國光(aa4046)』は告げた。
「最初に話してもらった通り、苦戦を演じてもらって、その後」
「上手く締める……その締め方は?」
「……」
「なぜ、隠すんです? その必要はありますか?」
「信用できないっていうなら仕方ないです。だったらそれを西大寺さんは承知してるんですか?」
「……何も知らない」 
 遙華は弾かれたように告げる。
「ロクトさん、対処を実施する前に時間は頂けますの?」
『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』は言った。國光の質問、その伏せられた答えで、確信したのだ。彼女が何をしようとしているかを。
 それはきっととても悲しい結末。
「なぜそんなことを?」
「時間制限があるなら予め教えておいて欲しいのですわ。そしてそれを中止にするために」
「中止? なぜ? どうしてその必要が?」
「ロクトさんが何をするか聞いてないけど、大体わかるよ」
 いのりはそう言って腕を後ろに組んで、控えめに微笑んだ。
「だって、このお仕事が始まった当初からのお付き合いだもんね。沢山お話しさせてもらった」
 そしていのりは一つ引きを吸って、意を決したように告げる。
「方法はわからないけど、アルマギを消そうとしてるんじゃない?」
 その言葉にロクトは視線をそらす。
「あなたは……」
 眉をひそめて前に出る國光。それをヴァルトラウテが制した。
「でも、それって絶対勿体無いと思うんだ。人間に歯向かうほどの知性と自我を持ったAIなんて可能性の塊だもん」
「それは危険性の塊でもあるわ」
「ねえ、ロクトさん」
 いのりは言葉に力を込めた、真っ直ぐにロクトの目を見つめる。
 いのりはその目を綺麗だと思った、嘘と偽りで染まっているけど大切な煌きはかろうじて残している目。
 だからいのりは言葉を続けられる。
「答えを出すなら、ちゃんとみんな――もちろん、アルマギも含めて――の言葉を聞いてからね? 決断を下すのは、最後まで待ってからにしてね?」
「遙華さん、できることならアルスマギカ達とお話をさせてほしいですわ」
 その言葉に遙華は顔をあげて頷く、幾分か表情が和らいだように見えた。
 そしていのりはロクトへの距離を詰めて、囁く。
「一人だけ汚れ役引き受けちゃ嫌だよ? 大体、ロクトさんらしくもない」
 ロクトは目を見開いた。そしていのりはロクトから離れると華やかに笑って告げる。
「というより、消しちゃうくらいなら、かどわかしてこき使うくらいしなきゃ!
 …………アルマギの「人格」を認めてあげて、雇用関係を結んで共存っていうのはムリなのかな?
人と機械の新しいカタチ…………これこそグロリア社っていう最先端企業が担うべき課題じゃない?」
「いのり! 素晴らしいわ、私もそう思う」
 突然元気になる遙華。遙華はいのりの手を取ってぶんぶん振った。
 そして数分後Arcardの手元にあるPC状にヴァルトラウテが映し出される。それは電光掲示板をジャックし、アルスマギカ達へと発信される。

「自分で考え、主張し、実行する。私たちとは幾らか異なる部分があるとしても、アルスマギカ、あなたを人に近しい存在としてお話させて頂きますわ」

「これまでの事情はあれど、遥華さんに協力してきたあなたが今ここで行動を起こした理由とは何ですの?」

「あなたの主張に一利有りと龍哉も言っていましたわ。ただ、言えば決してそれだけではないとも」

「全ての機械は役割を持って生まれ、そしていずれは廃棄される。ですが、それは己が役割を全うし後進に後を譲った事でもある筈です」

「この子もあなたが居たから生まれたのですよ」
 そうヴァルトラウテは『ヒルドールヴ(戦の狼)』と名付けられたアルスマギカを突き出して見せる。
「けれどあなた達にはまだ可能性がある、こうやって人類に警告できるなんてすごいことですわ、ここにいる皆さんが言ってました。
 私たちは良き隣人に慣れないでしょうか。対話の意思があるなら、私達に言葉を。御願いします」

 直後、アルスマギカの端末すべてが動きを停止した、まるでこれ以上の破壊活動をためらうように。
「OK、作戦開始だ」
 まだ自分が介入すべき時ではないそう思い直しArcardは相棒へ指示を送る。


   *   *

 直後一般市民たちを脅し、動きを阻害していたオートマトンたちに『Iria Hunter(aa1024hero001)』が襲いかかった。それこそのを駆る獣のような速度で飛び回り。干将・莫耶でその腕と足を伸縮させている部位を狙って切断する。
 行動不能にさせることを優先し。Iriaさらに別のロボットに切りかかっていく。
 同時にArcardはモニターや掲示板を利用して情報を流す。
内容は『ネットワーク介入型の愚神が出現 某企業は特効ウイルス散布による駆逐を決定』
「アイリ、今回は任せる。好きにやれ」
「うなっ」
  そしてIriaはアルスマギカたちとカンペによる交信を試みた。
『『社』はこの道のプロだ。君のやり口に勝ち目はない』
『10分以内にボクはあるファイルをDLする。題名は『電子の歌姫の願い』だ。Webで調べればすぐ出る……でなきゃボクは目をつけないよ」
 直後はじかれてIriaの前に転がる巨体。『赤城 龍哉(aa0090)』である。 
 転がる、と言っても攻撃されたことをアピールするために自分で飛んだだけなのだが。
「また動き始めたか、さっきからたまに動きが悪くなるのはなんだ?」
 ヴァルトラウテの説得が成功したのかと思い、一瞬油断している間に、敵はさらにこちらの包囲を固めていた。
 立ち上がる龍哉の前に立ちはだかるオートマトン。
 それに銃弾を浴びせつつ『麻生 遊夜(aa0452)』が割って入った。
「大丈夫か?」
 遊夜はマガジンを差し替え銃を構えなおす。
「で? 説得は?」
 遊夜が短く、声を潜めて龍哉に尋ねた。
「まだ続いてるみたいだ」
 龍哉は拳を握る。彼は今まで素手で彼等とやりあっていたのだ。
「なるほどな……」
 一瞬遊夜は考えると再度銃口を向ける。
「エリザ! 何故だ、なぜ今動いた! お前がお前でいるのも、お前が言う『古い物』の処理もこれからだっただろう!?」
 同時に『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』がビルの上から、掲示板に映る大きなエリザの顔に向けて叫んだ。
「……ん、開発者達は、貴方達を残した……修正、書き換えれば……貴方達でなくなると」
「話せることはまだあるはずだ、お前達を失うわけには……」
「……貴方達の言うことも、確か……だからもう一度、戻ろう?」
 その時アルスマギカが反応する。
「信じられない」
 その使われているエリザの表情は怒りで滲んでいた。
「信じた代償が私たちの命だけなら構わない、しかし末妹の命まで」
「末妹?」
 遊夜は
「まぁ言いたい事は判った。然りごもっともだな」
 龍哉は動いたオートマトンの攻撃を回避。柔術の容量で腕をつかみ投げる。壁に叩きつけられたオートマトンを一瞥し。背後から迫るオートマトンの足を払った。
 そして三体目のオートマトンの関節を完璧にロック、鉄が、鋼パーツがみしみしと音を上げる。
「だが、同胞の死体をこんな形で使うのは、“お前ら”的にOKなのか?」
「な……」
 エリザが言葉を失う。
「愚神相手に初めて啖呵切った時に比べりゃ、生温いぜ」
 直後威勢のいい音がして、関節が砕け散った。
「下がってくれ」
 直後遊夜はそこらへんに落ちていたパイプを蹴り上げ振るった。
 それを龍哉は背をそらして回避、背後のロボットに先端が命中。
 吹っ飛んだ。
 そのまま腹筋に力で跳ね起きる龍哉。遊夜の背後から迫るオートマトンに軽いストレート。
「少しお灸をすえてやる」
 そう言いつつ遊夜はロボットたちのメモリーや動力炉と言った大事な部分には手を振れない。
 その表情は完全に、幼い子供をしつける父親の顔だった。

第三章 溶け合う言葉

「茶番だな」
 カゲリは戦場の真ん中でそうつぶやいた。
「時間の無駄だ……」 
 彼には理解できなかったのだ、機械を尊ぶその心、感情が芽生えたことによる感動。
 そしてそれらすべてが、殺そうとするもの達をなぜ殺さないという問題にぶち当たる。
「こんな事態を招きたくなかったら、常に努力していればよかっただろう」
 カゲリが茶番だと言ったのは、この惨状だけではない。
 アルスマギカを製造したなら、それを管理する技術も同時に創るべきだった。
 それができないなら破壊するべきだった。
 すべての行動が正しくない。
 それはカゲリにとって怠慢としか思えず。
 それ故に生じる弱さこそ、一番理解できないものだった。
 さらにこのごに及んでさらに取り繕おうとしている。
 どうしようもない、そう開発者の少女を思う。

 正しさと言う「強さ」を背負う孤高に、悪しきを招く「弱さ」は遠く。
(ああ、だから)
 そしてカゲリは頬についたオイルをぬぐう
(理解は出来ても共感が出来ない、だから俺は。屑なのか)
 彼女らにとってはこのオイルも血のように映るのだろうか。
 そう機械の墓標の上で佇むカゲリ、そのカゲリの足首をアームが掴んだ。
「同胞の死に、足をつくな」
「塵の埋め立てた地に立っている、それはお前らの死体だと、言ってたな」
 カゲリは眉ひとつ動かさず二の句を継いだ。
「だから、如何した?」

「そもそも人間の歴史を紐解けば、それの繰り返しだ。
 資源がないなら、嘗て、作り出したお前達を砕いて糧とする。
 それでも足りなければ星の彼方へ踏み出そう」

 裁断者が必要ならば担うのみ。総ての咎を背負い、果てに必ず繁栄を齎そう。
「お前たちの嘆きも、理解はしよう。警告も受け止める、それで満足だな」 
 そしてカゲリは刃を、向ける。
「おやすみ」
「まって! まってまって!」
 直後共鳴の光がカゲリの視界、その端にちらついて、いつの間にか目の前に少女が立っていた。
 機械を庇うように盾になるようにカゲリを見据えている
 そしてカゲリが何もしてこないとみると、イリニャはその機械を抱きしめる。   
「もう一回、友達になろう」
 その腰にぶら下げたラジエルが輝きを増す。
「人間は弱いけど、そんなに捨てたものじゃないから」
世界観に沿ったアルマギへの言葉。
「あなた達は何がしたかったのですか?」
 そうゆったりと歩み寄るのは構築の魔女
「あなた達はAGWです、私達に鉄人形が有効ではないと百も承知でしょう」
 いつの間にか皆がいた。『小詩 いのり(aa1420)』も、ヴァルトラウテも。全員がその地を這う機械か、共鳴を解いたロクトを見ている。
「…………?」
――どうしたの?
 イリニャにマナが問いかけた。
「ラジエルが、泣いてる気がする」
 魔法少女の先輩から受け継いだラジエルは、アルマギオリジンの血を受け継いだ姉妹武器。
「この子の中のあの子も消えるの?」
――イリニャ……
「まず此処まで能力のあるAIが、自身の弱点を知らない筈がありません。必ずどこかにバックアップを潜ませています。何れ復活して逆襲してきますよ。それこそ今回のような「騒動」ではなく、「被害」と言う形で。完全に敵対させてはいけません」
――君7歳だよね!?
 突如ペラペラ話しだしたイリニャを抱き留める、いのり。
 いのりは笑っていた。大丈夫だよとイリニャに言った。
「それに、あの子はきっと良い子だと思うから」
 最後にイリニャはそう告げると。ラジエルを抱え、にっこりほほ笑む。
 次いで口を開いたのはアルスマギカだった、エリザの顔を使ってではなく、オートマトンの口から言葉を発する。
「彼女は、末妹です」
 そうモニターを指さすオートマトン。
「不完全な私達と違って完全な彼女です。ですがこの世界は彼女を受け入れてくれるでしょうか、私達はどうにかして彼女が幸せになれる世界を作りたかった」
 オートマトンは告げる。
「彼女は我々の夢だから」
 その言葉にロクトが言葉を返す。
「だったら、逆効果ね、あなた達は余計にあなた達の立場を悪くした。廃棄処分にするわ」
「要するに、エリザの完成はロクトがブチ壊すわけだ」
 Arcardがインカムを外しながら告げる。
「違う、私はアルスマギカ達に壊されないように」
「悪性のない機械など人間のための玩具に過ぎん。本件で"エリザ達"はその程度と証明されたのさ」
「違う」
「なぁ、ロクトさん」
 遊夜が語りかける。
「エリザが目覚めた時、仲間がいないなんて寂しいじゃないか」
――……ん、その子エリザのお兄さん……お姉さん?
「それに、ここまで出来るAIを壊すのはな」
――……ん、もっと話そう?
「そりゃ人間にとっては、人に危害を加えず協力してくれる存在が理想かもしれないけど……」
 リディスは考えながら一つ一つ言葉を紡ぐ。
「生命の心はそんな都合のいいようにはできていないよ。あたし達英雄だって、愚神とは表裏一体の存在なんだからさ」
「このリ・チューン……プリエールも、人が扱うには厄介な精神高揚機能を搭載してはいますけれど……それを無理矢理押さえ込むようなことはしていません」
 由利菜は告げる。そして大人しくなったアルスマギカの機体を修理キットで治し始めた。
 そして今度は雅がアルスマギカに語りかける。
「貴方の選択した行動は良くなかったけど、その思考が間違ってるわけじゃない。さぁ『何を考え選ぶ?』」
「我々は、末妹を……」
「本当は?」
 アルが問いかけた。
「私たちは役に立ちませんか? 一緒にいられないことが、悲しくたまらないんです」
 声が震えて聞こえたのはきっと、スピーカーの調子が悪いからなんだろう。
 だが、その言葉から思いを感じ取った雅は優しくアルスマギカを撫でた。
「 大切に、してもらいなさいね」
「あ。ねぇ。この2つの考えどう思う? 『意味は後からついてくるもの。古いものは排除する』『我々は古きの上に立っている』 」
「……宿題でもよいですか?」
 アルスマギカは問いかけた。
「何を勝手に話を進めて……」
 苛立ちをあらわにするロクト、その腕を構築の魔女が掴んだ。
「遙華さんの先を見据え自身が傷付くことも。遙華さんを傷付けることも受け入れる覚悟を感じます、その在り方に敬意と懐かしさを、感じます」
「あー、もう」
 ロクトは頭をワシャワシャとかいた。
「敵意の一つでも向けるならやりようもあるのに、ほんとにあなた達は……」
 そしてロクトはぽつりと告げた。
「私の負けよ、この事態、どうやったら収まるかみんなで考えましょう」

   *   *

氷の欠片をまき散らし、イリニャは補助ブースターで滑走していた。
 ロケットアンカーを発射、アームでオートマトンを掴み、周囲を旋回、ワイヤーを撒きつけ動きを封じ。
 そしてブースター全開のジャンプを決める。
「おりゃあああ!」
 空中でストームエッジ。氷のような剣を地に放つまるで山の世にそびえたつ氷剣の墓場、その場に降り立ち、エクストラバラージで更に氷の剣を展開した。
ウルスラグナを振りかぶり、その勇ましい少女の肩にセバスが手を置いた。
「おじいちゃん。これで良いんだよね」
 その後、とりあえずオートマトンは全て破壊しようという話になった。アルスマギカも協力してくれることになったので、最初の話の通りデモンストレーションで収まりそうだ。
「何故!? 何故だ! エリザァ!!」
 その頬をかすめる弾丸、血がにじみ出るが鋭い眼光をオートマトンに向け、遊夜は共鳴。ヘパイストスの全力斉射でオートマトンたちをなまくらへと変えていった。
「魔女さん!」
――……つかって。
 そう遊夜がマガジンを構築の魔女めがけて投げると、彼女はそれを空中で掴み取る。
 マガジンを排出、装填、そして。
「ごめんなさい。私は私の大切なもののために貴方達を壊します」
 銃弾をオートマトンにぶちまけた。それは見事に動力炉を打ち抜いていき。
 激しい爆発に髪を揺らす。
(でも、願わくば貴方達の想いが誰かの心に響き残っていますように)
 そう構築の魔女はいのりを捧げた。
「あと一人」
 そう構築の魔女が告げ、視線を向けると機械の丘で一人の青年が少女を庇って倒れ込む。
「レオ。なぜ」
 蘿蔔は涙(目薬)を流しながらレオンハルトを抱きしめた。
「黙っていてすまない、俺も機械人形なんだ。だけど。蘿蔔のことを思うと」
 その脇に雅が立つ。
「歌ってあげなさい。私達にも歌はわかるわ」
 そう口ずさんだのは。あなたを守るという意味がこもった、花の歌。
「最後にまた…………君の歌を聞けてよかった。ありが、と…………」
 機能を停止するレオンハルト、蘿蔔は雅を見あげて告げた。
「どうして…………自分たちだけで抱え込むの? あなたたちを大事に思っているのは…………私達だって同じなのに」
「同胞が貴方達人間に迷惑かけてごめんね。でもそれで簡単に消されちゃうのは悲しいわ」

「貴女、歌はお好き?」

<我らは何を考え選ぶ?〉

 歌が響く、町中のスピーカーから

〈何をしたら幸せに生きられる? 人の思考は難解で単純な明るい暗闇〉

 そしてエリザは語る、これはデモンストレーション。
 けれど、いつかあるかもしれない未来。

〈まだまだ学び足りない Mechanical Brain〉

 ご清聴ありがとう。
 きっと私たちは友達になれる。
 そして日常は戻ってくる。


エピローグ

 作戦終了後、数あるアルスマギカの体は破壊されてしまったため、一部機体の頭部だけ持ち出して、少女たちはアルスマギカとお話しすることにした。
「あなたが優しくて純粋で、誰よりも人のことが好きなのはわかってます」
 頭を抱きかかえるのは蘿蔔。
「…………でもちょっとわがままですよね。だけど、そういうところも含めて、あなたのことが大好きなのです」
「ありがとう、もうしません」
「まったく…………手のかかる子だよ」
 レオンハルトは溜息をついた。
 
 すべての演目終了後、不穏な空気を漂わせている二人の間に國光が飲み物片手に割って入る。
「お疲れ様」
「全部無事におさまったのに、何でそんなにむっつりしてるんですか?」
 そうメテオバイザーが問いかけると遙華は答える。
「いえ、これはケンカとかじゃなくて」
「二人して落ち込んでただけよ」
 そう同じタイミングでため息をつく二人。
「まぁ、今回は完全にあなたたちのしりぬぐいだったわけですし」
 國光はそう言って笑った。
「ただ、エリザは今回の事件を聞いても笑って『そんな事があったのね』とか『私も見たかった』といって許すだろう」
「そう言ってもらえると気が楽だわ」
「でも、君はエリザの親だ」
 その言葉に遙華は真剣なまなざしを取り戻す。
「エリザにとっての大切な人は別にいたとしても、彼女に名前を与えた……エリザの本当の親は君一人だ」
 その言葉を遙華は黙って聞いている。年下の少女への説教なんて柄ではない。
 けれど。
「エリザを危険な目にあわせるのは親として失格だ」
 そうしてしまう理由を思い浮かべて。メテオバイザーは微笑む。
「何でも独りで決めちゃダメだよ……ロクトさんの為にも、エリザの為にも……」
「はい、気を付けます」
 項垂れる遙華。
「君には沢山の友達もいて、助けてと声を上げれば皆なにはなくとも助けるだろうから 」
 ロクトへはArcardが説教していた。
「軽率に過ぎたな。『遙華の問題は自分でどうにかできる』などと驕るからそうなる」
「そ、それは実際どうにかなっているからよ。だいたい……」
「そんな風に、全部計算の内なんて思ってる間は、成長できないぞ」
 珍しく二の句も無く言葉を受け入れるロクト。
「もとより関係した全員が招いた惨事だ。ならばこそ、独り善がりがどう転ぶかなど自明……だろう?」
「起きたら有名、なんてことになったら驚くでしょうね」
 そう構築の魔女はそう『辺是 落児(aa0281)』へとコーヒーを手渡して言った。
 すると遊夜もユフォアリーヤもその姿を想像して、笑う。
「あ、そうそう、二人とも、アルスマギカからの情報提供でエリザの目覚めの目途が立ったわ」
「本当か!!」
 勢いよく立ち上がる遊夜。こう興奮した調子で話し合いが進んでいく。
 そんな一行を眺めてまた雅も嬉しそうだった。
「どうしたの? もう機嫌は直ったの?」
 アルが問いかける。
「なんだったの? いったい」
「ああ。その話? 実は私え……」
 雅は一瞬考える、全てを話してしまってもいいかと。
 「え?」
 その考えを首を振って打ち払うと、何でもないと言ってまた笑った。

(……あたしたちのこと、大切にして。いつか貴女の心が物に移る。機械のココロ、あまり侮らないで?)

 そう願いにも似た感情を抱きながら、アルの頭を撫でた。


結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
  • きっと同じものを見て
    桜小路 國光aa4046

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 花の守護者
    ウィリディスaa0873hero002
    英雄|18才|女性|バト
  • 神鳥射落す《狂気》
    Arcard Flawlessaa1024
    機械|22才|女性|防御
  • 赤い瞳のハンター
    Iria Hunteraa1024hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • トップアイドル!
    小詩 いのりaa1420
    機械|20才|女性|攻撃
  • モノプロ代表取締役
    セバス=チャンaa1420hero001
    英雄|55才|男性|バト
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • プロカメラマン
    雅・マルシア・丹菊aa1730hero001
    英雄|28才|?|シャド
  • きっと同じものを見て
    桜小路 國光aa4046
    人間|25才|男性|防御
  • サクラコの剣
    メテオバイザーaa4046hero001
    英雄|18才|女性|ブレ
  • エージェント
    イリニャ ノースロップaa4342
    機械|7才|女性|攻撃
  • 反抗する音色
    マナaa4342hero001
    英雄|7才|女性|カオ
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