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WD~金蛇の村~
掲示板
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憑き物落とし(相談卓)
最終発言2017/03/01 00:02:11 -
NPC質問卓
最終発言2017/02/26 23:04:49 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/02/27 00:33:23
オープニング
● 生贄を選ぶ村。
南アメリカ、その文明の手も届かない奥地にひっそりと村がある。
牛を飼い、羊を離し、生計のほとんどを家畜で賄っている人口百人にも満たない小さな村。そこで事件が起こるという。
これはプリセンサーの予知をかみ砕いて伝えた報告書である。
その村には風習があった。百年に一度子供たちが神を抱く、その子供を山に捧げるという風習だ。
神を抱いた子供はやがて山に登らなければいけない。その山の最奥、神の住まう滝に身を投げ、神を自然に返すことができれば、そこから百年の豊穣が約束されるらしい。
だが、その風習を続けるうちに反対するものが現れたそうだ。
村は半分に割れた結果、神を宿した子供を山にやる期限が来てしまう。
その日の夜にそれは起こった。
月のない新月の晩。星さえ消えそうな闇が村を支配し。十人の子供たちが広場に集められた。
今からでも山に向かわせるべきと訴えた村人たちの前で村長は告げる。
「我々は神の庇護を捨て、我々の力で生きるべきだ。時代はそうなっている」
その声に奮い立ったものもいただろう。
その言葉を残酷だと思う者、冒涜的だと思う者も。
ただ、三者三様の想いを抱く村人たちは次の瞬間、全く同じ思いを抱くことになる。
鮮血が、広場の石畳を彩った。
村長は振り返る。その時見えたのは少女の笑顔と。
そして崩れ落ちる自分の下半身。
少女の華奢な右腕が自分の心臓を貫き、なおかつ、左腕で胴体を切断したのだと理解するころには、村長は絶命していた。
直後村は悲劇に包まれる。
一夜にしてこの村は滅んだ。
愚神を宿した少女の手によって。
ただ、この予知は一週間後に起こる悲劇であり、今から対処すればまだ間に合うという話だった。
ただ、問題はどの子どもが神を宿しているのか正確にはわからないということだが。
● 世界を旅する。
「そう言うのって、お話の中だけだと思ってたな」
飛行機で揺られながら春香は告げた。
「この村に伝わってる神様って、蛇らしいよ」
金属のように硬い鱗を持つ蛇で、その蛇はまれに人間の中に自分の卵を植え付けてしまうらしい。
「神様と接触した子供に卵が宿るらしいけど、それが誰だかはまだ解ってないんだって」
しかも十二歳以下の子供限定。
「だから、その村で十二歳以下の子供、全員に愚神の容疑がかかってるよ、候補は十人。見分ける方法は今のところないよ」
愚神はその夜になるまで霊力を一切遮断してその子供の体内に潜伏するらしい。
ただ、疲れたように春香は告げる。椅子にもたれかかり、心配そうなerisuの頭を撫でた。
「あの子が幸せになるようにって謳った世界が。彼女の思い描く幸福で溢れるためにはどれだけの時間と、労力とが必要なんだろうね」
そう悲しそうに春香は告げた。
「一つ問題を解決しても、まだまだ世の中には悲しいことがある、私そんなのいやだよ」
そして春香は瞼を下ろす。
「この任務、もしかしたら子供を殺すかもしれない。そうなったら私が。やるよ」
● 生贄候補の子供たち。
村につくと皆さんはまず十人の子供たちと合わせられます。
歳は十歳から十二歳、男の子四名。女の子六名です。
ただ皆さんはこの中の誰に愚神が宿っているか分かりません。
見分ける一番簡単な方法は、適切なスキルを使用することでしょうか。
ただ、そんなことを
言語は通じることとします。子供たちとコミュニケーションを取ることは可能です。
子供たちは電気ですら珍しい地域に住んでいるので、彼女ら、彼等の興味を引くことは簡単でしょう。
解説
目標 愚神ヘルビアンガの撃破。
***************下記PL情報************
● 子供たちの告白
子供たちの信用を得ることができれば。簡単に愚神と接触をした子供を割り出すことができるでしょう。
さらにその接触した愚神についても詳しく教えてくれるかもしれません。
そして取りついている愚神はヘルビアンガという、蛇の愚神です。
●デクリオ級 ヘルビアンガ
子供たちの体から愚神をおいだそうとすると
愚神は姿を現します。
蛇の下半身、女性の上半身を持つ愚神で体長は二メートル程度。
通常攻撃は爪によるひっかきと、やすりのような体での体当たりで、ダメージとしては低めですが、搦め手を得意とします。
使用してくるスキルは下記の通り。
・金昇華の魔眼。
目と目があった者の体を金属化させる。
その視界にヘルビアンガの瞳をうつすだけでも効果があり、長時間見れば見るほどにステータスがダウンしていく。
・水呼び
水の神であった素質を利用して周囲に水を召喚する。攻撃に転用することは難しいが周囲を分厚い水で覆うので、移動の妨害、防御に使える。
・アースシェーク
尾を叩きつける攻撃、威力が高いが至近距離攻撃。ただし地面を強く揺らすので、行動の妨害を受ける可能性がある。
リプレイ
第一章 生贄の村
「そのまんまだね」
『百薬(aa0843hero001)』は窓の外を流れていく赤茶けた大地を眺めてそう言った。
その視界の端の方では、少し後ろをもう二台大型車が走っている、これでリンカーを護送するための車、全てである。
『餅 望月(aa0843)』は視線だけ向けて百薬を見ると、彼女の表情をまじまじと見つめ、そして頷く。
うん。そうだね。
「百薬さん、気分でも悪いんですか?」
そんな彼女の肩に手をかける『御門 鈴音(aa0175)』その後ろで春香が袋を広げてる。違うそう言うことではない、そう首を振る百薬。
「そんなことないよ、でも」
そこで百薬は苦笑いを浮かべた。
「輝夜ちゃんはうるさいかな」
「わー!」
慌てふためく鈴音。それもそのはず、先ほどから『輝夜(aa0175hero001)』は鈴音がカステラを忘れたために禁断症状が出て暴れまわっているところだった。
「日本へ帰るんじゃーーーー!」
そんな彼女をなだめているのは『リーヴスラシル(aa0873hero001)』
「輝夜ちゃんは本当に、子供っぽくて可愛いなぁ」
望月が告げた。
「お主が言うでない!」
ご機嫌斜めの輝夜を抱えてリーヴスラシル。そして『月鏡 由利菜(aa0873)』が歩み寄る。
「子供はやはり、元気に騒ぐ生き物ですよね」
由利菜は物憂げに告げた。
「その……未来ある子供達を犠牲になどさせません。その為に私達がいるのです、三船さん」
「うん、絶対に止めよう。悲しい目にあう子どもなんて、私達だけで十分だよ」
その言葉に鈴音は視線を伏せる。
「モチヅキ殿、スズネ殿、今回も鶏鳴机の一員として参加させて貰った、連携して挑もう、それは私たちにしかない最大の武器だ」
そう告げるとリーヴスラシルはコンビネーションを確認し始める、人を救うための努力は怠らない、その思いは全員に共通するものだったからだ。
そんな作戦会議が二時間弱続くと車は停止する。
目的地についたのだ、真っ先に車から降りたのは『羽跡久院 小恋路(aa4907)』
「ふふっ、可愛い可愛い私のセリカ♪ さぁ、お散歩の時間よぉ」
そう、じゃらりと鎖を手繰る、すると『セリカ・ルナロザリオ(aa1081)』が姿を現した、その鎖の先はセリカの首輪につながっている。
「うわぁ! アブノーマルだ」
純情少女春香は二人の関係を直視できない、顔を手で覆って二人を見ている。
「指の隙間から見てんのバレバレだぞ」
『彩咲 姫乃(aa0941)』がそう冷やかした。と言っても『メルト(aa0941hero001)』も同じように姫乃に引かれているのだが。
「らららら? らららら?」
相変わらずメルトが気になるerisuである。
「おい、早く行こうぜ」
もたつく一向に、そう声を駆けたのは『沖 一真(aa3591)』
一真は村へ続く道、砂利で固められた通路を見て、日本とは全く違う文化を不思議に思った。
「濡れ女退治ですか……私が是非討伐して見せます御屋形様!!……え、違うのですか?」
その隣を歩くのは『三木 弥生(aa4687)』そんな彼女を一瞥して一真は思う。
(御屋形様じゃないんだけどなぁ…………って今更か)
その物思いが気になったのか『月夜(aa3591hero001)』は一真の顔を覗き込む。
「どうしたの? 一真」
「いや、なんでも」
そして首を振って月夜は弥生を見据えた。
「弥生ちゃん、無理はしないで、ね」
そんな三人を『三木 龍澤山 禅昌(aa4687hero001)』は微笑ましく見つめていた。
そしてはるか先を指さす、そこには村の門があり、その下には男が一人佇んでいた。
村長である。
彼に案内され、まずは村の広場にリンカーたちは案内された。
宿泊施設、食料や村での待遇の説明を受けると、最後に彼は語り始めた。
彼は語る、この地に残る忌まわしい風習と、その風習になぞられ生贄にされる子供たちの悲惨な伝統。
その話を『鬼子母神 焔織(aa2439)』は拳を震わせ聞いていた。
「赦せん。絶対に赦せん」
『青色鬼 蓮日(aa2439hero001)』はその手を取る。
「どこぞの神とは存ぜぬも、皆が生きる為の贄とは存ずるも。今のこの世において、鬼子母神の名にかけて、生贄は寛容できん」
姫乃も同じ気持ちだった、この大人たちが。そう思うと自然と視線が冷たくなる。
しかし彼女の手を取るものがいた。
村の子供、少女だ。
ネイティブアメリカンの血筋なのか、自分たちとは違う肌の色。
けれど触れ合えばわかる、自分たちと同じ命が彼女たちに流れている。
「お姉ちゃん、怖い人?」
自分とさして年の変わらない少女にそう気を使われてしまえば、今胸にあるモヤを振り払わずにはいられない。
姫乃は手鏡をチェックした。こわばっている顔を指でもみほぐし、そして告げる。
「……いま笑えてる?」
そう少女に問いかける。
「…………ニヒヒ、子供いっぱぁーいだぁ……」
そんな姫乃をおいて子供たちと戯れはしゃぐ蓮日。もはや仲良くなっていた。
そんな能天気な光景を見せつけられると焔織の怒りが少しずつ収まっていく。
「…………蓮日さマは本当に、ワカらない時がアリまス。このヨウな悲劇は、絶対に阻止せネバ…………ッ」
その言葉に頷く一真。
「月夜……」
その言葉で全てを察した月夜は子供の頭を撫でて告げる。
「一真、絶対助けるよ、うぅん――助けたい」
「わかったぜ。お前の好きにすればいいさ――後悔の無いようにな」
第二章 神を抱く子ら
場所をうつして村はずれの森林地帯。
普段子供たちはそこで遊ぶということで、リンカーたちはそこに招かれていた。
「やっほーう、鬼ごっこー」
駆け回る百薬、その手から逃れようと、子供たちは声をあげて逃げた。
『ニウェウス・アーラ(aa1428)』の腰回りにまとわりつく子供たち。鬼ごっこという遊びがこの国にもあるのかと感心しつつ、子供たちの障害物に使われているのだ。
そんな戸惑いをうかべるニウェウスを見て吹きだす『ストゥルトゥス(aa1428hero001)』
「……なに?」
「いやいや、そんな表情もできるのかと思って面白くてね」
そう告げると、少年四人を引っ張っていって告げる。
「走り回って遊ぶのもいいけど、こういう遊びも楽しいよ?」
そうメモ用のハンドアウトカードセットと100面ダイスを持ち出して子供たちとちょっとしたゲームで遊ぼうと誘う。
「おねーさんはゲーム好きだからねぇ。即興でミニゲームを作る位、お茶の子さいさいなのさ」
「おねーさんは、おねーさんなの?」
「ん? どういう意味だい?」
「男かと思った」
そう少年が告げると、ストゥルトゥスは少年の頭をぐちゃぐちゃとかき回す。
その光景を見て、今度はニウェウスが笑った。
「なにさ、何で笑ってるのさマスター」
そう口をとがらせるストゥルトゥスはニウェウスから言葉を貰わないうちに少年に手を引かれることになる。
「ゲームしようよ」
「……そうね。みんな楽しみにしてるみたいだから、早く始めようか。ストゥルの趣味が役に立ったの…………初めてな気がする、よ」
「マスターぁ、さり気にヒドくね?」
そう言いつつ平気そうなストゥルトゥス、彼女は鞄を漁りゲーム機を取り出す。
子供たちは歓声を上げた、これが噂に聞くゲーム機かと集まってくる。
「ボクってば、神様の話が好きなのだよ」
中に入っていたソフトは、神々を倒していくことをテーマにしたゲーム。
「んで。実は、ここにも神様がいるって話を耳にしてネ。もう、気になって仕方がないっつーか!」
「蛇神様のこと?」
一番年上の少女が告げる。
「それかな。ねぇねぇ、神様に会った事がある子とかいない? 是非ともお話が聞きたいデス」
「私逢ったことがあるわ」
その言葉に一同は凍りついた。
* *
そして村人の家に招かれた少女たち。姫乃と春香と鈴音。その周りには少女が四人ほど集まっている。
「こんなに買い物して、奮発したね?」
春香は問いかけた。
「だいじょうぶ……食費を切り詰めればちょっとは余裕がある」
「オナカスイター」
「今度ご飯おごろうか?」
春香が姫乃にそう尋ねた。
ゲームはいくつかやってみた、ルールの簡単な、七並べ、ばばぬき。神経衰弱など。そこから受けがよかったものを遊んでいくつもりだった。
「なんでルールブックが?」
春香が問いかける。すると姫乃はそっぽを見て告げた。
「やれるかと思ったけど、ちょっと無理っぽいな、テーブルトークRPGはさすがに難易度高いからな」
そう告げ、姫乃は隣に座っている子の手札からカードを一枚抜き取る。
それにはジョーカーが描かれていて。
「うわーーーー、わざと掴ませやがったな!」
姫乃が大げさにリアクションすると口を押えて笑う少女。
喜んでもらえてよかったと姫乃も笑みを浮かべた。
「次はまけねぇからな!」
対して外では一真が子供たちを伴ってボールを蹴っていた、姫乃から借りたボールだ。
「よぅし、とりま遊ぼうぜ。って、ここではどんな遊び流行ってんのかなぁ?」
「一真がボール蹴ってる、珍しい」
どちらかというと暗い室内で本……、巻物を眺めている姿が似合う一真である。
なので、なんとなくその姿が面白くなって月夜はその光景をカメラに収める。
「よし、ゴールを決めてゲーム形式でやろうぜ」
その時、弥生と三木が後ろから追いすがりスライディングでボールを奪った。
三木はボールを彼にパス。弥生はそれをトラップ。綺麗に勢いを殺して地面に下ろした。
「このっ、あいつらからボール取り返すぞ!」
「はたして、御屋形様にできますか?」
そう弥生が挑発しながらボールを蹴って走り去ってしまう。
そんな光景をあらあらと眺めていると、月夜に一人の少女が歩み寄った。
一番歳が上で、落ちついていて、不思議な雰囲気を纏った少女だった。
「それは、なに?」
「え、これ気になる? すまほって言うんだよ」
月夜はスマホを手で振って見せる。
「触ってみる? 私は月夜。よろしくね。あなたのお名前も教えてくれる?」
「私は、ベル」
そう告げる少女の背後で、一真が手を振っているのが見えた。
「あ、呼んでる。少し待っててね?」
駆け寄る月夜、次の瞬間一真は月夜と一方的に共鳴した。
――え?
そして弥生のボールを奪いにかかる一真。
「あーー! 御屋形様ずるいです!!」
共鳴した後とする前では身体能力が根本的に違う。
一瞬でボールを奪った一真は子供たちめがけて胸を張った。
「これが俺達が共鳴した姿だ。かっこいいだろ?」
――また、調子乗って…………。
月夜がうんざりしたように告げると同時に由利菜の声が響く。
「みなさん、お菓子の準備ができましたよ」
見ればリーヴスラシルと由利菜がテーブルを運び込み大量のお菓子を並べていた。
「ちょっと贅沢に果肉入りのゼリーを持ってきたぞ」
そう姫乃は自分が持参したゼリーを子供たちに見せる。
手作りなのは秘密である。なんとなく恥ずかしいから。
「すごいね、姫乃ちゃん。手作り?」
春香がばらしてしまった。
「そう言う三船は何を持ってきたんだ?」
「ぐみ」
「ぐみ?」
「手作り」
「てづ……くり?」
「やぁぁーーーーん子供いっぱい! こっちおいでぇぇぇええ!」
チョコビスケット片手に蓮日は子供たちを追いまわし始める。
捕まえた子供たちへと片っ端からビスケットを配っていく。
「なんと、火であぶってもうまいのだ」
そう焔織が起こしたたき火へと子供たちを集め。火バサミで炙らせる。
「コレはなかなかの力作ぞ! ほれ、焔織。それに姫乃ちゃんに月夜や食うてみぃ!」
月夜と姫乃は身の危険を感じるも、子供たちが美味しい美味しいと食べるビスケットから目が離せない。
「…………ホントに、悪い冗談のようです…………これデ、冗談のヨウに美味いのデスから…………」
焔織の言葉についに理性が瓦解した。二人はビスケットを受け取る。
「チョコレートも焼いてみようかな」
そう望月は持参した『贅沢ピュアチョコレート』を火であぶる。
「食べる?」
そして子供たちに差し出した。
「美味しい? いい子にしてたらきっとまたもらえるよ」
そう望月は告げると百薬が少女の頭を撫でた。
「がんばったら今度はみんなにあげられるようになる」
「はーい、みんな注目」
そう手をあげてアピールしたのは小恋路、次の瞬間両手からトランプが花びらのように散った。
どこからともなく現れたトランプに子供たちの目が奪われる。
そして小恋路が一枚拾い上げるとそれは燃え立ち花火のようにはじけて消える。
そこから怒涛のように披露されるトランプマジックにセリカも目を奪われた。
「最後まで見てくれてありがとう」
そう告げると小恋路は子供たちを抱きしめる。
それを物欲しげに見つめているセリカ。
「忘れてはいないわよ」
そう最後にセリカを抱きしめると恍惚とした表情を浮かべていた。
「あの、みなさん」
そして任務中であることを思い出したセリカは小恋路の腕からするりと抜けると子供たちに問いかける。
「この村について、面白い秘密をしりませんか?」
首をかしげる子供たち。
「とっておきの秘密を持っていそうなお友達はいますか?」
――壊れてやがる。
そうボソリとつぶやいた百薬。傍らにライブスゴーグルを投げ捨てた。
「いやいや、捨てちゃダメだよ」
共鳴を解いてゴーグルをひろう望月。
そして一番歳が上の少女へと歩み寄り、その肩に手を置いて問いかける。
「神様とお話してる子はいるのかな?」
「神様?」
その少女はまたも首をかしげた
「……コノ地には蛇ヲ模シタ神が、いるそうですね」
焔織が切りこんだ。
その言葉を継ぐように一真は全員を見渡して告げる。
「聞いてくれ皆。俺らがここに来た理由は皆を愚神から救う為だ。そのためには俺らだけの力では不可能だ。ここにいるお前らがそいつに立ち向かう勇気を出さない事には」
ざわめく子供たち。その中で一人平静を保つ少女がいて。その少女は誰にもわからないように笑った。
* *
一行は子供たちと遊び終えると休憩と称して村長の家に集まっていた。
セリカと小恋路が文献など探したいと言ったためである。
さらに今後の方針をまとめるために子供たちがいない場所で話がしたかったというのもある。
そして小恋路はじゃらりと鎖を鳴らしながら村長によってまとめられた資料を眺め観ていく。
セリカはその間言いなりである。されるがまま。鎖を引かれたときに苦しげに呻く様がなんとなく色っぽく男たちは目をそらした。
「対象の子を誘い出すなら夜がいいのかな」
望月は蓮日のクッキーをかじりながら問いかける。
「セーフティーガスを使ってみんな眠らせておく?」
「咄嗟に起きてこられるよりはいいな、頼めるか?」
一真が言った。
「私、話がしてみたい」
そう告げたのは月夜。
その言葉にセリカは頷いた。
「では、もっと話を詰めようか」
リーヴスラシルが告げると全員が頷いて中央の大テーブルに向かう。
その集いの中に鈴音の姿はなかった。
* *
夢を見ていた。
髪の白い老婆が自分を指さして何事かを告げている。
「……澄子……黄泉繋ぎの巫女はあの世とこの世を繋ぐ門に儀式をもって巫女の魂を黄泉へ送らねばならぬ……娘を差し出せ……それが宿命じゃ……」
その言葉は冷え切っていて、自分の両腕は母の衣に絡みついてた。
「……嫌でございます。親は子の幸福な未来を願うもの……何故愛する我が子の未来を奪えましょう?」
そして、その光景が霞のようにぼんやりと消えると、体を揺する手の温かさが鈴音を覚醒させた。
「鈴音? 寝とるのか? うなされておったぞ」
「……えっ?……なに? なんで私寝てるの?」
それは、自分が追い立てた少年と衝突して頭を打ったせいだと輝夜は告げる。
第三章 神堕
夜が来た。
望月は最年長の少女と少年を呼び出しすべてを話す。
「今からみんなには眠ってもらうけど、朝が来たら怖いことなんて何もなくなってるから」
そして家に戻る少年を見送り告げた。
「ありがとう、ちゃんとまた仲良く遊べるようになるからね」
しかし望月の手は少女の手を握っている。
「あなたが……」
その少女は月夜にカメラを見せてもらっていた少女。
「でもね、みんなは神様を悪い、悪いっていうけど、違うんだよ、神様も寂しいの、だから私も行ってあげるのよ」
「それは違うよ」
月夜は告げた。
「もし神様が本当に寂しいんだとしても、そんな方法で誰かを連れて言っちゃいけない。友達が欲しいなら、こうやって、手を取り合って、分かり合うところから始めないとダメだよ?」
その少女を山の奥へと案内する望月と月夜。そこにはリンカー全員がそろっていた。
「怖くないよ。神様に連れて行かれる方がよっぽど怖いもの」
少女は告げた。焔織はそのタイミングでVR-データリンクを装備、金蛇の神についてはデータが出そろっている。
その魔眼対策もばっちりだった。
それを眺めながら由利菜はリンクコントロールでレートをあげている。
月夜は由利菜を振り返る、すると由利菜は頷いた。月夜は頷き。一真と共鳴。
そして。
――私も元いた世界では祀り上げられた存在だった。だから分かるの。神を抱くあなたの恐れが……分かる。だから助けたい。
直後溢れる霊力の奔流。
一真は一瞬月夜にすべての力をゆだね、そしてその言葉が力を帯びる。
――……去れ、これはこの子の身体だ――今すぐ立ち去れ!
突如、少女の体から溢れる霊力。
「くるぞ!」
姫は叫び、手鏡を取り出す。直後それは一真を巻き込み形を成した。
「御屋形様! 月夜殿!」
弥生が叫び、駆けた。拘束されかけていた一真を救出し、距離を取る。
――お出ましだね、マスター!
「……わかってる」
ニウェウスは駆ける。巨大な愚神をスルーして少女へ一直線に。
それを追って爪を走らせる愚神。
「させません!」
間に入ったのは由利菜。攻撃を盾で弾く。
次いで盾を死角に潜んでいた望月がその手の槍を愚神に突き立てた。
愚神の悲鳴が上がる。
そして、体勢を立て直した一真と、弥生。
二人のコンビネーションがさく裂した。
目くらましの魔術、それに乗じて弥生がその体に刃を叩きつけた。
「氷壁よ、具現化せよ!」
その盾を二人を隠すように展開、敵の反撃をそらす。
これを機にニウェウスは戦線をいったん離脱する。
そして焔織の盾を踏み台に飛んでストレートブロウ。
大きくはじかれた愚神は木に体を叩きつけられる。
「はぁ!!」
それに乗じて春香がダガーを投げつける、それが複数に分裂して愚神を襲った。
その背後から鈴音の奇襲。
切りぬけざまに大剣を盾に視界を遮る。だが。
「……っ」
――鈴音よ、体が……。
「終わるまで持てばいいわ! それより、散開しないと」
視線とは一方にしか向けられない。なので、多数の方向から同時に攻撃すれば、それだけ金属化のリスクを減らせる。
それならここで自分が動けなくなるわけにはいかない。
だが動きが鈍くなった鈴音に鋭いかぎづめの一撃が飛ぶ。
それをはじいたのは姫乃。そして奇襲を仕掛けると同時にはじかれたようにまた木々の中へと戻る、ヒット&アウェイ。
素早さと一撃の重さを重視した戦法だ。
だが、ひとつの誤算が彼女を苦しめる。
「鏡程度だと、金属化を受けるぞ!」
姫乃は叫んだ。手鏡を投げ捨てると、なるべく目を見ないように意識して、再度すれ違いざまの一撃。
だがその手をはじいたのは魔弾。
「セリカ、良いアプローチよ」
そう褒められると嬉しそうなセリカ。ワールドクリエーターをつき刺し敵を見据える小恋路は、四肢の先が硬質化していた。
言葉を失うセリカ。
「大丈夫よ、あなたのかわりに傷ついたのだと思えばなんてことはない。それよりセリカ」
甘く主は、自分の名を呼ぶ。
「あの目を……」
「打ち抜きます」
そう放たれた弾丸は愚神の頬をかすめた。そして小恋路はグラスコフィンによる防御に専念する。
直後愚神は危機を覚ったのか、その分厚い尻尾で大地を殴りつける。
全員の体制が崩れるが。あらかじめ予想して飛んでいた由利菜には関係ない。
「隙を作ります!」
鈴音は大剣を地面に突き刺して体制を立て直す。
由利菜の一撃。そして鈴音の一撃が交差し。
鈴音の切り上げと同時に大剣の下をくぐって由利菜は愚神の真下に位置取った。
そしてその顎めがけて。
「ヴァニティ・ファイル……!」
ライブスリッパーを放つ。
飛びかける愚神の意識、しかしすんでのところで踏みとどまり、アースシェイクを放つ。その後素早く後退。目指す先は、先ほどからチクチクと攻撃してくる一真。
「御屋形様! 前に出すぎです」
戦場に鋭い怒号が飛んだ。
見れば一真がほぼゼロ距離から、愚神の顔面にブルームフレアを放っていた。
悶える愚神。
「いや、近づかれたらどうしようもないって」
それと入れ替わりで弥生は愚神を切りつける。
駆け抜けざまの一撃。
反転して、鈴音とタイミングを合わせ、鋏のように愚神の腕を切り飛ばした。
突如上空に水が召喚される。
押し流された二人は距離を取ることになった。
「痛いですか?」
弥生は水に混じる血の色を見てほくそ笑んだ。
「傷がふさがらない毒を塗ってあります。特別調合です」
しかし戦闘中にちらりとでも見てしまえば魔眼の力は発動する、徐々に徐々に体の自由がきかなくなっているのがわかった。
――弥生ちゃん、動きが鈍いよ。
「わかってます! でもここで下がるわけには……」
弥生は重たくなった体を引きずるように前。
「……御屋形様、この敵……やたら動くことを妨害してきますね。何かあるのでしょう……?」
弥生は告げる。
「ステータスが下がれば移動力も落ちますし……行動妨害は移動も行動に含めるとしたらあるいは……?」
そう息をつく弥生。交代で焔織が前に出た。
――ひめのん!
蓮日が叫ぶ。それに姫乃は反応した。目を合わせただけで何をすべきか分かる。
「へんなあだ名で呼ぶな」
斧での一撃、突き刺さった斧を駆け上がり。顔面に一撃加える姫乃。
だが金属の蛇だけあって相当硬い。
「鬼子母神の名にカケて…………必ず、子らを悪しき宿命よリ…………解き放つ……」
その瞬間である。ヘルビアンガはのけぞった。姫乃のハングドマンの糸に絡め捕られ、全身の動きが止まったのだ。
――消えろ魔性! 貴様はこの時代に不要だ!
蓮日の叫びをかき消す、斧の唸り。天に掲げて回天させるそれはチェーンソウにも似た絶叫をあげる、それが金属の鱗を食い破ろうと、何度も何度も愚神を切りつけた。
その焔織の動きを魔眼で止めようとするヘルビアンガ。しかし。
「おっと、そっち向かれちゃ困るからな! 綱引きだ!」
姫乃の糸に手繰られ、体が思うように動かない。
その背後から痛烈な一撃。ニウェウスである。
「……こどもは、無事」
ついでに村の人にも事情を説明してきた、これで邪魔が入ることはない。
直後戦場にふる、光の雨。
ケアレインが周囲を見たし、傷ついたもの達を癒していく。
望月が祈るように戦場に立っていた。
「症状の重たい人から、金属化は直して置いたから。これで動けるよね?」
望月は由利菜と鈴音を見つめる、二人は頷いて駆けた。
何事かを察した愚神、水を呼んで接近を阻もうとするが。
おもむろに弥生は水へと手を突っ込んだ。
スカバードによる電流放出である。
しかしそれは弥生もしびれさせることになって。
「あわわわわわわわ」
――弥生ちゃ~ん。
「月夜殿……月夜殿はわが命に代えてもお守り致します故、……見ていてくださいね。母上様……」
なぜか遠い目の弥生である。
「……、まぁ、その意気やよし。だけどな」
感電のせいか、水も呼べなくなった愚神。
その眼前に立ちその両手から蝶を放つ。
――狂い惑え――幻影蝶――急々如律令!
「大技叩きつけてやれ、弥生!」
「わわわわわわ。御屋形様~」
しびれて動けない弥生。
その脇を駆け抜けたのが鈴音。
「……なぜだかわからないけど……私はあの子を救いたい……!……輝夜!」
――おうさ! 蛇を潰すなら頭じゃ! 全力でわらわの……いや、我らの力をぶつけよ!
「せっかく回復させたのに、また金属化なんてやめてよ!」
望月が告げる。
そして阿修羅に換装した由利菜も追いすがる。
「ラシル……! 誓約術に秘められし力、開放せよ!」
――我が主の背に光の翼広げ、剣にルーンの輝きを宿し給え!
「「ディバイン・キャリバー!!」」
「「鬼神乱舞」」
トップリンカー二人の攻撃がさく裂した。
斬撃で切り裂かれ砕けた肋骨、そしてその上から浴びせられた一撃で心臓は爆発。
完全に力を失ったその体は、姫乃がハングドマンを解くと地面に崩れ落ちた。
「神様が何だってんだ! 日本じゃ神頼みってのはな――、自分でがんばるから見守っててくださいって言うんだよ!」
そう悪しき神に姫乃は言葉を吐き捨てた。
エピローグ
「御屋形様! 月夜殿!! お怪我は御座いませんでしたでしょうか!!」
そう大慌てで歩み寄ってくる弥生、そんな彼女をうっとおしげに押しのけて一真は言った。
「大丈夫だ、むしろお前の方が……」
その隣で同じようにいちゃいちゃしているのがセリカと小恋路。
「あらあらセリカ……傷は無かったかしらぁ」
そう抱きしめる体は柔らかく、セリカは安心したように瞼を閉じる。
そんな一行を尻目に望月は愚神の死体を眺めていた。
「魔眼はドロップ品にならないかな?」
望月は煙を上げる魔眼拾い上げる。消えかけの魔眼を手の上で転がしてつぶやいた。
「ちゃんと破壊しなきゃダメだよ」
望月は若干引きながら言った。
「そういえば、とりつかれた子供は無事だよね?」
そう問いかけるとニウェウスは告げる。
「……大丈夫よ。今はぐっすり寝てる」
「生贄の伝承の確認もしないとね。百年に一度でも子供を犠牲になんていけないよ」
その言葉に姫乃は頷いた。
「それについてはゆっくりお話ししないとな」
「蛇神を倒して終わりだったらいいんだけど……」
悩める望月に百薬は告げる。
「また百年後に助けに来るよ」
「まさか今さらの年齢不詳マジック?」。他にも百年くらい平気で過ごしそうなのがいるし、英雄すごいね」
――あの子が幸せになる日、いつか来るのかな。
月夜はきぎの隙間から除く月を見つめて告げた。
「来るさ。きっと」
そう一真は噛みしめるように言った。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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