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シミュレーション・ディスカッション
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手強いシミュレーション?
最終発言2017/02/16 06:57:12 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/02/14 08:14:37
オープニング
●シミュレーション・ディスカッション
戦いの中に身を置く者は、どんな時でも冷静に状況を判断できなければならない。
「というわけで、今回は万来不動産の協力を得まして、こちらの資料を使って戦いのシミュレーションをしてみたいと思います。なお、ディスカッションで完成した作戦案は、万来不動産の方で万一の場合の避難誘導のマニュアルなどに活用するそうです」
いつものHOPEの会議室などではなく、万来不動産店内の一室を借りての研修だ。資料に使う図面などが社外秘のためである。
実戦も大切だが、頭を使った訓練もたまには必要だ。
ホワイトボードには、建物の図面が貼られている。今度できるという大型ドラッグストアーのものだ。同じ資料がA4サイズで各自に配られているが、どちらにも内部に置かれた棚や出入り口付近の情報なども細かく記載されている。
建物は横方向に長く作られ、西に当たる建物左側が商品搬入口、正面(南)に一箇所自動ドアの入り口がある。出入り口はこの二箇所しかない。
「この建物に、ヴィラン二名が人質を取って立てこもったという設定のもと、救出作戦を立案していただきます。強さとしては、皆さんが共鳴した状態で三人がかりで一人倒せるくらい、とします。状況設定としては……」
説明役のスタッフが、ホワイトボード上の図面に人型をした紙を貼り付けていく。
「ヴィランはここ、建物北側の一番奥に人質共々いるということにします。背面は壁、商品搬入口からも正面入り口からも遠いです。内部には当然商品の陳列された棚がありますが、建物の東西に渡って八台が二列、北と南から見ると垂直になって並べられています。つまりヴィランの側からは棚がすだれ状になっていて、仮に南入口から潜入した場合は棚を目隠しとして利用できないということになります。西側から潜入した場合は、うまくすればバリケードとして利用できるでしょう」
潜入して戦闘及び捕縛を行うだけなら、簡単な話だ。西から入り棚を目隠しに接近すればいい。問題はここからだ。
「人質は三名。足の悪いお年寄りと、主婦。そしてそのお子さん。怪我はありませんがビニール紐で拘束されています。ヴィランは刃物と銃器を持っていて、人質の傍から一歩も離れません。トイレなどは交替で行い、常にどちらかが人質を見張っています。また、監視カメラも利用していて、店内の監視を行っています。カメラは六台、映像の管理は商品搬入口の裏側にあるスタッフルームで行い、一度ここにあるコンピュータにデータが送られたあと店内のパソコンからも見られるように転送されます。この映像も、どちらかが見ています」
人質の安全は最優先。これは当然のことだ。
「それから、なるべく店内への損害は最小限に留めること。実際こういう状況になった場合、壊したものはHOPEから弁償しなければなりませんから……」
苦笑するスタッフ。やむを得ないこととは言え、予算には限りがある。これも現実だ。
「さて、以上を踏まえて、作戦を立ててみてください。作戦ができたら、ヴィラン役とリンカー役に別れて、実際にシミュレーションしてみましょう」
解説
●目的
作戦の立案のシミュレーションをします。作戦ができたら、実際にシミュレーションして見ます。
●状況設定
ヴィラン二名が人質を三人取ってドラッグストアーに立てこもった。
●建物
建物は横方向に長く作られ、西に当たる建物左側が商品搬入口、正面(南)に一箇所自動ドアの入り口がある。出入り口はこの二箇所しかない。ヴィランは建物北側の一番奥に人質共々いる。背面は壁、商品搬入口からも正面入り口からも遠い。内部には当然商品の陳列された棚があるが、建物の東西に渡って八台が二列、北と南から見ると垂直になって並べられている。つまりヴィランの側からは棚がすだれ状になっていて、仮に南入口から潜入した場合は棚を目隠しとして利用できない。西側から潜入した場合は、うまくすればバリケードとして利用できるかもしれない。
●人質
足の悪いお年寄りと、主婦。そしてそのお子さん。怪我はないがビニール紐で拘束。ヴィランは刃物と銃器を持っていて、人質の傍から一歩も離れない。トイレなどは交替で行い、常にどちらかが人質を見張っている。
●補足
・監視カメラも利用していて、店内の監視を行っている。カメラは六台、映像の管理は商品搬入口の裏側にあるスタッフルームで行い、一度ここにあるコンピュータにデータが送られたあと店内のパソコンからも見られるように転送される。この映像も、常にどちらかが見ている。
・人質の安全が最優先。
・なるべく店内の損害を最小限に留めること。
リプレイ
●協賛:万来不動産
「まぁトリブヌス級とかならいざ知らず、ちょっと強い程度のヴィランじゃどんだけ頑張っても、時間稼ぎが関の山か」
「逃げおおせるのは実質無理ですものね」
シミュレーションでヴィラン側をやる事になった赤城 龍哉(aa0090)とヴァルトラウテ(aa0090hero001)は、ぐるりと建物の中を見回した。
「人質もずっと連れ歩ける訳じゃないから、結局一時凌ぎにしかならないしな」
「……スパイ映画で下水道に逃げるというのもあった気がしますけれど」
「今回の想定にそんなんなかったからなぁ」
どう考えてもインポッシブルっぽいミッションである。
エージェントの立場で今までの経験を踏まえていえば、こういう事件で現場に居合わせた場合、相手の出方が判らないからまずおおまかな指針を立て、後は流れで対処というのがどうしても多くなりがちだ。臨機応変、悪く言えば行き当たりばったり。しかし不測の事態でもあわてずに対処できる判断力と恒に冷静でいられる心構えは、エージェントとして何より大切なことだ。
そういう意味で、今回のシミュレーション訓練は有意義と言えるだろう。普段絶対経験できない、ヴィラン側の立場に立つというのも勉強になる。
しかし龍哉の考え方だけ挙げるなら、立て籠った段階でヴィラン側は詰んでいる。自分の姿を消す異能でも持ってるならともかく、この場を何とか切り抜けたとしても、空から陸から追い立てられて最終的に制圧されるオチだろう。人数の差、戦力の差、その他諸々の要素で不利なのだから。リンカー側の懸念要素は建物の損害と人質の安否だが、それも絶対的な切り札になり得るわけではない。
結論から言うと、このヴィランは立て籠る暇があったらさっさと雲隠れすべきだったということになるだろう。
まあそれはそれ、これはこれ。
「普段と勝手は違うが、何事も経験してみるもんだ」
「やるからには、徹底的にやってみようかな」
龍哉とヴァルトラウテは、一緒にヴィラン役を担当することになった九字原 昂(aa0919)とベルフ(aa0919hero001)を呼び寄せて、まずは基本的な方針を相談することにした。
「現状を踏まえての行動を想定すると、立て籠った段階で店内の照明を全て消す。正面店舗入り口と搬入口の自動ドアの電源を切る。可能なら窓のスクロールカーテンを全て降ろす。監視カメラの位置を確認し、全て破壊する。最低限これ位はやっておきたい」
「わかりました」
それから話し合いを進め、細かくお互いの状態を伝え合い、場を離れる時は行き先と所要時間を伝えて、それまでに戻らなければトラブルと判断することとした。また、人質を監視する際は全員を視界に収める様に位置どりをし、可能ならば入り口も同時に監視。人質の一人には長めのビニール紐を括り付けてその端を持っておき、いざという時は手繰り寄せて直ぐに人質を盾にできる様に備える。状況が不利になったら逃走を試み、経路が空いていればそのまま、リンカー役に塞がれていたら人質を盾にして道を開けさせる。逃げ道もなくどうしようもない状態になったら、人質に危害を加える悪あがきをしてみよう、などといろいろなことを決めた。昂達はけっこうノリノリである。
「建物北側の壁、もしくはトイレの壁をライヴスセーバーで切り抜いてそこからこっそり脱出する、というのも手段としては考えておくか」
「移動手段がなければ焼け石に水ですが」
「だよな」
ヴァルトラウテに一蹴されて、龍哉は肩をすくめた。
ちなみに、今回人質役を担当するのは、万来不動産の謎のゆるキャラぬいぐるみ(等身大)三体である。それぞれ「主婦」「子供」「お年寄り」という名札を胸につけている。
そこへ、エージェント側の準備も整ったという連絡があった。いよいよ本番である。
四人は互いに頷きあって、相手の動きにいつでも対応できるよう適度に神経を緊張させた。
●作戦会議
エージェントとして活動するリンカー役として、梶木 千尋(aa4353)、高野 香菜(aa4353hero001)、藤林 栞(aa4548)、ソーニャ・デグチャレフ(aa4829)、キルデスベイベ(aa4829hero001)、都呂々 鴇(aa4954hero001)、新城 霰(aa4954)は作戦会議を行った。当然だが、エージェント側とヴィラン側の行動と作戦がお互いに知られていては訓練の意味がないため、双方の話し合い結果は明かさないことになっている。
「まずは机上演習からってことよね
「作戦案を吟味するのは大事だよ。良い訓練になるんじゃない?」
「そうね……、わたしが思いつくのはこんな感じかしら」
まず千尋が、考えた内容を話し始めた。
「スタッフルームまで侵入できるなら、内部の監視に監視カメラを利用できるはず。突入タイミングをそれで図れるだろうと思います。また正確な相手の位置を見て突入後の移動経路を事前に決定することが重要。ダミー映像を流すのは、一気の制圧を目指すのであれば必須とは言えないかも」
ここで、ソーニャから提案があった。群体英雄であるキルデスベイベ小隊にコーヒーを入れさせ腰を据えての作戦立案にいそしむ姿は一服の絵としても様になっていた。お子様である事を除けばであるが。
「店内監視カメラがスタッフルームの管理コンピューターに一度転送されてから出ないと店内で見られない事をからリアルタイムでないことを利用し、逆に犯人をだますというのはどうだろうか?」
「そうね。それから、監視カメラに写ってしまうなら、こちらが複数であることを生かして、同時かつ一気に動いたほうが犯人を動揺させられると思うのだけどどうかしら。一人が複数の動きを把握するのは大変だから」
霰も発言し、監視カメラの有効利用も含めてさらに具体的に作戦を詰めていく。
ソーニャの提案で、搬入口付近のスタッフルームを素早く制圧し、管理コンピューターを操作し、店内に表示する監視内容を一定時間分でループさせこちらの侵入を隠すことになる。いずれは気づかれるだろうが、すぐでなければ問題はない。このとき監視カメラの情報を操作しつつ店内の左右からメンバーを浸透させ挟撃に備える。
制圧時に関しては、、まず密かに侵入して近づくのはリスクも大きい。ひとりでどうにかする必要があるのならば手だが、複数人で制圧しようとするときは露見される可能性が増えるだけ損だろう。ということで、ヴィランがトイレ等に立ち、監視が一人になったタイミングで一気に雪崩れ込むのがよさそうだということになった。
突入は搬入口からが本命とし、突入直前、あえて一人だけ南口に武器を持たずに姿を見せて敵の注意を引くのはどうかという千尋の提案に対し、ソーニャがさらに二人を裂いて正面入口より人質解放のネゴシエートに従事させるというアイディアを出した。もちろんこれは囮、多分に時間稼ぎである。千尋の狙いも交渉に来たと見せかけて、犯人が判断しないといけない要素を増やし対応を遅らせることだったので、相手の出方を見て臨機応変に効率がよさそうなほうの作戦を選択するということに決める。
ソーニャは他に、内部のより詳しい構造を知ることも大事だと考えていた。人質に店内のスタッフがいない事を考えると殺されたか逃げおおせているかなので、生存している場合には、店内の警備状況などの仕組みを聴取。死んでいる場合には最寄りの警備会社の協力を仰ぎ、警備システムのレクチャを短時間で受けるというふうにしたいのだという。これは当初の状況設定では説明されていないことだったので、スタッフと協議の上、生存して避難しているということになった。その上で、ソーニャの知りたい情報も彼らに提供される。
ヴィランの捕縛に関しては、さらに意見をすりあわせた結果、やはり交替でトイレに行くというのを利用するのが最善ということになった。犯人がトイレに立って分断したところでスタッフルームのブレーカを落し、照明を消す。一瞬の暗闇に乗じて犯人を射殺。懐中電灯で顔を照らすなどして混乱助長というソーニャの案、建物への侵入後、トイレに一人張りついて、出てくるヴィランを押さえ、ヴィラン同士連携させないよう、一対一に持ち込もうという霰の案が出される。この場合ドアの開閉でフェイントかまされる可能性もあるが、出てきたらもちろん戦闘開始となる。
「……どう?」
だいたい煮詰まってきたところで、千尋はずっと黙って話を聞いていた香菜に尋ねた。
「ん、僕は悪くないと思うけどね」
霰も頷く。
「全体でひとつの案にするのは難しかったわね。それぞれ考えた作戦案を検証していけば良いんじゃないかしら」
「うん、たくさん試してみるといいと思うの。いっぱいお勉強になるね!」
鴇は長い会議で多少疲れて見えたが、頬を紅潮させてとても熱心な様子だった。
「藤林さんは?」
なぜかニンジンをひたすら食べながら参加していた栞は、話を振られて少しの間考え込んでいた。そして、蕩々と話し出す。
「じゃあ、トイレに忍び込んで待ち伏せします。監視カメラシステムに詳しい人が別にいたのでそのあたりの補助を得て、『よそに気を引いて、見ていない時に入る』基本を行う予定です。トイレにきたヴィランを一人暗殺し、それを起点に切り崩してはどうでしょうか。背格好が違いすぎると変装もできないだろうけど……いつまでも戻らない仲間を気にしてもう一人来てくれると助かります。もしくは戻らない仲間を見るために動いたところを別人に襲撃をかけてもらうとか」
「えっ……」
「棚はあまり遮蔽物になってないですが、路上の自動車など、ガラス部分ごしに向こうの景色が見えていてもああいう枠の中の情報は人間は見えないもの、と雑な処理をしたりするので、棚ごしに煙玉を地面にぶつけて上着を右に投げて左から突撃、もしくは針に錘と尾羽代わりの布をつけて二十本くらいまとめて投げつければ目も引くし刺さるし、もっと危ない物かどうか相手には判断つかないだろうからその直後に反対側から襲撃というのも考えています」
「あの……」
「暗くして襲うと言ってる人がいたので、もし実際にやるなら今からニンジンを多く取り――夜目によいので――、襲撃少し前から片目をつむっておき、暗闇になったらそちらをあけるようにします。夜道の習いで地面に顔を下げて地面の反射光で地面が少し見えるのでそれを参考にします。棚や敵との距離がわかりにくい時は小石類をツブテ打ちして物か人か確認、反射音で距離確認しつつ障害物回避して突撃します」
可愛い顔をして、なかなか容赦ない立案であった。
●実践開始
店の正面入り口、硝子張りになった自動ドアの向こうに人の姿が現れた。千尋だ。
「交渉でしょうか? 手にメガホンを持っています」
ヴァルトラウテがいち早くそのことに気づいて、他三人に囁いた。
そして彼女の推測通り、千尋は説得の言葉を並べ始める。ここで乗るのも手だろうが、いろいろ状況を考えるに交渉自体は囮に過ぎないだろうとも思う。
乗ったふりをして外に出て千尋に攻撃を仕掛けたとしても、恐らく近くに隠れているだろう彼女の英雄と共鳴されて戦闘になるだろうし、さらに言うとその隙を突いて多勢に無勢で取り押さえられる公算の方が高い。一人で行けば確実に不利、二人で出ていったとしても同様。人質を連れて行けば、多人数のリンカーに囲まれた際逆に足かせとなる。
故にここは、籠城を続けるのがベスト。龍哉は監視カメラの映像に目をやった。搬入口側にも他の箇所にも異常はない。
龍哉は、死角をなくすような位置に陣取って当たりを見張っていた昂に声をかけ、トイレに行くことにした。お互いの状態を伝え合い、場を離れる時は行き先と所要時間を伝えて、それまでに戻らなければトラブルと判断。そういう段取りになっている。
トイレは、店舗と搬入口の間に作られた倉庫がわりの空間に設置されている。辺りを警戒しながらトイレのドアを開けようとした龍哉は、すぐにその場から飛び退いた。
同時に、何も見えなくなる。周辺に気配の網を張り巡らせた龍哉は、横から向かってくる闘気を感知した。
目が、閃光に灼かれた。怯んだ。
一瞬だけ。しかし十分な隙となる。
気がついたときには、上から強く抑え込まれてしまっていた。
一方、店舗内に残った昂の方は、突然電気が消えたことと戻ってこない龍哉に不安を覚えていた。確認に行かなければならないが、人質(ダミー)をどうするか。自分で歩いてくれない人質なので困る。
この停電は、恐らくエージェント役の誰かの差し金だ。監視カメラの映像に異常は無かったが、それもきっと何らかの工作を加えられて細工されていたに違いない。その隙に搬入口から侵入したのだろう。
龍哉はすでに、取り押さえられているかもしれない。共鳴はしていたが、それは確実に相手も同じ事だ。条件としては互角。
考えている昂の足下に、何かが鋭く当たった。
石つぶて。
「小さく丸まって頭を下げて!」
正面入り口から、千尋の鋭い声が響き渡る。入り口からのほのかな光で、既に彼女が共鳴しているのが見て取れる。
飛盾「陰陽玉」が飛んできて、昂は身を屈めた。昂は人質人形につけておいたビニール紐を引き寄せ、抱え込んで駆け出す。ヴィラン的にはこういう場合、人質を盾にして逃走するというのがよくある選択だろう。というか他にない。
他の人質人形は、既に霞と共鳴した姿の鴇が確保してしまっている。人形一体が手に入っただけでも良しとすべきか。
しかし搬入口へ向かおうとした昂の目の前に、再び飛来したつぶてがいくつもぶつかって跳ねた。これは恐らく、栞の攻撃だろう。当の本人はどこに潜んでいるのか見当たらないし、気配も感じられない。さすが忍者の末裔だ。
だが、感心するのはいささか暢気すぎた。一瞬立ち止まってしまっていた昂の足が、がくんと動かなくなる。
スキル『縫止』。鴇だ。
身動きはとれない。人質は取り替えされた。仲間も捕まっている。
万事休す。
訓練はここで終わりを告げたのだった。
●反省会
一通り終わったあとは、後片付けをしたあと万来不動産の一室で反省会を行うことになった。
人質は怪我なく(?)救出し、店内の損害も軽微だった。エージェント側担当だったソーニャがいじった監視カメラのシステムはきちんと元に戻したので、これも問題ない。
真っ暗になった直後、いきなり顔に懐中電灯を向けられたのがかなり効いたなと龍哉は思った。人間の目は極端な明暗に弱い。これは、実際にこのような局面に陥った場合に作戦として使えるという実証ができたわけだ。
ヴィラン側の行動としても、実際はその通りに行動するであろうと想定されるパターンをよく踏まえていると評価されていた。だがそれを見事に読まれて攻め込まれたのだから、喜んでいいやら微妙なところだ。
栞のつぶてによる援護、交渉役をたてることで攪乱を狙ったソーニャと千尋の作戦、そして鴇・霰の迅速な攻撃。最後の人質救出時のチームワークもよかった。
「こういう訓練も役に立つな」
「勉強になります」
任務の時は基本的に臨機応変、敵に応じて千差万別のパターンがあるわけだが、何が起きても冷静に己を保てるようにするために訓練というものがあるのだ。
今回参加した者達にとって十分な収穫があったのは、それぞれの顔に浮かぶ充実した表情を見れば明らかだった。
こうして、今回のシミュレーション訓練は無事に終了したのであった。