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苺スイーツ食べ放題
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わたしたちの苺スイーツの為に。
最終発言2017/02/16 21:25:01 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/02/13 22:53:24
オープニング
●苺スイーツを早く食べたい
午後2時半。
あなた達は、ホテルのレストランに到着した。手にしっかりと握っているのは、H.O.P.E.からもらった“苺スイーツビュッフェ”の招待券。
開始時刻の30分前に到着したのに、レストランの前には既に行列ができていた。並んでいるのは、やはり女性が多かった。
「朝ごはんもお昼ごはんも食べてないんだー」
「私もー」
「絶対、全種類制覇するぞー」
そんな会話が聞こえてくる。
あなた達は、期待に胸を高鳴らせながら列に並んだ。
午後3時。
レストランに入ると、苺の甘い香りに包まれた。
長いテーブルに並んでいるのは、苺のショートケーキ、苺のタルト、苺のブラマンジェ、苺のロールケーキ、苺のマカロン、苺のミニパフェ……もう、とにかく苺、苺。チョコレートファウンテンには、ピンク色のストロベリーチョコレートが流れている。パンケーキは焼き立てが提供され、トッピングの生クリーム、苺ジャムは盛り放題。
お客さんたちは皆、目がハートになっている。
列の先頭に並んでいた人達は、早くもスイーツをお皿に取り終わり、テーブル席で食べ始めている。
あなた達も、いそいそとお皿を手に取ったが……。
「きゃー!」
突然の悲鳴。
あなた達が悲鳴を上げた女性のところに駆け寄ると、女性は床を指差した。
床には、黒い物が点々と……。
「なんでこんなにたくさん蟻がいるの。信じられなーい」
女性は特に怪我をしたわけではなく、びっくりして悲鳴を上げただけだった。
蟻の行列は、レストランの窓を通って、ホテルの中庭までつながっているようだ。
このままでは、落ち着いて苺スイーツが食べられない!
早く蟻を退治しなければ!
解説
●目標
従魔を討伐して、苺スイーツビュッフェを楽しむ
●登場
・イマーゴ級従魔「蟻」× 100匹。
体長1cm。
戦闘力はほとんどない。
噛まれると少し痛い。
以下の敵情報はPL情報。
・ミーレス級従魔「女王蟻」。
体長1m。
ホテルの中庭に巣があり、その巣の中にいる。
鋭い牙で攻撃する。
●状況
午後3時。晴天。
ホテル1階のレストランに、蟻が数十匹いる。残りの蟻は、中庭にいる。
レストランの窓が開いていて、蟻はその窓から入ってきている。
蟻の行列を辿っていくと、中庭にある巣が見つかる。
☆苺スイーツビュッフェのメニュー☆
・苺のショートケーキ
・苺のタルト
・苺のブラマンジェ
・苺のロールケーキ
・苺のマカロン
・苺のミニパフェ
・ストロベリーチョコレートファウンテン(各種フルーツ、マシュマロが用意されている)
・苺ジャムのパンケーキ
・飲み物は、コーヒー、紅茶、ミルク、苺ジュース
上記のメニュー以外に食べたい苺スイーツがあれば、プレイングにお書き下さい。
リプレイ
●全ては苺スイーツのために
『たのしみに、してたんですよ……?』
あらゆるデザートについて記載されている書物、メンサ・セクンダを抱く禮(aa2518hero001)の手が震える。涙目である。
「えっと……禮?」
相棒の海神 藍(aa2518)が声をかけても、禮の耳には入っていない様子だった。
楽しみにしていたスイーツビュッフェを邪魔されて、禮は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の従魔を除かなければならぬと決意した。
『わたしの、苺スイーツをよくも……ケーキを従魔の手から救うのです』
禮には政治がわからぬ。禮は、人魚の戦士である。槍を振り、皆を護って暮して来た。けれども甘味に対しては、人一倍に敏感であった。
「う、うん。その……落ち着くんだ」
『兄さん、共鳴を』
「ええと……暴れすぎないようにね?」
藍と禮は、藍の左手につけたブレスレットに触れて共鳴した。青紫の瞳に長い黒髪、海軍の礼装風の黒っぽい衣装で頭に小さな冠を載せた女性の姿となった。禮が成長したような姿だが、瞳は藍のような青紫色である。体の主導権を握ったのは、珍しく禮。禮が主導権を握るとなぜか躓きやすくなるため普段は使用しないのだが、それくらい禮の怒りは激しいのだ。
禮は、仇敵たる従魔を睨む。
足がもつれそうになるのを気合で耐え。
走れ、禮。
従魔を殲滅する。
わたしたちの苺スイーツの為に。
『……』
ユフォアリーヤ(aa0452hero001)は、無言のまま全身の毛を逆立たせて尻尾をゆらゆらと振った。スイーツビュッフェを楽しみにしていた分、ユフォアリーヤは激おこの模様。
「……ああもう、なんだってこんな時に」
麻生 遊夜(aa0452)は頭を抱えた。
(ご機嫌取りと話題逸らしに成功したと思ったらご覧の有様だよ……。前回の結婚式騒動の時と期待を裏切るタイミングが似通ってんだよ! ブーケ入手と結婚追及から逃れたいんだ、邪魔すんな!)
遊夜の頭はフル回転で高速思考した。
ピンと立った狼耳とふさふさな尻尾が特徴の半人半獣の少女、ユフォアリーヤは、遊夜に一途な愛情を捧げている。最近は遊夜に結婚を迫っており、遊夜はどうにかそれを躱そうと日々苦労しているのだ。
『……ユーヤ?』
ユフォアリーヤが、ゆらぁりと遊夜のほうを向いた。
「ハイ!」
遊夜は、背筋をビシィと伸ばし、良いお返事。
『……ん、おいで』
ユフォアリーヤが、両手を広げてニッコリと微笑む。
「……はい」
遊夜はがっくりとうなだれて、ユフォアリーヤと共鳴した。遊夜と同じような義眼を持ち、20代前半まで成長したユフォアリーヤの姿が現れた。
もはやユフォアリーヤの鬱憤晴らしに付き合うしか、遊夜に残された道はなかった……。
「さてと、今回の目的は、苺を食べ……蟻倒すかー」
ダシュク バッツバウンド(aa0044)は、後半は棒読みになって呟いた。
「さっさと全部ぶっ潰して苺スイーツビュッフェ楽しもうぜ。つっても100くらいいるか……」
ダシュクは、蟻の数の多さに少しげんなりしながらも、蟻退治もビュッフェもやる気は満々であった。
『スイーツビュッフェとやら、名前からしていい予感がぷんぷんしておる。楽しみじゃのう、ほほほ。ほれ、はよう倒すのじゃダシュク』
英雄のニトゥラリア・ミラ(aa0044hero002)は、女王様然としてダシュクに指図した。ニトゥラリアは見た目は少女だが、召喚される前の世界では魔法長であり、実は高齢なのである。彼女の本当の年齢は誰も知らない。
「女性客ばかりでかなり肩身が狭いんだが」
レストラン内を見回して、御神 恭也(aa0127)は呟いた。
英雄の伊邪那美(aa0127hero001)には、恭也の呟きが耳に入っていないようだった。伊邪那美は、神世七代の一柱で愚神を駆逐する為に降臨した神だと自称しているが、真偽のほどは不明。見た目は幼い少女である。
『ボクのイチゴ菓子が~。従魔、許すまじ……』
目の前においしそうな苺スイーツがあるのに食べられない歯がゆさに、伊邪那美は従魔への怒りを募らせた。
『かわいくなーい!』
蟻を見てプンスカしているのは、英雄のオーリャ(aa4420hero002)である。オーリャは、愛らしい妖精の姿をした、元人形の英雄である。オーリャのモットーは、可愛いは正義、であった。
「まぁ……可愛くないと言えば可愛くない……かしら?」
リジー・V・ヒルデブラント(aa4420)は、首を傾げた。蟻の可愛らしさについて考えたことがないので、可愛いのか可愛くないのかよくわからない。ともあれ、これ以上被害が広がる前に、蟻を退治しなければいけないのは明らかだった。
●レストランで蟻退治
「俺達は蟻の巣を探す。見つけたら連絡する」
『行ってくるね~』
恭也と伊邪那美は、窓から中庭に出て、蟻の行列を辿り始めた。
他の仲間達はレストラン内の蟻を退治することにした。
お客さんとスタッフにはレストランの外に避難してもらい、いざ蟻退治。
リジーは、初めに蟻の室内への侵入経路の割り出しにかかった。蟻が続々と入ってこられては困るので、開いている窓やドアを閉めながら、どこに蟻がいるか調査した。蟻は中庭に面した窓からしか入ってきていなかったので、そのことを仲間に伝えた。
リジーとしては、先に蟻の巣を叩きたいところだったが、レストランをこのままには出来ない。レストラン内を片付ければ騒ぎも落ち着くだろうし、ビュッフェの再開は早い方が良いだろう、とリジーが考えていると、オーリャが元気よく言った。
『さあささっさっと片づけるよ! 可愛いものが可愛くないものに害されるなんてボクは許さないからね! 姉様、今回はボクがやるよ』
「あら、それではお任せしますわ」
リジーとオーリャは共鳴した。共鳴後の姿は、オーリャと同じ金色の髪が輝き、瞳はオーリャの瞳の色が更に深まり赤色となり、オーリャと同じ妖精の羽が生えたリジーの姿である。
体の主導権を握ったオーリャは、蟻を可能な限り範囲内に入れてブルームフレアを使用した。蟻が小さいので、低く広く炎が広がるように。
『スイーツに熱が当たっちゃったらダメでしょ?』
スイーツは何としても守らなくてはならないので、炎の範囲には注意していた。また、他の人の攻撃と範囲が被らないように気をつけてもいた。
『そんなにお菓子が欲しいなら、お菓子の幻影を抱いて逝きなさい……!』
禮は、メンサ・セクンダで蟻を攻撃した。本から生み出された様々なスイーツが蟻を押しつぶした。だが、蟻はまだまだいる。自棄になった禮は、ゴーストウィンドを使おうとした。
『……えぇい! 吹き荒べ、死霊の風!』
(待ってくれ、待て! 範囲指定! 識別!)
藍は、全力で干渉して、攻撃範囲を蟻の居る箇所に留め、周囲に被害が及ばぬように力を尽くした。
(……なんとかスイーツを守りきった……今のところ)
藍はほっと息をついた。
『……邪魔』
主導権を握ったユフォアリーヤは、目につく蟻をキリングワイヤーで捌きつつ、中庭に面した窓に向かった。怒りに燃えるユフォアリーヤが通った後には、ただ蟻の死骸が散らばるのみであった。
窓に辿り着くと、ユフォアリーヤはいったん窓を開け中庭に出て、イグニスを構えた。
『……ん、綺麗に、燃やしてあげる』
ユフォアリーヤはニヤァと微笑んで、窓の外をうろうろしている蟻の群れを焼き尽くした。レストランの備品に被害が出ないのであれば、レストラン内にいる蟻もイグニスで焼き払いたいところであったが、さすがにそれは止めておいたほうがよさそうだった。
『……ふふ、うふふっ……さぁ、遊ぼう?』
窓周辺の蟻を一掃すると、ユフォアリーヤはクスクス笑いながら、巨大なヘパイストスを構えた。
ガガガガガッ!
ユフォアリーヤは、巣へとつながっている蟻の行列を薙ぎ払った。
(あー……味方に当てんように、な?)
遊夜はそう呟くのが精一杯であった。弾をばら撒いてスッキリすれば、ユフォアリーヤの怒りはおさまるだろうか。願わくばこのまま忘れてくれんことを……と祈るような気持ちの遊夜だった。
ニトゥラリアと共鳴したダシュクは、高速詠唱を使用してからゴーストウィンドでレストランの床を這っている蟻を払い飛ばした。
「早く食べたいんでね! 消えてもらおうか!」
更に、ダシュクは、弱っている敵には銀の魔弾でトドメをさした。
中庭で目についた蟻を退治し終わると、ユフォアリーヤはレストランの中に戻り、窓際で中庭の残党を警戒しつつ、キリングワイヤーで店内の蟻を攻撃した。
(店や客に被害出すわけにはいかんからな)
『……ん、食べれなくなるし……ね?』
ユフォアリーヤは、首をかくりとさせて遊夜の言葉に頷いた。
●一方、中庭では
恭也は、蟻を払い除けながら行列を遡って蟻の巣を探した。ほどなく芝生にあいた直径10cmくらいの丸い穴を見つけた。蟻はその穴からゾロゾロと出てきている。
『アリだー!』
「そのネタ……」
伊邪那美の叫びに、恭也は苦笑いをした。
恭也は靴に這い上がってきた蟻を手で払い除けて呟いた。
「……これ、本当に従魔か? 噛まれても少し痛い程度なんだが?」
『なに言ってんの!? ボクの御菓子を奪おうとする極悪非道な従魔その物だよ!』
「いや、お前の物じゃないからな。俺にはお前が言う極悪非道な従魔は少し大きい蟻にしか見えんのだが……」
恭也の言葉を聞いているのかいないのか、伊邪那美は腹いせに巣を水攻めにし始めた。
『あっはは~、御菓子の恨みを思い知れ~!』
「子供か!? お前は?」
伊邪那美の行動にあきれつつ、恭也はライヴス通信機で仲間達に巣の場所を報告した。
●蟻の巣へ
『御神さんから連絡がありました。蟻の巣が見つかったそうです』
恭也からの連絡を受けて、禮はレストラン内にいる仲間達に言った。
「ようし! 残った蟻はあと少し! 頑張るか!」
ダシュクはそう言って、蟻退治に勤しんだ。
間もなく、レストラン内にいた蟻の殲滅が完了した。エージェント達は、戦闘で乱れたテーブルや椅子をきれいに整え、避難していたお客さんを店内に招き入れた。
リジーはオーリャから主導権を渡してもらい、スカートをつまんで優雅に一礼した。
「もう大丈夫ですわ、ごゆっくり」
リジーのエレガントな仕草に、一気に場が和んだ。
ほっとした表情のお客さんとレストランのスタッフを後に残して、エージェント達は恭也が見つけた蟻の巣のある場所へと向かった。
再び体の主導権を握ったオーリャは、中庭をまだうろうろしていた蟻にゴーストウィンドを放った。
『ちっちゃいから見えにくいのもいそうなんだよね』
(そもそもあの蟻の従魔は何に引き寄せられているのでしょうか、甘い香り?)
『そっか。スイーツに集まってくるということは、そうかも』
オーリャはリジーの言葉に頷くと、ホイッパーロッドで蟻を攻撃した。ホイッパーロッドは泡立器に似た形状をしており、杖の動きに合わせて周囲に甘い香りが漂うのだ。
『これの香りに集まってくるかな? 来たらまとめて範囲攻撃でやっちゃうよー!』
蟻を退治しながらエージェント達は移動し、蟻の巣に到着した。
「なんかここだけ雨降った?」
「いや、そういうわけではない」
不思議そうなダシュクに、恭也は冷静に答えた。
水のしみこんだ巣穴からは、まだ蟻が這い出てきている。
ダシュクは、ゴーストウィンドで這い出てくる蟻を払った。
(蟻の巣穴か……厄介だな『墓穴を用意しておいてくれるとは、殊勝ですね』……え?)
藍は思わず聞き返した。が、その時には禮は既にトリアイナを手にし、攻撃体勢に入っていた。
『……穿て、雷槍!』
禮の言葉とともに放たれた雷の槍が、蟻の巣穴に突き刺さった。その衝撃で、もともと水のせいでゆるんでいた巣穴の周囲の地面がボロボロと崩れ落ちた。
大きく広がった穴の底で何かが蠢いていた。エージェント達が暗闇に目を凝らした次の瞬間、女王蟻が巣の外に飛び出してきた。
巨大な黒い虫。重たげな腹部からは体液がにじみ出ている。禮のサンダーランスによって負った傷であろう。従魔は、顎をカチカチ鳴らしてエージェント達を威嚇した。
『可愛くない!!!』
オーリャは言い切った。
『可愛くないなら……お仕置きだよ?』
オーリャはゴーストウィンドを使用した。不浄の風が吹き荒れ、女王蟻を襲った。
伊邪那美と共鳴した恭也は、クロスカウンターで女王蟻の攻撃に備え、疾風怒濤で女王蟻の節部分を狙って攻撃した。
女王蟻は、ダシュクの肩に噛みついた。
ダシュクは、銀の魔弾を女王蟻に放って応戦した。
オーリャは、ブルームフレアを使用した。火炎が女王蟻の周囲で炸裂し、湿った地面からシュウシュウと蒸気が上がった。
白い蒸気の中から女王蟻が飛び出し、オーリャを襲った。
『もうっ、そんな攻撃ムダだよぉ』
オーリャは、妖精の羽をパタパタッと動かして、ひらりと女王蟻の攻撃をかわした。
女王蟻は頭を横に振って、恭也を攻撃した。恭也は女王蟻の攻撃を回避すると、反撃した。
続けて恭也は、女王蟻の腹と胸の節に対してオーガドライブを使用した。ダメージを負った女王蟻は向きを変えてホテルのレストランのほうへ逃げ出した。
『……ふふっ……逃がさないんだから』
ユフォアリーヤは、ヘパイストスを構え、女王蟻に全弾叩き込んだ。
(これだけ暴れれば、機嫌治ったかねぇ?)
遊夜は、そっとユフォアリーヤの様子を窺った。ユフォアリーヤは満足気であり、怒りはだいぶおさまったようだ。
藍は、追撃にブルームフレアを撃とうとした禮を全力で止めた。ホテルが危ない。
(ま、待て、もう十分だろう? それより禮の分のケーキが待ってる。落ち着くんだ)
『……! 急ぎましょう、わたしの分がなくなってたら困ります!』
(良かった……正気に戻ったか)
『あっ』
正気に戻った途端、禮は転倒した。
『なんのこれしき、負けません!』
禮は立ち上がると、トリアイナで女王蟻を攻撃した。
女王蟻はトリアイナに噛みつき、トリアイナごと禮を振り回した。弾き飛ばされた禮は、芝生の上を転がってうまく受け身をとった。
オーリャは、ウィザードセンスで魔力を上げて、「白冥」の本を開いた。
『凍れ!!』
本から冷気を帯びたライヴスの弾幕が放たれ、女王蟻を凍りつかせた。
恭也は、大剣を振るい、動けなくなった女王蟻の頭を斬り落とした。
●残党退治
『さあ、出ておいでー』
まだ中庭に残っている蟻を、オーリャはホイッパーロッドの甘い香りでおびき寄せた。蟻の巣の中から数十匹の蟻が、ゾロゾロと外に這い出してきた。
「あー次から次へと!」
ダシュクはうんざりして呟いた。いつの間にかダシュクの手にくっついていた蟻が、ダシュクをちくっと噛んだ。
「うっとうしい!」
ダシュクは蟻を払い除けると、銀の魔弾で撃ち殺した。
『一気にやっつけましょう! 吹き荒べ、死霊の風!』
全ての蟻が集まった時点で、禮はゴーストウィンドを使用して蟻を一網打尽にした。
エージェント達は共鳴を解いた。
『……やっと、やっと、苺スイーツを食べることができます!』
禮は高らかに宣言した。
『食べ放題だ~!』
伊邪那美は歓声を上げた。
●苺スイーツ食べ放題♪
皆が待ちに待っていた苺スイーツビュッフェ。
スイーツが少なくなっているのではないかと心配している者もいたが、杞憂であった。長いテーブルには苺スイーツがずらりと並んでおり、なくなりそうなスイーツがあるとすぐにウェイターが新しいスイーツを補充してくれていた。
『……ああ、幸せです……』
禮は、苺スイーツに囲まれて幸せそうに呟いた。
『この“ぶらまんじぇ”と言うものは初めて食べました……おいしいです』
柔らかくてなめらかな舌触り。口いっぱいに広がる苺の甘さと香り。禮は苺のブラマンジェをスプーンで口に運び、ほっぺたに手を当てて至福の表情を浮かべた。
「なんだか疲れたな……あ、ロールケーキも美味しいよ、禮」
藍は、隠し持ってきたスキットルからウィスキーを飲みながら言った。
(禮はケーキがらみで怒らせない様にしよう……)
藍は心の中でそう呟いた。禮がスイーツ好きなのは知っていたが、スイーツのために暴走するほどとは思っていなかった。
『なんですか? じろじろ見て』
「……いや、なんでもないよ……レシピをシェフに聞いて、家でも作ってみようかな」
『わぁ! 嬉しいです!』
禮はにっこりと微笑んだ。
遊夜は、のんびりとコーヒーを味わいながら、幸せそうにケーキを食べるユフォアリーヤの顔を眺めていた。甘い物が嫌いというわけでないが、甘い香りとキラキラしたスイーツに囲まれて、甘い物は見ているだけで十分、苦みが欲しいという気分だった。
『……はい、あーん♪』
ユフォアリーヤはクスクス笑いながら、ケーキの載ったフォークを遊夜の口に近づけた。
逆らわない、逆らわないと遊夜は自分に言い聞かせて、口を開けた。
「……あーん」
もぐもぐ、ごっくんと遊夜がケーキを食べ終わると、ユフォアリーヤは雛鳥のように口を開けた。
『……ん、あーん♪』
食べさせ合いで満足するなら……と、遊夜はフォークでケーキをすくってユフォアリーヤに食べさせてあげた。
『……ん、満足……で、結婚式だけど……』
ユフォアリーヤはにこにこしながら言った。
(……忘れてなかった! こんな苦みはいらない! いらないんだ!)
遊夜の顔は青くなった。フォークを持った手の甲を額に当てて、一瞬目をつむり現実逃避。目を開けると、期待に満ちたユフォアリーヤの顔がすぐ近くに迫っていてぎょっとした。
従魔討伐は終わったが、追いつめられた男の戦いは、まだ終わらない……。
伊邪那美は、お皿に苺スイーツを山盛りにしてテーブルに運んだ。目指すは、全制覇。小さい体のどこにスイーツが入っていくのだろう、と不思議になるくらい、伊邪那美は食べまくった。
恭也は、伊邪那美の食べる姿を見て胸やけぎみになり、珈琲を無糖ブラックで飲んだ。
『珍しいね、恭也がお茶以外を飲むなんて?』
「偶にはな……それよりもまだ食べるのか? もう全品食べただろ」
『? うん、だからいま二周目に入ってるんだよ。あっ、手隙なら御代りを持って来てよ』
「俺なんかはケーキ一個で十分なのに良く食えるな」
『甘い物は別腹だからね。それよりも早く行って来てよ。無くなっちゃうでしょ』
「無くなる理由はお前が食い尽くすからだと思うがな……」
恭也はそう言い返しながらも、伊邪那美のためにスイーツを取りに行った。スイーツを取りに行く途中、青ざめた遊夜の顔とユフォアリーヤの笑顔が目に入ったが、触らぬ神に祟りなしということで、とりあえず放っておいた。
『苺スイーツは可愛いよねぇ。うんうん、可愛いは正義っ』
オーリャは、長いテーブルにずらりと並んだ苺スイーツを眺めて目を細めた。真っ赤な苺と白い生クリームのコントラスト。そのままアクセサリーにできそうで、食べるのがもったいないくらい可愛い。でも、食べる!
『全スイーツ制覇目指すよ!』
オーリャは、えいえいおーと気合いを入れて、スイーツをお皿に盛った。
「そうですわねぇ……わたくしはロールケーキと紅茶をいただきましょうか」
一方、リジーは、苺のロールケーキと紅茶で優雅なお茶タイム。窓際の席で、のんびりロールケーキを味わっているリジーの姿は、ビスクドールのようでなんとも絵になった。
「海神さんのご趣味は、お菓子作りなんですの? 素敵ですわね」
『兄さんの作るお菓子はおいしいですよ』
リジーは、近くに座っていた藍や禮と話しながら、ゆったりと紅茶のおかわりをいただいた。
「スイーツびゅっふぇーーーー!」
『言えてないぞおばか』
テンションの上がっているダシュクに、ニトゥラリアは突っ込みを入れた。
「うっさいなぁいいんだよ。こういうのは勢いだよ! お前だって来る気満々だったろ!」
ダシュクは、いそいそとお皿を手に取り、スイーツを選び始めた。
「飲み物はコーヒーで! あとは、えーと……どれにしようかな。ショートケーキ、タルト、ファウンテン……とパンケーキかな、とりあえず」
『あたしは、飲み物は紅茶を。砂糖だけでよい』
「スイーツは? ぶっ!? 全部のせ!? し、正気かお前……」
ダシュクは、戦場に立つ男の顔で、ニトゥラリアのスイーツてんこ盛りになったお皿を見つめた。
『当たり前じゃ。すべてを賞味してこそ、ビュッフェのだいご味というものよ』
「……本気なのか……」
『ふふふ、あたしはいつでも本気よ』
ニトゥラリアは、わるいおんなの顔でニヤリと笑った。
『ふう。中々の味じゃった。苺、というひとつの食材でこんなに多彩なスイーツを作れるとは驚きじゃ』
満腹になったニトゥラリアは、満足気に呟いた。
「はー食った食った」
ダシュクも思う存分スイーツを食べまくり、思い残すことは何もない。
「お前もまさか全部食べるとはなぁ。甘いもの好き同盟を結束しようじゃないか!」
『甘いもの好き同盟? 名がダサい』
「な名前がださい……?」
『スイーツ同盟としよう。ふふふ。もう一人の相棒には知られぬようにせんとな。ふたりだけの秘密じゃ』
大量の苺スイーツと戦った二人の間には、奇妙な連帯感が生まれていた。ダシュクはニトゥラリアの下僕という立場から、少し出世できたのかもしれない。
苺スイーツをたくさん食べた者も、食べなかった者もいたが、ともに過ごした甘くておいしい平和なひととき。
そんな平和な時間を守るために、エージェント達はこれからも戦うのであった。