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広告塔の少女~氷の街に迷宮を~
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【相談】ラビリス
最終発言2017/02/01 01:36:33 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/01/30 00:34:33
オープニング
● 今回のドキュメンタリーは大がかり。
去年のとある町での冬まつり。
リンカーたちはアイドルとしてその祭りに招待され出店を開いてそれが大いに受けた。
結果味をしめた村長が遙華にこんな話を持ちかけてきたのである。
「今度はもっとすごいことをしましょう」
遙華は思った。
「ふむ、面白そうね話を聞こうじゃない」
そこで話に出たのが、広大な敷地と大がかりな仕掛け。
アイドルたちをただ謳わせる働かせるのではなく、ゲーム要素を取り入れた上でなおかつ。
列に並んだり、こませたりというマイナス要素を排除する形。
それでいて美しく、ファンタジックで。ファンタスティックなやつ。
「じゃあ、氷で迷路を作りましょう!」
なぜそうなるのか。それは市長との話を隣で聞いていたロクトにもわからないのだから、きっと誰にもわからないのだろう。
● 非日常をここに
ミノタウロスの伝説を知っているだろうか。
牛の頭を持って生まれてきてしまった彼は、この世にいづるよりすぐに迷宮へと幽閉された。
その迷宮を踏破して倒した英雄がほにゃらら。
その迷宮から脱出するためにほにゃらら。
そんな話を永遠と聞かされていたあなた達は本題に入るように遙華へと告げた。
「氷で迷宮を作りましょう」
なんでも昨晩までやっていたゲームの影響らしい。
「ああ、遙華がゲームをやるまでに成長を……」
そう会議室の隅で感動しているロクト。
そう、この空間で頼りになる人間はもういない。
「単なる思い付きってわけじゃないわよ。訊いて」
まず迷宮を作る。中央には氷の特設ステージ。
「迷宮内にはチェックポイントを配置するわ。そこを通らないと迷宮の一部の道が解放されない、ついでにチェックポイントを通るとステージへの道がわかりやすくマップに表示されるようにするわ」
そしてチェックポイントではゲームをしてもらうらしい。
「ゲームをクリアするとスタンプがもらえるようにするわ。そしてその管理をアイドルがするからファンにとってはふれあいの機会になるわね」
さらにチェックポイントの一部では小ステージを設けて、そこでも交流会交じりのミニライブをやるらしい。
「こんな感じの物を考えたんだけどどうかしら」
● 迷宮内容
去年ドキュメンタリー撮影で使った村に再度訪れ。
氷の迷宮を作っている様子をさらにドキュメンタリー撮影するという物。
今回も温泉付きの宿に泊まるがタイムスケジュールとしては。三日で準備して三日運営して一日で撤収する一週間の日程。
迷宮は百メートル四方の広場に作り上げる。
迷宮は上空からマッピングできるのでどれだけ複雑にしても問題ない。参加者にはグロリア社の新型タブレットのモニターも行ってもらう予定だからである。
そしてここからが皆さんに考えてもらうことである。
1 チェックポイントのゲーム、もしくは催し物。
ゲームの場合クリアしたらスタンプ。催し物の場合見てもらったらスタンプがもらえる。
一回五分程度だと好ましい。これを担当してくれるチームが四つから六つ。
2 中央ステージのライブ順番、ローテーション
これがメインだが、何を謳うか、踊るのか。
3 出店
出店を出しもらってもいいと言われているが。これはリンカーにまかせる。
創るとしたら中央にステージ前に創ることになるだろうか。
● インタビュー内容
ドキュメンタリーなので当然インタビューをする。
すべてに答える必要はない、ただ一人一つは答えるように。
1 催しもの狙いとしてはなに?
2 冬って好き?
3 今年の抱負ってなに?
4 来年の出演予定とかある?
5 来年もこのお祭り来てくれる?
解説
目標 イベントの成功。
今回はイベント内容まで皆さんに考えていただくという。
ちょっと難しいシナリオです。
遙華も人を頼るということを覚えてきたのでしょう。
また、演出のための機材やセッティングは全面的にグロリア社が協力します。
裏方専門の人も募集しているので皆さん振るって応募くださいな。
リプレイ
プロローグ
気温氷点下、雪が降り積もる町に今年もリンカーアイドルがやってきた。
まず最初に足を下ろしたのは『アル(aa1730)』
「あれ? あの子がいない」
そうあたりを見渡すアルの横を駆け抜けていく『小詩 いのり(aa1420)』
「わー、一年ぶりだー! 懐かしいなー」
久しぶりの依頼だからか、よい思い出が詰まった場所だからかテンションの高いいのり、彼女は振り返って『蔵李・澄香(aa0010)』に告げた。
「 ねー、澄香、覚えてる? スキーしたりお汁粉売ったりしたよねー、わっ」
重たい荷物にバランスを崩されるいのり、その肩を『魅霊(aa1456)』が支えた。
「滑りますよ」
「ありがとう、魅霊ちゃん」
その輝くような笑顔が眩しくて魅霊はそっぽを向いた。
その魅霊の相棒である『R.I.P.(aa1456hero001)』は一面真っ白なのが物珍しいのか、あたりを眺めている。
「去年はいろいろあったね」
そう告げる澄香の隣に金糸の姉妹が降り立った。
「そういえば、私の羽が溶ける事が分かったのもこの頃からだっただろうか」
『アイリス(aa0124hero001)』はイリスの分の荷物まで抱えて、それでも平気そうに佇んでいる。
「思い出すのがそれなの?」
『イリス・レイバルド(aa0124)』は呆れたようにつぶやいた。
「というわけで妖精の蜜で作ったホットドリンクを遙華さんに提供しておいた。出店で適当に売りさばいてくれることだろうさ」
「だから羽小さいんだ」
そうイリスがアイリスの視線を追ってが旅館をみると、事前待機していた遙華がこちらに駆けてくるのが見えた。
「みんな、お疲れ様。まずは休んで、当日は下見と会議だけだから、今日はのんびりして、明日から辛くなるけど」
そんな遙華に『卸 蘿蔔(aa0405)』が駆け寄る。
「わー、お久しぶりです遙華。風邪は大丈夫です?」
「ええ、ずいぶんいい方よ、まぁ風邪というよりストレス性の体調不良と言うか」
それ以上言わせまいと『レオンハルト(aa0405hero001)』は額に白い何かを押し付ける
「寒いからぶり返さないよう気をつけてな。はい、カイロ」
「そういえばゲームしてると聞いたのですが……気になるなー」
張るカイロを額に張られてしまった遙華はそれをべりっとはがすと蘿蔔につけ返す。
「戦闘の訓練にと思ってガンシューティングをね。蘿蔔は何をやるの?」
そう話をしながら回路をくっつけあう少女たち。
そんな彼女たちを置いて保護者組は旅館の中へ入っていった。
「ちょっとまって!」
だが、全員に置いてかれまいとアルが声を上げる。
「白江ちゃんどこ!?」
「ここ……」
そう告げると一人の童子が空間から浮き出るようにアルの手を取った。
身じろぎしなければ雪と同化してしまう、驚きの白さ『白江(aa1730hero002)』その童子の手を引いてアルは改めて旅館に入った。
「ご無沙汰しております。去年に引き続き、どうぞ、ご愛顧を」
そう『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』『セバス=チャン(aa1420hero001)』が旅館のオーナーと何やら話しをしている間に『楪 アルト(aa4349)』に鍵が手渡される『鈴宮 夕燈(aa1480)』と同室である。
「夕燈と初めての活動かー……な、なんか変に緊張してきちゃったな…」
「今回のお仕事さんもみんなと一緒で楽しみ! そして、お姉ちゃんと一緒ー!頑張るさんやでー」
そうアルトにすり寄る夕燈。そのまま夕燈は遙華たちの元へアルトを引っ張って行った。
「お姉ちゃんだったんよ!」
「え? どういうこと?」
「こらこら、まずは部屋に荷物を置きに行った方がいいだろう、その後話す時間はいくらでもとれる」
『リーヴスラシル(aa0873hero001)』が、通行の邪魔になっていると少女たちを静止ながら告げた。
引率の先生のような気分である。いや、実際そんな扱いか。
それを見て『月鏡 由利菜(aa0873)』は少し笑った。
「どうしたのだ、何がそんなにおかしい……」
「楽しそうだなと思ったんです」
そうひとしきり笑いきった由利菜にリーヴスラシルは少し真面目な話を向けた。「村長、ユリナはHOPE東京海上支部トップクラスのリンカーだ。彼女目当てで来る者も多いはず。集客に活かしたい」
「そ、そうでしょうか……? ラシルだって、放っておく人はいないのでは」
リーヴスラシルは後ろを指さすと、夕燈が由利菜に視線を向けてうっとりしていた。
「月鏡さんは相変わらず美人さん……。みんな素敵、可愛い……」
「恥ずかしいです」
最後に部屋の鍵を受け取ったのは『世良 杏奈(aa3447)』と『ルナ(aa3447hero001)』である。
「氷の迷路、素敵なのにしましょうね!」
「寒いから、何か温かい食べ物とか飲み物がいるんじゃない?」
ルナの口から次々にアイディアが飛び出してくる、それをニコニコしながら杏奈はずっと聞いていた。
第一章 氷の迷宮
翌日から準備期間が始まった。
「意外と壁。高いですね」
そう氷の壁を見あげて魅霊はつぶやく。
「遙華様、ロクト様、今年もイベントCMを作成いたしましょう」
そうセバスのプロデュースによって今日は、迷宮内での撮影が行われている。
去年と同じようにローカルラジオはもちろん、ローカルTVでのCMや、商店街などの宣伝活動もさせてもらえることになった。
「新しく歌を作ってきたよ!」
「いや、久しぶりだから苦戦したよ」
いのりと澄香がそうCDを権限のある人物に配布していく。
「曲名は『nieve fiesta』」
「スペイン語で雪祭りって意味だよ」
そう、元気に打ち合わせする少女二人の声を聴きながら。魅霊は氷の壁と向き合っていた。
「前準備に3日……かなり短い期間になりますね」
「そうね、もう少し時間を取ればよかったと後悔しているわ」
そんな魅霊に遙華が話しかけた。
「大仕事だけど頼める?」
「私は初の参加ですが、皆さんに楽しんでいただける空間が作れればと思います。……もちろん、澄香姉さん達が怪我をなさらないように という点もありますが」
そう魅霊はセイクリッドフィストを装着する魅霊。霊力を通わせなくても金属の具足程度には鋭いので、氷の加工は容易かった。
それで魅霊はひたすらに氷を掘り続ける。
「魅霊ちゃん!」
そう後ろから肩を抱いたのは澄香。
「ひゃ!」
柄にもなく声を上げる魅霊。そんな彼女にいのりから楽譜が渡される。
「私たちのルネも、お願いね」
澄香が告げると、それを大切そうに抱きかかえて、はいとだけ言葉を返した。
「さぁ、私達もお手伝いしましょうか」
クラリスがパイルバンカーを持ち出した。
「う……お腹が」
レオンハルトが雪の上に転がった。
「張り切ってるね、僕たちも頑張るぞ」
レオンハルトの治療が必要ないと観るといのりはガッツポーズをとる。
「そうだ、じいや。明日の準備。じいやー、喉に優しい飲み物お願いね!」
「かしこまりました。澄香様、龍曲散と蜂蜜ドリンクをご用意しております」
そうセバスがうやうやしく礼をすると、本格的に作業が開始されるのだった。
「うふふ。魅霊ちゃんたら、とっても張り切ってるわね」
そんな一行を遠くから見守っているのはR.I.P。
「だけどこうなると、自分の負担もそっちのけにしちゃうから……」
「承知したわ」
いつの間にかR.I.Pの傍らで待機していた遙華が答えた。
共鳴するつもりなのだろう。そう彼女の披露を負担しようとR.I.Pは魅霊に歩み寄る。
* *
そしてお祭り当日。氷の大迷宮は有名遊園地に張り合えるほどのボリュームでオープンした。
「中をご案内するのは、アルトと」
「夕燈やで! お姉ちゃんと一緒でうれしいわぁ」
そうカメラに元気に手を振る二人、これは雪まつり会場内のモニターすべてに中継されている。
「今回は食べ歩きやんなぁ、お姉ちゃん」
「ちがうちがう、どれだけ食いしん坊かな夕燈。これからあたしたちで迷宮に実際潜ってみようって話」
そんなやり取りを繰り広げながら二人は迷宮深く潜っていく
ただ、その迷宮は光に満ちていた。
「綺麗やんなぁ」
氷の壁に踊る音符。それが金色に淡く光りながら、迷っている物を誘導していく。
「これ、魅霊さんがつくったのよね? すごいなぁ」
そう迷宮の隅っこでメンテナンスをしていた魅霊に突如カメラが向けられる。
「ええ、頑張りました。姉さん達から楽譜を借りて、迷宮の壁に旋律を刻んで…
もし迷っても、歌が導いてくれるように」
「素敵やんなぁ」
夕燈は先ほどから感動しっぱなしである。
「譜面の形にそうようにワイヤーをしいて、そして霊力を通すことで霊石が光ってるんです」
魅霊はこの話を遙華に持ち込んだとき、難しいと言われた。ただできないとは遙華は言わなかった。
『可能な限り努力するわ、あなたが頑張っているんだもの、私もやるのは当然だから』
そして二人の力で実現したのがこの、氷、ならぬ光の迷宮。
「迷ったら音に耳を澄ませてみてください、きっと希望の歌声が聞こえるから」
そんな二人の耳に届いたのは、幼声。
「イリスちゃんや!」
夕燈は駆けだした。
そこは子供たちでにぎわうおとぎ話のような空間だった。
床に○△□等のさまざまな記号を描いたマスを用意し。その上で踊る妖精。
それを捕まえようと子供たちが走り回っている。
追う先には背中に翼を生やしたイリスがいた。
「これはね、ボードに表示された記号の描かれたマスだけ、ふむことができるんだよ。妖精さんはね」
穏やかに佇むアイリスが説明した。
文字通りアイドルとのふれあい(物理)要素が入っている催し物だが、わりとイリスがハードそうだ。
「面白そうね、どこから発想を?」
アルトが尋ねた。
「けんけんぱという遊戯から着想を得た」
「お姉ちゃんはそういう知識をどこから仕入れてるんだろう」
子供たち五人がへばったのでいったん休憩タイムをいれたイリス、しかしカメラを見るとアイリスの影に隠れようとしてしまう。
「優雅さをもっと出したいね」
そんなイリスに更なる注文を突き付けるアイリス。
「いやできるけどさ…全力で逃げるよ?」
「構わないよ」
「まあ度が過ぎる相手はこちらで受け持つさ」
噂をすれば影、イリスの熱心なファン、大きなお友達がやってきた。
「うわ! 本気を出すよ」
騒がしくなってしまったのでアルトと夕燈は別のチェックポイントへと向かうことにした。
さらに奥に歩くと氷は水色の輝きを増していく。
「あら、もう着いたのね」
そこには遙華と列にならんでくださーいと、てんやわんやの蘿蔔がいた。
レオンハルトは子供たちからの支持を集めまったく動けそうにない。
「ああ、ちょっと整理してくるからちょっと待ってて」
「遙華ー、たすけてくださーい」
顔を見合わせる夕燈とアルトである。
ここで行われているのは氷を用いた、カーリングのようなゲーム
規模は小さめで枠内のストーンめがけて自分のピンを滑らせ、枠外に弾いた数が一定以上になればクリアと簡単。
ストーンにも装置をつけ位置をマッピングで確認できるようにしている。
しかもこのストーン、ぶつかると光り、コミカルな声が出る。ちなみに声の元は蘿蔔である。
レオンハルトはこの石を最初に見たときは爆笑していた。
「ふっふっふー。ここを通りたくばこのストーン様と部下たちを倒すのです!」
そう子供たちに対して大見得を切る蘿蔔。
「よし、じゃあ、さくっと倒してしまおうか」
そうレオンハルトが子供たちを先導する。
「え? レオもやるです?」
その後、血で血を争うような激しいバトルが展開されたが、それはまた別のお話。
「いらっしゃい」
次いで二人が訪れたのは杏奈の会場だった。
ルナがせわしなく駆け回っている。
内容としては
魚形に作った氷を床に並べ、先に塩を付けたタコ糸で釣り上げる、釣りゲーム。
3匹釣ったらクリア等のルールにするゲーム。
これにはちゃんとチャレンジできたアルトと夕燈姉妹。
「おお、お姉ちゃん、この魚ヒラメやろか、かれいやろか?」
「えっと、目が右なのがヒラメで? ひだりなのが?」
混乱する姉妹である。
そうこうしている間に、迷宮内にいる時間が一時間を突破。
途中で迷ってしまったというのもあるが。次で最後のゲームの様だ。
「うそうそ。その前にあたしたちのチェックポイントに行かないと」
二人も何やら用意しているようである。
カメラは少女二人に誘導され、迷宮のはずれへ。
「アイドルらしく、ダンスさんやで!」
そう告げると、氷が敷き詰められたミニライブ上で、二人が華麗なステップを踏み始めた。
あらかじめ髪型を同じくした姉妹は本当にそっくりで衣装の動き方からしてt鏡のよう。
今回はこの二人の動きの違いを当てるという物だった。
「当てた視聴者さんには豪華プレゼント」
そう言い切って二人は踵を踏み鳴らす。
情熱的なダンスに歓声が上がった。
「腕がない!」
観客の少年がそう指摘すると、夕燈は告げる。
「正解一つ目。それにしても、お手てかえしたってぇ」
笑い声がステージを包む。
そして本当にラストステージ。
「よくぞ参られたー!」
そう二人を迎えたのは腕組みをした澄香。
そこは一種のファンタジーワールドだった、ちびキャラと化したクラリス、澄香、いのりがふわふわと巡回しているし、ピカピカとライトエフェクトも派手である。
しかしステージの真ん中に置かれているのはカラオケセット。
「お好きな歌を一曲歌って頂ければクリアとなりまーす!」
「アルトちゃん、夕燈ちゃん、好きな曲をいれてね」
そうマイクを差し出すいのり。
すると夕燈が意気揚々と最近はやりのアイドルソングをかける。
「幻想歌劇団ディスペアで『トップスタンダード』や」
その直後、いのりの背に取り付けられていた機械の翼が広がる、エンジェルスビットがマイクの声をあたりに散布する。
澄香といのりの出し物はこれである。カラオケ一曲歌えばクリア。
しかし、彼女たちが間にデュエットとして入るものだから参加者は大興奮である。
最終的には背中合わせで歌ういのりと夕燈。
会場は思わぬコラボレーションに沸き立った。
そのころの澄香と言えば。
「何をしてるの?」
剣の柄を握っている澄香にアルトは問いかけた。
よく見ればそれはクリスタロス。霊力を通すことによって、結晶化できるように改造されていたのだが。
歌が響き、生まれた水晶をペンダントにして、参加者に配るというのも特典らしい。
夕燈はそれを快く受け取った。
「きれいやんなぁ」
そんな嬉しいお土産も受け取ったところで、二人は迷宮の中心を目指す。
そこに至るまでの演出も美しかった。
まず氷のトンネル。
天井部に星のオーナメントを埋め、夜には天井が光輝くらしい。
しかも中は心なしかあったかい。沢山の人がその美しさに見惚れていた。
「アルちゃんがなぁ。壁にアイドルのモチーフ刻んでてん」
夕燈がそう紹介した。
「へぇ、私達はなんだろう」
そう探すアルト。だが美しい見世物はこれだけではない。
そこを抜けると見上げるほどの氷像が、列をなして迎えてくれた。そしてその先にはステージが見える。
「すごい……」
アルトはつぶやく。
これはリーヴスラシル力作の氷像たち。
時間があれば英雄の物も作りたかったそうだが。能力者の物しか見れないのが残念だった。
そしてゴールまでたどり着くと、由利菜がお茶を振る舞っているのが見えた。
由利菜は二人の視線に気が付くとテーブルに座らせる。
「ごきげんよう、ゆっくりしていって下さいね」
由利菜にうっとりと視線を奪われる夕燈。
「いらっしゃいませ、お客様。案内人のリーヴスラシルでございます」
その隣からリーヴスラシルがそう声をかけてきた。
「今からですと、ちょうどアイドルのステージが」
恭しく礼をするとリーヴスラシルはステージの方に手を向けた、直後である、割れんばかりの会場が、ステージ上の少女に浴びせられる。
アルがいる。元気に飛び回って観客に手を振っていた。
その背後のモニターに、冬は好きかというしつもんが流れる。
「ボクは好き。特に秋から冬になった瞬間の、キンとした空気。
たっぷり吸いこんで、吐き出した息が真っ白に広がるのを見ると、あ~生きてるな~って思うなぁ」
そう告げるとアルは舞台袖でソワソワしている童子を手招きする。
アルは白江の元まで歩み寄り、そして告げた。
「ねぇ白江ちゃん。一緒にステージ上がらない?」
「きよえは特別なこと、なにもできないよ……?」
不安げに視線を泳がせる白江
「ボクはきみの踊りに合わせて歌いたいんだけどなー」
そう白江の手を引くと、その足がふわりと前へ。そして白江がマイクを握った。
「きよえも、嫌いではありません。隣にいる人の温かさが一番よく伝わってきます」
「そんな素敵な冬を強く感じられるこの町で、僕達歌って踊ります!」
雪と氷をモチーフにした真っ白な衣装で、軽やかにステップを踏むと曲が流れた。
息を吸って、吐いて、また吸って。
一歩目は、薄い氷の上にいるような、静かで滑らかな足運び。
次いで袖から出したのは黄金色の神楽鈴、それを鳴らし。同時にアルと向き合い、次いでもう一鳴らし。
まるで舞い散る雪のようにふわりふわりと、そしてガラスのような繊細な声で。
白江ちゃんに教わったんだ。
そう後にアルは語った。
どこか民族的な、御霊を鎮める子守唄のような、穏やかな曲
その歌をアルトが歌っていると、毎回瞼の裏に浮かぶ光景がある。
同じように舞う誰かの姿。
ずっとずっと昔に、白の江の守り人と呼ばれていたこと。
舞うことで何かを守っていたこと。
けれど今はそれはどうでもよくて。
ただ二人でステージにたてることがすごくうれしくて。
第二章 あったかい物
中央ステージにはたくさんの出店や、オブジェがある。
超巨大滑り台もその一つ。
蘿蔔によって、迷宮が見渡せるように、そして迷宮からの脱出手段、その一つとして考案されたが、子供たちに大人気である。
「お疲れ様。縄はしっかり持って、落ちないよう気をつけてね」
そうレオンハルトがすっかりいいお兄さんになっているのを尻目に、蘿蔔は杏奈と一緒になっておでんや芋煮等温かい物を売っていた。
ちなみに澄香の策略によってホットの腐り神様泥水も置いてある。
「あ、あのー。私……一応清純派アイドルとして売ってるのですけど」
「そうだったのか」
子供たちをはべらせたレオンハルトは本当に驚いた顔をした。
その隣にはいのりのお店
「という訳だから遙華もエプロンつけて?」
「え? 私もやるの?」
「暇そうだし」
「……良く見抜いたわね」
「調理はわたくしめにお任せ下さい」
そう遙華にエプロンをかけてあげていのりはセバスのあったかーいご飯を提供していく。
「でもあなたの出番がそろそろ回ってくるんじゃない?」
その遙華の言葉にいのりは飛び上がって驚いた。
「本当だ!」
アイドル衣装に一瞬ではや着替え、待機していた澄香と合流してそしてステージ上に上がった。
「迷路や露店もいいけど、やっぱりボクらの本分はこれだよね」
「うん!」
澄香は心底嬉しそうな表情をいのりに向ける。
つないだ手が、やっぱりこれだと叫んでいた。
「今日は集まってくれてありがとう」
澄香が告げる。
「澄香と一緒にこのイベントのテーマソングを作詞・作曲してみたよ」
いのりが手を振る、曲名が、背後のスクリーンに投影された。
『nieve fiesta』
ラジオやCM、会場でも流れている曲だ、みんなが体を揺らしている。
その背後では祭りにやってきたお客さんの笑顔が投影されていて。
雪の中の熱狂はボルテージを上げていく。
祭りはこれからだ、そう二人が会場を盛り上げていく。
そんな二人が歌い終わり、息をつきながら熱を冷ましているところを遙華が突撃した。
「すごくいいステージだったわ、今年も絶好調みたいね。そんなお二人にインタビュー。今年の抱負ってある?」
いのりがマイクを持ち上げた。
「去年一年で名前を覚えてくれた人が増えてきたから
今年はもっともっとたくさんの人に覚えてもらえるように頑張りたいな」
澄香はゆらりと体を揺らして、こくこくと頷いた。
「新曲もいっぱい出したい」
澄香が告げるといのりは微笑む。
「そう、澄香と一緒にね!」
「「目指せトップアイドル!」」
そう告げると会場は歓声に包まれた。
「じゃあ、次は蘿蔔のば……」
そう遙華がコールし終わらないうちに蘿蔔が、赤いドレスで登場して、遙華の手を取った。
「聞いてくださいアネモネです」
「ええ! ちょっと」
戸惑う遙華、その耳元で蘿蔔は告げる。
「この曲ありがとうございます、一緒に」
そう継げ、蘿蔔が歌いだせば、おずおずと遙華も声を載せ始める。
アネモネの花言葉は「恋することの苦しみ」女の子の可愛らしさと胸の痛みを謳った歌に。会場はスッと飲まれて行った。
やがて曲が終われば遙華が真っ赤になって蘿蔔にマイクを向ける。
「また来年来てくれる?」
「はい!私は今年が初めてだったのですが……楽しかったです。また来年も皆さんと一緒に楽しめたらと思います」
そんな光景をイリスとアイリスは舞台袖から眺めていた。
「虹の音にするべきか、愛のバーゲンセールにするべきか、迷う所だね」
「その二択なの?」
イリスが気の毒そうな顔を遙華に向ける。
「以前ここで歌ったのはバーゲンセールだったしね」
やめようよ、そう告げてイリスはアイリスの服の袖をつかむ。
「まあ今回は虹の音だ。遙華さんも精神ダメージを受けたばかりだしねぇ」
「あー、前回はダメージすごかったもんね」
「事前に録音したものをロクトさんに渡してはあるがね」
あとでいじって遊ぼう、そんなことを二人は考えて、遙華、蘿蔔とバトンタッチする。
そして響くのは虹の音で、それに合わせたシンクロダンスを披露する。
それに加え今回はバルムンクを一人一本携え剣舞まで盛り込んできた。
「さむいよ~」
「ついらいよ~」
そう震えるバルムンク達。
「バルムンク辛そうだよ?」
イリスが間奏の間にアイリスへ耳打ちする。
「まあ動いていれば体も温まるだろうさ。なので仕事の時間だバルムンク親衛隊」
「「はーい」」
「お姉ちゃんの言うことは聞くよね」
そんな緊張感のあるパフォーマンスの後に続くのは由利菜。
『Fearless Heart』
彼女の舞闘曲、アタックブレイブを舞う際のイメージソング。
その力強いステップと剣舞は観客を魅了するだけではなく『恐れなき心』の意味通り、勇気を奮い立たせる戦場の花となる。
さらには曲の途中でラシルと合流。その手を合わせて共鳴すると。
リンカーたちは見慣れた姫騎士姿となる。
その凛々しくも美しい姿に、新たなファン層が構築されたとか、されていないとか。
その出演直後由利菜はリーヴスラシルの手を引いて自分の売店まで戻った。
そこにはアイドルグッズのショップが開かれており、遙華が座っている。
「アイドルリンカーの方々も多いですし、遙香さんへ提案してみました」
ポストカード、ボイス付き目覚まし時計、クリアファイル、チェキ用ファイル、コスプレ用衣装等。売れ行きは上々らしい。
「皆やユリナだけでなく、私のグッズもあるのか……」
* *
そして本日の演目のラストが近づいてきた。
今日、ラストを飾るのはアルトと夕燈の姉妹である。
強く打たれるスポットライト、夕燈がそれを浴び、その夕燈の影にアルトが跪いている。
『日向の音~soleil~』
夕燈が歌い継ぐルネ。それを二人で歌う。重なるハーモニー、しかし光度は落ち、やがて夜の闇に飲まれるように会場が暗くなる。
そこで
『影踏の音 ~Forsythia~』
転調、アルトが祈るように言葉を続ける。
どんなに頑張ったって、明るく感じても、真っ暗が私に手招きしてくるんだ、無理なんだ。
そんな思いを足かせに暗闇に沈んだ少女。
しかし手を差し伸べてくれる人がいる。
アルトは夕燈の手を取った。
そして会場に光が戻ってくる。
氷の迷宮の大点灯。魅霊が仕掛けた歌の軌跡である。
そしてバックに表示される文字。
――でも貴方がいる、その場所に絶対帰る様にって、強く負けない様に歌う。
もう道を間違えたりしないさ、「あの場所」を目指して歩いて行けるように。
そして二つの曲は溶け合って、音色は天に昇っていく。
エピローグ
そして閉会式、これからリンカーたちには後片付けが残っているが、笑顔絶やすことなく、集まってくれた人たちに笑顔を振りまいている。
「最後に、みんなでもう一度『nieve fiesta』を謳おう」
そう澄香が告げる。
QRで曲がダウンロードできる歌詞カードを配り、nieve fiestaの大合唱。
今回のお祭りは前回にも増しての大成功をおさめた。
その立役者であるリンカーたちにリポーターがマイクを向ける
まずは杏奈。
Q 来年もこのお祭り来てくれる?
「是非、またやりたいですね」
「うん! またきたいな!」
ルナが寒さで鼻を真っ赤にして、でも元気に答えた。
そして由利菜にもマイクが向く。
「エージェント業が多忙ですけど、もし時間が空けばまた……」
最後にマイクは魅霊へと向く。
Q 氷の迷宮、演出とても綺麗でしたね。どういった狙いで作られたんですか?
その質問に魅霊は静かに答えた。
……え? 狙い ですか?
――なんといいますか……
私の識る世界には、みんながいる。
たとえ目に見えなくとも、それはわかる。
だって、その音色(こえ)は その詩(ことば)は、憶えているから。
みんなが謳うように、私も謳おう。
みんなの詩を、私は語り継ごう。
ここに綴るのは、そう……【継ぎ紡がれゆくウタのキセキ】
この旋律を知っている 私達が在る限り潰えない、希望の核心。その総譜。
きっと誰もが、これを心に抱いている……それを識ってほしい。
ここに来る人々にも。これからの私にも。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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